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シナリオ詳細

<YcarnationS>現に見る夢の底で
<YcarnationS>現に見る夢の底で

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●状況整理、或いは少女の出遭いについて
 『ザントマン』ことラサの商人オラクルによる一連の事件と討伐依頼は、オラクル派の商人達に大打撃を与えることに成功した。
 した、のだが。ラサに突如として姿を現した謎の幻想種、『砂の魔女』カノンにより事態は混迷を深めつつあった。
 カノンは、あろうことか『グリムルート』の力を上書きし、現時点で影響下にある幻想種を掌握。オラクルを遥かに超える狂気を振り撒き、幻想種を連れ去っていったのだという。
 同時に『楽園の東側』の邪教徒も集いつつあるその地、『始祖の楽園』の名は――『砂の都』。奴隷売買で栄え、砂に沈んだ地であった。
 頭を失いつつも商売道具を奪われ、憤慨したオラクル派もまた、『砂の都』へ向かい。全ての戦いは、その地に収束しつつあった。

「――というのが現時点でのことと次第です。オラクルを超える魔種の存在は、滅びのアークの加速を意味します。私達はカノンを止める必要があります」
 それと、と言葉を切った『ナーバス・フィルムズ』日高 三弦(p3n000097)の視線の先には、先の一件で辛くも生き延びた幻想種が椅子に座っていた。拘束されていないのは、イレギュラーズが取り囲んでいることもあるが、何より『タブラ・ラーサ』ノアルカイム=ノアルシエラ(p3p000046)がその場に居合わせたことが大きいだろう。なにせその幻想種は、ノアルカイムの母『ワディム=カシドラル』ことノアルカーラの治める集落に属する者なのだから。
「ワディム様が一度姿を隠される直前、確かに心ここにあらずであった機会は多かった。あの日からどれ程時間が経ったのかはもう数えてすらいないが……貴女への罪の意識があったのは確かでしょう、ノアルカイム様」
 幻想種は彼女のみを見ていた。他の仲間達が居ないかのように(敢えて無視しているかもしれないが)淡々と話す姿は、先の戦いで教義に囚われた者とは思えぬ叡智を秘めた様子が垣間見えた。
「罪の意識を付け入られ、『楽園の東側』に。でも、ノアルカイムさんと再会したことでタガが外れてしまった……娘さんと向かう道を『どちら』に定めるべきか」
「――知ったふうな口を利くなッ!」
 三弦の言葉に、幻想種は激高し声を荒げた。ノアルカーラとノアルカイムの関係は、その(表向きでは)悲劇的に終わったものだったのだから、今更受け止めろというのも無理がある。
「……済まない。わかっているのだ、我々の呪われた慣習でいつかすり潰される心が生まれることは。だが、今日この日まで我々はあの方の耐え忍ぶ強さに縋ってしまった」
 助けて欲しい、と縋るその姿は哀れの一言。気高き幻想種であっても、心に罅が入れば脆いものだ。ノアルカーラのみならず、幻想種を救う。それでやっと、ノアルカイムとノアルカーラはスタートラインに立てるのだろう。

「では、ご理解頂いたところでノアルカーラさんの情報を整理しましょう。
 使用するのは樹木操作や成長増進系の魔術ですが、『砂の都』には原生するそれらが希薄です。その辺りは何かとカバーしてくるでしょうが……そうでなくても、彼女の用いた大魔術が気がかりです」
 詠唱は相当時間を要すらしいが、高速詠唱で一気に編み上げた魔術は『辺りに種を撒き、爆発的に成長速度を増進させる』ものであった。時間を魔術で買い取るが如き所作は、しかし僅かな無防備を曝すリスクを孕んでもいる。そのための幻想種達、そして近接戦特化の個体というわけか。
「『グリムルート』の狂気がカノンによって強力なものに塗り替えられている以上、生半な言葉や説得行為よりは確実に撃破し、洗脳を解いたほうが手っ取り早いと思います。グリムルートを直接破壊する手もありますが……前回より難度が上がっている可能性があります」
 それに、と言葉を切って、三弦はノアルカイムを見た。
「母娘、またはその関係者同士であると認識できるのなら、多くの言葉を必要としない……私はそう考えたのですが」

GMコメント

 そんなわけで、取り返しますよ絆。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●成功条件
・『狂幻樹精』ノアルカーラの戦闘不能orグリムルートの破壊、および『楽園の東側信徒』全員の戦闘不能

●失敗条件
・ノアルカーラの死亡
・成功条件達成前に『楽園の東側信徒』半数以上が死亡すること

●『狂幻樹精』ノアルカーラ
 『タブラ・ラーサ』ノアルカイム=ノアルシエラ(p3p000046)の母親。表向きの名前は『ワディム=カシドラル』。
 生まれて間もない双子を結果として見殺しにしたという罪悪感が燻っていた結果、『楽園の東側』の教義と『グリムルート』の支配により半ば操られた状態にあった。
 前回(拙作『<Sandman>幻の先で君に逢えたら』)、娘の生存を確認し僅かに正気を取り戻すが、『グリムルート』の強化された狂気に侵された結果、『互いに全力で殺し合い心中する』ことを強い目標と定めてしまった。
 神秘系が強力で、特に「乱れ」系BSと「恍惚」を伴う古典魔術を使用する。主な射程は中~超。(エフェクトが『木の根』→『砂細工の樹木』に変化)
 信徒が戦闘不能時、射程内におり且つ巻き込める場合は積極的にトドメを刺しにくる。
・拒絶樹結界(神特特:自身より3レンジ):溜2(+高速詠唱1。実質溜1)、致命、虚無3、飛
・狂気の呼び声(パッシブ・神特特:自身より1レンジ):狂気、不運
└『グリムルート』:かつて古代都市『砂の都』で流通していたとされる奴隷の首輪。カノンの狂気の媒介となり、自由意志を必ず狂気的結論へと覆す特性を持つ(ノアルカーラのもののみ。他は不明)。
 直接破壊を狙う場合、命中にかなりのマイナス補正がかかる。スキル攻撃一発での破壊は難しいとみてよい。

●楽園の東側信徒×10
 ワディムに連れ去られた個体に加え、カノン側についた幻想種達。『グリムルート』着用は半数程度。強い狂気に侵されているが、戦闘不能後長期的ケアで回復可能とみられる。
 回復・近接格闘特化・中遠距離特化のバランスがよく配されている。戦闘不能者が狙える場合、ノアルカーラであろうとも積極的にトドメを刺しに来る。

●戦場
 『砂の都』遺跡跡。瓦礫などが遮蔽物になったり足場の邪魔になったりする。
 砂上のため機動-1。

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

  • <YcarnationS>現に見る夢の底でLv:7以上完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2019年11月03日 22時40分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノアルカイム=ノアルシエラ(p3p000046)
絆魂樹精
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
玲瓏の壁
リーゼロッテ=ブロスフェルト(p3p003929)
慈愛の紫
藤堂 夕(p3p006645)
小さな太陽
オジョ・ウ・サン(p3p007227)
RafflesianaJack
フィール・ティル・レイストーム(p3p007311)
特異運命座標
ニル=ヴァレンタイン(p3p007509)
夢想の魔王

リプレイ

●『愛の忘却』
「また会ったね、ワディム……いや、ノアルカーラさん」
「忌々しいがそのようだな、同輩」
 『特異運命座標』フィール・ティル・レイストーム(p3p007311)の言葉に、幻想種の女性……ノアルカーラは空虚な響きを含んだ声で返す。
 既に『グリムルート』の支配下にあることは明らかだが、彼女の意思の何割が本心であるのか、その境目が判然としない。前回の戦闘のように遭遇戦の要素はなく、従って互いが互いを視認している状況。誰が居合わせているかなど、語る必要があろうか?
「誰も死なせてはならぬ。全員救出が及第点なのじゃ」
「ファー またオバサン……コワイ、ケド」
 『称えよ!ロリ魔王様!』ニル=ヴァレンタイン(p3p007509)の敢然たる決意の言葉に、『RafflesianaJack』オジョ・ウ・サン(p3p007227)の疑似餌もわずかに震えつつ「……ガンバるデス」と続けた。オジョウサンは特に、前回の戦いでの痛手が記憶に新しい。ノアルカーラに忌避感を覚えるのは無理からぬ話だ。さりとて、その首に巻かれたモノへの興味は尽きないらしい。
 ニルの感情はより直接的だ。手の届く範囲ですべて救う。ノアルカーラへの哀れみにあわせ、事件が混迷を極める一因となった魔種への怒りもこみ上げてくる。目的を違えぬ意思の強さは、間違いなく彼女の築いてきたものだろう。
「あの首輪ほんとロクでもないわね……。これ以上関わりたくないわ」
「自殺志願者を助ける依頼……むずかしいです」
 『慈愛の紫』リーゼロッテ=ブロスフェルト(p3p003929)と『小さな太陽』藤堂 夕(p3p006645)は固い意思を以てイレギュラーズに立ちはだかるノアルカーラの姿に、憐憫と嫌悪感を綯い交ぜにした表情で相対す。
 彼女の心が千千に乱れたのは『グリムルート』のせい、長きに渡って悩みを抱えてきた彼女が命を無下にする選択に舵を切ったのは『楽園の東側』のせいだ。だが、その原因は彼女の心のありようにこそ存在する。
「だからここで終わりにするのよ。後味悪いのは勘弁だわ!」
「そうですね、こういう時こそ。困難な時ほど、笑うべきだと思うのです」
 なれば、と2人は気を吐く。終わらせるのは自分達の役目、その本心を導き出すためにただ笑い、目を見開き、前を見る。解決策が目の前に転がっているなら、それを拾わぬ道理はないのだ。
「因果縺れ拗れて、ここまでとは」
「……ワディム様の心に闇を落としたのも、カノン様の道を違えさせたのも余所者の道理であろう。言葉を慎め」
 『守護天鬼』鬼桜 雪之丞(p3p002312)が哀れみと驚きを込めて口にした言葉に、幻想種の1人が憎々しげに吐き捨てる。雪之丞の覚えた驚きも、幻想種の怒りも感情の動きとしては正しいものだろう。
 様々な出来事や悪意、戦いの結果はこうも運命を引き歪めた。それは、魔種カノンにも言えるだろう。それを恨む自由は幻想種ならば持ち合わせている、といっていい。
「ですが、反転に至っていない事は称賛に値しましょう。とても気高く、強い御心の方ですね」
「ああ、そうだ。だから私達はノアルカーラにノアルを殺させないし、ノアルカーラを死なせない」
 『優心の恩寵』ポテト=アークライト(p3p000294)は雪之丞の言葉に応じ、力強く頷く。ノアル、つまり『タブラ・ラーサ』ノアルカイム=ノアルシエラ(p3p000046)の母親である彼女も、ノアルカイム自身も護る。
 『気高い心』のまま、2人の和解を導き出す。それがポテトの決意であった。
「夢見がちな話をするのだな、お前の仲間は。……お笑い種だ」
(この野萓草が、ワディムさん……ノアルカーラさん……ううん、お母さんの心なら、確かに多くの言葉は、今は要らないのかもしれない)
 ノアルカイムは母の厳しい言葉を耳にしながら、それでも表情を変えなかった。手にした野萱草の押し花は、ノアルカーラが以前、去り際に行使した魔術の残滓。それが本心だというのなら掛ける言葉は一つしかない。
「よおし、今度こそ一緒に帰ろう! お母さん!」
「絶対その首輪から解放する」
 ノアルカイムの決意に、フィールの言葉が相乗する。
 諭しても、脅しても、彼女らは決して屈しないだろう。
 一度退けてもなお立ち上がり、向かってきた者達に言葉を掛けてやる資格など、ノアルカーラにはないのかもしれない。
「帰る場所などどこにもないのだよ、私には。分かってくれ……愛する娘。共に逝こう」
 でも。だからこそ彼女は狂乱を胸に手を伸ばすしかできない。翻意を求める言葉ではなく、決断した事実を突きつけるために。

●『宣告』
「うん、今はどこにも行かせない。……僕に付き合ってもらうよ」
 ノアルカーラが伸ばした指先に、すかさずフィールは紅い鎖を絡ませた。先端が相手の指先を刻んで食い込み、生命力を吸い上げる。威力こそ抑えているが、ささやかな理性を奪うには十分すぎる初撃である。
「貴様ァ、ワディム様に斯様な非礼を――」
「おいでませおいでませ。鬼は此処に。刃は此方へ。生半可な攻撃では、拙の守りは抜けませぬ」
 怒りを露わにした幻想種を含め、おおよそ4名。感情を揺さぶられ、判断力を奪われた面々を誘うように雪之丞は手を鳴らす。手慣れたように相手を誘い、我ここにありと優雅に舞う。あからさま過ぎるからこそ、その効果はひときわ強い。背中を丸め、体を丸め、爆発的な加速で彼女の胴を打った幻想種の男は、彼女の言葉が奢りではなく事実であることに目を剥いた。
「命を奪う気はありません、ですがおとなしくしてもらいます!」
 夕は両手を眼前に翳し、雪之丞が引きつけた者もそうでない者も纏めて異界へと誘う。こことは異なる世界との接続は彼女自身にも強い負荷を与えるが、さりとて我が身を天秤にかけてなお、幻想種達が受けた傷は浅くない。
「御し難し。斯様な英雄然とした面々と戦い命を賭すのは僥倖……だが、満ちるに足りず」
 古めかしい声を上げた幻想種に合わせ、数名が一斉に治癒術の詠唱を始める。イレギュラーズがそうであるように、各々が目的をもって術を選び、精神を収め、傷を癒やしていく。
「なにも一度二度で倒そうなんて思ってないわ。勝つまで続けるまでよ」
「応とも。妾は少し後手に回った程度で目的を違えるほど幼くはないわ」
 リーゼロッテの魔術が直線上に伸び、2名ほどの幻想種を貫く。痛みを与えず、ただ立つ力を少しでも削ぎ落とそうとする『優しい』魔術は、確かにそれらの守りを貫き、確実に体力を奪っていく。
 ニルは外側から回り込み、己の威を示すことで心乱れた状態から立ち直った面々を再び、己の土俵へと引きずり込む。至上命題は全員の生存。そのためには、出来るだけノアルカーラと幻想種達を引き剥がす必要があった。
「お母さん、ボク来たよ」
「だが私と轡を並べる気はない、か。まあいい。私と一緒に冥府に落ちよう。この『楽園』は、今此処にある幸せは、私達が手にしていいものじゃない」
 ノアルカイムは幻想種達の戦闘手段を狭めるべく封印術式を組みつつ、視線は真っ直ぐノアルカーラを見ていた。あの時は信じきれなかった、言葉にできなかった相手へのアプローチ。フィールへと敵意を向けつつ、しかし娘の言葉に寂しそうな表情を見せたノアルカーラの指先は、別の生き物かのように術式を組み上げていく。
「そうじゃないだろう、ノアルカーラ!」
 2人の会話に割って入ったポテトは、仲間達に癒やしの波長を送りつつ声を張る。あの時、正面から彼女を受け止めたポテトはその心境を十二分に理解している。しているはずだ。
「ノアルの友として、同じ娘を持つ母として、お前を放っておけない。今お前が口にするべき言葉がそれじゃないと、私だって分かるぞ!」
「……知ったふうな口を」
 ぎりぎりと軋む音が響く。ノアルカーラの表情は葛藤の色が濃く、重い空気を漂わせている。
 だが、戦場の時間は刻一刻と流れ、戦闘は激化の一途を辿っている。絶えずノアルカーラを引きつけるフィールも、堅牢な守りで攻め手を受け止め続ける雪之丞も、他の面々だって無事でいられるわけはない。
 だが、時の流れは無慈悲なほどに、正確に行動と結果を数字として叩き出す。

 ――ノアルカーラの首を捉えるグリムルートに、真っ直ぐなヒビが入った。それは無慈悲で確かな反撃の狼煙。

●『憂い(悲しみ)を忘れる』
 僅かに時間を巻き戻し、戦闘開始から間もなくのこと。
 オジョウサンは、己の気配を限界まで殺した上で、フィールに釘付けとなったノアルカーラへと不可視の刃を向けていた。……正確にはそのグリムルートに。
「イタダキマーーーース!!」
「――――!!」
 ノアルカーラは完全に虚を突かれ、驚愕に顔を引き歪める。オジョウサンの疑似餌には確かな手応えと、尋常でない頑強さが感じられただろう。
 グリムルートを徹底して守れば当たる筈が無い。神秘の造形物が破壊される見通しが無い。本人を倒したほうが上手くいくのではないか――すべての懸念は、それはそれで正しい。
 だが先入観は目を曇らせる。視界を塞ぐ、可能性を塞ぐ。その点で、攻撃精度に長けたオジョウサンによる完全不意打ちに掛けた一手は、確かに『壊せる』という確信を与えるにふさわしかった。
「傷つけず救えるのであればそれが最上じゃ! こちらは妾達に任せ、そちはその首輪を壊すのじゃ!」
「はい、私達がこの人達を救いますから、その内に!」
 ニルと夕はその瞬間を確かに見た。迫りくる幻想種の攻勢を凌ぎ、その敵意に胸を痛めながら、しかし確かな光明が射したことは希望を持つに十分だったと言えよう。
「お休みなさい。せめてこの一時は良い夢を」
 リーゼロッテは疲弊の激しい幻想種を狙い、白い雷を以てその気力を奪い、動きを止めた。慈愛と哀れみを込めた一撃に臥せった相手から視線を切り、夕とアイコンタクトを交わすと次の目標へと目を向ける。
 夕の連れてきた機械のロリババアは我が意を得たり、とばかりに倒れた幻想種を引きずっていく。
「ボク、ずっと気に入らなかったんだよ。何よりもその首輪がさあ」
「貴様らがどれだけ厭おうと臨もうと、これは私への罰だ。娘と息子の命を天秤にかけ、しきたりでのみ価値をはかった私への。そして私は、この首輪があることを疎んでいない」
 フィールはノアルカーラの猛攻を凌ぎ、ポテトからの治癒を受け、呼吸を荒くしつつも怒りを露わに声を吐く。
 運命の力にすがらねば止めることすら難しい強敵。一歩間違えば己の命すら奪われかねない状況……すんでのところで雪之丞にスイッチできたのは、彼女がそう出来る余裕を仲間が総出で作った成果といえようか。
「拙は、物語は幸福な結末が好みです。ノアルカーラ様ほどの心根の持ち主が、首輪如きに諦めを吐くその道理は何処に?」
「道理で物事を考えられるほど、私は徳を積んでいない。罪ばかりを――」
「――ごちゃごちゃうっさいのよ!」
 雪之丞の言葉に思わず反論しようとしたノアルカーラは、しかしリーゼロッテに言葉を遮られる。
「再会できたんだから殺し合うとか言ってないで黙って抱きしめればいーのよ! それが家族ってもんでしょ!?」
「ノアルの手を放してしまったことを後悔しているなら、今からでもしっかりと手を取ってちゃんと話しあうんだ! ここでノアルを手にかけたら、ノアルの手を離したら、永遠に分かりあえなくなるぞ!」
 ポテトも、母としての心境を以てノアルカーラに語りかける。莫大な魔力を用いて戦線を維持する彼女の消耗は疑う余地もない。さりとて、それを置いても語りかけねば、伝えねばならぬことが目の前にあるのだ。
「……知ったふうなことを……!」
 ひゅう、と息を吐いて吸ったノアルカーラの全身から、禍々しい魔力が渦を巻く。一度相対した者であれば疑いようもないその予備動作は、しかしオジョウサンにとって格好の的でもあった。
 捕虫袋によって予め与えた『麻酔』は、グリムルートにとっては腐食効果として顕在化した。警戒を大にしたノアルカーラの隙を窺うのは並大抵の集中ではなかったし、危惧した幻想種達が彼女を捨て置いたはずもない。だが、窮地に立ってこそオジョウサンはその本領を発揮する。
「秘擬! シンダフリ!」
「な、っ」
 ノアルカーラは、対処が遅れた。首元に割いた警戒を僅かでも残していれば、その一手を食らうことはなかっただろう。同じ手は二度通用しない。その筈だった。
 悲鳴とともに開放された魔力は以前イレギュラーズを退けたそれだ。だが、グリムルートの断末魔と同期したその魔術が元の能力と、その特性を大きく異にしていることに一同は気付いただろうか?
「みんな、一緒に、生きて、帰る!」
「そうじゃ! 誰一人欠くことは許さぬ! そちは望むままに手を差し伸べよ、ノアルカイム!」
 ノアルカイムが、そしてニルが叫ぶ。多くの傷を負いながら立つ魔王は、その親子の顛末を目に焼き付けながら、安堵の表情で膝をついた。

「……それにしたってさあ。ボク達の頑張りがもう、なんていうか……ねえ?」
 フィールが呆れたように肩を竦めたのは、倒れ、眠る幻想種達を前に並び立つ親子を見たからである。
 ノアルカーラをグリムルートの呪縛から解放した後の流れというか、なんというか。戦局は極めて呆気なかった。幻想種達の抑えに回っていたイレギュラーズを背に追いやった彼女は、全身で幻想種の攻撃を受けつつ、しかし魔力の奔流によって次々と彼らの膝を屈し、またそのカリスマ性と領主としての権威をもってねじ伏せたのだ。
「ファー……」
 で、まあこの展開を引き寄せた功労者であるオジョウサンは改めてノアルカーラを「怖い」と思っていた。当たり前だが。
「お母さん」
「ああ。……もう大丈夫だ、大丈夫だから」
 顔を見せて欲しい。
 慈悲深い手が包み込んだノアルカイムの頬を、一筋の涙が伝った。砂に溢れたその跡から、小さな芽の幻影が生まれ、そして消えた。

成否

成功

MVP

オジョ・ウ・サン(p3p007227)
RafflesianaJack

状態異常

藤堂 夕(p3p006645) [重傷]
小さな太陽
ニル=ヴァレンタイン(p3p007509) [重傷]
夢想の魔王

あとがき

 お疲れ様でした。
 成功度とか作戦の展開とかで3~4パターンの結末を考えていたのですが、今回はその中でもかなり上々の展開だったと思っています。
 『グリムルートは壊せないのでは、若しくは簡単に壊させないで最後まで持っていくのでは?』という懸念は尤もだと思いますし、私としてはそれで壊しに来ないことを懸念はしていました。
 ですが、壊せるなら壊そう、と決断して実行されたことは称賛されるべきです。
 リプレイの描写はともかく、実際のところ破壊の速さに空いた口が塞がらなかったのが実際のところ。
 ノアルカーラさんが味方になってんだもん……怖……。
 そんな感じで、胸を撫で下ろしました。決戦が控えていますが、ご無事で!

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