PandoraPartyProject

シナリオ詳細

臆病者と勇気

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●遭遇
 ガサリ、と。
 薄暗い森の何処かで木の葉が擦れる音がした。
 少年は、慌てて斧を構える。
 少年としては歴戦の戦士のように迅速かつ冷静に周囲を警戒しているつもりでいた。
 だが、へっぴり腰でキョロキョロと視線をさ迷わせるその姿は、どう見てもズブの素人だ。
 やがて木陰から現れたそれを見て、少年は心の底から安堵する。
「何だ、子ぎつねか」
 構えを解き、胸に手を当てた、自分でもびっくりするほどの早さで心臓が脈打っている。
「『何だ、子ぎつねか』……じゃないわよ。もうっ」
 横に視線を向けると、呆れ顔の幼馴染が居る。
「君ってば本当に気が弱いんだから」
「あはは、ごめんね。こればかりはどうしてもさ」
「いつもの道を通って、いつもと同じように薬草を取りにいくだけでしょうが」
 しかし、そういう性分の少年なのだ。
 身体は大きいが、肝は小さい。
 今年で14になるが、夜中のトイレも、道中の森も、今向かっている洞窟だって本当は恐ろしくて堪らない。
「全く。たまには男らしい所、見せなさいよね。でないと一生、恋人できないよ」
「だよねえ……精進します」
 それでも幼馴染に同行するのは、少年なりの思春期的な理由があるのだが。
 幼馴染に良いところを見せるどころか、また呆れられる始末。こんな有り様では胸に秘めた恋は、到底叶うはずもない、と少年がうなだれていると。
 ――ガサリガサリ、と。
 また音がした。先ほどよりも大きな音だ。
 臆病だから、少年は反射的に顔を上げた。少年が目にしたのは、幼馴染めがけて剣を振り上げる怪物の姿だ。
「危ないっ!」
「え――」
 気がついたときには飛び出していた。
 怪物の剣が舞い、鮮血が森を赤く染める。

●イレギュラーズ、出陣!
 キミ達はロートレットを訪れた。
 酒場をぐるりと見渡すと、目当ての人物はすぐに見つかる。
 特徴的な黒い耳付きパーカーが、酒場の片隅で揺れている。
 キミ達がテーブルに近づくと、『黒猫』のショウ(p3n000005)はキミ達を歓迎する。
「やあ。皆、集まってくれてありがとう」
 互いに挨拶を済ませた後、キミ達はショウと同じ席に着く。
 テーブルの上にはティーセットと、色とりどりの菓子が並べられていた。
 菓子と紅茶の匂いが、キミ達の鼻をくすぐる。
「良かったら一緒にどう? 何か頼むのも良いかもね。ちなみに今日のお勧めは、ロイヤルミルクティーとアップルパイ。マジックポイントが上がりそうな組み合わせだろう?」
 キミ達が思い思いに注文する(あるいは先を促す)と、ショウは依頼の話を始めた。
「今回の依頼はゴブリン退治さ」
 ゴブリンが現れたのは、アロット村。
 アロット村は、幻想の王都『メフ・メフィート』から徒歩で2日程度の距離にある農村で、この村の近くにある洞窟にゴブリンの群れが住み着いてしまったという。
 目撃者の証言や足跡などの痕跡を調査した結果、どうやら12体のゴブリンが居るようだ。
 幸運なことに、まだ村人に死者は出ていない。運悪くゴブリンと遭遇した少年は手酷い傷を負ったが、命に別状はないそうだ。
「ゴブリンは村人にとっては脅威だ。でも、イレギュラーズである君達ならさほど苦労せずに倒せるだろう。ただ、1つだけ注意してほしいことがある」
 何でもゴブリンの住み着いた洞窟には、薬草の群生地があるそうだ。
 ショウ曰く、村人のHPの回復やバッドステータスの治療に使う……要するにアロット村にとっては大事な資源だからあまり洞窟内は荒らさないでほしいとのことである。
「この薬草は、デリケートな植物でね。真正面から強襲して洞窟内で乱戦するだとか、火を焚いて煙で燻し出すだとかいった手は、出来れば避けてもらいたい」
 薬草に配慮しつつ洞窟内で戦闘を行うか。
 あるいは、何らかの方法でゴブリンを洞窟の外に誘い出すか。
 どのような手段を取るにせよ、多少は工夫する必要がありそうだ。
「これは被害者の少年から聞いた話なんだけれども。幼馴染を庇いながら逃げる少年を、ゴブリンたちは執拗に追い回したそうだよ。あざ笑いながらまるで弄ぶように、ね――どうやらアロット村のゴブリンは、弱い者イジメが趣味らしい。この性質を利用すると、仕事がはかどるかもしれないね」
 概要を話し終えると、ショウは一度紅茶のカップに口をつける。そして、真剣な眼差しでキミ達を見つめる。
「イレギュラーズにとっては簡単な依頼かもしれないけど、村の平和は君達の双肩にかかっている。そのことをどうか、心の隅に留めておいてほしいな」

GMコメント

●挨拶
はじめまして、きのじんです。
この度はどうかよろしくお願いします。

●依頼達成条件
洞窟に住み着いたゴブリンの『撃退』です。
無理にゴブリンを全滅させる必要はありませんが、敵は悪辣な魔物です。
倒せるなら倒してしまった方が良いでしょう。

●情報について
『黒猫』のショウが集めた情報は確かなものです。
OPとこの補足情報に記載されていない、いわゆる想定外の事態は今回の依頼では発生しません。

●ゴブリン
12体居ます。
アロット村に現れたゴブリン達は、皆一様に愚かで残虐で、弱い者イジメが大好きです。
その癖臆病でもあり、追い詰められると逃走を試みます。全滅を狙うなら何かしらの策を講じる必要があるでしょう。

ゴブリン達は剣、棍棒、斧などで武装しています。ですが、どの武器も低品質であり、ゴブリン達も武技に長けてはいません。
また、離れた位置に居る相手には投石で攻撃してくることがあります。

  • 臆病者と勇気完了
  • GM名きのじん(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年01月23日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)
旅人自称者
戸口 彩音(p3p000280)
先を迷いし者
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
スリー・トライザード(p3p000987)
LV10:ピシャーチャ
宗高・みつき(p3p001078)
不屈の
アリソン・アーデント・ミッドフォード(p3p002351)
不死鳥の娘
クロネ=ホールズウッド(p3p004093)
自称騎士の騎士見習い
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer

リプレイ

●備えあれば憂いなし
 アロット村に着いたのは朝方だったが、村人からの聞き取り調査を終え村を出る頃には昼を過ぎていた。
 午後の木漏れ日が差し込む森の中を、イレギュラーズ達は行く。
「もしかして、あそこかな?」
 声を上げたのは、地図を片手に一行を先導する村人――ではなく『メルティビター』ルチアーノ・グレコ(p3p004260)だ。ルチアーノの視線の先にあるのは、高さ5メートル程度の岸壁だ。
 ルチアーノと並んで歩く『不死鳥の娘』アリソン・アーデント・ミッドフォード(p3p002351)もまた村人風の格好をしている。
「そうみたいね。かなり険しいし、よじ登って逃げるのも無理そうかも」
 普段は燃えるような赤髪のアリソンだが、今日はルチアーノと揃いの髪色だった。
 また、ルチアーノとアリソンの顔色は病人と見間違えそうになる程蒼白く、少なくともゴブリンに抵抗できそうな人間には見えない。
 手に持つ武器もさびが浮いたり、汚れた布で包まれていたりと、武器としての用途に耐えるかは大いに疑問な品である。さながら、ゴブリンを恐れてはいるものの病に侵されているために薬草を取りに行かざるを得ない村人の兄妹といった風情だ。
 もっともそれら――髪色も服装も武器も一見して不健康そうな顔色でさえも『先を迷いし者』戸口 彩音(p3p000280)が、ギフトで施した演出なのだが。スタイリストを目指し、メイクの為に覚えた医療知識は存分に発揮されている。
「彩音、最高のメイクよ。ありがとね!」
「どういたしまして。まさか具合が悪く見せるために使うとは思わなかったけれど、楽しい仕事だったわ」
 アリソンのお礼に、彩音は笑みを返す。
 夢見た仕事とは少し違うが、依頼を成功する一助となるならば、真剣に取り組んだ甲斐があったものだ。
「ゴブリンか、魚相手なら戦ってきたが俺でもやれるかな?」
 『大空緋翔』カイト・シャルラハ(p3p000684)は、ロープを手に取る。船乗りであるカイトにとってはロープの扱いはお手の物だ。次々と木々をロープで結び、軽い囲みや足を引っ掛ける罠を作っていく。
「私の出身では知的種族は人間だけでしたのでゴブリンと云うのは初めて見ますが……奇々怪々な旅人の方々と御会いした後ですし今更ですね」
 『自称・旅人』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)は柵で袋小路を作りながら呟く。
 依頼はあくまでゴブリンの撃退だ。
 だが、逃がしてしまえばまたアロット村を襲うかもしれない。あるいは別の場所で被害をもたらす可能性もある。村人の安眠のために、ゴブリン達は殲滅せねばとヘイゼルは考えていた。
 クロネ=ホールズウッド(p3p004093)は、村人たちから聞き出した情報を話す。若干自信過剰気味なところがあるクロネだが彼女の毅然とした態度は、村人達に好意的に受け取られたようで、スムーズに情報を集めることができた。
「ゴブリン達の身長は、概ね10歳の子供ぐらいで、足はそこまで速くはないようですね」
 少なくともイレギュラーズ達よりは遅い。
 囮役が全力で逃げると撒いてしまいかねないので敢えて遅く走る必要はあるかもしれないが、戦闘においては速度に特化したクロネが居る。
 少なくとも、先手を取られる心配はまずないと考えて良さそうだ。
 また、数を頼みとしているところがあり、自分達より少数の相手に対しては基本的に舐めてかかるらしい。
「とにかく、弱い者いじめなんて騎士的にNGです!」
 とクロネは息巻く。
 草結びを作りながら『不屈の』宗高・みつき(p3p001078)もクロネに同意した。
「逃げる子どもを執拗に追い回した、か。絶対に許すわけにはいかないな」
 とは言え、みつきには不安があった。
 みつきは戦いとは無縁の世界で過ごしてきた。そんな自分でもうまくいくだろうか。
 みつきと共に草結びを作る 『LV1:ワイト』スリー・トライザード(p3p000987)は、そんなみつきの様子を見て言った。
「我々イレギュラーズは、生きている特異点であり、混沌肯定『レベル1』を受けています。慣れ不慣れに関わらず、戦闘能力は皆同程度でしょうし、実力的にも問題はないのでしょう」
 ややぎこちなくはあるものの、スリーなりの励ましだろう。
「そうだな。みんな戦い慣れてるようだし、胸を借りるつもりで行こう」
「ではこの初陣、少し気張って参りませうか」
 そうヘイゼルが締めくくるとイレギュラーズ達は力強く頷いた。

●狩り
 濁音の多い、不快で耳障りな声が森に響く。
 灰褐色の肌をしたその怪物達は子供程度の背丈だが、その顔は醜く、瞳には残忍な光が宿っている。
 ゴブリンだ。
 ボロ布同然の粗末な衣服を身につけた12体のゴブリン達は今、狩りを楽しんでいる。
 今回の獲物は、間抜けにも洞窟を訪れた兄妹と思しき2人の村人だ。
 息を弾ませ、覚束ない足取りで逃げる兄妹をせせら笑いながら、ゴブリン達は彼らを追う。
 時には金切り声で一斉にはやし立て、時には投石をわざと外し、精神的に獲物を追い詰めていく。
「お、お兄ちゃん……怖いよ……!」
「大丈夫っ! あっアリソンは僕が守るから!」
 健気な兄妹その姿が、ゴブリン達の嗜虐心に火を付けた。
 ゴブリンの内1体が、力を込めて石を放る。
「――つっ!?」
 石は妹目掛けて飛び、妹を庇った兄の頭に直撃した。歓声が上がり、次々と石が投げられた。
 石の雨の中、逃げる兄妹を追いながらゴブリン達はギャイギャイと言葉を交わし合った。
 ――どちらを先に殺すか。
 ――どのように殺すか。
 ――誰が最初の一撃をくれてやるか。
 走り疲れたのか、岸壁の前で立ち尽くす兄妹を見つけたとき、ゴブリン達の興奮は最高潮に達した。
 待ちきれない、とばかりに1体のゴブリンが突出し、棍棒を振り上げる。
 そのとき、白と緋の風が戦場を駆け抜けた。 

●狩る者、狩られる者
 白い長髪を揺らし、先陣を切ったのはクロネだ。
 疾風の如き踏み込みで突出したゴブリンに迫ると、レイピアを振るう。
「悪のゴブリンはこの私が斬って捨てます!」
 白刃がきらめき、ゴブリンの肩を切り裂く。
「――血がたぎるな!」
 間髪入れずカイトが追撃する。
 緋色の翼をはためかせ、低空飛行でゴブリンを急襲したカイトは無数の突きを放つ。
 ゴブリンは数合カイトと打ち合うが、拙い防御技術では到底防ぎ切れず、瞬く間に傷を増やしていく。
 このままではジリ貧。一か八か、と頭上高くに長剣を振り上げるゴブリンだったが、
「そこよっ!」
 彩音が側面に迫り、術式を放った。
 鮮やかな火花はゴブリンに直撃。ゴブリンはそのまま地面に倒れ伏し、動かなくなる。
 瞬く間に仲間を倒されたゴブリン達であったが、特段慌てる様子もなくゲラゲラと下卑た笑いを上げるばかりだ。
「ったく。仲間がやられたってのに何がおかしいってんだ」
 己の術式の威力を最大限に発揮するべく、みつきは一旦間合いを取る。適切な間合いから己の魔力を高めつつ、みつきは考える。
 精々人間なんぞに殺されるなんて間抜けな奴だ。そんなことより獲物が増えたぜヒャッハー! 程度にしか思っていないのではないだろうか、と。
 事実、ゴブリン達の行動は協調性を欠いており、それぞれ目のついた相手に思い思いに攻撃を仕掛けるといった様相だ。そして、ゴブリン達の多くは獲物として目をつけていた執拗にルチアーノとアリソンに次々と襲い掛かる。
 その中の1体、一際大口を開けて笑うゴブリンにアリソンは鋭い視線を向ける。
「……なに下品に笑ってんのよッ!」
 感情の爆発と共に、アリソンは炎を纏う。
 そして掌に炎を集めると、勢い良くゴブリンに叩き込む。火球はゴブリンに直撃し、かがり火のようにその身を燃え上がらせる。
 瞬く間に火達磨と化し、錯乱するゴブリンに音もなくスリーが忍び寄る。
「あなたの、今を、摘み取ります」
 スリーの瞳が妖しく輝き、周囲に暗い塵が薄らと漂う。
 死神もかくやと無慈悲な軌跡をもって大鎌は振るわれ、見事にゴブリンを刈り取った。
 一方ルチアーノは、アリソンとは対照的に
「ごめんなさいっ…許してっ!」
 と乙女のように泣き叫びながら後退した。
 下がり際に放たれた弾丸は1体のゴブリンを的確に射抜く。
 だが、ルチアーノの演技に騙され、暴力的な衝動に陶酔するゴブリン達には、ルチアーノの精緻極まる射撃技術もただのまぐれにしか見えない。
 結果としてこの場で一番か弱そうなルチアーノに集中する結果になったが、これも彼の狙い通りだ。
(今の内にいじめごっこを楽しむといい。アリソンをいじめた君達は絶対に許さないよ)
 石つぶてを堪えつつ、ルチアーノは反撃の時に備える。
 ヘイゼルもまた乱戦の中に身を躍らせた。
「――はっ!」
 近接格闘用の術式を展開し、杖を振るう。
 変幻自在の連続打撃に、ゴブリンは息を詰まらせた。ゴブリンの反撃を危なげなくいなし、続けて仕掛けてきたもう一体の剣戟をもかわすと、素早く杖でその足を払う。
「クロネさん、今です!」
「任せてください!」
 ヘイゼルに応えつつ、クロネが駆けた。
 崩れ切った態勢から放たれた苦し紛れの一撃をヒラリとかわすと、クロネはゴブリンの喉元にレイピアを突き入れた。ゴブリンはもんどり打って地面に倒れ伏す。
「あと9体ですね!」
「いいや、これで――」
 ゴブリンの剣がカイトの身体を薄く裂き、羽毛が僅かに散る。
 だが、カイトは負傷を意に介さず、さらに鋭さを増した突きをゴブリンに見舞った。ゴブリンは辛うじて防御するものの、押し込まれて溜らず後退してしまう。その後ろには、ロープの罠。
 転倒したゴブリン目掛けて、みつきは宙に魔法陣を描き己の魔力を解放する。
 凝縮された神秘の力が、ゴブリンの胸を穿つ。胸に風穴を開けられたゴブリンは数瞬手足をバタつかせていたが、いつしかパタリと動きを止める。
「あと8体だ。ちょいと時間はかかったがキッチリお見舞いしてやったぜ!」
 事ここに至り、初めてゴブリン達の顔に焦りの色が浮かぶ。
 敵は1人も倒れていないのに、仲間の数は減るばかり。もはや数の優位も失われている。
 ゴブリン達は無言の内に顔を見合わせ、頷き合う。
 ――逃げよう!
 一度逃走を決意すればゴブリン達の行動は速い。
 素早く周囲に視線を巡らせると、それぞれの得物を振り被り、全力で包囲網の突破を試みる。
「あら。一体何処に行こうと言うのでしょうか」
「ここは通行止めよ! 恨むんなら腐った性根の自分を恨みなさいっ!」
 すぐさまヘイゼルとアリソンが退路を塞ぎにかかる。
 ゴブリンは「邪魔だ!」と言わんばかりに己の得物を振り上げ、渾身の一撃を放つが、可憐な見かけに反して依頼に参加したイレギュラーズの中ではトップクラスの体力を誇る彼女たちを打ち崩すことは適わない。
「やりたい放題やって旗色が悪くなったからってすぐに逃げるなんて、虫が良すぎると思わない?」
 別方向に逃げたもう1体を彩音は魔力で形成した矢で、追い立てる。
 その先に居るのは、スリーだ。鎌が弧を描き、ゴブリンを袈裟斬りにする。
「ようやく、気がついたようですね。今日のあなた達は狩る側ではなく、狩られる側です」
 血を噴き出し、よろけるゴブリン目掛けてルチアーノが一息に間合いを詰める。
 ゴブリンを調子に乗せるための演技は、もはや必要ない。先程とは打って変わって、冷徹な視線をゴブリンに向ける。
「弱い者いじめは楽しかったかい? 冥途の土産に恐怖心をプレゼントしてあげるよ」
 ルチアーノは渾身の力で得物を振るう。
 ルチアーノの得物と岸壁に挟まれ、強かに頭を打ち据えられゴブリンは岸壁にへばりつくようにして動かなくなった。

●戦闘終了
 そこからは先は一方的な展開だった。
 ゴブリン達は決死の形相で比較的体力の少なそうな前衛――クロネやカイトに集中攻撃を試みた。だが、クロネが先頭のゴブリンを斬りつけてバックステップで距離を取ってしまえば、ゴブリンたちの足で追いつくことは出来ない。
 カイトに攻め寄せたゴブリンに至っては、巧みに草結びのある位置に誘導され、転ばされるといった始末である。
 隙だらけになったゴブリンたちに、剣戟が、弾丸が、打撃が、魔術が――イレギュラーズたちの猛攻が襲い掛かり、ゴブリン達1体1体確実に討ち取られていった。
 もしゴブリン達が生き残る可能性があったとすれば、イレギュラーズ達より数が上回っている段階で全力で逃げることだが、この戦場はイレギュラーズたちが用意した殺し間だ。柵も罠も地形も、狩るために用意されている。最初から全力で逃走したとしても半数以上は確実に討ち取られたことだろう。
「やあっ!」
「――せぇいっ!」
 最後の1体の剣をソラネが弾き、カイトが渾身の一突きを見舞えば、イレギュラーズ達の狩りは無事に終わる。
 戦闘という緊張から解放されたみつきは、ようやく肩の力を抜く。
「これで村のみんなも安心して暮らせるな! 罠の片付けとか早いとこ済ませて帰ろうぜ」
 一気に疲労感が圧し掛かってくるが、あからさまに表に出すのは格好悪い。
 そう考えるみつきは努めて普段通りに振る舞う。
「片付ける前に、お時間を頂いても、よろしいでしょうか?」
「別に良いけれどそれ、どうするの?」
「少々、調べたいことが、ありまして。出来るだけ、手短に済ませますので」
 怪訝な顔をして問いかける彩音を他所に、スリーはゴブリンの死体の検分を始める。
 この世界の生物と、自分の世界の生物との差異は? そもそもこの世界のゴブリンとはどのような生物なのか? 身体の構造はどうなっているのか?
 世界は変わってもスリーの知識欲は留まる所を知らない。
「もう少し苦戦するかもと思っていたけれど、何だか呆気なかったね」
「ええ。でも、無事に終わって何よりです」
 ルチアーノとヘイゼルは必要があればパンドラ復活も覚悟していたが、今回はその必要はなかったようだ。
 多少なりとも手傷を負った者は居ても精々軽い切り傷や打撲程度であり、重傷者は1人もいない。
「おしゃべりも良いけど、あんまり無茶し過ぎないでよね。お兄ちゃん」
 ルチアーノをからかいつつもアリソンは己のギフト、不死鳥の炎で仲間達の傷を癒していく。
 仲間の治療を終えた後はヘイゼルと共に薬草を取りに行く予定だ。
 聞き取りの際に村人の許可は取ってあるし、ついでに薬草の摘み方も教えてもらってある。
 ヘイゼルは依頼の記念のために。アリソンは幼馴染を守り抜いた少年に薬草を渡し、ギフトで癒すために。
(話は聞いたわ、よく守って帰ってきたわね。その勇気と行動、とても立派なものだわ――なんて伝えたら)
 臆病だけれど勇敢な少年は、一体どんな顔をするだろうか。
 少年の反応を想像するアリソンの口元には自然と笑みが浮かんでいた。

成否

成功

MVP

アリソン・アーデント・ミッドフォード(p3p002351)
不死鳥の娘

状態異常

なし

あとがき

 まずはPL・PCの皆さま方にお疲れ様でした!
 熱いプレイングありがとうございます!
 PPPでは初めてのリプレイとなりますが、GMとしても大変楽しく描写させて頂きました。
 また機会がありましたら是非ともよろしくお願いします。
 それでは、また今度。皆様の良い冒険をお祈りしています!

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