PandoraPartyProject

シナリオ詳細

重い紙切れ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●貴族さまのご依頼
 ローレット本部で依頼者の訪問を受けた『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は困っていた。
 というのも、依頼者の言いたいことがなかなか理解できなかったからだ。
「えっと、つまりどういうことなのでしょう……?」
 このままでは本当に理解できずに終わってしまうと感じ、意を決して依頼者に問いかける。
「何ダネ、キミはこんなに簡単なことも分からないのカネ?」
 依頼者の態度は非常に大きいが、見るからに貴族なので仕方がないのかもしれない。
「申し訳ないのです……」
 困り顔のままユリーカが促す。
「仕方ないのダネ。つまり、ボクは大嫌いな貴族に借りがあるのダネ。でも、大嫌いだから、そんなものは返したくないのダネ。ここまでは分かるカネ?」
 借りと濁しているが、ここまでの話でユリーカにはそれが借金だということは分かっている。
 とりあえず、ここは余計なことを言わずに話を進めてもらうのが先決であろう。
「はい、分かるのです」
「それは良かったのダネ。それでダネ、ボクは返したくないが、向こうには書面で証拠が残っているのダネ。これがある限り、ボクは返さないといけないのダネ」
 そこでまた言葉を切ると、貴族はユリーカをちらりと見て首を傾げる。
 きっと理解しているか確認したいのだろうと判断し、ユリーカは頷いてみせる。
「そこでダネ。キミはボクのために、この書類を取ってくるのダネ」
「なるほどなのです」
 ようは、この貴族は他の貴族に借金がある。
 それを返したくないのか返せないのか、それはどちらでも良いが、借用書を奪って来いと言いたかったわけだ。
 ストレートに伝わるような言い方をするのはプライドが許さないのか、ぼかして話していたのでユリーカにもなかなか理解できなかったのだ。

●どちらも面倒な依頼
「分かったのです。では、お相手のお屋敷の場所や情報について、できるだけ教えて欲しいのです」
「依頼するというのも、なかなか面倒なのダネ……。仕方ないのダネ」
 色々と皮肉も言われつつ、必要な情報を貴族から聞き出し、貴族が帰る頃にはユリーカは少しぐったりしてしまっていた。
 それでも、すぐに告知を書いて貼り出したのだった。

 告知を見たイレギュラーズに対し、ユリーカが注意事項を告げる。
「今回の依頼では、色々と注意事項があるのです。きちんと確認しておかないと、大変なことになるのです。何しろ、忍び込むのが貴族のお屋敷なので」
 出発前に、必ず目を通して確認するように告げながら、ユリーカが今回の依頼に参加するイレギュラーズに確認事項をまとめたものを渡していく。
 出発前に確認したら絶対に処分するのを忘れないように、しつこいくらい念押しするユリーカだった。

GMコメント

 閲覧ありがとうございます、文月です。
 今回は借用書を盗んで来て欲しいという依頼です。
 以下、補足となります。

●注意
 この依頼は悪属性依頼です。
 成功時の増加名声がマイナスされ、失敗時に減少する名声が0になります。
 又、この依頼を受けた場合は特に趣旨や成功に反する行動を取るのはお控え下さい。

●依頼達成条件
 ・屋敷中の人に気付かれていない
 ・借用書を盗んで持ち帰る
 この2点両方をクリアすることで依頼達成となります。
 なお、依頼主が分からないよう他にも借用書があれば、全て盗んでおくのが望ましいでしょう。

●屋敷の警備等について
 屋敷内には貴族本人とその家族あわせて6人、使用人が10人が住んでいます。
 使用人のうち3人のみ戦闘能力があります。
 ただし、見付かった時点で依頼達成は危うくなりますので、戦闘以外の方法(たとえば睡眠薬で眠らせておく、策を講じて屋敷を無人にする等)で乗り切ることを考えた方が良いでしょう。

●借用書のある場所について
 貴族の当主が使っている書斎に借用書があるようです。
 依頼主によれば、金庫ではなく本棚に隠し扉があり、そこにしまってあるとのことです。
 本棚の隠し扉は、特定の本を抜くことで開きます。

●その他
 アドリブ不可、アドリブOKなど添えていただけますと、助かります。
 口調が分かりやすいよう書いていただくのも、大変助かります。
 皆様のご参加、お待ちしております。

  • 重い紙切れ完了
  • GM名文月
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年02月21日 21時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リア・ライム(p3p000289)
トワイライト・ウォーカー
カルマ・ストラーダ(p3p000686)
スフォルトゥーナ
神宿 水卯(p3p002002)
XIII(p3p002594)
ewige Liebe
不破・ふわり(p3p002664)
揺籃の雛
雪原 香奈美(p3p004231)
あかいきつね
黒鉄 豪真(p3p004439)
ゴロツキ
シルヴァーナ・バルタン(p3p004614)
宇宙忍者

リプレイ

●身勝手な依頼でも
 借金を踏み倒したいという身勝手な貴族からの悪依頼だが、これを受けたイレギュラーズは依頼は依頼だからと真剣にこなそうとしていた。
 その証拠に、彼らは借用書を盗むために綿密な計画を練り、計画実行前にも入念な準備を行っている。
 『あかいきつね』雪原 香奈美(p3p004231)は、かなり意気込んでこの事前準備に取り組んでいる。
 計画遂行のため、まずは貴族が必ず外出する日がいつなのかを調べなくてはならない。
 最初に、使用人が普段どこへ買い出しに行くのか、普段の行動範囲はどこからどこまでか等も抜かりなく調べ上げた。
 その上で、使用人が買い出しで毎日行く市場の人間との接点をまず作る。
 毎朝、元気に挨拶してできる限り手伝いもし、チョコを貴族に売り込みたいのだと触れ回る。
 さらに、この世界に召喚されてから築いてきた情報網やコネクションもフルに活用し、情報を集める。

 まだ依頼をこなすことには不慣れな『玻璃の小鳥』不破・ふわり(p3p002664)も情報収集を手伝っていた。
 経験の少なさから他メンバーの足を引っ張らないようにと、非常に気を遣っている様子である。
 ふわりは、ターゲットとなる貴族の屋敷から使用人が出かけて行くのを待ち、気付かれないように後をつける。
 どうやら屋敷の近くにある仕立て屋に向かうようだ。
 貴族の指示で何か用事があるのだろう。
 使用人が用事を終え、仕立て屋から出てくるとふわりが動いた。
 実年齢は10歳だが、外見は5、6歳のいたいけな少女であるという自分の特徴を最大限に活かし、今にも泣きそうな表情で何かを探しているように装う。
「どうしたの?落とし物?」
 使用人はふわりを見て助けようと近づいてくる。
「お母さんに黙って借りた指輪を落としちゃったんです」
「まあ、それは大変! 一緒に探してあげるわ」
 使用人の用事が終わってから動いたのは、急いでいるからとスルーされないためであるが、上手くいったようだ。
 しばらく探すふりをして、適当なところで見つかったと用意しておいた指輪を見せる。
 その時、どこのお屋敷の人かをそれとなく聞いておき、後日お礼を言いに屋敷を訪ねた。
 それ以来、何度も屋敷を訪ね、儚き花のスキルも使い、世間話の中から情報を拾っていく。

 そうするうちに、目的の貴族を含めた何人もの貴族の外出予定、どのような人柄か、誰と仲が良くて誰と仲が悪いのか、さらにはそれぞれの家族構成、簡単な内情まで知ることができた。
 だが、まだ情報が足りない。
 足りない情報を補うべく動いているのは、神宿 水卯(p3p002002)である。
 変装、気配遮断といったスキルを上手く使い、屋敷の周辺を調べているのだ。
 潜入時には屋敷の様子を窺えるような位置取りをしなければならない。
 当然、ここで目立って見つかっては全てが台無しになってしまうので、目立ちにくかったり周囲から見えなかったりし、なおかつ屋敷の様子はきちんと見える場所を探さなければいけない。
 また潜入して用が済めば迅速に離脱する必要がある。
 そのためには逃走経路を決めなければならないし、それには土地勘が必須であるし、家人がよく通る道を使って鉢合わせすめのも避けたい。
 これらの情報を水卯が集め、ようやく計画は次の段階へと移行する。

●チョコの誘惑
 必要な情報を集めると、屋敷から人をできるだけ外へ出すための作戦として、グラオ・クローネに向けたチョコの販売会を行う。
 販売会は実際に行われるわけではない。
 しかし、屋敷の人間が当日その場所へ行くまでは信用してもらわなければならない。
 そこで、ふわりが家事万能のギフトで『料理長』灰熊のロッシュを召喚し、ビラと共に配るサンプルのチョコを作ってもらった。
 できたチョコは『メイド長』白猫のミュンとふわりで協力し、可愛くラッピングして信憑性を高める。
 ビラの制作は香奈美や水卯が行っていた。
 販売会を開催する場所は、潜入チームのメンバーと話し合い、屋敷から30分ちょっとかかるところに設定してある。
 潜入チームとしては、できるだけ多くの時間が欲しいところだが、あまり遠いところだと面倒がって出かけてくれない者も出るかもしれない。
 情報収集をしながら、水卯がこの販売会を世間話として様々な場所で話し、噂の種はまいてある。
 ビラを見た屋敷の人間も、どこかでこの噂を聞いていれば、話題の販売会だと考える可能性は高いだろう。

「とっても美味しいチョコの販売会をやるっすよ。よろしくっす!」
 市場まで食料の買い出しにやってきた使用人に偽のチョコ販売会のビラを渡すべく、香奈美が市場でビラを撒いている。
 もちろん、チョコの販売会の日程は予め調べておいた貴族の外出日に合わせてある。
「あら。この日はご主人様はご家族で出かけられる日だから、是非寄らせていただくわ」
 香奈美が差し出したビラを受け取りながら、書かれていた販売会の日時に気付いた使用人が笑顔を見せる。
「本当っすか?嬉しいっす! お待ちしてるっすよー」
 香奈美もとびきりの笑顔を浮かべ、使用人に愛想を振りまく。
 そうしながらも、怪しまれないように他の者達にもビラを配っている。

 ふわりも繰り返し屋敷を訪ねて懇意になった使用人にビラを渡していた。
 複数の使用人が別の場所、別の人物から同じビラを渡されたことで、よりこのビラの信憑性が高まったのではないだろうか。
 こうして、身勝手な貴族のわがままな悪依頼の事前準備は完了したのだった。

●潜入当日、見張りに立つ者
 作戦の決行日。
 ターゲットの屋敷は煉瓦造りの豪邸で、さすが貴族の屋敷だと思わされる。
 石畳の道の先にあり、道の両側に配置された植え込みの低い常緑樹が目を楽しませてくれる。
 屋敷の持ち主である貴族が家族連れで昼過ぎから出かけると、しばらくしてから使用人達も香奈美らが渡したビラを持って屋敷を出た。
 依頼主からの情報、そして香奈美らが事前に調べた情報では屋敷にいる使用人は10人である。
 女性の使用人達が先に6人で連れ立って出て行く。
 その後、男の使用人も3人バラバラに出て行き、それぞれ違う方向へと向かっていった。
 うち1人はチョコ販売会の場所として設定したところへ向かうようだったが、他の2人はチョコには興味がないのか、他に用事があるのか分からないが別の方向へと向かった。
「皆いいよなぁ、俺も販売会行きたかったのにご主人様の用事で隣町まで行かなきゃいけないなんてさぁ」
 最後の1人も男の使用人だったが、何やら1人でぼやきながら屋敷を施錠して出て行ってしまう。
 どうやら屋敷にいる使用人全てに販売会の話は伝わっており、最後の使用人以外は全員行くつもりのようである。
 販売会の場所とは別の方向へと向かった男の使用人2人も、後から向かうのかもしれない。

 これで10人の使用人全員が屋敷を出たはずだが、念のために水卯が子供の物乞いに変装し、屋敷を訪れる。
 屋敷の玄関ドアに備え付けられている獅子の形をしたノッカーを使い、ノックする。
 しばらく待つが、誰も出てこない。
 念には念を入れ、2度ほどこれを繰り返すが、誰も出てこない。
 完全に留守であることを水卯が確認すると、ついに潜入作戦が始まった。
 水卯はその後も事前に確認しておいた屋敷横の道端に座り込む。
 そして空腹のあまり動けない物乞いの子供を装い、超聴力で周辺を通る人や馬車などに対し、警戒を行う。

 潜入チームをサポートするため、見張りは各所に配置してある。
 せっかく潜入が成功しても、もし使用人が忘れ物でもして戻ってくるようなことがあり、それに気付かないまま借用書を探し続けていればどうなるか、明白であろう。
 そういった事態を防ぐためには非常に重要なのが見張り役である。
 事前に相談して万一の時には指笛で合図をし、仲間に急を知らせることになっている。
 今回の依頼ではサポートに回ることになった『ewige Liebe』XIII(p3p002594)も、屋敷の外で屋敷の人間が戻ってこないかを見張る。
 潜入チームの作戦行動が終わるまで、ただじっと同じ場所にいては怪しまれてしまうだろうと考え、XIIIは待ち合わせを装うことにしていた。
 目立たないような服を選んで身につけ、屋敷からそれほど離れていない道端の植え込みの前に立つ。
 最初は周囲の様子を見ながら普通に待ち合わせの相手を待っているように振る舞い、時間が経つにつれて徐々に苛立っていくように振る舞う。
 腕時計で何度も時間を確認したり、少し腹立たしそうにため息を吐いてみたり、もしや待ち合わせ場所を間違えたのではと軽く考え込んでみたり。
 実はもう既に来ているが気付かなかったのでは、とイライラした様子のまま早足でキョロキョロと誰かを探しながら歩き回ってもみる。
 何も知らない者が見れば、XIIIが誰かと待ち合わせをしていて、相手が来なくてイライラしているようにしか見えないはずだ。
 特に疑いを持たれることもないだろうが、あまりに長くいてはさすがに不審に思う者もいるかもしれない。
 しばらくすると、XIIIは大きなため息を吐いてその場を離れ、待ち合わせ相手にすっぽかされてその場を離れたように見せる。
 遠距離からでも目視可能な自らのギフトを活用し、屋敷から離れた場所からの監視に移行するためだ。
 あえて離れたところから見ることで、近くから見ているだけでは気づきにくい動きにも、臨機応変に対応できるだろう。

 一方、周囲の警戒と逃走ルートの確保を担当している『スフォルトゥーナ』カルマ・ストラーダ(p3p000686)は、忍び足と気配消失のスキルを使い、極力自分の存在を目立たなくしていた。
 屋敷に誰か残っていれば、その誰かの気を引いて潜入チームのアシストをするつもりでいたが、屋敷の者は全員出かけているのでその必要もない。
 途中、少し手持ち無沙汰になり、潜入後に借用書が盗まれたことに気付いた貴族が色々と調べるであろうことを考え、隠蔽工作のスキルで可能な限り自分達の痕跡を消しておこうかと思案する。
 そうして見張りを続けながらも、もし合図の指笛が聞こえてきたら、すぐに離脱できるよう備えておく。

「今回はクサレ依頼人のクサレタ依頼か……」
 つまらなさそうに小声でボソリとこぼしたのは、『ゴロツキ』黒鉄 豪真(p3p004439)だ。
 いっそのこと依頼主ごと殴り飛ばして屋敷に強盗にでも入れば簡単だろうに、と面白くなさそうな表情を浮かべつつも潜入チームのサポートをするべく、見張り役をこなしていた。
 他の見張り役が正面や横手などからの見張りを行っているので、豪真は裏口を担当している。
 正面から出て行ったからと言って、屋敷の者達が必ず正面から帰ってくるとは限らないのだ。
 裏口なので正面よりは目立たないし、誰かに見られる心配もあまりないのだが、今回のような依頼の場合は慎重になって困ることはないだろう。
 できるだけ不審に思われないよう、気を付けながら見張る。
 双眼鏡を使い、周囲の様子、外から見ることのできる範囲で屋敷の中も見ていく。
 もし自分達以外の不審者がいれば、ゴロツキらしく暇つぶしにでも遊んでやろうと考えているらしい。
 もちろん、ただ暴れたいからというような理由ではなく、自分達以外の不審者という不確定要素のせいで今回の依頼が失敗するようなことがあってはならないからである。
 かなりの大柄であり、いかにもな外見とその乱暴な口調から誤解されることもあるが、依頼を成功させるという点においては、豪真も他の者同様に真剣なのだ。

●潜入チームの作戦行動
「やれやれだわ。屋敷ごと焼いてしまえば簡単なのに……」
 潜入直前、ため息混じりに『トワイライト・ウォーカー』リア・ライム(p3p000289)が呟く。
 実際に借用書を盗むのは『宇宙忍者』シルヴァーナ・バルタン(p3p004614)の担当だが、屋敷内でのサポートを行うためにリアも屋敷へ潜入することになっていた。
 屋敷の者達が全員出かけて行き、物乞いに扮した水卯が確認を終えるとすぐにリアが屋敷へ向かう。
 水卯が屋敷の横手に向かうのをチラリと見て、リアは堂々と屋敷の玄関から中に入る。
 施錠されるところを見ていたので、解錠のスキルを使って何食わぬ顔で鍵を開け、中へと入る。
 あまりに堂々としているので、もしリアが屋敷に入るところを見た者がいたとしても、気に留めることはないだろう。
 屋敷内に入ると聞き耳のスキルを常に使いながら移動する。
 屋敷に残っている者はいないが、念のためだ。
 事前に調べた情報と依頼主から聞いていた情報から、書斎の位置は正確に分かっている。
 素早く書斎へと向かいながら、自然会話のスキルを使い屋敷内に飾られている花瓶や鉢植えの植物から、使用人達の普段の屋敷内での行動パターン、屋敷内の様々な情報を聞き出していく。
 書斎は階段を上がって一番奥にある。
 常に堂々とした振る舞いで書斎へ着くと、中には入らずにドアの前で見張りをする。
 聞き耳のスキルを使うのも忘れない。

 今回の依頼成功の鍵を握ると言ってもいい、借用書の盗み出しを担当するシルヴァーナは、リアが動き始めたのとほぼ同時に書斎への潜入を試みる。
 2階の書斎のました辺りまで素早く移動すると、跳躍と物質透過のスキルを使って外壁から直接入ってしまう。
 宇宙忍者というだけあり、静かで素早い動きである。
 書斎に入ると足音を立てないよう静かに、そして素早く本棚まで移動する。
 壁際に設置された本棚には、びっしりと本が入れられている。
 隠し扉に罠もないだろうと考えつつも、念のため警戒は怠らない。
 依頼主から聞いていた情報を参考に、違和感のあるところはないかと迅速に本棚を調べていく。
 事前情報から推測していた通り、1箇所だけ本を頻繁に出し入れしているせいなのか、棚板の手前部分に擦れたような跡がついているのを見付けた。
「予想通りでござるな」
 自らの推測が当たったことに気を良くしつつも、何度も出し入れしているらしい本をそっと引き抜こうとする。
 微かにカチッという音がして本棚の一部が真ん中から左右に開いていく。
 中には小さな布袋や革袋、布を被せられたトレイ、大量の書類などに混ざって、何故かボロボロの小さなカエルの玩具が入っていた。
 時間に余裕があるわけではないため、書類はとりあえず全て持ち帰ることにする。
 盗み忘れてはいけないと隠し扉の中に書類が残っていないか、急いでチェックする。
 奥の方まで覗き込み、残っている書類がないのを確認すると、すぐに撤収する。
 屋根裏から離脱したいところだが、屋敷が4階建てなので来た時と同じところから出て行く。
 窓から外の様子を確認することも忘れない。

 シルヴァーナが書斎から出て静かになると、リアもすぐに撤収する。
 玄関から出て鍵は開いたままになるが、盗まれた物があることに気付かない限りは、施錠し忘れたと思ってくれるだろう。
 散歩のフリをして屋敷の外側をぐるりと回り、見張り役をしているメンバー達に自分の姿を見せることで、撤収を促す。
 リアが屋敷から出てきたことに気付くと、それぞれが不自然でないように振る舞いつつ、撤収して帰っていく。
 全員が無事に撤収したのを確認すると、リアも帰路につく。
 シルヴァーナはカルマの確保していた逃走ルートから既に逃げている。

 全員が撤収した直後、チョコの販売会がビラに書かれていた場所で行われていないことに不思議がりながら、屋敷の使用人達がぞろぞろと帰ってきた。
 僅かな差で彼らと鉢合わせすることなく撤収することができたのは、事前の調査がしっかり行われていたのと、盗みを実行したシルヴァーナの判断が的確であったからだろう。

●身勝手すぎる貴族さま
 シルヴァーナが盗んだ書類は全て、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)を通して依頼主に渡された。
「あっ」
 思わずユリーカが驚いて声を上げてしまう。
 依頼主が書類の中に自分の借用書があるのを確認すると、ローレット本部の暖炉に書類を全て投げ込んでしまったからだ。
「何ダネ?ボクが依頼して取ってきてもらったものなのだから、ボクがどうしようと勝手なのではないのカネ?」
 相変わらずの態度で依頼主がユリーカを冷たく見つめる。
「まあ、依頼はこなしてもらったし、お礼をするとしようカネ。釣りはいらないのダネ」
 そう言ってテーブルに布袋を軽く投げ、依頼主の貴族はそのまま帰って行ってしまった。
 ユリーカは複雑な表情を浮かべ、しばらくの間、テーブルの上の布袋を見つめていたのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 大変お疲れ様でした。
 今回は私、文月の担当しましたシナリオにご参加いただきありがとうございました。

 皆様の活躍により、ワガママ貴族の希望は叶いました。
 不慣れな中で見事にサポートをこなされた方、素晴らしい策を講じた方、見事に潜入してみせた方など、様々でありました。
 悪依頼ではありましたが、どなたも素敵なプレイングでした。

 少しでも楽しんでいただけましたら幸いです。
 またの機会がありましたら、よろしくお願いいたします。

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