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シナリオ詳細

ラプンツェルは退屈

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ある世界の、あるお姫様
 蒼空の広がるその下、コンデンスミルク色の大きなお城の群れがありました。
 王家一家の居住地です。
 その中にどこよりも背の高い搭が群れの外れに建っていました。
 その巨搭は深い森に程近く、常に開かれています。なぜってお姫様のためです。
 耀くプラチナブランドの髪は生クリームを絞り出したような巻き毛で身長よりも長く、瞳はストロベリーホイップにキャラメルを加えたダイクロイックアイで悪戯な猫を連想させるアーモンド形と大変可愛い女の子がお姫様です。
 お姫様は生まれつき、足が悪くて一人で立って歩くことも出来ないのです。
 そんなお姫様の趣味は、物語を聞くことです。
 それもとびきりスリリングでドキドキの冒険物語が大好きで色々な人に「聞かせて! 聞かせて!」とせがむのです。
 王族一家はこのお姫様が愛らしくて、ちょっと困っていました。
 だってお姫様は末っ子でまだ六歳だから悪いことと良いことは同じです。
 なので冒険物語が下手な人は大キライで、口を開かないでと怒ってお付きの兵隊さんに言い付けてしまいます。
 すると兵隊さんはポーンとその人の頭を空の彼方へ飛ばします。
 これが、困りごとでした。あまりにもいっぱい飛ばすのでお城の中の人が少なくなってしまうのです。
 お城の中の人が少ないとお世話する人がいないってことですからね、一大事です。
 そこでお王様は高い高い搭を建てて、お姫様を閉じ込めて言いました。
「良いかい、ラプンツェル。これからは旅人さんから物語を聞くのだよ」
 それからお姫様は森を抜ける旅人たちに物語を聞くようになりました。
 そしてやっぱり物語が下手な人が大キライなので、今度は搭から落とすことにしたそうです。
 めでたし、めでたし…………?


 あなたたちが図書館に踏み入ると机で読書を楽しむ少年がいた。境界案内人で双子の片割れ、カストル・ジェミニだ。
 彼はあなたたちに気付くと読んでいた本に栞を挟んで、それとは別の本を胸の前で見せる。
「今回、君たちに救って欲しいのはこれだよ」
 繊細で華美な装丁がなされた本をゆっくり撫でてカストルが説明に入る。
 可愛そうな姫様のために、ドキドキハラハラの冒険物語を聞かせて欲しい。
 しかしお姫様は語りが下手だと、傍らの近衛兵へ命令してその人を搭から落としてしまうのだ。
「救う方法は二つ。一つはオススメ、お姫様のオーダーを聞くこと。二つ目はオススメしないけど、このお姫様を殺しちゃうこと」
 ちょっとだけ声のトーンを落としてカストルが告げる。近衛兵は三人だけで、お姫様は丸腰だから君たちなら、と。
 気を取り直すように頭をふったカストルが、あ、と何か思い出した声を出してあなたたちを見た。
「ないと思うけど、落とされても良いようにしてね」
 それじゃあ行ってらっしゃいと、あなたたちは見送られた。

NMコメント

メルヘン成分が少ないと感じたので自分で書きました。

お姫様のために、スリリング&デンジャーな物語を語るシナリオです。
今までの経験を存分に面白可笑しく語ってください。
もちろんお姫様は天然の悪属性なので殺してしまっても大丈夫です。
近衛兵×3は一般人が強化されたくらいの強さです
武器はレイピア的な剣だと思います。
あと万が一、落とされても良いように対策あると良いかもしれません。
よろしくお願いいたします

  • ラプンツェルは退屈完了
  • NM名桜蝶 京嵐
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年11月14日 22時30分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)
我が為に
ソア(p3p007025)
無尽虎爪
香宮夜 凪(p3p007556)
メンヘラクソ女
神野・聖(p3p007770)
「正義」の魔王

リプレイ

●物語の始まり
 案内された応接間で『ゲーム上手』ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)は目の前に座る少女、ラプンツェルを見て少しだけ面食らった。予想よりも幼い。
 布がたっぷりのドレスに身を包んだ身体は細く車椅子のフッドレストに届かない足は裸足だった。
 周囲も慇懃無礼な顔した使用人が数人と事前に聞いていた近衛兵の三人。それらが扉の前に待機する。
 隣を見れば『雷精』ソア(p3p007025)と『メンヘラクソ女』香宮夜 凪(p3p007556)も驚いた顔をしていた。
 『「正義」の魔王』神野・聖(p3p007770)だけが心当たりがあるのか、それとも勘づくことがあるのか、嫌そうな顔をした。
「ねえ、誰からお話してくれるの?」
 ラルフの咳払いよりも早く鈴を転がすラプンツェルの声が空白に差し込まれた。期待に満ちた眼差しを受けてラルフが私から行くよと立ち上がる。
「まずはこちらを。冒険の手引き書だよ」
 恭しく混沌見聞録を差し出せば彼女はまるで宝物を預かったかのようにはしゃぎ、本をシャンデリアに翳してみせた。それを嗜め話を始める。
「大氷壁、まさに氷の妖精たちの為にある場所を訳あって壊さねばならなかったのだ。それを壊したら、自分も飲み込まれると教えられていても」
 まあ、とラプンツェルが開いて貰った該当のページと比較しながら興奮した声をあげる。どうやら上手く引き込めたようだ。ラルフが大袈裟な手振りをつけ始める。
「……とまあ、結果的には飲み込まれずに済んだのでここにいるんだけどね」
 ラプンツェルが素敵な冒険だったと言いかける直前で部屋の丸窓から風が吹いてページを捲るだけ捲って去っていった。
「ねえ、このお話もお願いして良い?」
 本を閉じようとしたラプンツェルがねだり、彼女の隣に膝をつき確認したラルフが分かりましたと朗らかに笑って始める。
「この地域は機械産業が盛んで、だからなのか森も鉄クズを集めたみたいだったなあ」
 そんなぐちゃぐちゃの森へ姫と変わらない歳の子どもが入ってしまったのだ。
 そう告げれば彼女は車椅子の手すりを掴み身を乗り出して聞き入った。
「森の中には凶暴で大きな動物やモンスターがたくさんいてね。それに入った子どもも、どこにいるのやら。しかし仲間と協力して動物を殺さずに、でも攻撃されないように遠ざけて。
そして子どもも、仲間が見つけてくれたから」
 ぱちぱち。小さな手から拍手が聞こえてラプンツェルが笑う。
「良かった、見つかって! あなた、お話上手なのね」

●時には演じて
「次はボクと凪さんだよ! よろしくね!」
 凪と手をつないだソアが意気揚々と立ち上がって一礼をする。つられるように立った凪も一礼してからソアと距離を取ってからラプンツェルを振り向く。
「うちらは演劇みたいな形でするからさ、観ててよ」
 そんなの初めてだわ、とラプンツェルが喜声をあげてキラキラとした眼差しを二人の女性へ向ける。
「昔々……ああ、ボクとっても長生きだからね。お姫様のお父さんのお父さんが生まれるよりもずうっと昔だよ。
ある街が悪い吸血鬼に悩まされていたんだ。年に一度、街一番の可愛らしい女の子を差し出せって。
可哀そうに、選ばれた女の子を生き血を吸われて殺されてしまうの。街の人達はそれはもう悲しんだよ。
けれどさもないと街中の人間の血を吸い尽くすって脅されて仕方なくね……」
 ソアの話に合わせて凪がラプンツェルとソアへ襲うフリをして声をあげて抱きつく。それにラプンツェルが笑ってわざとらしい悲鳴で応えた。
「見かねたボクは悪い吸血鬼の城に乗り込んでドッタンバッタン! 最後には雷をびりびりどーん! 黒焦げにやっつけてやったのさ」
 ソアがラプンツェルと凪の間に入って切りつけるフリをすれば、凪が飛び退いて戦い合うフリ、それから凪が倒される。
「けどさ、この話には続きがあるんだ。ねえ、吸血鬼って死ぬと思う?」
 ラプンツェルは小さな手を頬へ当てて考え、やがて思い至らなかったのか、困った顔をして二人を見上げる。
「 ニンニクが嫌いって話なら……」
「そうなんだよ。残念だけど、そう簡単には死なないんだよね。力は奪われちゃっただろうけど」
 凪の同意とともに背中に紅い満月が昇り、周辺から黒い塊が生まれ、それは徐々にコウモリとなる。ラプンツェルの二色に煌めく瞳に驚きが浮かぶ。
「わがままなお姫様が居たんだってさ。気に入らない人を塔の上から落としてしまう、わがままなお姫様が」
 今度は凪がお姫様を演じているのか、ツンとした顔と態度で何かを落とすジェスチャーをする。ラプンツェルの細眉が僅かに寄る。
「ある日そのお姫様の元に現れた、蝙蝠を連れた吸血鬼の女がその子にこう言ったんだ。
『我儘はほどほどにね。…さもないと———』」
 こくん、喉が唾を飲んだのだろう。ぎゅうと力強く握った拳は白い。
「……お姫様がどうなったのかはうちは知らないよ。でもまあ、わがままを続けてたら……よくない事が起きてたんだろうね、多分」
 後を引き継ぐように、黒衣の勇魔王が立ち上がった。

●お姫様の秘密
「ある所に足が不自由ですが家族の寵愛を受ける幼き姫がおりました。
しかし姫は幼き暴君であり「悪」でありましたので、暇つぶしである冒険物語の語り下手を容赦なく殺してしまう悪癖があったのでした。
その様子を見ていた神は異界の冒険者を4人派遣しました……。彼女が更生してくれる事を願って」
 ラプンツェルの前で膝をついた聖は淡々と言葉を紡ぐが、その語りに深い感情は窺えない。
 しかしそれで良かったのだろう。ラプンツェルはもう、ソアと凪の話で気づき始めている。
「四人の内、三人は姫を憐み言葉を尽くし更生させようと奮闘しました。
しかし姫は一向に更生してくれません。なので最後の一人が言いました。
『姫、どうか軽々しく人を殺す事を止めてください』
けれど、姫は聞き入れてくれませんでした。仕方ないのでその冒険者は姫を殺し世界を救いました。……めでたしめでたし」
 涙をため込んだラプンツェルの瞳は強く強く、聖を見ていた。聖もまた、そんな彼女を見つめている。
 どれほどの時間が経過したのか。堪りかねたラルフが聖へ声を掛けようとした時、小さな声が重苦しい空気を揺らした。
「あのね、その話にはひとつだけ嘘があるの」
 ラプンツェルだった。親とはぐれ、大人に声を掛けるも足早に立ち去られて頼り所のない子どもの顔をして唇を開く。
「……わ、わたし……わたし、もうずっとパパ様とママ様に会ってないの! お姉様とお兄様はいつも会えるのに、わたしだけいつも、会って貰えないの!」
 それだけで特異運命座標|《イレギュラーズ》には充分だった。
 ソアがその小さな身体を抱きしめればラプンツェルの頬から大量の雨粒が流れ、反対側から凪が頭を撫でてやる。
「……幼く歩けない娘には価値がない、か…………」
「政治的には妥当な判断かもしれないが……」
 ラルフが苦々しく呟けば聖が重く頷いて窓の外を振り仰いだ。
 家族に会えない物悲しさを物語を聞くことで紛らわした幼く歩けない娘。
 それに付け込み、閉じ込めて会わなくて良い理由にした両親ときょうだい。
 そうして独りぼっちの心が、悪を生んだ。
●物語の終わりには
 ラプンツェルが泣き止む頃、改めて四人とお姫様は約束をした。もう誰も塔から落とさない約束。
「……ねえ、そこの窓をいっぱい開けて」
 不意にラプンツェルが言った。指差された方向を見れば丸い窓は半分ほど開いていて風が通る。  一番近くにいたラルフがもう半分を開くと、今度は離れてと言われる。
 ラプンツェルが車椅子の車輪を掴み、ゆっくり窓の前に近寄る。ぎこちない手つきと車椅子の構造から彼女が自分の意志で移動できたことは無いのだろう。
 そっと頭に手を伸ばし、そして次の瞬間。

 ラプンツェルを頭に乗っていた小さな王冠は外に投げ出され、風に乗ってどこまでも飛んでいったのだ。

「ラプンツェル!?」
 凪が驚いて王冠を投げ捨てたラプンツェルへ駆け寄る。それに投げ捨てた本人は胸を張って笑った。
「わたし、決めたの。あなたたちに着いて行く。それでもっとたくさん、物語を『体験』するのよ!」
 これには全員が度肝を抜かれた。そもそも物語の登場人物を連れて戻れるのか。誰もが疑問だ。
「……分かった、やってみようよ!」
 ソアがラルフと聖、そして凪を真っ直ぐに見つめて言った。
 出来ないかもしれない、でも出来るかもしれない。誰かが試さないと分からないことなら、自分たちがやってみれば良い。
 ああやって聖とラルフが部屋を見渡す。
「なら、部屋の前で待機する兵をどうにかしないとな」
 ああ、とラルフが武装を確認しながら同意を示して凪へアイコンタクトを送る。一気に緊張感の増した所へ少女の柔らかい声がする。
「それなら大丈夫よ。あのね、真ん中の床に通路があるよ」
「なるほど隠し通路か! 貴族や王族ではありだちな設備だ」
 長く様々な人生を辿ったラルフが察してツールベルトから工具を取り出して床を調査すれば、大人二人が簡単に通れるスロープが発見された。
 まず聖がラプンツェルを抱き上げ、ラルフが車椅子が抱えて滑っていく。最後に凪とソアが滑り、塔の部屋は無人となった。
 今まで白亜の塔で暮らしていたラプンツェルが、生まれて初めて外に出た。
 出て、住んでいた高く聳える寂しい塔を見上げる。
「……さようならも、ありがとうも、違うから。だから」
ーーめでたし、めでたし。

帰りついた図書館には、四人の冒険者と一人の案内人がいた。

成否

成功

状態異常

なし

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