PandoraPartyProject

シナリオ詳細

優しきものよ。願いを聞いて。

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

・願い
 小さな村にある教会の鐘が朝を告げる。しばらくすると民家の煙突から煙が上がり始め、女性や子どもが井戸に水を汲みにくる。この村の領主さまがいち早く取り入れてくれた滑車のおかげで水汲みは驚くほどスムーズになり朝の時間が有効活用できるようになったと評判だ。
 すべての家の人が井戸から水をくみ上げる頃になると若い働き盛りの男たちが働きに家を出る。今の時期は本来なら収穫も終わり暇な時期であるのだが、領主さまの提案により道の舗装工事の仕事のおかげで畑が少ない家でも安心して冬を越せる。
 他の村に比べてほんの少し税金や徴収は多いが、村人にとって自慢の領主。敬意をもって村人は日に一度は領主の住む屋敷にを見て思いを馳せるのだ。


 整理整頓された部屋。そこではドレスを身にまとった小さな女の子が世話しなく書類に目を通してはサインして、時には駄目だしの一言を添えて右から左に流していた。
 少女の名前はヒューイ・エレンシア。村の領主をやっている。御年300歳を超える不老不死者である。彼女の一日は村人からの要望をまとめた書類や手紙の整理、財務管理の書類に目を通すところから始まる。
「失礼します。お嬢様、お茶が入りました」
「うむ。ありがとう。丁度終わったところだ……なぁ、いい加減お嬢様はやめてくれないか?私の方が年上なんだぞ?」
 書類整理が終わった頃に現れた執事服の老人。モノクルをかけた優し気な紳士のような風格のある彼はポットからカップに紅茶を注ぎながら微笑む。
「幼少のわたくしめにそう呼べとおっしゃったのはお嬢様ですよ。今更変えられません」
「そ、それはそうだが……その……私の夫だろう。呼び捨てにしても構わないじゃないか」
「御戯れを。その話は丁重にお断りいたしましたよ。お嬢様」
「ちっ流れで行けるかと思ったが相変わらず堅いな。ジョッシュ」
 一瞬だけ赤らめた顔をすぐに戻すヒューイ。かれこれ何百回目かになる愛の告白のようなものを軽くいなされてほんの少し不機嫌になりながらも一番リラックスできる時間を心から楽しんでいる。
 ジョッシュと呼ばれた老人は懐からメモ帳を取り出すと本日の予定の確認を始める。村の視察であったり、今日訪れる客の確認であったりといつも通りの日常の予定をよどみなく主人に伝えていくジョッシュ。
「以上となります……こほっげほっ……失礼いたしました」
「…………もう70を超えたのだったか」
「えぇ、ずいぶん長く元気にお嬢様にお仕え出来ております」
「そうだな。うむ。今日はもう下がれ、予定は聞いた。私一人でも十分だ」
 しっしっと手で追っ払うようなしぐさをしながら早く休めと付け加える。ジョッシュはしばらくどうするべきか考えたが一度口から出たことを曲げるお嬢様ではない事を知っている。ここは素直に休んでおかないと後で大変なことになるのは長年の付き合いでわかっている。
「かしこまりました。では本日は失礼いたします」
 深く一礼をしてから部屋から出ていくジョッシュを見送ってから、ヒューイは深いため息をつく。
「……1人でいいわけないだろう馬鹿者。なぜ、私は不老不死なのだ。何人愛しい人を見送らなければならない。誰でもいい……私を殺してくれ」


・優しきモノ
「やあ、こんにちは、初めましての人は初めまして僕はカストル。境界案内人さ」
 銀髪の少年は軽く挨拶をすませると真剣な表情になってイレギュラーズ達の顔を改めて見る。
「彼女の悩みに共感できる人はひょっとしたらイレギュラーズの君たちには多いのかもしれないね」
 長い時を生きた者、これから生きる者。そうでなくても友達や恋人を失うということは辛い事だと知っているものは多いだろう。
「今回、君たちにやってもらいたいことは彼女の所に訪問してあげてほしい。彼女は村をより良くしようといろんな人の話を聞きたがっているからね。どんな話でも喜ぶと思う。訪問の時刻はだいたい夕方ぐらいに全員で行ってもらうよ」
 本当に伝えるべきことから少しの間、目をそらしながら、カストルは説明を続ける。
「あんまり話が長引くとジョッシュさんが心配で見に来るからね。あんまり長話はいけないよ?」
 一通りの説明を終えてから、深く深呼吸をして改めて正面を見る。
「君達は彼女の運命を変えることのできる存在として召喚される。彼女もそれにたぶん、気が付いている。だから期待もしていると思うんだ。どうするかはお任せするよ。彼女と会話が終わり次第戻ってこれるから。それじゃあ、よろしくね」
 カストルは軽く手を振って説明を終えた。

NMコメント

 どうも、おはこんばんちは、あなたのパンツと鼠蹊部です。
 不老不死って美しくて残酷ですよね。だから大好きです。

・目標
 ヒューイとお話をするのが目標となります。自分はこんな所に住んでたとかそんな話はとても喜びます。
 もちろん、女の子ですから恋バナも大好物ですよ。もちろん、長命の者しか分からない苦労話もいいでしょう。
 以下人物情報

 ヒューイ・エレンシア
 肉体年齢は13~15ほどで止まっているが300歳を超えている。不老不死者。何をやっても死ねなかった。
 村をより良いものにしようと奮闘中である。
 50年ほど前からジョッシュに惚れてしまいアタックを仕掛け続けているのだが未だに実っていない。
 不老不死だが戦闘能力は皆無である。

 ジョッシュ
 ヒューイに仕える執事。優し気な紳士の風格のある老人。76歳。
 ヒューイからの好意には気が付いているがヒューイの大切になりすぎないようにと好意に気が付いてからは一歩身を引いている。
 随分前から後継者を探しているのだが見つかっていない。
 年齢のせいか最近は病気にかかりやすくなっているようである。

・チートについて
 彼女にあなたが望む終わりを与えることができるチートを得ることができます。

  • 優しきものよ。願いを聞いて。完了
  • NM名パンツと鼠蹊部
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年10月16日 22時00分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
アルメリア・イーグルトン(p3p006810)
緑雷の魔女
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
スカサハ・ゲイ・ボルグ(p3p007639)
「牙羅九汰堂」店主

リプレイ


「私はヒューイ・エレンシア。ここの領主で不死者だ。どうぞひとつよろしく頼む」
 領主の自己紹介が終わったとたん、ばね仕掛けのおもちゃの様に椅子から立ち上がった『「牙羅九汰堂」店主』スカサハ・ゲイ・ボルグ(p3p007639)
「やっふぅー! 私はスカサハ・ゲイ・ボルグ! 異世界から来た美女型機械人間でありますよ!」
 キラっと星でも飛び出してきそうな決めポーズ。ヒューイにわかったよろしくスカサハと言われてから着席する。
 スカサハのおかげで自己紹介の流れが出来たので次々に自己紹介を始めていく。続いたのは『絵本の外の大冒険』アルメリア・イーグルトン(p3p006810) である。
「私はアルメリア・イーグルトン。趣味はひたすらに物語を読むこと」
 アルメリアの長い耳を興味深そうに眺めるヒューイ。隣に視線を動かすと同じように長い耳を持った『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172) と目が合う。
「ドラマ・ゲツクです。今日はヒューイさんとお話にきました」
 最後に『付与の魔術師』回言 世界(p3p007315)が口を開く。
「俺は回言 世界だ。早速だが、ちょっと俺は外そうと思う……俺は微妙な話しかできなさそうだしな」
「そうか、わかった。でも戻ってきたら話を是非聞かせてほしい」
 女の子たちの話に水を差すだけになるだろうし、1つやりたいことが世界にはあった。故に部屋から退散したのだった。


「私とドラマの生まれは深い深い森の中で……大樹ファルカウっていう大木に寄り添うように生きているのね」
 アルメリアの言葉にこくりと頷いて見せるドラマ。2人を見比べて頷き理解を示すヒューイ。
「エルフみたいなものなのか? 本の中のエルフは長命だと聞くが、ひょっとして」
「そうね。私は300歳ぐらいは余裕で生きる予定よ。不死じゃないけれど、不老といって差し支えないのよね」
 長命という言葉を聞いて前のめりになってアルメリアの話を聞き始めるヒューイ。
 今度はこちらからとアルメリアは気になっていたことを質問し始める。
「あなた以外に不老不死の人はいないの?」
「居ない……私のような思いをしている人がいるとは思いたくはないな」
 アルメリアからの質問にしっかりと答えながら、お互いに質問を繰り返し、相互理解を深めていく。
 そんな仲良くなりつつある乙女たちの会話で行きつく先は恋バナである。
「参考までに聞きたいのだけれど、ヒューイって今まで好きな人とかできた?」
「もちろん、たくさんいた」
 昔を懐かしむような表情で虚空を見つめる。本当に色々あったのだろう。
「それなら、今はどうかしら?」
「……いるがな。断られっぱなしで」
 今という言葉を聞いた瞬間に扉の方をみてしまうヒューイ。その反応にふふっと笑いながら話を続ける。
「断られた? じゃあ……泣き落としてみるとか!」
 アルメリアの提案にお茶を吹き出しながら首を横にふって無理無理とジェスチャーをする。
「い、今更もういちど本気の告白とか……」
「おせっかいかもしれないけどサ。後悔のないようにしたいと思わない? 死が二人を分かつまでーなんて言葉があるじゃない」
 さらに続けられたアルメリアの提案に今度は口ごもり、視線をさまよわせる。建前や自尊心や色んなものに阻まれている様子がここにいるものならよくわかる。
「私のお母さんなんかは、結構長生きで……昔話とか結構するの。思い出抱えて生きるっていうのも案外いいものかもよ?」
「……アルメリアの母君はとてもお強いひとなんだな……えほんえほんっっ! そうだ。ドラマ、好きな人とかいないのか?」
 自分がしたいこと、憧れなどをアルメリアに絶妙に突かれて、仕切り直すためにドラマに話を振った。


「好きな人は、います……ですが、あと50年もしたらお別れ……することに、なります」
「……ん? もしかして、君たちの住む世界は長命の者と短命の者が入り乱れているのか?」
 長寿の者、短命の者が入り乱れる世界から来たと知り神妙な顔になる。
「はい。私も不老不死、ではありませんが他の種族の方よりも長命な種族の身です。私の好きな彼は私達に比べたら短い時間しか生きられない種族です」
「……頼む、ドラマの話を聞かせてほしい」
 同じような境遇にあるドラマがどう考えて、何をするのか、ヒューイはそれを聞き漏らすことのないようにと姿勢を正して聞く体勢になる。
「私はこれまで長い時間を、書庫の中で過ごしてきました。長い、長い年月でした」
 今までの私の話。
「そんな中である物語と出会い、外界へと興味を持ちました。いつかこの手で私の物語を書いてみたいと思っていました」
 今とこれからの私の話。
「そしてそれは『私だけの物語』だと思っていました。でも彼に出会って、それは『私達の物語』へと変わりました」
 私達の物語の終わり。それを考えたくなかったドラマだが、あえて今その終わりを定義するのであれば。
「彼と別れた私はそれを書き上げて……それを永遠のものにすると思います」
「素敵なお話だ……物語になって永遠になるか……その永遠はきっと素敵なんだろう」
 自分では決して思いつかなかった結末をドラマは教えてくれた。終ってからもその人を、その人の物語を愛するというドラマの考え方。
 その考え方をかみしめるように頷いて、ドラマにしっかりと礼を述べた。


「つぎはスカサハの番でありますよぉー! 今から機械の素晴らしさをお伝えしていくであります」
 しんみりとした空気を一瞬で振り払う元気な声。次の話が切り出しにくい空気であったが彼女には関係はなかった。
 しばらくの間、機械というものがどういうものなのか談義が繰り広げられる。ヒューイは興味津々に話を聞いていた。
「しかし、不老不死でありますか! スカサハも実質同じ様な感じでありますからその苦労とか気持ちはわかるでありますな」
「わかってくれるか。話を聞いている限りそうだとは思っていたが……」
「まあ、スカサハの場合はコアさえ無事ならOKという代物ですから厳密には不老不死とは違うでありますが」
 機械談義の次は不老不死談義で盛り上がる。
 世界の違いからか、時には肯定、時には否定しながらも大いに盛り上がっていく。
「しかし……愛しい者が自分を置いて先に逝くのは…何度経験しても慣れない事ではありますな」
 スカサハの明るい雰囲気がふっと隠れ、深い悲しみの表情になる。
「我がかつての主の様に大往生で幸せに逝かれた方も居れば、我が友の一人の様に戦場で壮絶な死を迎えられた方も居る……自身が長く生きれば生きる程そのやりとりを見る度に虚しくなるでありますな」
「君を作った人は本当にすごい人みたいだな。君の感情は人の感情と遜色ない」
「はいっすごい人であります。作った人もそうでありますが、私が生き続けて彼等彼女等の生き様を伝えれば、後世の者達の中で彼等は生き続ける……その想いで私は今も生き続けているでありますよ」
 スカサハが生きる理由。制限時間のない一生を過ごす理由。その理由はヒューイに足りないものである。
 今日のお客様は揃ってヒューイに知らなかったことを教えてくれ、更には。
「ただ……貴女が望むというのならスカサハは貴女の命を奪う事は出来ます」
 彼女の悲願すら叶えてくれる素晴らしきお客様であった。


 場所はかわりジョッシュの自室にて。
「ヒューイさんの好意にはとっくに気づいてるんだろう?」
「それはもちろんでございます。しかし、後継者をみつけねば……」
 そこには世界とジョッシュが2人で小さな机を囲んで話していた。
 何もない殺風景な部屋ではあるが、暮らしていくには十分な設備である。
「ジョッシュさんにはもう寿命はそう残ってないだろうし、互いに悔いの無いように過ごしてほしくてな」
 歯に衣を着せない言に少し驚いたようだが、むしろ好感を持ったようで笑顔を見せありがとうございますとだけ言葉にする。
「余計なお世話は千も承知だが、一度2人で……それを渡してから腹を割って話した方がいい」
 殺風景な部屋に唯一不自然に置かれた豪華で小さな箱が目に移り、すぐにそれが何か分かり言葉を変えた。
「結局、どうあがいても貴方の死は彼女に悲しみをもたらすんだからな。その前に少しでも喜ばせてやったほうがいい」
「しかし……いえ、ありがとうございます。では、この風邪が治ったらすぐにでもお話してみましょう」
 ごほごほとワザとらしく咳をするジョッシュ。経験則で言えば治るのに一週間程度はかかる。その間にこのふらつく焚きつけられた気持ちを静められればと考えていたが……
「そうか、わかった」
 その言葉を聞いてすぐに世界はミリアドハーモニクスを発動。ジョッシュに活力を与え、あっという間に風邪を治癒させていく。
「一体何を……」
 質問には答えず、小箱を拾い上げジョッシュに渡す。少しだけ考えたジョッシュであったがすぐに部屋を出て行ってしまう。
 不老不死という退屈な時間に少しでも減らせたのであれば来た意味もあったなと思いながらその背を見送る。


「そろそろ時間ですね」
 ドラマの言葉に暗くなっていることに気が付いた。結局、彼女は悩んだあげく答えをだせていなかった。
「もしこれから、辛くて辛くて堪らないようなコトがあったら、これを飲んで下さい」
 ドラマがそう言って小瓶を手渡してくれなかったら彼女は比喩ではなく永遠に悩んでいたかもしれない。
「もしも、最初にスカサハに命を奪えると聞いていたら死を選んでいたかもしれない……ありがとう」
 お礼を言って頭を深く下げる彼女にドラマは自分もいつか経験するのであろう別れに思いを馳せる。彼女の物語に自分で終止符を打てない事を心の中で謝っていた。
 あの薬はただの栄養剤。あのお薬が必要になる時が来ない事を祈りつつ、イレギュラーズは屋敷をあとにし元の世界へ帰っていった。

成否

成功

状態異常

なし

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