PandoraPartyProject

シナリオ詳細

おはよう、そして、おやすみ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●巨影
 霧の立ち込める山がある。
 斜面から生える木々の密度が高い森を有するそこは、元より悪い視界に灰色を加える事で、見通しとしては限りなくゼロに近くなっていた。
 この時期、そうなるのは良くあることとして付近の住人は認識していて、
「さいあく」
 通常なら立ち入らないそこには、しかし、女が一人居た。
 湿気で水を帯びた前髪が貼り付いて鬱陶しい。そんなことを思いながら女は歩き、大きな溜め息を吐いて、
「……やな仕事ね」
 自然と空いた肺に入り込む空気は、濃霧特有の臭さがあって不愉快だ。
 歩く度に、落ちた枝や草の先が足首を擽って来てやりづらい。
 ……やな仕事だわ。
 思うが、金が絡む仕事だ。受けたのは自分で、投げ出すには少し勿体ない前金も貰っている。
 だけど。
「だけど、流石にこれはどうなのかしら」
 森を抜け、地面が切り立った崖となった縁、そこから見える光景に女は眉をしかめた。
 ーー化物だ。
 端的にそう表現し、決して誇張ではないと思う存在がそこに居る。
 まず、崖下は大きな道だ。
 こちら側と、向こう側。それぞれに崖があり、その間に荒くれた通路がある。
 人が通るように作られたわけではないそこは、自然となったのかコイツが作ったのか、判然とはしない。
「5m、ってとこか」
 下の地面から崖の上までの目算だ。
 そして、地上5mの位置に立つ女の目の前を、二足歩行の化物が通りすぎていった。
「巨大が過ぎるわよ、有り得ないわね」
 有り得ている。認めたくはないが、仕方ない。
「お仕事、するわ」
 背に担いで居た刀を手に、鞘に納めたままのそれを振りかぶりながら飛ぶ。
「ーー!」
 浮遊感から、重力に引き落とされる感覚を得ながら行く。
 目標は歩く化物の背、その中間に思い切り叩き付けた。
 ……バカ硬いわ。
 手に戻る反動は強い。加えて、音は響かずに打点が震えることもない。
 つまり、その表面から内部まで、密度が相当に濃いのが分かる。
「じゃあ、上ね」
 化物の背は岩の様に荒だっていて、手を足を引っ掻けるには困らない。
 だからそれを頼りに登り、目指すのは生物としてあるべき重要な急所だ。
 首の付け根、頭を支える駆動部分。
 そこならあるいは、と、思ったのだが。
「ダメかー」
 見た感じは背中と同じだ。念のためぶっ叩いてみるが、返る感触はやはり同じで、次いで頭の天辺へ向かう。
「うわ」
 と。
 足を頭へ掛けた瞬間、足場が落ちた。
 いや、化物が前のめりになったと言う方が正しい。
 頼りを失くした体は、化物を追うように落ちていく。
「……攻撃が効いた?」
 いや、背中と首への打撃で、この巨体が倒れるわけが無い。
 だとすれば、
「四足歩行ってことかな……!」
 言って、その通りの光景がうっすらと見えた。
 前足が地面に着き、固定されたそこへ自分は落ちていく。
 ので、頭へ着地。膝を屈伸させ、伸ばす反動で化物の正面から遠くなるように飛ぶ。
「真正面からなら、弱点探れーー」
 空中で反転し、改めて向き直ろうとした女の前に、壁が突き立っていた。

●調査結果
「こんな話を、知っているかい?」
 ギルドローレット、その中のカウンターに前に立った『黒猫の』ショウ(p3n000005)は、集まったイレギュラーズを前にして言葉を作った。
 知っているだろうか、と。再度の前置きを入れて。
「人里離れた山に、ドラゴンが住んでいる、という、ある種伝説の様な話を、だ」
 それは、幻想のとある地方に、古くから細々と伝わっていた話だ。
 出自も根拠も不明の話は、今にしてしまえば子供への戒めに使うくらいしか活用方法は見出だせないだろう。
「それがただの伝説なら、だ」
 そう言葉を作るということは、そうではないと言うことだ。
 イレギュラーズでも、そういう存在が関与する仕事ならば緊張感も増す。
「つまり、ドラゴンが実際にいるのか……?」
「ああ。いや、正確にはドラゴンというより、巨大な爬虫類と言う方が正しいかもしれない」
 頷いたショウが取り出すのは、いくつかの書面だった。
 ざっと書かれた一枚には、対象の姿と思わしきイラストがあって、それはまるで、
「……岩石?」
 大きな岩山の様だった。
 よく観察すれば、それは胴体で、下側からは太い幹の様な四足が生えていると分かる。
「どうやら長い間眠っていたのが、最近起きたようだね。その絵では四足だが、基本は二足だと、調査してもらった人から報告が入ってる。ほんとはもう少し探る予定だったんだけど……コイツにやられてしまってね」
「やられた? それは、つまりーー」
 死んだのか。
 言葉に最悪の予感がして、しかしショウは苦笑しながら首を横に降る。
「大丈夫、優秀な傭兵だ。致命傷は避けてる」
 まあ随分と凹んでいたが、とは胸中に納め、いいかい? とショウは言う。
「いいかい、みんな。調査に由れば、この敵は全体的に硬い。特に背中は分厚い岩山と変わらないから、物理で破壊するのは現実的じゃないだろう。比較的柔らかそうに見えるのは腹、各所脚の裏で、予測としてあり得るのは目、口内等の体内だ」
 それから違う紙へ変え、次の情報を伝える。
「二足の時は、移動速度は遅い。巨体故に一歩の距離は大きいが、挙動が遅いんだ。しかし、四足になると化ける。傭兵の彼女が反応出来なかった程の突進があると考えてくれ」
 その他、脅威となり得そうな動きとしては、地面を蹴り上げて土石を飛ばす動き。歩く為の踏み込み。
 見た目通りの防御力と耐久力はあるだろう。
「この相手を、仮称で岩石竜と呼ぶ。ここで止めておかないと、移動経路にぶつかる集落や街に被害が出るから、君たちで岩石竜を止めてくれ」
 よろしく頼むよ、と。
 そう笑ったショウを背にして、イレギュラーズ達は出立した。

GMコメント

 お久しぶりの方お久しぶりです。
 初めましての方は初めまして、よろしくお願いいたします。

 ユズキです。

 でかいモンスターを倒しましょうと言うオーソドックスな依頼です。

●情報精度
 Aです。
 OPや補足にある通りです。

●戦場
 霧の晴れた山を背後に、開けた草原地帯。

●依頼達成条件
 岩石竜の撃破。

●敵・ポイント
 岩石竜は二足と四足の時で動きが変わります。
 二足の時は地面を蹴って弾いた土石をR4まで貫通してきます。
 四足の時はR2までを高命中の突進をしてきます。
 どちらも関係なく行うのがR1までの踏み潰しです。

 それでは、令和でも皆様のプレイングをお待ちしてます。
 よろしくお願いいたします。

  • おはよう、そして、おやすみ 完了
  • GM名ユズキ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年05月10日 23時30分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
如月 ユウ(p3p000205)
浄謐たるセルリアン・ブルー
ヨハナ・ゲールマン・ハラタ(p3p000638)
自称未来人
ジェイク・太刀川(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
ジョセフ・ハイマン(p3p002258)
異端審問官
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
朱鬼
リーゼロッテ=ブロスフェルト(p3p003929)
ピオニー・パープルの魔女
ェクセレリァス・アルケラシス・ヴィルフェリゥム(p3p005156)
天棲鉱龍

リプレイ


「ハイっ、ではですね、皆さんで工事と行きましょう!」
 土木工事ですよ、わぁ泥まみれですねっ! と、『自称未来人』ヨハナ・ゲールマン・ハラタ(p3p000638)が言う。
 現在彼女らがいるのは、陽の光りを青々と映す山脈、それを望む開けた草原のど真ん中だ。
「いやぁ……急拵えとはいえ、結構無茶ですね……?」
「気休め程度でも、無いよりはマシだろ」
 その大地に、山に対して垂直の線を掘る。所謂、塹壕と、身を隠すためのスペースを作るのだ。
 筆頭として従事する『『幻狼』灰色狼』ジェイク・太刀川(p3p001103)は、ヨハナの声に頷きつつ動きを止めない。
 草原の土は柔らかく、掘るに困らないが、しかし。
「柔らかすぎるか」
 情報にある土石の飛来が心配だ。深く掘りすぎると、爆ぜた土砂に埋められる可能性もある。
「ですねっ! 精々、後衛が問題なく使用出来て、突撃からの避難と直線で来る土石への保険と、そう思う方が現実的ですっ」
 故にヨハナの指示は分かりやすい。
 人、半分程の深さと奥行き。横への幅としては少し余裕を作って置いて、という所だ。
「わたしの盾になるものだからね、しっかりやるわよ!」
 指揮下で動く『ピオニー・パープルの魔女』リーゼロッテ=ブロスフェルト(p3p003929)としても、その方針はありがたい。
 ……力仕事は苦手なのだわ。
 フィジカルよりマジカル。前へ出て勇猛に立ち回るより、遠くから火力で押すのが自身の役割だと、そう自覚している。
 だから塹壕作りは一生懸命に、ただし熱中しすぎない程々として、
「リーゼロッテさんっ、ばっちりです!」
「えっ、ああっ、そうね、そうなの」
 準備の完了として呼ばれた名前に、彼女は大地へ登る。
 ヨハナの飛ばしたファミリアーがターゲットを捕捉し、いよいよ出迎えの時を待つだけだ。そうなる直前の、まだ気の緩みを許される時間に。
「……名前の被りは心臓に悪いわね……」
 令嬢の顔が、脳内でちらついていた。


 山から、小山が生まれる所を見た。
 まだ遠目で、しかし足踏みの震動が足元を揺らす、その感覚を味わいながら、その瞬間から目を逸らせない。
「うふふふ、なんとまあ、まあ! よくもここまで育ったものだなぁ! こうも大きいと、ふふ、何を踏み潰したとて気にも止まらぬだろう、ああ、我々が虫を踏み潰す様なモノだね!」
 『精狂者』ジョセフ・ハイマン(p3p002258)のテンションが高い。それを、横目に『浄謐たるセルリアン・ブルー』如月 ユウ(p3p000205)は見て、小さく息を吐いた。
「面倒ね……移動経路に街や集落さえ無ければ、放置で良かったでしょうに……」
 大仕事だと、そう思う。なにせ大きく、固く、取れる戦法も限られてしまう。それになによりも、だ。
 ……回復は私だけ、だものね。
 責任重大なポジションだと思う。何せ全体を見て、適宜回復を送り、倒れないように支えなければならない。パンドラがあると言ってもそれは基本的に最終手段だし、頼りにすべきものでもない。
「距離を考えないとね」
 そう呟いて、見上げるのは直上。
 空にある二つの影だ。

 高い。
 空に上がり、巨影の顔くらいの位置へ滞空して、『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)がまず抱いた感想だ。
 なにせ地上約6mから7mと言った所。戦闘行為をするには少し、いやかなり不利と言える。
「……揺れるね」
 『天棲鉱龍』ェクセレリァス・アルケラシス・ヴィルフェリゥム(p3p005156)が言うように、地上と違って風の影響をモロに受ける位置だ。体を空中で固定する為に使う意識で、その他のポテンシャルが上手く発揮され難い。
「四足の高さなら、もう少し上手く動けるかもしれませんの」
 とはいえ、スタートは二足だ。この高度で出来ることを、やっていかなければ。
 一抹の不安が残る二人の前に、やがて、それは近付いて来る。


 ズシンと響く足音に、見上げる巨躯は首に痛い。
 頭の先から足の爪先までを眺め、『朱鬼』雪之丞は一つ頷く。
「竜と聞き及び期待してみましたが、どうやら、大きな蜥蜴のようでございますね。しかしなるほど、その点以外は呼び名通りの硬度なのでしょう」
 ズシン。足踏みする動きで発生した風圧に前髪を散らされた彼女は、表情を変えないままに刀の柄を握る。
「では」
 踏み出し、刃を抜いて、地を蹴る。
「先手と参ります」
 行くのは向かって左、岩石竜の右足だ。
 事前の作戦会議として狙いを絞ると決めていて、だからそれに沿って行動し、
「ーー!」
 足を迂回するように裏手へ回り、肉肌が見えるそこへ一閃した。
「柔らかい、とは、言い難く」
 刃の通りが悪いと、手応えに雪之丞は思う。だが出血は見えるし、効果はある。
 それならば後は、重ねていけばいいのだ。
「それすなわち愛……!」
 斬り抜ける雪之丞と入れ替わりにジョセフが足裏に回る。鉄仮面の視界から見えるのは開いた肉の裂け目だ。
「苦痛と愉悦。痛め付け、痛め付けられ、残る印と痕。ああそれこそ我が愛! 私は愛をもたらそう……!」
「……高揚で、ございますね」
 つまりテンション高めだ。しかしやることは至極冷静で、握った拳を縦にしてから肉の裂け目へと突き込む。
 ぐちゃりと音を鳴らして、生温い肉の中、指を離すように手を開く。そうして一拍、内側を引き摺る様にして引き抜いた。
「愛である……!」
 続けて逆の拳。同じようにして突き、開いて、
「お」
 ガクンと体が引っ張られた。
「おお?」
 上にだ。足が上げられている。突っ込んだ拳は肉の中、動かす為に固められた筋肉で引き抜けない。
 だから。
「ぐはっ!」
 踏み下ろされる動きに、ジョセフは吹き飛ばされた。

 地上のテンションがあれこれしている間の空中、岩石竜の顔辺りでも、奮闘がある。
「……無視ですの!?」
 ふよふよと、注意を引く為に動く、ノリアだ。わかりやすく目の前を泳ぎ、ひらひらと揺蕩う長い尾をちらつかせ、さあどうだと、気になるだろうと、そう思ったのだが。
 ……完璧なシカトですのよ!
 普通、人だって目の前をブンブンする虫を鬱陶しがるものだろうに、このモンスターは意に介さないらしい。
「いつもは食べられない為に躱してきたけど、今は口も開いてもらえないことに寂しさがありますの……!」
 しかしどうするか。反応無いので、ノリアは目の前で堂々と思案をする。
「あ」
 と、そういえば、と上を見る。ェクセレリァスが、岩石竜の頭から更に上、40m程上に居たはずだ。そこからの攻撃が、何故か来ない。
「……?」
 いや、正しくない。
「狙えないだってーー!」
 正確には、攻撃があらぬ方向に行っている、だ。
 両手に抱えた巨砲を、真下、岩石竜の天辺に向け、黒光の一撃を放っている。が、その照準は風でブレ、飛行の代償として精度をグンッと落としていた。
「攻撃されないけど、攻撃もしにくいって、どうなのかな」
 現状、空中戦は良いとこ無しだ。攻撃もそうだし、脅威に見られていないため注意も引きずらい。
 想像していたよりも、空に上がるのは、非効率的だったかもしれない。


「わーおすごいっ! これはもうモンスターをハンティングですね剥ぎ取りが楽しみうひゃあでっかいっ! これは今晩お布団濡れますよね、ええ、おねしょで!」
「いやテンション高すぎなのだわ……」
「終わったら肉をステーキにして食ってみよう、剥ぎ取りついでだ」
「あんなの見て余裕よねあなた達ヤバイわ!」
 塹壕組、ヨハナとジェイクの言葉にリーゼロッテはツッコミつつ、羽ペンを手にする。
「目と口は、今は狙えん」
「ですねっ、前衛組、二人が足踏み誘発してる間にポンポンを痛い痛いさせましょう」
「ああ、牙を突き立てるとしようか」
 ……戦闘の思考はまともなのにね。
 思いつつ、二人が銃を構えるに合わせて、リーゼロッテはペンを走らせた。
 まず円を描く。空中にペン先の軌跡が残って、赤色の陣となる。そこに図形を加え、文字を刻む。
「さ、焼き怪獣になる時間よ! ……いや絶対すごく美味しくないから期待しないでね!」
 放つ。巨大な剣の形になった炎を、右足へと向け、ちょうど踏み潰しでジョセフと雪之丞が離れた瞬間を見計らい、
「レーヴァテイン!」
 焼いた。
「……なるほど、あの竜の感情が読めます」
「熱いって?」
「そうですねっ」
 ヨハナの言葉をスルーしてジェイクは二発目の弾丸を腹へぶちこんだ。
 正中線、そのど真ん中辺りへ。ヨハナの魔力弾もそこへ追い討ちとして入り、流れ出る赤の血液がたしかなダメージを思わせる。
 と。
「あっ、足振りかぶってますね退避ー!」


 頭上を、岩が吹っ飛んでいくのを、塹壕から見上げた。
 いやこれ使えるなと、離れた位置にいる仲間に笑いかけ、にへらと、そう緩んだ顔で。
「ーー」
 その間を、地面を抉って違う岩が落ちてきた。


 地面を転がり、吹き飛ぶ土砂からの回避をしたユウは、受け身で立ち上がって振り返る。
 塹壕だ。崩れ弾けたその跡地から、三人の仲間が這い出してくるのが見える。
「直撃じゃなかったのね」
 良かった。ただ、無傷で済んだわけではないのもわかる。一人か、二人、怪我があるようだ。
「でも、後回しよ」
 正面に体を戻し、距離のある岩石竜へ向かい合う。
 その足元、雪之丞とジョセフがいて、目算としてはジョセフのダメージは大きく、雪之丞はまだ軽微だ。
 だから、
「回復は、一旦ジョセフね」
 手を翳して魔力を送る。傷付いた肉体の細胞を補う様に染み込ませて塞ぐのだ。
「これも……愛……!」
 いや違うが。
 ひとまずの処置は完了だ。続けてなら、後衛組の回復だろう。
 そう思い、足を一歩下げた時。
「ーー」
 雪之丞がこちらに向かって手を振って言葉を叫んでいる。
 見た目よりダメージがあったのか、もしくは他の事かと耳を澄まして、風に運ばれる音に集中すると、聞こえてくるのは、
「ーー倒れます!」
 岩石竜の体勢変化の警告だった。
「うわ」
 思わず上げた視線に、その通りの圧がある。前へ倒れ込む巨体に圧された空気が暴風となって襲い、
「ってちょっと待って」
 こちらを正面にしているのは、嫌な感じだ。仮に今、突進されると、塹壕という隠れ場所が無い状況は少し不味い。
 ……仕方ないわね。
 思うユウは、岩石竜に向かって左、傷付いた右足の方へと迂回していく。
 もし突進したとして、ダメージの大きい後ろ右足側は踏ん張りが効かない筈だ。だから、回避の余裕といか、威力の減衰は見込めるだろうと、そう思って行く。
「嘘ーー!?」
 だが、想像と違って、前足の着地で起こる地震からの突撃は、ユウの体へとぶちこまれた。

 ェクセレリァスはそれを見た。
 倒れ、四足になり、ユウへ突進する岩石竜の軌道が、緩く右に曲がったのを、だ。
「そういうこと」
 あれは、傷付いて動きにくい右足のバランスを、わざと崩させた動きだ。自然と傾く自重で、擬似的な追従を実現した。
「本当に厄介」
 倒れた事で距離が空いた。お陰で自分の間合いからは外になる。だから、彼女は降下を選ぶ。
 大砲の口を上にして両腕で抱え、頭を下にして真っ直ぐに落下した。
「墜ちるだけなら速度はいつも通り、だよ」
 行く。
 砲口に魔力を溜め込み、爆発しそうな奔流を抑え込みながら、距離を図る。
「ーー!」
 真下だ。超長距離を貫通する一撃を、真下に向けて撃てば、今度は外す事は無い。
 だから行って、射程圏へ捉えたその瞬間に、
「喰らえ……!」
 ぶちこんだ。


 負けてられませんの。
 直下砲撃に喘ぐ岩石竜を見て、ノリアも降下する。四足状態の時の頭高は、地上から3mも無い程だろうか。
「それくらいなら、動くのに不足は無いですの!」
 真正面へ向かい、今度こそと視界を泳ぐのだ。怪我をして、敵対心の強い今ならば、敵の気配には敏感になっているはず。
 思い、行動して、その通りの結果を得た。
「でも、食べられてあげませんですの……!」
 口だ。手を伸ばすより簡単で、何より素早く動ける。目の前を泳ぐノリアに向かって口腔を見せ、しかし彼女の反撃があった。
「ーー!」
 水だ。彼女の持つ、塩分の含む海水。それが、散弾の様に弾かれて柔らかい肉を打つ。
「ほらほら、こちらですのよ……!」
 そうして、怒りを引き、こちらの動きを追わせた上で、仕込みをもう一つ。
「まるみえじゃあねえか」
 向けた顔の先、ジェイクの方へ誘導する。
 真っ直ぐ構えるアウローラの弾装はマックスで、
「今日の俺達はさながら、ドラゴンスレイヤーって所だからな。ありったけを、撃ち込ませてもらうぜ」
 その弾丸の全てが、寸分違わずに眼球へ叩き込まれた。
 仰け反る軌道も含めて微調整されたそれらが岩石竜の体内を暴れ、痛みに顔を仰け反らせる。
「うわっ、こわっ、こっち見ないでくれますかチビりますっ!」
 その上空にはヨハナだ。
 片手に構えた魔銃を、ジェイクが撃ち込んだ目とは逆の方に向けて、思い切り魔力をチビった。
「もう後一押しですねっ!」
「ーーで、ございますか」
 叩み掛ける頃合いで御座います。雪之丞は思い、尾の方から前足の方へと突っ走った。
 腹の下を潜り、痛みに地団駄を踏む動きを回避しつつ、刀へと魔力を流し込む。
「目覚めたばかりでございましょうが、今一度、眠りに就いて頂きます」
 持ち上げた足の下へ滑り、一瞬の溜めを加えて跳び、落ちてくる足の側に沿って刀身を滑らせた。
「っ、!」
 ミシッと悲鳴を上げる体に鞭打って、大きく逸れた足を更に沿う。柔らかい肉質に刃を当てて、敵の自重を加えて縦に裂くのだ。
「おお……痛々しい……!」
「昂り抑えめで、後をお願いします」
「ーーそれも愛である!」
 その傷を、後ろ足と同じように、ジョセフは抉りに行った。
 今度は初めから、両手を突き込んで、だ。
 肉を力任せに開き、ブチブチと千切れる血管と繊維が鮮血を噴き出して、鉄仮面の彼を真っ赤に染める。
「ーーーー!」
 苦痛だ、痛みだ、決して消えない傷痕だ。それを総じて愛と。
「うお」
 言うかは人それぞれとして、そのダメージは岩石竜をたまらず立ち上がらせ、
「いえ……もう、いいわ……」
 それをユウが許さない。
「凍り付きなさい」
 突進のダメージはそのままに、流れる血を拭うよりも地へ手を当てて、圧倒的な冷気を走らせる。
 退避するジョセフを確認して、離れていく前足を捕まえる氷柱が生えた。
「……!」
 止まる。
 上がることも、下がることもできなくなった中途半端な岩石竜、その顔面へ。
「中から丸焼けなのよ……!」
 リーゼロッテのレーヴァテインが正面からぶちこまれた。
 空いた口から侵入した剣状の炎は、体内でその形を失って、
「輝きと共に、破滅しなさい」
 押し込められた奔流が、巨体の命を焼き付くした。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 参加ありがとうございました。
 怪獣大決戦と言った感じで、はい、スペクタクルですね、意味はあまりわかりませんが。
 それではまた。

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