PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ビーチを襲う海のギャング討伐

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●そこはユートピア
 海洋首都リッツパーク郊外に並ぶ観光街をご存知だろうか。貿易のみならず、国内外で人気の旅行客向けの小さな町である。
 旅人や混沌各地の名所が並び、旅館等の宿泊施設に事欠かぬ町であるが、当然目玉は他にもある。
 海。それも恐ろしく煌めいたビーチ!
「イヤッホォウ!! まったく海洋は最高じゃい!」
「きゃー(はぁと)ねェン神父様ぁ、ヌークビーチ特製のカクテルは如何ァン?」
「ウッホホォゥ!! これまた不正義なバストにクリミナルオプァーイなカクテルが! ぬっふふ、チップなら幾らでも弾みますよ! いただきまーす!」
「いやーん!(はぁと)」
 そんな観光客賑わうビーチから僅か離れた沖に、天義復興のどさくさに紛れて絶賛逃亡中のディスコ―神父はヨットの上で海洋美女達に囲まれてカクテルを浴びるように飲んで踊っていた。
 ヨットの隅に置かれた女神像にはパイナップルがぶっ刺さっている。

 ……そんなパーティーしている男女に忍び寄る影。
 忘れてはならない。ここはどれだけ陸に近かろうとも『絶望の青』と繋がる、魔の領域なのだ。
「ぐっへへへ! この赤い紐はなんですかな~?? 怪しい、あやしいぞう。さては魔種の罠だな~~????」
「いやーん。引っ張っちゃダメぇ!」
 水面下に潜む化生は今か今かと機を待っている。
 波に揺られているヨットの上で暴れる男女を、まるで糸に吊り下げられた餌を見る様な目で怪魔は牙を光らせた。
 その瞬間。スモウ=トリの如き圧巻の超ボディをした美女に張り手を喰らわされて吹き飛んだ全裸の神父が海に落とされた。
「ごぼぼぉおっ!? ちょ、私は泳げなっ……」
「いやーん(はぁと)神父様ダイジョウブゥー? ……えっ」
「お、お姉様。神父様の周りに何かいるわ! あのシルエット……まさかっ」
 船上から異変に気付いた美女達が肩を抱いて尻餅を突く。
 ディスコ―神父は。
「あっぷぁっぷァ、エ゛フ ッ!! は? 一体何が……」
【ゴブァァァア!!】
「うわあああああ!! ゴブリンだーーー!!!」

 その日。海洋の観光スポットであるフセーギ・ビーチが阿鼻叫喚の地獄と化すのだった。

●陸に上がって来たゴブリンを蹴散らせ!
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)がたいへんなのです! とイレギュラーズの元へ駆け寄って来る。
「海洋のとあるビーチを大量のゴブリンが海から上がって来て襲っているのです!
 現在、大勢の旅行者や海洋の民間人がゴブリンに捕らわれています!
 おそろしい……ゴブリン達は遂に海から上がって来て人々を襲い始めたのです……!」
 イレギュラーズはユリーカの額に手を当てる、少し熱中症気味かもしれない。
「皆さんは速やかに囚われた人を救出しながらゴブリンを討伐して欲しいのです!
 気をつけて下さいなのです……海から上がって来てもゴブリンは何の支障も無く動けている様なのです」
 わかった。わかったから。
 医務室へ連れて行かれるユリーカを見送りながら、イレギュラーズは一先ず現場へ向かう事にするのだった。

GMコメント

 うきわブレードです、よろしくお願いします。
 皆様にはビーチに現れたゴブリンの討伐と捕虜の救出をお願いします。

 以下情報。

●依頼成功条件
 ゴブリンの殲滅
 囚われた人々の救出

●真夏のビーチ
 本日は快晴、大変お日柄も良く。
 襲撃されて騒然としたビーチにはパラソルやらテーブルやら砂の城(直径12m)がそのままにされています。
 ビーチのあちこちにゴブリンと、これらに捕まった人々が酷い目に遭ってたり縛られてキャンプファイヤーの中に叩き込まれようとしています。
 ゴブリンの数は30。被害に遭っていると思われる民間人は12名。

▼ただのゴブリン×30
 いずれも手には木の棒と、『イキリタツノコ』という有毒の海藻を持っています。
 どの個体も一般人にとっては脅威ですが皆様にとっては雑魚。しかし特殊な海藻が皆様に牙を剥くかもしれません。
 【イキリタツノコ】
 ・投げつける、叩き付ける等の衝撃を加えると粘度の高い白い液体を吐き出します。
 ・この液体をかけられると動きを鈍くされる他、浴びた場所から一定時間大きな果実が二房生えます。
 ・一定時間経過後、この果実は弾け飛んでガスを撒きます。甘いメロンソーダの香り。
 (物至単、物近単、ライトヒット時に反応と回避にマイナス補正2T、1T後【恍惚】付与)

▼囚われた民間人×12
 逃げ遅れ、或いは真っ先に捕まった人々。
 ビーチの海の家でアイスクリームまみれにされてる女性がいたり、
 浜辺で脅されてゴムボートに空気を入れさせられてるパパさん達がいたり、
 ビーチの中心でキャンプファイヤーの燃料にされそうになってる神父とカップルがいたりします。

 ゴブリンは彼等を大体三つのグループに分かれて取り囲んでおり、場合によっては乱戦に巻き込まれたり人質にされる場合があります。
【GOBBB!!(近寄れば人質の胸にたわわな果実が実る事になるぜぇ!!)】

●情報精度A
 不測の事態は絶対に起きません。

 以上。
 戦闘その他意気込みアイテムスキル等々好意的に判定します。
 皆様のご参加、お待ちしております!!

  • ビーチを襲う海のギャング討伐完了
  • GM名ちくわブレード(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年10月09日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
ルウ・ジャガーノート(p3p000937)
暴風
マリナ(p3p003552)
マリンエクスプローラー
リナリナ(p3p006258)
鞍馬 征斗(p3p006903)
天京の志士
アウローラ=エレットローネ(p3p007207)
電子の海の精霊
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
糸巻 パティリア(p3p007389)
跳躍する星

リプレイ

●推参!!
 スイカ割り! ビーチフラッグ! 砂のお城! パラセーリング! 人間焚べて盛り上がろうぜキャンプファイヤー!
 海洋が誇る輝ける砂浜を占領した邪悪なる海漢ゴブリンの宴は今、最高潮に達しようとしていた──!
「そこのゴブリンくん! どうかね、そこの若いカップルの方がヌメッと脂乗っててよく燃えそうだが!」
「ふざけんなこの野郎!? おいゴブリン、そっちのオッサン神父だぞ多分、聖職者!」
「しかも多分クズよその人!」
「んぎぎ……こ、このっ、不正義ですよあなた達!」
【ゲゲゲゲゲゲ】
 お前が言うなと言いたくなる神父だが。しかしこう見えてゴブリン達に聖職者特有の気配を察知されて真っ先に捕らえられた背景があったりなかったりする。
 とはいえ今のところ聖なる力で邪な小鬼達を蹴散らす兆しなどあるはずもなく。
 醜すぎる様を見たゴブリン達がゲラゲラとただただ喜ぶだけ、醜い宴はビーチの中心で更に盛り上がるのだった──

 ──という光景を遠目に所変わってビーチ端のヤシの木下の岩陰。
「皆が清く正しく遊んでるビーチを襲うとは不届きな奴らだな」
「あの焼かれそうになってる神父の旦那は自業自得な気もするがねぇ」
「ぶっちゃけマジで自業自得感が半端ねーが、だからと言って助けねえわけにもいかねえな! 片っ端から蹴散らして海に戻ってもらおうじゃねえか!」
 炎を前に喚く神父から目を背けながら『付与の魔術師』回言 世界(p3p007315)が嘯く横で、呆れ様に『黄昏き蒼の底』十夜 縁(p3p000099)が煙管を揺らす。
 彼等の反応は至極最もなのだが『暴猛たる巨牛』ルウ・ジャガーノート(p3p000937)にとって依頼でのオーダーはアレも救出対象に入るので以下略。
 ビーチ端の岩陰で姿を隠して機を伺う中、ルウは肩を鳴らして闘気を滾らせた。
「おー、強襲真夏のゴブリン! フセーギ・ビーチ! フセーギビーチ! ……防ーぎビーチなのに、ゴブリン防げなかったのか?」
 地べたに座り込み、野獣味溢れるルウとはまた一味違う野性味漂う『やせいばくだん』リナリナ(p3p006258)が割ったヤシの実から出したマンモ肉をがぶり。
 快晴のビーチを撫でる潮の香りはそれだけで真夏の。
 ゴブリン達のどんちゃん騒ぎは悪鬼の所業であるものの、どことなくビーチでその宴振りを見ていると楽しそうにも見える。でも楽しそうじゃない何だコレ。
「夏の海は楽しみだけどこういった敵が出てくるのは厄介だねー」
「おー、真夏の海は危険が危ないマミレだな!」
 装い涼し気に。リナリナの隣で『電子の海の精霊』アウローラ=エレットローネ(p3p007207)はヤシの実ジュースをストローで一飲み。
「ていうかゴブリンって水生生物でしたっけ……」
「俺は森とか山とか平原とかにいるモンだと思ってたぜ」
「なんか最近よく海で見るような……ビーチに現れたギャングというか、なんかガラの悪い海水浴客みたいな感じですね」
 ルウのマッシヴな背中を見上げ、『マリンエクスプローラー』マリナ(p3p003552)もヤシの実の上でコロコロ。
 ヤシの実を足裏で転がす『天京の志士』鞍馬 征斗(p3p006903)も美少女達に混ざり、ゴブリン達が手にしているヌメッとした海藻を注視して嫌な予感を募らせていた。
 しかしビーチの惨状に対して一様に華やかである。
「なんか、ちょっとばっかり面倒そうな……まぁ出来る事はするとしてさ」
「──ですね。恐らくあの神父さんが火に掛けられる直前が好機の筈です。
 まずは外側、あの海の家でやりたい放題しているゴブリンを急襲し人質を救出。その後は半ば流動的になりますが……臨機応変にお願いするでござる」
 頭上から応じる声。
 半透明の糸で木に吊り下がり宙に浮いているかのような姿で『ヒトデニンジャ』糸巻 パティリア(p3p007389)がビーチを俯瞰し機を見計らっていた。

 ビーチに散見するゴブリン、その数は多い。
 それゆえにパティリアは各々チームに分かれ、人質となっている人々に危害が及ぶ事を避ける作戦を立てていた。
 戦場を分けるか各所で動くかで人質への負担も変わって来るポイントである。
「……そういえば見慣れない海藻みたいな物を持っているが……あれは何に使うんだ?」
「大昔は豊胸の作用があると信じられてたが、単にそう見えるだけでありゃ立派な毒物だ。
 でっかい果実が実る時に体力持ってかれるんだったかね……にしても、『イキリタツノコ』とはまた厄介なモンを持ってきたことで。
 どこに生えてたんだかなぁ……若いやつらが悪戯に使わねぇように、また駆除を頼んでおくとしようかね」
 縁の話に、そうしてくれと世界は首を振るのだった。


 下卑たゴブリンの笑い声がビーチのあちこちから聴こえて来る最中。
 海洋産の甘味処を揃えていた海の家なるコテージでは、大量のアイスクリームを投げ合い海種の少女達にぶつけたりあーんさせ合うゴブリン達が馬鹿騒ぎに興じていた。
 壁の端にトルコアイスのような粘りのある氷菓子で拘束された海種の少女達が転がされているようだ。
「うぅ……寒いよぉ」
【ゲェヒャヒャヒャッヒャァ】
 飛び交う、甘ーいアイスクリーム。きっとそれは普通に食べても美味しかったに違いない。
 壁や天井のみならず外にまで投げ出されたアイスクリームを見た"とあるワイルドガール"は荒れ狂う怒りを感じるに違いない。
 と、そこで一陣の風が海の家を叩いた。

──── ドゴオォォォッ!!

【【GYAAAAA!?】】
 抗い様の無い衝撃が一体のゴブリンを襲い、窓の外へ吹き飛び鈍い音が炸裂する。
 宙を舞う蒼き尖兵、パティリアの推参。
「──奇襲成功! 拙者は人質の救助に当たります、他の敵は任せたでござる!」
 素早く身を翻し震える少女達に駆け寄ったパティリアはギフト【海星綱】を巻き付け、抱え上げる。
 その隣でふわりと空色の髪が踊る。
「というわけでアウローラちゃんにお任せ☆
 奏でるは魔法の重ね唄、悪い事するゴブリンにはお仕置きだよ! アウローラちゃんの歌を聞いて──!」
 四色の方陣がアウローラの歌に呼応し反響を繰り返す。コテージの外に吹き荒れる多重奏にゴブリン達が慄き混乱する。
 奇襲に次ぐ援護によって場が騒然としつつもイレギュラーズにそのターンは回った。
 駆け付けた他の仲間達、その中でも負けじと張り切り踏み込んで来たリナリナの姿がコテージに転がり込んで来る。
「むおー! ゴブリン倒す! 倒……んお? アイスクリーム……!」
「派手に撒かれてるな、それではもう売り物にならないだろう」
 散乱するアイスクリームを指差すリナリナに応えた世界の言葉に、少女はガーンと衝撃を受けた。
「むぅー……うりものにならない? 食べられない? おー!! ゴブリン許さない! 食べ物粗末にする、禁止!!」
【GYAAAAAA!??】
 奏でられるストラディバリウスの音色。
 激しい旋律へとアップすると同時に「おー!」と猛々しく跳躍したリナリナが巨大マンモ肉をフルスイング。錐揉みするゴブリンの悲鳴が挙がるのもお構いなしにワイルドガールはボコボコにしに行くのだった。
「おー、バックマウントでごぜーますねあのポジションは。
 そして惚れ惚れする勢いで突っ込んで行きますねルウさん、ミリ残りはぺチぺチしておきますかね」
「食いモン粗末にしてんじゃねえよゴブリンども!」
 ルウにダイナミック退店させられていくゴブリン達。
 窓も扉も一緒に無くなっていく様を見て拍手交えるマリナ。彼女はグレイシャーバレットで砂浜に突き刺さった敵のケツを撃ち抜く作業に勤しむのだった。

 海の家から響く騒音は増して。
 ビーチの各所に居たゴブリン達は同胞の悲鳴を聞きつけ、キャンプファイヤーなどの手を止めて様子を見に行く姿を見せていた。
(えらいド派手に暴れてるな……まぁその方がおっさんには好都合だがね)
 海の家を起点に広がりつつある騒ぎの裏、のらりくらりとした調子で浜辺を歩き煙管吹かせている縁が映る。
 ビーチの中央では濛々と炎が立ち昇る傍に神父らしき海パン男がはりつけにされたままだが、特に急ぐ必要もなしと彼は判断した上で戦場から離れた場所を目指していた。
 ぱしゃり、と足元を流れる海水が小さく飛沫を立てる。
「……! あ、あんたは……?」
「よう。災難だったなぁ……って言うほどでもねぇか? ……まぁ、いいか。
 お前さん方。立てるかい? 俺は非力なおっさんなモンで、できりゃぁ自力で逃げてくれると助かるんだがねぇ」
「それが……この足では」
 縁が辿り着いたのは、ゴブリン不在となった海岸沿い。ゴムボートを何故かひたすらに膨らませている男達に彼は歩み寄って行く。
 大きな怪我はしていないと見た縁は自分で歩けるかと問う、が……男達は足元を指差す。腫れた足首、どうやら折れているか痛めているようだった。
「……そうきたか。数は三人、ってなるとあれだな。
 ん? いや何、なんでもねぇさ。ちょいと手間だが……お前さん達くらいなら運べない事もない」
 要救助者。何事か思案巡らせた縁はだがしかし戦闘中の仲間の方には一瞥もせず、くいと顎で男達に何かを示した。
「その情けねぇゴムボートに乗ってしがみついてな、向こうの岩陰までは引きずってやる」
 声色こそは平時のままだったが──なんとも怠そうな顰め面だった。


「あまーい! うまーい!」
「……こら、落ちてる物を食べるんじゃない。あと口元がベタベタになってるぞ」
「いやしかし助かりましたリナリナ殿、果敢に身を挺した動きに感謝でござる」
 人質背負うパティリアへ迸った海藻から粘液から庇うべくヘッドスライディングで奔ったリナリナは口いっぱいに入ったアイスクリームを堪能していた。
 ちなみに粘液は明後日の方向に飛んで行っていた事はここだけの話。
 口元どころか顔中アイス塗れの彼女に世界が世話を焼いている背後で、コテージから脱したパティリアが岩陰に人質を置いてビーチに戻って来る。
 海の家での戦闘は終わり、今はビーチ半ばに広がっている砂浜で戦闘チームがゴブリンと交戦を始めた所の様だ。
 移動しようとする征斗に並ぶパティリア。
「……流れが変わって来たね、作戦通りゴブリンが少し集まって来たみたいだよ」
「戦闘チームが破竹の勢いで敵を蹴散らしてますからね……
 そういえば世界殿、先ほど岩場に別所から救出された方々を見つけたでござる。どうやらお怪我されていたご様子、是非診て貰えれば」
「あぁ、なるほど。すぐ戻る」
 恐らく戦闘を避けて動いた縁の功によるものだろう、この場にいない者に感心しながら世界はパティリアに応じると共に頷いた。
「では行きましょう、ゴブリン達も自分達が押されていると分かれば人質に手を出すやも知れません。急ぐでござる!」
「人質か……戦うだけなら好きなんだけどね」
 考える程に面倒に思えるが、それも致し方無し。征斗が踏み出すより先にパティリアがその姿を消した後に溜息が一つ宙に消えた。

 砂浜を舞うあれは、真夏には付き物のビーチバレーボールではないだろうか。
 否──ゴブリンである。
「Oh……派手さにかけてはピカイチ、下手に近づくと巻き込まれそうでごぜーます……」
 帽子がずり落ちそうになるマリナの眼前ではビーチに顕現した修羅が猛威を奮っていた。
 ゴブリン引きつけの要である戦闘チーム、その最前線を張っているルウには当然の如くゴブリン達から集中砲火が浴びせられる事となる。
 飛び散る木工ボンド然とした粘液、星の砂粒と混ざり輝く血と汗。
「胸が重いってか……ここまで来ると全身が動き難いぞ! 絵面的にもヤバいよなこれ!」
「ルウさーん、需要ないとか言ってましたけど案外特定の層には爆受けかもしれねーですよー」
「それって喜んでいいのか! がァァッ!!」
 振り回し、振り下ろした大剣を軸にルウの大木じみた筋肉光る美脚が小鬼を一蹴。暴威纏う陣風の中で白濁駅まみれになった彼女には、今や胸元だけでなく数珠のように被弾ヶ所から繋がった球体を幾重にも連ねて揺らされている。神秘的だ、死したゴブリンの魂達から拍手が挙がる。
「盛り上がって来たね、ボルテージ上げていっくよー! さぁ痺れるようなアウローラちゃんの唄に聴き惚れて!」
 暴風の中心となっているルウ目掛け、スパーク奔るアウローラの歌とエレクトリックな音色が砂浜を駆け巡る。
 蛇の様に唸る雷撃はゴブリン達を翻弄し、時に気紛れの様に弾き焦がす。
 援護に回っているマリナは「ルウさんが雷神みたいでごぜーます」とコクコクうなずいた。
「いやー、ルウさんは胸どころかどこにくっついても絵になるんですけどね。
 何事もやりすぎると重いし、えぐいというか……やっぱほどほどが一番じゃねーです……?」
 軽く貧血気味な様子でマリナはつい先ほどの自分を思い出す。
 いっそ胸で受けてしまえば良いのでは。そんな考えから一度は大きな果実を実らせた。だが肉感のあるそれはただ虚しい重さを持ち、そして同じ場所に粘液を浴びるとトテモヨクナイ絵面になってしまった。
 一部中略。アウローラちゃんの歌声が良い感じにマリナを元気づけていた。
「おー、なんだコレ? 不思議の実だなっ!
 ちょっと面白い! でもこれダメ! リナリナに不思議キノコの実生えさせる、ソレ悪手! 悪手!」
 リナリナもさりげなく被弾して胸元にゆっさゆさと大きな果実を実らせていた──が、次いで映ったのは悪い顔がニヤリ。
「るら~!!」
 ダメージなんぞ知らないとばかりに(知らない)果実をブチんともぎ取った彼女はあろうことかゴブリンに全力投球。
 顔面に果実がクリティカルしたゴブリンは幸せそうに息を引き取った。
「おー、掟やぶりの逆キノコ攻撃!!」
 更には思いついたように海藻を拾い上げてブンブン振り回しに行く野生児。
(なんて安らかな表情で……っていうか危ないなあれ、うっかり被弾しそうだ……)
 ばつん。
「えっ」
 ルウの回復に努めていた征斗がリナリナから目を逸らした瞬間、ポタタと何かがパーカーの隙間に入った直後に丸々とした果実がパーカーのファスナーをブレイクした。
「鞍馬、状況はどうなって……被弾したのか」
「まぁ……そうだね」
「……そうか」
 世界はそれ以上突っ込まず、取り敢えずヒールオーダーを戦闘チームに投げる。
 そしてビーチを俯瞰する。落ち着いて見れば、砂浜のあちこちに散見していたゴブリン達の姿はもうこの場にいる物が殆どとなっていた。

 残す所、このビーチで最も目立っていた焚火のみ。
 人質の救出に当たっていたパティリアは棒に括り付けられた神父を振り回すゴブリン達と攻防を繰り広げていた。
【GBBBB!】
「失礼!」
「ぶぐぉおッふ!!?」
 ブオンと横薙ぎに迫る神父を蹴り上げていなしたパティリアは砂上にも拘らず摺り足気味に距離を詰め。ゴブリンを一体二体と続き瞬く間に手刀で意識を奪い、絞め落として行く。
 しかし動きを止めた所へ降りかかる粘液が彼女を襲った……かに思えた、その一瞬。
「貴殿は……!」
「向こうのカップルなら物陰に退散させておいた……おっさんもさっさと退散――って訳にもいかねぇし、丁度奴さん達で終いみてぇだしな」
 パティリアの眼前で開いた愛らしい子供用パラソルが粘液を受け止めて。クルリと、さも演舞の様に大振りに肩へ担いだ縁が小首を傾げる。
 『気』の流れが渦巻く。風が星の砂粒を攫い、彼の周囲でコンマ毎に勢いを増していく。
【──GYYYYAAAAAAAA!!?】
「お前さんら、泳げるんだろ? なら頭の冷やし方は分かってるだろうさ」
 海洋の流儀だ。そう告げた縁の言葉を引き金に荒れ狂う砂塵の竜巻はゴブリン達を遥か宙へ放り上げ、海面へと叩き込むのだった。


●ビーチ・ギャング
 イレギュラーズがゴブリン達を片付けて暫く。
 解放された人質や近隣住民を中心に、ビーチには早くも元の活気が戻りつつあった。
「アウローラちゃんはお掃除もこなせちゃうんだから!」
「しかも海の家片付いたら飯と酒出してくれるってよ、すぐ終わらそうぜ!」
「私はアイスクリーム目当てですかねー」
「おー、手伝えばご褒美貰えるって聞いた! アイス! リナリナ甘いのもっと欲しい!」
 コテージの中を掃いているルウとマリナ達。
 彼女達以外にも、イレギュラーズの面々は荒れたビーチの各所で後始末に追われる人々の手伝いをしていた。
「イキリタツノコはこれで全部か……後で焼こう。
 ……次はあの傍迷惑な火を消すか」
 ぬめる海藻を籠に入れ終え一息吐く世界。
 ゴブリン達の事は結構な騒ぎだった筈だが、彼の後ろからは早くもきゃっきゃと少女達の遊ぶ声が聴こえて来ていた。

「きゃー! すごーい! 水の上走ってるー!」
「ふふ、沈むでござるよー!」
「きゃー!!」
 少女を一人抱え海面を駆け抜けた後にドボォンと沈むパティリア。
 その様子を見守りながら、水際でバレーボールを打ち返す征斗は少し疲れた様子で言った。
「っと……あんな事があったのに、元気だね」
「海のコワイ魔物に比べたら平気だよ、行くよーお姉さん!」
「だから違うって……あと、ね?」
 これ、もうやめない?
 浜辺に突き立てられた神父に向かって投じられたビーチボールを征斗は打ち返しながら息を吐くのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

大変お待たせして申し訳御座いませんでした。

依頼は成功。
流動的ながらも各々人質救出を優先しつつ、味方へのヘイトを軽くする等の工夫が全員の負担を減らす結果になったのではないでしょうか、大変お見事でした。

お疲れ様でしたイレギュラーズの皆様。
当方の一身上の都合により大幅な遅延となってしまった事、この場をお借りして深くお詫び申し上げます。
此度も素敵なプレイングを頂きありがとうございました。またの機会がありましたらよろしくお願いします。

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