シナリオ詳細
風の剣姫とタイマン勝負!
オープニング
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それは、一通の手紙から始まる。
狼の獣種である『白い稲妻』シエラ・バレスティ(p3p000604)が自宅に届いた手紙に気づいて、差出人を確認する。
「あ、おばあちゃんからだ!」
シエラのおばあちゃんであるイリス・バレスティは、ラサの実家を中心に剣術道場を運営しており、幻想や鉄帝にも規模を増やしているそうだ。
なお、どの道場においても、男女比は大体半々。大人から子供まで門下生がおり、日々、剣の鍛錬に励んでいるそうである。
そんな祖母から届いた便りには、こう綴られていて。
『明日はレナが帰ってくる。一度ラサの実家に帰って来てはどうじゃ? それと、道場にはローレットに興味のある者が大勢いての。良ければ、お仲間も連れて来てはくれんかの。内容は──』
一通り紙面に目を通したシエラがまず思ったのは、母の事。
「お母さん、帰ってくるんだ」
シエラの母、レナ・バレスティは普段、各地の異変や救援活動の解決に向けて活動しており、ほとんど実家には帰って来ないのだとか。
しかしながら、このところ、ローレット所属のイレギュラーズ達が混沌のあちらこちらで幅広く活動していることもあり、仕事に余裕ができたようである。
それで、レナはローレットに興味を示し、そこに所属する娘のシエラの様子見と同時に、ローレットの腕を知っておきたいという希望について記されていた。
「何だろう。この気持ち」
胸がざわつくような感覚。
シエラは嵐が巻き起こる予感を覚えてしまうのである。
●
そんなわけで、改めてローレットへと依頼が舞い込む。
依頼者はイリス・バレスティとなっており、ラサの剣術道場へと立ち寄ってほしいというものだった。
「どうやら、皆さんに興味を抱いているようですね」
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が届いた依頼について語る。
シエラの母レナ・バレスティが実家に帰ってきたこともあり、シエラにも帰ってくるよう促しているそうだ。
合わせて、ローレットの仲間を連れてきてほしいという誘いがあったのだとか。
「混沌で数々の事件を解決に導いているローレットに、強い関心を抱いているのだそうです」
このレナという女性は、その麗しい見た目と風のごとき戦い方と合わせて『風の剣姫』とも呼ばれている。
各地で事件を解決に導いている彼女は、このところでその活躍を伝え聞く猟兵の存在感を強く感じており、その力を直に見てみたいとのこと。
そこで、レナは是非とも娘の所属するローレットとの手合わせを希望すべく、義理の母親のイリスにこの依頼を持ちかけたようである。
「レナさんが希望しているのは、1対1の戦いのようですね」
ローレットメンバーは、レナと順番に戦っていく。
戦う順番は自由だが、レナは戦いの度に回復するので順番に有利不利はない。強いて言うなら、後半の方がレナの戦法を掴みやすいというくらいだろうか。
一応、建物に保護結界などは立会人となるイリスが行うが、思いっきり戦えるようにと道場の敷地外での戦いを提案している。
なお、ラサである為、荒野での戦いだ。
模擬戦形式で、戦いに臨むレナとイレギュラーズ達には生身を保護する結界のルーンが刻まれた石が渡される。
それは負荷がかかると割れる為、勝負は石が割れた方が負けということになる。
基本的には、今回の模擬戦についてはこんなところだ。
事後は、彼女達や剣術道場の門下生達と交流を深めるといい。
「力試しが目的ですが、皆さんがどういう人か見定めようともしているようですよ」
シエラがどんな仲間達と普段、一緒にいるのか。
そこは親心として関心を抱く部分もあるのだろう。
「お母さん、激つよだから、戦いは真剣にね!」
模擬戦だけは手を抜かず、全力でレナと相手してほしいと、やってきたシエラが話す。
「そうですね。ローレットの力を、レナさんに示してあげてください」
説明の締めにアクアベルがそう語る。
それで、各地で事件の解決に当たるレナを少しでも安心させられたなら、彼女の負担も減るのかもしれない。
シエラは最後にぽつりとそう一言付け加えたのだった。
- 風の剣姫とタイマン勝負!完了
- GM名なちゅい
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2019年11月19日 22時15分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費---RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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ラサ某所。
砂漠に囲まれた街の一角に、獣種女性が運営している剣術道場がある。
「バレスティの母が俺達の実力を見たいらしいな。バレスティの里帰りついでに」
黒い和服に身を包んだ青年を見た目をした『ガスマスクイレギュラー一晃』黒星 一晃(p3p004679)が呟く。
その女性達の希望に応えて幻想からやってきた一行は、鳳圏と呼ばれる小国の和を感じさせる道場内へと入っていく。
「遠路はるばるよくきたの」
狼型獣種、イリス・バレスティが多数の門下生と共にやってきたローレットのイレギュラーズ達を迎えてくれる。
「ローレットの方々、初めまして」
そして、この夫の実家に訪れていた、レナ・バレスティが丁寧に一行へと挨拶した。
「風の剣姫! めっちゃ強そう!」
小柄な金髪少女、『魔法騎士』セララ(p3p000273)が素直な感想を口にする。
「噂に聞く『風の剣姫』と手合わせできるなんてね」
『配慮もされているな』
黒翼の天使を思わせる姿をした『穢翼の死神』ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)の言葉に、胸元の十字架に宿る神様が答える。
「うん、遠慮無く全力を出そう」
目の前の相手へと最低限の礼を示す為、また、今の自分の実力を把握する良い機会だともティアは捉えていた。
「うーん、負けそう!」
一方で、オッドアイの狐の獣種であるリアナル・マギサ・メーヴィン(p3p002906)は、急遽クリティカル型へと転向しており、まだスキルなど調整がうまくいっていない……という建前を見せつつも。
「最初から負ける気で行ったら、そりゃ負けるよね。勝ちに行きますちゃんと」
運が良ければいけるかもしれないという本音も、リアナルは覗かせていた。
「流石シエラの母君だな」
天義出身の騎士、『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)もまた、彼女から漂う実力者としての闘気を瞬時に感じ取る。
「強者と相まみえるまたとない好機。全身全霊でもって、挑ませて頂きます!」
「ふふ、楽しみにしているわ」
目の前の女性との手合わせに意気込みを見せるリゲルに対し、ローレットの力を見たいと感じていたレナも嬉しそうにしている……のだが。
狼の獣種『白い稲妻』シエラ・バレスティ(p3p000604)の獣種の血は父方の祖母譲りらしいが、色の髪や緑色の瞳から見るにやはりレナの娘なのだろう。
そんな娘のシエラは山籠りでの熊との格闘。新たなる技の習得。燃える心、そして――今日という日を迎えて。
「訓練、間に合わなかったなぁ~……」
「あなたね……」
灰のようになって消えかかっていたシエラに、レナは大きく嘆く。
「各地を放浪しているとは言っても、娘の事が気になるのが親心という事よねぇ」
銀色の長髪、凛としながらも人当りのよい『Righteous Blade』アルテミア・フィルティス(p3p001981)が呟く。
「仲良くさせてもらっているし、シエラさんは大切な仲間だってしっかりと伝えないとね?」
手合わせとして、自身の剣術がどれほど通用するのか分からないとアルテミアは見ているが、全力で挑むだけだと彼女も考えている。
それに、相手は超一流の剣士。この手合わせで得るモノも多いはずだ。
「一応、確認ね」
レナが望むは、ローレット勢との1対1の勝負。
互いに生身を保護する結界のルーンが刻まれた石を持ち、それが破壊した方が負け。
対戦の合間は小休止を入れ、レナは体力を万全にしつつの8連戦だ。
一方のローレット勢は、交代でレナに戦いを挑む。
後で戦う方が戦術は見えてくるから有利とあって、最初と最後を除いてじゃんけんで決めることに。
「え? 私の為に私の試合を最後に?」
全員の総意で、最後に出るのは実の母親と戦うシエラに決定したのだが。
(やばくない? やばくなぁ~い?? このままゴミの様に転がされ続けてフィナーレジャナーイ??)
当人はクールを装いながらも、内心では汗だくになっていていた。
その一方で、1番手に名乗りを上げたのは、長い紫の髪で右目を覆った『拒絶聖域』道子 幽魅(p3p006660)だ。
ヒーラーである幽魅は生来のネガティブさもあり、自らに勝ち目はないと最初は考えていた。
「私の……役目……は……」
なるべく、相手に技を出させ、手の内を見せることか。
それとも、ローレットメンバーとしての矜持を見せることか。
違うと、幽魅は首を横に振る。
自分も、この場に呼ばれたのだ。貧弱なヒーラーとしてではなく、交戦相手として。
「だから……勝つ……! って……思うんだ……」
そう決意した幽魅は、視界の違う両目で風の剣姫を見つめるのである。
●
模擬戦は剣術道場への被害も考慮し、立会人となるイリスが敷地に保護結界を張りつつ敷地外の荒野で行う。
「さあ、いくわよ」
すらりと背の刃『天狼牙』を抜くレナの剣技は、バレスティ一刀流・皆伝。
それを前にし、ヒーラーである幽魅は自らにできる最善手を考える。
内心、おどおどしてはいるが、タイマン勝負に回復など必要ないと思考は冷静で。
「だから……持てる……力の……全部を……!」
特攻していく幽魅は自身の性格による極度の拒絶反応によって、向かい来るレナを強く弾き飛ばす。
「これは……」
レナの石にダメージはない。
始めからこの少女は、自分を倒す為に立っているわけではないとすぐにレナは悟る。
そこに向かいくる幽魅。元より戦闘センスを持たない彼女はただ、がむしゃらに走ってレナへと衝術を発した。
「止まって……ください……!」
――逃げるな……怯えるな……諦めるな……!
時にトリッキーな動きで発する幽魅の一撃に、レナは痺れを覚え、体を揺らがせる。
彼女の気が済むまでそれを受け止めようとレナは通常攻撃のみで応戦し、気迫で立ち向かってくる彼女の覚悟を見届ける。
「幽魅ちゃん、がんばれ!!」
それを見ていたシエラは小さく笑ってから、応援する。
「これで……!」
幾度目かの衝撃。レナも気力が尽きかけた幽魅に相応の返礼を最大の力で応える。
「あなたの覚悟、見せてもらったわ」
上段から振り下ろされる一撃を受けた幽魅は膝をつき、持っていた石は音もなく砕けてしまった。
「そこまでじゃ!」
「……わあぁぁ~~幽魅ちゃ~~ん!!」
イリスの声で勝負がつくと同時に、飛び込んだシエラは彼女へと泣きついていく。
その目は、ただでは終わらないと何か策を秘めつつも、とりあえずは頑張る仲間の姿に癒されるシエラなのである。
小休止の間、シエラが義理の娘のレナを癒し、2番手ティアが前に出る。
動きは幽魅との交戦で見てはいるが、もう少し見定めたかったのが本音。
『無理はせんようにな?』
「無理はしないよ、無茶はするけど」
もちろん、ティアは全力で勝ちに行くべく翼で少し距離を保ち、一撃の赤、二撃の黒による破滅の一撃を打ち込む。
それを風の鎧で威力を軽減して受け止めたレナは刃の先に気を収縮させ、素早く撃ち貫く。
「まともに受けるわけにはいかないわね」
『ならどうする?』
ティアは相手にない翼を使い、空中から攻める。
狙うは、敵後方上空。僅かに先手を取れれば勝機は見えるとティアは判断し、距離を詰める。
魔術と格闘を織り交ぜた、奇襲の一撃。
それに目を見開いたレナは刃を鞘に収め、全身から風を放つ。
魔力を伴う拳の連打に合わせ、放たれる魔力の奔流。
頭上から襲い来るそれらの攻撃に耐えきったレナが居合からの一撃をティアへと叩き込む。
追い込まれたティアは赤黒破滅の連撃を打ち込むと、レナは全身を燃え上がらせた。
彼女はそれを気にかけることなく、居合による風の刃によってティアの体を切り裂かんとする。
自らの代わりに石が砕け、ティアは大きく息をつく。
「お手合わせありがとう。またもし機会があるのならお願いしたいね」
「ええ、またの機会を楽しみにしているわ」
レナもそう答え、ティアとの再戦を望むのである。
3番手、運頼みでこの勝負に挑むリアナルは初手、弓の形をした『マナースター』を構える。
対するレナは飛び込んで距離を詰めてくるが、それを誘ったリアナルは自らの血で物理の刃をなして切りかかってきた。
奇襲での連撃を浴びせかけ、リアナルは相手の体力を削る。
初手さえうまく連撃が通れば、こちらが有利になるだろうと考えていたリアナルだったが……。
間違いなく、血晶散華での不意打ちは功を奏しており、呪いに侵されるレナはその動きを鈍らせている。
リアナルはその超特攻型のスタイル故、一気に攻撃を畳みかけようとしていく。
「……なるほど」
レナはその呪縛に耐えながらも、一度風の刃で彼女を傷つけ、あとは居合の連撃で切りかかる。
戦いが長引けば、リアナルの方が不利だ。
それを把握してなお、レナは正面からその戦法に対抗し、一気に勝負を決めに向かう。
数度目のレナの居合がリアナルを捉える。
自らの反動や出血も合わせ、ダメージが重なっていたリアナルの石の方が先に砕けてしまう。
「……なに、儂以外にも強い者はいる故な」
運任せだったリアナルを、ここはレナが力でねじ伏せた形だ。
続く4番手、一晃。本人も想定の中ではやや早い登場だ。
「墨染鴉、黒星一晃、一筋の光と成りて、この刃を剣姫に示す!」
存分に剣を振るういい機会と取られていた一晃の戦術は全力、高火力で相手をねじ伏せるというもの。
速度をもってして彼は高く跳躍して突撃し、速度を破壊力に転化して切りかかっていく。
「風の剣姫ならば、俺の刃すらも見切れよう。……見切らせる気は無いがな!」
この一戦を楽しむ構えの彼は自身の強みである速さ、命中、攻撃力をもってして、風の剣姫に挑む。
基本、間合いに入っての切り合い。リアナルとは違った方向に特化した能力で攻める一晃のスタンス。
レナも素早いが、初速は一晃の方が速い。
「その能力はさすがね」
自らの防御を捨ててまで高めた力をレナも正面から受け止めはせず、鋭い突きを繰り出すことで一晃に爆発を浴びせ、その体を業炎に包む。
ならばと、一晃も変幻邪剣で相手を惑わそうとする。
その攻撃に恍惚とさせられるレナは素早く振り下ろしを叩き込むが、一晃はさらに飛びかかってからの一閃でレナに反撃を見舞う。
「……まいったわ」
そこで、初めてレナが割れた自らの石を見せて敗北を示す。
「おおっ!!」
「カッコいい……!」
ついに、レナに土をつけたと、セララやシエラ、門下生達がどよめく。
だが、一晃もこれで倒せなければやられていただろう。
「俺の刃は他人がいてこそ輝く」
この力はシエラを含め、皆がいなければ、強みは死んでしまう。
「娘は母程強くはないかもしれん……が、共に戦うのなら何より頼もしい娘だ」
「その言葉、とても嬉しいわ」
負けたのに、まるで自分のことのように喜ぶレナの姿がとても印象的な一幕だった。
●
摸擬戦も後半戦。
5番手、重傷を負っての参加であるリゲルが礼儀正しく一礼し、勝負に臨む。
「不甲斐ない姿を見せるわけにはいかない」
ローレットとして、そして、シエラの友人として。
相手が二刀流の剣士と見たレナはまず、距離をとったまま収縮した気を放つ。
すでに、相手の技はある程度仲間の交戦で確認済みだが、実際にその身で確かめるべくリゲルも銀閃の煌めきを纏う。
相手の一撃を浴びた彼はさらに距離をとって、抜き身で断罪の斬刃を放って応戦する。
リゲルの身体に爆発が起こり、炎が引火する。同時に、レナも怒りを覚えて接敵してきた。
「剣で負けてはいられない!」
間合いが詰まれば、リゲルは相手の上段からの振り下ろしを2本の剣で受け止めようとする。
ただ、思った以上に一撃は重く、彼の身体にまで斬撃は及んでしまう。
衝撃を全て吸ってくれるはずの石はすでに、亀裂を走らせてている。
――食らいつく。勝ちを取る! 志で負けてはいられない!
「シエラと肩を並べて戦場に立つためにも、強く在らねばならないんだ!」
できるだけ、その技を体で受けたいと感じるリゲルは再度、断罪の斬刃で応戦する。
毒に侵された身から血を流し、さらに、怒りを覚えたレナはすかさず居合からの連撃を浴びせ、勝負を決めてしまった。
「いい勝負だったわ」
「素晴らしい腕前でした。俺もより一層、精進致します」
完敗ではあったが、リゲルは一礼して相手に敬意を見せたのだった。
6番手はセララ。
「強敵との闘いって燃えるよね。やるからには目指せ勝利だよ!」
予測警戒を怠らず、幅広い戦略を持つレナ。
事前の情報収集に、仲間との交戦を見て対策研究していたセララは、間合いを詰めて聖剣を十字に振るう。
セララも手数を増やして応戦する。増やした手数は溜めの時間に当て、強力な一撃を打ち込んでいく。
2度の攻防の後、レナは笑って。
「やるわね……」
風の刃を浴びせ、セララの勢いを削ごうとしてくる。
「レナさん強いね! ボクもめっちゃ燃えるし、楽しいよ!」
それを受けたセララが真横に剣を薙ぎ払うと、相手は軽やかに跳躍してその身を翻らせた。
ただ、相手の戦略を研究していたセララは総合力と戦略も兼ね、飛び上がったレナ目がけて雷光を纏った斬撃を浴びせかける。
「ううっ……」
呻くレナは落下の勢いに任せ、上段から強烈な振り下ろしをセララへと叩きつけた。
「ぐぬぬ……! 強い!」
石に入る亀裂に気づいたセララは次の一撃に全力を賭けて。
「勝ってみせる!」
相手の連撃に対し、セララは宙に舞う。
空中の無理な軌道変更を行い、動きの幅を広げてレナを攻め立てる。
しかし、レナには気を収縮させて繰り出す一撃がある。
セララはそれを察し、一度低空に降りてからレナの体を切り上げ、今度は空中からの連撃によって地面に叩き落とす。
「まいったわ、完敗よ」
相手を研究し尽くしたセララの勝利。
これには、仲間だけでなく、見学していた門下生からも割れんばかりの拍手が起こっていた。
じゃんけんで最後となったアルテミアもまた、傷を負っての参加だ。
「アルテミア・フィルティスよ」
名乗りを上げ、礼儀を示す彼女は、細剣の二刀流。
すでに、仲間達が交戦した後。重傷状態とはいえ、アルテミアとしては有利な状況だが……。
相手の太刀筋の鋭さ、速さはすでに目の当たりにしている。
その為、アルテミアは眼力を働かせ続け、フェイントを交えながら炎を纏わせた剣で剣舞を舞い、相手の魔力を奪い取り、ヒットアンドアウェイを繰り返す。
気力を奪われれば不利と察したアルテミアが離れたタイミング、レナは一度収縮した気を撃ち出す。
遠距離攻撃がある分、アルテミアは不利を察するが、気力を奪いつくせればこちらの勝ちだ。
できる限り、防御、回避に注力するアルテミア。
ただ、彼女には些か相性が悪い相手だっただろう。
剣魔合わせた一撃での奇襲にも、レナはしっかりと堪えて。
すかさずカウンターとして居合からの連撃を叩き込み、アルテミアを圧倒して見せたのだった。
「お疲れ様」
負けて悔しいはずのアルテミアだが、一礼は忘れない。
「でないと、武家貴族の名折れだからね?」
彼女なりの矜持がそこにはあるのだろう。
●
満を持しての登場、シエラ。
「頑張れシエラ! 君の本気を見せつけてやれ!」
リゲルを含む仲間の声援もあり、奮起するシエラだが。
「ふふ……お母さん、私はついにお母さんを超える最強の剣士になってしまった……私が勝つ!!」
「ふふ、期待しているわ」
開始直後はレナも動かない。どう娘が攻めてくるか気になっているのだろう。
眼力を働かせたシエラは後方からまず、両手の指輪から10本の魔力導力線を放ち、レナを縛り上げようとする。
「……っ」
呻く母親へ、シエラは手にする幻狼から発生する風を吹かせ、勢いよくスカートを捲ってみせた。
「やっ……!」
さらにシエラはくすぐり、胸揉みとやりたい放題。
身悶えする母へとシエラは一気に攻め入り、鋭く両剣を突き出す。
「どりゃあぁぁー!! 穿孔滅牙!! くらえーーーー!!!!」
一点集中の一撃を撃ち込んだシエラの攻撃は止まらず、ハムスターをその胸に忍ばせて可愛らしさアピール。
「この究極存在に、風の剣姫であるお母さんが気付かない筈が無い!」
しばし、可愛らしいハムスターへとうっとりとしていたレナだったが……。
「ええ、とっても可愛いわね……」
ぶちっ。
何かが切れた音がした。
笑みを浮かべるレナは脇に置くと、危機を察したハムスターが驚いて逃げ出してしまう。
母親の額には、血管を浮かび上がらせていて。
「勝てばなんでもいいなんて、教えたことがあったかしら」
気を打ち込んで爆発させたレナは、そこからはもう圧倒的な力で娘を完全に叩き伏せてしまって。
シエラの石はものの見事に砕け散っているが、レナの怒りは止まらない。
「その曲がった根性、叩き直してあげるわ……!」
「そうじゃな……」
祖母イリスもこれには呆れ、遠慮なくやってくれと頷いて見せた。
「ごめんなさい、おかあさーーーーん!」
ぼろぼろになりながらも、シエラは母の折檻に大声で謝る。
ローレット勢は2勝6敗。
2勝できただけでも、一行は成果と見てはいたものの。
その幕切れに、同行した仲間達も、門下生達も唖然としてしまっていたのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPはじゃんけん運にも恵まれましたが、
相手の戦略を見定めた策を立てて勝利したあなたへ。
おばあさんであるイリスさんの関連が少し薄い状況もあることと、
シエラさんの戦いぶりの影響もあって、おかあさんが大変憤慨しておりますので、
関係者依頼として、引き続きのシナリオを想定しております。少々お待ちください。
12月中に1本運営予定です。
今回はご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。なちゅいです。
今回はご依頼、ありがとうございます!
リクエストシナリオ、精一杯頑張らせていただきます!
●目的
レナ・バレスティと1対1で勝負すること。
●相手
◎レナ・バレスティ
30代、人間種。シエラ・バレスティ (p3p000604)さんの母親にして、放浪の剣士です。
超一流の腕前を持ち、『風の剣姫』という呼び名を持っています。
・孤月連斬……(A)物近単・連
居合いからの返す刃での納刀まで含めた連撃。
・孤月飛翔斬……(A)神近列・崩れ・出血
居合いからの風の刃を放つ。
・穿孔滅牙……(A)神遠貫・業炎・乱れ
刃の先に強烈な気の力を収縮させる事により貫いた部分を爆散させる。
・狼牙月光斬……(A)物至単・ブレイク
上段の構えからの強烈な振り降ろしであり最高の威力。
●NPC
○イリス・バレスティ
50代、狼型の獣種女性。
シエラさんの父親の母。祖母にしてバレスティ家当主であり剣術道場の統括者です。
なお、レナさんは元道場の門下生であり、義理の娘に当たります。
●状況
イリスさんが統括している剣術道場に向かい、レナさんが1対1の勝負を希望していますので、受けていただきますよう願います。
模擬戦は、生身を保護する結界のルーンが刻まれた石が渡され、それが割れた方が敗北となります。
模擬戦は敷地外で行います。敷地にはイリスさんが保護結界を張りますので、飛び道具、神秘の術を使った攻撃も問題ありません。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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