シナリオ詳細
ダンベルを手に歩く鉄のお兄さん達
オープニング
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鉄帝……ゼシュテル鉄帝国。
無辜なる混沌の『大陸』北部に位置するこの地は、機械生命体の末裔とされる『鉄騎種(オールドワン)』が主となって支配する地。
――武力こそ全て。
鉄帝の人々は、血気盛んな国民性でも知られる。
そんな考え方が支配する場所だからこそ、己の力をひけらかそうとする連中は後を絶たない。
力を示す方法は武力が一番手っ取り早い。
だが、何も直接殴ったり、自らの魔力をぶつけるだけがその手段ではない。
鍛え上げた筋肉。そのがっしりとした逞しい体は、男性からは尊敬と羨望の念を、女性からは頼りがいと男らしさを感じさせ、恋慕の念を抱かせることにも繋がる。
しかしながら、どんなにすごい筋肉を持っていても、アピールは程々にすべきなのかもしれないと、鉄騎の人々はその集団を見て思ったらしい。
このところ、鉄帝国内には妙な集団が闊歩していて。
「さあ、皆、僕達と一緒に体を鍛えてみないか?」
彼らの団体名は「鉄のお兄さん」。
全身マッチョで半裸の筋肉集団がダンベル両手に街を歩き、住民達を片っ端から勧誘していたのだ。
最初のうちは、彼らの活動に興味を示す住民もちらほらいた。
だが、回数が重なればさすがに鬱陶しいと思われるようになり、住民達も勧誘を控えるようにと声をかけるのだが。
「なあ、あんた達、街中で大っぴらな勧誘は……」
「君も僕達と体を鍛えよう!」
「……おお、ムキムキになるまでやってやろうじゃないか!」
こんな風に、見事に鍛え上げた筋肉の美しさによって、ミイラ取りがミイラになってしまう始末。
その為、住民達はできるだけ離れて遠目で見るか、知らんぷりしてしまっている。
やがて、一団のターゲットは旅人へと向いてしまっており、冒険者、行商人などが迷惑を被っているらしい。
街の評判が落ちることを懸念した住民達。
勧誘を止めるよう話をしようにも、彼らの筋肉にメロメロになり、団体への加入者が増えるばかり。
なんとか正気を保つ住民達は自分達ではどうしようもないと諦め、ローレットへと彼らの説得を依頼することにしたのだった。
●
幻想のローレット。
依頼で人が集まる間、イレギュラーズ達も待機している者も多いが、待っている彼らの行動も様々。
相方や知人らと会話して過ごす者。少しの時間でも無駄にせぬよう読書をしたり、ちょっとした勉強、研究に勤しむ者。
そして、体力づくりをと腕立てをしたり、スクワットをしたり、ダンベルを動かしたり……。
「そんな貴方に丁度いい依頼があるのですが、聞いていただけますか?」
自己鍛錬を続けるイレギュラーズへと優先的に声をかけていく、『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)。
見事に鍛え上げられた体を持つ人なら、きっと興味を抱く依頼だろうと考えたようだ。
「鉄帝のとある街に、『鉄のお兄さん』という一団が現れて、住民達を悩ませているようなんです」
彼らは10名規模の集団で、全員鉄騎種の男性。
両手にダンベルを握って自らの体を鍛えながら、街を歩いて勧誘を続けているのだという。
体を鍛えるという行為は鉄騎の人間にとっては別段面倒な行為でもなく、むしろ進んで行いたいという感情すらあるだろう。
ただ、彼らの勧誘は少しばかり行き過ぎていて。
「住民達も少しばかり迷惑していて、控えるように言いたいようですが、その筋肉美に何も言えなくなってしまうのだそうです」
この為、少なからず対策が打てると思われるイレギュラーズ達に依頼がやってきたというわけだ。
この『鉄のお兄さん』一団は昼間からダンベルを両手に街を歩いているので、見つけるのは容易だろう。
ただ、彼らはやってきたイレギュラーズでさえも勧誘してこようとするので、それをやり過ごしながら『鉄のお兄さん』達を懲らしめたい。
説明を終えたアクアベルは最後に、こう告げる。
「別に悪い人達ではないと思います。ただ、やり方が少しだけ強引なだけで」
事後はこの『鉄のお兄さん』の勧めに従って、体験入団してもいいかもしれない。女性でも問題なく入団可能だ。
また、往来でトレーニングをすると、またミイラ取りがミイラになってしまったと人々に悪態をつかれてしまうので、裏路地か、彼らのトレーニング施設まで行ってから鍛錬に励むといいだろう。
「それでは、よろしくお願いいたします」
なお、お世辞にも体力系とは言い難いアクアベルは、丁重にお断りしたいとのことだった。
- ダンベルを手に歩く鉄のお兄さん達完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年09月23日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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鉄帝某所の街。
ローレット、イレギュラーズ達は周囲を見回しながら街道を歩く。
「なんつーか……凄く、鉄帝な依頼だな」
今回の1件に、『Star Lancer』クリスティアン・メルヴィル(p3p007388)が呆れ返る。
鉄帝との国境沿い、幻想の名家出身の彼は、幼少時からその国民性を見続けていたのだろう。
「鉄帝のこういうところが玉に瑕なんですよね……」
そう告げるのは、ネコミミヘッドフォンにカラスマスクを付けた『命を愛する』ひつぎ(p3p007249)だ。
「自分を磨くのは勝手ですが、他者への強要は良いことじゃありませんから」
鉄帝出身の彼だが、平和主義者という珍しい性格をしている。
「まぁ、わかってます。この国の人だいたい殴り合いでしか話は聞いてくれないですし」
父のみ鉄帝人という機械の猫耳を持つ『孤高装兵』ヨハン=レーム(p3p001117)にとっても同郷の相手となるが、彼もまた平和主義者で珍しい考えの鉄帝人だと言えた。
「厄介な勧誘事業をしている方と聞きましたが……」
自称メイド志望の普通の女子、『大剣メイド』シュラ・シルバー(p3p007302)が言うように、この街で勧誘行為で迷惑をかけている「鉄のお兄さん一団」を懲らしめることがメンバーの目的だ。
「体を鍛えるのはいいことだけど、大っぴらに筋肉とかもアレだもんね……」
自称「海の男」、華奢な水兵のような外見をした『湖賊』湖宝 卵丸(p3p006737)が語る。
なお、本人曰く、細いように見えてちゃんと鍛えているとのことだ。
「うむうむ! 日々のトレーニングが力を磨き、強くなり、魂を強靭なものにする……実に立派な事なのだ!」
スタイル抜群な獅子の獣種の女傑、『《力(ストレングス)》』ネメアー・レグルス(p3p007382)もまた力強く同意して見せる。
長い髪を再度テールにした『愛の吸血鬼』ユーリエ・シュトラール(p3p001160)もまたその主張に理解は示すものの。
「……でも、その為に強要するのは間違ってると思います!」
街の人にどうしようもないのであれば、私達でなんとかしなければと、彼女は強い意気込みを見せていた。
「悪い人達じゃないし、何なら教えを受けてみたくはあるのだけど」
仲間達の意見を聞き、黒く短い無造作ヘアの『悲劇を断つ冴え』風巻・威降(p3p004719)は小さく唸って。
「先を急ぐ人とか、興味を持てない人にまで勧誘するのはやり過ぎですよね」
「うむ、それ故に惜しいのだ!」
強要されて嫌々行うトレーニングなど、気持ちが伴っていない分、得られる効果は少ない。
力……ストレングスを二つ名として冠するネメアーは、そう力説して。
「如何にして、トレーニングがしたい様にやる気にさせながら誘導するか……それが肝要だと我は思うぞ!」
そんなネメアーの主張も為にはなるが、この場は……。
「筋肉に悪いイメージが付いても困るので、強引な勧誘はやめてもらいましょう」
簡単に止まらぬ相手であれば、鉄帝らしく力で語るところからと、威降は微笑を浮かべてやる気を見せる。
「どれほどのものか見せて頂きましょうか。後学の為に、ですよ」
『力自慢』の相手ならばと、シュラも興味を示す。
「少しは強くなった所をゼシュテルの方々に見せてやりますっ!」
二度と僕は折れないと、ヨハンも今の自らの力を示そうと気合を入れていたのだった。
●
さて、程なく一行はその集団を目にすることになる。
「さあ、皆、僕達と一緒に体を鍛えてみないか?」
そう吹聴しながら、ダンベルを両手に持って歩くマッチョな一団「鉄のお兄さん」達。
辟易とする住民達を美しい肉体美で魅了し、勧誘を強要する集団である。
「こらー、そうやって勧誘してるけど、実はその体を見せびらかしたいだけなの、わかってるんだからなっ」
そんな彼らに、卵丸が海の男らしく正々堂々と真正面から抗議する。
「……言ってることはわかるから、もう少し控えめも必要だって、卵丸そう思うんだぞっ」
「そうだね、トレーニングは程々にすべきだね!」
一団のリーダー、ダブルバイセップス・セルゲイは鍛え上げた体を見せつけてくる。
「惚れ惚れするような、素晴らしい筋肉ですね!」
そんな彼らの体をユーリエは褒めながらも、住民が迷惑していることを伝えて。
「だから……、勝負して物事を決めましょう!」
「私達と一勝負して、勝てたならお誘いに乗らせて頂きます」
続き、シュラがこちらの提案を切り出す。
「しかし、私達が勝てば……勧誘事業は節度をもって。無闇矢鱈に行わないようにしてくださいね?」
「町の人と相談して、勧誘の場を設けて貰うぜ。そこ以外での勧誘は禁止ってな」
補足するように、クリスティアンが告げる。
「もし、私たちが負けたら、体験入団して筋肉道を極めます」
「ありがたく受けさせてもらよう!」
ユーリエの言葉に、セルゲイが大きく頷く。
そこで、シュラが彼らの持つダンベルに着目して。
「その前に、ダンベルが何キロまで持ち上げられるか勝負です」
前哨戦として、シュラがセルゲイとダンベル勝負。
自慢げに4、50キロあるダンベルを楽々持ち上げるセルゲイに対し、シュラは同じ重さをギフト「怪力無双」の力で持ち上げる。
「うふふ……、これくらい軽いものですよ」
「ほう、お見事です」
ただ、この場で一番重いものはセルゲイが持つダンベル。決着はつかない。
「なら、場所を変えよう」
セルゲイも白黒つけるべく、シュラに応じて場所の移動に応じたのだった。
●
イレギュラーズ一行と「鉄のお兄さん」一団は移動した先は、人の近寄らぬ街の袋小路。
スペースもそれなりにあり、周囲の被害も考えずに済みそうだ。
「改めて、確認させてもらうよ」
威降が鉄のお兄さん達へと尋ねる。
イレギュラーズが勝てば、勧誘を控えてもらう。
鉄のお兄さん達が勝てば、一緒に筋肉道を極める。
「問題ないよ!」
自らの大胸筋を強調し、ダブルバイセップス・セルゲイは同意する。
周りの団員もまた機械化部分がそれぞれ違う為、鍛え上げた筋肉をそれぞれ見せつける。
「その魂、イーゼラー様に捧げたい……けど、今回は不殺なのだ!」
ネメアーはそんな彼らに好感を抱くが、今回は本気勝負。
頑張って、不殺を心掛けて戦おうと考えている。
「どうも」
ヨハンがそこで、セルゲイの前へと進み出て。
本来なら仲間の盾になるところだが、セルゲイは厄介そうだと、彼は断りを入れて。
「……僭越ながら、決闘を挑ませて頂きたく馳せ参じました?」
「それは光栄だな」
セルゲイは戦闘開始を待つ間も、ポーズを決めたまま。
ヨハンは敢えて返事を聞かぬ為、少しだけ言葉を溜めて。
「男と男のタイマン……お相手願えますよね?」
「……戦闘開始!」
威降の一言によって互いに対面し、構えをとる両者。
「返事は必要ありませんけどねっ!!」
ヨハンは告げながらも聖なる光の大剣を両手に出現させ、一気にセルゲイへと切りかかっていく。
「上等だ……!」
覇気のオーラを発してくるセルゲイ。
ヨハンはそんな強敵をなんとか引きつけ、一騎打ちへと持ち込んでいた。
少し離れた場所で、団員達とイレギュラーズ達との交戦も始まっている。
「お相手しますよ」
妖刀を手に、構えをとるシュラ。まさに大剣メイドの本領発揮だ。
己の肉体をひけらかすマッチョ達は、そんな少女へと張り合うように近づいていく。
多数のマッチョを引きつけようとするシュラを助けるべく、クリスティアンはまず彼女を召喚した浄化の鎧で包み込む。
クリスティアンは自らにもその鎧をかけつつ、敵の相手に向かう。
「お兄さん達の筋肉も見事……だが、我の筋肉も凄いのだ! ……フン!」
同じく、その敵の前に出たネメアーもまた、自らの覇気で服を弾けさせ、化け物化させた筋肉をモスト・マスキュラーのポーズで見せつける。
「ふうぅん!」
「ぬうううっ!!」
張り合うように筋肉を見せつける団員達へと、ネメアーの発した闘気の刃が襲い掛かっていく。
そいつらは傷つきながらも、拳、蹴り、ラリアットと鍛え上げた体を叩きつけてくる。
威降が仲間に合わせて相手に肉薄し、素早く拳を突き出す。
――「颶風穿」。
至近からの刺突で、彼は屈強な相手の体力を削る。
「まずは一人ずつ、ですね」
現状は、仲間達も、相手もまた万全に近い態勢だ。
ならばと、ユーリエは団員達へと吸血鬼の鎖を伸ばす。
自らの体力を削って放つ赤黒い鎖によって、己の筋肉ばかりを強調していた団員は、吸血鬼であるユーリエの一面に気づく。
前線で戦う仲間達が多い状況の中、ひつぎは後ろから仲間達の支援に当たる。
マッチョな団員達が繰り出す攻撃は、痺れるような一撃。
重い攻撃を受けた仲間達へと、ひつぎは聖なる光を発して仲間達を包み込む。
また、体力が減れば、召喚物に支援してもらい、前線で戦う仲間達に癒しをもたらす。
そのうちの1人、卵丸。
「ごめん、卵丸筋肉はそんなに好みじゃ……」
筋肉に魅了の力を持つのはセルゲイのみだが、団員達のアピールもなかなかのもの。
卵丸は筋肉など趣味がないと、アクセサリー「白梟の誇り」で海賊としての自らの誇りを保ちながら、華麗な立ち回りで団員達へと蹴りを浴びせかけていく。
これぞ、彼曰く「海賊蹴戦法」である。
「海賊関係ないとか突っ込んじゃ駄目なんだからなっ」
ともあれ、鍛え上げた筋肉こそ絶対と思わせるような態度の団員達には、しっかりと蹴りを叩き込み、相手の体を痛めつけていく。
「思いっきり暴れるのだ!」
マッチョ達に負けず劣らぬ筋肉を膨張させたネメアーは、その体を武器と暴風の様にして、相手目掛けて打ち込んでいくのだった。
●
イレギュラーズと「鉄のお兄さん」一団の交戦。
戦闘経験豊富なイレギュラーズと力とタフネスに優れる団員達だが、徐々にイレギュラーズ達によって攻め崩されていくこととなる。
団員をメインで抑えるのは、シュラなのは変わらず。
数が多いうちは彼女もしっかりと防御に当たり、長く耐えようと引き付け続ける。
そんな彼女の傍にいたクリスティアン。
セルゲイとタイマン勝負を繰り広げるヨハンには届かぬよう英雄を讃える詩を歌い、団員と戦う仲間達の体力を底上げする。
そして、クリスティアンはマッチョ達を纏めて照準に定め、天狼星の光を溜めた魔石を使い、両手に複数生成した小型星槍で敵陣を撃ち抜いていく。
その間、ヨハンはセルゲイへと光の斬撃を浴びせ、反撃としてドロップキックを食らって大きく体を煽られる。
続く2度目の光の大剣で、ヨハンはセルゲイの気を強く引いて。
「君も鉄騎種……ならば、負けてはいられないな……!」
ここで、うまく目の前の相手を引きつけたヨハンは、防御に専念し始めた。
自らの傷の修復に当たりながらも、彼は時折反撃の為にと衝撃をセルゲイに弾き返す。
力ある相手のポージングにもしっかりと衝撃を返すヨハン。
セルゲイもそんな彼を攻めあぐねていたようだ。
その間にも、イレギュラーズ達はマッチョな団員どもを1体ずつ攻め落とす。
シュラは引きつけた敵に纏めて妖刀「不知火」で乱撃を加え、団員達の筋肉を切り裂いていく。
あまりに堅い筋肉は防御面にも優れており、その身が機械でない部分も非常に強固であり、なかなか倒れはしない。
「きええええい!!」
「ぬううううん!」
だが、彼らはあくまで体を鍛えることに特化しており、戦闘のプロではない。その大きな体は、戦いで動き回るのには向いていないのだ。
威降はスタミナの落ちた相手目掛け、格闘戦を挑む。
相手のラリアットを避け、彼は蹴撃を叩き込んで敵の図体を沈めていく。
前のメンバー達を癒すひつぎだが、残念ながらスキルを行使し続けられるほど気力はもたないと本人も自認している。
最悪の場合、肉盾になることも考えていたようだ。
順調に、マッチョ達を倒すイレギュラーズ一行。
クリスティアンはその身を挺するシュラをメインに引きつけのサポートを行う威降へと浄化の鎧、そして魔力持つ詩で仲間達を強く奮い立たせていく。
合間に、クリスティアンは光を宿す魔石を核とした星槍を薙ぎ払い、マッチョ2人を薙ぎ倒す。
ユーリエもまた弾がクラッカーとなった拳銃を出現させ、炸裂音によって強い衝撃を与えて卒倒させてしまう。
それだけを見ていると内面が弱そうにも見えてしまう団員達だが、決してそんなことはない。
ユーリエの魔力が相手の鍛えた肉体を上回ったということだろう。
卵丸も、最初に考えていた通りに、仲間達の攻撃によって弱った敵目掛けて蹴りかかり、倒してしまう。
少しずつ、相手はイレギュラーズの力に圧倒されてきている。
ネメアーはそんな団員らへと渾身の蹴りを浴びせ、よろけたところで拳を振りかぶって。
「筋肉パンチなのだ!」
威力を削ぎつつ相手の顔面に拳を叩き込み、ネメアーはその団員を張り倒してしまう。
そんな中、ひつぎが前へと進み出る。
回復スキルを使う気力がなくなり、仲間を庇うべく前に出たのだ。
彼もまたラリアットに巻き込まれる状況の中で、威降が団員1人を蹴り倒し、クリスティアンが七つの星槍で残る敵をさらに切り崩してしまう。
残るは、セルゲイのみ……なのだが。
(長く、長く……)
抑えるヨハンにも、限界が近づいていた。
防御専念にしても、セルゲイは「鉄のお兄さん」の中でも別格の力を持つ。
「せええぇぇい!!」
見事な肉体美を見せつけていたセルゲイは、ヨハンへと鉄拳を叩き込む。
ここまでもたせていたヨハンも、パンドラの力を借りて踏ん張ってみせて。
「……降参です。これからはチームで戦わせてもらいます」
「こちらも背水の陣。……総力戦といこう!」
全身の筋肉を漲らせるセルゲイは猛然と攻撃を仕掛けてくるが、その前に出たのは気力を使い切ったひつぎだ。
スタミナ面に優れ、防御面の対策も講じていた彼だが、追い込まれたセルゲイの繰り出すドロップキックはあまりに強烈で。
肉弾戦が苦手なひつぎはパンドラの力に頼ることもなく、その場で張り倒されてしまった。
だが、ヨハンの反撃を食らい続けていたセルゲイも全身傷ついていて。
着地したセルゲイへと威降が蹴りを、再度、ユーリエがクラッカーの弾丸で威嚇し、弱ってきていた彼を怯ませる。
「これで終わりです!」
シュラがそのまま拳で追撃し、セルゲイを殴り倒す。
「……参った。降参だ」
それを見たヨハンも深く息をつく。
もう一息だったのにと彼は尻もちをつきながらも、悔しそうにしていたのだった。
●
戦いを終えて。
「鉄のお兄さん」一団を倒し、イレギュラーズ達は彼らにこちらの言い分を飲むよう促す。
「これに懲りたなら、街の人には迷惑かけずに……むしろ、筋肉を活かしたなんでも屋をされては?」
シュラの言い分に、笑いで返すマッチョ達。
そんな彼らへと勝者の権限とばかりに、威降が勧誘する日、場所を決めるなど、節度を持った勧誘をするよう促す。
「その方が絶対、体鍛える習慣が続く人達が来てくれるから、いいと思う」
卵丸が後押しすることでマッチョどもは顔を見合わせ、首を傾げる。
脳筋な彼らが理解を示さないようであれば、ユーリエがすかさずクッキーを食べさせる。
「インテリ系マッチョを目指してもらいます!」
心なしか、鉄のお兄さん達の物分かりが良くなったのは気のせいだろうか。
その後、改めて鉄のお兄さん達の勧誘を聞いたイレギュラーズ達。
「蹴ったし、申し訳ないんで受けさせて貰うね……」
「それでは、行こうか。お嬢さん」
「卵丸、男、男だからっ!」
マッチョ達に女の子と間違えられ、卵丸は顔を真っ赤にして反論する。
「もう結構絞ってますけど、折角なので!」
「私も、筋トレ始めようと思ってて……」
威降、ユーリエはマッチョ達の勧誘になかなか乗り気で、トレーニング方法などに興味を持っていたようだ。
「何かしたいか、どこを鍛えたいかにもよるね」
セルゲイは彼らに鍛える目的を聞いてから、それぞれお勧めのトレーニング法について実践させていく。
その気になれば、別に器具などいらない。
色々なポーズで筋肉に負荷をかけるだけでも、鍛える方法は沢山あるのだ。
「俺はご遠慮したいところですね……」
「ああ、俺は筋トレはやらねぇぜ。そういうのは……」
気づいたひつぎが先に身を引くと、クリスティアンもまた後ずさりする。
だが、徐々に近づくマッチョにクリスティアンは圧倒されて。
「……いや待て、迫ってくるな。やらねぇって、やらねぇからな!?」
その傍らでは、ネメアーがセルゲイ達といい具合に意気投合して。
「筋肉をぶつけあい、殴り合った今、我等は同士になったのだ!」
改めて、彼女は彼らのジムの場所を教えてほしいと、自らのギフトを無意識に使いつつ告げると。
「では、こちらへ」
マッチョ達は嬉しそうに、彼女を案内する。
「というか、ジムの体験入学の為の宣伝して、ジム内で勧誘活動するのだ」
むしろ、ネメアーが本気になっていたのに、仲間達も唖然としてしまうのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは相手に自らの強さを見せつけたあなたへ。
今回はご参加、ありがとうございました!
GMコメント
●目的
鉄のお兄さん一団の討伐。
●敵……鉄のお兄さん一団
いずれも、鉄騎種(オールドワン)です。
ダンベルを持って街を歩き回ってますが、
戦いは徒手空拳で挑んできます。
○ダブルバイセップス・セルゲイ
一団のリーダーで、左腕と右足が機械化してはいますが、
ボディビルダーでも顔負けの筋肉を持っております。
・鉄拳粉砕……(A)物至単・ブレイク
・ドロップキック……(A)物中単・痺れ・飛
・覇気のオーラ……(A)神遠域・万能・麻痺
・完璧なる肉体美……(A)神遠域・恍惚
・体を鍛えてみないか?……(A)神遠単・魅了
・不滅の肉体……(P)物理異常無効
○団員……10人
10代後半から20代の男性達。
いずれも体の一部を機械化させてはいますが、
見事な肉体美を持ち、脳筋プレイで攻めてきます。
・鉄拳粉砕……(A)物至単・ブレイク
・鮮烈脚……(A)物近単・痺れ・連
・ローリングラリアット……(A)物近範・防無
・オーラシュート……(A)神遠貫・麻痺
・仕上がってるよ!……(A)神自単・物理、神秘攻撃+
●状況
鉄帝内の街で、主に冒険者などに体を鍛えるようにと勧誘してくる団体です。
地元民が迷惑しており、少しお灸を据えるよう依頼が出ておりますので、軽く懲らしめてあげてください。
事後は、彼らに付き合って、ちょっとだけ体を鍛えてみてはいかがでしょうか?
さすがに白昼堂々は恥ずかしいですし、往来の邪魔になるので、裏路地などにいどうしてくださいね。
●情報確度
A。想定外の事態(オープニングとこの補足情報に記されていない事)は絶対に起きません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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