PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ガーディアンをブッ壊せ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●眠るは神秘か財宝か
 幻想領内のとある山のふもと。
 道などほとんどない、獣もあまり通らないような岩山地帯の一角に、ポッカリと開いた洞窟がある。
 遺跡である。
 外から見た限りただの洞窟のようにしか見えないが、中は立派な古代遺跡である。
 地下に埋もれていた遺跡が、いつしか天然の洞窟と繋がったらしい。
 だが所詮名も知れぬ遺跡でしかなく、ロクに調査が行われているワケでもない。
 大きな遺跡ともなれば、どこかの学術機関なりが調査に乗り出すだろう。しかしそういった出来事もない。
 しかし今、この場には人がいた。
 洞窟の奥深く。遺跡のほぼ最奥部。
 下って下って地下の底、整然と並び積まれた石の回廊の果てに、彼ら二人は立っていた。
「こりゃ、まずいっしょ……」
 二人組のノッポの方、自称トレジャーハンターのオレグが冷や汗と共につぶやく。
 隣に立っているのは二人組のチビの方、力自慢のコレグである。
「何だいあんちゃーん、何がまずいってんだーい?」
「見て分かれっしょ、弟よ」
「だーい?」
 コレグが手に掲げたランタンの先を見る。
 そこには部屋があった。
 広く、大きく、天井も高い。この遺跡の最も奥にあると思われていた部屋だが、さらに奥に扉があるのだ。
「でっけー扉があるようだーい」
「おー、そーりゃ見りゃ分かるっしょ。扉の前にいるデッカイゴーレム含めて」
「……あ、いるね何か」
「あの扉を守ってる門番っしょ、どう見ても」
「あんちゃん、どうするんだーい?」
「俺らじゃどうしょもないっしょ。戻るぜ、弟よ」
「いいんかーい?」
「応よ。ここ最近はなんだか盗賊の連中も動きが妙だし、俺らのお宝先越されたらたまらんっしょ」
 ランタンを持ったまま、オレグとコレグは来た道を戻っていく。
 かすかな光に輪郭を浮かび上がらせていた巨大ゴーレムも、再び闇の中に沈んでいった。

●取らぬ何かの何算用
「胡散臭い自称トレジャーハンターの人からの胡散臭い依頼なのです」
 話は、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ (p3n000003)の毒舌から始まった。
「そんな胡散臭いなら何故受けた」
「胡散臭い割に依頼自体はしっかりしていたからなのです!」
 イレギュラーズからの真っ当すぎるツッコミにも、ユーリカはしっかりとそう答える。
 つまり、しっかりした依頼なのだろう。
 すでに集まっているイレギュラーズ達の意識では、胡散臭い雰囲気がしっかりこびりついてしまったが。
「依頼主は自称トレジャーハンターのオレグ・コレグ兄弟なのです。この人たちは幻想の領内で未発掘の小遺跡を見つけて、その情報を必要な機関に売ったり、あるいは自分達も発掘したりして暮らしているのです」
 聞いている限り、確かに胡散臭いが確かにしっかりとした依頼人っぽい。
「今回は未発掘の遺跡の奥にでっかいゴーレムがいるらしくて、これを倒してほしいという依頼なのです!」
 聞いている限り、依頼内容もしっかししているっぽい。
「ゴーレムを倒したら、その奥にあるかもしれない財宝を山分けするとのことなのです」
 あ、やっぱり胡散臭かった。
 イレギュラーズはむしろ小さな安堵すらそこに覚えていた。
「分かっている情報としては、ゴーレムは人二人分くらいの高さがあるみたいです。部屋に明かりはありません。でも広いから、皆さんが十分に広がって戦えると思うのです」
 さらにユーリカは、ゴーレムが部屋の奥にある扉の前から動こうとしないことなどを教えてくれた。
「正直、財宝とかは全然期待してませんが、最近盗賊団の盗掘とかも多くなっているらしいので、その前にこっちで遺跡を確保してくださいなのです!」

GMコメント

はいどーもー! 天道です!
遺跡の奥にガーディアン。はい、ファンタジーの定番シナリオでーす!

●成功条件
・ゴーレムの破壊

●場所
・遺跡内部の結構広い部屋(光源なし・イレギュラーズが十分戦闘できる広さ)

●敵
・守護者のゴーレム
 鎧をまとった戦士を模した石造です。固い・強い・遅い!
 右手に人には持てないサイズの古びた巨大剣を持っており、主にそれで攻撃してきます。
 左手には古びた大きな盾を持っており、全身が石であるため強度・防御力もかなり高いです。
 速度と回避は死んでますが、その分、パワーとタフネスがとんでもないタイプですね。

●財宝
 あるといいですね。

  • ガーディアンをブッ壊せ!完了
  • GM名天道(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年02月25日 21時31分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
ルーティエ・ルリム(p3p000467)
ブルーヘイズ
フロウ・リバー(p3p000709)
夢に一途な
リチャード・ハルトマン(p3p000851)
再会の鐘
ティシェ・アウレア(p3p001249)
空疎の宝物庫
セシリア・アーデット(p3p002242)
治癒士
Morgux(p3p004514)
暴牛
ルーニカ・サタナエル(p3p004713)
魔王勇者

リプレイ

●薄明かりが照らすそこに
 カンテラの明かりが、重々しい闇を押しのける。
 すると、半開きになった大きな扉があった。依頼人からもらった情報の通りに、だ。
「頼もー! はっはっはー、広いね!」
 先頭に立って扉をくぐった『魔王勇者』ルーニカ・サタナエル(p3p004713)が、見える景色にまず言った。
「あそこに見えるのが、問題のゴーレムですね」
 『夢に一途な』フロウ・リバー(p3p000709)は部屋に入り、持っていたカンテラを腰に括りつける。
 照らす明かりが、奥に控えている大きな像をうっすら浮かび上がらせていた。
 離れていても分かる。事前情報通りの大きさと迫力だ。
「不思議なもんだぜ、まったくよ」
 光がなるべく広範囲を照らすようカンテラを置き、『任侠』亘理 義弘(p3p000398)も像を眺めた。
 闇がべったりと張り付いているそれは、この距離ですでに重々しい雰囲気を漂わせている。
「石像が勝手に動く、なんてな。……まあよ、今さらだとは思うがよ」
 こことは違う世界よりやってきた彼の呟きに、きっと同じ世界の出身者ならば同意したことだろう。
「広い部屋だね。あのゴーレム以外には何があるのかな」
「ここにはあの像以外に何もなさそうだ。あるとしたら、その奥だろう」
 首をかしげるルーニカに、ルーティエ・ルリム(p3p000467)が広間の奥を指さした。
 ゴーレムが立っているさらに奥。かすかに、閉ざされた扉が見える。
「位置的に見て、やはり扉を守っているんだろう」
「あの石像はまさに立ちはだかる困難。超えた先に何が待っているのか。こういうのは好きですよ」
 フロウも腕を組んでうなずいていた。
「扉の先にあるかもしれない財宝、ねぇ……」
 『Ring a bell』リチャード・ハルトマン(p3p000851)が手にしていた松明を壁に立てかける。
「ロマンのある話だが別に俺は報酬さえもらえればそれでいいな」
「へぇ、本当かしら……?」
 呟くリチャードへ、『空疎の宝物庫』ティシェ・アウレア(p3p001249)がニヤリとしつつ目を向ける。
 見られた彼は何かごまかすように視線をそらし、
「……別に興味ないぞ、ないんだからな」
 何故か念を押した。
「本当にー?」
 だが念を押したがゆえか、ティシェの笑みは逆に深まっていた。
 皆が広間に入っても、ゴーレムは動き出さない。ある程度接近しなければ起動しないのだろう。
 つまり、準備の時間は十分にある。
 イレギュラーズ達はカンテラを置く場所を考えたり、始まる前に術を使用するなりしていった。
「財宝ね。まぁ、俺としては戦えりゃそれでいいんだが」
 敷き詰められた石畳にガツンと盾ほどの幅を持った大剣を置いて、『暴牛』Morgux(p3p004514)が広間の状況を確認する。
 広い中に、皆が持ち込んだ光源が設置されてほぼ全域を薄くながらも照らしている。
 こうしてみると本当に大きな部屋だ。天井も高く、全員が散開しても戦うのに支障ないくらいだ。
「じゃあみんな、準備は万端かな?」
 今回唯一とも呼べる回復役、『治癒士』セシリア・アーデット(p3p002242)が確認に入った。
 依頼そのものは非常に胡散臭い。
 しかし、すでに皆が理解している。
 広間の奥に立つあの虚像は、間違いなく本物の守護者なのだ。
「じゃあ、行こう」
 準備を終えたのち、誰かが言って誰かが最初に踏み出した。
 ゆっくりと近づいていく。すると、イレギュラーズが立てたものではない低い音がする。
 ガーディアンが、今まさに起動した。

●堅牢たる守護者
 右手には己の背丈に並ぶほどの長大な巨剣。
 左手には己の半身を覆うほどの巨大な大盾。
 動き自体は緩慢なれど、構えた姿からしてすでに重々しい圧迫感が溢れている。
「さて、どんだけのもんか……」
 ジリジリとリチャードが近づいていった。
 その背筋に、ゾクリと走るものがあって――、
「ヤベ!?」
 彼は慌てて飛び退いた。
 直後、大質量がリチャードの胸先をかすめるうに過ぎていく。余波から起きる風に、彼は吹き飛ばされかけた。
「何だよ、今の……!」
 ガーディアンが、横薙ぎに巨剣を振るったのだ。
 踏ん張りつつ体勢を保ったリチャードが、頬を濡らす汗をぬぐう。
 石像は扉の前から動いていない。しかし、踏み込んでの横薙ぎの一閃はかなりの範囲を巻き込んでいた。
 イレギュラーズの中にくらう者がいなかったのは、僥倖以外の何物でもなかった。
「……撃ちます!」
 後方より、フロウが高めた魔力を放出する。
 しかしガーディアンが構えていた盾が壁となり、それは像の体躯には届かなかった。
「まだ、まだ!」
 フロウはさらに撃つが、だがダメだ。魔力弾は盾に阻まれてしまう。
 全く無傷ではないだろうが、目に見えるダメージもない。
 盾か、或いは像全体か、魔力に対する耐性を備えているのかもしれない。
「こっちからなら、どうだ!」
 盾の範囲外、側面へと回ったルーニカが呪力を解放してガーディアンの身を狙った。
 放った魔法は確かに命中する。しかしやはり、石のその身は傾がない。
「タハハ、硬いんだー」
 これには、ルーニカも苦笑いするしかなかった。
 ギギギと軋む音を立て、再び石像が薙ぎ払いの構えをとる。
「この、この!」
 その間も、フロウは魔力を放ち続けた。
 当たっている。当たっているのだ。ダメージは与えているはずだ。
 けれど、ガーディアンの硬質な体には傷も見受けられず、
「遠巻きにやってても、こっちの気力が先に尽きそうですね……」
 浮かぶ不安を、彼女は素直に口にした。
「そんなこたぁとっくに分かってたことだぜ」
「応よ! だから俺達が前に出るのさ!」
 持ってきたナックルを手にしっかりとはめ込んだ義弘と、大剣を前にかざしたMorguxが言い合ってほぼ同時に踏み出した。
 ガーディアンの薙ぎ払い。それを義弘はかわし、Morguxは盾で受け流して懐へと突っ込んでいく。
「オォラァ!」
「せェい!」
 ナックルと大剣が、ガーディアンの表面が激しく叩く。
 甲高い衝突音ののち、生じた反動によって後退したのはイレギュラーズの二人だ。像は、まだそこに立っている。
「ハッハ! 上等だ、それでこそだぜ石像野郎!」
 しかし構うことなく、Morguxは再び吶喊しようとする。
 するとガーディアンが右足を引いて膝を曲げた。
「しめた。やっこさん、退がったな」
 隙を見つけたリチャードが、前衛の攻撃に加わろうとした。
 数と勢いで一気に叩く。それができれば確かに楽だ。が――、
「違う、それは溜めよ!」
 離れた場所で見ていたからこそ、ティシェはそれに気づいた。
 ガーディアンは退がったのではない。力を溜めたのだ。
 激突の音が、地の底の広間を揺るがす。
「ぐおぉ!?」
「かっ……!」
 力を炸裂させたガーディアンの一閃は、義弘達三人を派手に吹き飛ばしていた。
 強靭にして強固なその身を使った攻撃は、ただの薙ぎ払いですらすでに脅威。そこに力の溜めが加われば、
「……やるじゃねぇか」
 ポタポタと血を地面に滴らせ、義弘が何とか立ち上がる。だが、受けたダメージは大きい。
 さらに、ガーディアンはすでに剣を高く振り上げていた。狙いはまさに義弘だ。
「そんな好き勝手、許すとでも?」
 割って入ったのがティシェだ。
 彼女の解き放ったオーラの塊がガーディアンに命中してその動きを一瞬ながらも制止させた。
 が、所詮は一瞬。ガーディアンはまたすぐに動き出す。
 しかしそれで十分だった。義弘は像の攻撃の間合いを外れ、セシリアの治癒を受けられる位置に移っていた。
 ガーディアンの視線が、今度は起き上がろうとしているMorguxを向こうとする。
 そこへ、死角よりルーティエが飛び込んだ。
「さすがに、これだけ大きければ狙いやすいな!」
 果敢にもガーディアンの足に組みつくと、ルーティエは巧みな体重移動によって力の行き先を操作する。
 それによって、ガーディアンの巨体が大きく傾き、そのまま像は膝をついた。
 ただブチ当たっただけではこうはいくまい。ルーティエが修めた組みの技巧のおかげである。
「今のうちに、治すよ!」
 出来た隙を無駄にはしない。
 セシリアが短く詠唱して、義弘、Morgux、リチャードの三人を順に癒していった。
 ゴゴゴ、とまた重い音がしてガーディアンが立ち上がる。
 それは三人が再び前に出ようとしたのと、ほぼ同時のことだった。
「まだまだ、滾っていこうじゃねぇか。なぁデカブツよ!」
 義弘が語気を強めて啖呵を切る。
 閉ざされた扉を前にして、戦いはさらに続く。

●地の底に眠れ
 ガツン、ガツンと音がする。
 人がひどく硬いものを叩き続ける音だ。
 拳で、または幅広の剣で、短剣で、槍で、ひたすらそこにある硬いものを叩く。叩く。叩く。
 だが壊れないのだ。
 重く軋んだ音がして、振り上げられる巨大な剣。
「下がって!」
 セシリアの号令に従って、前に出ていた者達が一斉に後退する。
 振り下ろされた刃は石畳を粉砕し、地面を派手にえぐった。
「チッ! しんどいね、全く……!」
 リチャードがうめいた。飛んできた大きめの石片が肩口に突き刺さったのだ。
 だがまだ、肩でよかった。
 腹に当たれば危うかった。足に当たれば逃げられなくなっていたかもしれない。
「ハァ……、ハァ!」
 フロウが牽制の魔力弾を放ち、薄闇の中に爆光が数度瞬く。
 着弾点に黒い煙をたなびかせながら、だが巨像は倒れずして、彼女の方に顔を向けようともしない。
 辛い。
 気力もギリギリまで振り絞って、だが放った魔力弾が効いている確証もない。
 そもそも、すでにそれなりの時間戦っているのに、ガーディアンは未だ動きを鈍らせることもなく動き続けている。
 ダメージを受けているのか。攻める側もそんな疑問を覚えてしまうくらい、圧倒的なタフネスだ。
「そこで待ってて、今、直すから……!」
 セシリアが詠唱を紡ぐ。そして治癒の魔法を成就させて、すぐに短い瞑想に入った。
 先刻より、その繰り返しだ。尽きそうになる根気を、そうやって何とか維持する。
 そうやってただ一人の回復役として、彼女は戦線を支え続けていた。
「この、燃えろ、燃えろって!」
 ルーニカが、真っ赤な火弾を撃ち放つ。
 しかしガーディアンは身を炎に包みながらもやはり、動きは鈍らない。
 ルーティエの組付きと、ティシェの足関節への集中攻撃によって、ある程度ガーディアンの動きを抑えることはできる。
 だがそこまでだ。強度面で比較的脆いはずの関節部を激しく動かしながら像は剣を振り続けた。
 ――強い。
 戦う誰もがそれを肌で実感する。
 無論、ダメージを受けていないはずがない。しかし、無生物だからこそダメージが表に出てきにくい。
 そこが厄介だった。
「……ここで、動きを止めて!」
 疲労に体を重く感じつつも、ルーティアがまたガーディアンの足にしがみつこうとする。
 だが彼女は生きている。そして疲れている。注意力が、鈍っていた。
「ぐっ!」
 駆けだそうとしたその時、体が前につんのめるのを感じる。
 足元を見れば、抉れた地面の隆起がそこにあった。爪先にひっかけてしまったのだ。
 しまった、と思ったときにはもう遅い。
 ガーディアンが、ルーティエに狙いを定めていた。
 剣はすでに掲げられ、振り下ろす直前のモーション。体勢を立て直すこともできそうになく、このままでは――
「させ……!」
「……るかァァァァァァ!」
 やりかけていた行動をやめて、突っ走る影があった。
 Morguxとルーニカだ。
 赤き暴牛の振り回した大剣と、魔王たる勇者の突き出した大盾が、巨剣の振り下ろしを真っ向から受け止める。
 この戦い一番の轟音が、そのとき起こった。
「ほいさ、アンタはこっちだぜ」
 驚きに身をすくませていたルーティエを、リチャードが強引に引っ張っていった。
 そんな彼とすれ違うように、新たに義弘が場に突っ込んで、
「互角たぁ、ちょうどいい」
 ガーディアンと、Morguxとルーニカが拮抗しているそこへと踏み込んだ彼が、渾身の一発を像の顔面にブチ当てる。
 伝わってくる手応えに、違和感があった。そして、
 ピシッ。
 小さい音であった。が、皆の耳に確かに届いた。何かが砕けようとする音だ。
 それはさらにもう一度続いて、ガーディアンの顔面に小さな亀裂が入った。
 これまでの攻撃は、無駄ではなかった証である。
 しかし、まだ止まらない。
 ガーディアンは、だが再び攻撃の体勢に入ろうとする。力を溜めての薙ぎ払い。持ちうる技で最高威力の一撃だ。
 像が、溜めの動きを見せた。膝を曲げて身を低く、
「フロウ、合わせてくれ!」
 挽回するとばかりに、ルーティアが右足へ縋り付いた。
 そして反対、左足の膝を狙うのが、フロウだ。
「最大火力、で押し通らせてもらいます!」
 魔力は破壊力へと変換され、輝きを帯びて解き放たれる。それはガーディアンの左膝を正しく撃ち抜いた。
 溜めに入る瞬間。まさに、全身の負荷がひざにかかるそのタイミングだった。
 硬い音がして、まずガーディアンの左足が砕けた。
 続いて、ルーティエが肉薄した状況から思い切り身をひねって、像の右足も勢いのままに半ばから折れる。
 無駄ではなかった。
 何も無駄ではなかった。
 重ね続けた攻撃に、ガーディアンの耐久力も限界を迎えていたのだ。
「一気に畳みかけちゃってー!」
「「「うおおおお!」」」
 セシリアが放った声に、皆が声を揃えた。
 最期の集中攻撃がガーディアンの身に無数の亀裂を生んでいく。
 そして最後は――
「おおおおおおおおおおおお!」
 Morguxの全身を使った振り下ろしの強打が、ガーディアンの頭部を粉々に破壊した。
「「やったー! お宝だー!」」
 動かなくなった石像を見ているところに、そんなことを叫ぶ数人の声が聞こえた。
 そして彼は思い出した。
「ああ……、そういえばそういう依頼だったな。戦うのが楽しくて、忘れてたぜ」

●持ち帰るもの
 戦いが終わると、疲労が一気にのしかかってきた。
「くぅ……、血が足りないな。くらくらする……」
 閉ざされた扉に罠がないか調べていたリチャードが、意識をはっきりさせようとかぶりを振る。
 一応、扉には特に仕掛けらしいものはなさそうだった。
「開くぞ」
「行きましょう」
 扉に手をかけるリチャードの隣で、フロウもその顔を緊張に固めていた。
 ギシと重く扉は軋み、徐々に開かれていく。
「さぁ、お宝とご対面だな」
 ルーティエも手にしたカンテラを前に出して、扉の奥の闇を照らす。
 言ったその声は、確かな期待に弾んでいた。
 扉はいよいよ開かれて、イレギュラーズが次々に明かりを向こう側の空間に当てていった。
 闇は光に圧されて消えて、その奥の景色が八人の眼前に露になる。
「ここに、財宝があるのかな?」
 興味深げにルーニカがその中の覗いてみた。
 戦った広間に比べれば、随分と小さい部屋だ。そこに、箱が幾つか置かれているのが見える。
「これは、石棺……? それに……」
 ティシェが、壁に大きく刻まれた文字を見つけた。
 彼女は早速それを解読しようと、持ってきたメモ帳を広げた。
「これが、財宝……、なんですか?」
「どうもそんな雰囲気じゃなさそうだがな」
 静けさに満ちた部屋の中、フウロと義弘が石棺を観察する。
 しばしして、ティシェがメモ帳を閉じた。そして言う。
「ここ、お墓みたいね」
「「墓?」」
 彼女の言葉に、皆が注目した。
 ティシェは壁の文字を軽い調子で読み上げる。
「地の底、安寧の闇に包まれて眠れ……、鎮魂の詩ね。お墓と見て間違いないわ」
「じゃあ、あのゴーレムは……」
「墓荒らし対策か何か、だったんだろうな」
 Morguxにリチャードがそう答えた。
「フ……、ここを作ったヤツは、よっぽどカンオケの中の連中が大事だったんだろうな」
 義弘は苦笑して、煙草に火をつけた。
「そういう事情でしたら、ここは然るべき機関に保護してもらった方がいいでしょう」
 セシリアは祈りを捧げていた。死者の眠りを暴くのは、さすがに気分もよくない。
「こういう結果になりました、か」
「ロマンの向こう側には現実が待っている、ということだな」
 露わになった現実に、フロウとルーティエはどこか残念そうに、しかし同時に納得したような顔をする。
「ま、いいんじゃないか?」
 そんな二人の肩を叩いて、リチャードが飴玉を渡してくる。
「盗賊なんぞに荒らされるより、こうして俺達が見つけてやれた。いいことだろ?」
「……そう、ですね」
 彼から受け取った飴玉を包みから出して、フロウはそれを口に運ぶ。
 疲れた体だからか、飴の甘みがとても心地よく感じられた。
「財宝はなかったけど、いい経験にはなったわね。トレジャーハンター兄弟だって、お墓を荒らそうなんて思わないわよ」
 自身もリチャードから飴をもらったティシェが納得するようにうなずいた。
 確かに隠された財宝はなかった。
 しかしここでの経験は、いつか今なめている飴の甘みのように身体にしみこんで糧となる。
 決して無駄な時間ではなかったのだと実感し、イレギュラーズは遺跡を後にした。
 この地の底で、どうか安らかな眠りを。
 眠る死者達へと、そんなささやかな祈りを捧げながら。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

どうも、天道です!
冒険お疲れさまでした! この経験が後の財宝となることを願っています!

PAGETOPPAGEBOTTOM