PandoraPartyProject

シナリオ詳細

見下ろす日々に花束を
見下ろす日々に花束を

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●音だけでは届かない

 それは密かな恋でした。
 この教会に住んでいた、黒い髪の可愛いシスター。
 触れれば手折れてしまいそうな、儚い笑顔の愛しい人。
 雨の日も風の日も、私は貴方をこの場所で、ずっとずっと見下ろしていて。
 彼女と目が合った日は、早鐘のように胸がときめいたものです。

 しかしここは神の御前。神に身を捧げた彼女と侍者の私では、この恋は報われない。
 それどころか、とうとう最後まで一言も声をかける事が出来なかった。
 貴方が教会に戻って来ないと気づいた時も、この身体はあまりに無力で。
 ただただ慟哭の鐘の音を鳴らす事しかできなかった。……だからきっと、シスターは私の気持ちに気付いていない。

――嗚呼。なのにこの焦がれるような想いは、枯葉のように私の心へ降り積もるばかり。
 特に秋も深まるこの季節……彼女が特に愛した、庭のカランコエが花開くこの時期は。
 あの花咲くような優しい笑顔に逢いたくて、胸の奥がぎゅっと締め付けられるのです。

 逢いたい。
 もう一度、彼女にあの花をお届けして……願わくば、私の気持ちを伝えたい。

 その思いが強くなるほど、私は変な夢を見るようになりました。
 無数の本が並ぶ室内。ここは、いったい――?

●愛を確かめるために
「んー……まいった。こりゃ《繋がった》な」
 おぅい。テーブルにつっ伏すように伸びきっているのは、
 今日も今日とてやる気なさげな『境界案内人』神郷 蒼矢(しんごう あおや)。
 ひらひらと片手を振って、その場に居合わせた特異運命座標の視線を集める。

「付喪神(つくもがみ)って知ってるか? 道具も百年使われると魂持つっていうアレだ」

 混沌にはその付喪神はもちろん、当たり前のように無機物のような姿の旅人が受け入れられている。
 何を今更といった反応に、蒼矢は「だよなぁ」とゆるーく笑った。

「今回の依頼は、その付喪神の願いを叶えてやる事だ。
 教会の鐘が、そこに奉仕してるシスターに恋心を抱いたらしい。
 ……んで、その思いを花束を贈って告げたいらしくてね」

 取り出されたのは一冊の古本。茶色い革の装丁で、何度も読み返されていたのか
 ページの端が所々擦り切れてはいるが、それ以外の痛みはない。

「最近自我に目覚めたらしくて、自分の事を人間の侍者だと思い込んでるし、
 好きの気持ちをこっちにゴリ押してくるしで……なんだか放っておけないんだ。頼むよ」

 光の灯った片目を押さえながら、蒼矢は本の表紙を優しく撫でた。
 この男の行動原理は、何かの歩みをうながす事だ。
 たとえそれが、どんな結末になろうとも――。

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 秋風が恋心を運んできました。最後まで見守っていきませんか?

●目的
 ベル(付喪神)のために花束を作り、
 シスターの元に連れて行ってあげる。

●登場人物
 ベル(付喪神)
 ぼんやりと自我を持ってしまった教会の鐘の付喪神。
 抱えて持てるほどの大きさです。小さな教会のものだったので、聖堂クラスの大きさや威厳はありません。
 シスターのまわりに仕える人間を観察し続けた結果、無意識のうちに自分が教会の侍者(神父のサポートをする人)だと思い込んでいるようです。
 ツタに覆われた廃教会で、姿を見なくなったシスターの事を想っています。
 道具なので歩けません。シスターの元に向かう際は、運んであげる必要があります。

 シスター
 ベル(付喪神)の想い人。カランコエの花が好きで、花と同じ色のオレンジのリボンで髪をくくっているのが印象的な黒髪の女性でした。
 20代半ばまでお屋敷にいましたが、ある日を境にぱたりと姿が見えなくなったそうです。

●世界観
 一番近いのは幻想です。レンガ造りの建物が並び、文化レベルは中世ヨーロッパくらい。
 剣はあるが魔法はない。けれど、今回の付喪神のようにまれに不思議な現象が起こる世界のようです。

 特異運命座標はもちろん、この世界に行っても自由にスキルやギフトを行使できます。

 ベル(付喪神)のいる廃教会は、小さな街の中にあります。
 教会自体が廃れた原因は経営難らしいのですが、シスターはその前から姿を見せなくなったとか……。

●その他
 花束を作ったり、恋愛経験の薄いベル(付喪神)にアドバイスをしてあげたり。
 シスターの所在を探して、運んであげる必要もあります。
 何をするか話し合って決めるとプレイングが深くなると思います。

 それでは、よろしくお願い致します。

  • 見下ろす日々に花束を完了
  • NM名芳董
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年11月05日 21時35分
  • 参加人数 4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
無影拳
ノースポール(p3p004381)
差し伸べる翼
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
虹を齧って歩こう

リプレイ

●束ねる幸福
 視界というものが開けた時期は覚えていない。
 気づけば目の前に景観が広がっていて、空が、街が、人があった。

「まず、ずっと前から見てましたアピールは止めておくんだ」
 その日、『無影拳』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)がもたらしたアドバイスは、ベルにとって今までの鐘生でどの鐘撞に与えられた衝撃よりも驚くべき事実だった。
「黙って遠くからずっと見てたって、受け取る側からしたらちょっとコワイからね」
『な、なるほど……それは盲点でした』
《伝える》だけの一方通的な視野しかなかった付喪神に、イグナートは《受け止める》事を教えていく。その言葉を聞いた時、相手はどう思うか。何に気をつけて話せばいいか。そういった細やかな気遣いをもって話す事が《コミュニケーションを取る》というものだと。
『烏の濡れ羽のように艶やかな黒髪を見るたび、私の心は早鐘をうつように――』
「容姿を褒めるよりも、仕事を頑張っていた姿を褒める方がイイと思うな」
『そうなんですか?!』
「容姿についてはどこにコンプレックスがあるか分からないからね。
 逆に努力をヒョウカされるのは誰しもウレシイものだと思うよ」
『それなら、あの時の事を語りましょう。それは照り付けるような夏の日に、彼女が井戸へ――』

「まぁ……まぁまぁ!!
 恋をなさっているのですね!!」
 イグナートに指導を受けながら懸命に語るベルを見て、『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)は感嘆の息をついた。
「誰かのことを考えるだけで、その顔を思い浮かべるだけでそわそわしてしまったり、胸が締め付けられるような気持ちになる感覚、分かりま……い、いえ、分からなくはないです……」
「素敵な事ですよね、誰かを想うって!
 私も花束に気持ちを託したことがありますし、応援したいです」
『白金のひとつ星』ノースポール(p3p004381) も同意する。
 風が時折ふんわりと甘い花の香りを運ぶ花畑の中で、淑女3人は花束づくりをはじめていた。
 カランコエは短日植物だ。昼を過ぎてから花を開く習性があり、早い時間に摘んでもつぼみのままになってしまう。黄昏に染まるこの時が一番よいものを探し出せるチャンスなのだ。花々の中からひとつひとつ丁寧に選び、
「こっちの花が綺麗ですかね?」
 と相談しながら量ではなく質を、一輪一輪願いを込めて摘んでいく。
「素敵! 花びらが綺麗に整っています。ポーさんはお花探しがお上手ですね」
「えへへ、ありがとうございます!」
 『虹を齧って歩こう』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)は集めた花達を束ねて、全体のバランスを整えるよう添え物の花を選んでいく。
――どの一輪も、この瞬間を最高に咲き誇っているものを!

 自我を持って、恋をしたの?
 それとも、恋して、恋して、恋するあまりに自我を持ったの?

 とってもステキなお話。性別どころか、種族……ううん、種族なんてものですらない。鐘から人へ…だなんて!
「それほどまでに全てを超える愛ならば、全力でお手伝い致しましょう!」
 主人の快活な声に応じるように、お供の牝馬ラニオンも尻尾を揺らして元気に嘶く。
 包装紙で花をくるみ、オレンジ色のリボンを結べば綺麗な花束の出来上がり!
「プレゼント、喜んで頂けると良いですねぇ……」
 ドラマもぽつりと感想をのべたが、その心は花束よりも遥か彼方を想っているようで。
「私も……このように想って貰えると良い、のですが……」
「ドラマさん?」
「い、いえ何でもありません!!」
『皆さん、ありがとうございます! 花束ってこんな素敵な生まれ方をするんですね。
 きっと彼女も、喜んでくれると思います!』
 ベルの声が柔らかみを帯びる。四人と初めて出会った頃は、
『誰ですか貴方達は。教会の人間ではありませんね?』
 と戸惑うばかりだったが、あの不思議な夢で見た《本の部屋》からの使者である事。自分の恋心を応援しに来てくれた事。――こうして、自分の事のように親身になってくれる事。
 ひた向きな思いを受け止めるうち、気づけば心を開いていた。
 彼ら彼女らと一緒なら、思いを真っすぐ伝えられる。今ではそんな確信さえ持っている。
「準備はできたな。一応聞いとくが、皆で向かう……で、いいんだな?」
 イグナートの念押しに、頷く特異運命座標達。手伝う以上、その結末をしっかりと見届けてから戻ろう。想いが届くにしろ届かないにしろ……その行く末に幸福の鐘が鳴ることを信じて。

 シスターの元へ向かう道すがら、四人は彼女を探した時の事を思い出す。

●思い人を探して
 廃教会を訪れた当初、一同はその荒廃ぶりに驚いた。
「この様子、この教会が放棄されてからも結構時間が経っていそうですし、
 それよりも前にここに訪れなくなっているようですから、中々調査は難航しそうですねぇ」
 ドラマが冷静に状況を見て、ツタに覆われた教会の入り口に触れる。
 見上げれば建物のてっぺんには今回の依頼人――もといベルが吊られていた。
「何か住民台帳のような本等が残っているようなら、資料検索は比較的得意な分野ではあるのですが……お名前が分からないことには、それも難しそうですかね」
 これは建物の中を探すより、外へ情報を求めた方が早そうだ。そう判断した四人は、各地へ聞き込みに散らばって行った。

 イグナートとウィズィは、荒廃した建物から状況を知っているのは年配の人間であると推測する。
「なかなか見つかりませんね……」
 ラニオンを足代わりに、質よりもとにかく数を。情報量で捜査力をカバーしようとウィズィは西へ東へ奔走する。
「じゃあ、諦めるか?」
「まさか! 愛を紡ぐお手伝いのためならこの程度!さあもうひとっ走り行ってきます!」
「……いい返事だ」
 これは俺も負けてられないな。イグナートも彼女のバイタリティに背中を押されて、街の中へと消えていく。

 二人とは対照的に、ノースポールは幼い子供たちに聞き込みを進めていた。
 子供目線の純粋な視点なら、何かわかる事もあるかもしれない。
「この辺りで、オレンジ色のリボンをした黒髪のシスターがいたの、知らないかな?
 その人にお世話になったから、お礼をしたいの!」
 子供たちは「お前知ってる?」「よく分かんない」と口々に言い、首を振る。
「もしかしてお姉ちゃん、あの入っちゃダメな教会の人?」
「入っちゃダメ? どうして?」
「だって大人に怒られちゃうもん。あの教会はね――」

「そうですか。ありがとうございます」
 ドラマは人以外のものたちへ声をかけ続けていた。自然会話、霊魂疎通、精霊疎通――教会の庭の荒れた庭も、彼女にとっては貴重な情報源だ。
「戻りました!」
「おかえりなさい、ウィズィさん。もう集合の時間でしたのね」
 後続のメンバーも教会の庭へ戻って来て、集まった情報を話し合う。
 ウィズィはシスターについての情報はあまり得られなかったものの、同時に探りを入れていた花畑の在処を見つける事ができていた。
「教会の庭は荒れていて、花がひとつもないけど……これで花束は用意できると思います!」
「すごいよウィズィさん! これで次にやる事は決まったね♪」
 ノースポールに褒められて、ウィズィは照れたようにはにかんだ。
 次は私が、とドラマが一歩進み出る。
「シスターは教会に住み込みで奉仕をしていたようなのですが、ある日を境に見なくなったのだとか。教会が閉じるより前のようです」
「閉じたのは流行り病の中心になったからみたいです。
 だから子供たちは教会に近づかないよう言われていて――」
「オレもその事に関しては、街の大人にウラが取れたよ」
 ノースポールの情報をイグナートが後から補足する。そして恐らくシスターが今いる場所は――。

●見下ろす日々に花束を
 夕闇に染まる大空。眼下に街の景観を見渡せる場所に彼女はいた。
「はじめまして、シスター」
 最初に口を開いたのはノースポール。
「私達は、貴女のことを想う方に頼まれて来ました。
 この花束は、その方が貴女に喜んで貰いたくて作ったものです。
 受け取っていただけますか……?」
 物言わぬ彼女の元へ、静かに花束を添える。
 イグナートは一礼の後、ラニオンから降りたばかりのウィズィ――その手に抱えられたベルを示す。
「この世界には神の奇跡がある。そうして意志を得た鐘が、キミに想いを伝えに来たんだ」
 シスターにベルの思いが真っすぐ伝わるように、彼の生い立ちを誠実に語り、前置きを済ませる。
 ウィズィに抱えられ、はじめて彼女と向き合うベル。彼は一拍置いた後、ゆっくりと語りかけた。

『お久しぶりです、シスター。
 私はずっと、何処かにいる貴方を見下ろして……見守っているつもりでした。
 けれど今は、貴方の方が高い場所で私を見守っていてくれたのですね』

‟敬虔に神に仕えたシスター・エマ、ここに眠る”
 流行り病で最初に倒れたのは彼女だったそうだ。ベルに人の文化は分からない。彼女の姿を追うばかりで、出棺後もシスターが消えたと探し続けてしまっていたのだ。
『神様から与えられたこの声が枯れるまで、思いを伝え続ける事を誓います。
 好きだ。貴方の事が、大好きだ! 
 カランコエの花のように、優しい笑顔を届けてくれた貴方を……もう見失いたくない』
 だからこれからは、隣に居てもいいですか?

 その時、一迅の風が吹いた。
「――あ」
 霊魂疎通。ドラマの目の前に、墓石の上へ降り立つ人の姿があった。微笑む彼女はオレンジ色のリボンを結んだ、黒髪の――。

 カラーン、コローン。
 街の一番高い場所で今日も鐘が鳴り響く。
 墓場の横に寄り添うように建てられた鐘台は、いつしか縁結びの加護があるとして街の恋人たちが訪れる場所になっていた。墓前は絶えずカランコエの花が供えられている。
 その花言葉は「幸福を告げる」「あなたを守る」なのだとか。

成否

成功

状態異常

なし

PAGETOP