シナリオ詳細
スイカは出て来るので大丈夫ですね
オープニング
●季節は廻り、夏が来る
今年もこの季節がやってきた――
海洋の片隅にある村では、決起集会の為に男衆が集まっていた。
「皆の者、よく集まってくれた」
長老が、緊張している若者から熟練した者まで、一人一人の顔を見て重々しく告げる。今年もこの季節――スイカ狩りの季節がやってきた。
「去年はサブロージ、一昨年はジロージとイチロージがやられた。今年も犠牲者が出るかもしれん。皆の者、準備は出来ておるか」
「サブロージは全治3か月だ! 其の間畑を手伝ったが、奴の悔しそうな顔は忘れられねぇ……!」
「この一年、牛乳飲んで色々やって骨を鍛えたぞ! かかとに衝撃を与えるといいってかーちゃんが言ってた!」
「負けねえ! もう、スイカごときには負けねえ……!」
「――良い意気じゃ。では皆の者、ゆくぞ!」
「丸太は持ったかー!!!」
「おおーっ!!!」
数分後。
「「「「「ぐわーっ!!!」」」」」
●グレモリーは涼しげな顔で
「スイカ狩りの依頼が来てるよ」
さらりと言いましたね。どうせ普通のスイカ狩りじゃないんでしょ? 僕は詳しいんだ。ちなみに涼し気な顔だがグレモリーは半袖に着替えている。やっぱり暑いものは暑いんだな。
「といっても、勿論普通のスイカじゃない。生きている」
さらさらとスケッチブックに書き綴ると、其れをイレギュラーズに見せるグレモリー。……スイカに手足が生えて、尻尾まであって、四つん這いになっているんですが、これは。
「スイカ」
模様はな!!!
「海洋の村では毎年、このスイカ――ス・イカと呼んでいるらしいのでそう呼ぶね――を刈り取る行事があるんだ。なんでも、巧く狩れればとても美味しいスイカらしくて、其れを出荷して稼いでいる訳だね。割っても砕いても、何故か倒すとス・イカは普通の美味しいスイカになるんだって。不思議だね」
場所はここだよ。と海洋の地図を広げるグレモリー。興味深いね、と頷いている。
「ス・イカはすばやく動いて、腕の爪や尻尾で攻撃してくるらしい。いつもは丸太を持った村人がなんとか倒しているんだけど、今年は雨が少なかったせいか凶暴化していて、とても手の付けられない状態らしい。だから君たちにお鉢が回ってきたという訳だ。不殺とか考えなくていいから、とにかく倒してスイカに戻してやってくれ、という依頼だよ」
兎に角、気を遣わずに倒してやればいい訳だ。そうなれば話は割と簡単だが……ス・イカの脅威にさらされている村人は今どこに?
「怪我をして家にいるよ。怪我をしていない村人がス・イカを監視しているらしい。普段は土の中にいて、人の気配を感じると出て来るとか」
何それ恐い。ホラーじゃないですか!
- スイカは出て来るので大丈夫ですね完了
- GM名奇古譚
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年07月14日 23時20分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
雨の日が続きますね。
こちら、村人の説明を受け、ス・イカ畑へ向かう道中のイレギュラーズです。
「酢漬けのイカを出されて“スイカです”ってオチじゃねえなら、手足が生えるくらい可愛いもんだな」
「わたくしはその生態に興味がございます。酢イカならビールと一緒にキュっと頂きたいものです……あ、イカ、お食べになります?」
「おいおい、持ってきてんのかよ。ちょっと貰うわ」
『黄昏き蒼の底』十夜 縁(p3p000099)の軽口に、口からゲソをはやしてもぐもぐしながら『特異運命座標』エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)が答え、まさかのイカを進呈。こういうとこブレないよね。
「やっぱり夏の風物詩といえばス・イカだよね。キリキリ倒して美味しいスイカにしちゃおうか」
ちょっと一工夫して美味しくするなら任せて、と、『女王忠節』秋宮・史之(p3p002233)が言う。彼の調理技術に期待が高まります。
「スイカ。 ……名前、聞いたこと、ある。でも、食べたことない。美味しい?」
此処は獣道。重そうな両手が引っかからないように慎重に歩きながら、『イギョウノショウジョ』実験体37号(p3p002277)が隣にいた『朱鬼』鬼桜 雪之丞(p3p002312)に問う。無垢な瞳に見つめられ、小さな鬼は無表情ながら、ふんわりと目元を和らげて。
「ええ、美味しいですよ。赤くて、お塩をかけると甘くなるんです」
「お塩、しょっぱいのに? 不思議……楽しみ。お塩、村人さんたちから、貰って。かけてみたい」
「実はですね、スイカ泥棒からスイカを守るために魔法使いに生み出されたけれど、逃げ出して大変な事になったのがス・イカなんですよ……まさか実在したとは……」
「え!? ほんと!? なんて恐ろしい化け物なの……ス・イカ……」
「いえ、嘘なんですけどね」
『マリンエクスプローラー』マリナ(p3p003552)と『魅惑の魔剣』チェルシー・ミストルフィン(p3p007243)が冗談をやりとりする。割と平和である。でもどうしてチェルシーは水着なんですか? 其れ、紐が一本でも着られたらイヤーン! ってなりませんか?
――スイカといえば水着で優雅なアレコレタイムよね。『クノイチジェイケイ』高槻 夕子(p3p007252)がふふん、と笑う。
「え? 襲ってくる? もー、スイカが襲ってくるわけ……」
●
あるんだなあこれが!
事前にエリザベスがファミリアーを飛ばした時には、静かな畑だったのだが――イレギュラーズが到着してすぐに異変は始まった。盛り上がる土、大地を踏みしめる異形の足、這い出てくるス・イカの群れ。
「スイカといえば冷やしスイカよね!」
チェルシーが剣の片羽をはばたかせ、凍てつく鎖を解き放つ。まるで蛇のように伸びた其れは、土から這い出てとびかかってきたス・イカの胴体に見事に巻き付いた。とても丸々としている。スイカに戻せばさぞ美味しそうな事だろう。
「くっ……あの大きさ、丸み……! 私もあんな大きなスイカが欲しかったわ……!」
「言ってる場合!? この数明らかにヤバヤバなんですけど! あーし帰っていい?」
『す。す、す、す』
『す、す』
ずるり、ずるり。人の気配を察知して這い出てくるス・イカ。まがまがしい黒い手足に、揺れる長い尻尾。胴体はスイカなのでややファンシーといえなくもないが、どう見てもクリーチャーです。ありがとうございました。
「痛! 痛い! 地味に痛い!」
数の猛攻に史之が耐える。半円形に配置した前衛に、波のように押し寄せるス・イカ達。とびかかり、前のス・イカは爪を振りかざし、後ろのス・イカも凶暴に尻尾を揺らす。少しずつ前進して起床する数を調整しても、壁役に彼らの爪は振り下ろされ、確実に命を削る。
「さてさて、前衛サンが頑張ってくれてるみたいだが……」
縁が振り返ると、其処には何処を抜けてきたのかス・イカが数匹、後衛に狙いを定めていた。
「まあ数が数だ。タダ食いって訳にもいかねぇし、ちょっとは倒しておこうかね」
『す。す。す』
『す』
「ああ。“そうだ、俺を狙った方がやりやすいかもな”?」
縁の名乗り口上に、後方ス・イカの視線が集中する。走狗宜しく駆けだし、襲い掛かるそのタイミングはぴったりだが――逆に其れが仇となった。
まるで服の裾を払うように、縁がゆうるりと腕を振るう。其の動きは大気を、“気”を動かして――竜巻宜しく渦を巻き、ス・イカ達を巻き込み切り刻む。
「全くの偶然だが……こいつの名前も翠渦(すいか)っていうのさ。残念ながら、甘くはねぇがね。ほれ奥さん、今のうちにこれ持って行ってくれ」
「あ、ありがとうございます!」
村人にスイカを幾つか投げ渡す。大玉だ、これは食べがいがあるだろう。あとどれくらいで食べられるかねえ、と、なぎ倒され後方に吹き飛び息絶えたス・イカ――スイカを村人に渡しながら(これも彼なりの仕事である。無論サボりも兼ねている)のんびり考える縁であった。
「こ……っの!」
大きな腕を存分に振るい、ス・イカに全力アッパーを決める実験体37号。めりめりとス・イカの体組織を破壊し、思い切り中空に吹き飛ばした。
反動で腕に痛みが走る。けれど其れを噛み殺して、実験体37号はス・イカの様子を見る。ころり、と転がったのは――ただのスイカ。
「あ……!」
やった、と僅かに実験体37号が笑む。どうやらス・イカ一体一体の体力はそれほどではないようだ。
「やりましたね。拙も続きます!」
すらり、と刃を抜く音がして――かちり、と鞘に収まる音がした。其の刀身を見ることすら許さず輝いた居合の軌跡は、実験体37号を狙ってとびかかったス・イカ達を一網打尽と切り伏せ、傷を与えて。
「今のうちに冷やしておきましょー!」
マリナのグレイシャーバレットが更にとびかかってきたス・イカを撃ち貫き、凍てつかせる。
「ああっ駄目よ! そんなところ……! 引っかかれたら紐が切れて大変な事になってしまうわ!」
チェルシーが敵の爪を……彼女はあえて受けているのでは? と思わんばかりの動きで受けて、ただでさえ際どい水着がさらに際どくなる。其れは其れとして返す刀、土塊の拳が大地から隆起し、ス・イカを撃ち飛ばした。
「こんな訳の分からないものにいいようにされるだなんて……ハァハァ……」
「わたくしでも判ります。アレは狙っている動き」
其れを冷静に見守っていたエリザベス。人には色々な趣味嗜好があるのでございますね、と厳かに頷き、絶望の青を歌い、一気に攻勢をかけた。
「(本当なら、意思疎通を測ってみたかったのですが……)」
何しろ、土から出てくるや否や襲い掛かってくるス・イカ達。意思疎通する暇もない。仕方ない、と二度、エリザベスは青を謳う。
「――っく……!」
深く爪による傷を受けながら、赤く輝く盾を叩きつけ、ス・イカをスイカへと変える史之。小さな奇跡は既に己の体を一度癒してくれている。あと少しだ。あと少しで畑の端、つまりスイカの収穫が終わる……!
「あと少しだ! 頑張ろう!」
「おー!」
「えっ、まだ満足してないのに……! もう終わっちゃうなんて……!」
それぞれの答えが返って来る。縁は相変わらずスイカ運搬をしてひっそりサボっている。
知恵がある訳ではない。知能がある訳でもない。
だからこそ、ス・イカの数は脅威だった。己が死に瀕しても、スイカだから判らないのか、どうなのか――変わらず爪と尻尾で攻撃を続けるス・イカの群れに、イレギュラーズも傷を負わざるを得ない。死を恐れぬ軍勢とは、かくも恐ろしいものなのか。
「あーもう、べっとべと……! JKがスイカに負けるとか、なしありのなしなんだから!」
分身で惑わしながらス・イカに――スイカ割りとばかりに――暗器を叩きつける夕子。小さな奇跡が心中できらりと輝いた。けれど破けた結界……お洋服は戻らない。ちょっとお色気な忍者だからね、仕方ないね。
「これで……!」
実験体37号の幾度目かのアッパーがス・イカを叩き割る。大丈夫、ちゃんとスイカに戻るから。反動を受けてふらつく足を支えるように、マリナがバラードを奏でる。
イレギュラーズは最後の攻勢をかける。ス・イカに肉薄した雪之丞が外三光で其の丸い体を大地に縫い付け、果物へと変える。
「エクスタシーまったなしよ!」
チェルシーが再び大地に呼びかけ、拳による突き上げでス・イカを吹き飛ばす。史之が其れを叩き落そうと跳躍し――
「一撃一撃が重いってことは、結構スイカも良い感じに実ったって事なのか、なッ!!」
赤い障壁を叩きつけた。大地と上空を激しく行き来したス・イカは仰向けに落ちて、そのまま動かなくなる。
ずり、と這い出した最後のス・イカ。しかし攻撃は許さない。前衛よりも前に出て、横合いに位置した彼女――エリザベスの掌に光が灯る。
「どうせですから、派手に行きたいと思っていたところです。最後は花火でタマヤカギヤと」
ネオアーム(中略)エリザベス砲。
輝く閃光がス・イカを横合いから薙ぎ払い――畑に再び、静寂が戻った。
●
村人と共にスイカを一つ残らず担ぎ、無事村に戻ってきたイレギュラーズ。
案内された家に入ると、三角に切られたスイカが瑞々しく並んでいた。
「お疲れさまでした、お客人方。少しではありますが、こちら、先程皆様が狩られたスイカになります」
「わあ……! これ、スイカ……! すごい、いっぱい」
実験体37号が瞳を輝かせる。赤い果肉を晒すスイカはとても美味しそうだ。つやり、と輝く果肉。戦いの後だ、水分を欲しがる体には甘い誘惑。
「切ってないスイカはあるかな?」
「はい、ありますが……」
「ありがとう。幾つか頂くね。其れから台所と……」
ただカットして頂くだけじゃなく、一つひねって楽しみたい。史之は丸々と重いスイカを持ち、台所へと歩いて行った。
「いやあ、一仕事した後のスイカは格別だねえ」
塩に砂糖も良いけれど、おっさんはやっぱりそのままがいいね。
もぐもぐと三角に切られたスイカを楽しむ縁だが、仕事……したっけ……まあ、したといえばしたけど。
「スイカといえばアレでございますね」
きりっ、と真面目な顔でエリザベスが切り出す。彼女がこの顔をしているときは大抵妙なことを考えている時だ。
「ん? アレ?」
「アレです。口に含んだ種を勢いよく飛ばす奴。種を口の中一杯に溜めれば、漫画宜しくマシンガンのように発射するアレも出来るはず……!」
「ああー。おっさんには当てないでくれよ? 当てるならほら、外の木とかで」
「むほんへほはいはふ(無論でございます)」
「怪我した村人さんには、私があーんしてあげましょー」
「おお、優しい……! 天使かな……!?」
「両腕やられて、今年のスイカは諦めてたんだ! あーんしてくれー!」
「マリナちゃーん!」
「うむうむ、村人さんも頑張りましたからね。はい、あーん。これで元気出して怪我を治して、来年も美味しいスイカを育てて下さいねー」
「マリナちゃん……! あーん! もぐもぐ! うまーい!」
「こっちにも! こっちにも怪我人がいるぞー!」
「俺も怪我人だー!!」
村人から何故か信仰を受けるマリナ。その横では村人のためのスイカをチェルシーが羽から取った剣で切り分けている。それでいいのかグリムアザーズ。
「やっぱりスイカじゃ私を満足させられなかったわね……海……クラゲ……タコ、イカ、イソギンチャク……ふふ、うふふふふふ……!」
果たして彼女を満足させられる海洋生物は出現するのか! 待て次回!(あるのかは判らない)
「……、んー、うー」
「あら? どうしました?」
三角のスイカを大きな手にもって、奮闘する実験体37号。雪之丞が心配げに覗き込むと、彼女は絵に描いたように困った、という顔をしていた。
「うまく、食べられない……」
「ああ……では、拙があーんしてあげましょう。お塩はかけますか?」
「ほんと? うれ、しい……! お塩、かける……!」
はい、と雪之丞はカットスイカに塩をかけて、実験体37号の唇に寄せる。赤い唇がはむ、とスイカを食んで、しゃくり、と食べる音。もぐ、もぐ、もぐ。
「……!! おいひい……! すごい、ほんとに、甘い……!」
「でしょう? お砂糖をかけても美味しいですよ」
ああ、果汁が垂れている。
懐紙で口元を拭いてあげる雪之丞。ほんわかとしたムードの中、みんな、と史之の声がした。
「フルーツポンチが出来たよ! 食べたい人からどうぞ」
半分に切ったスイカの果肉を丸くスプーンでくり抜き、同じくくり抜いた他の果物と一緒にスイカの器にごろごろと。サイダーで程よく中を満たせば、とても美味しそうなフルーツポンチの出来上がりだ。
「よかったら村の人もどうぞ」
「わあ……! すごいわあ、ローレットの方ってほんと、なんでも出来るのねえ」
「いえ。少し工夫して食べるのが好きなだけです」
「フルーツポンチ! あーしも食べる! あー、もう見た目からして最高! 超かわいいんですけど~!」
くるりと丸い果肉、果物の器は村の女子供と夕子に大好評だ。ジェイケイは甘いものと可愛いものが大好き。夕子も御多分に漏れず、このまま残しておきたいとはしゃいでいた。実験体37号も、雪之丞に一緒に食べよう、と提案している。
無事にス・イカの脅威を取り除き、様々な形でスイカを堪能したイレギュラーズ。
エリザベスも無事にタネマシンガン実現に成功し、村には平穏無事が戻ったのだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れさまでした。
スイカはちょうどこれからが季節でしょうか。
皆さんに手傷を負わせる程ですから、豊作と言って差し支えないスイカでしょう。
来年もこれくらい豊作だといいですね!(ただし伴って村人が危ない)
ご参加ありがとうございました!
GMコメント
こんにちは、奇古譚です。
今年は空梅雨になりそうですね。
さて、スイカ狩りにいく依頼です。
●目標
ス・イカを撃破せよ
●立地
海洋の片隅にある村です。男性の8割は負傷して動けません。女性は動けます。
そこから離れた場所(安全のため離してあります)にス・イカが潜む畑があります。
人の気配を感じるとス・イカは勝手に出てきますので、農具を借りる必要はありません。
スイカを持ち運ぶ際は村人の女性に頼むとよいでしょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●エネミー
ス・イカ×30
大きなスイカに黒い手足と長い尻尾が生えたような姿をしています。鳴きます。
視覚・聴覚を有し、人の気配に敏感です。
それぞれ爪による近接攻撃と、尻尾による遠距離攻撃を行ってきます。
基本的に副行動は攻撃集中です。数で押してきます。
最早一種のモンスターとして扱った方が良いかもしれません。
●
食べたいなら、皆で後からスイカパーティーも出来るよ!
アドリブが多くなる傾向にあります。
NGの方は明記して頂ければ、プレイング通りに描写致します。
では、いってらっしゃい。
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