PandoraPartyProject

シナリオ詳細

朝食は喫茶店で

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●暖かな朝
 レトロな喫茶店。初老の店主は、静かに珈琲を淹れる。店内にはクラシックが流れ、カウンターではモーニングを終えた女が美味そうに煙草を吸っている。テーブル席では、老眼鏡をかけた女が新聞を読み、時折、温かな珈琲を楽しんでいる。時間はゆっくりと流れている。
「いらっしゃいませ。お好きな席へ」
 店主が振り返り、微笑む。若い男が頷き、眠たげに目を擦りながら、カウンターのスツールに腰かけ、珈琲の香りに男は目を細めた。
「ええと……どうしようかなぁ……」
 テーブルのメニューに目を落とし、文字を読む。それから、五分後──
「ご注文はお決まりでしょうか?」
 テノールが耳に心地よい。
「ええ、ホットコーヒーを」
 顔を上げ、男は微笑んだ。カウンターの女が眩しげに男を見た。
「ありがとうございます。ドリンクをご注文されますと、トーストとゆで卵がついてきます」
「あ、お願いします」
 男は言った。昨晩、かなり飲んだが今はお腹が空いている。今からステーキでも何でも食べてしまいそうだ。店主は頷く。
「ありがとうございます。トーストは、はちみつチーズトーストと小倉チーズトースト、たまごトーストの三種類からお選び出来ます」
「そうか、どうしよう……」
 考え込む男。
「おすすめは、たまごトースト。私、毎朝、食べてるのよ」
 女がくすくすと笑う。男は驚きながらも、女に微笑み、「じゃあ、たまごトーストをお願い出来ますか?」と訊ねた。
「ええ、ありがとうございます」
 店主は、朝に似た笑みを浮かべる。

●布教したくて
 依頼人の男はローレットで 『ふらり、ふらりと』青馬 鶇(p3n000043)に熱弁をふるう。
「僕はあの日から喫茶店の虜になってしまった! あの雰囲気、あの心地よさはバーでは味わえない! いつもより、早く寝覚めた朝に珈琲の香りにこの身を預け、モーニングを食べ、ゆっくりと本を読んだり日記を書く。ああ、至極、素敵だ……だから、僕は依頼をしたいんです!! この良さを! 『喫茶店 ザ・ムーン』の良さをイレギュラーズの皆さんにも味わってもらいたいんです!!! どうでしょうか? ぴりぴりした心を珈琲で癒し、次の依頼に備える……きっと、素敵だと思うんです……」
 男はうっとりとし、ハッとする。鶇は表情の変わる男を辛抱強く眺めている。
「あ、勿論! 料金は僕が事前に払っておきますので! ちなみに、残念ながらその日、僕は旅行でいないのです……」
 鶇は、残念そうな男を見つめ、理解する。要するに、男の代わりに喫茶店を満喫して欲しいという、依頼なのだ。

GMコメント

ご閲覧いただきましてありがとうございます。今回の依頼は、喫茶店を満喫することです。さぁ、あなたは、ここでどんな時間を過ごしますか?

●目的
 朝の喫茶店を満喫することです。

●時刻
 朝

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●場所
『喫茶店 ザ・ムーン』
 レトロな喫茶店で、ドリンクをオーダーすると、トーストとゆで卵が付いてきます。ドリンクはホットコーヒーまたはアイスコーヒーのみです。

 トーストは三種類から選べます。
 ①はちみつチーズトースト
 ②小倉チーズトースト
 ③たまごトースト
 
    +ゆで卵が一つ

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【描写につきまして】
 特にご指示をいただかない場合は個別描写になりますが、ご指示がございましたら、複数人での描写になります。
【注意】絡みOKの方が二人以上、いらっしゃった場合、青砥が色々とミックス致します。また、喫茶店には他の客もおりますので、偶然の出会いを楽しみたい場合は『偶然の出会い』と明記ください。

  • 朝食は喫茶店で完了
  • GM名青砥文佳
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2019年03月21日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

レッド(p3p000395)
赤々靴
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)
キールで乾杯
Tricky・Stars(p3p004734)
二人一役
クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)
宝石の魔女
ジョージ・ジョンソン(p3p006892)
特異運命座標
鞍馬 征斗(p3p006903)
天京の志士

リプレイ


 『風読禽』カイト・シャルラハ(p3p000684) は看板を抱えた店主を見つめ、目を輝かせる。
「おはようございます。お待たせしました。どうぞ、入ってください」
「やった、一番乗りだ!」
 いつもと違う朝に気持ちが高ぶる。まるで、遠足前の子供のよう。今日は武器も防具も一切、持たずにエイティーンなカジュアルファッションに身を包んでいる。
「お好きな席にどうぞ」
「よし、此処にするぞ!」
 カイトはブリキのミニチュア船が目の前にある席を選んだ。
「良い船だな」
「ありがとうございます、海洋に旅行に行った時に購入しました」
「海洋! 俺の出身地だ」
「海洋は、魚介が新鮮ですよね」
「だな! あ、マスター、俺、たまごトーストとアイスコーヒーがいい!」
 カイトは即決し、「だって、オススメなんだもんな」と笑う。

「うーん、たまごうまうま」
 千切ったトーストを丸のみし、アイスコーヒーを貰ったストローでしっかりと飲む。勿論、砂糖とミルクはちゃんと入れてある。
(誰か来ないかなー。一般のお客でも来ないかなー)
 嘴でゆで卵を割り、丸飲みする。ソワソワが止まらない。
「いらっしゃいませ」
 店主の声とともに、何人かの客が入る。そこには『特異運命座標』ジョージ・ジョンソン(p3p006892) の姿。ジョージはにこりとする。カイトと目が合ったのだ。
「すいません、隣いいですか?」
「いいぞ!」
 椅子を引いてあげるカイト。
「ありがとうございます。朝早くからこんなに人がいるんですね」
「それは美味いからだな!」
「ふふ、素敵ですね。朝食で美味しいものを食べれたら一日のがんばりがいが大きく変わりますから期待させてもらいましょう」
 メニューを見つめ、ジョージは「ドリンクはホットコーヒーを……おや、ドリンクにはトーストとゆで卵がつくんですか」と驚く。
(たまごトースト……はゆで卵とたまごがかぶってしまいますし、他二つは甘いものとチーズの組み合わせですか……ちょっと味のイメージがわきませんね)
 ジョージはカイトのトーストをちらりと見る。
「何だか、全部美味しそうで決められなくなりそうです」
 ジョージの言葉にカイトが笑い、右隣の男が目を細める。
「トーストは逃げねぇからゆっくり決めな! 全部、美味いけど、俺はたまごがやっぱり好きだ!」
「そうですか、たまご……色々迷いましたが、ここは小倉チーズトーストにしてみましょう! 新しい味の開拓もたまにはいいものですから」
 ジョージの言葉に「それもうめぇ! 最高だ」と男は笑う。

「おかわり出来るならしたいけども、料金前払いしてもらってるしなー」
 完食したカイトは悩んでいる。
「足りねぇか! 若いうちは沢山、食べても大丈夫だからな。おし! ここは俺が出す。二人によ、六人前で足りるか?」
「え、そんなにですか?」
 驚くジョージ。
「わー! 沢山、食べるぞ!」
 カイトが奮起する。
「マスター、注文だ」
 男は店主を呼ぶ。

「元気で、気前の良い方ですね」
 ジョージは笑う。
「だな! あ、そういや、あのマスターっていくつなんだろう」
「見たところ、四十代でしょうか」
「そうだよ! 四十五歳って言ってた! パパと一緒なの」
 テーブルの少女が笑い、メガネの男が微笑む。
「そうなんですね。素敵なパパだね」
「ありがとう!」
 少女は髪を揺らす。ジョージは微笑み、ゆっくりと店内を眺める。落ち着いた雰囲気。皆、リラックスしている。
「何だか、癒されます。ああ……」
 目を細める。美味しそうなトーストとコーヒー、ゆで卵が目の前に。
「来ましたね、いただきます」
 ジョージはトーストを齧り、無意識に笑顔を作る。
「美味しい……これなら、何人前でも食べれそうですね」
 ジョージはコーヒーを飲み、息を吐いた。


 『義に篤く』亘理 義弘(p3p000398)は喫茶店に足を運ぶ。宿周辺の見回りとワル共の監視を終えた朝。
「いらっしゃいませ、お好きな席へ」
「ありがとう。良い香りだな」
 カウンターに座る義弘。コーヒーの香りとパンの焼けた香りが食欲を引寄せ、心を穏やかにする。
「ありがとうございます」
「元の世界にいた頃は白飯と味噌汁が朝食の定番だったがよ、今や、すっかりパンとコーヒーが体に染み付いちまった」
「あら! 実は、異世界の方から小倉チーズトーストを提案されたんです」
「だからか、この世界で小倉あんとは珍しいなと思っていたんだ」
「そうなんです」
「なら、ホットコーヒーと小倉チーズトーストにしよう」
「ありがとうございます。今日も小豆をおさめていただきました」
「ええ、今日も最高のものをね」
 カウンターの女が笑う。顔には剣で裂かれた傷。義弘はおやと思う。
「気が付かれちゃった。小豆の苗を奪われそうになった時の傷。で、咄嗟に猟銃で賊の足を撃ち抜いたわけ」
「やはり、物珍しいのだな」
 義弘は鋭利な目を細めた。
「そうなの。困ったものね。でも、銃の扱いに長けていたみたい」
 女はマシンピストルを見せ笑う。
「貴方も傷だらけだけど何を扱うの? 鞭?」
「いや、おまえさんと違って刀、木刀、鉄パイプ……切れるもの、殴れるものを問わず、扱う」
「お待たせしました」
 店主がコーヒーと小倉チーズトースト、ゆで卵を運んできた。
「話の途中で悪いが」
 義弘は断りを入れ、トーストを食べる。
「……うむ、うまいな。とても合う」
 すぐにコーヒーを飲み、息を吐く。女は幸せそうに目を細める。
「良かった! 美味しいは、あたしにとって魔法の言葉。喫茶店って素敵な場所よね、気持ちが明るくなるし」
「ああ、こういう落ち着いた時間も必要だ。特に、俺のようなヤクザには、そして召喚された人間にはな」
 ゆで卵を食べ、コーヒーとトーストを味わう。
「へぇ、ヤクザ! あたし、貴方の話を聞きたい!」
「そうだな……だが、その前に」
 義弘はコーヒーのおかわりを二杯分、注文する。
(今度は、砂糖を入れて飲むとしよう)


 『特異運命座標』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)は眠たげに目を擦る。
「いらっしゃいませ、お好きな席にどうぞ」
「わっ、賑わってるっす!」
 様々な客が今日を楽しむ。
(一人でもいいっすけどせっかくっす。同行する誰かの席の隣か近くに座るっす)
「隣、良いっすか?」
 ホットコーヒーを飲んでいる『二人一役』Tricky・Stars(p3p004734)に声をかけた。
「勿論。むしろ、話し相手を探していたところだ」
 稔が顔を上げる。
「ありがとうっす。それにしても、稔さん、凄い隅っすね」
 二人は何度か依頼をともにしている。稔の白肌はより蒼ざめ、目は充血している。
「あ、ボクはたまごトーストとホットコーヒーをお願いするっす! 依頼人のお兄さんが力説してたっす。それと、出来れば、酸味より苦味あるブレンドが良いっす」
 目が合った店主に、オーダーするレッド。
(「そんなに酷いだろうか? 宝石に勝る美天使の俺が」)
 稔は嫉妬の鏡を覗く。
(「通常通りだ、むしろ、眠ることを忘れた俺は儚い存在へと昇華している」)
(『いや、大丈夫じゃないって! 天使とは思えない顔じゃね?』)
 すぐに虚がツッコミを入れる。
(「……問題ない。隈が出来ていても俺は美しい」)
 稔は平然たる態度でコーヒーを飲む。

「稔さん、徹夜っすか?」
 尋ねるレッド。
「かれこれ、二日程経つ」
 小倉チーズトーストを食べ、「んっ、チーズと小倉が合う」と稔は息を吐く。
「寝食を忘れてっすか?」
「ああ、脚本作りに没頭していたんだ。王道ではない、一風変わった内容にしたいのだが……中々。このまま白紙と睨めっこしていても仕方ないので、人に頼ろうと思う」
「おおっ、力になるっす!」
「お待たせいたしました」
 心地よいテノール。店主が、レッドにコーヒーとたまごトースト、そして、ゆで卵を。レッドはコーヒーに鼻を近づけ、目を細める。
「ふふ、素敵な香りっす」
 コーヒーの香が眠気をさらう。だが、一口飲んで、僅かに眉を寄せるレッド。
「やっぱり砂糖とミルク増し増しっす……舌はまだ、お子様みたいっす」
 舌を出すレッド。稔は笑う。久しぶりに虚以外の者と話をしている。
「いいな、こんな時間は人生に必要だ」
「そうっすね。あ、そうっす! ひと切れ交換してみないっすか? そちらのトーストの味も気になるっす!」
「そうだな。それも冒険だ」

 レッドは無言でトーストを頬張っている。
(安定のたまごと、異端児かと思いきや、ベストマッチな小倉チーズ……トーストは奥深いっす)
「ああ、マヨネーズとタマゴのバランスが最高だ。そうだ、『常夜の呪い』の話は聞いたかい?」
 稔はたまごトーストをもう、一口。
「聞いてるっす、夜色の霧っすよね」
 レッドは頷く。途端に瞳に宿る鋭さ。
「ああ、天義には暫く近づかない方が良いかもしれないね」
 稔の言葉にレッドは考え込みながらゆで卵を食べる。
「お、いつもより美味しい気がするっす!」
 レッドの言葉に、稔がゆで卵を食べ、微笑む。
「本当だな。そういえば、こっちにも桜はあるのかな」
「あるよ、とても綺麗に咲くよ」
 アイスコーヒーを飲んでいた青年が笑う。
「そうか、それは楽しみだ」と稔。
「そうっすね! 春はわくわくするっす!」
「これから色んなことがまた始まって終わるのか」
「良いっすね~! 『町内清掃活動』や『ダンジョン探索』とかどうっすか? 楽しそうじゃないっすか?」
「行ってみたいな。ん? ダンジョンを掃除する者達の話……いや、どうだろう」
「何か思いついたっすか?」
「ああ! 良い時間だった、また何処かで会おう」
 稔は喫茶店を飛び出す。やる気も創作も鮮度が命。善は急げ、猫まっしぐら。レッドは手を振り、新聞や依頼書に目を通し始める。
「おかわりはいかがですか?」
「お願いするっす! ところでマスター、ここはなぜ『ザ・ムーン』なんっすか?」
「妻の名前が月子なんです。でも、喫茶店月子だと何だか変でしょう? ザ・ムーンだったらそれらしい気がして」
 照れたように笑う。
「そうなんっすね。至極、素敵っす」
「ありがとう、ゆっくりしていってくださいね」
 
 それから──
「ご馳走様、美味しかったっす。また来るっすよ」
 店を出たレッドは、旭暉に目を細め、大きく息を吸いこんだ。


 朝は幸福を運んでくる。『灰かぶりのカヴン』ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)は、看板を確かめる。
(旅人の人からモーニングの良さを知って、気になっていたのでちょうど良い機会です)
扉を開けようと手を伸ばしかけ、気が付く。『宝石の魔女』クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)が横に立っていた。
「おや、お前も此処なのじゃ?」
 クラウジアの赤い瞳が細められる。
「ええ、ええ。一緒に行きましょう」
 ミディーセラは微笑む。

 コーヒーの香りは春風のよう──
「良い香りじゃ」とクラウジア。
「ええ。あら、何処に座ろうかしら」
「あそこはどうじゃ。ああ、座っても良い、かのう?」
 クラウジアはテーブルで雑誌を読む『天京の志士』鞍馬 征斗(p3p006903)を見た。征斗はストレートのアイスコーヒーと玉子トーストを食べている。
「いいよ、座って?」
 征斗は銀色の長髪を僅かに揺らしながら、少女のように目を細める。ミディーセラとクラウジアは頷き、席に着いた。

 ミディーセラは悩んだ末にホットコーヒーを頼み、はちみつチーズトーストを。
「うーん、はちみつか小倉か……ふむ、では小倉にしようかの。儂、甘党じゃし。それと、ホットコーヒーを」
 クラウジアは言い、店主は笑顔を見せる。
「そういえば、何を読んでいたのかしら?」
 ミディーセラの言葉。
「雑誌は観劇だよ。一応、自分も元は踊り手だし……ね」
 征斗はゆで卵を一口。クラウジアは興味津々で征斗を見つめる。
「踊り手……至極、素敵ですの」
 ミディーセラは微笑み、照れる征斗。
「ふふ、良いの。楽しい早朝女子会じゃ!」
 クラウジアが笑う。
「……女子会?」
 ミディーセラと征斗が首を傾げる。
「お待たせいたしました」
 店主の声に、心が躍る。
「……コーヒーは香りが命じゃよなー」とクラウジア。
「早速、一口ですわ」とミディーセラ。コーヒーをうんと甘くし、カップを傾ける。
「ああ、朝に温かいものを飲むと落ち着くのです。甘さも丁度よく……冷たい方とも悩んだのですが、ホットの方がやはり、良かったですね。気分も安らかになって……」
(お酒にしてしまうとまた寝てしまいますからね。たまには体を労わらなければなりません)
 一方、クラウジアは苦そうな顔をしている。
「むむむ。地味に体が縮んでから、苦いのが駄目になってしもうたのが残念じゃが……」
 トーストを齧り、また、コーヒーを。
「ああ、しもうた! 甘くしても小倉で甘いのが二つで口が慣れてしまう」
「あら、それは困りましたね。そうそう、練乳があるとしつこいぐらいに甘くなります。お勧めはしませんが、おいしかったりするのですよ」
 ミディーセラの言葉に、クラウジアは感心し、征斗は顔を歪ませる。
「ふむ、甘いものは苦手なのじゃ?」
 クラウジアは言う。
「そうだね、自分は甘いものは苦手で……別に、気にしてる訳でもないけれど」
「ワタシも甘いより辛い物が好き!」
 セミロングの女が会話に混ざり始めた。
「気になったのだけど、どうして女装をしているの? 最高に似合うんだけど!」
「ええと……女装してる理由聞かれても困る……んだけど……悪ノリだから……昔勧められてそのまま……仲間の受けも良かったから……それだけでね」
 征斗はゆで卵をそっと食べる。
「うんうん、めっちゃいい! あー、女の子って感じ! と言うか、女の子の苦労とか分かってくれそう! いいなぁ、ワタシ、あなたみたいな人と一緒にいたいな。お揃いで服揃えたりさ~! あ! 勝手なイメージだから……嫌だったらごめんね」
 征斗は女の勢いに驚いている。
「うん、平和じゃのう」
 クラウジアは目を細め、魔導書の解読をし始める。
「ふふ、素晴らしい時間ですわ」
 ミディーセラはその様子を静かに眺め、トーストを一口。
「あ、美味しいですね……」
 はちみつの甘さとチーズの塩気が堪らない。ミディーセラは指に付いたはちみつを舐めとる。
「お味はどうですか?」
 店主が尋ねる。
「ええ、美味しいですわ。メニューはどうしてこの三種なのかしら?」
 ゆで卵を食べるミディーセラ。
「実は昔は種類が沢山あったんです。でも、種類が多すぎて……人気メニューの三種に限定したんです。と言いながらも、ピザトーストも入れてみようかなと思ったり」
「そうなんですね。ピザトースト、食べてみたいですわ」
「是非とも食べにいらっしゃってください」
(こうして穏やかに過ごしていると。いつもあっという間に過ぎ去ってしまうはずの時間も、ゆっくりとしているようで。ええ、ええ。早起きしてみるのも、悪くありませんとも)
「……次は二人で来ることにしましょう」
 ミディーセラは紫髪の彼女を想う。

「あのさ、テクニックとかある? ワタシ、弟に女装させてみたいの!」
「……まずは抵抗を無くすために中性的な格好から始めたらいいかな……」
 征斗は言う。
「へぇ! あとはー?」
「あとは……ひたすら、褒めるとか……褒められると嬉しいから……」
「そっかぁ! ふふ、楽しいな! あ! 今度、カレーを食べにいかない?」
 女は誘う。

「クラウジアさん?」
「ん? おお、お前か!」
 クラウジアは古本屋の店主を知る。
「なんだ、君も利用しているんだね」
「いや、初めてじゃ!」
「ほぉ、そうなんですね。ところで、読みながら食べたら本にパンくずが落ちてしまうのでは?」
「大丈夫じゃ、儂の辣腕で本をこう、縦にの。テーブルに載せなければよいのじゃ」
「そういうものなのかな」
「固いことを言うでないわ、のう? それにしても、ずいぶんとこの喫茶店に入れ込んでおったんじゃなあ」
「そう、ここに来るとホッとするの。知り合いもいるし」
「うんうん、それは楽しいのう。あれ、なんというんじゃっけか、ここ」
「ザ・ムーンのこと?」
「月がなぜ喫茶店の名前になっとるんじゃ? タロットとかではないじゃろうしのう」
「ふふ、それはマスターの奥さんが月子さんだからです」
「そんな理由が」
「そうそう。あ、クラウジアさん、コーヒー飲めました?」
「……」
 ゆで卵に塩を多少多めに振り、一口。
「うむ、コレで甘いのが楽しめ……む……ゆで卵のおかわりって、できるんじゃろか? さすがに塩なめながら小倉トーストとコーヒーをちびちびって、ないと思うんじゃよ」
「そうね、なら……あ、クラウジアさん。トースト一枚と、ゆで卵くらい余裕で食べれますよね?」
 女は笑いながら店主にオーダーを。


 喫茶店は幸福を招く。
「その子、眠っているのかい?」
 女は笑う。
「ええ、さっきまでうとうとしていたんですが眠ってしまいました」
 ジョージが店主に借りた薄手のブランケットをカイトに。
「早起きに満腹とクラシック。正直さ、あたしも眠いもの。でも、せっかくだから図書館に行くの!」
「良いですね、僕はあと少しだけコーヒーを楽しみます」
「そうかい。また、会えるといいね。じゃあ」
 女がカイトの頭を撫でると、カイトは幸せそうに揺れる。何もかも、満ち足りた朝。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ありがとうございました。ゆっくり出来ましたか? また、お立ち寄りください。

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