シナリオ詳細
<常夜の呪い>夢見た家族はカラクリラ
オープニング
●夜霧に包まれて
天義南部ウェルトスの街外れ。
そこには行き場を無くした子供達を育てる孤児院があった。
少人数ながら家族同然の暮らしをするシスターと子供達。日々平穏な暮らしが続いていくと思われた。
――夜。
眠りにつき音も消えた孤児院が、不意に霧に包まれた。
霧はだんだんと色濃くなって――最後は孤児院すべてが夜色の霧に包まれた。
それはいつまでも目覚める事のない、深い、深い夢への誘いだった――
●
――天義各地で『常夜の呪い』事件が頻発しているらしい。
『常夜の呪い』――夜色の霧に包まれた建物ないし街に住まう人々が、目覚める事なく夢に囚われる異常事態だ。
以前にも各地で発生していた現象だが、それが此処に来て頻発するようになったらしい。
依頼書を片手に『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)が事態の説明をする。
「魔種『真なる夜魔』とその狂信者によってもたらされた『常夜の呪い』が多発的に発生しているわ。
夜色の霧に包まれ、その内部に巣くうモンスター――『スリーパー』を倒さないと、夢に囚われた人々は目覚める事はない……いずれ餓死することになってしまう危険な呪いと言って良いわね」
夢空間を形成する『スリーパー』は霧内部へと侵入した者を排除しようと動く。空間は『スリーパー』の手によって現実離れした空間になっているというが、その実態は侵入してみるまでわからない。
「天義の各教会も事件解決に動いてはいるけれど、頻発するせいで人手が足らないみたいなの。
回り回って、ローレットへも救援の要請が来たってわけね」
そこで、手にしていた依頼書を見せるリリィ。依頼書には天義南部の街ウェルトスと書かれていた。
「ウェルトスの町外れ、親を亡くした子供達を育てる孤児院も『常夜の呪い』に掛かってしまったようね。
孤児院丸ごと夜色の霧に包まれているそうよ。
この依頼ではこの孤児院に巣くうスリーパーを倒して、孤児院を巣くって貰うことになるわ」
孤児院には家主であるシスター一名に子供達が五名いるということだ。
スリーパーは夢主の夢から作られるという話がある。シスターや子供達が夢見るもの――それは……。イレギュラーズの思案顔を察して、リリィが言葉にする。
「内部を偵察した教会の騎士によれば、機械仕掛けの人形が揃って家族ごっこをしていたようよ。
複数の親と子供。ふふ、ちょっと訳ありな大家族ね」
子供達の求めた親と、子供を愛するシスターの見る夢と言うところだろうか。
何にしても、放って置けば幸せに生きる孤児院の人々が夢に囚われたまま命を落とす事になるだろう。
依頼書を受け取ったイレギュラーズは、早速天義南部ウェルトスの街へと出立するのだった。
●
絡繰り動く、パパとママ。
操り糸はどこかしらん?
絡繰り動く、ボクたちも。
幸せ家族の団欒は、終わる事無く続いてく。
カラクリ、カラクリ、カラクリラ。
捻子巻く音が響いてた――
- <常夜の呪い>夢見た家族はカラクリラ完了
- GM名澤見夜行
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年04月03日 21時50分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●突入
天義の街を襲う『常夜の呪い』事件。
天義南部の街ウェルトスでも例に漏れず事件は発生していた。
町外れの孤児院を包み込む夜色の霧。
まさにその場で眠る者達に終わる事のない夜を見せ続けているようで、突入を控えるイレギュラーズ達はその先の見えない濃霧を前に、様々な思いを巡らせていた。
「『常夜の呪い』か。
各地で勃発してるって言うし、不穏な気配を感じるぜ」
ピリピリと感じる嫌な気配に『死を齎す黒刃』シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)がぼやくように言った。
天義についてそう良い印象を持っていないシュバルツだ。天義のお偉方の手伝いであればこの依頼受ける事はなかったかもしれない。
罪なき人々が被害に遭っている事――そして自分の出自に重ね合わせるように――が、彼を動かしたに違いない。
「この『常夜の呪い』……掛けられた側が一見幸福にあるように思えるのが厄介なところですね。
……往々にして、人は幸せから逃げ出そうとは思いませんから」
例え、それが幻だとしても――『信仰者』コーデリア・ハーグリーブス(p3p006255)がどこか悲しそうに目を細める。
天義の貴族であり、他者の安寧を常に願っている彼女だ。夢にまで見た『幸せな夢』を見続けることとなった被害者の気持ちを思えば、それを壊し現実へと引き戻すのは心苦しい所もある。しかし、人命が掛かっている以上捨て置く事などできない。故に、この呪いは厄介であると、そう思った。
同様の考えを持つのは『ほのあかり』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)だ。
「幸せな夢であれば、起こすのは忍びない……と、思います。けれど……」
言葉を紡ぐと同時に、この事件を引き起こした魔種の存在を想起する。
そう、この呪いは魔種が齎したものだ。夢に囚われた人々は呪いを打ち破らねば、待つのは死なのだ。
「死んでしまう前に、起こして差し上げましょう。
そしていつか元凶を叩く事が出来ればいいですね」
クラリーチェの言葉に『神無牡丹』サクラ(p3p005004)が頷く。
「天義に現れた新たな魔種……常夜の呪いを齎す者か。
私達の故郷を侵させたくないけど、正体がわからなさ過ぎるんだよね……」
その正体、目的はどこにあるのか。
多くの人々に夢を見させ、夜色の霧で包み込む。それは何かの実験なのだろうか? 相手の狙いは見えてこない。ただ分かっているのは放置すれば、多くの人々が犠牲になることだけだ。
「――今は一つ一つ事件を解決していくしかないか」
サクラの呟きは、常夜の呪い事件に関わる者達の心の声と言っても良いだろう。覆われた謎への手がかりを掴むために、事件解決へと動くしかないのだ。
「……ふむ。気に入らんな。
何者かの操り糸が……我らが元にも伸びているようでな」
ただ、そうして”動かされる”のは、敵の狙いのようで些か気にくわないと、『『知識』の魔剣』シグ・ローデッド(p3p000483)がぼやくように言う。
それはまるで敵がこちらが動く事を知って行動しているようで――そう、掌の上で弄ばれているようで――自由を何より尊重するシグ・ローデッドに取ってみれば、その権利を侵害されたように感じ、憤りを覚えるのだ。
魔種の狙いが何処にあるのか。それは目の前に漂う夜色の濃霧のように不透明で不明瞭だ。
シグ・ローデッドの言うように、良いように動かされてる感は拭えないが、今はサクラの言うように一つ一つ解決していくしかあるまい。
イレギュラーズは覚悟を決めると、揃って濃霧に満ちた空間へと突入していった。
サクラの保護結界が展開される。濃霧の中は孤児院があるはずで、念のためといった処置だ。
夜色の世界を進んでいくと、不意に大きな広間のような空間にでる。
カラクリ、カラクリ。
捻子巻く音に合わせて家族を模した機械人形が揺れ動く。
幸せそうな家族の風景だが、全て絡繰り仕掛けの偽り。演劇にすぎない。
奇襲を掛ける事を想定していたイレギュラーズだが、空間の構造はそれを許す事はなかったようだ。
「楽しい、嬉しい夢を見るのはいいことだけど、それがこんな風に歪められてるのは悪いことだよー……」
偽りの家族ごっこを目の前に『空歌う笛の音』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)が頭を横に振るう。
孤児院に住まう者達。その子供やシスターがどのような夢を見ているかは慮るものがあるが、彼等の夢を文字通りねじ曲げて、空虚な世界とするのは悪趣味と言えるだろう。
この機械仕掛けの家族達――スリーパーを倒して、孤児院に住まう者達を呼び起こすのだと、アクセルは戦闘態勢を取る。
隣に立つ『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)もまた、厳しい視線を機械人形達へ向ける。
(夢を具現化する機械仕掛けの家族か……。
夢を見て死ぬより、現実を見据え生きなければ)
それは自分にも言い聞かせる言葉だろうか。想いの内に巡るのは行方不明の父の姿。この夢を見ている人達のように、自分もまた親の姿を夢想した覚えがあるだろう。
だが、その夢に囚われれば、目指すべき道筋を見失い今目の前で起きているようにあり得ない幻想の中を漂う事となるだろう。
現実の認識。進むべきはまずそこからだ。
強き心を持つリゲルもまた、武器を構える。
イレギュラーズ達の敵対的な気配は、すぐに機械人形達に伝わり、その気配をただならぬ殺気へと変貌させる。幸せな家族団欒を壊そうという侵入者へと、怒りにも似た激情を見せ、武器を構える。
そんな殺意をひらりと受け流し、一歩『自称未来人』ヨハナ・ゲールマン・ハラタ(p3p000638)が前に出て底抜けに明るいハイテンションで見得を切る。
「あなたの隣に特別素敵なモーニングコールっ! ヨハナですよっ!
さぁ都合のいい夢は終わりですっ!
辛くたって苦しくたって進まなければいけない未来のお時間ですよっ!」
機械仕掛けの空虚な幸せなんてNon! 目覚めを促すヨハナの声が夜色の霧の中に響き渡る。
戦いが始まる前とは思えぬテンションだが、本人は至って真面目だ。そしてその明瞭たる声色は、真実この夜色の濃霧を打ち払うに価する力を持っている。
「夢見るだけじゃあ乙女じゃない、望んで掴んでこその女子力っ!
未来人のヨハナが言うんだからコレ本当ですよっ!」
ビシッと指を突きつけるヨハナにシュバルツが「くく」と笑う
「男子だって望むものを手に入れるのに力を振るうがな」
「それは言わないお約束! さぁ来ますよ!!」
武器を構えたイレギュラーズに、機械仕掛けの団欒大家族が一斉に襲いかかった――!
●機械仕掛けの親子
カラクリ、カラクリ、カラクリラ。
捻子巻く音が幸せ家族を突き動かす。
この幸せ壊されてなるものか。
空虚な機械仕掛けの家族ごっこは、殺伐無間の地獄と変わる。
二人の親に一人の子供。それが掛ける事、三。計九体の機械人形達が、カラクリ仕掛けの凶器を振るい、イレギュラーズを襲う。
飛びかかる父親、子を守る母、そして父を援護する子供。なるほど、まさに模範にするべき愛しい家族の図式か。
「あくまでも家族として振る舞うか。夢に縛られているとはいえ滑稽だな。
さて……閃光弾の投入は、建物の制圧のセオリーではある。
……最もこの閃光弾は、少し特殊だぞ?」
敵が勢いづくまえに、先手を打って制圧に掛かるシグ・ローデッド。生み出される雷球を転がすように機械人形の群れの中へと投げ込む。
雷球は放電とともに炸裂し、磁場形成しながら広がる。電子の流れを制御するそれは、機械人形達――特に子供と母親が集まるその周囲――を巻き込んで、辺り一帯に強大な静電気を発生させる。
機械人形達の回路が痺れると同時、副次効果によって凍結を齎した。ショック状態を伴うこの攻撃には、敵の抵抗値を下げる効果もある。仲間達をサポートする素晴らしい先制の一撃となっただろう。
これに呼応してサクラが刀を掲げ威勢良く声をあげた。
「子供が大事ならしっかりと守ることね!
偽物の家族ですもの、私達は容赦しないわよ!」
掲げた刀が鋭い光を放つ。敵の目を引きつける輝きは、目障りな威光でもある。苛立ちと怒りを感じる母と子がサクラへと狙いを定め、凶器振るい殺到する。
多くを引きつける事になるが、これは狙い通りだ。戦況をコントロールするために盾役を買って出たサクラは、しっかりと身を守る構えを見せ耐える選択をする。攻撃力の高い子供の連続攻撃は脅威だが、守り切るだけの自信はあるのだ――!
「敵は多いですが――順当に削っていくとしましょう」
愛用の二丁の銃を構え、コーデリアが夢空間を縦横無尽に駆ける。
放たれる銃弾が、父親型の肩と足を撃ち、バランスを崩させた。コーデリアの動きは留まる事を知らず、身を捻るようなステップから更に踏み込めば、構えた銃身から一糸乱れない銃弾が矢継ぎ早に放たれて、父親型をまさに蜂の巣のごとく撃ち貫いていく。
ある種の優美さを兼ね備えたその動きは、機械仕掛けの人形であっても見とれるものだ。恍惚すら感じさせるコーデリアの銃撃を伴う格闘術が、機械仕掛けの人形を翻弄した。
「長期戦は想定していねぇ……畳みかけるぞ!」
黒き影シュバルツが疾駆する。
手にした儀礼剣には強力な呪詛が込められている。それを持って容赦なく機械仕掛けの家族達を斬りつけて行く。
怒濤とも呼べる連続攻撃は、次々に呪詛を伴う切り傷を生み出して、運命を狂わす楔を打ち付けていった。
そうして無数の状態異常を付与すれば、留まる事を知らずに狂熱的なダンスで敵を翻弄する。呪殺伴う一撃は、高い防御技術持つ親型に追加ダメージを与えていく。効率敵にダメージを与える事で、家族達を追い詰める。
「まとめていくよー! 守り切れるとは思わないでね!」
手繰る魔力が燦然と輝いて、アクセルの放つ魔砲が轟音と共に放たれる。仲間を襲う父親の脇を縫うように伸びた魔力の光彩が、後ろに控える子と母達を飲み込んだ。機械仕掛けの身体が焼かれるように煙を上げて、防ぎ切る事の叶わないダメージを与えていく。
「と、父親にはこれをプレゼントだ!」
巻き込めなかった相手には遠距離術式の贈り物。狙い澄ました一撃は、躱そうとする父親型に吸い込まれ爆散する。
魔砲による一撃は、警戒した母と子をばらけさせる。
そのタイミングを見計らって、リゲルが一気に肉薄する。
光輝満ちる剣で相手に隙を生み出せば、ばらけて孤立する子に向け星凍つる剣の舞を叩き込む。父と母が怨嗟の声を上げるのを確認すれば、鋭く射貫いて言い放つ。
「子を守らなくてもいいのか?
母上は……父上だって、俺が窮地の時は、いつも守って下さった」
脳裏を過ぎる想い出は消える事のない大切なものだ。偽りとはいえ子を思う親ならば、必ず守りに向かうと確信していた。
果たして、父と母の人形は子を守ろうと位置取りを変えた。
これはまさに狙い通りであり、子を守ろうとする親を狙い、その体力を削っていく形となった。
「親が子を庇い、子が親を庇う。
……本来ならば素晴らしい光景で、それを攻撃する私たちは酷い。
けれど。夢は夢でしかないから。ごめんなさい」
謝罪の言葉を口にしながら、クラリーチェが魔を使役する写本を手に治癒の魔術を手繰る。
多くの敵を引きつけるサクラを始め、クラリーチェのサポートが仲間達の傷を癒やし、偽りの家族に屈しない力を与える。
孤児院に住む者達から生み出された夢の形。その家族団欒の情景を破壊するのは悲しく忍びないとクラリーチェは感じていた。けれど、悪しき力によって呼び起こされた夢であることは疑いようもない。自身に出来る事はこの悪しき幸せの夢を終わらせて、現実へと呼び戻すことなのだと、心を決めた。
「――見つけました! 孤児院の人達です!」
周囲を注意深く見ていたヨハナが声をあげる。視線の先、幸せそうに寝ている孤児院の子供、そしてシスターの姿があった。
どうやら敵は彼等を攻撃対象とは見ていないようだ。保護する必要も考えたが、敵が攻撃しないのであれば、好都合だ。こちらの攻撃に巻き込まないように注意すれば、問題はないだろう。
「なら、あとは彼等に退場頂くだけですねっ! お覚悟を!」
ヨハナは仲間――特に後衛に位置するクラリーチェなど――へと父親型が傾れ込まないように近づく敵を受け持つ役回りだ。置かれているテーブルなどを倒して、敵の凶弾を防ぎ、室内のシーツやカーテンを引きはがせば、それを子へと投げつけ視界を隠す。
合わせて魔力によって生み出した光を瞬かせれば、敵の視界を奪う力となる。サポート的な動きは、仲間の勢いを後押しする結果に繋がった。
イレギュラーズの立ち回りは見事なもので、想定通りに敵全体を削るに至る。そして体力の低下を確認すれば、サクラが子を守る親の引きはがしに掛かった。
「リゲルくん、フォローありがとう! でももう大丈夫!」
体力の低下を庇ってもらう事でフォローしてもらったサクラがリゲルに感謝する。助け合いは大事ではあるが、守ってもらってばかりなのはサクラ的には格好悪いのだ。
「なら、一気に片付けよう。攻めに回るぞ――!」
気丈に振る舞うサクラに微笑んで、リゲルが力強く言った。イレギュラーズの攻勢が始まり、次々に子に止めを刺していった。
「ファンタジアロジック・シリウスシルバリオ――! 避けられると思うなよッ!」
シグ・ローデッドの身体より排出された液体金属が剣の形に再構築され投射される。次々と子に突き刺さる剣は、着弾と同時に液状化し、毒の如くその身体を侵蝕した。子の動きが止まる。
嘆きと怒りの咆哮を上げ狂化した親が凶器を振るう。恐るべき攻撃に膝を付く者もいたが、まだ終わりじゃない。
「皆さんはやらせませんよ――!」
仲間をフォローしながら立ち回るコーデリア。遮蔽物を利用しながら構えた二丁銃が銃弾を放つ。吸い込まれるように子へと銃弾が進み、弾けるように子を転倒させた。それまでだ。
「試してみる価値はありますか……! これはどうですかっ!」
ヨハナの放つ虚無のオーラが怒り狂う親を包み込む。狙い通り、侵蝕する虚無のオーラが怒りを消滅させていく。そうして動きの鈍った敵へシュバルツが切り込んだ。
「親を亡くして、やっと居場所を見つけたガキ共の平穏を奪うんじゃねぇ――」
苛立ちを覚えるのは、自身の出自が孤児だからか。孤児として迎入れられたその先にも――例え親はいなくとも――幸せはあるのだと、力を振るう。
「いくら幸せそうな夢だろうが、お前らはただのまやかしだ。だから、俺らが目を醒ましてやる」
その動き、その手数はまさに疾風怒濤。幾重にも放たれる無尽の連打が次々に残る親型を倒していった。
「最後の一押しだよ! 一気に決めよう!」
アクセルもまた回復のフォローに回る。子を失い暴走する親の攻撃に、サクラの身が危ぶまれたが、こうしたフォローによって力尽きる事なく戦いきる事ができた。
「――どうか目覚めた世界で、暖かさに包まれますように」
孤児院に住まう者達が見た家族団欒の夢。それはとても切ないものだ。
その夢を終わらせる事になる。その決心を固めたまま、クラリーチェは黒き囀りを放つ。黒き闇が嗤いながら残った父親を絡め取った。
「終わりだ――!」
止めはリゲルが。強烈な上段からの振り下ろしは機械仕掛けの父親の肩口から胸を裂き、怒りを消失させると同時にその活動を止めるに至った。
偽りの家族が織りなす機械仕掛けの演目は、終わったのだ。
どこかで捻子巻く音が止まった――
●夢に囚われる事なく
戦いが終わると、夜色の霧が消失していった。
家族団欒を見せていた夢空間は消失し、そこには孤児院の一室が姿を現した。
しばらくすると寝ていたシスターや子供達を目を醒まし、イレギュラーズは自体の説明をすることとなった。
事情を聞いたシスターは大変驚き、そして呪いから救い出してくれたことを感謝し子供達と共に頭を下げるのだった。
「なに感謝するようなことではないさ。それより……」
シグ・ローデットはシスターに尋ねた。近日何か普段出会わない人に出会ったり奇妙な事が起こっていないか、等。
しかし、「気になる点はないと思うが、どこか記憶がぼんやりする」というシスターからは有力な情報を得る事はできなかった。
コレばかりは仕方ないと、シグ・ローデットは子供達へと向き直り、しゃがみ込んで目線を合わせて言葉を紡いだ。
「私も物事が分かる時には親が居なかったのでな。お前さんたちの気持ちは理解できる。
……だが、居ない物を求めるより……今周りに居る者を守るべきではないかね?」
「……うん。そうだね!」
多くを理解しているわけではないが、その言葉に思い当たる節もあったのだろう。子供達は一つ大きく頷き、今を大切にすると誓いを立てた。
「では、私達はこれで。
……そう残念そうな顔をしないでくれ。また遊びにくるさ」
リゲルはそう言って子供達の頭を撫でる。
父親代わりにはなれないが……その心に生まれた小さな隙間を埋める事はきっとできるはずだ。
こうして、一つ。『常夜の呪い』を解決したイレギュラーズは、帰路へと付くのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
澤見夜行です。
皆さんのおかげで一つ常夜の呪いは解呪されました。
どのような手段を持ってこの呪いがもたらされたのかは謎のままですが、一つ一つ解決していく内に、明らかになっていくかもしれません。
別の依頼や他の仲間が見つけた手がかりを追いつつ、次なる展開をお待ち下さい。
MVPは怒濤の攻撃を見せたシュバルツさんへ贈ります。いやあ、困るくらいにダイス成功してました。ツイてましたね。まさに疾風怒濤!
依頼お疲れさまでした! 素敵なプレイングをありがとうございました!
GMコメント
こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
天義にて常夜の呪いが頻発しているようです。
夢に囚われた孤児院を救いましょう
●依頼達成条件
夜色の霧に包まれた孤児院へと突入し、内部に巣くうスリーパー全て撃破する。
●情報確度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は起きません。
●スリーパーについて
機械仕掛けの家族の集団。
親型六体に子型三体。
幸せな家族の団欒を過ごしていますが、それを壊そうとする侵入者に対して、狂気を向け襲いかかってきます。
カラクリ仕掛けの凶器や、銃器を振り回し、夢空間である幸せな家の中で暴れます。家庭内暴力です。
親型は耐久力が高く、防御技術にも優れています。その他のステータスも平均的にまとまり、かなり厄介です。
子型は耐久力が低く、回避力もありませんが、とにかく攻撃力が高くEXAも高めです。
親型は子型を倒されると、子型は親型を倒されると暴走状態になります。ステータスが大幅に跳ね上がるので倒す順番、方法には注意しましょう。
●戦闘地域
天義南部ウェルトスの街外れにある孤児院になります。
夜色の霧に包まれた夢空間内部は、大きな家の広間のようです。
戦闘場所には家具がいくつか置かれていて利用する事も可能でしょう。戦闘に制限はかかりません。
そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。
皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
宜しくお願いいたします。
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