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シナリオ詳細

雨色ペイザージュ
雨色ペイザージュ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


(薄墨色を幾つも重ねた、重く垂れこめる雲の群)
(紫に燃え上がる夕暮れの空に、不意に過ぎる黒)
 空を描いた風景画が並ぶ画廊は、或る貴族の道楽によって生まれたものだった。空を描くと言っても、その色合いは様々――しかし共通しているのは、今にも雨が降りそうな、もしくは雨が降る最中と言ったような、雨の馨りを含んだものであること。
 形を持たずに流れゆく雨の雫を、画布に閉じ込め永遠のものにすることが、面白いと思ったのか――はたまた只の気まぐれか。気が付けば雨の絵画は、貴族の屋敷の一室を占めるまでにもなり、この不思議な収集物がちょっとした話の種にもなるかと思った頃。
(土砂降りの雨。嘆き哀しむ天が、滂沱の涙を流しているかのような)
(雨、雨、雨。踏み出す一歩先すら分からぬ、白い滝に顔を突き出したような豪雨)
 ――その画廊を、異変が襲った。まるでその部屋だけに雨が降り嵐が訪れたかのように、床が水浸しになって室内が荒らされる。朝を迎えて初めて、屋敷の使用人が気づくのだが、不審なものが侵入した痕跡は無いのだ。
(ざあざあ、ざざざ――血の、雨)
 まるで虚構が現実に染み出すように、雨は強く激しくなっていく――。


 依頼が来ているのです、とローレットの『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は、集まった者たちに声を掛けた。
「或る貴族のお屋敷で、異変が起きているようなのです。一夜の内に、絵画を飾った部屋がぐちゃぐちゃに荒されてしまうのですよ!」
 最初は原因が良く分からなかったのだが、調査を続ける内に、どうやら絵画に悪霊の類が憑き暴れているようだと、ユリーカは言う。
「ポルターガイスト……って言うんでしょうか。深夜になると、絵画がガタガタと動き回るのですよ。それで、元になった絵の影響を受けてなのか、雨や嵐と言った自然現象も操るみたいで」
 朝になると、まるで嵐が過ぎ去ったような状態になるみたいです――と、ユリーカは不安そうな顔をして。その画廊部屋には、雨空の風景画ばかりが何十枚と飾られているが、内10枚が騒霊憑きと化したのだと付け加える。
「結構な数ですし、放っておけば被害がどんどん大きくなっていくので……大事になる前に対処して欲しい、とのことです」
 具体的には、夜中暴れている所を物理的に破壊すれば大丈夫とのことで、イレギュラーズ達には事前に部屋で張り込みつつ迎え撃って貰うことになる。それ迄の間は、雨の風景画ばかりを集めた夜の画廊を、のんびり散策しても良いだろう。
「ちなみに、絵画の価値自体はまちまちで、そこまで高額なものは無いそうです。ので、気にせず倒しちゃって下さいなのですよ!」
 無名の画家、或いは画家見習いが練習の為に描いたもの――ただ雨の空を描いたものが、何十枚と飾られているのだから、何かを引き付けるのも止む無しかもしれない、と付け足しつつも。ユリーカは元気一杯に、依頼の成功を願って皆を送り出す。
 ――止まない雨は無い、とは言うけれど。その果てに空へと掛かる虹を見られるなら、雨のなかで刃を握ることも、偶には良いのかもしれない。

GMコメント

 どうも初めまして。この度ゲームマスターとなりました、柚烏と申します。初依頼は、幻想でのオーソドックスな戦闘ものになります。舞台の雰囲気を味わいつつ、PCさんならではの行動を、自由に考えて下さればと思います。

●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。

●成功条件
ポルターガイスト10体全ての撃破

●ポルターガイスト×10
悪霊が憑りつき、暴れ出した絵画です。雨の絵が描かれてあった所為か、雨や嵐を操り攻撃してきます。絵を破壊すれば、悪霊も一緒に消滅します(特別な倒し方をしなくても大丈夫です)
・豪雨(神中貫ダメージ・【毒】)
・白嵐(神近範ダメージ・【足止】)
・突進(物近単ダメージ)

●戦場など
場所は、貴族の屋敷の一室。雨の絵画ばかりが飾られた画廊になります。部屋自体は広く、邪魔な障害物は特にありません。真夜中になるまで待機し、ポルターガイストが動き出すのを確認してから戦闘開始となります。

●補足
絵画自体、そう高価なものではないので、戦闘での被害は気にせずとも大丈夫です。

 雨の画廊にて「こんな絵がありそうだな」などありましたら、描写の参考にさせて頂きます。雰囲気重視の依頼になると思いますが、よろしければ皆様の力をお貸しください。

  • 雨色ペイザージュ完了
  • GM名柚烏
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年07月07日 22時15分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)
疾風蒼嵐
シエラ・バレスティ(p3p000604)
滅牙
海音寺 潮(p3p001498)
揺蕩う老魚
藤野 蛍(p3p003861)
学級委員の方
ラクリマ・イース(p3p004247)
白き歌
桜咲 珠緒(p3p004426)
吐血の方
スー・リソライト(p3p006924)
猫のワルツ
城火 綾花(p3p007140)
Joker

リプレイ

●レイン・ナイト・ミュージアム
 雨の風景画ばかりが、飾られていると言う画廊――お屋敷の一室を使って作り出された其処は、真夜中を前にしてひっそりと静まり返っており、何処か秘密めいた空気が漂っていた。
「ほぅ……こんなに沢山の、雨を主題とした絵画を集めたとは」
 丸眼鏡の奥の瞳を穏やかに細めて、智慧を湛えた声音を響かせるのは『揺蕩う老魚』海音寺 潮(p3p001498)。海種――それも鮫の巨躯を揺らす姿は、一見すると恐ろしげに映るかもしれないが、潮の物腰はあくまでもおっとりと、優しげですらある。
「これは、様々な雨の表情が見られそうじゃのう」
「ええ……雨を題材にした絵と言えば、アジサイを使った絵はよく見ますよね」
 そんな潮に上品な笑みを浮かべた『白き歌』ラクリマ・イース(p3p004247)は、彼の淹れた紅茶を受け取りながら、うたうように声を響かせた。
 ひとの立ち入らぬ夜の画廊で、絵画を眺めつつお茶を楽しむ――標的が活動を開始する迄ではあるが、そのひと時はちょっぴり贅沢なもの。眠気覚ましの熱い湯気が、ふんわりと薄闇に溶けていく中で、『忌み猫』スー・リソライト(p3p006924)は軽やかに、絵画の並ぶ回廊を駆けていく。
「うー……踊るのは好きだけど、絵はあんまり……分かんないんだよね……!」
「あたしも芸術ってのは、興味も実はあんまりないんだよね……でも」
 スーに頷く『Joker』城火 綾花(p3p007140)はと言えば、ギャンブルに魅せられたひとり――笑うのは女神か死神か、善悪を超越した運と言うものにどう向き合おうかと、今も彼女は掌でコインを遊ばせていた。
「あたしがギャンブルを好きなように、こういうのが好きな人もいるって事は、忘れないようにしたいね」
 ――青の瞳に飛び込んで来たのは、雨降る草原に佇む少女と、雨と雷鳴を描いた二枚の絵。可憐なスーの白い髪が、灯を受けてきらきらと輝きを加える其処へ、コインが描く黄金色の軌跡が重なって。入れ替わった裏表はどうやら、綾花の予想した通りになったようだ。
「さ、せっかくだから絵画を見て回ろうか。興味がないからと目を逸らすのは、良くないことだ」
「……でも、話には聞いてたけどっ! 雨、雨、雨ばっかりだね!」
 私は雨より、お日様の方が好き――そう言って頬を膨らませるスーだったが、その気持ちは分からないでもない、と『学級委員の方』藤野 蛍(p3p003861)は溜息を吐く。この屋敷を襲う怪異の原因が、これら雨の風景画に因るものだと思えば、知らず彼女の背筋もぴんと伸びると言うものだ。
「しかし、絵画に悪霊が憑く事件って……なんでこう多いのかしら」
 無意識のうちに蛍が呟いた言葉を、そっと拾い上げたのは『要救護者』桜咲 珠緒(p3p004426)。その儚げな相貌に相応しい、神秘的な声で「ええ」と同意した少女は、絵画の配置などに異常がないかを確認しているようだ。
「翳りのある雨の絵と、騒霊……確かに相性は良さそうですが」
 ――その配置などが偶然に、魔術的な交霊陣になっているのではとも考えてみたが、特にそう言った様子は見受けられなかった。だったら絵にしても、壊されるより鑑賞される方を望むだろうと、珠緒は蛍と共に刻限まで画廊を見て回ることにする。
「うーん……習作なればこその熱さでしょうか。雨に濡れるというのは、冷たさのイメージですが」
「そうね、熱さ……。絵に表現されてる強い情念や感動が、見る人だけでなく霊的なものも惹きつけるのかな……」
 うわ、と其処で立ち止まった蛍は、目の前に飾られている嵐の夜の絵を見て息を呑んだ。まるで風雨のカーテンが掛かっているみたいに、向こう側の世界と隔絶された風景――其処から、絵筆で叩きつけられた絶望感のようなものが伝わって来る気がして、凄い迫力ねとぽつり呟く。
(……なんでしょうね)
 確かに、余りに激しいと印象は変わるようだ、と珠緒も蛍に頷くが、絵画の雰囲気に偏りがあるような気もした。例えば春の雨上がりと言ったような、明るさや温かさがある絵が見当たらないような――。
「あ、見て見て! 傘を差した子供とカタツムリのいる絵があるよ!」
 しかし、近くから聞こえて来た『疾風蒼嵐』シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)の声に顔を上げれば、何処か優しい雰囲気の絵が視界に飛び込んで来た。
「悪霊が憑いた絵はどれかなって見てたけど、この絵にはいなさそうだね」
「でもでも、幽霊って聞くと……私は何だか、親近感を感じちゃうなぁ~」
 と、シャルレィスと一緒に散策をしていた『輝きのシリウス・グリーン』シエラ バレスティ(p3p000604)はと言えば、その体質故か物怖じすることもない様子。
「あ、この絵……泣いている女の子が描かれてるのかな?」
 雨の中、独りぼっちで佇む少女の姿が、何だか自分と重なって来て――まるで、泣きながら母親を待ち続けているように見えてきたシエラは、未だ会ったこともない己の母を想って溜息を吐く。
(お母さん、元気かな~)
 ――剣士で旅を続けている、なんて噂も聞いた。自分が祖父の道場で稽古に励んでいるのも、そんな母の背を無意識に追いかけようとしているのかもしれなくて。
「うーん、高価な物ではないらしいけど……悪霊が憑く程、惹きつけられる物があったって事なんじゃないのかな」
「……これは、各国の雨の様子を描いた作品じゃろうか。国によっても色々な対応があるのう」
 潮やラクリマも交えて、絵画について色々と感想を語り合っているシャルレィスの姿を見ていると、シエラの胸にむくむくと悪戯心が湧き上がってきた。
「見る者によって、違った印象を与えるのも絵ならではじゃな」
 雨具を一切つけずに雨の中を歩く絵、不思議な装置で雨を跳ね除けている絵、はたまた雨乞いの儀式を行っている絵――指折り潮が絵を数えていく中、ラクリマは何かの書物に、絵の筈なのに雨だけが動いて見える魔法の絵のことが書かれてあったのだと告げる。
「へー、色々あって面白いなあ……じゃあ、ここの絵を描いた見習いさん達も、いつか本で紹介されて有名になったりするかもね!」
 そんな風に、元気一杯に相槌を打つシャルレィスの背後へ、シエラはそっと忍び寄ると――彼女の耳元に「ふっ」と息を吹きかけて。
「う、うわぁあああぁぁぁ!?」
 予想以上に驚いた様子のシャルレィスに、きゃっきゃとはしゃごうとしたその時、シエラの首筋にぴしょりとあたたかな水滴が伝った。
「って、ひ、ひゃああ!?」
「シ、シエラさん、それっ!」
 ぱくぱくと口を開け閉めしつつ、シャルレィスが震える指先で示したシエラの頬――其処へ飛び散った水滴を彼女が拭えば、それは血のように紅く。其処でシエラは、先ほど見ていた絵画の少女が、血の涙を流して此方を睨みつけていることに気づいたのだった。
「でででで、出た! 悪霊!」
 ――いつしか時刻は真夜中を過ぎており、絵画に宿るポルターガイストが動き始める頃合いとなっていて。ガタガタと音を立てて動き出した額縁の群れは、風雨を伴い唸りをあげて、踊るように此方へと襲い掛かってきた。

●雨に踊れば
 暴れ出した絵画は、全部で10。その数は多いが、情報通りだ。そうして、ざっと相手の様子を確認した後で――潮は宙を泳ぐ小鮫のポチを、部屋の外へと向かわせて、部外者が立ち入らないよう安全確保を行った。
「さて、人の作りしものには念が籠もるとは言いますが。これはなんとも面白……いえ、大変なことになっていますね」
 悠然とした態度を崩さず、雪のように淡い囁きを零すのはラクリマで――その言の葉に、何やら物騒なものが混じっていたような気もするが――戦場を支配する、王佐の才を発揮した彼は、皆に加護を与えつつ自身も術を紡ぐべく魔導書を開く。
「それじゃ、ボクが敵を引き付けるから……皆は、引き付けきれなかったものからお願いね」
 一方で、最前列で皆の盾となることを決意した蛍は、茨の鎧を纏って一気に地を蹴った。潮が祝福の囁きを贈ってくれたことに礼を述べつつ、一瞬、後方で回復を行う珠緒と視線を交わす。
(頼りに、してるから)
 ――いつも冷静に、戦場全体の把握に努めている親友のことは、よく知っているからと。そんな蛍のまなざしに無言で頷いた珠緒は、自身を聖域で守りながらも、対峙するポルターガイスト達の情報解析を試みた。
(最適な位置取り、そして攻撃を集中させるべき相手は――)
「ま、壊しちゃうのはちょっと勿体ない気もするけど、悪霊は放っておけないし!」
 蛍の論破が夜の画廊に響き渡る中、動いたのはシャルレィス。蒼の髪を靡かせた少女が振るう魔剣は、荒れ狂う風を生み出して――やがて蒼嵐となった刃は、眼前で暴れ回る絵画を纏めて斬り裂いていく。
「血の雨になってしまう前に、消えて貰おう!」
「うんうん、何であろうとこの二本の槍で貫くんだよ!」
 最初に驚かされたシエラも、すっかり激おこと言った状態であり。竜をも貫くとされる槍を手に、彼女は降りしきる雨を厭うこと無く、軽やかに宙を舞った。
 間合いを取って敵を煽り、釣れたと思ったら一気に距離を詰めて、速度を乗せた槍の一撃を放つ――荒れ狂う暴風と化したシエラは一つ所に留まることをせずに、縦横無尽に戦場を駆けまわる。
「……やっぱり私は、こうして身体を動かす方が好きかなー」
 そして、踊り子たるスーもまた、亡霊のケープを幽玄に翳しながら、死へ誘う舞踏を艶やかに披露して。絵を壊しちゃうのは、ちょっと残念かなと言う想いもあるけれど――それでも、他の作品を壊されるわけにはいかないからと、スーは最善を尽くすことを決意していた。
「せっかくだから、悪霊さんにも踊りを見せてあげる!」
 狙うのは、未だ蛍やシエラに囚われていない絵画――味方の邪魔にならないよう立ち位置を変えつつ、終局を導く燐光の舞が、夜の世界に黄昏を呼ぶ。そんな誰そ彼の幻惑に重なるようにして、高らかにゲームの始まりを宣言したのは綾花だった。
「さぁ賭けを始めましょう、笑うのは女神か! 死神か!」
 ――幸運が3、不運が3、実力勝負も3。およそ全てが対等で、だからこそ良いギャンブルになると、綾花の唇が緩やかな弧を描いて。カードを切るように指先を操れば、忽ち生じた有毒の霧が、ポルターガイストを纏めて呑み込んでいった。
「では、被害が大きくなる前に、片付けてしまいましょう」
 そうして、確実に仕留められると判断したものへは、ラクリマの放つ冷血なる贖罪――彼の血が形づくる鞭の一撃が容赦なく振り下ろされ、悪霊ごと絵画を塵に変えていく。
(大丈夫、ボクなら耐えきれる……)
 一方で、複数の敵から標的に定められた蛍は、生き残る為の戦いを重視し、突進してくる絵画にも纏う茨で手傷を負わせていた。そんな彼女を、優先して治療してくれる潮の存在もあって、戦線は安定していたのだが――ポルターガイスト達は、守りの薄い場所を突こうと襲い掛かって来る。
「……わ、っ!?」
 ――機動力と火力は高いが、守備に大きな犠牲を払っているシエラ。挑発を繰り返して攻撃を行う彼女の存在は非常に目立ち、結果として敵から目を付けられることになったらしい。
「シエラさん!」
 降り注ぐ豪雨と、視界を奪う嵐が次々に叩きつけられて、シエラの小柄な身体が傾ぐ。彼女の近くに居た仲間たちも、白嵐に巻き込まれていったその時――りぃんと奏でられた天使の福音が、雲間から射す光のように優しく、辺りに降り注いでいった。

●嵐の中の灯
「……珠緒、さん」
 蛍は無意識の内に、先ほど眺めていた絵画のひとつを思い出していた。嵐の夜に、ぽつりとともった灯。今にも掻き消されそうで心細く見えたそれは、同時に最後の希望も伝わって来るように感じて――ランタンを掲げ、救いの音色を口ずさむ珠緒の姿が、絵画の灯と不意に重なる。
「女神が、微笑んだと言った所……かしら?」
 更に、潮が癒しの光を降らせていくのを見つめた綾花は、運が向いてきたようだと呟いて、黒犬の牙で一気に絵画を引き裂いた。
 ――そうして確実に一体ずつ、敵の数を減らしていったお陰で、雨の激しさも和らいできたようだ。滴る雫を無造作に拭うシャルレィスは、雨上がりの蒼空を脳裏に描きながら、嵐の難破船が描かれた絵画に切れ間の無い斬撃を浴びせ続ける。
「どっちの嵐が激しいか、勝負だっ!」
 蒼嵐が繰り出す五月雨の剣戟――其処へ加わったのは、絶望と未来を紡ぐラクリマの白薔薇で。花散るように絵画が砕けていくのを見届ける間も無く、蛍の指先が劫火を呼んだ。
「紙の弱点は狙い所よね! あ、でも、そう言えば雨による水濡れは平気なのかしら……?」
 爆発に巻き込まれた絵画を見遣り、首を傾げた蛍は珠緒に解析を頼むが――彼女はマイペースに「倒したのなら問題ないのです」とばかりに頷いてみせる。
「ほら、蛍さん。潮さんのサメ手刀で、色違いの子が散んでいきましたよ。ラッキーですね」
「おお、今日一日は運が良くなる……かも知れないのう」
 ――たまに見られると言う、色違いの鮫の幻影。その一撃でポルターガイストを屠った潮が、のんびりと微笑む中で、最後の力を振り絞ったシエラが動いた。
「このまま、壁に叩きつけて砕いてくれるわぁー!」
 純粋であるが故に容赦の無い双槍の刺突が、雨よりも速く絵画を貫いて――最後に残った悪霊へは、スーの操る短刀が振り下ろされる。
「雨だけでも、色々な表情があって面白い……って、私には今も良くわかってないけれど」
 だけど、明けない夜はなく暮れない朝もないように――止まない雨もないと、彼女は知っているから。恩師の教えを胸にスーは笑顔を浮かべて、太陽と月のある限り、運命に抗い続けるだろう。
「それが踊り子の矜持……なんちゃって!」
 ――精緻な飾り布がふわりと揺れたその先に、最早動いている悪霊は存在しなかった。

●オーバー・ザ・レインボー
 無事に戦いが終わって辺りを見回せば、絵画の暴れた痕跡と共に、ずぶ濡れになった一行の姿があった。
「うわー、全身びしょ濡れだ……このままだと、風邪ひきそう……」
 何とかしないと――そう言って頭を抱える綾花の身体には、その見事なプロポーションを際立たせるようにバニースーツが貼り付いており、何とも色っぽかったのだが。
「うぅー、こんな事ならこの格好で来るんじゃなかったぁー!」
 そんな悲痛な叫びを彼女が響かせる傍らで、ラクリマは残された絵画を調べており、どうやら不穏な気配は残っていないようだと結論づける。
「……価値のない絵や練習の絵と言っても、絵にはそれなりの時間や労力がかかるもの」
 それは決して『無価値』と呼べるものではなく、出来るのなら今後は、穏やかに飾られて欲しい――そう言葉を結んだ彼に、頷いたのはスーだった。
「そうだよね……それは誰かの努力の跡、作品だもん」
「空いた場所、次は雨上がりとか……豊かな水の恵みを与えてくれる、慈雨の絵とかが入ると素敵かもね」
 失われた、10枚の絵――その代わりに飾られる絵画が、出来るのなら優しい絵であることを蛍は祈る。そんな中で、潮はゆっくりと窓を開けて部屋の湿気を追い出しつつ、辺りの掃除を始めようと動いていた。
「雨が上がったら、次はお日様の出番じゃよ」
 そう言えば、もしかしたら外も雨だろうか――濡れた髪を拭うように窓から顔を覗かせたシャルレィスは、夜明け間近の空が、微かな光を運んでくるのに気づいて笑顔を見せた。
「あ、今日はいい天気になりそう! 朝になったら、虹が見えたら良いなぁ」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

シエラ・バレスティ(p3p000604) [重傷]
滅牙

あとがき

初めての依頼、楽しみながら書かせて頂きました。
雨降る絵画が誘う、真夜中のひと時――冒険の思い出のひとつとなれば幸いです。
お疲れさまでした!

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