PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ひかりさえしらない

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ここは、やみのそこ
 幻想(レガド・イルシオン)のはずれに、教会が管轄する孤児院『福音の家』がある。
 そこは、なんらかの理由で親を亡くした子どもたちが集められ、成人するまでを暮らす場所。
 その日も、まだあどけない子どもたちが、洗濯物を干しながらうわさ話に花を咲かせていた。
「ねえ、しってる? 世界中をめぐるサーカスが、もうすぐ幻想にもやってくるんだって」
「『シルク・ド・マントゥール』だろ」
「別名、『嘘吐きサーカス』って言われてる!」
「ウソなの? なんで?」
「……公演中に、いろんな事件が起きてるって。……大人たちが言ってた」
「えーっ。事件って? コワイこと?」
 そこへ、年長の少年がやってきて、一喝。
「こら! 口を動かす前に手を動かせ! 昼めし抜きにすんぞ!」
 きゃーっと洗濯物の影に隠れた子どものひとりが、べーっと舌を出す。
「昼めしったって、どうせスープ一杯だろ!」
 教会の管理下にあるとはいえ、暮らしが厳しいことには変わりなく。
 子どもたちは、いつもお腹を空かせているのだ。
「……そういえば、もうすぐ『灰色の王冠(グラオ・クローネ)』の日だね」
 痩せ細った少女が、遠く見晴るかす王宮を仰ぎつぶやいて。
「よせ。どうせ、俺たちには関係ない」
 年長の少年が、無遠慮に贅と財をぶちまけた建物を、憎々し気に睨みつける。
 かの地ではたびたび舞踏会がひらかれ、集まった有力貴族が絢爛豪華な宴を繰りひろげているという。
 ――眼がくらむような豪奢な城も。
 ――食べ尽くしても余りある料理も。
 きっと自分たちは、死ぬまで目にすることはない。
 聖職者たちが語ってくれた『灰色の王冠』のおとぎ話は、伝承の少女にささやかな幸福をもたらしたけれど。
「俺たちには、もう。『絆』なんてないんだから」

●福音の子らへ
「イレギュラーズのみなさん、いそぎの依頼なのです! いつもよりちょっと多めに、お手伝いをおねがいしたいのです!」
 ギルド・ローレットに響きわたった『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)の声を受け、興味をもった者たちが次々と集まりはじめる。
「こんかいの依頼は、中央大教会からじきじきに届いています」
 中央大教会といえば、幻想王都メフ・メフィートの中心部に位置する教会の総本山。
 教会勢力を束ねる女傑、『幻想大司教』イレーヌ・アルエがおわす場所としても知られている。
 誠実で寛容、意志も強く、善良と名高いイレーヌは、民政を省みない貴族と幻想国の在り方をよしとせず、過酷な状況にある民衆を物心両面から支えんと暗躍している。
 今回の依頼も、その暗躍の一端のようだ。

「中央大教会は『灰色の王冠(グラオ・クローネ)』の日のために、孤児院の子どもたちに贈り物を用意したいと考えているのです」
 しかし、いかに教会とはいえ、扱える財源には限りがある。
 すでにほとんどの資金を民衆の窮状対策に充てており、ほかに回すだけの余力はない。
 教会の聖職者たちも募金や援助の呼びかけなど手を尽くしてはいるが、効果があがっていないのが現状だ。
「そこで! イレギュラーズのみなさんに、援助資金の調達をお願いしたいのです!」
 資金の調達を行うのは、教会の威光が行き届く幻想国内のみに限る。
 嘘、偽り、脚色なく名目を伝えるのであれば、教会の名を出してOKだ。
 募金活動を行うも良し。
 地道に働くも良し。
 『果ての迷宮』で得た宝を売りさばくも良し。
 噂のサーカスのように、芸で金を稼いでも良い。
 ほかにも、イレギュラーズの扱う『非戦スキル』や『ギフト』を使えば、効率よく援助資金の調達ができるかもしれない。
 教会は、イレギュラーズの自由な発想と可能性に期待しているようだ。

 なお、幻想一般民の生活はひっ迫している。
 イレギュラーズの活動で支援をしてくれる市民がいたとしても、金額的には『ほんの気持ち』程度のものになるだろう。
 金があり余っているのは貴族や王宮ではあるが、彼らがなんの利もなく金を出すとは考えにくい。
 ――どこから、どうやって資金を調達するか。
 それを考えるのが、今回のイレギュラーズの腕の見せどころだ。

「それから、資金調達の協力者ということで、今回はみなさんも教会に提言ができるそうなのです。子どもたちへの贈り物のアイデアがあれば、積極的に教えてほしいそうですよ」
 ただし、用意できるのは、今回イレギュラーズが集めた資金内で調達できるものとなる。
 援助資金総額がすくなければ、用意できる品はそれなりに。
 多く資金を調達できれば、より多くの子どもたちに、よりよい贈り物を届けることができる。
「『大切なヒトは、そこに居て当たり前じゃない』。それがわかっている子どもたちだからこそ、あたたかな気持ちでその日を迎えてほしいと。ボクも、おもうのです」
 ユリーカは、そう告げて。
 改めて、今回の協力者を募った。

GMコメント

こんにちは、西方稔(にしかた・みのる)です。

幻想国内にて。
孤児院の子どもたちのため、援助資金を調達する依頼となります。


★依頼達成条件
・幻想国内で資金集めを行う。
※参加者のプレイングしだいで、集まる援助資金の総額が変わります。


プレイングには、以下をご記載ください。

【A】資金集めの方法(必須)
・幻想国内で、考えられうる資金調達法をお考えください。
 ただし、具体性・現実性に欠けるプレイングの場合、行動の成功率が下がります。
 場所や対象、活用するスキル等を、できるだけ明確にご記載ください。
 【参照】シナリオルール - 具体的に行動してみよう
 https://rev1.reversion.jp/manual/scenariorule

・本依頼は、教会の善意に基づいて運営されます。
 公序良俗に反する行動で資金集めを行った方に対しては、『悪名』が付与されます。


【B】贈り物の提案(任意)
 資金集めの協力者として、教会に提案できます。
 必ず採用されるわけではありませんが、提案した品が贈り物になるかもしれません。
 教会が求めているのは、『施設の子どもたち(大勢)にいきわたる贈り物』の案です。
 教会が用意できるのは、『イレギュラーズが集めた資金総額内で調達可能なもの』となります。


※『灰色の王冠(グラオ・クローネ)』については、こちらをご確認ください。
 【参照】Grau・Krone2018
 https://rev1.reversion.jp/page/graukrone2018


相談期間が短めとなっております。
出発日時をお確かめのうえ、ご参加ください。

それでは、よろしくお願いします。

  • ひかりさえしらないLv:2以下完了
  • GM名西方稔
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年03月22日 21時30分
  • 参加人数10/10人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (10人)

ルルクリィ(p3p000001)
断罪の竜精
チャンドラ=チャンドラー(p3p000268)
月の蝋燭
オクト=S=ゾディアックス(p3p001101)
紅蓮の毒蠍
陽陰・比(p3p001900)
光天水
高千穂 天満(p3p001909)
アマツカミ
秋嶋 渓(p3p002692)
体育会系魔法少女
アーデルトラウト・ローゼンクランツ(p3p004331)
シティー・メイド
札切 九郎(p3p004384)
純粋なクロ
ライア(p3p004430)
嘘憑き
栗梅・鴇(p3p004654)
金髪ヤンキーテクノマンサー

リプレイ

●灰冠
 商売知識に長けているからこそ、口先だけの理想論に金を出す貴族や富裕層など居ないであろうことを、『放蕩さん』陽陰・比(p3p001900)は理解していた。
 『純粋なクロ』札切 九郎(p3p004384)が『情報網』で協力してくれたおかげで、使えそうな劇場の情報は揃っている。
「ここからが商売人としての腕の見せ所ってね!」
 そう豪語し、比は王都の地図を手に劇場へ向かう。
 メモ帳には、交渉に際して押すポイントも書き留め準備万端。
 まずは、王都にある劇場へと足を運んだのだが――。
「助力したいのはやまやまだが、貸し出せる舞台がないのだ」
「ただイレギュラーズが出演するというだけでは、特に話題性があるとは思えませんわ」
「イメージが向上したとして、その後の商売繁盛の根拠は? 契約料不要とは、いかなる理由によるものかな」
 料金の要・不要以前に、信頼なくして契約はありえん、とあしらわれ。
 結局。
 公演許可、及び劇場周辺での売買許可交渉が成功したのは、最後に訪れたバルツァーレク領の劇場だった。
 まだ若い男性支配人は、比の説明を熱心に聞き入れ、言った。
「教会のご意向に賛同します。そしてあなた方の熱意が実を結ぶよう、我々もできうる限りの力添えをいたしましょう」
「良かった……! ありがとうございます、助かります!」
 喜ぶ比に、「ただし、大劇場をお貸しすることはできません」と言葉を続ける。
「そばにある野外の小劇場でしたら、どうぞ自由にお使いください」
 下見した劇場は野外の舞台とあって傷みが激しく、現在は使われていないらしい。
 大劇場に比べれば小さなものだが、イレギュラーズ一座が公演や出店を広げるには、ほど良い規模で。
 比は次の行動に移るべく、急ぎ仲間たちへ報告に向かった。

●暗中
 劇場が決まり、仲間たちが宣伝に駆けまわるなか。
 『紅蓮の毒蠍』オクト=S=ゾディアックス(p3p001101)は、パトロン探しに奔走していた。
 狙うは、自動発動型ギフト『災いの赤星(メルム・アンターレス)』――本能や欲望、願望などあらゆる「望み」を揺さぶり起こす力を使っての大口支援。
「金が有り余っていそうな大貴族。……となると、やはりアーベントロート派か、フィッツバルディ派か」
 ――己が願望のみを優先する彼ら、彼女らから、如何に資金を抽出させるか。
 勝負をかけるべく、アーベントロート領の老貴族へ面会を申しこんだ。
 資産家ではあるが、気難しいと評判の老人。
 進言が通るか否かは、己の弁舌にもかかっている。
「用件は聞いた。次の予定までの空き時間をやろう。話せ」
 現れた高圧的な老人を前に、オクトは臆することなく一礼し、話はじめる。
「孤児院に対する寄付は、貴殿の利益に繋がる先行投資。教会に通じる支援は、周囲に自身の信仰心の高さを知らしめる」
「当然、その程度の手は打ってある。今さら始めるまでもない」
「ならば、今以上に子どもたちに十分な教育を施せば、いずれ『果ての迷宮』を制覇する実力者や、家に仕えるに相応しい優秀な『人財』を育てられる可能性も高まるだろう」
「あるかどうかもわからぬ可能性に賭けよと?」
「森の中から木を探し、砂丘の中から砂金を探すよりも有力だ。はした金で栄光と繁栄の可能性が買えるのならば、悪くはないのではないか」
 その言葉に、老人は鋭く交渉人を睨みつけた。
 蓋つきの懐中時計をパチンと閉ざし、背を向ける。
「良いだろう。望み通り、『はした金』をくれてやる。それで貴様が二度と屋敷を訪れぬというのなら、安いものだ」
 客間を出る老人を見送り。
 オクトは唇を噛みしめ、頭をさげるしかなかった。

 一方、同じくパトロンを探していた『天津神の末裔』高千穂 天満(p3p001909)はフィッツバルディ領に居た。
 天満はギフト『天神様の言う通り』――二者択一の選択において、無根拠に選んだ選択が正しい選択肢である確率が上がる力を駆使し、直感で訪問する貴族を選んでいたのだ。
 花咲く庭の貴族屋敷が目に入り、家主への目通りを願えば、対応すべく現れたのは年若い貴婦人だった。
 笑みの美しい女であったが、夫の留守を預かる女主人とあって、その眼光は鋭い。
「ご訪問の目的は?」
「教会からの依頼により、孤児達への贈り物のために資金援助を求めて来た」
「国の未来を担う子どもたちへの奉仕、素晴らしいですわ」
 わたくしも、息子たちを連れて良く教会へ行きますのよと女が微笑む。
「賛同いただけるのであれば、ぜひ支援を頼めぬか」
「共感はいたします。けれど、わたくしの一存で、家の資金を動かすことはできませんの」
「さしつかえなければ、夫君の任を聞いても?」
「貴族院議員ですわ。お国がこの状態ですから。日々忙しくしておりまして」
「議員殿であるならなおのこと。今回の要望に応えれば、教会のみならず、ギルドにも恩を売ることができよう」
 孤児の数は多いが、貴族の小遣い程度の援助で贈り物は賄える。
 それだけの掛け捨てで、ギルドと教会の心象を保てるならのだ。
 割のいいギャンブルと思い支援を頼めぬかと続ければ、貴婦人は眉根を寄せ、眼を細めた。
「『ギャンブル』だなんて。貴女、品がなくてよ」
 礼を欠いたかと手を握り締めれば、夫人は紅い唇を曲げて。
「これは『投資』ですわ。確たる未来を手に入れるための下準備。そうでしょう?」
 頷けば、女は妖艶な笑みを浮かべ、告げた。
「わたくしの私費から、いくらか融通いたしましょう。これも世のため、夫のため。それで、いくらご要り用なんですの?」
 試しに多めに吹っ掛けたところ、貴婦人は即決でOKを出した。

●夢中
 複数の貴族からの後ろ盾を得たことで、事前準備にも弾みがついた。
 公演前から噂がひろまり、印刷屋がチラシやチケット作りを無償で請け負ってくれたのだ(もちろん、配布物の中に印刷屋の名前を掲載することを条件に)。
「一座でお金を稼ぐのも目的ですが……。市民の皆様に仕えるシティーメイドとして、娯楽を提供するという形でご奉仕できればとも思っております」
 『シティー・メイド』アーデルトラウト・ローゼンクランツ(p3p004331)が思いの丈を伝えながらチラシを配り歩けば、娯楽に飢えた市民たちが喜んで持っていった。
 さらに公演を盛りあげようと、『嘘憑き』ライア(p3p004430)は商店街などにも足を運んでまわった。
「売り上げは寄付金となるが、こういった実績は今後の経営にプラスになることが多い」
 ライアがそう演説し、刷りあがったチラシを手渡していく。
 ――数時後。
「一座の最新情報や出店のご相談など、わたくしが承りますわ」
 相談窓口役の『月の蝋燭』チャンドラ=チャンドラー(p3p000268)の元には、出店希望の者たちが何人も足を運び、次々と相談を進めていた。
 一方、同じく出店予定の『金髪ヤンキーテクノマンサー』栗梅・鴇(p3p004654)は。
「あたしがしてやれることっつったら、修理くらいだし。本来、食い扶持は自分の力で稼ぐもんだしな」
 ボロボロの野外劇場にかかりきりで、大規模修理を行っていた。
 公演が安全に実施できるよう補強した上で、孤児院の子どもたちを招き、飾りつけやペイントを依頼する。
 イメージしたのは、グラオ・クローネの言い伝えを想起させる深緑と大樹の情景。
 それぞれ、できる限りの手は尽くした。
 あとは、公演当日に力を尽くすのみ――。

●天照
 当日は、朝から快晴。
 クチコミやチラシの効果もあって、市民から貴族まで、大勢の客が劇場を訪れていた。
 想像以上の来客に、来場者受付にあたっていたチャンドラも嬉しい悲鳴だ。
「今日は一日、わたくしなりにせいいっぱい、『銭勘定』させていただきますわ」
 円滑な運営には裏方の働きが欠かせないと、張りきって仕事に勤しんでいる。
 そうして入場した客たちがまず耳にしたのは、舞台に立つ『断罪の竜精』ルルクリィ(p3p000001)がつま弾く、もてなしの序曲。
「人間たち、よく来たわね。精々楽しんでいきなさい」
 ――これから始まる芸のもとに、より多くの人が集うように。
 彼らの心を引きこみ、惹きつけ、掴もうと、惜しみなく歌唱と演奏を披露していく。
 舞台のそばには、珈琲、紅茶、ホットチョコレート、ドーナッツなどの飲食店が並ぶ。
 売り上げは孤児院へ寄付されるとあって、客は普段の買い物と同じように、気軽に金を落としていく。
 出店の中には、大きな字で『修理店』と書かれた看板を掲げた鴇の店もあった。
 会場内のあちこちに、『いらない工業品引き取ります』『おもちゃの修理承ります』といった張り紙が貼られ、興味をもった客が次々と壊れた品を持ちこんでくる。
 時計等を持ちこむ市民に紛れ現れたのは、身なりの良い、貴族の侍従らしき男だった。
「古い型の車椅子です。直せますか?」
 デザイン物として作られたため見目は美しいが、機構が頼りなく、使っているうちに壊れてしまったらしい。
「元通りに直しても、強度が心配だ……です。時間をもらえるなら、やってみますケド。少しいじってもいい……良いですか?」
 侍従はたどたどしい口調に微笑みながらも、一点だけと言い添えた。
「できる限り、装飾はそのままに。その他はご随意に」

 舞台上のルルクリィが、異世界の姿を夢想曲としてリュートを奏でた後。
 演目を引き継いだのは、真っ黒ウサギの獣人・九郎だった。
(ギフトをこういう形で使うのは、今回が初めてです。不安ですが……孤児院の皆様のためにも、頑張ります!)
 緊張を自覚しながらも耳の先からつま先まで優雅に一礼し、小柄な身体で舞台上を駆けまわりる。
 手にして掲げ見せて回ったのは、ひとそろいのトランプだ。
「どなたか、手品のお手伝いをお願いできますか? そこの、疑り深そうな紳士。――そうです、貴方です! どうでしょう、挑戦してみませんか?」
 いかにも頑固おやじといった風情の男性を舞台に招き、手渡したトランプの束をシャッフルしてもらう。
「では、貴方のお好きなカードを一枚、教えてください」
「よーし、ダイヤのエースだ!」
 細工ができないよう男性が持ったままのトランプから、九郎がそっと、一枚をピックアップして。
「どうぞ。ご確認ください」
 伏せたまま札を手渡し、男性が確認する。
「うぬっ!」
 うめいた後、観客たちにも見えるよう、掲げ見せたカードは『ダイヤのエース』!
 わあっと歓声と拍手が沸き起こり、自分たちにもやらせてくれと、次々と手が挙がる。

 手品の興奮冷めやらぬなか。
 降りた幕の前でルルクリィが歌い紡ぐのは、だれもが憧れる英雄の背中を語った譚詩曲。
 軽快な旋律に促されるよう舞台に駆けこんできたのは、少年風の衣装をまとった秋嶋 渓(p3p002692)だった。
 披露するのは、全身を使った演舞。
 続いて、たっぷりと布を使った令嬢風の衣装をひるがえし、天満が紙吹雪の舞う舞台に進み出てくる。
 手をとり舞い踊る様子から、二人は親しい仲らしい。
 そこへ、軍服を身に着けたオクトが乱入。
 剣を抜き、有無を言わさず天満を連れ去ろうとする。
 次の瞬間、渓が手にしていた布をなびかせ全身を覆い隠し、早着替えで一瞬にして魔法少女風コスチュームに変身!
「誰かのために、全力で! 総てを照らす、光であるために!」
 愛らしくも勇ましい衣装をまとい、側転やバク転を織り交ぜた演舞で魅せながら、剣持つオクトを圧倒していく。
 『通りすがりのファイター!』という名のギフトは、一挙一動が格闘ゲームの様なエフェクトになり、傍から見ていると格好良くなる。というもの。
 駆けまわる渓の動きはだれの眼にも華々しく映り、それだけで観客たちを魅了した。
 凛々しい少女の舞踏に、割れんばかりの拍手が響きわたり。
 かくして邪魔ものは舞台袖へと消え、渓と天満も手を取りあい、次の演目へと舞台を譲った。

 ルルクリィは続いて、今なお紡がれる特異点座標の物語を狂詩曲にこめた。
 アップテンポの旋律に導かれ舞台にあがったのは、メイド姿のアーデルトラウト。
 舞台端に小道具の空き缶を並べ、自身は舞台上の最も遠い地点に位置どり、ひと缶、ひと缶を拳銃で撃ち抜いていく。
 観客たちにも見えるよう台座を移動させ、銃創を正面から見せれば、どれも正確にど真ん中を撃ち抜いていることがわかり、拍手が巻き起こる。
 次に用意されたのは、修理店をひらいていた鴇が呼びかけ集めた廃材の山だった。
「この廃材は、相応の重量があります。試しに持ってくださる方はいませんか」
 呼びかければ、力自慢の男性職人が舞台にあがり、廃材の入った箱を抱えあげようとする。
「どっせい!」
 掛け声とともに箱はなんとか持ちあげられたが、持つと歩くでは別の話。
 舞台をわずかに移動しただけで息をきらし、ギブアップ。
「今度は、わたくしが。メイド力(ちから)で持ちあげてみせます」
 告げるなり、アーデルトラウトが片腕で軽々と箱を持ちあげて。
 そのまま舞台に据え付けられた階段を降り、飲食店の出店の前を横切り、それぞれの店を宣伝。
 最後に、鴇の店先に箱を降ろした。
 修理の仕事をしながら様子を見ていた鴇が、苦笑しながら観客たちに手を振って。
 アーデルトラウトは改めて一礼し、言った。
「子どもは国の宝です。その未来を守るのも、シティーメイドとしてのお仕事であると自負しております」
 本日お楽しみいただけましたなら、どうぞご寄付をと呼びかけ、舞台は次の演目へ。

 トリを飾るのは、イレギュラーズ一座の発起人ライア。
「未来ある子どもたちには希望を見てほしいね。是非とも。あぁ、ワタシはうそつきだが、これは『本音』さ」
 朗々とした語りから、誰もが知るグラオ・クローネのお伽噺を演じはじめる。
 ――それは、深緑の大樹ファルカウと共に生きたと言われる、『最初の少女』の物語。
 ある時は、大樹として。
 ある時は、少女として。
 ギフト『嘘憑き(バケノカワ)』――自分が『こうなりたい』と願った姿に変装できる力と、持ち前の演技スキルを駆使し、迫真の一人芝居を続ける。
 芝居に彩りを添えるのは、ルルクリィの哀歌だ。
 儚げなリュートの旋律に淡いコーラスを交え、孤児院の子どもたちの不安と悲しみを物語に重ねあわせる。
 偉大なる大樹は願った。
「大樹の力をしても、振り払えぬ呪いは絶大でも。可哀そうな少女の眼が、なにかを映せるように。可哀そうな少女の舌が、甘さを感じられるように……!」
 僅かに緩んだ制約は、少女に同胞の存在を許した。
 舞台に駆けあがり少女役のライアを囲ったのは、ろくに演技も知らない孤児院の少年少女たちだ。
 ――少女の周囲に、いつしか寄り添ってくれるようになった者たち。
 孤独を知る同胞たちに、少女は灰色の王冠を渡して。
 冠を被った子らの顔には、次々と笑顔が広がっていく。
「終曲は、そうね――」
 ルルクリィが呟き、物語の終わりに、優しく、子守唄を歌いあげる。
 誰もが、一度は聴いたことのある歌を。
 誰もが、幼かったころを想い出せるように。
 舞台上の子どもたち、全員が心をひらくように。
(いつもならこんなこと、絶対にしないのだけれど――)
 この場を訪れた者たちにとって。
 今日が特別な、忘れられない一日となるように願って。

 公演が終わるころには、夜の帳が降り始めていて。
 劇場を訪れた客がひとり、またひとりを、帰途につくなか、修理店の前にパトロンの老貴族が立っていた。
「車椅子は」
 不躾な物言いに眉根を寄せるも、鴇は修理した品を老人の前に出して。
「これ、元の素材が悪くてさ。加重がかかるところを重点的に強化した……しておきました。総重量は増えたけど、実用に耐えるようにはなったと思……います」
「磨いたのか」
「え? あ、ハイ」
 車椅子は草花の紋様をあしらった細工が美しく、鴇は修理ついでに、隅々まで磨きあげていた。
 そのデザインから、おそらく女性が使うものと判断したからだ。
 返事を聞き、老貴族は無言できびすを返した。
「貴女の仕事ぶりが、お気に召したようです」
 つき従っていた侍従は、そう礼を告げて。
 修理代にしては多すぎる報酬を手渡し、車椅子を押しながら去っていった。

 寄付金と公演の収益は、その日のうちに教会へと納められ。
 10人の意見を集約した意見書に添って、グラオ・クローネ当日に孤児院『福音の家』へと届けられたのは――。

●慈雨
「ノートだ! 鉛筆もある!」
「読み書きの本もあるよー!」
「こっちにはトランプもあるわ!」
「百科事典もあるぞ! 色付きのぶっといやつ!」
 大判の図鑑を囲み、孤児院の子どもたちが頭を寄せあって。
 同じく届けられた辞書を使って、さっそく勉強会がはじまっている。
 はしゃぐ年下の子らをよそに、年長の少年はひとり、果樹の種が詰まった革袋を手に立っていた。
 孤児院に届けられた贈り物は、先日出会ったイレギュラーズたちが選んだもので、国内のその他の施設にも届けられているという。
 ――明るくて暖かい、スポットライトの下に手招いてくれた者たち。
 手伝いをするばかりで、ろくに言葉を交わすことはできなかったけれど。
 ――『家族』とはまた違う、別の繋がり。
 真っ暗闇だった未来に、わずかに光がさしたように思えて。
 手の内にある種に、自分たちの姿を重ねる。
 何の種かは、聞いていない。
「ちゃんと咲くかな。……見てみたいな」
 さっそく皆で種をまこうと、少年は福音の子らへ呼びかけた。

 いつか、イレギュラーズが孤児院を訪れることがあったなら。
 種と自分たちが、どれだけ成長したか。
 伝えられますように――。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

長らくお待たせしてしまい、大変申し訳ありませんでした。



任務遂行、おつかれさまです。

陽陰・比へ 。
『福音の家』を管轄する教会より、称号を与えます。

あめつちに、恵みもたらす光雨に寄せて。

――【光天水(こうてんすい)】。

PAGETOPPAGEBOTTOM