シナリオ詳細
<薄明>怒り狂う魔物犬と元冒険者達
オープニング
●
幻想南部。
かつて、この地域は砂蠍による侵攻があった地域だ。
動乱の最中、起こった謀反により幻想南部にできた管轄区域の空白地帯に、オランジュベネなる小貴族が統治する領地がある。
この地を中心として、突発した小規模な事件がいくつも巻き起こっていた。
とある集落内へと攻め入ってきた獣達。
ウウウゥゥゥゥ…………。
ガルルルルル…………。
何かの感情に突き動かされるように、唸りを上げていたのは、魔物化、大型化した野犬達だった。
そいつらは最初、集落内で遊んでいた子供達に目をつけ、襲い掛かっていた。
「怖いよー!」
「待て!!」
その救出の為、この地に住まう40代男性2人と女性1人の元冒険者達。
「おじちゃん、ありがとう」
「いいから、早く逃げろ!!」
「うん!!」
早々に、子供達を遠くへと逃がす元冒険者達。
この場に傷を癒やせる者がいなかったことも大きく、傷を負った子供達を早く集落の誰かに手当てしてもらおうと考えたのだ。
後は魔物達を抑えられればいいのだが……。
「ちっ、こいつら、強いぞ……!」
魔物の勢いに飲まれる元冒険者達。
若干傷を負い、戦いに熱が入り出すと、魔術師の女性の様子が変わっていく。
「よくも、可愛い子供達をおおおおおおっ!!」
目の色が変わった彼女は、あちらこちらへと氷の魔法を発し始める。
「許さん、ゆるさんぞまものどもおおおおお!!」
そして、男性2人も女性を止めるどころか、敵対する魔物犬どもへの怒りを燃え上がらせ、狂気に飲まれかけてしまう。
「おおっ、おおおおおおお!!」
手にするハンマー、2本の刃を使い、周囲の建物を破壊し始める。
だが、魔物犬と元冒険者が敵対している状況には変わりないようで、破壊の間に互いに交戦は続けていたようだ。
逃げてきた子供達から、状況を聞いた近隣の住人達。
「なんだ、何が起こっている?」
「早く、ローレットに救援要請を!」
異様な騒ぎとなる集落。
住民は慌ててこの事態の解決の為、ローレットへとイレギュラーズの派遣を要請するのである。
●
幻想のローレット。
今回は程近い場所で起こる事件とあって、周囲も慌ただしさを感じさせる。
「南の方で、暴動事件が頻発して起こっているようです」
説明を求めるイレギュラーズへと、『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が話を始めていた。
幻想南部のオランジュベネ領。
この地は、管轄区域の空白地帯に位置する。
様々な事件が起きている中、アクアベルが担当したのは、とある集落での暴動事件だ。
「最初は、魔物犬が集落へと襲撃してきたのがきっかけなのだそうです」
どうやら、集落の子供達が襲われていたらしく、応対したのが冒険者を引退した40代の男女だ。
元々は同じパーティーを組んでいたのか、彼らは最初、息も合った立ち回りで対していた。
しかしながら、予想以上の魔物の強さに、苦戦する元冒険者達。
やがて、戦いの最中、女性が突然正気を失って暴れ始めると、程なく男性達まで狂気に侵されて周囲の家々や集落の施設の破壊を始めたそうだ。
「子供達を襲った怒りが引き金となっていると思われますが……、ともあれ、元冒険者の方達も抑える必要があります」
普段は、元冒険者達も温和な性格なのだが、自我を失った彼らは説得にも耳を貸す様子もないので、一度戦闘不能に陥らせる必要がある。
当然、魔物犬達は全て討伐せねばならない。
魔物となっている為、その体躯は1.5~2mと大型化しており、パワーと素早さで襲い来る厄介な相手だ。
こちらも狂気の影響は少なからずあるとは思われるが、魔物だけに詳細は不明だ。
「あとは、集落にできるだけ被害のないよう立ち回っていただければと思います」
集落のどこで暴れているかは状況次第ではあるが、最初、子供達が襲われていたのは集落の外れだ。
さほど状況が変わっていなければ、そのままの場所で交戦している可能性も高い。できる限り、戦闘区域を広げぬよう戦うと、被害は小さくなるだろう。
「以上ですね。……あっ、最後に元冒険者さん達から、事情聴取もお忘れなく」
その情報はこの一連の事件に、共通する何かがあるかもしれない。
忘れないように聞いてきてほしいとアクアベルは最後に告げ、事件の起こる集落へとイレギュラーズ達を送り出すのだった。
- <薄明>怒り狂う魔物犬と元冒険者達完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年08月14日 22時15分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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幻想南部で頻発する事件。
ローレット所属のイレギュラーズ達は、その解決の為にとある集落へと向かう。
「さて、今回の仕事は狂気に飲まれた魔物犬と元冒険者達を止める事だ」
改めて、大柄で筋肉質、厳つい顔をした『義に篤く』亘理 義弘(p3p000398)が簡単に現状を整理する。
「天義も落ち着いてきたって時に、今度はこっちで異常事態か……」
少年にも間違われそうな小柄なエルフ耳の少女、『必殺の上目遣い系観光客』ラナーダ・ラ・ニーニア(p3p007205)はやることが絶えないなあと眉を顰める。
今から向かう集落で起こる事態を、スレンダー体型で長い黒髪を揺らす『嫣然の舞姫』津久見・弥恵(p3p005208)は狂乱の騒ぎと例えて。
「状況から見て、あまり悠長に構えている暇はなさそうです」
弥恵の言葉に、皆から異論は出ない。
それにしてもと、可憐なメイド少女『大剣メイド』シュラ・シルバー(p3p007302)が仲間達へと問いかける。
「一体何が起きたのでしょうか……一斉に人が狂うだなんて」
「怒りの感情かー」
練達で作られた電子の精霊である『電子の海の精霊』アウローラ=エレットローネ(p3p007207)にはその感情はよく分かってはいないらしいが。
「人を殺しちゃうエネルギーを内包してるのは怖いなー」
とはいえ、単なる怒りで人が狂ってしまうなどの力があるはずもない。
「怒りで何もかもの区別がつかないなんて、やっぱり魔種の影響よね」
こちらもエルフ耳だが、幻想種。
紫の髪で目元を隠した『絵本の外の大冒険』アルメリア・イーグルトン(p3p006810)が考える。
「……近くにいたのかしら。それとも、魔物犬から?」
「そのようだが、まるで魔種の呼び声に引かれたかのようだぜ」
同意する義弘。ともあれ、この騒動を片付けねばならないと彼は仲間達へと告げる。
「とりあえず、犬をなんとかしないとだね!」
それに、アウローラが笑顔で同意する。
「考えてもわからないですが……、やれることをやるだけ、です」
「放っておくと、さらに大きい火種になりそうだからね」
シュラが堅実な姿勢を見せると、ラナーダも今のうちにできる限り不穏な芽を摘みたいと仲間達へと語ったのだった。
●
集落ではすでに、多数の影が暴れている。
ガルルルルル…………!!!
「「おおっ、おおおおおおお!!」」
爪や食らいつきで暴れる人間と同等か、それ以上にまで大型化した魔物犬、そして、そばには武器を手に正気を失った元冒険者達の姿が。
見たところ、暴れている状況は変わらないが、時折両者は交戦しているようにも見える。
当初、魔物に狙われた子供達に異様なこの状況を聞いた集落民は、遠巻きにその事態を見守ることしかできない。
そこに、駆け付けたのは……。
「輝く魔法とみんなの笑顔! 魔法騎士セララ、参上!」
村の平和はボク達が守ると、金髪に赤いうさ耳のヘアバンドを付けた『魔法騎士』セララ(p3p000273)だ。
「闇に鎖されし、心を照らす愛と勇気の旭光! 魔法少女インフィニティハート、ここに見参!」
続いて、白いドレス姿となった『魔法少女インフィニティハートH』無限乃 愛(p3p004443)が決めポーズ……の後にすぐ真顔になって。
「……さて、行きましょうか」
彼女達は仲間と共に、この騒ぎへと介入していく。
セララはすぐさまセララフィールドを展開していき、暴れる者達が建物を破壊しないようにと保護する。
「これで建物は大丈夫だよ。ここはボク達に任せて避難して!」
さらに、セララは近場にいる村人達へと避難を促す。
「魔物の狂気に中てられてしまうとは、今日は冒険者の方々の愛のバイオリズムが低かったのでしょう」
愛は元冒険者達の状態を慮り、自らの解釈を交えて告げる。
「そのハートに愛の力を叩き込み、正気に戻さねばなりませんね」
なお、愛曰く、愛の心を持たぬ魔物は纏めて焼却処分ならぬ、愛却処分なのだとか。
「やはり、三つ巴の戦いになりそうね」
「……こう言う状況は初めてだなぁ。上手く戦えると良いけど……」
アルメリアが魔物犬と元冒険者達がこちらにも敵意を向けていたことを察すると、一度自身無さげに呟くラナーダがこの場の仲間達の存在を感じて。
「いや、みんなもいるし、きっと上手くいくよね。自分にできることを頑張っていこう」
気合を入れ直した彼女は、手早く仲間と作戦の確認を行う。
メンバーは二手に分かれ、魔物犬と元冒険者の対応に当たる。
アルメリアは犬から討伐に。同じく、シュラも魔物犬だけを巻き込むことができる立ち位置を移動していく。
「なるべく、数を減らしていくねー」
アウローラはなるべく、倒せそうな魔物犬から叩く構えだ。
ガルルルルルル…………!
「おおおおお、おおおおおおおおお!!」
暴れる両者がイレギュラーズを威嚇してくる中、セララは耳を澄ませてこの場にいない敵がいないか索敵する。
しかし、そういった者の存在を確認できず、前に出た彼は敵全体を注視して戦闘区域から出そうな相手のマークを行う。
「俺は冒険者達を相手にするぞ。こいつらは犬ころ共の気に当てられただけで、本来は敵じゃねえ」
何とか元に戻してやりたいと言う義弘だが、それには少し痛い目に遭ってもらわねばならないと考える。
抑えが少ないと判断した弥恵も、元冒険者の対応へ。
「特に魔法使いの方は広範囲に攻撃しているようですので、要注意ですね」
元冒険者達の布陣は、前衛2人に後衛1人。弥恵が後ろの女性の魔法を危険視する。
一方で、義弘は前衛2人の相手を担うようで。
「さあ、どっからでもかかってこいよ、俺をぶち壊してみろってんだ!」
「「うおおおおおお!!」」
怒りを漲らせる男性元冒険者達は目の色変えて、イレギュラーズ達へと向かってくるのである。
●
集落で暴れる魔物犬と元冒険者達
二手に分かれた猟兵達の中で、素早いアウローラが連なる雷撃を発する。
「いくよー」
それらはまるで蛇のようにうねり、のたうち、犬数体を射抜いていく。
アウローラは持ち前の機敏さを生かして、さらにもう1発、チェインライトニングを撃つ準備を進める。
その前にと、シュラが犬だけが気付くような立ち位置で呼びかけた。
「今は遥か遠くの我が父より受け継ぎし魂、砕けるものなら砕いてみなさい!」
ガウワウアウアアアアーーッ!!
魔物犬達の注意がシュラへと向き、群がる敵は一斉に彼女へと毒爪を振るい、大きな口を開いて食らいついてきた。
一気にシュラが複数を抑えてくれている為、アルメリアはしばらく複数から襲われることはなさそうだ。
アルメリアは治癒魔術を使って回復に当たり、できる限り彼女をサポートする。
「これでだいぶ保つはず……」
その間にと、ラナーダは相手の出方を見て対処を決める。
現状、相手が愛らしいシュラへと気を取られているうちに、ラナーダは呪言を纏う負怨の魔弾を放っていく。
「敵を抑えてくれているなら、状態は見ておかないとね」
位置取りを気にかけながらも、ラナーダもまたシュラへの回復を優先して動きつつ、魔物犬の討伐に当たる。
後方の愛は集落の人が密集している場所へと敵を通さぬよう立ち、そこから動かぬようにすることで、戦闘区域の拡大を防ぐ。
また、その状況で愛は纏まった敵を狙い、ピンク色の愛の魔力の激流を炸裂させて敵を大きく吹っ飛ばす。
そうすることで、愛はできるだけ集落民や建物から敵を遠くに弾き、危害を軽減させようとしていたようだ。
一方で、元冒険者達と対するメンバー達。
こちらは、メンバーの都合でセララと義弘がメインで抑えへと当たって。
「お願い冒険者さん、正気に戻って! 貴方達は村の皆を守るんでしょ!?」
セララは呼びかけ続け、元冒険者達が誤って守るべき村落民を傷つけぬようにとマークし、移動を制限させる。
「うう、うおおおおおおおっ!!」
相手は、ハンマーをしたたかに打ち付けてくるパワー系のおじさん。
防御はしっかりと装備で固めていた彼女は相手が先に動き、かつ動かないタイミングを見て、攻勢にも出る。
近距離特化のスキル構成でこの依頼に臨んでいた彼女だ。それだけに繰り出す一撃は非常に強力で。
「正義の剣で怒りの心を絶つ!」
正義の心を両手の聖剣へと宿すセララは、理性を失った元冒険者目がけて十字に斬撃を浴びせかける。
「ぐおおおおおおっ!!」
しかし、一線を退いてはいても、昔取った杵柄といったところか。
頑丈なおじさんは斬撃を堪え、なおもセララの前へと立ちはだかる。
別のスピード型のおじさまには、義弘が当たっていた。
「できるなら、纏めて狙いたいところだが……」
もう一人の元戦士も併せて狙おうとすれば、セララを巻き込むと判断した義弘。
彼はやむを得ず、目の前のおじさまのみを巻き込むようにして腕を広げて回転し始める。
やがて、義弘は自らを中心として小さな暴風域を生み出し、2本のナイフを持ったおじさまの態勢を乱し、僅かに窒息させる。
(うまくいくとは限らねえが……)
ともあれ、元冒険者達を救い出す為にと義弘も気合を入れ、踏ん張って交戦し、彼らを押さえつける。
そして、弥恵は先に、身体強化魔術で敏捷性を補強してから元冒険者達へと告げる。
「この私、津久見・弥恵がお相手になりましょう」
口上を上げた彼女はさらに、圈と呼ばれる金属製の環状の武器『乾坤天舞輪』を手に構えをとって、可憐に舞い始める。
「月を彩る華の舞! 見惚れると怪我をなさいますよ!!」
大胆に肢体を振り乱す彼女は、近場の元戦士達を魅了しようとステップを踏む。
元冒険者達も正気であれば、彼女の武技に酔いしれてしまったかもしれない。
ただ、そこで放たれてくる氷の術。
「ああっ、あああああああっ……!」
一線を退いた元魔術師の女性は木の杖をこちらへと突きつけ、氷の矢を飛ばしてくる。
怒りの感情に突き動かされている彼女達だが、だからといって近接攻撃しかできないという状態ではないらしい。
その身を凍らせながらも、元冒険者を抑えるメンバー達は魔物犬と交戦する仲間からの援護を待つ。
その魔物犬交戦メンバー達は、順調に犬を抑えつつその体力を削る。
バウワウアウアウガウワウアウアアアッ!!
我に戻る犬達が狂ったように暴れ、あちらこちらへと分散してしまう。
アオオオオオオオン!!
遠吠えしてこちらを惑わせようとする魔物犬だが、愛はしっかりと体力の減ったその魔物犬を見据えて近づく。
「私の愛の心には、混乱など効きません」
彼女は敢えて敵の首根っこをつかみ上げ、しっかりと相手の心臓を狙って。
「私の愛で、貴方のハートを撃ち抜きます!」
これが愛の心と言わんばかりに、愛は文字通り物理的に魔砲で撃ち抜いてみせる。
あおぉ……ん。
弱々しく一声泣いた魔物犬は足をふらつかせ、地面へと崩れ落ちていったのだった。
●
暴走する魔物犬達の討伐はシュラがメインで抑えに当たっていたが、魔物犬達があちらこちらへと駆け回ることもあり、布陣が崩れ始める。
暴れる魔物犬の行動でとりわけ面倒なのは、押さえつけと遠吠えだろう。
アルメリアは仲間が押さえつけられたり、正気を失ったりすれば、すぐに柔らかな癒やしの光で包み込む。
乱戦の様相になってきたこともあって、彼女は防御しつつ回復に集中して。
「生存優先!」
どこから飛んでくるかわからぬ攻撃。これは味方からの攻撃……フレンドリーファイアも含むからこそ、怖いものがある。
とはいえ、メンバーは確実に魔物犬を叩いていて。
深紫色の弾丸を発するラナーダが1体を撃ち抜いて倒し、抑えに当たるシュラも『紅蓮の大剣【飛炎】』で敵を切り裂きながら、その身を燃え上がらせて完全に焼き払ってしまう。
また、乱戦になれば、冒険者と魔物犬が交戦を再開させることもあって。
「おおおおおおおおおっ!!」
ハンマーを持つおじさんが魔物犬を1体、叩き潰してしまう。
しかし、彼はすぐにまた手近な破壊対象を探していたこともあって、セララが抑えに当たっていたようだ。
そこに降り注ぐ元魔術師の氷の雨。さらに、素早くナイフを振るってくる元戦士。
引退したとはいえ、力ある元冒険者達の抑えに、義弘、弥恵も苦戦していたようである。
「奏でるは魔法の重ね唄!」
その時、アウローラが多重展開した中規模魔術を浴びせかけた魔物犬が泡を吹いて倒れていく。
すぐに愛が再び発射した魔砲に射抜かれた最後の魔物犬が倒れていったのだった。
面倒な魔物犬は全て倒したものの、ここから今度は命を奪わぬよう元冒険者達と対することとなる。
「その怒り、私が受け止めてみせます!」
シュラは魔物犬と同様に、荒ぶる元冒険者達の攻撃も受け止めようとした。
元冒険者達は、イレギュラーズ達が駆けつける前から戦い続けている。
「さすがに、スキルを使う力も体力もなくなってきているはずです」
そう考えるシュラは拳を繰り出し、冒険者達の無力化に当たる。
すでに、アルメリアは魔物犬側からこちらへと支援に移っており、練達の治癒魔術で抑える仲間達の体力を大きく癒していく。
それによって、少し持ち直した義弘。
彼は拳を振るって相手をしていたのだが、重ねるようにして、他メンバー達も不殺を狙って攻撃を行う。
素早くナイフを振るうおじさま目がけ、ラナーダが殺傷性の低い術を発射し、さらに、アウローラが聖なる光を放って。
「大人しくしててよね!」
「お、おお……」
その光に包まれた元戦士の表情が和らぎ、その場へと倒れていった。
愛はセララに対し、回復へと当たっていた。
前線メンバーの傷が深まっていたこともあるが、不殺スキルの所持状況的に仲間に託していたこともある。
仲間達の援護も来たことで、セララも余裕を持って交戦していて。
「今、助けるよ!」
セララが創造したのは、魔力による慈悲の光刃。
「あ、う……」
彼女はそれを一閃させて、ハンマー所持の元戦士は穏やかな顔で膝から崩れ落ちていった。
残るは、元魔術師の女性。
弥恵が蹴りによって、彼女を昏倒させようとするのだが……。
十分な形で蹴脚を生かす為には、装備の調整が必要となる。
この為、通常の蹴りを繰り出す形となり、下手すれば元冒険者の命を奪いかねない。
弥恵もやむなく攻撃を控えようとすれば、向こうは猛然と攻撃してくる。
そこで、アルメリアが支援攻撃をと魔法陣から魔力の棒を突き出し、相手を牽制していく。
「ああああ……っ!?」
元魔術師が戸惑う一瞬の隙に、義弘が攻め込む。
「お前さんらに非はないかもしれねえが、これも役目でな。容赦なくいかせてもらうぜ」
彼は素早く腹へと拳を一撃突き入れ、元魔術師の女性を昏倒させる。
暴れていた者達は全て動きを止め、ようやく集落に静けさが戻ったのだった。
●
集落での騒ぎも何とか収まって。アウローラは周囲の状況を確認する。
セララが事前に張っていた保護結界もあり、建物への被害はメンバー達が駆けつける前に破壊されたもののみで済んだようだ。
一方で、正気を失っていた元冒険者達には、アルメリアが回復魔法をかけて様子を見る。
「俺は一体……?」
すると、1人、また1人と目覚めて。
「何が起こったか、覚えてるかしら……」
「魔物犬と交戦していたところまでは覚えているのだが……」
手当していたアルメリアが尋ねると他メンバー達も集まってきて、義弘も問いかける。
「いったい何があったんだ?」
「どうしてか分からないが、無性に激情にかられてしまってな」
「激情……怒りに突き動かされたということでしょうか」
自分の疑問を仲間が聞いてくれたこともあり、シュラはそれらを踏まえて考えていた。
倒れた犬の死体を確認していたセララ。
彼女は犬からの感染によって、元冒険者達が暴走してしまったと考えていたのだが、特にこれといった要因を確認できずに。
「やっぱり、魔種の仕業?」
セララは聴取を仲間に任せ、できる範囲であちらこちらの捜索に当たっていた。
「憤怒の魔種……でも、周囲には誰もいないんだよね?」
そこで、ラナーダが手掛かりはないかと、ギフト『当たらずとも遠からず』を使用すると。
「旧オランジュベネ領……」
無意識にラナーダがそう呟くと、魔法使いのおばさ……もとい、おねえさんがそういえばと告げる。
「新生・砂蠍との戦いの折に、そこに助力へと向かったことがあったわね」
あの時は、戦える者は戦うしかなかったからと、元冒険者達も苦労したそうだ。
憤怒の魔種に、旧オランジュベネ領……。
それらが意味するところを、猟兵達はあれこれと思考を巡らすのである。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは乱戦にもなりかける中、広く戦場を確認、相手の抑えに当たっていたあなたへ。
今回はご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様、こんにちは。なちゅいです。
幻想南部で一斉に暴動事件が勃発します。
皆様の手でその鎮圧を願います。
●敵……9体
魔物犬と元冒険者は敵対していますが、
いずれも街を破壊しようと暴れている状況です。
◎魔物犬……6体
大型2体は2m程。中型4体は1,5m程と
いずれも魔物となり果てた野犬です。
大きさによって能力に差はありますが(大型>中型)、
使用スキルは変わりません。
・毒爪……(A)物近列・毒・出血
・食らいつき……(A)物中単・HP吸収
・押さえつけ……(A)物中単・窒息・致命
・ぎらつく視線……(A)神遠単・呪い・呪殺
・遠吠え……(A)神遠域・混乱・怒り
◎元冒険者……3人
冒険者を止め、この地で農作、子育てを行う40代人間種の男女です。
魔物達を迎え撃つ間に彼らも様子がおかしくなり、魔物達と共に集落で暴れてしまうようです。
説得は通用しないので、戦闘不能へと追い込む必要があります。
〇元戦士×2
・近接系パワー型
やや恰幅の良いおじさん。
ハンマーを振り回し、周囲の者を叩き壊そうとします。
・遊撃スピード型
痩せ型でやや渋さ漂わせるおじさま。
2本のナイフを振りかざし、
フットワークを生かしつつ周囲を切り裂いてきます。
〇元魔術師
木の杖を所持し、氷の術を得意とするおばさん……と言っても、美貌とスタイルを維持しているいわゆる美魔女です。
貫通する氷の刃と、広範囲を凍てつかせる氷を得意としています。
●状況
幻想南部のとある集落の一角にて、魔物となった犬達と元冒険者が暴れております。
双方暴れてはおりますが、敵対する状況は変わらないようです。
魔物犬は本能のままに暴れており、討伐必須。
元冒険者は魔種にはなっていませんが、狂気の影響で自我を失っており、戦闘不能に追い込む必要があります。
場所は状況によりますが、農村部なので家が密集していない場所であれば、被害は軽微になると思われます。
なお、魔物に襲われた子供達はすでに避難しておりますので、戦いにおいては考慮する必要はありません。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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