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シナリオ詳細

<Sandman>夜明けを待って

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●夢のはずれ
 ラサ、夢の都ネフェレストのはずれに存在する、小さな宿。
 そこには現在、多くの幻想種たちが身を寄せ合って隠れていた。
「……すまねぇな、身内が」
 そんな幻想種たちの様子を見ながら、ひとりの男が、呟いた。ディルク派の商人である。
 ラサの商人による、幻想種誘拐事件――その首魁である『ザントマン』が、ラサの古参商人であるオラクル・ベルベーグルスであることが判明した。
 ラサの傭兵団を束ねる、事実上の国主たるディルク・レイス・エッフェンベルグは全体合議の場においてオラクルを糾弾。しかしその場において、オラクルは根回しと甘い汁を吸わせた商人たちを率い、深緑への侵略を宣言したのである。
 結果、ラサは真っ二つに割れた。
 だがこれは、潜伏していた敵が、分かりやすく手をあげたに等しい行為である。
 ならば、あとはその全てを潰してやるだけだ。
 そんな国家を二分する争いの最中、ディルク派の商人たちは、救助した幻想種たちを匿い、深緑へと逃がす算段を立てていた。
 この宿に、秘密裏に集められた幻想種たちも、奴隷としてさらわれるも、救助された者たちである。
 そんな救助された幻想種たちであったが、しかしその目に安堵の色はなかった。
 疲労もあるが、幻想種たちにとって、ラサとはすでに敵地に等しいのだ。そして目の前の商人すら、ラサの所属となれば、信用に値するかは難しいのである。
「これが現実だな」
 そんな視線を受けながら、もう一人の男が呟いた。
「腹が立つな……もちろん、オラクルの野郎にだ」
「ああ……ラサの信頼を取り戻すのには、また時間がかかるだろうな……」
 商人たちは、夜空を見上げた。
 商人たちは、明朝、幻想種を深緑へと帰すために、ここを出発することになっている。
 夜明けまで、数時間……。
 何事もない事を、商人たちは祈った。

●護衛任務
「さてさて、皆さんお仕事ですよ!」
 『小さな守銭奴』ファーリナ(p3n000013)は、集まったイレギュラーズ達へと告げた。
 今回の色は、ザントマン事件の被害者である、幻想種たちを匿った宿の護衛任務だ。
「彼らは明朝、深緑へと向けて出発することになっているのですが、その間、皆さんに護衛をお願いしたいと。というのも、現在ラサは真っ二つに割れていまして。あちこち敵だらけ……如何に秘密裏に事を運ぼうとも、念には念を入れて念を入れ過ぎることは無い、という状態でして!」
 現状、ラサはディルク派とオラクル派で真っ二つだ。町中に敵が潜んでいることと同義であり、幻想種たちを匿う宿にも、敵襲が行われる可能性は高い。
 オラクル派の商人たちにとって、深緑の幻想種は、生きた宝石……もはや商材なのだ。向こうからしてみれば、奪われた商品を奪い返す、となっても不自然ではあるまい。
「正直ドン引きする思考回路なんですが、どうも向こうも真っ当ではないようですので!」
 というのも、ザントマン=オラクルは魔種である可能性が高いというのだ。そうなれば、派閥に属する商人たちも、すでに正気を失っているとみて間違いはないだろう。
「連中、何するかわかりませんので……くれぐれもお気を付けください! それでは、お仕事頑張りましょう!」
 そう言って、ファーリナはイレギュラーズ達を送り出した。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 救助された幻想種たちを匿う宿。
 宿を護衛し、幻想種たちを無事に故郷へ帰すお手伝いです。

●成功条件
 幻想種たちを守り切る

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●状況
 ラサは、夢の都ネフェレストのはずれに存在する、小さな宿が舞台です。
 此処には2名のディルク派の商人と、10名の幻想種たちが隠れています。
 彼らは明朝、深緑へ向けて出発しますが、その間の警護を、皆さんにお願いしたいとの事です。
 これはメタ的な情報ですが、敵の襲撃は必ず発生します。
 襲撃に備えつつ、幻想種たちの心のケアなんかもできると良いかと思います。

●エネミーデータ
 暗殺者 ×X名
  特徴
   そこそこに手練れの、獣種の傭兵です。
   出血や毒を付与するBSと、高めの回避が特徴。
   敵の正確な数は不明ですが、10名以上20名以下になります。

●NPCデータ
 商人 ×2
  特徴
   ディルク派の商人です。
   戦力にはなりません。
   なお、身元ははっきりしているため、裏切る要素はありません。

 幻想種 ×10
  特徴
   奴隷としてさらわれ、救出されたばかりの幻想種たちです。
   肉体的、精神的に疲労しており、深緑出身者以外への警戒心が高くなっています。
   とはいえ一時的なものなので、真摯に接すれば警戒も解いてくれるでしょう。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。

  • <Sandman>夜明けを待って完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年10月12日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

羽瀬川 瑠璃(p3p000833)
勿忘草に想いを託して
伏見 行人(p3p000858)
精霊の旅人
ヨハン=レーム(p3p001117)
(((´・ω・`)))
シャスラ(p3p003217)
電ノ悪神
リナリナ(p3p006258)
オジョ・ウ・サン(p3p007227)
戒めを解く者
クリスティアン・メルヴィル(p3p007388)
Star Lancer
遠野・マヤ(p3p007463)
面白れェ女

リプレイ


 月が出ていた。
 静かな夜だった。
 夢の都ネフェレスト。その外れ、小さな一軒の宿には、今、傷つき疲れ切った命が息をひそめている。
 その宿の一室。その傷ついたもの達が身を寄せ合う、その場所で。
 静かに――。
 子守歌が、響いていた。
 『RafflesianaJack』オジョ・ウ・サン(p3p007227)が、歌を歌い、窓から空を視る。
 その歌声には、奴隷としてさらわれてきた幻想種たちに、幾ばくかの心の安らぎを与えられただろうか。オジョ・ウ・サンは、音楽そのものは知らない。だが、その歌を歌えば――ヒトや獲物がやってきた、それだけは知っている。
 甘い蜜に誘われるように。だからこの歌はきっと、ヒトにとって心地が良いのだろう。だからオジョ・ウ・サンは、子守歌を歌う。
(「しかし……よくもまぁ、こんな酷い扱いが出来たもんだ」)
 『Star Lancer』クリスティアン・メルヴィル(p3p007388)は、たまらずに頭に手をやった。そのまま、頭を掻く――苛立たし気に。
 クリスティアンの事を怯え、不安げに見つめる幻想種たち……皆一様に憔悴しきり、恐怖と不安に神経をすり減らしていて、中には幼い子供の姿もあった。
 目立つ傷そのものは存在しなかったが、心の傷は計り知れない。やつれているのは、不安からか、あるいは与えられなかったためか、食事も満足にとっていないからだろう。
(「こんな目にあったんだ……すぐに信じろとは言えねぇ……」)
 幻想種たちの目に浮かぶのは、世界への恐怖の色だ。故郷の――深緑以外のすべてを拒絶する色。それはあまりにも痛々しく、悲しい色だった。
「――お酒をその身に宿しながら、大空を飛ぶ精霊を、見た事はあるかい?」
 ぽつり、と、『北辰の道標』伏見 行人(p3p000858)が言った。
「とてもとても大きな舞台で、光と一緒に踊るヒトを、見た事はあるかい?」
 穏やかに――怯えさせぬように。出来れば己の言葉に、想いを馳せてくれるように。
「つい最近だと、飲んだら女になっちゃう薬を飲んだ事も、あったなあ」
 苦笑してみせる。でも、楽し気に。
 世界には――酷いことが沢山あったかもしれない。
 でもそれ以上の、素晴らしい、素敵なものが散らばっているのだと。
「……今すぐにとは言わない。でも、どうか――この世界は嫌いにならないで欲しい」
 『勿忘草に想いを託して』羽瀬川 瑠璃(p3p000833)もまた、静かに微笑んで見せた。
「私達が来たからには、必ず深緑へ送り届けます」
 たとえ今は、信じてもらえずとも――言葉は、想いは、つくしたかった。
(「とても辛い……つらい思いを、皆さんされたのでしょうね……」)
 胸中に浮かぶ悔しさを、ぐっと押しとどめた。幻想種たちの痛々しい姿。傷ついた瞳。見ているだけで、胸が苦しくなってくる。
「今すぐに信じるとか、安心するとか。こんな状況じゃ無理だよな」
 クリスティアンが、言った。
「だから。安心できるような状況になるまで、俺達が絶対に守ってやる。必ずだ」
 力強く――どうか、届くようにと。
 クリスティアンと、『電ノ悪神』シャスラ(p3p003217)は一瞬、視線を交わした。シャスラは静かに、頷いて見せる。
「私の言葉は警戒心を解くには足りないと思われるが……だが、汝らを無事に故郷へ送り届けることは約束する」
 言葉は少なく。しかし想いは乗せて。
「私達は貴方達を必ず守り、深緑に帰す」
 『特異運命座標』遠野・マヤ(p3p007463)が、できるだけ穏やかな笑顔を浮かべつつ、言った。
 ギフトが制御できるのならば、と、マヤは思う。
 心落ち着かせるBGMでも、聞かせてあげられたのだが。しかし、マヤのギフトは、マヤの制御下にはない。
 マヤができることは、ただ真摯に語り掛ける事だけ。
「安心できる状況ではないけれど……無事帰りつくためにも今は少しでも、休んで」
 信じてほしい、信じてくれ、と叫びたかったものもいたかもしれない。
 でもそれはきっと、さらに幻想種たちを怯えさせるだけだろう。
「ふふん、ローレットの番犬に任せてくださいね。わんわん、わおーん」
 精一杯おどけて、『二度と折れぬ盾に』ヨハン=レーム(p3p001117)は言ってみせた。
 おどけてはいるものの、その誓いは真実に。
 番犬として、ここに居るすべてを守ることを、心に誓う。
 静かに、子守歌が響く。
 月が少し、傾いた。
 『やせいばくだん』リナリナ(p3p006258)は、その月を眺めながら、何か、静寂を破るような――奇妙な感覚を覚えていた。それは、さながら穏やかな夜の闇に、ドロッと、タール的な何かが混ざり混んで来たような、そんな違和感――。
(「おー、商人の二人。ローレットに依頼したこと、これ大正解」)
 それは、直感からくる、根拠のない、しかし確かな確信であった。
 リナリナがふらり、と扉から出るのへ、仲間たちが続く。
 少数の護衛のみを残して、扉は閉ざされた。


「ああ、宿の親父はこっち側の人間だよ」
 商人に宿の経営者の素性について尋ねたのは、マヤだった。
「なら、内部からの攻撃はないかしら。他に泊り客が居なかったのは幸運ね」
 マヤの言葉に、
「宿のおじさんも協力してくれるそうですよ。というか、今日はもう商売にならないだろうって言ってました」
 ヨハンが言う。まぁ、状況が状況である。宿の主人も、イレギュラーズ達の指示に従い、今日は早々に店じまいという事にしてくれた。
「さて……それじゃあ、俺も持ち場に着こうかな」
 行人が言う。すでに精霊にお願いし、幾つかの見張りを頼んでいた。
「では、僕は正面に……朝まで、頑張りましょう」
 ヨハンの言葉に、仲間達は頷く。
 メンバーの配置としては、以下のようなものだった。
 まず、正面入り口にヨハンが立つ。
 裏口には行人と精霊たちが見張り、この二か所で襲撃を察知する。
 内部には、まず、クリスティアンとがマヤが廊下および商人の付近に待機。
 オジョ・ウ・サンと瑠璃が幻想種たちのいる室内窓側に、入り口側にシャスラがたち、入り口廊下側をリナリナが蓋をする、と言った形だ。
 かくして、イレギュラーズ達の護衛は始まった。それは長い夜の幕開けでもある。
 緊張の糸を途切れさせるわけにはいかなかった――彼らが背負っているのは、幻想種たちの命、いや、信頼と言ってもいいものだ。
 それは、気を抜けばいとも簡単に途切れてしまう物だろう。だからイレギュラーズ達は決意を胸に、夜の闇を睨み続けたのである。
 そして。幻想種たちが、疲労の限界からうとうととし始めたころ――。
 夜闇を切り裂く、甲高いホイッスルの音が、辺りに響いた。
「裏か!?」
 クリスティアンが叫ぶ――だが、同時に幾つかの足音が正面より聞こえてきたのである。
「両面からね」
 マヤが答える。二人は一瞬、目を合わせる――そんな二人へ、商人は言った。
「行ってくれ!」
「お、俺たちは俺たちで何とかする! 表の奴らを手伝ってやってくれ!」
 震える声で告げる商人の覚悟をくみ取った二人は、力強く頷く。
「私は正面に行くわ」
「なら、俺が裏だ。リナリナ!」
 クリスティアンの言葉に、部屋の入り口に立っていたリナリナは叫んだ。
「任せろ! マンモ一匹見逃さない!」
 二人は同時に、外へと駆けだしていく。
 まずは正面。4人の獣種を相手に、大立ち回りを演じているヨハンの姿があった。
「ああ、どうも! こいつら急に!」
 振るわれた鋭い短刀の一撃を、『フルムーン』で受け止める。月光の如き刃が、短刀とぶつかり合い、火花を散らした。
「裏にも来てるわ!」
 叫びながら、飛び込む――流れ出る、緊迫感のあるBGMは、マヤの緊張を現している。
「僕が全部止めます! 攻撃、お願いしますよ!」
 次々振るわれる短刀の攻撃を、ヨハンはフルムーンで受け止め、弾く。マヤも刃を手に、踊りかかった。月夜に輝く幾筋もの光――剣戟が鳴り響き、やがてその刃が、獣種の男を捉える。
「ぐっ、がっ」
 獣種の男が倒れるのを確認しつつ、マヤは次の獲物へとその狙いを定めた。
 一方、裏手でも、4人の獣種の男と、行人とクリスティアンの戦いが繰り広げられていた。
「――ふッ!」
 強く息を吐きながら、カウンターで放たれた行人の刃が、獣種の男を捉えた。
「君達が何者であるか、是非は問わない。だが、ここで出会った以上お互いの立場は明確だ」
 刃を濡らす血を振り払いながら、行人はいう。
「ここは俺達が未来を護る場所。それを掠め取ろうというのならば俺はこの剣で答えよう」
「チッ……やれ! 此奴らをやっちまえば、それで終わりだ!」
 一瞬、その圧に気おされた獣種たちは、しかし覚悟を奮い起こすようにがなり立てた。短刀を夜闇に煌かせ、二人へと襲い掛かる!
「浚うだけじゃ飽き足らねぇってか。いいぜ、相手してやるよ!」
 男たちの刃をその武器で受け止め、クリスティアンは叫んだ。高速で突き出される短刀を、受け、あるいは反らし。自らを盾として、獣種たちを威圧する。
「俺様はなぁ! お前らにはとことん、頭に来てんだよ!」
 その手に、星々の輝きにも似た、眩い光がはじけた。生み出されるは、星槍。
「我が手に座す牙持つ侵獣、荒みて餓えれば御霊を喰らう。竦然せよ、汝は天狼の好餌也!」
 天狼の星槍が牙となりて、獣種の男を噛み砕く。霊体を抉り取るとされるその一撃が男の魂を噛み砕き、そのまま命を手放させた。
「残り、2……!?」
 と、クリスティアンが叫んだ瞬間である。
「いや、まだだ! 今中に入ったらしい!」
 精霊からの報告を受けた、行人が叫んだ。


「二チームで陽動って事なのか!?」
 クリスティアンの言葉に、獣種の男がにやりと笑った。
 続いて、二名の獣種の男が、増援として現れた。ここでこちらを足止めするつもりか。となれば、正面にも増援が現れているとみるべきだろう。
 どうする? 二人の脳裏に一瞬の迷いが生じる。だが、それは本当に一瞬だけの事。
 中にはまだ、多くの仲間たちがいる。ならば、仲間を信じ、自分たちはここに居る敵を確実に撃退する――それこそが、自分たちの役割だ。
 一方、室内では、騒ぎに目を覚ました幻想種たちが、己の身を庇うように、怯えた様子を見せた。
 静かに、子守歌が流れるなか、隣部屋の窓ガラスが粉砕される音が聞こえた。幻想種たちがたまらず、悲鳴を上げる。
「大丈夫……大丈夫です……!」
 その翼を大きく広げ、さながらその翼であらゆる災厄から守って見せると伝えるかのように、瑠璃は幻想種たちへと告げた。
「るら~! アンサツ、ダメ! 禁止!」
 部屋の外からは、リナリナの叫びが聞こえる。シャスラは瑠璃に向って頷くと、扉を開けて外へと躍り出た。
 廊下には、5人の獣種の男達の姿があった。リナリナが、獣種の男を謎の一撃で昏倒させるのに続けて、
「汝らは、許しがたい行いをした」
 シャスラのレールガンが火を噴いた。高速の射撃を受けた獣種の男が吹っ飛ぶのへ、リーダー格と思わしき獣種の男が、二人へと目くばせをする。
 二人は頷くと、姿を消した――本能的な危機を察したリナリナが、
「窓! そっち行った!」
 叫ぶ。危機は察したものの、リナリナ、そしてシャスラは室内に戻ることは出来なかった。戻れば、そのまま中へとなだれ込まれる。
 そうなってしまえば、中にいる幻想種たちが傷つくかもしれない……!
 一方、室内の窓ガラスの割れる音が響いた。窓から入り込む、二人の男――だが、
「フ、フフフ……来ちゃったンデス、ネ?」
 疑似餌がにいぃ、と笑った。
 オジョ・ウ・サンは子守歌を歌う事を止めず、捕虫袋から伸びる紅い管を、獣種の男へと突き刺した!
「がっ……!」
 男が悲鳴を上げるのに構わず、オジョ・ウ・サンは男の生命を吸い上げる。子守歌につられてくるのは、人と獲物。ならば此奴は獲物である。獲物であるならば、捕食するのが、オジョ・ウ・サンの道理であった。
「フフ、オイシ……♪」
 その捕虫袋が歓喜に震えた。一方、もう一人の獣種の男も、窓からの侵入を試みるが、オジョ・ウ・サンにからめとられた。行われるツマミグイ……その光景から幻想種たち隠すように、あるいは敵から守る様に、瑠璃は翼をはためかせた。
「此方は大丈夫です!」
 廊下に、瑠璃の声が響く。リナリナはにやり、と笑い――シャスラはレールガンを構えて。
「アンサツ、失敗!」
「汝らの作戦は潰えた。投降するか死か、選べ」
 舌打ちをしつつ、残った獣種の男が、雄たけびを上げて二人へと突っ込んだ。だが、リナリナはそれを避けて、一撃をくらわす。
 体勢を崩した男へと、シャスラの銃撃が突き刺さり、男はその命を手放したのであった。


「これで! ラスト!」
 マヤの斬撃が獣種の男を捉え、切り裂いた。がふ、と地と息を吐き出して、男は絶命する。
「戻りましょう! 中が心配です!」
 ヨハンの叫びに、二人は頷き、駆けだす。果たして正面から中へと入り込むと、
「うおっ!?」
「き、来たか!?」
 フライパンと鍋で武装した、商人二人と鉢合わせした。
「わっ、とと!」
 思わずたたらを踏むヨハンに、
「二人とも、無事だったのね?」
 商人へと声をかけるマヤ。商人二人は、飛び込んできた影がイレギュラーズであったことに気づいて、安堵の息を吐いた。
「お、脅かすなよ……」
「こっち、大丈夫!」
 と、中を覗いてみれば、リナリナと瑠璃、シャスラが此方へと視線を送っている。
「あとは裏口のメンバーですが……」
 瑠璃が声をあげるのへ、裏口から侵入してくる人影があった。ひっ、と悲鳴を上げて、商人たちがフライパンを構えるのへ、
「ちょっとちょっと、その出迎えはひどいじゃないか」
 行人が苦笑しつつ、顔を見せた。
「どうやら、撃退完了、みたいだな」
 クリスティアンも肩をすくめてみせた。
 静寂の夜を切り裂いて訪れた、嵐のような襲撃――イレギュラーズ達は、その襲撃に、見事耐え抜いて見せたのだ!
「じゃあ、チョット、ツマミグイ、してきマスネ?」
 と、オジョ・ウ・サンがうれし気にどこかへ消えていったが、触れないことにしよう。

 とはいえ、護衛は夜明けまで続く。一同はその後も油断せず、護衛を続けた。
 そしてその後は何事もなく、月が沈み、地平線の向こうに朝日が見え始めたのだ。
「漸く日の出か。しんどい夜だったぜ、まったく」
 軽く伸びなどをしつつ、クリスティアンが言った。
「ですねぇ。流石にくたくたです」
 ヨハンも苦笑して、返してみせた。
 夜が明けてすぐ、馬車が現れた。念のため身元をあらためたが、此方は商人二人の既知の人間であり、身元ははっきりとしているらしい。
「これで皆、帰れる、な!」
 リナリナがにこにこと笑った。幻想種たちはようやく、故郷へと帰れそうだった。そのことが、幻想種たちに些かの心の余裕を持たせたのだろうか――あるいは、必死に戦ったイレギュラーズ達へと、ほのかな信頼の目が芽吹いたのだろうか、その表情は、昨夜に比べて幾分か、明るい。
「昨夜も言ったけど……どうか、世界を嫌いにはならないでほしい」
 馬車へと乗り込む幻想種たちへ、行人は言った。
「きっと、皆さんがまだ見たことのない……素敵なものがいっぱい、あるんですから」
 瑠璃がそう告げるのへ、シャスラも優しく、頷いた。
 幻想種たちは、少しだけ困惑した表情を見せた後、
「は……い……」
 遠慮がちに、頷いて見せた。
「気を付けてね」
 マヤが微笑む。幻想種たちは頷いた。その中にいた小さな子供が、ぺこり、と頭を下げた。
「ありがと……イレギュラーズさん達」
 それは、心からの言葉であることは、イレギュラーズ達にもよくわかった。
 そして、つくした言葉が、心が、伝わった瞬間であった。
 馬車が行く。
 幻想種たちの故郷へと向けて。
 オジョ・ウ・サンは、静かに子守歌を歌った。
 別れの歌を知らなかったから、ヒトが喜ぶ、自分が知っている歌を、歌った。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 皆さんの活躍により、幻想種たちは故郷に帰りつくことができました。
 そしてきっと、世界を嫌いになることは、無いでしょう。

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