PandoraPartyProject

シナリオ詳細

こねこねこねこ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


●かわいいネコちゃん
 幻想のとある村には、とても可愛がられているこねこがいた。
 柄は茶虎。好物はおさかな。毛並みはふわふわで触り心地が良く、特徴はふんわりとした長いしっぽ。やわらかなそれに包まれるとどんな人でも頬が緩んで幸せになってしまうという。
 性格も穏やかで温厚。にゃーん、と鳴く声も愛らしい。そのうえ人懐っこくて誰にでも擦り寄ってくるので、こねこは村中の人から愛されていた。
 そう聞けば何処にでもいる愛らしい猫の話に思えるだろう。
 だが、それは猫ではない。
 コネコという種族の温厚な生き物であり、なんと体長は五メートルほど。コネコは巨大ではあるが、人を襲うことはないので『ネコちゃん』と呼ばれて村人と平和に共存していた。
 だが、ネコちゃんはある出来事を経て変わってしまった。

「にゃあああああん!」
 ふわふわだった毛を逆立て、コネコは村の広場を走り回っている。
 興奮した様子のそれはまさに獣そのもの。広場のシンボルである巨木の幹で勢いよく爪を砥いだかと思えば、ばたばたと走り回って周囲のベンチや花を薙ぎ倒す。
「にゃあああ!!」
 かといって怒っているのではなく、体力が有り余って仕方ないといった様子だ。
 その原因となったのは、実は――。

●おっきなネコちゃん
「村人さんがお土産に持ち帰った『またたたたび』っていう植物のようなのです」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は或る村が困った状態になっていると伝え、集ったイレギュラーズに事態の解決を願った。
 事の発端はとある村人がコネコに良かれと思ってまたたたたびを与えたことから始まる。
 愛らしく大人しかったコネコはその影響で暴れはじめ、手が付けられない状態になっているという。
「色々調べてみましたが、元に戻すには有り余っているネコちゃんの体力を削るしかないみたいなのです!」
 曰く、この状態のコネコの毛はとても頑丈だ。
 此方が全力でかかっていったとしても殺すことにはならないので安心して欲しい、とユーリカは告げる。そのかわりに興奮状態のコネコが此方にじゃれつくと恐ろしいダメージが与えられるようだ。
 それゆえに村人達は近付くこともできないのだが、イレギュラーズならば問題ない。
 可愛い見た目に反しての攻撃力。戦い辛い、もとい相手をし辛いかもしれないがコネコもこのままでは大好きな村の人達を傷つけてしまうかもしれない。そうならないためにも、と願ったユーリカは真っ直ぐに仲間達を見つめた。
「逆立っている毛がふわふわに戻ったら、ネコちゃんは正気に戻って大人しくなります。そうなったら後はいつもの人懐っこくて可愛い子に戻るのです!」
 その後は自由に過ごしても良い。つまりはコネコと戯れたり遊んだりできる。
 ブラッシングをしてやったり、ご飯をあげてみたり、あたたかな日向で毛並みに埋もれて寝てみたりと、優しいコネコは何でも許してくれるだろう。
「とにかく、またたたたたたび……じゃなくて、先ずはまたたたたびの効果を消してあげてください!」
 お願いします、と告げたユーリカは頭を下げる。
 そうして顔をあげた少女の瞳には猫と遊べる皆に対する少しの羨望が混ざっていた。

GMコメント

●成功条件
 コネコを大人しくさせること

●ネコちゃん
 コネコという種族の猫っぽい温厚な獣。通称ネコちゃん。
 見た目は生後二、三か月くらいの可愛い子猫。ただし体長五メートルほど。
 にゃーん、としか鳴きませんがある程度の知能もあるようです。

 現場は村の広場。中央に大きな樹があり、ベンチなどもある憩いの場。
 皆様は広場で暴れているネコちゃんと戦闘をする形となります。
 判定は通常の戦闘と同じなのでいつも通りにどうぞ。ある程度の体力を削った時点で逆立った毛が元に戻り、戦闘終了となります。
 またたたたびモード時の毛はとっても頑丈なので血が出ることや殺してしまうことはありませんが、このときにじゃれついてくると皆さまでもすごいダメージを受けます。油断すると倒されます。

●戦闘後
 当日はぽかぽかの春日和。
 大人しくなったコネコと一緒に広場で過ごすことが出来ます。
 強制ではないのでご自由に。(大人しい状態でじゃれてきても怪我は負いませんのでご安心ください)

  • こねこねこねこ完了
  • GM名犬塚ひなこ(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年03月11日 21時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

サンティール・リアン(p3p000050)
雲雀
紅劔 命(p3p000536)
天下絶剣一刀無双流
リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
宗高・みつき(p3p001078)
不屈の
長月・秋葉(p3p002112)
無明一閃
シュー・レウ・ラルトス(p3p002196)
エリノア・シャノワール(p3p002319)
時計と夜を愛する猫
ロズウェル・ストライド(p3p004564)
蒼壁

リプレイ

●とげとげねこ
 麗らかな陽射しが降りそそぐ真昼。
 風にそよぐ大きな樹を中心に広がるのは憩いの場所である村の広場。しかし、其処には人っ子一人いなかった。何故なら――。
「おーあのコネコ、すっごいおっきいわねー。私の三倍ぐらいはありそう」
 広場を眺め、『天下絶剣一刀無双流』紅劔 命(p3p000536)は素直な感想を零す。『小さな思い』リトル・リリー(p3p000955)もこくんと頷き、愛らしい見た目のコネコを瞳に映した。
「わぁ、おおきなこねこさんっ。もしおとなしくなったらごはんあげたいなぁ」
「今はちょっと悪酔いしてるわね、軽く躾が必要かしら……なんちゃって……ともかく、気を付けて大人しくさせないとね」
 『無明一閃』長月・秋葉(p3p002112)も暴れるような勢いで広場を駆けまわっているコネコの様子を窺う。『小さな戦士』シュー・レウ・ラルトス(p3p002196) も同様に自分よりもかなり大きいそれを見つめた後、用意してきた小さな毛糸や紐を見下ろす。
「少しちいさかったかな」
 猫の気を引けそうな物を、と思って持ってきた毛糸はきっとコネコには物足りないサイズかもしれない。だが、『雲雀』サンティール・リアン(p3p000050) が大丈夫だと告げて胸を張る。
「なんと今日は秘密兵器を準備してきました、じゃじゃん!」
 それは大きな毛糸玉と棒に鳥の羽を括り付けた特製猫じゃらしだ。これでコネコも僕にめろめろだ、と自分の賢さを褒めたサンティールは改めてコネコに目を向ける。
「にゃああああん!」
「にゃーだって! わあこっちきた……で、デカァァァイ!!」
 毛糸や特異運命座標達の存在に気付いたらしきコネコが鳴き声をあげながら突進してきた。驚いたサンティールがさっと避けたことで大きな毛糸玉が弾き飛ばされ、猫じゃらしは踏み潰される。
「またたたたび……なんて恐ろしいアイテムなのですか……」
 本来なら玩具で遊んでくれるであろうコネコの様子に『時計と夜を愛する猫』エリノア・シャノワール(p3p002319)は小さく震えた。『蒼壁』ロズウェル・ストライド(p3p004564)もこれは危険な状態なのだと判断し、大剣を構えた。
「これ、やっぱり魔物扱いなんでしょうか?」
「う~ん、本当に猫に攻撃しなきゃいけないのか?」
 あまり気が進まないが、と『不屈の』宗高・みつき(p3p001078)は肩を竦めた。だが、これも全てを穏便に済ませる為に必要なこと。運動に付き合ってやると思えばいいのだとみつきは考えた。
 そして、純粋な興味で呟いたロズウェルは思う。共存出来ているならば討伐などしなくてよい。あくまで今回はコネコを落ち着かせる為の戦いだ。
「にゃあああ!」
「遊ぼうって言ってるみたいだよっ」
 リリーはコネコの意志を感じ取りながら身構える。シューはきっと危険な遊びになるのだろうと感じながらもこくりと頷き、命も戦闘態勢を取った。
「落ち着かせたら思いっきり抱きしめたいわね。よっし!」
「終わればモフモフ……頑張るわ!」
 命の言葉に同意を示した秋葉も拳を強く握って気合いを入れる。
 そして――コネコとの戦い、もとい遊びが始まった。

●もふもふこねこ
「さあ、ネコちゃん。こっちよ!」
 此方をキラキラした瞳で見つめるコネコを見据え返し、命は堂々と宣言する。
 偶然か必然か、コネコが命にじゃれつくように突進してきた。向こうはあくまで遊んで貰いたい一心なのだろうが、その動きは突撃めいている。
「……っ!」
「っと、大丈夫か?」
 あまりの衝撃に命が声なき声をあげる中、みつきは仲間の援護に入った。村がこれ以上被害を受ける前に何とかしなければ、と小さな決意を抱いたみつきは治癒魔術を命に施す。
 その様子を目の当たりにしたサンティールは戦々恐々としていた。
「えっちょちょちょ今更怖くなってきた」
 慌てそうになるがサンティールは呼吸を整え、指先を宙に掲げる。確か母さんが教えてくれた魔法があった。ああしてこうしてと、陣を描いたサンティールは魔力を紡ぐ。
「――焔よ、我が力と成りて! ……でき、た! できた! よし! 僕天才!!」
 何とか放出することが出来た魔力はコネコを穿った。
 更にロズウェルが次のじゃれつきに対して身構え、エリノアが魔法弾を放っていく。
 だが、対象にとってはそれも遊んで貰えているという認識らしく、尻尾をぴんと立てた。リリーは動物会話を試みているのだが、興奮した様子のコネコは先程からずっと「遊んで遊んで」としか言っていない様子だ。
「あそぶのにむちゅうなのかな。リリーもちくちくこうげきいくよっ」
 リリーは魔力銃を構え、術式を展開させる。遠距離から放たれる一閃がコネコを貫く瞬間に合わせ、秋葉も攻勢に移った。
「いくわよ! こんな危険な遊び、長引かせるのも厳しいからね」
 打刀を正眼に構えた秋葉は深く踏み込み、間合いを詰めると同時に全力の一刀を見舞う。
 逆立った毛と刃が衝突したが、コネコはまだまだ元気な様子だ。寧ろ撫でられた程度にしか思われていないのかもしれない。そんなことを感じさせるほどにコネコは強い。
 だが、此方とて本気で敵対したいわけではない。シューはあくまで遊んでいるのだと主張する為に積極的にコネコに声をかけてゆく。
「大丈夫、体力がありあまってるならいっぱい遊んであげるから」
 シューは猫をじゃらすように周囲を駆け、手にした槍を振りあげた。其処から放たれる打撃めいた一撃は見事にコネコに命中する。
 エリノアはこの調子で行けば大丈夫だと信じ、遠距離術式を組み始める。
「ネコちゃんは私達が助けてあげるのですよ!」
 猫とコネコは確かに違う種族かもしれない。それでも、同じ生き物であることには変わりはない。
 この暴走にも悪意などなく、村人達にも愛されているのならば全力を以てして相手をするだけ。大好きな誰かを傷付けてしまう悲しみの未来が訪れるくらいならば、自分達が傷付く方が良い。
「ちょっと骨が折れそうですが一緒に遊びましょうか、子猫さん」
  ロズウェルは此方に向かってきたコネコを受け止める心算で構えた。刹那、振り上げられた肉球がぺたぺたばしばしとロズウェルの身体を押す。
 普通サイズの猫ならば他愛もない行動であり、普段のコネコも力加減を分かっているはずだ。しかし、遠慮のない肉球攻撃はロズウェルの体力を大幅に削る。
「じゃれつかれるのは羨ましいが、ありゃえげつねぇな……」
 思わず呟いたみつきだったが、すかさずロズウェルに治癒の力を宿した。礼を告げるロズウェルに頷きを返したみつきは最後まで仲間の背を支えると心に決める。
 秋葉は癒し手に頼もしさを感じながら、攻勢に入り続ける決意を固めた。
「コネコ、可愛い……大きいのがまた良いかも……」
 だが、いざ愛らしい姿を目にすると心が緩む。いけない、と首を横に振った秋葉は再び刃を構え、コネコをひといきに斬り裂いた。
 それでもまだ相手は元気いっぱい。
 リリーは仲間達に痛みを与えるほどに暴れるコネコに、めっ、と叱るような声をかける。
「あばれちゃだめっ。まほうのなわでぎゅーってするよっ」
 そして、其処から解き放たれた緊縛の術式が対象の動きを阻害した。されどコネコはじたばたと身体を捩らせて地面に毛並みを擦り付ける。
「にゃあああ!」
「にゃあ、にゃーん、にゃあにゃあ!」
 楽しい、と言っている様子のコネコにエリノアも自分なりの猫語で話しかけた。
 おとなしくなあれ、という願いを込めたおまじないを掛けたエリノアだったが、起こったのは寝転がるコネコの可愛いポーズが見れたことだけ。
「か、かわいい……じゃなくって! 癒し手のふたりには肉球ひとつ触れさせないぞ!」
 サンティールは思わず見惚れてしまいそうになったが、はっとして気を取り直した。
 続く戦いの中、みつきとエリノアは懸命に癒しを担ってくれている。そんな二人を守るのが自分の役目だと考えたサンティールは魔弾を放ってコネコの体力を削った。
 秋葉とシューも仲間達の様子を気に掛けながら、着実に攻撃を当てていく。
「遊ぶのもいいけど、おとなしくなったらいっぱいなでなでしてあげる」
「にゃーん!」
 秋葉の一閃に続けてコンビネーション攻撃を与えたシュー。その呼びかけに対して、コネコはとても嬉しそうに鳴いた。
 命は向こうが此方の言葉を理解してじゃれついているのだと察し、なんてタフなのだろうと肩を竦める。
「毛皮も分厚いなら、思いっきりぶちあてた方がいいわね。その方がコネコも楽しいみたいだし」
 ね、と片目を瞑って相手を見遣った命は全力で毛並みを穿った。
 対するコネコは再び命に飛び掛かろうとしている。そのことに逸早く気付いたロズウェルは命の前に立ち塞がり、自分がそれを受け止める覚悟を抱いた。
「……これだけ大きいともふもふする前に体に潰されて窒息してしまいそうですね」
 なんて、と口にしたロズウェルにもふもふアタックが見舞われる。
 猫が好きならばこれはある意味ご褒美と言えなくないのかもしれない。だが、ロズウェルは反撃として大剣を振るい返した。くすぐったそうに、にゃん、と鳴いたコネコを見つめたみつきは息を吐く。
 既に戦い――ではなく、遊び始めてからそれなりの時間が経っていた。
 自分達が癒しを続けてはいるが、次第に仲間達の息も切れ始めている。そろそろ終わらせたいと願い、みつきは疲弊した仲間に回復魔術を放ってゆく。
「元気なのは良いが、オイタが過ぎるんだってぇの! ……ん?」
 そして、みつきはふと気付いた。同様に秋葉もコネコの変化を悟り、仲間と視線を交わしあう。
「あの毛並み、最初よりもふんわりしてない? 逆立ち方が弱くなってるみたいね」
「そうみたいなのです!」
「それじゃあきっとあとすこしだねっ」
 秋葉が問いかけるとエリノアとリリーがこくこくと頷く。
 そして、戦いの終わりを見据えた仲間達は最後まで全力を尽くすことを心に誓った。

●ふわふわねこ
 巡ってゆく戦いの中、サンティールは思う。
 子猫めいた魔物とこんな形で全力で遊ぶなんて今までしたことがない。でも、と首を振ったサンティールは目の前の光景をしっかりと瞳に映した。
「英雄は一日にして成らず。これだって立派なお仕事だよね」
 だから、めいっぱいのことをやるだけ。
 サンティールが陣を描いて魔力を解き放っていく中、エリノアも合わせて術式を組みあげる。
「はい、お仕事はしっかりやるのです! いくのですよー!」
 笑顔で応えたエリノアの魔力がサンティールの術と交じりあってコネコを貫いた。にゃんにゃん、と声をあげる猫は徐々にふにゃりとしてきている。
「おーいコネコ、そろそろ休憩だぞ~?」
 癒しに徹するみつきはそのままコネコがリラックスできるように、柔らかな声で呼びかけた。秋葉は一刀で逆立つ毛並みを穿った後、コネコをじっと見つめる。
 じゃれる姿、迫る肉球、無邪気な動作。戦っている間もそれらがずっと気になっていた。
「モフモフにゃ~……はっ!? ……つい見惚れてたわ……」
 まだ少し我慢、と自分に言い聞かせた秋葉は刃を構え直しながらぐっと掌を握る。
 皆が感じている通り、またたたたびの効果は切れかかっているようだ。しかし、コネコはまだ力が残っているらしく、ロズウェルに向けて遠慮のない肉球ぱんちをくらわせた。
 その衝撃に彼が傾ぎそうになる様を見たリリーは思わず吃驚してしまう。
「わ、だいじょうぶっ?」
「ご心配は無用です。例えどの様な戦闘であれ気を抜かないのが騎士なのです」
 その声に首を振り、ロズウェルは体勢を立て直す。攻撃の見た目に反して危うく倒れそうな場面ではあったが、みつきとエリノアがすぐに癒しに入ることで事なきを得た。
 シューはほっとした気持ちを覚えながら、戦いの終幕が訪れていることを感じ取る。
「もうそろそろかな? ネコちゃん、大人しくなってね」
「それじゃ、これで終わりにするわ!」
 シューが構えた槍の切先をコネコに向ければ、命が拳を握った。
 サンティールとエリノアは二人が決めてくれると信じ、秋葉とリリーも仲間を見守る体勢は言った。
 決着は一瞬だった。鋭い槍の一閃によって対象が揺らいだ隙を狙い、タックルを決めた命がコネコの大きな体をやさしく、それでいて強く抱きしめた。
 そして、その瞬間。
 逆立っていた毛がぱきりと割れるような音が響き、コネコの毛並みがふわふわなものに変わった。

●へいおんなねこ
 こうしてコネコは元の姿に戻り、村に平和が訪れる。
 ちょこんと樹の傍に座って首を傾げるコネコは先程までとはうって変わってとても大人しい様子だ。
「やった、無事に終わりましたね」
「ちょっと大変だったけどよかった」
 エリノアが安堵の息を吐き、シューも目を細めてコネコを見遣る。みつきは先程までの大乱闘でぼろぼろになった仲間を癒しつつ問いかける。
「みんな元気になったか?」
「何とかね。コネコにも外傷はないみたい」
 秋葉は頷き、座ったままの猫の身体を撫でた。リリーと命もコネコの身体に傷ひとつないことを確認してそっと笑いあう。その間にロズウェルとサンティールが村人に事態が収まった旨を報告しに行った。
「皆さん心配なさっていたようで、無事に終わったことを喜ばれていました」
 ロズウェルは村人達の様子を皆に伝えながら、コネコがいかに愛されていたかを感じる。またたたたび禁止令も出しておいたよ、と笑ったサンティールは猫に近寄った。
「よしよし、いいこ。ねこさん、今度はなでさせてね」
 ぽふっとふかふかの毛並みに体を預けたサンティールは夢心地。
 そのままコネコがころんと横になった様子に気付き、みつきはそわそわとした気持ちを覚えた。心置きなくコネコの毛並みを堪能する為にみつきは上着を脱ぎ、そして――。
「はぁぁ、至福じゃあぁぁ……」
 やわらかなコネコのお腹にダイブしたみつきは全身で心地良さを実感した。
 肌寒さなど、このもふもふに包まれていれば大したことはない。わしゃわしゃと身体を動かすみつきは実に至福そうだ。命は少し羨ましくなり、ちょっといいかな、とコネコに断ってから背中に登る。
「ふわぁ、あったかい……」
 大きくても猫は猫。自分を受け入れてくれたコネコをぎゅっと抱きしめた命は目を閉じた。
 秋葉もその体に寄りかかって毛並みに埋もれる。
「にゃーん」
「そうね、お昼寝日和ね。きもちいいにゃ~」
 コネコが上機嫌な様子で鳴いた声を聞きながら秋葉はもふもふを堪能した。思わず語尾に余計なものがついてしまったが、これもすべて心地好いからだ。
 リリーはコネコの口元にまわり、遊んで疲れただろうとごはんをあげる。
「はい、おいしいおさかなだよっ」
 ちいさなリリーが懸命に運んだおさかなをコネコは一口で食べた。そして、リリーに感謝を示すようにぺろりと舌を出して彼女を舐める。ひゃ、と少しだけ吃驚したような声がリリーからあがったが、ありがとうと言っているのが分かったので心は穏やかだ。
「こっちもどうぞ」
 シューもリリーに倣ってごはんをあげ、美味しそうに食べるコネコの鼻先を撫でた。
 ごろごろと喉を鳴らしているのは向こうも此方に心を開いてくれている証拠だろう。エリノアは嬉しくなってコネコに寄り添い、穏やかな時間を過ごす。
「コネコちゃんと僕達はもう仲良しですね。お友達になれて幸せなのですー!」
「……あ、ついでにコネコと皆の写真撮っておこ」
 ほのぼのとした光景に目を細め、秋葉はスマートフォンを取り出した。
 良いものが撮れたと満足している様子の彼女の様子を微笑ましく眺め、ロズウェルもそっとコネコの背に身を預けた。気が緩みそうになるが、偶にはこういった依頼も良いだろう。
「働く時は働き、そうでない時はじっくり休息を取る。良い物ですね」
 これもまた自分の信条の一つ。元の世界の陛下にもこの猫を見せて差し上げたかった、と小さく呟いたロズウェルは自然と目を閉じ、安らぎのひとときを味わった。
 サンティールは仲間の声を聞き、同様に遠いせかいを思う。ほんの少しの寂しさを覚えてしまったが何時かはきっと帰れるはずだ。それに今日のことはきっと、小さくても確かなはじめのいっぽ。
 晴れ渡る空に手を翳したサンティールは微笑み、目映い陽射しに眸を細めた。
「――あしたも天気になあれ!」
 どうか、どうか、この空のように澄んだ幸せがこの世界に続きますように。
 願いは果てなく、ちいさな思い出と共に形作られた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

やっぱりねこはかわいいですね。
ご参加ありがとうございました!

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