PandoraPartyProject

シナリオ詳細

サクラメントをここに刻め

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●大きな桜の木の下で。
 この世界の世界樹は、サクラという花によく似ていた。
 血がにじんだ様な薄赤の花、5枚の花弁。故に『ブラッドブロッサム』と名付けられた。
人々はこの木から生まれ、この木の下で朽ちていく。
世界樹から根を伸ばした先にある『桜脈(オウミャク)』には多くの祝福が土地に宿り、
故に、大きな都市の多くがそこにできていた。
 けれど、このせかいには『冬蟲火葬(トウチュウカソウ)』と呼ばれる敵がいた。
世界樹の葉と花を食らい、世界に冬をもたらし、土葬を主とする民を火で炙る虫型の敵。
世界はそれに侵攻されつつあった。

「剣を持て!我らに『奇跡の力〈サクラメント〉』を!」
「勝利と栄光を!」

 物語は悲劇で終わる。世界の終焉をそれは意味していた。
 地は赤に濡れ、花は散り、大木は虫が巣食い、人々は希望を失い、息絶える。
 けれどその結末を変えられるものがいた。
 それこそが――

●運命を変えるもの

「君たちってわけさ」

 カストルの言葉に、貴方たちは頷いた。
負けてしまうはずのこの聖戦に、勝利の旗を掲げて導くことができるのは。
自分たちだけ、なのだ。戦場は開けた草原だ。天気は皮肉な程に快晴で、
こちらが風下であった。
業火の風を纏った冬蟲火葬は風上にある草原の丘の向こうから
1000匹ほど群れを成して襲い掛かってくる。
一体一体は脅威ではないけれど、連続して攻撃を受けることとなれば話は別である。

「冬蟲火葬が火を扱うせいなのか、火にまつわる魔術を使う者には
 良くない印象をこの世界の民は抱くから、そこは注意してほしい」

――ちなみに、冬蟲火葬は水に弱いらしいよ。

 カストルは人差し指を唇の前に立ててそう言った。

NMコメント

戦争シナリオです。
あらゆる作戦を行うにあたって、人員は十分にいますが、戦闘力が足りません。
戦闘力を向上させるために作戦を練って伝えるもよし。
自ら前に立って戦うもよし。

皆さんの雄姿はサクラメントとしてこの世界の伝承に残るでしょう。

  • サクラメントをここに刻め完了
  • NM名蛇穴 典雅
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年10月30日 22時55分
  • 参加人数4/4人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
スー・リソライト(p3p006924)
猫のワルツ
糸巻 パティリア(p3p007389)
跳躍する星
ジュルナット・ウィウスト(p3p007518)
風吹かす狩人

リプレイ

 星空の下。月光が宵闇をやさしく照らす夜の刻。
 人々は燭石〈ショクセキ〉と呼ばれる宝石をカンテラに入れると、その明かりで生活をしていた。あたたかなパンに、野菜のスープ、鶏肉の丸焼きと食事が少し豪勢なのは、決戦となる明日への願掛けも含めた行いであり、最悪の事態に陥った場合、後悔しないためでもあった。

「これが最後の晩餐にならなきゃいいけどな」
「やめてくれよ、縁起でもない」

 ぶるりと震えるのは新人の兵士だ。その隣で、先輩であろう兵士がカラカラと笑う。

「何、大丈夫さ。なんてったって俺たちには奇跡〈サクラメント〉がある。
 冬蟲火葬〈トウチュウカソウ〉なんかに負けやしないさ。
 ここは永久の春だ。滅びの冬なんてもたらされてたまるかよ。
 それに、俺には待っている人がいるんだ。これが終わったら――こいつを渡さないといけないしな」

 彼の手元で結婚指輪が光った。



 渡せるといいですね。なんて笑ったのは昨日が最後だ。全身やけどを負った先輩兵士を新人兵士は担ぎながら、何とか衛生兵に引き渡そうとしていた。

「俺のことはいい。お前は早く前線に戻れ」
「何言ってるんですか! アンタには渡すものがあるんでしょう!?
 帰りを待ってくれてる人がいるんでしょう!?」
「前線は苦戦している。お前がそこからいなくなったら、奴らに攻めこまれちまうだろうが」
「だけど……俺は奇跡〈サクラメント〉だって1度も使えたことがないんですよ!?」
「それでもお前は俺らの中で一番、剣が上手だ。
 それに――奇跡〈サクラメント〉は応えてくれるさ」

 そこへ、前線が1匹漏らしたのであろう冬蟲火葬が1匹、こちらに向かって襲い掛かってきた。
 負傷しているにもかかわらず、先輩兵士は新人兵士を突き飛ばすと、彼を守らんと両手を広げた。
 新人兵士は目を真ん丸に見開いた。

 ―—いやだ。こんな結末、いやだ。

 神よ、どうか。彼を助ける手立てをください。
 どうか、この国をお守りください。

「奇跡〈サクラメント〉ォォォォォオオオ!!」

 新人兵士の慟哭が戦場に響き渡った。同時に、ぶわりと桜の花びらを纏った風が吹いてくる。まばゆい光が突然起きたかと思うと、そこに、4人の使者が現れた。彼らは一瞬で冬蟲火葬を圧殺すると、3人が前線へと走り出し、ジュルナット・ウィウスト(p3p007518) が戦場全体に聞こえるように声を張り上げた。

「総員、一時退却を命じる! 前線は我らに任せろ!」
「けが人を置いていっちゃだめだよ、いい? 大丈夫、勝つのは私達だよーっ!」

叫んだジュルナットとスー・リソライト(p3p006924) 。そしてノリア・ソーリア(p3p000062) 、糸巻 パティリア(p3p007389) 、救世主である4人は彼らに『桜戦の使者』と呼ばれるようになる。



 一時退却後。
 前線は彼らによって跡形もなく討伐されたが、パティリアが頬を掻きながら報告する。移動力がこの中で最も高いパティリアは、その外見に違わぬ働きをしてくれていたようだ。草原を駆け回り、向こう側に森があるという事も教えてくれた。そして、足跡から見て、そこから襲いにやってきているのであろうという事も。彼女は冬蟲火葬を解体して、弱点を調べたりもしてくれたが、『装甲の厚さに比べてやけに軽い』という点を不思議そうに報告してきた。

「今日は100匹ほどしか居らなんだ。1000匹襲い掛かってくると聞いていたゆえ、
不審に思い、森を偵察したところ、おそらく、本格的な進行は明日でござろう」
「なっ……それは間違いないのか!?」
「間違いないですの。きっと明日、1000匹来るに決まっていますの」

 ここで一番偉い統率者が1000匹と聞いて驚いた。そんな数、いままで聞いたことがない。けれど安心してほしいですの、とノリアが続けて答える。何せ、本日100匹を相手にしたノリアの言葉だ。信じざるを得なかった。

「攻撃そのものとしてはそんなに怖くなかったですの。
 けれど、火炎、業火、炎獄を付与してきますの。これが一番怖いですの」

 私やパティリアならなんとか耐えられるだろうが、水を浴びる程度ではあっという間に蒸発してしまうだろう。とのこと。それじゃあ水筒を使う作戦は意味がなさそうだね、と眉を下げるスーに首を振るノリア。

「防御としては使えないけれど、攻撃として水を投げつけたところ、明らかに動きが遅くなったですの。攻撃が当たりやすくなることはいいことですの」
「なるほど。それなら水筒を使った作戦は有効だね!」

 彼らの言葉にきょとんとする兵士たち。冬蟲火葬に弱点があるだなんて、思いもしなかったのだ。

「確かに、やつらは雨の日に現れたことが1度もない」
「そういうことだったのか……!」
「さすがは『桜戦の使者』様は発想力が違うなぁ!」

 とはいえ、油断はできない。明日は今日の10倍の数、冬蟲火葬は襲い掛かってくるのだ。

「さて、提案がある」

 ジュルナットが一同に説明する。これまでは前線で戦う兵と衛生兵しかいなかったのだが、そこに後衛で戦う兵を導入したい、と説明する。

「ふむ……。なるほど。しかし、その三段撃ちとやらは前線の方々に負荷がかかるのでは?」
「無茶なお願いだとはわかっている。前線にいる時に法螺貝の音が聞こえた場合、兎に角身を守りながらすぐ伏せて欲しい。矢などが止み次第また戦闘に掛かって欲しい」
「……だそうだ」

 頭を下げる『桜戦の使者』の姿に前線を率いる兵長が少し悩んだ後、頷いた。

「わかった。今日、この日を迎えるにあたって助けてくれた貴方がたの意見だ。従おう」
「ありがとう。絶対に勝とう」
「ああ」

 ——そして、その日がやってきた。



「冬蟲火葬はわたしが引き付けておきますの。皆さんは無理のないように引き寄せられたものを屠ってほしいですの」
「だ、だけど、それじゃお嬢さんが危ないんじゃ」
「大丈夫ですの! わたしには炎が効かないから」

 まかせて、と兵士に告げると、ノリアは向かってくる冬蟲火葬の前で、のんきに散歩をしているかのようなしぐさで歩き始めた。もちろん、それを見逃すほど冬蟲火葬は穏やかな性格でもなければ、それを不審に思うほどの知性もなかった。かれらは一斉にノリアに襲い掛かり――反撃を受ける。

「ギャア!」
「キュウ!」

 海水を浴びた冬蟲火葬はあからさまに動きが鈍くなり、新人兵士でも簡単に剣を当てることができた。次々と屠られていく冬蟲火葬。しかし、時折素早いのがいて、それらはノリアの反撃をよけると、こいつに攻撃すると厄介だぞ、と思ったのか、ノリアから離れて別の方向へと進行方向を変えようとする。
 だが、それを許さないのがパティリアとスーである。

「そっちには行かせんでござるよ! 戦鬼暴風陣・忍法『野分』ッ!」
「そうそう! あなたたちの相手は私たちなんだから!」

 水筒と片手剣、水を纏う刀を手に彼女たちは後方へ向かわんとしていた冬蟲火葬を屠っていく。やわらかい。とスーは目を細めた。昨日の奴と一体何が違うのか。わからない。けれど、今日侵攻してきた冬蟲火葬たちは、どういうわけか昨日よりも装甲が柔らかかったのである。けれど、パティリアにそれを問いかければ別にそんなことはない、と返答があった。

「……もしかして、外皮が水を吸うと、やわらかくなる……?」
「その可能性は高いでござるな。
 実際、拙者が斬っているときはスポンジのような手触りだったでござる」
「冬蟲火葬の死体がやけに軽かったのは、そのせいだったのね」

 それならば、と水筒を握る。これをかけて回るだけでも、後方の三段撃ちによるダメージが通りやすくなるのではないか?

「拙者は水をかけまくってくるでござる!」
「わかった! わたしはノリアが集めきれなかった子を退治していくわね!」

 冬蟲火葬たちが集まり始めた。これではまずい、と思ったのだろう。彼らはまとまって動き、少しでも水を浴びて低下した防御力を補い、討たれる個体を減らさんとしたのだ。だが――

「格好の的ってやつだ。
 よくやってくれた。ここまで御前立てされて、負けるわけにはいかないよなぁ!」

 ―—総員、一斉射撃!

 法螺貝の音が戦場を響き渡れば、雨が降る。それは、固く、鋭い矢の雨だ。
前線にたつ兵士たちが身を小さくし、その手に持った盾で身を守るのが見える。
しかし、水で装甲がふやけてしまった冬蟲火葬にこの攻撃は絶大だった。次々と射抜かれていった彼らは、最後の1匹に至るまで、矢によって串刺しにされていったのである。



 お礼がしたいからここに残ってくれと懇願する兵士たちだったが、スーたちはそれを断った。
自分たちは奇跡によって来る者。役目を果たし終えたならば、戻らなければならないから、と。

「そ、それじゃあ、半年後! 世界樹の祭りで我々は皆さんを崇めます!世界樹に戻った皆さんでも聞こえるように、全力でお祭りを盛り上げますから!」
「ふふ、それじゃあそれを楽しみにしていますの」
「さぞ豪勢な祭りなのだろうなぁ! 拙者も見てみたいでござる」
「素敵なお祭りにしてね? じゃないと、すねちゃうから」
「酒も備えておいてくれ」

 それじゃあ、と4人は光に包まれた。
かくして、世界樹『ブラッドブロッサム』が為る、世界『トコシュエン』は救われたのであった。

成否

成功

状態異常

なし

PAGETOPPAGEBOTTOM