PandoraPartyProject

シナリオ詳細

パンドラ大地に立つ

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●『宇宙帝国戦記』 第一巻より
 時は宇宙歴119年。
 人類はその生存圏を宇宙へと拡大させていた。
 地球から宇宙へと上がるための軌道エレベーターとオービタルリングの建造。スペースコロニーの建設。さらには火星のテラフォーミングも完了させ、人類の繁栄は約束されたかに思われていた。

 ――謎の武装組織『ネメシス帝国』が地球政府に反乱を起こすまでは。

 ネメシス帝国は人型機動兵器パンドラを開発すると地球政府に宣戦を布告。その圧倒的な軍事力によって瞬く間に火星を支配下に置いた。
 地球政府軍も総力を挙げてネメシスに対抗したが、一機で超弩級宇宙戦艦並の戦闘能力をもつパンドラの前に敗退を重ね、いまや地球圏以外の太陽系はネメシス帝国の版図となっていた。

 しかし、地球政府も敗北に甘んじてはいない。
 地球と月とのラグランジュポイントL5に位置するスペースコロニーで、地球政府の研究機関ヘルメスが秘密裏にパンドラの開発をおこなっていたのだ。
 地球政府とネメシスとの戦争は、このパンドラの開発に成功するかにかかっていた。

「あのコロニーにあるのが地球政府の極秘研究施設か――」
 戦艦ブリッジのモニターに映るスペースコロニーを眺め、仮面で素顔を隠した男が低い声で呟いた。ネメシス帝国の大佐を表す階級章を付けた仮面の男に、下士官が敬礼して報告する。
「はっ! シリウス大佐殿! どうやら居住用コロニー内に研究施設を置くことで、我々の目を欺こうとしていたようです」
「地球政府も小賢しい真似をする」
 ネメシス帝国軍の独立部隊を指揮するシリウス大佐は、仮面の奥の瞳でモニターを静かに見つめた。帝国で紅い恒星の二つ名で呼ばれ、若くして大佐の地位にまで上り詰めたベテランのパンドラパイロット。その行動は沈着冷静だ。
「今なら本艦の主砲でコロニーごと叩き潰せますが、いかがいたしますか、大佐殿?」
 下士官の提案にシリウスはかぶりを振る。
「いや。地球政府の住人も、いずれ我らネメシスの民となるのだ。無駄な犠牲は出すなというのが皇帝陛下のご意志だ。……それに、地球政府が作ったというパンドラの性能も見てみたい。今回の任務は、あくまでパンドラの調査だからな」
「では、大佐殿自ら?」
 一つ頷くと、シリウスは下士官に背を向け格納庫に向かう。
「私がパンドラで出る。ペテルとアークは私に続け。バランには艦を任せたぞ」
 こうして宇宙戦艦から三機の人型機動兵器パンドラが飛び立った。深紅のパンドラと、その部下の緑色の量産型パンドラ二機。20メートル近い巨大兵器がバーニアの残光を曳いてコロニーへ向かって飛翔していったのだった。

「敵パンドラ三機、本コロニーへ接近中!」
「くっ、ついにネメシスに嗅ぎ付けられたか……! ようやく試作型パンドラ四機が完成したというのに……!」
 オペレーターからの報告に、白衣を着た白髪の老人、ドクター・ウォーダンが歯噛みする。
「このままでは敵パンドラにコロニー内に突入され、この研究所が……」
「分かっておる! ええい、テストパイロットの準備はまだか! パンドラさえ起動さえすれば……」
 地球政府の極秘研究機関は、いまや存亡の危機に晒されていた。

●境界図書館
「というわけで、あなたたちには、この本の世界に入って地球を悪の帝国ネメシスから救ってほしいの」
 境界図書館でイレギュラーズたちに『宇宙帝国戦記』というタイトルの本を見せてくるのは、ポルックス・ジェミニ。『ホライゾンシーカー』を名乗る双子の妹だ。
「この本の世界ーー宇宙歴世界では、悪の帝国ネメシスが地球という惑星の統一政府を武力侵略しているわ。そのために使われている兵器が、人型機動兵器パンドラ――」
 パンドラという名前にざわめくイレギュラーズたち。
 だが、ポルックスの説明によると、イレギュラーズたちの知る『パンドラ』という言葉とは関係のない名称――何か小難しい言葉の略称でP.A.N.D.O.R.Aというらしい。
「みんなにはこの本の世界で地球政府が極秘開発した四機の試作型パンドラのパイロットになって欲しいの。そしてネメシス帝国の『紅い恒星』シリウス大佐が乗る深紅のパンドラを撃退してちょうだい」
 イレギュラーズたちは物語の主人公という形で本の中に入ることになる。具体的には機動兵器パンドラの操縦に適正があるテストパイロットとして研究機関に所属している設定になるようだ。
「機動兵器の操縦といっても心配しないでね。本の中に入れば自然と操縦方法が頭の中に浮かぶわ」
 これも主人公補正というものなのだろう。初めて乗る機動兵器でも熟練パイロットのように操れるらしい。
「それと、みんなが乗るパンドラは、みんなのイメージ通りになるわ。本の中に入るときに自分のパンドラの外見、武装、性能なんかをしっかりイメージしておいてね」
 自分だけの兵器に乗れるのも物語の主人公としての特権のようだ。きちんとイメージするのを忘れないようにしよう。
「本の中に入ってからだけど、早速、出撃してシリウス大佐と二人の部下のパンドラと戦ってもらうことになるわね。コロニー内に侵入されたら研究所や民間人が危険だから、宇宙空間で戦って敵を撃退してほしいの」
 ネメシスのパンドラは、接近戦型のペテル機、砲撃支援型のアーク機、そしてバランス型の指揮官機であるシリウス機の三体だ。これを宇宙空間で迎撃する必要がある。
 アーク機からの支援砲撃のもと、ペテル機が近接攻撃をおこない、シリウス機が臨機応変に立ち回るというのが基本戦術と思われる。これをいかに攻略するかが鍵になるだろう。
 なお、敵は威力偵察による調査が目的だ。強行突破は狙ってこないと思われるので着実に迎撃をおこなっていこう。
「本の主人公になれるといっても、まだ初陣。それに敵は歴戦パイロットだから油断しないで。本の中で撃墜されても死なないとはいえ、できれば無事に帰ってきてね」
 そう言うとポルックスが持つ本が光を放ち、イレギュラーズたちが吸い込まれていくのだった。

NMコメント

 オープニングをご覧いただきありがとうございます。ノベルマスターの草薙大神です。
 本ライブノベルの内容を三行で説明しますと、『SF世界で巨大ロボットに乗って、襲い来る帝国軍と戦いましょう!』です。あ、一行で終わりましたね。いわゆる機動な戦士の世界観だと思ってくださいませ。
 皆様には本の中に入って、パンドラというロボットのパイロットになっていただきます。そして主人公として仮面の敵を倒しましょう!

 なお、判定はライブノベルのルールに従ったものになりますのでご注意ください。つまり、判定には戦闘ルールは適用されず基本的に成功となり、プレイングで記述いただいた内容を最大限反映できるようにリプレイを執筆させていただきます。クラスやスキル、戦闘ルールなどは気にせず、『こういう風に活躍したい』という内容に力を入れて確定でプレイングを書いていただいて大丈夫です。
 また、本ライブノベル特有のルールとして、皆様が乗るパンドラ(基本は全高20メートル程度の人型兵器)をプレイングで自由に設定していただけます。後述のサンプルを参考に、かっこいいパンドラを設定してみてください。全力でかっこよく描写させていただきます。
 それでは、どうぞよろしくお願いします。

【サンプルプレイング1:シリウス】
二つ名:紅い恒星
機体名:エリュトロン
外見:鋭角なフォルムのスマートな機体。頭部カメラはモノアイ。頭には指揮官機を表す一本ツノが付いている。機体カラーは真紅。
機体特性:機動力重視
武装(機動性のために軽武装):マシンガン、ヒートアックス、頭部バルカン
操縦方式:マスタースレーブ方式
「見せてもらおうか、地球政府のパンドラの実力とやらを!」
ペテルとアークを従え、地球政府のパンドラに対して威力偵察をおこなうとしよう。
私はエリュトロンの機動性を活かし、部下たちの動きに合わせ臨機応変に動かせてもらう。
突出してきた敵パンドラがいたら、機動力で翻弄し背部バーニアを狙い撃たせてもらおうか。
一機でも敵パンドラを鹵獲できれば上々だ。首尾よく行けば撤退に入るとしよう。
「ペテル、アーク、深追いは不要だ。データは十分に取れた。撤退するぞ」

【サンプルプレイング2:ペテル】
パンドラ名:ヴェルデ(格闘戦型)
コンセプト:量産型パンドラをベースに、接近戦用にカスタマイズした機体。全身の装甲を厚くしてあり多少の攻撃では撃墜されない。
デザイン:重厚で頑丈そうなボディ。頭部カメラはモノアイ。
機体カラー:緑
戦い方:重装甲を生かした近接戦闘
武装:両肩のシールド、ヒートアックス二刀流、頭部バルカン(補助用なので基本的に使用しない)
操縦方法:モーショントレース方式
「うおおおお!オレの攻撃を受けてみろおっ!」
大佐は深追い禁物と言っていたが、こんな獲物を前にしておとなしくしてられっかよ!
敵パンドラに向かって突っ込んでいって、ヒートアックス二刀流でめった切りにしてやるぜ!
多少の攻撃なんぞ、この機体の盾と装甲には効きはしねえ!
相打ちになってでも敵を撃墜してやるぜぇ!
「まだ頭部のメインカメラがやられただけだ!このまま突っ込むぜえ!」

【サンプルプレイング3:アーク】
私の乗機の名前はヴェルデ(砲撃支援型)です。
量産型パンドラをベースに、後方からの砲撃支援用にカスタマイズした機体で、装甲を極限まで削って機体重量を落とすことで搭載火器と弾薬の量を増やしています。その代わり、被弾すると一撃で撃沈されたり、弾薬の誘爆の危険がありますが……。
緑色にカラーリングされていて、見た目は細い胴体の機体に大量の銃火器を背負っています。
装備兵装は実弾系が中心です。遠距離狙撃ライフルに誘導ミサイル、バズーカ砲で後方から味方の支援をおこないます。近接兵装は持っていません。
大佐とペテルが戦闘に入ったら、後方からライフルで敵パンドラを狙撃させてもらいましょう。敵の頭部を狙ってカメラを破壊し視界を奪います。
狙撃したらすぐに場所を移し、狙撃ポイントを悟らせないように気をつけます。
中距離まで敵の接近を許したら、ミサイルとバズーカを雨のように撃って迎撃します。このミサイルをかわしきるのは不可能です。宇宙の藻屑と消えてもらいましょうか。

  • パンドラ大地に立つ完了
  • NM名草薙大神
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年10月28日 22時25分
  • 参加人数4/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

主人=公(p3p000578)
ハム子
フィーア・プレイアディ(p3p006980)
CS-AZ0410
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!

リプレイ


 宇宙空間に浮かぶスペースコロニー。回転する円筒形の巨大人工物から、4つの光点が漆黒の宇宙に飛び出していく。ネメシス帝国の人型機動兵器パンドラに対抗するため、地球政府が極秘裏に開発した試作型パンドラであった。
『味方の各パンドラとレーザー回線による量子暗号通信のデータリンクを確立しました』
 機体頭部に円盤型のレーダーを搭載した独特のフォルムのパンドラ『イーグルアイ』の補助AIの言葉に、パイロットのフィーア・プレイアディ(p3p006980)が無言で頷く。
 青と白のツートンカラーで塗装された『イーグルアイ』は、その名前の通り索敵能力に優れた機体である。頭部に搭載されたレーダーの探知範囲は帝国のパンドラのものの数倍にも及ぶ。出撃直後にも関わらず、すでに『イーグルアイ』は接近する敵の位置を捉えていた。フィーアは補助AIに指示を出すと敵の情報をデータリンクで共有する。
 味方のパンドラのコックピットに表示されたのは、戦場となる宙域の宙図と三機の敵パンドラの現在位置だ。前衛として突撃してくるペテル機、それを後衛から援護するアーク機、そして二機を指揮するシリウス機が宙図上の光点として表示された。
「よっしゃ! 切り込み役は任せな! 地元でならした疾走りのテク、見せてやるぜ、オラァ!」
 フィーアからの情報を見て急加速したのは、宇宙の闇よりも黒い色をした機体『ワイルドホース』である。バイク形態に変形している『ワイルドホース』は、さながら巨大な宇宙戦闘機のようにも見えるが――あくまで二輪が装着されているのは、パイロットである伊達 千尋(p3p007569)のバイク乗りとしてのこだわりなのだろう。
 かつてバイクチームの切り込み隊長だった頃の血が騒ぐのか、千尋は高機動型の機体のスラスターを全開にすると光の尾を曳きながら戦場となる宙域へと突っ込んでいった。
「よし、ボクも負けないよ! パンドラ『アーク』、主人=公。行っきまーす!」
 千尋に負けじと背面スラスターから勢いよく推進剤を噴射して加速したのは、公が乗るパンドラ『アーク』である。白をベースとした機体色に青、黄、赤でアクセントの入った外見は、まさに主人公機といった印象だ。
 実際、『アーク』は万能可変兵装「ガンブレード」を運用するための高性能テスト機であり、バランスの良い性能は主人公機の名に恥じないものといえた。
 一方、深緑の重厚な装甲を持ったパンドラ『ファンタズマルプロテクション・プロト(PPP)』のコックピットで回言 世界(p3p007315)が独りごちる。
「こういうのを動かすのは得意じゃないんだが、為せば成る、のか……?」
 本の中に入った際にパンドラの操縦方法は頭に入ってきたが、それを自分のものだと納得できるかどうかは別問題だ。宇宙世界出身のフィーアはともかく、ハイテンションな千尋やノリノリの公の適応力が凄いのかもしれない。
「まあ、俺は支援に徹するとしよう」
 世界の乗る『PPP』は、重装甲を持ちつつ、両腕に電磁加速砲、背部に2門の高エネルギービーム砲を装備した遠距離攻撃型パンドラだ。普段、仲間の支援に回ることの多い世界にとっては扱いやすい機体であると言えた。
「きっちり敵の隙を狙って撃たせてもらおうか」
 『PPP』を戦場宙域に深入りさせず、世界は離れた距離から光学サイトを覗き込んだ。

 その時、戦場の中心で真紅のパンドラ『エリュトロン』から刺すようなプレッシャーが放たれた。帝国軍の若きエースパイロット、仮面で素顔を隠したシリウス大佐から地球政府の機体に向かって鋭い視線が投げかけられる。
「見せてもらおうか、地球政府のパンドラの実力とやらを!」

 ――こうして人類史上初のパンドラ同士の戦いが幕を開けた。


「ペテル、前に出過ぎだ。敵をひきつけてアークと連携しろ。私はその隙に敵後方の支援機を叩く。……む?」
 『エリュトロン』の操縦席でシリウス大佐が部下に指示を飛ばす。だがスピーカーから返ってくるのはノイズにまみれた雑音のみだ。さらにコンソールに表示される敵味方の光点も消失している。
 両陣営が戦場で接敵すると同時に、フィーアの『イーグルアイ』がECMによって電子妨害をおこない電波通信やレーダーの遮断をおこなったのだ。
「ほう。こちらの連携を潰すための電子戦用機体まで完成させていたか。どうやら地球政府にも戦術眼のある将がいるようだな」
 シリウス大佐は楽しげに口元を歪めると、ペテル機の支援に向かおうと『エリュトロン』の機首を巡らせた。
 だが『エリュトロン』に向かって突っ込んでくる機体がいた。千尋が駆る漆黒のバイク『ワイルドホース』である。
「連携なんてさせるかよっ!」
「私に機動戦を挑むつもりか。ふっ、面白い!」
 『ワイルドホース』から撃ち出されるミサイルランチャーを、『エリュトロン』は頭部バルカンで撃ち落としつつマシンガンを乱射する。目まぐるしく位置を入れ替えながら飛翔する二機のパンドラは常識を超えた速度で銀河のデッドヒートを開始したのだった。

「ちぃっ、大佐からの連絡がこねえっ! こうなったら突っ込むだけだぜぇっ!」
 近接戦用にカスタマイズした量産型パンドラ『ヴェルデ』のコックピットでペテルが吼える。
 後衛からの援護など知ったことかとばかりに、両手にヒートアックスを構えたペテル機が突っ込んでいくと、突如、その機体を激しい振動が襲った。
「なぁっ!? 爆発だとっ!?」
 『ヴェルデ』の周囲で起こる爆発は、先行していた千尋の『ワイルドホース』がばら撒いておいた機雷によるものだ。『イーグルアイ』のECMでレーダーを潰されたため、機雷を発見できなかったのである。
「だが、こんな程度でやられるような、ヤワな装甲はしちゃいねえっ!」
「もちろん、この程度で倒せるとは思っていないよ!」
 機雷の爆炎を突き破り現れたのは、公の操るパンドラ『アーク』である。両手に構えた大剣型電磁ブレードを振りかぶり『ヴェルデ』に向けて振り下ろす。
 その電磁ブレードを『ヴェルデ』は両手で持ったヒートアックスをクロスさせて受け止めた。宇宙空間に帯電した剣と赤熱した斧とが激突する閃光が走る。

「よし、白いパンドラ、そのまま止まっててくださいね」
 ――鍔迫り合いをおこなっている『アーク』に向かって遠距離狙撃ライフルを構えているのは、アークの乗る砲撃支援型『ヴェルデ』である。
 光学照準に『アーク』の頭部――メインカメラを捉え、ライフルの引き金を引こうとした瞬間――。『ヴェルデ』が構えるライフルの銃身が高エネルギービームの直撃を受けて溶け落ちた。
「俺の目の前で味方を狙い撃たせるわけにいくかよ」
 高エネルギービーム砲を放ったのは、世界の乗る遠距離砲撃型――いや、その重火力と長射程は対艦戦用といった方がいいだろう――のパンドラ『PPP』だ。世界はさらに電磁加速砲の射撃を浴びせていく。
「なるほど、私の相手はあの大型の機体というわけですか」
 アーク機は溶け落ちた狙撃ライフルを手放すと、両手にバズーカ砲を構えて狙撃ポイントを飛び出し、電磁加速砲の雨をかいくぐりながら戦場中央へと距離を詰めていった。


「ガンブレードの力、見せてやるっ!」
 『ヴェルデ』のヒートアックスと力比べをしていた公の『アーク』が脚部スラスターを全開にして距離をとった。
 『ヴェルデ』も背面スラスターを吹かして追撃しようとするが、そこに側面から『イーグルアイ』の赤外線誘導ミサイルが襲いかかる。全身の装甲と肩のシールドでその攻撃を防ぎ切るが、『アーク』との間合いは大きく開いてしまっていた。
「ふん! だが、そっちだって近接武器しかもっていないだろうがっ!」
「この万能可変兵装ガンブレードに死角はない!」
 公が叫ぶと同時にガンブレードが変形する。ブレードが蛇腹状に分離し有線誘導式のブレードビットになったのだ。
「うけてみろっ!」
 『アーク』がブレードビットを操作すると、まるで花吹雪のようにビットが舞い踊り――『ヴェルデ』の重装甲の継ぎ目から内部に入り込み、その機体をバラバラに斬り刻んだのだった。

「前衛は片付いたようだな。俺は後衛を釘付けにさせてもらおうか」
 アーク機の支援型『ヴェルデ』に『PPP』の電磁加速砲の雨を降らせながら世界が呟く。
 敵もミサイルランチャーから電磁誘導式ミサイルを撃ち出すが、『イーグルアイ』のECM下では制御が効かずに明後日の方向に飛んでいってしまう。
「ミサイルが使えないのなら、これですっ!」
 『ヴェルデ』の両手に構えられたバズーカ砲と肩に装着されたロケットランチャーが火を吹き、大量の砲弾が『PPP』に迫りくる。
 しかし、世界はそれを冷静な瞳で見つめていた。
「特殊兵装――ファンタズマシステム、起動」
 『PPP』の装甲がパージされ、機体内部から緑色に輝く特殊粒子が放出された。粒子は盾状に展開された装甲にまとわりつく。その盾に砲弾が触れた瞬間。すべての砲弾が自壊し消滅した。
「これで弾薬切れだろう? おとなしく帰ってもらおうか」
「くっ、撤退します」
 アーク機は大破したペテル機のコックピット部を掴むと、そのまま撤退していった。

「ちぃっ、二人がやられたかっ!」
「おっと、よそ見してる余裕あるかよっ!」
 舌打ちするシリウス大佐。『エリュトロン』の動きが鈍った一瞬の隙を突き、千尋の『ワイルドホース』の機体が人型に変形した。
「なにっ!? 戦闘機が変形しただとっ!?」
 高速機動中に突如人型になった『ワイルドホース』の動きは、歴戦のシリウス大佐をも驚愕させるのに十分であった。その両手のチェーンソーが『エリュトロン』の頭部アンテナを斬り裂いた。
「くっ、まあいい。データは十分に取れた。撤退する!」

 こうして、地球政府のパンドラの初陣は大勝利に終わったのだった。

成否

成功

状態異常

なし

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