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シナリオ詳細

<bc'Swl>鹿威し
<bc'Swl>鹿威し

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●逃げる男
 とある山林の中を、男が走っていた。
 林業に従事する男である。
 その表情には、何か恐ろしいものを見たという恐怖がこびりついており、不規則な、ひきつったような呼吸が、男の混乱を現していた。
 ふと、立ち止まる。体力が尽きたのである。倒れ込むように座り込んだ男は、先ほど見た物について思い出していた。
 鹿だ。
 それは確かに、鹿だった。
 ……いや、それは正確ではないかもしれない。
 正確に言えば、鹿のような外見をしていた。
 あれが鹿であるはずがない。
 鹿は――鹿を食わぬのである。
 鹿が食うのは、草だ。
 鹿を食うのは、肉食動物だ。
 だが、あの鹿は、確かに、鹿を食っていた。
 ぐちゃりぐちゃりと。
 加えて……ああ、食われる鹿も、食う鹿を食っていた。
 喰い合っていたのだ。鹿が、鹿を。
 まるで、己が尾を永遠に喰い続けるうろぼろすの蛇のように。
 延々と、食い合っていたのだ。
 男はたまらず、息を吐いた。
 安堵の息である。おぞましい化け物から逃れられた。命を永らえた……そのような、安堵の息が、
 ぼぐりと。
 飲み込まれた。
 男の頭もろとも、安堵は暗黒の顎の内へと飲み込まれた。
 ぐちゃりぐちゃりと。
 鹿が、男を食う。
 喰い合いう永遠の、悍ましき輪廻の中に。
 男の肉体も、組み込まれた。

●レター・ノートの依頼。
「やぁやぁ、先にやってるよ」
 ローレット、そのテーブルの一つに大量の料理を山盛りに、レター・ノートは軽く手をあげた。
「ちょっとちょっとちょっとちょっとぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
 悲鳴を上げつつバタバタと跳びまわるのは、『小さな守銭奴』ファーリナ(p3n000013)である。彼女は頭を掻きむしりながら、イレギュラーズ達へと、問うた。
「いや、なんなんですかこの人、突然やって来るや依頼をするからついでにご飯を食わせろって! 私の! 私のお金で! 飲み食いを!」
「はっはっは、なんだか君とは過去からの因縁的なものを感じるんだ。もちろん気のせいなんだけれどね。だから少し、たかってあげようかなんてね」
「意味わかんないこの人!」
「そんなことより、依頼の説明をお願いするよ、情報屋さん。早く終わらせないと、もう一周、メニューの端から端まで制覇しないといけなくなる」
「ひいっ! と、というわけでお仕事ですよ皆さん!!」
 大慌てでファーリナが説明するには、以下のような話である。
 なんでも、幻想のとある山林に、『喰い合う鹿の怪物』が現れたそうなのである。『二匹の鹿がお互いを喰い合う形状をした一匹の怪物』、と言った方が正確だろうか。
 この鹿が、お互いを食っているだけならそれはそれで放置してもよさそうなものなのだが、こいつは無差別に周りのモノを、もちろん人も、お構いなしに食ってしまうというのだ。
「となれば、これは人類のピンチ! ついでに私の財布もピンチ! ってなわけでですね! 速やかにさっさと退治していただきたい次第! ああ! 皿が! 皿が増えた!」
「はっはっは。というわけで頑張ってきてくれ給えよ、諸君」
 ぎゃーぎゃーと喚くファーリナと、愉快気に笑うレター・ノート。こちらの状況は愉快なものだが、被害を考えれば、この怪物を放っておくわけにはいくまい。
 繰り広げられる茶番は無視しつつ、イレギュラーズ達は、怪物退治へと向かう為、ローレットを後にした。

GMコメント

 お世話になっております。
 洗井落雲です。
 レター・ノートによる怪物退治の依頼が発生しました。
 ファーリナの財布が空になる前に、速やかに退治してきてください。

●成功条件
 『うろぼろす』の撃退

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 幻想は、とある山林が舞台です。
 山林に潜む怪物、仮称『うろぼろす』を撃退してください。
 作戦決行時刻は昼。特別な状況に置かれない限り、戦闘へのペナルティは、基本的に存在しないものとします。

●エネミーデータ
 うろぼろす ×1
  特徴
   『喰い合う二匹の鹿』のような外見をした怪物です。
   基本的には、近接~中距離を射程とした物理単体攻撃を使用してきます。
   また、以下の特殊能力を持ちます。
   『≒飢餓感』
     うろぼろすのターン開始時に自動発動し、自身に『飢餓』の特殊状態を一つ付与します。
     『飢餓』が一つたまるごとに、攻撃力が少量アップします。
   『≒捕食』
     うろぼろすのターン開始時に、『飢餓』の特殊状態が5つ以上たまっていた場合、発動します。
     このターン、最も遠くにいるイレギュラーズ一人を対象に(複数キャラが同レンジにいる場合、ランダムで対象が決定されます。)以下の『捕食』攻撃を行います。
     『捕食』神・特レ・単・HA吸収。使用時に、『飢餓』が0になる。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。

  • <bc'Swl>鹿威し完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年08月21日 11時35分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)
砂竜すら魅了するモノ
オフェリア(p3p000641)
主無き侍従
雨宮 利香(p3p001254)
雨宿りの
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
リナリナ(p3p006258)
おにくにくにく
藤堂 夕(p3p006645)
小さな太陽
橘花 芽衣(p3p007119)
鈍き鋼拳
レイリ―=シュタイン(p3p007270)
背を護りたい者

リプレイ

●怪物の山
 びいいいいい。
 山中に、奇妙な鳴き声が聞こえる。
 知っているものならわかるが、これは鹿の鳴き声だ。
 だが、それは本当に、鹿の鳴き声なのだろうか。
 それは、鹿などではない、恐ろしい何かの声なのではないだろうか。
 誰も、確認していないのなら。
 そこに何か、恐ろしい何かがいても、誰も気づかないのではないだろうか。
「シカは知ってる! けど、ボロボロは知らないな!」
 『やせいばくだん』リナリナ(p3p006258)が声をあげる。一行は、『うろぼろす』の発見された山中を進んでいた。
 リナリナの言う『ボロボロ』とは、うろぼろすの事なのだろう。うろぼろす、という名前が覚えきれず、ボロボロと呼んでいるらしい。
 それはさておき。
「ウロボロス……地球世界の神話のようだね。自らの尾に噛みついた蛇の事の様だ……合ってるかな?」
 『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)が尋ねるのは、『小さな太陽』藤堂 夕(p3p006645)だ。
「はい! ……と言っても、私もマンガとかで見たくらいの知識しかないんですけど」
 夕は苦笑する。とはいえ、あくまで神話上のウロボロスと、今回のうろぼろすはさほど関係があるまい。何せ、相手は蛇ではなく、鹿だ。
「食べ合う鹿、ですかぁ。意味わかんないですよね」
 ぼやくのは『見た目は鯛焼き中身は魚類』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)だ。とはいえ、食い合う二頭の鹿、というイメージが、いまいち湧かないのかもしれない。それはそうだろう。鹿がお互いを食い合っている……そんな状況は、まず間違いなく遭遇しないものだ。
 だが、居るのだ。
 この山には。
 そう言う生き物が。
 想像しがたい、恐ろしい何か。それは空想や妄想の類ではなく、実際に、人を襲った。
 となれば――。
 討伐しなければならない。
 その恐ろしい悪魔を。
 対峙しなければならない。
 その恐ろしい何かと。
「果たして本当に、生物なのでしょうか。そもそも、生物としてかなり奇妙ですよ」
 『主無き侍従』オフェリア(p3p000641)が言う。二人で一人、などは比喩表現で存在するが、実際に二匹で一匹の生き物など聞いたことは無い。
 びいいいいい。
 鹿が鳴いた。
 草をかき分けて、イレギュラーズ達は山道をゆっくりと進む。周囲を警戒しながら――目を凝らして。敵が敵だ。警戒しすぎるという事は無いだろう。
「何か、いる……? ……!?」
 『鈍色の要塞』橘花 芽衣(p3p007119)は眼前に広がる光景に、たまらず息を呑んだ。
 鹿である。
 いや、それは鹿に見えた。
 びいいいいいい。
 それが鳴くと、口元から何かの内臓がしたたり落ちる。つながったそれを視線で追ってみれば、足元に転がるもう一匹の鹿と繋がっている。足元の鹿は死んでいるわけではなく、立ち上がった鹿の腹を食んでいる。
 ぐちゃり、と音を立てて、鹿の腹が切り裂かれると、臓物が垂れ落ちて、鹿がそれを食んだ。切り裂かれた胃から、人骨としか思えぬ物体が零れ落ちる。
 鹿の足は、腿のあたりから、鹿同士、足が接続されていた。立ち上がれば、この鹿は尻合わせに立ち上がるのだろうか。そんな形の接続……狂気の科学者が酒でも飲みながら作り上げたのか、あるいは子供が目隠しをしながら作り上げた粘土細工か、あるいは夜明け前のまどろみに見る悪夢か。何とも形容しがたい物体が、イレギュラーズ達の眼前に飛び込んでくる。
 奇妙なことに、イレギュラーズ達はこの生き物を、『一個の生命体である』と認識できていた。それは、夢の世界で問答無用に『これはそう言うものだから納得しろ』と概念を叩きつけられたような、この世界に直接刷り込まれたような、あまりにも奇妙で気持ち悪く、すっと理解できた感覚であった。
「びいいいいいい」
 鹿が。
 いや、それが鳴いた。
「うっわぁ、これは、なんというか……!」
 たまらず、上ずった声を『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)が声をあげる。
 それ……うろぼろすから感じるものは、絶え間なく続く飢餓だ。暴食ではない。美食でもない。ただ飢えているから喰う。永遠に続く餓鬼道。
「随分とお腹を空かせているみたいですけど……満足できない、っていう奴なんでしょうね……!」
 利香の言葉に、『背を護りたい者』レイリ―=シュタイン(p3p007270)が続いた。
「まさに怪物……こいつが、うろぼろす……!」
 レイリ―が剣と、盾を構えた。オーラの刃が形成され、それに反応したかのように、うろぼろすが、びいいいい、と鳴く。
 相手はこちらを食料だと認識したようだ。だが、それは誤りだ。彼らは……イレギュラーズ達は狩人。悪魔の怪物を討伐しにやってきた、狩人なのだ。
 イレギュラーズ達は、各々武器を構える。今こそ、この悪夢を、この飢餓を、ここで断ち切るために!
「来い……! うろぼろす、お前の飢餓、受け止めてやる!」
 レイリ―の声と共に。
 今まさに、悪夢の山中での戦いは幕を開けた。

●終わらない飢餓
「びいいいいいい!」
 うろぼろすが雄たけびを上げて立ち上がった。続いてがちがちと歯を鳴らしながら、器用にこちらへと走り、やって来る!
 うろぼろすは目標を、芽衣へと定めたようだ。ばたばたと足を動かし、跳躍。腹から、口元から臓物を垂らしながら、悪夢が芽衣へと襲い掛かる。
「いいさ、来い……!」
 芽衣は腰を深く落として、うろぼろすを迎え撃った! 落下するうろぼろすが、真正面から芽衣を捉える!
 墜落。なにかとてつもなく重いものが落下したかのような感覚が、芽衣を襲った。とっさに腕を出していなければ、その口は首元へと噛みついていたかもしれない。
 身を護る形で突き出された巨大な手甲に、うろぼろすは強くかじりついていた。本来であれば、鹿の口など受け付けぬはずの装甲が、みしみしと音を立てて齧り取られていく。
「くっそ、むっちゃくちゃな……!」
 眼前に、怪物の顔がある。ぐちゃぐちゃという咀嚼音と、生臭い吐息。
「るら~!」
 と、横合いから思い切り、うろぼろすを蹴りつける影があった。
「よくわかんない奴! だけど、全国共通のルール! やっつければ安全!」
 叫び、再度の蹴りをかますのはリナリナである。その一撃には、さすがの怪物も食事を中断し、雄たけびを上げつつ飛びずさる。
「びいいいいい!」
 叫ぶうろぼろすの足元へ、続いて無数の銃弾が着弾。その足を縫い留めるように足をぶち抜いた。
「さてさて、試しに何か補食させて反応を見たいところだが……流石に自重しておこうか。食らうなら、鉛玉を食らいたまえ」
 くすりと笑んで、『Model27』へと弾薬を装填するのはゼフィラである。再度狙いを定め、うろぼろすの脚をぶち抜く。うろぼろすはがくり、と膝をつくも、すぐに立ち上がり、よだれを垂らしながらゼフィラを睥睨する。
「ほう、見た目通りのただの鹿、というわけではなさそうだ」
 想像以上のタフネスぶりに、感心した様子を見せるゼフィラ。
「さっきのお返しだよ!」
 叫び、芽衣が駆ける。力強くうろぼろすの身体を蹴りつけると、そこからぼぎ、と、うろぼろすの骨の折れる音が聞こえた。
 ぐにゃり、と曲がったまま、うろぼろすがとんでいく。ややあって、土煙をあげながら着地。だがのそり、と首をもたげ、立ち上がって見せる。
「……不気味だね。本当に攻撃がきいてるのか、心配になるよ」
 眉をひそめて言う芽衣。
「だったら、細切れにしてやります!」
 利香が吠え、駆けだした。剣の形をとった『夜魔剣グラム』を携え、全身に魔法の電流を走らせる。
 ふっ、と息を吐くと同時に、利香の身体が掻き消えた。魔力の電流を全身に巡らせることで到達する神速。次の瞬間には、利香の姿はうろぼろすの眼前にあった。刹那の間をおいて、宣言通りにうろぼろすの身体のあちこちに裂傷が走る! そのままトドメとばかりの切り上げをお見舞いする利香と、うろぼろすの視線が交差する。
 そこには。
 飢えだけが。
 あった。
「バケモノめ……っ!」
 たまらず歯噛みする利香。華やかなりし舞踏も、このバケモノには何の感慨も抱かせることは無いのだ。ただ、飢え、飢え、飢えだけが、飢えだけがある。
 そしてそれは時間と共に増していく。増していく。
 ああ、腹が、腹が、腹が減った。飢える、飢える、飢えて死んでしまう!
 ああ、乾く、渇く、かわく! びいいい! びいいい! 食わせろ、食わせろ、食わせろ!
 鳴き声は絶叫のごとく変貌していく。ただただ飢えを満たしたいという欲望だけがそこにある!
「シカせんべいなんかに! なってあげるものですかっ!」
 あの飢えに飲まれるわけにはいかない! 夕は自身を奮い立たせる意味も込めて、叫んだ。召喚された銃器がうなりをあげてウロボロスの肉体を滅多打ちにする。だが、千切れとんだ肉体は、すぐさま再生していく。
「なんなんですか……? 食べた肉体を変換……? それとも……ああ、もう、わけがわかりませんっ!」
「うう、あんまり言いたくないんですけど! あなたの待ち望んだ餌ですよ……あぁ! この科白言うの何度目なんですかねぇ! こんな慣れいやだなぁ本当に!」
 ドリームは叫び、うろぼろすの注意を自身へと向ける。ならば遠慮なく喰わせてもらおう、そう言わんばかりに、うろぼろすはドリームへと向けた疾走!
 ドリームが展開したバリアが、激しい明滅を伴ってうろぼろすを受け止めた! がじがじがじがじがじ! うろぼろすが激しく口を開閉するのが、ドリームの眼前にみえた!
「くそぉっ! こいつ、バリアも食べるんじゃないんですか!?」
 あるいはそうなのかもしれない。だが、ただバリアを食わせてやるつもりもない。食らいつくうろぼろすへ、オフェリアの放つ氷の鎖が巻き付いた!
「離れなさい、バケモノめ……っ!」
 力を込めて、思い切り引きずる。びいいい! うろぼろすが悲鳴を上げ、跳躍。鎖の巻き付いた箇所を噛みつき、引きちぎり、無理矢理拘束から逃れて見せる!
「くっ……まったく、尚更不気味な生物ですね……!」
 ぐじゅぐじゅと音を立てながら、切り離された部分が再生していくのを見て、思わずオフェリアはうめいた。だが、再生したとはいえ、あくまで自身を構成する最低限の要素を維持しているだけに過ぎない様で、失った体力などは再生されているわけではないようだ。現に、その動きは些か精彩を欠いてきている。
「大丈夫だ、攻撃は効いている! 一気に攻め立てろ!」
 その盾をかざし、レイリ―が鬨をあげる。その勇敢さは、仲間たちの精神を研ぎ澄ますエールとなるのだ。
 だが、レイリ―が見た物は、あまりにも深く暗い、極限の飢えが彩る漆黒の眼であった。
「いただきまぁす」
 レイリ―は確かに、うろぼろすがそう言うのを聞いた。

●決戦
 レイリ―とうろぼろすの距離は充分にあった。なぜ急激に接近されたのか……その答えは、非常に単純なものだった。
 首が、伸びていたのである。
 解き放たれた銃弾のように、爆速で伸びた首が、レイリ―の眼前へと迫っていたのだ。
 完全に虚をつかれた一撃――というわけではない。
 むしろ逆。
「お前の飢餓を受け止めてやる……そう言ったはずだ!」
 掲げた盾で、迫る鹿の顔を受け止める。がん、という音と衝撃と共に、盾に鹿が着弾した。だが、びちゃり、と水がはじけるような音がすると、鹿の顔面が爆ぜ、盾を這うように回避しながら、レイリ―の肉を目指し進撃する。
 うろぼろすの牙が、レイリ―の腕へ突き刺さった。途端、何か――魂を食い取られるような、そんな感覚がレイリ―を襲う。
「つくづく面妖な奴だ……だが、確かに受け止めた……ッ!」
 振りほどき、後方へと跳躍する。吹き飛びそうになる意識をつなぎ留め、片膝をつきながら着地する。
「すまないが、次は耐えられそうにない……!」
「了解です! 私が代わります!」
 利香が声をあげ、うろぼろすの前へと躍り出る。食事を終えたうろぼろすは、先ほどよりは飢餓感が薄れた様子である。
 だが、それも時間の問題。すぐにまた、飢えに襲われるのだろう。
「ですが……次はやらせません! 一気に決めましょう!」
 二発目が来る前に、仕留める! 利香は、イレギュラーズ達はその意識を共有する。
「わかった! るら~!」
 テンテケ♪ と自らを鼓舞する戦いの舞を舞ったリナリナが、大跳躍。上空ですぅ、と息を吸い込むと、
「がおぉぉ~~~~~!!!」
 空気を震わす大声が、うろぼろすの動きを縫い留める!
「びいいいいい!」
 負けじとばかりに雄たけびを上げるうろぼろす。だが、その死角へと迫るのは、ゼフィラだ。
「興味深い観察対象なのは事実なんだが……残念だが、せん滅を優先させてもらうよ」
 ゼロ距離から放たれる銃弾が、文字通りのゼロ距離射撃を実行する。うろぼろすの肉が爆ぜていく。
「【鈍色の要塞】の名前は伊達じゃないっ!」
 間髪入れずに放たれた芽衣の拳がうろぼろすへと突き刺さり、激しい衝撃となってうろぼろすを強かに叩きつける。
「もう一度、今度は致命傷を与えますっ!」
 利香は再び、魔力電流を体中に流す。一瞬、重なるように映った異形の姿は、利香の真の姿なのだろうか? だが、戦闘中。そのことに気づいた仲間は居ない。
 一瞬の静寂と、無数の剣閃――今度は、形態維持の再生すら追い付かぬほどに、滅多切りにしてやる。
「効いてます! 一気に畳みかけましょう!」
 大型銃器を召喚しつつ、夕が叫んだ。うごきまわるうろぼろすの後を追うように、一気にぶっ放す。ダダダダダダッ! 雨あられの銃弾がうろぼろすの肉を抉り、形態維持の再生を行う端から吹き飛ばしていく!
「伊達に何度も齧られてるんじゃないんですよこっちも!! 後これは餡子じゃありません血です!!!!」
 続いて、泳ぐような流麗な一撃を加えながら、しかしどこか必死の様子でドリームが叫ぶ。
「レイリ―さん! 此方へ! 傷の手当てを行います!」
 オフェリアが叫び、レイリ―の傷をいやしにかかる。
「すまない……っ! だが、もう少しのはずだ! みんな、頑張ってくれ!」
 レイリ―は礼を言いつつも、仲間たちへ檄を飛ばす。その勇敢な言葉は、仲間たちを奮い立たせる一助となる。
「びいいいいっ! びいいいっ!」
 悲鳴にも近い雄たけびを上げながら、うろぼろすがドリームへと襲い掛かる。バリアを貫通して迫る、鹿の顔面。
「もう何度か間近で見ましたけど……なれないですねっ!」
 それを受け止める。
「るら~!! お行儀悪い! 食べながらの戦闘禁止!」
 リナリナが再度、横合いからウロボロスを蹴りつける。フッ飛ばされたうろぼろすに、ゼフィラの放ったトドメの銃弾が突き刺さった。
「びいいいいいいいいいっ!」
 断末魔の悲鳴を上げるうろぼろす。地に倒れ伏すと、ぐずぐずとその身体が溶け始め、ぐちゃぐちゃになった何かと、奇妙な骨だけが残ったのであった。

●鹿の居る山
「お、終わったぁ……」
 はぁ、と安堵のため息をつくドリーム。
 悪夢は終わったのだ。
 イレギュラーズ達の活躍により、うろぼろすはその永遠の輪廻より解き放たれ、消滅した。
「とんでもない奴でしたね……ああ、レイリ―さん、大丈夫ですか!?」
 利香が慌てて声をあげるのへ、レイリ―は手を振った。
「ああ、大丈夫さ」
 無事をアピールするように、微笑んで見せる。
「馬車を用意しておいてよかったよ。帰りはゆっくり休んでいける」
 芽衣が胸をなでおろし、山の入り口の方を見た。
「やったぞ、リナリナも疲れたからな!」
 けたけたと、リナリナは笑った。
「……どう見る?」
 一方、うろぼろすだったものを見分していたゼフィラが、オフェリアに尋ねる。
「本当に奇妙な事ですが……これは、こういう生き物のようです。不思議なことに、これで生命のサイクルが完結しているような……」
 眉をひそめながら、異常な何かを見た心地で、オフェリアが言った。
「いろいろ興味深い所ですが……今はとりあえず、終わったことを喜びましょう!」
 夕の言葉に、ゼフィラとオフェリアは頷いた。
 戦いは終わった――だが、何となく、予感があった。
 いずれまた、この怪物たちと戦う日が来るのだ。
 だが今は、夕の言葉どおりに、無事に生き残れたことを喜ぼう。
 びいいいいい。
 鹿がどこかで鳴いていた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 皆様の活躍により、山は静けさを取り戻しています。

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