PandoraPartyProject

シナリオ詳細

悠久より圧政の勇者

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――その世界は選択を間違えた。

 その世界に特に『魔王』なんてものは、存在していないのだ。
 それなのに、世界は『勇者』を選抜して仕立て上げた。
 何故なら、勇者という偶像(アイドル)が居れば、人々は――「元から在る安寧」の価値を尊いものへすり替えてくれたからだ。
 故に、名ばかりの勇者は民に対して我儘に振る舞っていた。
 それは外の世界から見れば見間違える事のない圧政であったのだが、人々はそれが当たり前のように苦しい生活を送っていた。
 勿論、この生活がおかしいと思う者は多くいる。でも、『あの魔王』を倒した勇者に意見なんてできるものか――命を賭けて戦ってくれたのに、不満なんて言えるものか。
 ありもしない枷に、人々は困窮の幸せを飲み込むのであった。

 ―――ハハハ、笑っちまうねえ!
 民が草や質素な肉の切れ端を食っている中、俺は最上級のステーキに高価な珍味で昼から酒と来た!
 やめらんねえよ、これが勇者だ! 魔王を倒したこの俺が、勇者だ!!
 ハハハハハ!!

 勇者は一度も使われていない聖剣を天に掲げた。
 その光はどこか、くすんで見えるのは何故であろうか。


 勇者ご一行の討伐、または戦闘不能が今回の依頼のオーダーである。
 此の世界に魔王は存在しない、剣と魔法の世界だ。
 しかしこの世界に確かに勇者は存在する。世界が気まぐれにバグを起こした、その選択のミスから生まれた青年はいつしか暴君であり豪遊であり勇者となっている。
 その勇者には仲間がいて、魔法使いの初老の男性と、ヒーラーのうら若き女性、それとトリッキーな戦い方をする若い男性、そして勇者を含めるパーティだ。
 この四人は勇者の恩恵を受けて、巨大な城の中で贅沢三昧な日常を送っている。
 この四人を倒し、民を解放するのだ。

 また、この世界には『魔王に従う魔族』が存在する。
 皆、勇者の聖剣のせいで力を封じられ、城の地下深くに眠っているらしい。
 彼等が暴動を起こせばこの世界はたちまち闇に飲まれてしまうが、それは、『魔王』がどうするかに任せよう。

NMコメント

 二度目まして、桜です! どちらが魔王だか。

●成功条件『勇者一行の討伐、または戦闘不能。民の解放』

●世界観
 勇者はいるけれど、魔王はいない世界
 剣と魔法の世界であり、しかし巨大な国はひとつ。この国が実質世界を全ている形です。

 特殊ルールとして、イレギュラーズは勇者以外の敵より圧倒的な力を有しております。

●敵:勇者一行

 勇者:20代後半の男性。現在この国の実質王。聖剣を持ち、前衛パワー型。CT高め
 魔法使い:初老の男性。その名の通り。女性が好き。城内部で女性を好きにしている。後衛
 ヒーラー:若い女性。聖職者のふりをして金品大好き。後衛
 暗殺者:若い男性。人を殺すのが好きなヤバいタイプ。誰より俺が優れている。


 選択次第で以下も敵になる事もある(イレギュラーズより弱いです)
 現在、勇者の聖剣の力で眠っています。意思疎通は可能だし、魔王に従います。

 竜:城の地下で封印。火を噴く、めっちゃでかい。
 魔族:人型。魔法を使う。人間が憎い。
 魔物:獣型。魔王にめっちゃ懐く

●場所:勇者の住まう城
 スタート地点は、城の頂上から。
 どうアプローチしていくかお任せします。
 個人で行動してもいいし、全員で動いてもいいです。

●特殊ルール
 勇者以外の敵より、イレギュラーズのほうが圧倒的に強いです。

 以上です!
 気持ちよく相手を倒す、そんな感じを目指したいですが、プレイングに従います!
 プレイング、お待ちしております!

  • 悠久より圧政の勇者完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年10月14日 22時00分
  • 参加人数4/4人
  • 相談3日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)
穢翼の死神
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ネメアー・レグルス(p3p007382)
《力(ストレングス)》
ルミナ(p3p007640)

リプレイ


 脆弱な風の吹く城の一番天高い場所に、四人のイレギュラーズ達が足を着ける。
「じゃあ、また後で、な」
 『付与の魔術師』回言 世界(p3p007315)が他三人のイレギュラーズたちへ目配せをすれば、四方八方へと己の気が向くままに皆散開した。

 『穢翼の死神』ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)は屋上から飛び降り、二階分下の階のベランダに着地した。ベランダの窓から見えるのは、あれは老いた術師であろうか。
 老成した術者は事前の情報で女好きと聞いていた。ティアはイヤなカードを引いてしまったとため息をひとつ。
「勇者って何なんだろうね?」
『勇気ある者、弱者を助け平和を齎す者と聞くがな』
「偽りの勇者を倒して民を助ける私達は敵対する者だけど勇者では無いね」
『考えても無駄なだけだろう』
「そうだね、とりあえず殺しちゃおう」
 背中に携える羽は天使の――そんなにきれいなものじゃあない。純白の翼ならば別の誰かが担うだろう。あくまで漆黒を彩る翼は酷死の予兆。
 窓を一気に突き破り、そしてティアは先制の一撃を放つ。目にも止まらぬ速さで術師の背後に回り込んだティアは、急所たる首目掛けて魔力の霧を乗せた手刀を放つ。
「だれじゃーー」
 術師は気づいたのか振り返らんとしていた、だが攻撃のほうが早い。しかし術師に目もくれず、ティアは別の方向に目が釘付けとなった。部屋の中央で、何も纏わず生まれたままの姿で虐待をされたであろう少女が蠢ているのが見えた。
「あ、だめ、こういうのむり……絶対殺す」

 その頃、『《力(ストレングス)》』ネメアー・レグルス(p3p007382)は城内部の大通路を堂々と歩いていた。まるで城内部の人間は、彼女から避難するように尻もちをつきながら逃げていく。
 その姿は、蝶よ花よと庭園を駆けるような愛らしい姿では無い。
 獅子よ虎よと野獣さえ追いかけて追いつきそうな屈強な身体つきのネメアーが凱旋しているのだ。
 ふと、ネメアーは立ち止まった。ネメアーの口端が三日月のように吊り上がる。
 思わずネメアーは天井まで跳躍し、その槌のような腕を城の天井に突き刺したのである。
 何か手応えがあったのか、ネメアーの手は何かを掴んだ。そしてその腕を一気に振り下ろし、振り落としたのだ――それは城内部を熟知している暗殺者であった。
「うむ、救済(殺し)をする精神は立派なのだ! だけど、驕り高ぶってはいけないのだ! 殺気が隠しきれていないのだ! ネメアーポインツ減点ッッ!!」
 二回バウンドしてから壁にぶつかった暗殺者の内臓や骨は今の一撃でやられた部分はあるだろう。しかし。
「ヒヒッ、またこれは狙いやすい巨体のようで」
 と不可思議に笑うのであった。

 ――王座の上に鎮座した勇者は、余裕綽々で干し肉を齧っていた。
「この城の揺れ、異常ではありませんか。まさか魔王が……本当に存在を」
「そんな訳あるか! 魔王がいようが、この俺様がだな」
 勇者の傍らに佇むのは、ヒーラーの女性。
 ……此処は、王の謁見の間。
 戦闘や異形存在(イレギュラーズ)の襲撃を報告をしに来た従者が慌てて去っていき、その影を見送った金の瞳――ルミナ(p3p007640)。
「関係無い人間は出来るだけ巻き込まないようにしておこう」
「了解しました……、それにしても、ネメアーさん暴れすぎです」
「あはは、褒め言葉だそれは」
 城はずしんずしんと揺れていた。幸運にも、その音にかき消されていたからか、隠密行動で多少なり無茶な走り方をしても、二人は問題なく此処まで来れたのだ。
 今は謁見の間の扉の影に隠れて、機を伺っていた。
「それじゃあ、いきましょうか」
「ああ」
 二人は一斉に謁見の間へと入って行く。
 長い赤絨毯が王座まで伸びている長方形の部屋だ。戦闘するには申し分は無い。
「何者だ!!」
 ヒーラーが叫ぶ。
「名乗る程の者じゃあない」
 世界は一気に王座へと詰め寄った。ルミナはあえて半円を描くようにして別ルートは辿る。
 狙いはまず、ヒーラーだ。どこの戦場でも回復手を先に倒しておく基礎的な所はきちんと別世界でも展開するのだ。
 世界の行動にヒーラーは反応しきれなかった。
 だが代わりに勇者は反応してきた。庇う体勢の勇者、世界の攻撃は止まらない。
 周囲の魔力を吸い込みながら世界の腕が絵筆で描かれるように魔法陣のようなものが浮かび上がる。勇者の身体に指先が触れた刹那、その溜め込んだ魔力を一気に放つように黒い魔力箱に収納された勇者。
 思わずヒーラーが見た事の無い魔法に驚き叫び声をあげた。
 だが腐っても勇者なのだろうか、黒い箱を叩き切って出てきたのだ。
「成程、この世界に愛されているのは本当か」
 世界がバックステップをしながら一度間合いを取る中、ルミナはヒーラーへと到達。
 スケフィントンの箱に侵されていた勇者だからこそ、一歩、ルミナの攻撃からヒーラーを庇うテンポが遅れた。
 死神の持つそれのように、狂気的に曲がった大鎌を横に凪ぐルミナ。
 その軌道を読んで杖で受け止めんとしたが、杖ごとルミナはヒーラーを斬った。起動は剃れて、足を刃で傷つける形となったが十分だ。
 痛みに慣れていないヒーラーの叫び声が聞こえる。その声に感化されて、謁見の間に兵士が続々と現れたのをルミナは見つめ、世界は体勢を整える。
「さて、会って早々に悪いが良くないニュースがある……アンタ達の天下は今日で終わりだ」
 長らく悦の限りを過ごした個人に、上位世界から罰を下そう。


 一方、術師がいた場所では。
「ひ、ひいい! 金だ、金がいくらほしい!?」
「要らない」
 地べたを這うようにして、ティアから逃げようとしている術師。
 ティアは一歩一歩ゆっくり近づく。最初は女だと思って見くびった術師だが、神秘の術式の手練れは圧倒的にティアが勝っていた。
「欲しいのは……」
 ティアは少女を見た。
「自由だ」
「やめろ、やめてえ、やめてくれええ」
「崩折れよ、頭を垂れて眼を閉ざせ」
 ティアの瞳が淡く輝き、漆黒の翼が広がる。その羽も同じように淡く光るときには、術師は多重の呪いに苛まれ、苦しみ抜いて死んでいく。その亡骸の周囲に、漆黒の羽を纏わせて。

 謁見の間の地面が揺れた。
「とお!!」
 地面が膨れたかと思えば、拳が地面を貫き、そこからネメアーが這い出てきた。
 ヒーラーと勇者は驚き、世界とルミナはネメアーの所まで後退。
 ネメアーの反対側の拳には暗殺者がだらんとぶら下がっていた。
「筋肉が足りない暗殺者だったから鍛えてやろうと思ったら死んでた」
「そ、そうか」
 世界はそんな汚いもの捨てなさいとネメアーへジェスチャーしている。
 最中、勇者が前衛へと踊り出て大上段からの一撃、それをルミナが器用にサイズで受け止める。
「んだか知らねえが城壊しやがってクソが」
「どちらがクソか教えてあげるわ」
 ルミナは聖剣を弾き、再び勇者へと詰め寄った。世界の付与がルミナの背中を押し、勇者へと攻撃を仕掛ける好機に舞う。
 サイズの軌道が荒れ狂うように。聖剣とルミナのサイズの刃が何度も擦れ、弾き合い、お互い譲らない連撃が展開された。その背後で、ヒーラーは勇者に回復を送るのだが。
「ひっ」
 巨大な影がヒーラーを包むのだ。それはネメアー。
 思わずヒーラーは術の展開を取りやめ、自室の金品を奪取してからこの城を後にするように、逃げの姿勢を取った。しかしネメアーはその行動を赦さない。
「金に執着してはいけないのだ! 我々イーゼラー教の聖職者みたいに清貧を心掛けるのだ!
 後!!」
 ヒーラーの服をつまんで空中に放り投げたネメアー。
 そして何より。
「筋肉が足りない!」
 宙浮くヒーラーの身体へ懇親の拳を放ったネメアー。ヒーラーがどうなったかは言うまでもない。
 あとは、勇者だけだ。
「て、てめえ、ら……一体」
「そう怯えなさんな、結果は変わらない」
 世界の周りにネメアーとルミナ、そしてティアがやってくる。
「俺は……俺ァなあ、勇者だぞ、偉いんだ、そう、凄いんだぞ!!」
「だからどうしたのです」
 ルミナが勇者の言葉を弾くように言い放つ。
「此処で何が行われていたか知ってる。全部」
 ティアが続いた。
「民を大切にせずに贅沢三昧……とっても薄汚い魂なのだ! 即救済しなくては!」
「俺は俺はぁぁ勇者だああ、誰かこいつらを倒せえええ」
 勇者の声に、反応する兵士はいなかった。
「俺は、俺は」
「残念だったな」
 世界は再び三人の女性たちへ身体能力を底上げする術式を放つ。
「ジ・エンドだ勇者。リセットボタンは無いぜ?」
「あと何より筋肉が足りない!!」
 イレギュラーズの一斉攻撃に、偽りの聖剣は尽く粉砕された。


「勇者を生かすか殺すかこの世界に任せようと思ったが、きっちり殺したな」
 世界は振り向いた三人の女性たちが、てへ☆とするのに苦笑した。
 刹那、聖剣は折れたからか城の地下から地震が起き、やがて黒い影のような巨体な魔族たちが続々と謁見の間へ現れる。
「良い筋肉だ!」
 ネメアーが頷けば、魔族たちは一斉に首を垂れる。
「あんたらが魔族か?」
『いかにも、忌まわしき勇者に封印されていた』
「そうか」
 どうする? と世界の目線が仲間を見る。ティアは術師に弄ばれていた少女へ手当するのに精一杯なようだ。
 代わりにルミナが魔族たちの前へと出る。
「この世界のことは、任せる。でも、罪もない人々を殺してはいけないわ。
 もしやるのなら、今から私たちが勇者にしたことと同じことを貴方たちにする」
『よくよく肝に銘じておきましょう』
 一層身体の大きい三つ頭の巨獣が首を下げ、魔族はそれに同意した。
 外では、ネメアーが勇者が死亡し政治は白紙になったことを大音量で告げている。

 きっと、良い世界になるのだろう。
 魔族と、人間が手を取り合える。そんな、理想の世界に――今度こそ。
 そこに、神様の力なんて、いらないのだから。

成否

成功

状態異常

なし

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