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シナリオ詳細

VS黒天狗海賊団

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 海洋の港町には今日も音楽が聞こえる。
 アコーディオン演奏と大道芸、そして観客の歓声が大通りを染め、海鳥が空を滑るように抜けていく。
 チュロス屋台からは甘いシナモンの香りが漂い、『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)はその一つを買い取って、あなたに手渡した。
 大通りのベンチに腰掛け、さげていた鞄から封書を取り出す。
「これが依頼の詳細よ。依頼を受ける気になったら、そこに書いてある酒場に来て頂戴」
 あなたは封書を開き、数枚の紙束を出した。
 一番上には、大きな文字でこうある。

 ――『黒天狗海賊団』

 海洋王国は複数の島々からなる国家であり、女王イザベラによる統治のもと市民の人権と財産が守られている。
 それゆえ芸術文化が発達し、他国家と比べても明るく鮮やかな雰囲気が目に付くことだろう。
 だがそれを脅かす者は少なからず存在し、略奪者たちは海洋王国の豊富な資源をいつも狙っている。
 そんな略奪者を退ける軍隊として海洋警備隊その他が存在しているのだが、海という線の引けない土地を守るのはそう簡単なことではない。
 人員の不足を補うため、とおい昔に王国がある種黙認という形で認めた私掠船がある。
 それが、『黒天狗海賊団』のブラッククロウ号であった。
 黒天狗海賊団は海洋王国を脅かす幻想側および練達側からの略奪者を襲撃し、排除する役割を持っていた。
 勝手知ったる故郷の海。
 黒天狗海賊団は風を読むことに長け、海の気持ちを知っていた。それゆえ襲い来るどんな船をも排除してきたのだ。
 だが、そんな黒天狗海賊団はいつしか悪に染まっていた。
 他国のみならず海洋王国の船もそれと知りながら襲撃、略奪し、他国船の仕業に見せかけて目撃者を全て抹殺するという卑劣な行ないに手を染めていたことが、海洋王国の隠密調査によって発覚したのだ。
 海を守っていた海賊が悪逆に手を染めていたと分かれば国民の混乱を呼びかねない。
 国の人々にも、そして海洋警備隊にすら知られず、彼らを抹殺せねばならない。
 そのために。
 ローレットという『世界の中立者』が必要となったのだ。

●酒場『ブルーバイ』
 船着き場の向かいに建てられた酒場、ブルーバイ。
 頭上に渡された柱から淡い色のランプが等間隔に下がり、店内ではゆったりとしたアコーディオンミュージックが流れている。
 予め渡されたチケットを燕尾服のスタッフに見せると、夜の海に面したテラス席に、案内された。
 ワイングラスを傾けるプルーが、そこにはいた。

 そろったメンバーを見渡すプルー。
「事前に資料は読んでると思うから前置きは省くわね。
 今回の依頼は『黒天狗海賊団』の抹殺と、船の破壊。
 船自体の破壊にはかなり時間がかかるから、完全な抹殺が完了してからゆっくりととりかかることになるでしょうね。
 だから、まずは戦力について話して置くわ」
 ピーカンナッツパイにアイスクリームを添えたものが運ばれてくる。
 その隣に置かれたのは大きなエビのガンボとクリームソースのかかった鶏のグリエだった。
 プルーは、フォークを手に話し始める。
「黒天狗海賊団は昔から風を読むことに長けていて、高い格闘能力と統率力を持っていたわ。
 リーダーは最近代替わりして、先代の息子であるカラミナが船長になってる。
 メンバーは8人いて、それぞれが格闘能力に優れているという話よ」
 情報によれば、黒天狗海賊団は全員飛行種であり、扇子のようなものを武器に飛ぶ斬撃を放ったり、優れた近接格闘術を用いるらしい。
「船が移動するエリアまではナビゲートしてくれるそうだから、そこからは船を使って接触、攻撃を行なってちょうだい。使用する船や接近までのプランは任せるわ」
 プルーはそこまで説明すると、革のカバーで畳まれた支払伝票をつまみあげ、テーブルを立った。
「支払いはしておくわ。ごゆっくり」

GMコメント

【今回の相談会場】
 酒場『ブルーバイ』。
 ピーカンナッツパイのアイスクリーム添え。エビのガンボ。鶏グリエのクリームソースがけなどが出される海洋王国の酒場です。
 酒場といいつつ、レストラン的側面が大きいようです。
(※当依頼では巡り会った仲間と街角感覚のロールプレイをはさんでの依頼相談をお楽しみ頂けます。互いのPCの癖や性格も把握しやすくなりますので、ぜひぜひお楽しみくださいませ)

【オーダー】
 黒天狗海賊団の抹殺

 黒天狗海賊団の構成員全員を戦闘不能にした時点で自動的に依頼は成功扱いとなります。
 実際的にはこの後船舶の解体処理がありますが、戦闘とは切り離して考えてください。
 (戦闘中に船ごと沈めることが可能ということになるとむしろPL側が不利になるため判定処理を行なっています)

【船の持ち込みとスキルの適用】
・参加PCの中にアイテム『小型船』の所有者が居た場合、船をレンタル船舶と交換、ないしは追加することができます。
・このシナリオで運用できる船舶は最大で3隻までとします。
・そして船を持ち込んだ場合、装備者が必ず船に乗っているようにしてください。操縦は戦闘と平行して行なえるものとします。
・今回の船舶戦闘にプラス補正を加える非戦スキルは操船技術です。航海術はこれに含みません。
・飛行して戦闘する場合、かならず飛行スキルをセットして下さい。媒体飛行や簡易飛行(ジェットパック等)は戦闘機動に適していません。

【戦闘パート】
 黒天狗海賊団の船に接近し、戦闘を仕掛けます。
 敵がこちらの船に乗り込んだり船どうし距離をあけてぐるぐる回ったりなどして戦況が大きく動きます。
 また船の甲板は全長30メートル程度とします。攻撃射程が不自然にならないようご注意ください。

 黒天狗海賊団は全員共通して『飛行、飛翔斬、操船技術』をもっています。
 全員がやや個性のことなる格闘スキルをもっており、近接戦闘を得意とします。

【解体処理パート】
 爆破や切断など、物理的に船舶を解体し黒天狗海賊団のブラッククロウ号を海に沈めます。
 このパートに限っては火薬ないし爆発物の持ち込みを許可します。(戦闘中には有利不利含め影響しないものとします)

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • VS黒天狗海賊団完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年03月17日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
海音寺 潮(p3p001498)
揺蕩う老魚
マリナ(p3p003552)
マリンエクスプローラー
フィーゼ・クロイツ(p3p004320)
穿天の魔槍姫
エナ・イル(p3p004585)
自称 可愛い小鳥
ティスル ティル(p3p006151)
銀すずめ
ヴェーゼ(p3p007004)
言の葉に秘めし仮面

リプレイ

●黒天狗海賊団のうわさ
「名前くらいは知っておったが、今はそんなことになっておったんじゃなぁ……」
 風に靡く資料を畳んで、『揺蕩う老魚』海音寺 潮(p3p001498)は懐へとしまった。
「世代交代によって方針が変わったのかはわからんが、これも年貢の納め時じゃのう」
 どこか悲しそうに目を閉じる潮。
 船の隣では同じようなシルエットにシャチのカラーリングが成された海洋警備船がはしっている。
 別の仕事をこなすついでにここまでの道案内をしてくれた船だ。警備隊が親指を立てながらターンしていくと、潮もまたそれに習った。
 離れる船に手を振る『マリンエクスプローラー』マリナ(p3p003552)。船も、彼女の所有する『白夜壱号』という船だ。沈まぬ船という意味の、船だ。
 きらりと照る船首像に目を細めて、青空へと翳した。
「どんな理由があっても、海の男としては下の下です。ただの害獣と変わらねーですよ。全員海の藻屑となって頂きます」
「必要悪も度が過ぎればただの悪になるものよね」
 積んだ木箱の上に腰掛けていた『黒曜魔弓の魔人』フィーゼ・クロイツ(p3p004320)がすとんと甲板へと下りる。
「美味しい料理もごちそうになったことだし、きっちりお仕事をかたづけようか」

 フィーゼが振り返ると、吠える熊の像を船首にした『海抜ゼロメートル地帯』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)の船が走っている。
 舵を切りながら高く親指を立て、二本指で空をかきまぜるようなサインを出す。
 前のものはマリナの船への分離合図、次のものは飛行部隊への旋回合図だ。
「しっかし……こういう時に名目上ではあっても中立って肩書きは便利というか、やりやすいもんだな。海で好き勝手する連中をたたけるいいチャンスだ」
「……」
 それまで海と一体になっていた『言の葉に秘めし仮面』ヴェーゼ(p3p007004)が船へと戻ってきた。
 手にした双眼鏡を使い、目視可能範囲に入った敵船団を視認する。
「もしもし、海くん、これから君達の所に異物を落としてしまうがこの異物も元は天然自然から生まれた物だ、どうか魚くん達の役に立つ場所に沈めておくれ、ごめんな」
 海に語りかけ、持ち込んだ武装を装備する。
 一方でことここに至ってもまだだらけた様子を見せる『水底の冷笑』十夜 縁(p3p000099)。
 知るひとは知っている。飄々とした態度で本来の力量を隠す十夜の常套手段である。
「俺みてぇなか弱いおっさんには、この手の依頼は荷が重すぎると思うんだがねぇ……ま、酒に食事にデザートまで奢って貰っちまったし、その分含めて働かねえと、な」
「確かに、あの鶏は旨かったな。海賊というやつらも沈み、魚に食われ、土になり海になるだろう。あれが食物連鎖というものなのだな……」
 おかわりまでした鶏のグリエを思いだし、目を閉じるヴェーゼ。
 そんな彼女たちを追い越すように、助走として甲板を走った『(自称)可愛い小鳥』エナ・イル(p3p004585)が白い翼を広げて大空へと飛び出していく。
 空母から攻撃機が発艦するさまに、それはよく似ていた。
「いやっっっっふー!!! 海風のなかで飛ぶのもなかなか良いですねぇっ!」
 翼どころか腕もひろげるエナの横に、同じく飛び立った『ヒーロー見習い』ティスル ティル(p3p006151)が紫の翼を大きく広げる。
「敵船肉眼で確認。黒天狗海賊団だね」
 飛行による先制攻撃を避けるためか、黒天狗海賊団たちも二人ほど発艦させこちらへと迫ってくる。
「良い海賊の話だって少しは聞けるけどさ、海賊が結局悪いことしてたなんて知ったら、きっと悲しむと思うんだ。そんなの、私たちだけで充分でしょ」
 ティスルはリキッドペインを操作して鷹の爪めいた武装を展開。エナもお腹にくくっていた斧を装備して戦闘の構えをとった。
「さあ! はやくやっつけて、『ブルーバイ』でパフェでもつつきましょう! 今はイチゴの季節ですよ!」

●激突
 風を切る音、弾く音。
 横から打ち付けるような暴風を翼で受けて揚力を得ると、ティスルは上体をまっすぐに、翼をやや捻るようにして向かい風を掴んだ。
 対する黒天狗飛行部隊は高度よりもスピードを選んだようで、追い風側へと捻るように翼をきる。
 両者Sに交わるように。
 海に翼の影が落ちる。
「交戦開始!」
 ティスルがはじめに行なったのは防御壁の展開。
 ミサイル弾頭のように円錐状の鋼皮膜を展開すると、黒天狗飛行部隊の一人が小太刀を抜いて飛翔斬を発射。
 衝撃がティスルの鋼皮膜を切り裂きながら分散されていく。対するティスルは傷ついた皮膜をパージ。
 爪状態にして互いに交差する距離まで豪速で近づいていく。
 交差から同方向へカープ。シザーズマニューバに入った二人は小太刀と爪をぶつけ合った。
 そんなティスルを挟み込むように進路へ合流してくるもうひとりの黒天狗飛行部隊。
 抜いた刀がティスルに迫ろうという所で、ティスルは液体鋼をリボン状に展開。
 螺旋回転軌道に乗せて広げるように展開すると、黒天狗飛行部隊たちを切り裂くようにリボンが暴れた。
 空中戦闘はお互い無防備になりやすい。それゆえ攻撃は撃ったモン勝ちになりやすいのだ。
 そして、それを可能にするのが連携のタイミングである。
「すっきありーーーーー!」
 はるか上空をとって併走していたエナが、太陽の光に混じるようにして急降下。
 と、共にティスルは着水するほどの勢いで降下。
 エレベーターのように位置入れ替えを行なうと、エナは握っていた斧を振り回し遠心力で高速に縦回転した。
 飛行機のプロペラに巻き込まれるようなものである。
 黒天狗飛行部隊は刀による防御もむなしく、エナの回転斧に腕と翼、そして胴体の一部を切り裂かれ墜落。水没していく。
「第一波はこっちの勝ち! ですね! 一度戻って合流しますか?」
 エナは勢い余って水面を激しく切りつつ、割とギリギリ攻撃範囲を逃れていたティスルに話しかけた。
 第一波空中部隊の衝突。制空権を得る、というよりは『制空権を得させない』ための衝突である。
 攻撃を受けティスルたちも消耗している今、チーム単独で敵船に襲撃をしかけてもマトになるだけだ。
「ですね。では一度」
「はい!」
 エナは腕を振り、ティスルと共にハート型の軌道を描いて味方の船へと帰還した。

 味方の着艦を確認すると、エイヴァンはそれこそ熊のように吠えた。
 海の空気をいっぱいに吸い込み、海風を毛皮に浴びたエイヴァンは誰にも負ける気がしないという気持ちで吠える。
 その咆哮は聞いた仲間たちにも伝播し、船の帆を振るわせた。
「行くぞ皆! 海賊退治だ!」
 慣れぬ海と船にぐらぐらしていたヴェーゼも、手すりによりかかってスキットルを傾けていた十夜も、流石に心がくすぐられたらしい。口の端で少し笑って海賊船ブラッククロウ号を見つめた。
 熊の船首像が曲線を描くように進路を取り、ブラッククロウ号の左頬を突くように進む。
 一方で白夜壱号の船首が右頬を打ち、船体両面をカンナでけずるかのようにぶつけて動きを止めようという試みだ。
 むろんブラッククロウ号もそれを分かっていて、舵を右か左のどちらかにきって挟み撃ちを逃れようとする。
 ブラッククロウ号が選択したのはマリナ側。それより外側に出た状態で接触すれば挟み撃ちから逃れられるという寸法である。
 ここは未来の風をよりうまく読んだ方の勝ちだ。
「ううむ……」
 潮はしめらせた指を立て、現在の風向きを測定。
 マリナに運転を代わるようにジェスチャーした。
「ポチや、かなり乱暴に運転するから隠れていなさい」
 後ろにつれていたポチを船室に籠もらせると、潮は象牙のように白い舵を力強く握った。
「急カーブをかけるぞ。総員近くのものに掴まれぃ!」
 筋力と魔力をフルに使って舵を回転。
 船が軋む音を上げるほどの強引さで凄まじいカーブをきると、船体をあろうことか180度反転させた。
 その状態で外側をとったブラッククロウ号。
 白夜壱号は急ブレーキと反転後退。ブラッククロウ号の前方に横っ腹を晒すように船体をねじ込んで見せた。
 一方のエイヴァン船は回り込むようにブラッククロウ号の後ろをとる。
「まずい!」
 左右への防衛陣形を組んでいた黒天狗海賊団は前後からの挟み撃ちとういう状況に数秒対応が遅れた。
 焦った表情で舵をきり、衝突の衝撃を和らげようとする黒天狗海賊団の操舵手。
 潮はニヤリと笑いながら、拳にサメ力をため込んだ。
 比較的前に視線が集中している黒天狗海賊団。まずはその場から動かないようにしつつ飛翔斬による乱発が白夜壱号へと浴びせられる。
「今じゃ、耐ショック!」
 潮は床に拳を打ち付けると、サメのヒレのようなオーラを自らの周囲を旋回するように泳がせた。
 あえて防御を捨て敵船へ襲撃すべく構えたマリナとフィーゼ。
 反撃のマスケット銃と弓を構えたそのままの姿勢で、潮がダメージとBSだけを取り払っていく。
 攻守の美しい分担である。
「海の藻屑にやりやがってくだせー」
 海の男はつよくあれ。誇りを忘れるな。広い心をもて。
 そのうち二つを捨てた黒天狗海賊団はマリナにとって悪党の部類へと落ちた。
 憎しみと失望にも似た感情が氷のように結実し、弾丸となってマスケット銃から発射された。
 着弾。操舵手。
 肩を打ち抜かれた操舵手は取り出そうとした刀をそのまま取り落とし、床に転倒する。
 一方のフィーゼは黒弓をきっちりと構え、自らの魔力を二重螺旋の矢に変えて発射した。
 こちらの船に飛び移ろうと翼を広げた黒天狗海賊に命中。
 飛行中はHPの三割ダメージを一度に受けると転落するという。当たり所がかなり悪かったのか、海賊は飛び上がった直後で飛行に失敗。派手に転倒した。
「想像はしてたけど、みんなスカイウェザー(飛行種)なのね」
 船での戦闘に飛行能力はそこそこ関わりがある。敵船に飛び移る際や、爆撃を行なう際などだ。
 黒天狗海賊団はそういった戦術に長けていたが、第一波の制空権争奪において失敗したことで、今はイレギュラーズ側が有利な状況になっていた。
 一方で、ブラッククロウ号後部をごりごり削るように接触することで逃れるのを防ぐエイヴァンの船。
 十夜はわざと隙があるように見せつけ、海賊団の誘引を試みた。
(下手に向こうの縄張りに飛び込んでオヤジ狩りに遭うのは御免なんでな)
 近接格闘のほうが得意な海賊団である。うち一部とそれに伴った一部が十夜へ集中。
 十夜は柳風崩しで迎撃をはかった。
「翼の片方でもへし折って見逃してやれりゃぁ良かったんだが……悪いな、お前さん方を抹殺しろってのが命令なモンで」
 斬りかかる海賊たちに対して、ひらりひらりと攻撃をかわしたり受け流したりしながら相手を投げ落としていく十夜。
 それでも集中しすぎるダメージを軽減すべく、舵を固定したエイヴァンが大きな亀の甲羅めいたシールドを構えてシールド・ショルダータックルをぶつけにいった。
「暫く引き受ける! 数を減らせ!」
 ティスルとエナの援護に加え、ヴェーゼがレーザーネイルを装備した状態で斬りかかる。
 十夜を狙い、エイヴァンに阻まれるという状態に集中力を割かれた海賊の背をとるのはそう難しいことではなかった。
 格闘術式で海賊の背を切り裂く。
「そういえばあの羽根つき人間共も旨いのだろうか……?」
「やめとけハラ壊すぞ」
 ――戦闘の入りは上々。
 ブラッククロウ号を挟み込んだ両船は旋回運動によってそのままの状態を維持し、黒天狗海賊団は格闘戦の中心をエイヴァンの船にシフト。
 潮たちは船ひとつを挟んだ状態で射撃支援を行なうという構図になった。
 支援もここまでで良いだろうと判断した潮は海賊の一人を捕まえ、首と羽根を掴んだまま海へとダイブした。
「最後に言いたいことはあるか」
「や、やめ……!」
 抵抗する力もろくに残っていない海賊は、ごぼごぼと気泡を吹きながら沈んでいった。

●海と共にあれ
 ぼこんと船底に穴があく。潮によるサメ手刀だ。
 船の内部に海水が入り込み、徐々に船が沈んでいく。
 エイヴァンはその様子を見守るように己の船を遠ざけた。来たときと同じように手すりに寄りかかりスキットルを空にする十夜。
 一方のマリナも船から離れ、沈み行くさまを見つめている。
「貴方達、先代達から何を受け継いできたんでしょう?
 昔の黒天狗海賊団はそれは素晴らしい海の男と聞きました。
 海の男としてのプライドはどこへ行ってしまったんですか?
 きっと……何か理由があったのでしょうけれど……」
 沈み行く船は何も語らず、しかし全てを物語っているようにも見えた。
 過去の栄光。入れ替わる人々。暴走と止められない圧力。海に浮かぶ船が沈むように、誇りある海賊も堕落することがある。
 白夜壱号は通称沈まぬ船。けれどマリナが誇りを失うようなことがあれば、もしかしたら……。
 一方で船の解体作業が進む。
 フィーゼは黒曜魔槍を、ヴェーゼは魔力砲撃をそれぞれ叩き込み、船のあちこちに小さく穴をあけていく。
 空を飛んで船の真横についたエナとティスルは、それぞれ斧とハンマーを構えて両サイドから打撃を何度も加えていった。
 およそ数分のことだろうか。
 船は浮かんでいるのも難しいほどの損傷を受け、海の底へと沈んでいった。
 いずれ魚たちの住処になることだろう。
 黒天狗海賊団の噂と共に、海の中へと消えるのだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 おかえりなさいませ、イレギュラーズの皆様。
 誇りある黒天狗海賊団も、その末路は悲しいものでしたね……。けれど戦いの中で散ったというのは、それはそれで誇りあることなのかもしれません。

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