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シナリオ詳細

奴隷が売れると武器が売れない

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●世界平和に必要な銃
 ラサ傭兵連合は広大な砂漠に点在する傭兵と商人たちによる連合体である。
 それぞれが浅く広い利害関係にあり、連合の端で起こったことが反対側へと影響することも少なくない。
 そんな連合に所属している武器商人レーツェルマンは、ある難題に突き当たっていた。
「幻想種の集団拉致だと?」
 ラサから深緑の間にある広い森林地帯には、複数にわたる『ハーモニアの隠れ里』が存在する。
 各集落は細い道によってつながり、滅多に行き来せず、森の恵みと農業によってひっそりと暮らしているのが殆どだ。そのため民族の独自性や静謐さが保たれているのだが……。
 そんな隠れ里を襲撃・拉致し、奴隷としてラサの流通ルートに乗せている集団があるというのだ。
「だから銃を買うべきなんだ。力が偏れば横暴が生まれる」
 レーチェルマンはそう語り、情報屋に金貨を渡した。
「しかし、チャンスでもあるな」

●『武器商人』レーツェルマン
 ラサにある馬車駅。
 その隣に建てられた宿酒場にて。
「今回のビジネスには戦力がいる。お前たちにはそのために働いてもらいたい。
 具体的に言うと、奴隷屋の抹殺だ」
 レーツェルマンと名乗った灰色の男はコインの詰まった袋をテーブルに置き、同じテーブルについたローレット・イレギュラーズたちにそう述べた。

 灰色のコートに灰色の帽子。灰色の髭をたくわえ身体からは火薬の臭いがする。レーツェルマンの職業は銃器を専門とする武器商人であった。
「最近、幻想種を狙った拉致事件が起きているのは知っているか。
 元々森に隠れ平和的に暮らしていた彼らを武力で制圧し、拉致して奴隷として売り払うという輩がいるらしい。
 俺は商売に貴賤をつけない主義だ。だから奴隷商売が悪いとは言わん。
 しかし俺の仕事の邪魔になってもらっては困る」
 レーツェルマンは森しか見えない地図の一部にマーカーで円を描いて見せた。
「この集落に住むトカフという少数幻想部族。彼らに自衛のための銃器を安値で販売する商談をとりつけた。
 ただし、自営のためだけで終わって貰っても困る。襲撃に優れた連中が里を潰してしまえばそれで終わりだ。今回の商談をステップに周辺の隠れ里にもコネクションを持ち自営装備を売りたい。
 そのために、交渉カードを一つ増やすことにした。
 それが、奴隷の仕入れをしているマンハンター『スケイルガイスト』たちの抹殺だ。
 大きな危険が目の前を通り過ぎると、人は備えに金を使う」
 そういう心理だ、とレーツェルマンは語った。

 マンハンターたちがある里を襲撃するという情報を、彼らは事前に掴んでいた。
 これに乗じる形でハントチームを森の中で見つけ出し、抹殺するのだ。
「森は深く視界は通りづらいが、奴らが向かう先が分かっている分こちらにとっては有利だ。最悪、里のそばで待ち構えても構わんが……なにせ相手は客だ。実際的な被害が及びそうな作戦は避けるのがいいだろう」
 作戦と人選は任せる。レーツェルマンはそう言うと、余分にコインを置いて席を立った。
 『ここは俺のおごりだ』というサインである。

●マンハンター『スケイルガイスト』
 森の中を進む二人組。
 鋼のように頑丈な装甲樹の皮を縫い合わせて作ったというウッドスケイルメイル。
 その表面にドクロモチーフのペイントを施したのが彼ら、『スケイルガイスト』である。
 マンハントを専門とする業者であり、拉致によって『仕入れ』た人間を奴隷業者に売りさばくのを生業としていた。
「フーゥ……今日もハーモニアを何もない日常から救ってやれるぜ。草みてーにつまんねー暮らしするくらいなら、俺らの金になって社会の役に立てるほうが幸せだろ? ナァ?」
「ヒヒヒ、そういうことそういうこと」
 彼らはショットガンやナイフを手に、森の中を歩く。
 マークをつけた地図を片手に。

GMコメント

■依頼内容
 マンハンター『スケイルガイスト』の抹殺

 彼らは森の中を2人一組で進み、地図につけた大雑把なマークでしか知らないハーモニアの隠れ里を目指しています。
 こちらも2人一組に別れて森の中を捜索し、彼らを見つけ出して個別に抹殺しましょう。

 リプレイは『探索』『戦闘』『おまけ』の3パート構成になると思われます。

■探索パート
 『スケイルガイスト』を見つけ出すため、2人一組になって森の中を探索します。
 優れた探索能力があると良いというのは勿論として、限られたメンバーの限られた能力をいかにバランス良く組み分けするか、というところも重要になってきます。

 森は視界が通りづらいこと。こちらは追いかける立場であること。ある程度近づけば相手もそれに気づくだろうこと。
 この三つをふまえて探索プレイングをかけていきましょう。(スキルの誤用にはご注意ください)

 適切そうな探索スキルが全く無かったとしても、行く場所は分かっているのでそれぞれが頑張って捜索することで途中のどっかでは見つけ出すことができます。
 探索がうまくいけばいくほど、里に対する危険が遠ざかり、かつこちらにとって有利になるように回り込んだり待ち伏せしたりといったことが可能になってくるでしょう。

■戦闘パート
 探索がうまく行きそうなら(それなりに有効なスキルを使っていけたなら)待ち伏せをして奇襲を仕掛けることができます。
 マンハンターは2人組で、ショットガンやナイフといった武器で戦います。
 戦闘力はそれなりですが、情報で勝っているこちらのほうが総合的に有利でしょう。

■おまけパート
 マンハンターの抹殺が済めば、レーチェルマンが改めてそれを里へ報告しに行きます。
 この段階で自衛装備を販売するための本格的な商談が始まりますが、皆さんはこのとき『マンハンターを抹殺してくれた人たち』としてレーチェルマンと一緒に里に入ることができます。
 隠れ里で交流をはかったり、最近どうなのと聞いてみたりできるでしょう。
 特に何も無ければ、隠れ里のオーガニックな食事をごちそうになったりもできます。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • 奴隷が売れると武器が売れない完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年08月23日 22時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
シュリエ(p3p004298)
リグレットドール
御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
エストレーリャ=セルバ(p3p007114)
賦活
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ

リプレイ

●世界が平和にならない商売
「武器商人と奴隷商人。双方世界のクズであることは自他共に認める公然の事実だが、無くなれば世界が平和になるかといえば、そうでもない」
 大きな連結馬車を走らせ、武器商人レーツェルマンは語る。
「特に前者は平和に必要だ。もし武器商人がいなくなれば、武器を手に入れられる者だけが他人を自由に支配できるようになる。今回のケースのように、な」
 馬車は森のそばに止まり、レーツェルマンは御者席で煙草をふかしはじめた。
 森の中にはハーモニアによる少数部族がいくつも暮らしており、彼らは武器を持たず一見平和に過ごしている。しかしそこへ武装した集団が入り込み、武力によってハーモニアたちを奴隷化しようとしているのだ。
「結局は、商売人の倫理問題なのだ。奴隷商人も、善良化すれば児童相談所のようになるだろう」
「じ……そう? なんじゃそれは?」
 馬車から降りた『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)が、壺を小脇に抱えたまま首を傾げた。
「わからなければいい。悪が平和に必要だという話だ」
「なら今回の件は、武器商人と奴隷商人の競争、といったところなのかしら」
 同じく馬車から降りた『斜陽』ルチア・アフラニア(p3p006865)が、レーツェルマンへと振り返る。
「人を食い物にするクズ同士だが」
「前者のほうがマシ、って?」
 他ならぬ武器商人自身の主張であるために常識とはかけ離れているが、言い分だけならもっともだ。
「少なくともこの世界は、剣をとらずに生きてはいけないものね」
「そして今回の目的は、悪人退治というよりも、商売敵の排除、というわけか」
 すとんと地面に足をつけ、まばたきをする『夢終わらせる者』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)。
「当然。慈善事業に大金を払うほど、豊かな暮らしはしていない」
 レーツェルマンの目的はあくまで商売であって、慈善事業ではない。
 今回に関してはむしろ、それが信用の材料になった。
「俺の武器は安くて高品質。運搬コストが低く流しやすい。森の中の民族にとって好都合だ。お互い、ウィンウィンの取引が出来る」
 そんな、火薬の臭いが充満した話を……。
「オーッホッホッホッ……っ」
 『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)が声量抑えめに打ち破った。
 あたりからささやき声が聞こえる。
 (きらめけ)
 (ぼくらの)
 (タント様)
「――が、この事態、解決して差し上げますわっ」
 声は抑えつつもポーズはしっかりとるタントである。
 事態。つまるところ……。
「幻想種(ハーモニア)限定の拉致、か。物騒な話だ」
 『背を護りたい者』レイリー=シュタイン(p3p007270)は腕を展開してブレードの出し入れ動作を確認すると、こっくりと頷いて手を握りしめた。
「ハーモニアばかりが狙われるということは、それを集めている『需要』があるということだが、それについては?」
「特に興味が無い」
 レーツェルマンは煙草のけむりを登らせながら、そっけなく応えた。
 だろうな、と呟くレイリー。
「個人的には興味がある。勝手に調べさせてもらっても?」
「かまわんとも。あとで集落に同行させるから、好きに探ればいい」
「じゃあ、そうなったらわらわはお昼寝でもさせてもらうにゃー」
 『怪人を八百人爆散させた女』シュリエ(p3p004298)はうーんと背伸びをしてから、手のひらに霊力をためて硬化。霊装状態とした。
「まずはマンハンターを情け無用にバシッとやるにゃ!」
「ええ、それはもう」
 本を抱えた『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)が、呼吸を整えるように深く大きく、森の空気を吸い込んだ。
 僅かに混じる、異質な臭い。
 自分たちとは別の、血なまぐさい臭い。
 気持ちを固めるべく、あえて心のなかの言葉を口に出した。
「同族を害する輩を、私は許しません。
 必ずや元凶を突き止めて、討ち滅ぼします。
 その為にも、まずは今回の件を未然に防ぎ、一掃致しましょう」
 同じ決意を抱いた『抗う者』エストレーリャ=セルバ(p3p007114)が、強く頷いて手を握り締める。彼の指輪がきらりと光り、木目の光沢に魔力の輝きをみせた。
「犠牲を出す前に。ボクらで、皆を護りましょう!!」
 そうして、彼らはそれぞれのチームに分かれ、森の中へと入っていった。
 先に森へ入ったマンハンターたちを追いかけ、集落へたどり着く前に仕留めるために。
 そう、これは。
 『マンハンター狩り』である。

●マンハンターハンター
 たとえば地球世界において、森に入った人間を探し出すのに古来より有効とされているのは訓練された犬を放つことである。
「すんすん、すんすん……にゃ、人間くさい!」
 シュリエは地面に両手をつき、森に入った人間の痕跡を優れた嗅覚で探っていた。
 その様子を『むしろネコでは』という言葉を飲み込みながら見ていたエストレーリャ。
「森の中をまるごと透視とかできませんか? 1メートルまでなら透過できるんですよね」
「できるけど……ここまで木の間隔が狭いとちょっと微妙にゃ。木一本先をすかすくらいなら余裕だけどにゃー」
「そういうものですか……割と期待があったんですが……」
「むしろ、そっちにこそ期待してるにゃ。森はハーモニアの独壇場にゃ?」
「いや、それほどでも……」
 エストレーリャは謙遜しつつも、周囲の草木の意志を感じ取っていた。
 感じ取るといっても、この辺をなんか通ったんだなあという断片的なものであって、言語的対話ができるわけじゃあないが。
「森の仲間が、危ないんだ。皆を助けるために、力を貸して欲しい」
 エストレーリャはそういって、半透明な狼の耳をぴんとたてた。
 彼が精霊と対話するときに現われる特徴である。
 殆どが草木と変わらない下位精霊だったが、ごくまれに混じっていた知能ある精霊がここを通った人間が見慣れないなにかであったことを教えてくれた。
 ここまで情報が集まれば十分だ。エストレーリャは追いかけるようにリスを使役し、森の中を効率的に先行させる。
「みつけましたよ。正確な位置の策定は、頼みます」
「にゃ!」

 森を探るのにハーモニアほど適切な人種はいない、という言葉がある。
 ハーモニアたちが森に隠れ里を作るのもそうした理由と無関係ではないだろう。
 ドラマは深く呼吸を続けながら、周囲の草の折れ方や木のしめり具合。風の通り方や花の香りのたちかたを確かめ、その場を歩き慣れない者が通ったことを確認していた。
「誰か、ここで立ち止まっていましたね。この草だけが特に光を欲しがっています」
 日の当たる山草に手を翳し、ドラマは目に炎のような光を燃やした。
「わかった。周辺をサーチしてみる」
 レイリーは自分の眼球にアクセスすると透視能力をアクティブにし、周辺の木々を透過させながら探り始めた。
 そして。
「敵を発見した。こちらに気づいていない。これなら奇襲ができるだろう」
 レイリーとドラマは小さく頷きあい、連絡をハンドサインに切り替えた。

 森はものにあふれている。
 植物、動物、土に光。
 デイジーは木にとまっていた小鳥を使役状態にすると、このあたりを通った人間がいないかを尋ねていた。
「ふむ、ふむ……どうやらついさっき、ここを見慣れぬ者が通ったらしいな」
 植物や下位精霊よりも、小動物のほうが知能が高い。得られる情報も勿論大きい。
 これに加えて……。
「このあたりの花が足跡を覚えているみたいよ。ルートをかなり正確にたどれるはず。……どうする?」
 ルチアが花にフッと息を吹きかけて礼をした。
 人が一キロ先の交通事故に気づけないように、花は数十メートル先を歩く人の気配に気づきづらい。しかし連動しておこるあれこれを断片的に集め、それを効率よくつなぎ合わせたなら、人間の足跡を植物たちの中に見いだすことも不可能ではなかった。
「直接追いかける必要はないぞ。妾のけらい(使役動物)に追いかけさせるのじゃ。その間妾たちは……」
「先回りして待ち伏せ、ね」

 ここまで語ったとおり、植物との対話が森における探索手段の全てではない。
 エクスマリアは嗅覚や聴覚を集中させ、森の中を蜘蛛のように静かに進んでいた。
 枝から枝へ髪を伸ばして飛び移り、髪を束ねた六本足状態になって木へとはりつく。
「タント」
 エクスマリアの合図で、タントはぴたりと足を止めた。
「奴らが近い。今から追いついて、後ろから攻撃をしかける。やれるか?」
「作戦通りに、ですわ」
 タントは親指を立て、エクスマリアはそれに頷いた。
 ついてこい、という合図を出し、更に木々をわたって飛んでいく。

●スケイルガイスト
 森を進む二人組。
 普段から森を歩き慣れていないのか、いかにも疲労した様子であった。
「ほんとうにこっちで合ってるんだろうな」
「奴から買った地図が間違っていなきゃあな」
 彼らはショットガンを背中にかつぎ、ナイフも腰のホルダーにしまったままだった。
 前方の木の陰に、ドラマたちが隠れているなどまるで気づかずに。
「――」
 木の陰から飛び出し、既に抜いていた剣を振り込むドラマ。
 刀身に宿った青い魔力が刃となって飛び、ほぼ無防備だったマンハンターの腕を切り裂いていく。
「待ち伏せだと!?」
「聞いてねえ……!」
 咄嗟に腰のナイフをとるスケイルガイスト。
 レイリーは魔鎧と一体化した脚部をライトグリーンに発光させ、勢いよく相手へ突撃。
 左腕を展開すると折りたたんでいたアイギスシールドを展開。バックラーのような形で瞬時に組み立てると、相手の斬撃を斜めに受け流す。
「私はレイリー=シュタイン! マンハンター『スケイルガイスト』、私がこの先には絶対に行かせない!」
「あいつら、護衛を雇って――」
 飛び退き、ショットガンに手を伸ばすスケイルガイスト。
 レイリーはその距離をすぐさま詰め、右腕から展開したオーラブレードを相手の胸元へと突き立てた。
 特殊な樹鱗装甲が攻撃を受け止める――が、それで充分だった。
 ドラマの放った青い斬撃が、彼らの首をはねとばしていく。

 奇襲に成功したのはドラマたちだけではない。
「今が年貢の納め時じゃー!」
 木の上から飛び降りたデイジーが両手で振り上げた壺。
 その壺がスケイルガイストの脳天に直撃し、そのままスケイルガイストは仰向けにぶっ倒れた。
「天誅! このっこのっ」
 倒れた相手にマウントをとり、ひたすら壺をがっしがっし叩き付けるデイジー。
 サスペンスドラマのごとき殺人風景だが、叩くたびに込める魔術を巧みに変えており、三発殴れば大抵の奴は死ぬという非常にヤバみのつよい打撃であった。
「て、テメェ……!」
 デイジーめがけショットガンをかまえる二人目のスケイルガイスト。
 が、そんな彼の前に滑り込むようにルチアが身構えた。
 突然の奇襲に驚いてか、スケイルガイストは標的をあわせることもせずルチアめがけて発砲。
 対するルチアは相手の射撃にカウンターをかけるようにしてミリアドハーモニクスを発動させた。
 強固な治癒フィールドが展開し、ルチアに打ち込まれた銃弾の傷が瞬間的にふさがり、弾が反発するように排出される。
「悪いけど、『詰み』よ。あなたにもう勝ち目は無い」
 何発かの銃撃を治癒フィールドで弾いたルチア……の、背後で、血まみれの壺を抱えてデイジーがゆらりと立ち上がる。
「わるいこはいねがーなのじゃー」
 フシャーと言いながら飛びかかるデイジー。振りかざす壺。
 この後、洗練されたデイジーダイレクトドクトリン(DDD)によりもうひとりのスケイルガイストも相棒と同じ運命をたどることになった。

 一方その頃エクスマリア。
「見つけた――砲撃する」
 スパイダースイングで素早く森を抜けたエクスマリアはスイングを中断。
 空中で自らの身体を大砲に編み上げると、黄金の魔力の塊を放出。
 背後から迫る砲撃に、咄嗟に対応したスケイルガイストたちがまとめて吹き飛ばされていく。
「くそ、散開して包囲! とんだ邪魔が入りやがった!」
「慌てんな。あんだけの砲撃だ。すぐにガス欠になるさ。そうすりゃ取り押さえて『商品』にしちまおうぜ」
 ショットガンを構え左右に開くスケイルガイストたち。
 一人はエクスマリアに接近し移動を妨害。もう一人は木々を盾にして援護射撃を仕掛けてくる。時間を稼ぎながら戦うつもりだろう。
 こういった状況は苦手ではあるが……。
「エクスマリア様ー! 仕上がってますわよー!」
 約10m後ろから、片膝立ち姿勢で声援をおくってくるタントがいた。
「砲撃に神が宿ってますわー! もう一撃! もう一撃!」
「よし」
 エクスマリアは頭髪を巨大なハンマーにかえると、スケイルガイストをめしゃっと叩き潰した。
 その勢いのまま跳躍し、のこる一人へと飛びかかる。
「やべえ、ガス欠どころか――」
「ナイスですわー!」
 敵を樹木ごと粉砕する音と、タントの声援が重なった。

 さて、残る一チームはというと。
「語るべくもなく、にゃ」
 スケイルガイストの鎧を素手で貫いて、シュリエは相手の胸に手刀をねじ込んでいた。
 心臓に直接毒を流し込み、一秒ともたず相手は即死。
 一方のエストレーリャはゴースト・ローズによって相手を逆さに吊るしていた。
 きわめてよくできた探索によって完璧な不意打ちをしたがため、恐ろしく早く終わってしまったようだ。
「同朋を傷つける敵は、必ず報いを受けてもらいます。
 そのまま森に還り、養分になればいい」

●トカフ村にて
 ハーモニア少数部族『トカフ』。部族の名前がそのまま集落の名で呼ばれ、族長が村長を勤める。
 そうしたシンプルなコミュニティに、ドラマたちは訪問していた。
 同じハーモニアであっても来客が珍しいのか、ドラマが読み聞かせる本に子供だけでなく大人まで真剣に耳を傾けている。
 その一方ではデイジーが『くるしゅーないのじゃー』と言いながら森の果実や野菜をもりもり食べている。
 手際よくマンハンターを駆除してくれたことをうけて、彼らなりに歓迎のムードを出しているようだ。
 シュリエやルチアはそれに甘え、のんびりお昼寝をしたり散策をしたりとそれぞれの楽しみを満喫していた。

「ざんとまん? おとぎ話でしょ。聞いたことある」
「寝ないと目に砂をかけられるんだよね」
 子供たちがくすくすと笑っている。エクスマリアがザントマンについて聞き込みをしていた。
 タントが聞き込みに加わっていく。
「なら、突然姿を消したひとはいませんかしら」
「人さらいは前からいるよね」
「最近増えたって」
「この周辺でも拉致事件が増加しているのか……」
 同じく聞き込みをしていたレイリーとエストレーリャが集まってくる。
「それにしても、彼らはどうして隠れ里の場所がわかったんでしょうか。情報を流している人物がいる、ってことですよね」
「それこそ、『ザントマン』だろうな」
 商談を終えたらしいレーツェルマンが戻ってきた。
「族長から話を聞いてわかった。最近、ハーモニア関連の情報を高く買い取る業者が増えているらしい。ハーモニア奴隷の著しい高騰のせいだろう。理由はわからんが、どうやらかなり高く、それも大量に買うやつらがいるらしいな」
 情報をさらっと流してくれたレーツェルマンに対して、意外そうに眉を上げるレイリー。
「拉致被害に興味がないんじゃなかったのか」
「拉致に興味はないが、危機管理には興味がある。危険が迫れば銃が売れるからな」
 そういって、手にぶら下げたアタッシュケースを掲げた。
 どうやら彼は携行銃器に限って大量にアタッシュケースにしまい込めるギフト能力をもっているらしく、そのおかげでこうした森の奥地まで大量の銃を輸入できるということらしい。
「情報をやったんだ。そちらも何かわかったか」
「そうだな……」
 エクスマリアは頷いた。
 自衛の習慣がつけば、武器を買うだけでなく傭兵も雇うようになるだろう。自分たちに依頼してくるケースも増えるかもしれない。
 レーツェルマンに乗じるわけではないが、自分たちも集落にコネクションをもっておいて損はないだろう。
 彼らは集めた情報の交換と、ネットワーク構築について話し合った。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!
 ――トカフ村と周辺集落とのコネクションが生まれました。

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