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シナリオ詳細

盗賊退治とハイキング

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●噂という名の情報戦
「アニキ……」
「なんだ」
 アニキと呼ばれた男はぐい呑みしていた酒のボトルから口を離した。
「噂で聞いたんだけど……」
 アニキと呼んだ方はもじもじして、いつまでたっても話を始めようとしない。
「いい加減にしろ、いくじなしども! 俺がいなきゃ盗むも満足にできないろくでなし集団が!」
「ひいっ!」
 ボトルで殴られ、男は地に倒れた。鼻血を出しながら続きを喋る。
「村長が最近お宝を仕入れたらしいです。何かはわからないけど……」
「ほう、たまにはいい働きをするじゃねぇか。あの平和ボケした村長のことだ。さっさと行ってかっぱらってこようぜ」
 男は酒臭い息を吐き、にたりと笑った。

●村の人々の願い
「なあ、アンタ。腕っ節が良さそうだな」
 ギルド・ローレットで、あなたは一人の男に突然声をかけられた。メガネをかけた中年の男だ。男は幻想にある名も無き村の村長だと名乗った。
「折り入って頼みがあるんだ……。オレの村を荒らす盗賊団を退治してくれないか」
 男の村は牧畜が盛んでそれなりに裕福な村だそうだ。だが以前から食い詰めものが集まった盗賊団に悩まされていた。といっても、盗むのは食料だけ。自分たちが食べる分だけとっていき、他は現金すらとっていかないというのだから、本当にただの食い詰めものなのだろう。おおらかな村の気質もあって、盗人に入られるなんて一端の証などと言われるほどだったそうだ。
 それっておおらかで済ませていいの? というもっともな質問に男はうなずいた。
「やつらが金品へ手を出さなかったのは、警邏を呼ばれることを恐れての行動だった。警邏と言っても引退した爺さんが、老後の楽しみを兼ねて一人でやってるだけなんだがな。つまりそれだけ戦闘に自信がなかったんだろう。ところが、先日から毛色が変わって、食料だけでなく金品を主に狙うようになった。盗賊団のリーダーが変わったとしか思えない」
 そしてついに、先日、被害者が出たのだ。真昼に盗賊団と出くわしたメイドが、凶刃へ倒れてしまった。幸い異変に気づいた家主がすぐに医者を呼び、命に別状はなかった。しかし事態を重く見た村長の彼は、噂に聞いたイレギュラーズの力を借りるべきときだと判断したのだった。
「盗賊団は村の外れにある家を中心に襲っていたが、リーダーが変わってからは村の中心へも入り込むようになった。オレは先手を打って、お宝を仕入れたという噂を流しておいた。次に狙われるのは間違いなくオレの家だ」
 男の屋敷には表口と勝手口があり、盗賊が襲ってくるとするなら、ひとけの少ない勝手口とも男は言った。
 すなわち、勝手口で待ち伏せしていれば有利に動けるだろう。
「ただ、オレとしてはできるだけ穏便にことを済ませたいんだ。元はよそから流れてきて、村にもなじめなかったかわいそうな奴らだからな。メイドの話によると、刃を持っていたのはリーダーらしき男だけで、他の連中は見張りでもしていたのか斧や棍棒を抱えて後ろにかたまっていただけだったそうだ」
 つまり、リーダーさえ倒せば、盗賊団は元の比較的おとなしい集団へ戻るということだ。
「もちろん命がかかっている仕事だから、アンタたちが倒すべきと判断したなら皆殺しにしてもかまわない。オレ個人としては更生のためにリーダー以外は捕縛をお願いしたいところだ」
 捕縛された盗賊は、村長の畑で働かせ、徐々に村へ慣れさせるつもりだという。
「盗賊さえ出なければ、オレの村はいいところだ。自慢じゃないが、一面の緑で羊が散歩している様子は地上の雲のようさ」
 そう言うと、ひとつよろしく頼むと、男はあなたと握手をした。

GMコメント

目的
 盗賊団退治または捕縛
敵について
 リーダーがひとり、短剣を使います。酒に酔っていますが、動きに支障はないようです。
 回避、反応、機動力、クリティカル、EXA値といった俊敏系能力が高く、戦闘力は高いです。
 今回の状況では二人以上で対さなければ不利は否めません。
 残りが7人。斧や棍棒で武装しています。戦闘は不得意なようですが、捕まれば終わりだとリーダーから言い含められているので油断すると痛い目にあいます。

備考
 勝手口のシーンから始まります。
 オープニングとシナリオ詳細に書かれている以外の大きな出来事は起きません。

GMより
 はじめまして、よろしくおねがいします。村に平和を取り戻せるかは、イレギュラーズの腕にかかっています。健闘を祈ります。

  • 盗賊退治とハイキング完了
  • GM名赤白みどり
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年02月23日 21時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

紅劔 命(p3p000536)
天下絶剣一刀無双流
ジーク・N・ナヴラス(p3p000582)
屍の死霊魔術師
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
宗高・みつき(p3p001078)
不屈の
河津 下呂左衛門(p3p001569)
武者ガエル
ニル=エルサリス(p3p002400)
ミリアム(p3p004121)
迷子の迷子の錬金術師
タツミ・サイトウ・フォルトナー(p3p004688)
TS [the Seeker]

リプレイ

●刻々とその時は来て
 勝手口の内側は屋敷にふさわしい広さだった。ここで盗賊を待つと決めた者は、各々隠れ場所を見つけて陣取る。
 日はまだ高い。こんな白昼堂々盗みが行われるなど、穏やかに見えて物騒この上ない村だ。そう考えた『屍の死霊魔術師』ジーク・N・ナヴラス(p3p000582)は呆れたようにため息をつく。
「食料だけでも盗めば普通は捕らえたりするのに、見逃されてたと理解していなかったのかね?」
「村に馴染めないからって盗みに走るような短絡さだもの、そこまで頭はまわってないんじゃない? ただ、村長さんもああ言ってたし、リーダー以外には何とか更生の機会を与えてあげたいところではあるよね」
 隣に潜んでいた『迷子の迷子の錬金術師』ミリアム(p3p004121)がそう応えた。こうしている間も、ミリアムが召喚したカラスが屋敷の上を旋回している。自分と使い魔、ふたつの視線を器用に切り替え襲撃に備える。
 やりとりを耳にした『天下絶剣一刀無双流』紅劔 命(p3p000536)は視線をあさっての方にやる。
「その日暮らしもままならない傭兵業やってた私が凶刃がどうとか物取りがどうとかって言うのはなんだかなーって思うのでとやかくは言いません。でも依頼された以上はきっちり成敗してやりますわ!」
「そうだぬ。このロープで捕縛していけばすぐに無力化できるぬ」
 準備していたロープを腰から提げ、ニル=エルサリス(p3p002400)は、にひゃっと笑った。能天気そうに見えてその眼光は鋭い。
 一方、屋敷の裏手では。
 茂みの中で、『不屈の』宗高・みつき(p3p001078)がぼやいた。
「リーダーが変わると方針が変わるってのは、どの組織でも同じだなぁ。俺が働いていた職場でも……ってそんな話はいいか。これ以上エスカレートする前に何とかしたいな」
「そのとおり。盗賊団なんてサクッとぶっ潰してやろうぜ。くぅ~腕が鳴るな!」
 と、女らしい柔らかい声音とは裏腹な笑みを浮かべる『TS [the Seeker]』タツミ・サイトウ・フォルトナー(p3p004688)。はやる気持ちを隠せず、木箱の裏で拳をぶつけあわせた。彼にとってはこれが初仕事なのだ、意気込みはじゅうぶん。
 隣の『神話殺し』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)も無表情な中に覇気を秘めた面持ちで街道を見据えていた。
「リーダーと部下を分断してしまえばこちらが有利になる……。あとは本人たちの反応しだいだ」
 平たい石に腰掛けていた『武者ガエル』河津 下呂左衛門(p3p001569)も深くうなずいた。立ち上がると顎に手をやり、ひとりごちる。
「村長殿、ちと威厳が足りないようにも思えるが、なかなかの人格者のようでござるな。力になりたいでござるよ」
 そしてそのまま屋敷の周りをブラブラと歩きだした。

●やがて時は満ちて
「来た!」
 ミリアムが小さく叫ぶ。ファミリアの視線を通じて彼女は見ていた。物陰をつたってこちらへ迫りくる集団を。ぼろぼろの装束、腰には武器、まともな集団ではない。
 が、盗賊団は勝手口に近い物陰でぴたりと止まった。ミリアムはカラスを走らせ、盗賊団の会話へ聞き耳を立てる。
「誰だ、あのディープシーは。おまえら。なにか知ってるか?」
 リーダーらしき男がフードを跳ね上げた。手下たちはこぞって首を振る。仮にも盗賊団。屋敷の周りを見知らぬ人影が闊歩していたら警戒するものだ。
「村長のやつ、警備を雇ったのか。……のんきにあくびなんかしてやがる。たいした腕じゃなさそうだ。おまえら、やつが角を曲がったら一気に勝手口へ攻め込むぞ」
「わ、わかったよアニキ」
 リーダーはこの時ふたつの間違いを犯した。ひとつは警備はひとりだと思い込んだこと。もうひとつは下呂左衛門の腕を見くびったことだった。
「よし、行くぞ!」
 頃合いを見たリーダーが走りだし、つづけて男たちがどたどたとついていく。勝手口を蹴破ったリーダーは驚愕に目を見開いた。イレギュラーズたちが物陰から立ち上がり、彼を包囲したからだ。タツミとニルがリーダーと子分との間へ割って入り、盗賊団を分断する。
 ノービスソードを正眼に構え、命が声高く名乗りを上げた。
「わたしは紅劔 命! 村を荒らす悪党め、年貢の納め時だ!」
「噂のイレギュラーズか。チクショウ、村長のやつギルドへ駆け込みやがったな!」
 顔を歪めるリーダー。その歪めた横っ面が魔力の弾丸で張り飛ばされた。
「ようこそ、歓迎するよ」
 ジークは慇懃無礼に腰を折ってみせた。顔を上げ、リーダーを見据える。
「アナタ達は包囲されている。投降するなら悪いようにはしないよ?」
 だがリーダーが姿勢を崩したのは一瞬だった。
「やりやがったな! てめえらごとき俺ひとりで十分だ!」
「そう。降参する意志はないんだね?」
 ミリアムが念押ししながらミスティックロアで自らを強化する。
 リーダーの血走った目とイレギュラーズたちの落ち着きはらった瞳が交差する。戦いの予感がひりひりと肌を焼いた。
(よし、うまくリーダーの気を引いたみたいだな)
 タツミは様子見を終えると、改めて手下たちを見回した。目の前では貧弱な装備の男たちが、へっぴり腰で武器を構えている。
「物騒なモンもちやがって……覚悟はできてんだろうな?」
 威圧的に責めると数人の口から小さく悲鳴がもれた。肝の小さい連中らしい。
 続けてみつきが神秘の力で自らを強化しながらたたみかける。
「お前らに勝ち目はない! 村長もお前らを受け入れると言っている! おとなしく降伏しろ!」
「まったくまったくそのとおりでござる。もはやおぬしらの退路は断たれた。今ならまだ穏便に済ませられるし、真面目に働くならば村はおぬし達を受け入れる用意があるでござるよ」
「そうだお。おとなしくしてるといいことあるお」
 下呂左衛門がひょっこりと姿を表して穏やかに言い添え、ニルがおどけたようにファイティングポーズを取る。
 じゅんじゅんと諭され、手下たちのあいだへ逡巡する空気が流れる。降伏か、それとも……。
 エクスマリアが一歩前へ出た。しゃらりと金の髪が揺れ、乱れ、髪束ひとつひとつが風もないのに違う方向へ流れた。
 幼い少女の外見で、エクスマリアは淡々と言い募る。
「今回の依頼人は寛大だ。投降するならば村で更生できるよう面倒を見ると言っている。仮に今日逃げおおせたとして……次にローレットより発せられる依頼が生死問わずとならぬ保証はないぞ?」
 ちらりと上目遣い。何人かの男の胸に脅しが刺さったようだ。
 その時、勝手口から怒号が飛んできた。
「何やってんだテメエら! 俺の言ったことを忘れてるのか!」
「そ、そうだ。捕まったら終わりだ……」
「でも俺、あの金髪の子は殴りたくないなあ……」
「心配ご無用。容赦はしない。さあ、打ちかかってくるがいい」
 エクスマリアはすっと目を細め、手下たちは武器を振り上げた。

 屋敷がいかに広いと言えど、内側で戦うには中距離を保つのが限度だった。
 命が正面からリーダーへ打ってかかり、ミリアムとジークが加勢する。
 グリモワールを開き、ミリアムは呪文を唱える。
「かそけき夜の香りよ、ほろびゆく獣の声よ、湖へ沈む月の破片よ。我が名はミリアム。我がもとに集まりて怨敵を撃つ魔の力となれ!」
 つきだした右手に光が灯り、あふれだした。純粋な破壊の力がリーダーを襲う。
 しかし。
「避けただと!?」
「ぬるい、ぬるいな。こちとら逃げ足と避けには自信があるんだ」
 リーダーがにちゃりと笑う。
「やれやれ困った方だ。私たちを煽ったところで不利なのは変わらないのに」
 ジークが両の手のひらを合わせた。少しづつ開くにつれて眩しい光が漏れる。
「魔弾よ、往け!」
 手のひらからはじき出された弾丸がリーダーを狙う。リーダーは体をそらし、直撃を避けた。かすめた魔弾の余波が彼の衣服を裂いた。
 しかし体勢が崩れたその瞬間を見逃す命ではなかった。すり足でリーダーとの間合いを詰め、逆袈裟にひと薙ぎ。体をひねってかわそうとしたリーダーだったが、さすがに間に合わなかった。ざっくりと肉を斬られ、傷口から血があふれだす。
「やりやがったな!」
 今度はリーダーの短刀が命を狙う。力の全てを注ぎ込んだ攻撃が命の胸に突き刺さった。豊満な胸元から赤い液体が吹き出る。かろうじて急所ははずれているが、あと少し左にずれていたらいかにイレギュラーズと言えど耐えきれなかっただろう。
「この程度で倒れるものか……!」
 命の戦意は衰えない。刀の柄を握りしめ、刃の先をリーダーへ向けたまま堂々と立っている。
「そうかよ、じゃあおまえが最初に逝っちまいなあ!」
 リーダーが利き手を閃かせる。一撃、さらにもう一撃。命の肩から血が吹き出し、ふとももからたらりと赤いものが伝う。
「命が危ない!」
「そのようだね」
 ミリアムの叫びにうなずくと、ジークは落ち着き払ったまま、再び魔弾を召喚した。手のひらの上に生まれた光の玉を弾きとばす。今度は命中した。リーダーの肩がやきごてでもあてたかのように煙を上げ、押し殺した悲鳴があがる。
「これでとどめだ!」
 ミリアムが再びグリモワールを開いた。
「撃つべき者を撃つ稲妻よ。我が願いに応えあるべき場所へ現れ、破壊の限りを尽くせ。進め、力よ!」
 青白い光りが空間を焼き、リーダーを包み込む。その様子はまるで雷に打たれたかのようだった。さすがに深手を負ったのか、リーダーが地に膝をつく。
「俺は、俺はこんなチンケな村で終わる男じゃねええええ!」
 吠えるリーダーを相手に命がノービスソードをまっすぐに掲げる。その動きは余裕すら感じさせる滑らかさだ。
「おまえはどこにも行けない。何故ならここで終わるからよ」
 とまどわず振り下ろした命の剣が、リーダーの上半身をふたつに割った。血が噴水のように吹き出し、リーダーだった男は砂袋のように土間へ倒れ込んだ。
 絶命したリーダーへジークが近寄っていく。
「虚仮威しにはぴったりの面構えになったじゃないか。これは仕上がりが楽しみだ」
 そう言うとジークは鼻歌まじりに死体へエンバーミングの施術を施し始めた。

 屋敷の裏手では、軽く乱戦状態になっていた。
 技量では劣るものの、手下たちは死に物狂いで武器を振るってくる。当たればけっこうな傷を負うだろう。
「窮鼠猫を噛むってか。追い詰められた人間ってのはあなどれないねえ。そういえば俺の会社の先輩も、いや、なんでもない」
 大振りの攻撃をひらりひらりと受け流し、みつきは大きなため息をついた。手下たちが死に物狂いになっているのは、長年の間に染み付いた人間不信が根っこにあるのだろう。だが、仲間たちの説得がその強固な不信へ楔を打ち込んだのは確かだった。
(あともう一息。何かきっかけさえあれば……)
「いってぇ!」
 タツミが声を上げた。運悪く棍棒で叩かれたらしい。
「さすがに頭にきたぞ。おしおきタイムだ。なぁに、命まではとらねぇさっ!」
 タツミは目の前の男へ間合いを詰めると、勢いを利用してみぞおちへ蹴りを叩き込んだ。反動で男の体が派手に吹っ飛ぶ。
「さー巻いちゃおうぬー。ぐるぐるに巻いちゃおうぬー」
 ニルが吹き飛ばされた男を受け止め、ロープで後ろ手に拘束する。大地に転がされた男は、力の差を見せつけられたせいか呆然としている。その一方で、命がけの戦いから抜けだせたせいか、どこかほっとしている様子だった。
「あ、あいつ捕まっちまったぞ」
「もうおしまいだ……!」
 手下たちの間に動揺が走った。せめて最後の一撃をというべきか、手下たちは攻勢へ転じた。斧を持った男がエクスマリアへ迫る。しかしただ振り下ろすだけの攻撃は彼女に見切られ、地を割ったに過ぎなかった。大地に深く根を下ろしてしまった斧を引き抜くことができず、男はうんうんとうなりながら柄をひっぱる。その背後からエクスマリアは近づき、細い腕を中腰になった男の首へ巻きつけた。そのまま力を込めると、男はあっさり気絶した。
「武器の使い方も知らないのに。よく生きてこれたな。これまでの幸運を感謝するといい」
 エクスマリアはそう言うと黄金の髪を生き物のようにくねらせた。
(――む、あの男。逃亡を図っているでござるな)
 下呂左衛門は挙動不審な男の意図を見抜き、地を蹴った。男へ詰め寄り、半歩体をひねって組技を仕掛ける。関節の軋む音が男の体のあちこちから響いた。
「いでででで!」
「もう諦めるでござるよ。力量差はわかっているのでござろう? これ以上は無駄というものでござる」
「いでえ、い、いでででわかった! わかった降参する!」
 力なく地へ座りこんだ男。その男を遠慮なく縛り上げるタツミ。チャンスとみたのか、その背へ奇声を上げて打ち込んできた別の男。タツミはかわそうとも避けようともせず、男の得物である棍棒を受け止めた。
「自分たちの立場をよくわかってないみたいだな。いや、わかっているからこその背水の陣なのか?」
 その相貌へ淡い哀れみを浮かべ、タツミは体をひねって回し蹴りを放った。その一撃は男の腰へ吸い込まれ、激痛をもたらす。地べたに膝をついた男を、タツミは黙々と縛っていく。
 残る手下は三人。背を預けあって固まっているが、その瞳に信頼だの絆だのといった前向きな表情は浮かんでいない。もちろんリーダーへの忠誠心なんて高度なものがあろうはずもなかった。身を寄せているのはただ単にイレギュラーズたちに囲まれているからで、後のなさがうかがえる。場に緊張が満ちた。
「ぽーん」
 そんなの知ったことじゃないとばかりにニルが飛び出した。
「あんまり駄々こねてるとこっちも頭にくるぬ。降参するなら許すって言ってるお!」
 しなやかな肢体をひねって体重をのせ、下からすくい上げるようなアッパーを手下のひとりへ放つ。それなりの質量があるはずの肉体が軽々と宙に舞い、まっすぐに地べたへ落っこちてきた。気絶したのかそのまま倒れてしまった男に、ニルはにたりと笑みを浮かべ、ロープをちらつかせる。
 ニルに加勢し、みつきは彼らのひとりに向けて威嚇術を放つ。
「投降をおすすめするよ。でなければ仲間がさらに減ることになる」
 みつきの本気に比べれば火遊び程度の威力では合ったが、手下には十分な脅威だ。直撃を食らった男がひとり、吹き飛んで白目をむく。
 最後のひとりがぎりりと歯を食いしばる。
「つ、捕まったら終わり……捕まったら終わり……。アニキが言ってた……」
 だが男を囲む包囲網に抜け穴などあろうはずもなかった。折れかけた心を懸命に鼓舞し、腕の中の棍棒を握りしめる。だが。
「やあやあ、おまたせした。アナタ達の大切なリーダーはこうなってるよ」
 手下が首をひねった先に見えたのは、アンデッドと化したリーダーの姿だった。上半身はふたつに割られたままゆさゆさ揺れ、千鳥足でジークのそばをうろうろしている。
「これぞ死霊術。ネクロマンサーの真骨頂…! まだやるなら、こうやって死後も扱き使ってやるが…?」
 降伏しろと続ける必要はなかった。最後の男が棍棒を放り出し、地べたに額を擦り付けたからだ。
「ひいい! 許してくれ、いや、お許し下さい! もう悪さはしません! どうか、どうか!」
 リーダーという恐怖に縛られていた心は、見事にへし折れたのだった。

●一夜明けて
 村長の屋敷で戦いの疲れを取ったイレギュラーズたちは、村を散策していた。
「うおー、もっふもふだ! きもちいいなあ~……」
 羊に囲まれ、みつきは恍惚とした笑みを浮かべる。とことんもふもふして気が済むと、みつきは一行へ加わった。捕まえた盗賊たちが、さっそく畑へ出ていると聞いて、イレギュラーズたちは様子を見に来たのだ。彼らに気づいた元手下どもは、汗を拭くと手を休めた。
「へへ、まだ農具の扱いには慣れてねえんで、お恥ずかしいところをお見せしてやす。けど、働くっていいもんですな。心が晴れ晴れしていやす」
 盗賊団だった男たちに深々と頭を下げられ、ニルはほっと胸をなでおろした。
「今まで盗んだものは全部返したって聞いたぬ。よくできましたお」
 タツミが続ける。
「アンタたちはこれからが本番だ。がんばれよ、応援している」
「また盗賊に堕ちるようなら今度は容赦しないわよ」
 命がイイ笑顔を見せて念を押す。
「常に恐怖へ晒されているといつしか惰性で下僕と化すものでござる。この村のおおらかさに包まれていれば、彼らの心の傷も癒され、まっとうな人間へ戻れるでござろう」
「……だといい。いや、きっとそうなる」
 下呂左衛門の独白へエクスマリアが無表情に応える。その横顔にはかすかに喜びに似た感情の片鱗が垣間見えていた。
 そこへリーダーの埋葬を終えたミリアムとジークが戻ってきた。
「長持ちはしないものだな。まだまだ死霊術には学ぶ喜びが残っているということか。楽しみだ」
「全力で行かなきゃ危ないやつだったからね。とはいえこっちも仕事。手加減する必要はなかったわ」
 村長が近づいてきて手を降った。
「そろそろお昼ですね。ささやかですが、祝いの席を用意しました。村の特産品で作った料理もありますよ」
 誘いに乗った一行は、丘の上に集まった人々を見た。村中総出の大歓迎だ。チキンの丸焼きや新鮮なサラダが並んでいる。大釜いっぱいのチーズフォンデュに、イレギュラーズたちは目を輝かせた。

成否

成功

MVP

ジーク・N・ナヴラス(p3p000582)
屍の死霊魔術師

状態異常

なし

あとがき

皆さんおつかれさまでした。
おかげで村には平和が戻り、7人の若者の未来が救われました。
またのご利用をお待ちしています。

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