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シナリオ詳細

宵の街の摩天楼-新宿-

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 空は星の光ひとつさえ見えなかった。月は怖がり、その身を分厚い雲の中へ隠した。
 此の目に風景を与えてくれるのは、宝石を散りばめたような光るネオン。
 昼も夜も誰かが歩いている眠らない街。

 新宿歌舞伎町――深夜二時。

 此の町の盛り上がりは現在ピークに達している。
 七色に煌めくネオンに照らされ、色めく男女が客の札束を求めて饒舌に語るのだ。
 少し大通りに出れば、酒が回り過ぎて相方の肩に寄りかかるサラリーマンや、割引の紙を握りしめて信号を渡る男女を狙うキャッチャーを、慣れたように避ける女性たちが跋扈している。
 その人の多さはゴミのようで――文字通り身体にぬめり着くような臭みを持った生暖かい風が、ビルの屋上から見下ろす者たちを撫でていた。
 全く――酷い臭いだ、此の街は。
 見下ろしている者たちは――影のシルエットだ。
 ひとつは人間のような形。
 ひとつは虎や獅子のような形。
 そして、今人間の手にネオンに照らされギラリと光った刃が――眼下の人間たちを狩らんとしていた。


 イレギュラーズたちは宵闇の街を、疾く駆けていた。
 誰かは、どこかで盗んだイキったバイクで公道を走り、誰かは、ビルの屋上伝いに跳躍しながら駆け、また誰かはビルの壁を走っている。
 その度に――過ぎ去る街灯やネオンが、秒で目の端から消えていく。向かい風が追い風に変わり、更にスピードを増した身体はなんだか軽く思えた。
 どうやらこの世界、自分たちは圧倒的な「強者」であるのだろう。
 境界の案内人は言っていた――。
『闇に紛れて人を殺す者たちを倒して欲しい。
 じゃないとこの世界は闇に飲まれてしまう。
 貴方たちの力なら、すぐに倒せると思うの。どうか、よろしくお願いいたします』
 その声が指定した場所まであと少し。
 選ばれた闇への「対抗手段」は、今、上には上がいる事を知らしめる為、狂える摩天楼を駆けあがる。

NMコメント

 一度目まして、桜です!

●目標『敵の全滅』

●世界観
 皆様のよく知っている現代日本に類似した世界です。

 ただ、この世界には魔人、魔物、魔獣などなどよくないものに憑りつかれた結果、魔化してしまった人々や獣や、純粋に最初から魔のものだった敵が存在しております。

 この魔たる存在は一般的に知られておりません。
 この魔たる存在が悪さをしても朝には消えるので事件は大体迷宮入りします。
 彼等は夜中に現れます。同じ場所に現れないので仕留め損ねると次何処がターゲットになるか不明の為失敗します(でもほぼ失敗しないと思いますので世界観の一片として知っておいてください)

 今回は『新宿歌舞伎町。ビル群の上』で戦います。
 ビルとビルの間は狭いので乗り移ることが出来ます。
 落ちることも、落とすことも出来ますが、下には一般人が普通の世界の営みをしています。
 一般人の目に触れても大丈夫です。相応の反応が返ってきます。

 時刻は夜です。周りが明るいので対策は不要です。

●エネミー『影なるもの』
 人型が3体、虎と獅子型が全部で3体です

 人間型は眼前の敵を優先的に攻撃してきますが、獣は限りではありません。
 でも獣はそこまで頭がよくはありません。
 人型は会話が出来ますが、討伐の条件は変わりません。

●特殊ルール
 此の世界でイレギュラーズは、ステータス以上の力を発揮できます。
 やり過ぎるとビルとか真っ二つになるのですが、加減するかしないかはお任せします。

 詳細は以上です。
 ネオンに照らされ多くの人目の中でかっこよく戦うのを描写したいです!
 皆様のプレイング、お待ちしております!

  • 宵の街の摩天楼-新宿-完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年10月11日 22時00分
  • 参加人数4/4人
  • 相談2日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

アウローラ=エレットローネ(p3p007207)
電子の海の精霊
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
紅楼夢・紫月(p3p007611)
呪刀持ちの唄歌い

リプレイ


 ネオンの下で人々が活気に渡り歩き、月明りよりも眩しい街。
 新宿歌舞伎町。
 少しずつ歩み寄ってくる闇は確実に人々の命を狙い、暗がりに引き込んで狩る為に息を潜めているのだろうか。
 その闇を打ち払う為に、遥か上の世界から境界を辿って堕ちてきた四人の力ある者たちは、今、強風を従え、この場所へと向かっている最中だ。
 高い場所――つまり屋上を伝い、大跳躍して走るのは『電子の海の精霊』アウローラ=エレットローネ(p3p007207)だ。ビルの上から上へ、弧を描いて飛びながら、その合間に状況を確認する。
「やっほー! 獣見っけ! アウローラちゃん先行しまーす!」
「ああ、気を付けてな」
 歌舞伎町の雑貨屋で格安で手に入れたジッポの火を、煙草へと点けた『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)は、アウローラと交差する僅かな一瞬で情報の伝達を終えた。
 既にアウローラの背中は暗闇に紛れて消えると、今度は屋上の真ん中で肩にかけたコートを風に揺らしていたジョージが動き出す。
「ご機嫌よう。散歩には少し、不向きな夜だな」
 なんと言ったって、この歌舞伎町は眼下よりも天上のほうが暗い。
 人知れず――そう、あの眼下の一般人に血なんて魅せなくてもいいのだ――狩るのならば、最適な場所でもあろう。

 ――元居た世界に似ている。懐かしい気さえした。
 『呪刀持ちの唄歌い』紅楼夢・紫月(p3p007611)は、人混みに紛れながら横断歩道を渡っていた。
 紫月は横断歩道の中心で立ち止まると、深紅の大きな瞳で上空を見た。この世界に溶け込める彼女の身体特徴で、唯一、異形と呼べる深紅の瞳で。
 直後。
 信号は青から赤へと変わっていた。トラックのクラクションが鳴っている。そんな音に左右されず、紫月は六枚羽を広げて瞬く間に上空へと舞い上がった。地面に数枚の羽を残して。
 紫月が見ていたのは、ビルとビルの間を跳ねているウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)であった。獣型の影が、横断歩道より少し長い尺のビルとビルの間を飛んだのを、ウィズィが追っていたのだ。
「待てー! 待てって言って待つ奴いないっすけど!」
 大きなカトラリーを両腕で持ち、ふわりと舞うスカートを気にも留めず。ビルへ着地したウィズィ。
 その目の前で、獅子は急ブレーキをかけ床に爪痕残しつつ身体をウィズィへと向けたのだ。
「お、やる?」
 どうせ相手には言葉での解決は認められない。なら。
「さあ、Step on it! 私が通りますよ!」

 この世界の誰にも頼まれず。
 誰にも望まれないはずだった―――この世界を助ける戦いが始まった。


 ジョージがまず、一撃を繰り出した時だ。敵は、素直に驚いた反応を示していた。
 影のシルエットであり、よーく見れば人の形を表情は覗き込めるが表情までは解らなかった。しかし、何より喰らった一撃に身体がよろけて、後退した影なるものを見るとそういう感情であるのだろうと素直に認識する事ができる。
「潔く死ぬか?」
 両手にナイフを持つ影は、変わらず戦闘態勢を取ってくる。
「成程、尻尾巻いて逃げると思ったがそれはそれで構わん」
 ジョージは手のひらを上にし、クイッと指を曲げた。挑発のサインだが、至極冷静に向かってきた敵は間違いなくこの世界において強者の部類なのであろう。
 だが、それよりも上であるのがイレギュラーズ。
 敵のナイフは蚊が止まるくらいに遅く見えた。スローモーションのように、ジョージが最低限の動きで攻撃を躱すと、利き手では無い方の拳を腹部に直撃させる。
 衝撃は確かにあった――、手応えもある。
 そして何よりジョージの腕は影の腹部を貫いていた。痙攣する影の身体を振り払い、人外であることを証明するように影は立ち上がった。されど見るからにこっちが有利だ。
「ここではまさしく、イレギュラー、と名乗るべきだろうな」
 再び突進してくる虎を回転蹴りで空中に抛った。なんて身体の軽い事か――気兼ねなく戦える。
 そして熱い吐息と一緒に煙を吐きながら、空中落下する虎目掛けて拳を握る。武器は不要だ――この素体で十分通用する。
「『影なるもの』と言ったか。身に余る力は、容易く身を滅ぼす」
 死ぬ前に一つ、勉強になったな。
 異界の拳は、この虎にとっては重すぎる――それは槌のように撃ち落とされ風船が弾けるように闇を木っ端へと変えた。
 ――綺麗な街並みの観察は、また後で。
 今はそれぞれ個人が、見つけた敵を虱潰しにしていくときだ。
「きちんとカウントしていくよ! はいっ、いーち!」
 アウローラの耳に、どこかで風船でも粉砕したような音がした。恐らくそれはジョージが敵を倒した音なのだろうが、その感覚でアウローラは数え始めた。
「アウローラちゃんので、二体目になるかな?」
 愛らしく顔を傾けてみたアウローラ目掛けて、突進を仕掛けてきた虎に容赦は無い。
 冗談通じないなあ! なんて頬を膨らませたアウローラは回避をする為にビルの上から別のビルへ飛び移りつつ、空中で術式を即座に組み上げた。のっぺりとした黒い夜空に浮かぶ蒼穹の陣。
「奏でるは魔法の重ね唄!」
 打ち出された四色の鎖は天から降り注ぐ雷神の刃のように、虎を背中から串刺していった。
 一瞬影がぼやけて、煙のように四散し。またそして形を虎へと戻していく。その虎の口からは、涎か、または血のように影を吐き出し床に漆黒の絨毯を伸ばしていくのだ。
「うひい、ちょっと汚いなあ! さっさとお掃除しちゃうんだから――痺れちゃえ!」

「見つけた――」
 上手く隠れていたようだが、紫月の五感からは逃れられない。
 ビルの貯水タンクの影に隠れていたスナイパーを見つけた紫月は、六枚の羽を広げ、月明りの代わりに巨大なスクリーンを背中に。紫月は人目構わず特殊な魔弾を放つ銃で攻撃を開始した。
 響き渡る銃声は人混みの声にかき消されていたが、翼を広げる人間はなんとも珍しいものだ。
 そして紫月の指が妖刀に触れたが――いや、これを抜くまでも無いだろう。
 吸血鬼の姫が如く、深い紅に淡く光る瞳は銃弾を浴びて脳天を飛ばした影を捕らえている。首が無くなった影だが、動きは止まらない。成程、影であるのは言葉の通りか。
 スナイパーは銃口を紫月へと向けた。蜷局を描くように飛び、移動を開始しながら紫月は銃を構え続ける――その身スレスレの所をスナイパーの銃弾が掠っていき、背中のスクリーンに蜘蛛の巣のようなひび割れを作りながら、画面が大破した。
 轟音。
 人々の慌てる声。
 しかしどれも紫月の集中力を欠く原因にもならない。
「さようなら」
 紫月は躊躇いなく引き金を引く――その己こそ、闇を狩る闇の存在であることを自覚しながら。
 その頃――ウィズィは屋上にいた獅子を蹴り上げて空中に上げ、自身も跳躍して空中に身を放り投げてバク転しながら獅子へ踵落としをしていた。
 勿論獅子は大通りの中央分離帯の上に落下。車やタクシーやトラックが急ブレーキをしながら止まり、人が携帯端末を手に集まっている。
 あちゃー、と一度頭を抱えたウィズィだが。あの獅子が脳震盪から復活して攻勢に出て、人々を襲うのはいくらなんでも寝入りが悪くなる。という事で、ビルの壁の、僅かな窓の凹凸を足場に90度の坂道を走っていく――ビルの中部あたりでビル壁を蹴り、空中に再び身体を放った。その落下予想地点を上手く調整しながら、ナイフの刃を下へと換える。
 真直下――自然落下に身を任せ、獅子の脳天をナイフで穿った。獅子の頭がコンクリートに顎からぶつかり衝撃に歌舞伎町に地震が発生。震源地はウィズィ。
 しかし、獅子はタフだ。
 陥没した地面から顎を持ち上げふり払い、ウィズィはトラックの荷台に着地。そして再び蹴り、トラックが左右に揺れていく。
「後先考えないのは獣だけじゃない‪──‬クソレズだって負けませんよ!!」
 斬撃、蹴戟、斬撃斬撃斬撃、斬、斬、斬――!!
 そして振りかぶった拳で獅子の側面を穿つ――、獅子の巨体が空中に浮き、バウンドしながら歩道へぶつかり電柱を薙ぎ倒した。
 なぜか周囲から歓声――酔っ払いは状況は読み込めていないのかもしれない――が上がり、しかし、そこに残った虎と人型の影が上から落ちてきた。両名、怒りに震えるようにキレているように見える。そして、ジョージ、紫月、アウローラも集結。
「今すぐ倒しますんで! 応援よろしくお願いしまっす!!」
 ウィズィの声で――舞台は整った。
 宵闇の英雄は、観衆の視線の中で武器や拳を構える。残す、たった二体の敵を秒で終わらせたのは言うまでもない。


「破損はそれなりか」
 ジョージの瞳がウィズィの背中を射抜いた。
 びくりとしたウィズィが、ギギギと壊れかけの人形の首のように少しずつジョージの方向を向くと、精一杯の苦笑いでピースをした。
「あまり他の世界を壊したらいけないね」
「事故と言いますかなんと言いますかあはは――あ! そこの人、怪我はありませんかー!!」
 ウィズィは人混みの中へ紛れるように消えていく。
「だが怪我人が出ないから大目に見ないといけないな」
「はい! 此処まで派手にやってけが人がいないのは、凄いと思いましたまるっ!」
 アウローラは地面にめり込んでいる虎や、ビルのガラス窓を突き破って布団のように垂れ下がっている人型を見ながら手を叩いた。
 薄く笑らいながらジョージは再び煙草に火を点けた。ジッポのオイルの香りと、周囲の喧噪。そして遠くから聞こえるサイレンの音に、アウローラの背へ手を置いた。
「騒がれる前に帰らねばな」
「はあーい」
 暗い路地へ入りながら、紫月は身体を伸ばした。久々に大きく運動したのだ、愉しかったと言えよう。まだまだ世界には知らない未知なるものが多い。
 今日は、その一端の闇を穿ったのだ。イレギュラーズの背中で、闇の街は光り輝く事だろう。

成否

成功

状態異常

なし

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