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シナリオ詳細

<クレール・ドゥ・リュヌ>罪奇罪苦
<クレール・ドゥ・リュヌ>罪奇罪苦

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 天義に神の裁きあれど、罪と人とを断つこと能わず。
 罪を測る天秤はあれど、錘は抑圧で錆び朽ちた。
 なれば、羽根より軽い罪を以て羽根に見合うと指を断ち、命の報いは命で贖う他なしとする。
 数多の命と、二度目の命という大罪を裁くには、果たして何が釣り合うべきか……。

「天義首都にて、ここのところ狂気に侵された人による事件が頻発しています。状況は<嘘吐きサーカス>事件当時のメフ・メフィートに酷似しており、レオンさんがざんげさんに確認した時点での兆候も、かつてのそれを想起させる、とのことです」
 情報屋は集まったイレギュラーズに、不穏な話を切り出した。ローレット全体で上へ下への騒ぎになっているのは、昨今の天義の混乱の延長ともいえる現状、それが酷く顕在化したがゆえである。
「フォン・ルーベルグで『原罪の呼び声』が強く生じているのは明らかである、と聞いています。でも、<サーカス>に相当する旗印がありません。からくりの仕組みは、レオンさん曰くごくごく単純なもの。『黄泉帰り』で戻ってきた誰かが『アンテナ』となって狂気を振りまいているとしか考えられません。
 問題というか、今回の不幸は『黄泉帰り』が敵対的だったり悪意露わではなく、記憶や、ときに人間性や知性を残している操り人形だということです。自分が誰であるか、何を大切にしているか知りながら、大切な相手と寄り添うことで狂気を呼ぶ。残酷ですが効率的でしょう」
 ですが、と情報屋は続ける。ここからはレオンの伝言だ、と前置きをして。
「『ローレットが対応していてマジで良かった。してなかったら水面下に潜んでた爆弾は今の比じゃなかったぜ』」
 レオンの声音を真似ようとして、少しだけ裏返ったそれで情報屋は告げる。一縷の望みは途絶えていない。まだ、最悪には程遠いのだと。
「それで、皆さんに排除してほしい『黄泉帰り』ですが……天義首都近傍をねぐらにしている盗賊団、その一員です。彼らは一度、天義の騎士達によって壊滅寸前まで追い詰められてからは彼らは一度離散し、捕らえられた生き残りの一部は首都近くの収容所で農耕作業に従事させられていました。……首領の連れだった女、そして手練れ数名が黄泉帰りを果たしたようで、往時の勢いを取り戻した彼らは収容所を襲撃、と。ここまで話した限りでは、どう転んでも盗賊団に一片の道理もないのですが……おかしいと思いませんか?」
「おかしい、とは」
 情報屋の問いかけは唐突すぎる。イレギュラーズは首を傾げ、彼女の言葉の真意を測ろうとする。盗賊団が騎士に討伐される。首都周辺の治安を考えれば当然。生存者を徒に殺さなかったのは、なんらかの政治的な力か、神の慈悲を示す好例を作りたかったのだろう、とみられる。なら、首領が逃げ延びたのは? 侍らせた女が死んでいた理由は?
「実は、ですね。首領は元々、なにごともなければ隠棲する『予定』だったんですよ。彼は騎士団と取引を交わし、罪の軽い者達を生かす代わりに特に凶悪だった者達と、自分の女の首を差し出した。ですが女も、潮時だと考えていた『穏健派』だったことが分かっています」
 つまり?
 今、まさに暴虐を繰り広げようとしている首領は『原罪の呼び声』で凶暴化している状態で。
 連れ合いの女は、襲撃に加担しながらそんな自分を否定し続けている……そういうことか?
「オーダーは盗賊団の討伐。なお、脱走したメンバーも今回は命を断つ必要あり、と天義首脳部は決断しました」
 守るために切り捨てた者達のせいで、自分も、それらも失うという。
 ああ、なんと残酷で……人間は愚かだ。

GMコメント


 タイトルは「つみきざいく」と読みます。一時の感情で全部滅茶苦茶、台無しってことですね。

●成功条件
 盗賊団の全討伐。逃走者を出さずに鏖殺すること。

●盗賊団長ヘクセン
 天義の首都近辺を狩場として盗賊を率いていた男。だが、改心(と、天義首脳部は解釈している)して仲間の首を差し出すことで隠棲の身となり、罪状の浅い部下の命を救ったある意味『慈悲深い』男。
 原罪の呼び声によりその面影もなく、全て奪うか全て奪われるか、の2極思考に陥っている。武器はククリナイフの二刀流。
・EXFが非常に高い。とんでもなくしぶとい。そして『ミスをしない』。形容だが、実際にFBが低い。反応は低いが全体的に厄介。
・統率力に優れ、生存している限り全体の防御技術と特殊抵抗に+20。
・撹乱指揮(神特レ付:自分を中心に2レンジ、識別・CT増・大、命中増・小)
・螺旋斬り(物近範:流血、致命)
・囁き断ち(苦鳴・喪失・呪殺・必殺)

●『団長の女』イルーナ
 黄泉帰りの1人。本来はヘクセン同様、隠棲を望んだ穏健派である。
 自分のせいでヘクセンが狂っていることは承知のうえだが、彼を放置できないために加担している。
・銃による射撃メイン。常に『黄泉帰り団員×3』を侍らせている。
・プライダルエリア(物超ラ:万能・飛・不吉)
・空跳弾(神遠列:飛・ブレイク)

●黄泉帰り団員×15
 黄泉帰りを果たした、盗賊団でも特に札付きのワルだった連中。武器は様々、射程も様々。全員の通常攻撃に『毒』が付与されている。
 棍棒使いはさらに『飛』、術士は回復とBS回復を行い、銃使いは精神系BSを付与してくる。人数配分は不明。

●生身の団員×10
 ヘクセンが庇い、収容所にいた団員達。ヘクセン同様、原罪の呼び声で凶暴化。
 救出直後のため棍棒しか持たないが、『ショック』『暗闇』を付与し、何名かは『名乗り口上』と同一性能のスキルを使用できる。

●戦場
 天義首都近郊の森。見通しが悪く足場もよろしくなく、距離感を掴みづらい。
 何らかの対策を持たないと不意打ちを受ける確率が激増する。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <クレール・ドゥ・リュヌ>罪奇罪苦完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年05月29日 21時45分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
シグ・ローデッド(p3p000483)
『知識』の魔剣
ジェイク・太刀川(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
マルク・シリング(p3p001309)
ヴィクター・ランバート(p3p002402)
殲機
フィーゼ・クロイツ(p3p004320)
黒曜魔弓の魔人
無限乃 愛(p3p004443)
魔法少女インフィニティハートD
アルク・テンペリオン(p3p007030)
蒐集氷精

リプレイ

●彼はただ狂気のまま
 駆ける、駆ける、ひたすらに駆ける。
 盗賊団はそれがひとかたまりの生物になったかのように、急かされるように森の中を駆けていく。隠棲の身に落ちて、二度と返り咲くまいと考えた自分が今、何故急き立てられるように人を襲い、物を奪い、盗賊として湧き上がる歓喜に身を委ねているのだろうか。
「どうでもいいわな、ンなこと」
「……何だい?」
 ヘクセンは1人ごちると、傍らで問い返してきたイルーナに首を振った。大したことではないのだと。彼女は帰ってきてくれたのだ。仲間も揃った。もう疑問に思うことはない、もう恐れるものはない、欲求がそうと告げるままに奪えばいいのだ。襲えばいいのだ。全能感は偽りではない。今この時間に何の偽りもありはしない。
 嬌声を上げ、ククリナイフを振り上げたヘクセンの姿、その背中を見ていたイルーナの目は、酷く深い哀れみと恨みがましさを綯い交ぜにしたような色をしていた。
 ――こんなことを、誰が望んだもんか。アンタも、ワタシも、あいつらも、無意味になってしまうのか、と。

「……ふむ。成程、狂気とはかくも厄介な物か」
「同情の余地もねえが、自分の行いに狂わされてんなら世話ねえな」
 『『知識』の魔剣』シグ・ローデッド(p3p000483)は、剣の姿をとって『『幻狼』灰色狼』ジェイク・太刀川(p3p001103)の背に張り付かんばかりの距離でもって移動する。静寂と死の気配の濃い森のなかで、イレギュラーズは慎重に、それでいて素早く盗賊達を探し出すべく駆け回る。木々の葉擦れや風の音すらも肌を刺すような緊張感。ジェイクの全神経、全感覚が敵の存在を探っている。
 それにしても、とシグは思う。人の狂気というやつはどうしてこう度し難い行為に走らせるのか。制御できないからこその狂気なのか、と。
「なんつーか、聞いてるだけで気分が悪くなるような話っスね。でも結局人間なんてそんなもんっス」
 『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)はどこか冷めた様子でことの顛末を思い返す。少なくとも、話を聞いて気分を害さぬ者の方が少ないというものだ。それもまた道理だと嘯くことができる程度には、居合わせたイレギュラーズは修羅場をくぐったものが多いということでもある。ままならぬ話だ。
「切り捨てた相手のせいで狂わされるのか、因果応報だな」
 『今はただの氷精』アルク・テンペリオン(p3p007030)にとっては、人の感情の機微など特に興味があるわけでもない。さりとて、事実を並べればことの真理は理解できる。分かったところで、彼にとってはつまらぬ人間のつまらぬ感情に過ぎないわけで。
「慈悲深い……ね」
「改心なのか、我が身可愛さなのか……正直、判断は尽きかねるけど」
 『黒曜魔弓の魔人』フィーゼ・クロイツ(p3p004320)とマルク・シリング(p3p001309)、両者にとってもヘクセンに関する評価には違和感を抱えていた。無論、彼らの懸念通り、評価は詭弁とみるのが妥当だろう。『主の導きに触れていかな悪人も己を振り返り人道へ立ち返った』、とかなんとか。信心を集めるのに誂え向きのストーリーの出来上がりだ。その『物語』が容易く瓦解したのは笑い話だろうか?
「……逃走者を出さずに鏖殺か。難しい。如何に逃がさないか、が重要となる可能性が高いと判断する」
 『殲機』ヴィクター・ランバート(p3p002402)は己のギフトをフル回転させて四周を警戒し、仲間と歩調を合わせ前進する。些細な罠、敵の気配、怪しいものを片っ端から排除して、それでも相当数の盗賊を『鏖殺』は酷く困難が伴う。彼らに逃げる、とか戦わない、といった当然の思考が残っていれば、の話であるが……考え過ぎということはあるまい。
「彼奴らにそれだけの知恵が残っていれば、少しは知識の足しになるかもしれんが」
 シグは、ヴィクターの懸念を聞いてどこか嬉しげですらあった。否、この男の場合は純粋に『興味』が正しいか。
 ともあれ。狂奔も、計画性も、森の中という状況不利も、十分な距離をとって察知されればただの決死隊にすぎない。
「こっちを見てたかのように円陣組んで狙いに来てるッスね。包囲されてるけど、バラけてる分突破は楽……か?」
 葵の感知能力は、確かに円を描いて接近する複数の点を脳裏に示していた。森が彼らの領分ならば、これもまた十分に想定できた状況だ。ここまでは想定内。
「いや、違うな」
 だが、ジェイクの持つ危機を嗅ぎ分ける嗅覚、そして多岐にわたる感覚はより危険な可能性を割り出した。それはヴィクターも同じことで――。
『愛無き悪を撃ち貫く正義の暁光! 魔法少女インフィニティハート、ここに見参!』
 『魔法少女インフィニティハートH』無限乃 愛(p3p004443)は、おもむろに名乗りをあげると炸裂するピンク色の魔力で周囲を吹き飛ばした。……というか、ヴィクターとジェイクの視線から、真っ先に危険そうな方向へと最大射程でマジカルゲイザーをぶっ放したのだ。名乗った直後に真顔に戻る割り切りの良さといい、初撃にしてはド派手な一撃といい、緊迫感が台無しである。
「愛無き心の隙間に闇が入り込み悪に染まる、いつの世も変わりませんね。……貴女は特に、誰かに助けを求めている。そうですね?!」
 愛の芝居がかった指先が示したのは、イルーナ……がいるであろう方向に。愛は、助けを求める声なき声を聞き逃さなかったのだ。
 彼女の指摘に対し、本人がどう思ったかは定かではない。……定かではないが、愛が反応を確認するより早く、葵が背後にむけて赤いエネルギー体を叩き込んだのは事実である。
 四周から銃口が突き出され、我を狙えとばかりに近接武器持ちが駆けてくる。術士らしき姿は木々の合間に隠れ、円を描くように位置を入れ替える。
「イルーナに要らねえコト吹き込むんじゃねえよ。余計な事を考えねえ方が女は幸せになれるモンだぜ、違うか?」
 名乗りを上げる団員に混じり、神経を逆なでするような声が木の葉に擦れて響く。露骨に動きが変わった団員達を見れば位置も分かる。……イルーナの真逆の位置だ。
「女に狂わされた男が女を語るのか? 人間はこれだから」
 アルクは声の方向目掛け――ほんの一瞬、ジェイクと視線を交わしつつ――氷の針を打放つ。濃密な冷気を纏ったそれを鼻先で弾き飛ばすと、ヘクセンは笑いながら前進する。直後に降り注ぐ砲弾は、背後の部下こそ吹き飛ばすが、彼自身はむしろ手傷を楽しむかのように歩みを止めることはない。
 狂気の宴は、始まったばかりだ。

●女の心は度し難く
「頭目が囮になろうとするとは、随分と献身的なことだな?」
 シグはジェイクの背から離れると、姿を戻さぬままに烈陽剣を振り下ろす。狙いは名の知れた2人ではなく、周囲をかき回す部下達だ。都合25人の盗賊の群れなど、雑兵と呼ぶには多すぎる。
「頭数が多いうえに術士はコソコソ隠れてるなんて、姑息よね。炙り出してあげなくちゃ」
 フィーゼの魔槍が、不幸な盗賊の胴を深々と貫く。愛とシグの攻勢を受けていた相手は、流石に耐えきれなかったと見え、黒い泥へと変じて溶け消える。
 居並ぶイレギュラーズの技倆は確かだ。接近戦を挑まれれば多少なり苦戦は免れないが、それに対する彼らの回答は単純明快、『近付かれる前に掃討する』だった。
「術士がバラけてるっぽいのが嫌らしいッスね。いやに周到っつーか」
 葵は目と動き、そして装備などから判断し、『生きている』盗賊を狙ってボールを蹴り込む。術士らしき影が見えればそちらを優先するが、大技の乱発で息切れしては意味がない。ボールに弾き飛ばされた相手は消耗が激しかったようで、実にあっさりと地面に崩れ落ちた。
「足止めするにしても、四方から攻められたんじゃキリがないな。厄介な知恵ばかりは豊富な……っ!」
 毒づくアルクは、間合いに入ってきた盗賊を弾き飛ばし、直後、あらぬ方向へと自分が弾き飛ばされる番になったことに声を失った。
 イルーナの、相手すら定めない銃弾が己を弾いたと気付いた時にはすでに彼は盗賊達の包囲の中だ。
「危ない!」
 愛の叫びは、果たしてどの状況に関してのものだったのか。動きが乱れたアルクと囲んだ盗賊をまとめて弾き飛ばした彼女は、結果オーライとはいえアルクに狙いを向けてしまったことに背筋を凍らせた。……見返した彼の目に謝意を見出し、さらに愛を(彼女基準で)見出したのは多分間違いではあるまい。
「ヘクセンも厄介ですが、イルーナにかき回されるのも余りいい気はしませんね」
 マルクはアルクを始めとする仲間を絶えず癒やしながら、深呼吸とともに戦局を分析する。
 盗賊団の動きは十二分に計算されたものだ。包囲、撹乱、隊列を乱す行為。「砂蠍」には規模も実力も足元にも及ばぬとて、厄介なのは変わらない。
 現にイレギュラーズは想定通りの行動を少なからず封じられ、一同との相性の悪さからも苦戦は目に見えている。
 ……それが並の面々だったなら、いいようにあしらわれたかもしれない。
「マジカル……バスターっ!」
 愛の(そんな表現は一切なかったが)魔砲はハートを撒き散らしながら周囲を焼き払っていく。光芒すらも、血しぶきも、ハートの形に整形してしまうその一撃はかつて天義で不正義と断ぜられたものである。
 躊躇なく放てる相手、自らに躍りかかった最高のタイミングで、斜線上に集まった盗賊達を一撃の下に焼き払う。
「存外にしぶといが、それだけだ。逃げない集団兵など動きを邪魔し合う案山子でしかない」
 ヴィクターは手榴弾に耐え、応射してきた盗賊達にハニーコムガトリングを叩き込む。過大な消耗はしかし、Hades03の破壊力を最大限に発揮できるのならば安い対価ですらある。
「仲間を売ることでしか得られなかった安息の味はどうだったよ? 女まで売ってこのザマじゃ世話ねえな」
「あぁ、ありゃあいい女だよ。死んでまで俺に尽くしてくれるんだ。俺が好き放題するのが好きだってな。悪くねえ、悪くねえ……!」
 ジェイクは追い縋るヘクセンをあしらいつつ、後方へ向けて砲弾を落としていく。イルーナに大分好き放題かき回されたが、その上で敵首領格をあしらって、世界の強制力に頼るか否かの傷で収まっているのは奇跡的という他ない。
「私には分からんが、自分の欲のために蹴落として、戻ってきてはまたモノのように扱うお前さんのやり方は褒められたものではないだろう?」
 ……奇跡(てじな)には種がつきものだ。
 ジェイクがヘクセンの猛攻を耐え抜いたのは、シグによる妨害を受け、ヘクセンが実力をいくらも発揮できていなかったことが大きい。素の実力も大層なものだが、手にした技術が自由にならぬならイレギュラーズにとって敵と呼ぶには不十分だ。
「アンタ!」
「おっと。行かせねえッスよ」
 ヘクセンの窮地に焦りを露わにするイルーナは、足元に舞い込んだ青いコウモリを見逃した。
 葵が放ったエネルギー体は冷気を撒き散らして彼女に食らいつき、そのフットワークを殺しにかかった。続けざまに飛んできたアルクによる土塊の拳は、鈍った肉体には深く響く。
「精々苦しみながら逝って貰わないとね」
 魔弓を引き絞ったフィーゼの表情に、表立った敵意や殺意は感じられない。ただただ嫌悪感と哀れみを貼り付けただけのそれは、相手を路傍の石以下にしか見ていないという意思表示だ。
 盗賊団を束ねた男は、あっけないほどにあっさりと血の海に沈んでいく。立ち上がりかけた足元に転がった手榴弾が、最後の一歩を許さなかった。……残酷なまでに精緻な殺戮芸術。
 それをかばうことも出来ずに立ち尽くすイルーナは、銃をあらぬ方向へと打ち放ち、凍る足を引き剥がし、黒い泥を撒き散らしながら駆け回る。
 絶望と自己防衛反応が入り混じったことで、彼女の中で何か変化が起きたのだろうか? 兎角、先程までより動きの冴えが上がっている。
「……ふむ。やつを殺害したのは、我らだ。……しかしその遠因は…お前さんにもある」
 分かるかね? と問いかけるシグの視線に、イルーナは弾丸を持って応じた。敢えて受け止めたシグは、しかし軽くよろめくのみ。即座にマルクの癒やしが飛べば、その傷も塞がるだろう。
「君が彼を愛していたなら、凶行を止めるべきだろう。それができないのであれば、やはりそういう存在なのだ」
 ヴィクターに、敵対者にかける慈悲はない。だが、人たるものが愛する者を前にしてどう振る舞うべきか――それくらいは心得ている。そういう意味で、やはり殺されるべき相手だと判断した。
「同情はするがな。それは<月光人形>であるイルーナにじゃない」
 だからせめて、と言葉を切って、ジェイクは銃弾を打ち込んだ。『幻狼』の狼による口づけを冠した弾丸は、イルーナの姿をした月光人形の頭部を貫き、木にめり込んで止まる。
 ……彼の五感をざわめかせる敵意はない。森を舞台にした鏖殺劇は、ここに確かに幕を下ろしたのだ。
「もしかしたらアイツらが静かに過ごす、そんな未来が……」
 葵はひとり呟き、しかしその考えをすぐさま思考の底に放り込む。無理だ、と。
 安寧を求めることは間違いではなかったろうが、手段を間違えた男は何度やり直そうと、求めるものを取り違えるだけだ。
 ああ、さながらそれは。

 ――イルーナが最後まで触れられなかった『愛』のようだなどと。

成否

成功

MVP

シグ・ローデッド(p3p000483)
『知識』の魔剣

状態異常

フィーゼ・クロイツ(p3p004320) [重傷]
黒曜魔弓の魔人
アルク・テンペリオン(p3p007030) [重傷]
蒐集氷精

あとがき

 お疲れ様でした。
 敵の数も多く、森で、と非常に厳しい戦場でした。エネミーサーチ等も100mという制限があるので……それでも、これでも最小限の接敵リスクだったのは確かです。想定外のやり方ですが先手、打てたわけですので。
 細かいことは抜きにして、被害はそこそこ、勝利はしっかりもぎ取っていった皆さんの成果です。
 MVPは……はい。まあ、貴方がいなかったら接近して斬獲されて、でこの編成での勝ちの目がかなり薄くなるところでした。ただ感謝を。

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