PandoraPartyProject

シナリオ詳細

裏側の海へ行け

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●裏側の海にあるという
 海を深く、深く深く潜っていった先、『裏側の海』へ通じる座標があるという。
「ワシは一度だけ見た。
 真っ青な月が西から上り、鏡合わせにしたような星がならぶ空……。
 親友たちと共に見た裏側の月を、今でも毎夜思い出す。
 そして、あの少女のことも」
 白い髭をおおくたくわえた老人の魔術師は、懐から銀の懐中時計を取り出した。
 開いてみれば、奇妙なことに針が常に逆回りし続けている。
「たいした話じゃあない。ワシらはあの海へたどり着き、記念にとこの時計を持ち帰った。
 ……いや、奪ってきたんだよ。人魚の少女を殺して、奪ったんだ」
 閉じた老人の目尻には、ちいさく涙が浮かんでいる。
「悪いことは随分としてきた。殆どの罪は償ったが……これだけは未だ、償えずにいる」
 老人はあなたを見た。
 鉄格子ごしに、あなたを見た。
 結界処理を施された独房の中から、あなたを見ている。
 銀の時計を、鉄格子の間からこちらへと突きだした。
「ワシはこの独房で生涯を終え、懺悔と祈りに尽くすつもりだ。
 盗んだものや奪ったものは、ほとんど持ち主かその遺族へ返された。
 だがこれだけは、返そうと思っても返せない。
 だから。依頼することにした。
 どうか」
 老人の手から、あなたは銀の裏時計を受け取った。
「ワシの贖罪を手伝ってくれ」

●ミューダー海域
 所変わって海洋の港町。
 海洋の情報屋イェンはつば広の帽子を深く被って煙草をふかしていた。
 のぼる煙が鼻につく。
 それに気づいたのか、男は慌てて煙草の火を消した。
「すまねえな。で、『裏側の海』への行き方を知りたいんだったな。
 任せとけ。金を貰ったからにはガセは掴ませねえよ」
 イェンは海図とマーカーを取り出すと、あるポイントに円を描いた。
「このポイントに、特定の時刻に、一隻だけの船でいる……これが『裏側の海』へ行く条件だ。
 誰でも行ける分けじゃ無いのは、この海域には危険なモンスターがうようよいるせいだな」
 続けて取り出したのは魔物に関する書籍。中でも邪霊を専門に扱ったマニアックな本だ。
「『ヤツメ邪霊』。霊力弾の射撃によって対象を殺し、海底へ引きずり込んで魂を食うというモンスターだ。
 見たらすぐにわかると思うぜ。なんせこの有様だからな」
 本の挿絵には目が八つ並んだ人間の生首が描かれており、耳があるべき場所にコウモリのようなハネが見えた。
「人の弱みにつけ込む邪悪な心が、死してなお雑念として現世に残り、凝り固まって人を襲うようになったというものらしい。
 なんでこんなもんがこんな場所にと思うが、理由は分からねえ。出てくるもんは仕方がねえし、事実を伝えるのが俺の仕事だからな」
 そこまでの話を聞いて、イレギュラーズたちは改めて船を出すことにした。
 やるべきことはもう決まった。
 ヤツメ邪霊を倒し、特定のポイントへ到達し、依頼主のオーダーにそって銀の裏時計を裏側の海へと返す。それ、だけだ。

GMコメント

 ヤツメ邪霊を倒し、危険なエリアを突破しましょう。
 船の上で戦闘をすることになるので、陣形の組み方や攻撃範囲の調整には気をつけましょう。

【エネミーデータ】
・ヤツメ邪霊
 飛行能力を持つ邪霊。ゴーストカテゴリー。
 危険な海域を抜けるまで次々と襲ってきますので、『敵の群れと30ターン以上戦闘し続ける』状態を想定してプランを組んでください。
 個々の戦闘力は低いですが、ペース配分を怠ると中盤以降で偶発的なミスが起きてもフォローできなくなってしまいます。

 三種類の邪霊がおり、外見や動きで見分けはつきませんが攻撃のタイプが分かれています。
 甲型:攻撃に【恍惚】がつく
 乙型:攻撃に【不吉】がつく
 丙型:攻撃に【苦鳴】がつく

【シチュエーションデータ】
 船での戦闘になりますが、海への転落や船の操縦については判定をカットします。全く起きないというほどではありませんが、それに関して慎重なプレイングを書く必要はありません。

 ヤツメ邪霊は複数の方向からバラバラにやってくるでしょう。
 範囲攻撃をうまく使いたい場合は味方と協力して連携を組んでください。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • 裏側の海へ行け完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年02月22日 21時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)
騎兵隊一番翼
エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
海音寺 潮(p3p001498)
揺蕩う老魚
マリナ(p3p003552)
マリンエクスプローラー
イーフォ・ローデヴェイク(p3p006165)
水葬の誘い手
ネリー・エイト(p3p006921)
夜啼赫咬猟獣

リプレイ

●裏側の海とは
 銀色の懐中時計。針が常に逆に回り続けるさまを見つめる『風来の名門貴族』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)。
 それを手にしたまま、レイヴンは遠い海原へと目をやった。
「多くの海を旅したワタシだけど……『裏側の海』なんてものが存在していたとはね」
「不思議か?」
「混沌の世に不思議はつきものだ。とはいえ、興味深い」
 逆回りの銀時計を持ち上げてみせるレイヴン。『風読禽』カイト・シャルラハ(p3p000684)は船の舵取りをしながら、羅針盤と海図を見比べていた。
 ここはネオフロンティア海洋王国の領海。ミューダー海域と呼ばれるエリアに今まさに入ったところである。
 といっても海に線が引かれているわけではない。カイトの正確な航海術があってはじめて分かることだ。
「しかし、海洋で依頼を受けると随分メンツが固まるな。よく見た顔だ」
「世界は狭い、な」
 今回の依頼は、『裏側の海』という場所を目指して船を出すこと。海賊が奪った宝物だという逆回りの銀時計を返すためだという。
「最後の時に悔恨念にさらされる海洋の海賊も少なくはない。海洋の貴族として聞き届けて上げるとしよう」
「それもそう、だな」

 船の手すりによりかかり、揺れる波に身を任せる『夜啼赫咬猟獣』ネリー・エイト(p3p006921)。
「裏側の海というのは、果てとは別のものなんですよね? 海にも秘境のようなものがあるんですね……」
「それこそ海のロマンってやつですね。じーさんの今更な贖罪とかはまったく興味ねーですが、そういうのは興味深いです」
 なにせ死霊術や精霊術がごく身近な世界である。『あっち側』への入り口もさぞや多いことだろう。
「本当、ワクワクするおハナシだネ! そのご老人の頼み、叶えてあげようじゃないカ! ヤツメ邪霊とやらの群れを乗り越えて、裏側の海へと至る船旅といこウ!」
 どこか上機嫌に海風を浴びる『水葬の誘い手』イーフォ・ローデヴェイク(p3p006165)。
 船は、ミューダー海域へと入る。

(針が逆に回る時計なんて、練達に行きゃぁそこら中にありそうだが……わざわざ殺してまで奪いたくなるほどのモンかねぇ。おっさんにはわからん趣味だ)
 黙って海を見つめる『水底の冷笑』十夜 縁(p3p000099)。
 海賊のお宝というのは得てしてそういうものではあるが、多くの場合理解するのは難しい。
 不死の金貨や、さまよい続ける船や、黄泉の海域……海洋の海には様々な伝説や秘境、宝物が眠っている。
 木箱に腰掛け、ポチと戯れる『揺蕩う老魚』海音寺 潮(p3p001498)。
 旅の目的。依頼内容を思い出してふと手を止めた。
(たとえ謝られても失ったものは帰ってこんのじゃが。ただお主の贖罪の気持ちが少しでも伝わる事を願うぞ)
 これは贖罪の旅。
 牢獄で懺悔に生涯をとすることで、かの海賊の罪は償われた。罪に対する大きすぎる罰は、往々にして新たな罪になるという。
 ゆえに潮はあえて心穏やかに、この依頼を遂行することにした。
「お、そろそろ例の奴が出てくるぞ」
 見張り台から叫ぶ『海抜ゼロメートル地帯』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)。
 ロープを使って甲板へと下りると、ナイフを抜いて構えた。
「ヤツメ邪霊の集団が海上をうようよしてる。全員、戦闘準備だ」
 前方より接近する亡者の群れ。
 目が八つあり、耳が翼になった生首。弱みにつけこむ邪悪な霊。
 『裏側の海』へ行くために、突破せねばならない障害である。

●ヤツメ邪霊と海の境界
 風をうけ海原を走る紅鷹丸。
 鷹の名の通りいかめしいくちばしをそなえた船首像。
 海上を虫のようにふわふわとさまよっていたヤツメ邪霊たちは一斉に船のほうを向き、多様な放物線を描いて飛び込んでいく。
 恐ろしいのは、邪霊の群れがこの先ずっと、大量に存在していることだ。
 『裏側の海』へ至る座標は一見して周囲に何もない海。そこに至れば『裏側の海』へ行けると分かっていなければ、このヤツメ邪霊の群れの先へ進もうなどと誰も思わないだろう。
「けれど今は、行かねばならねーのです」
 マリナ。フリントロック式魔導銃に特別な弾丸を詰めると、撃鉄を起こして狙いをつける。
 サイトごしに接近する邪霊の群れを見、よくよく狙いをつける。
 発射した弾丸が邪霊の一つへ直撃。破壊。
 その様子を確認して、マリナは薄く笑った。
「この分なら、問題ねーですね」
 破壊された邪霊を無視して次々と甲板へ迫る。
 ネリーはロープを掴んで高所へ駆け上がると、ライフルを片手で構えた。
 追従した赤黒い球体が銃身へ接続されるように押しつけられ、淡く輝き出す。
「夜走弾丸妖精。弾跡を記せ」
 トリガーをひき、発砲。赤い軌跡がまっすぐに描かれ、ヤツメ邪霊に直撃。勢いを落としつつも甲板へとたどり着き、手すり付近に陣取ったエイヴァンへと襲いかかる。
 が、エイヴァンの繰り出すナイフがヤツメ邪霊を切り裂くほうが早かった。
 崩壊するヤツメ邪霊。顔を上げるエイヴァンの目には、風景を覆わんばかりの邪霊の群れ。
 しかし恐怖すれば、その心から喰われていく。
 エイヴァンは勇猛に吠えると、群がるヤツメ邪霊を強引に振り払った。
 ポップコーンのようにはじけ飛んでいくヤツメ邪霊たち。
 その一部をSCRによる通常攻撃で撃破する十夜。
 船に張られた網目状の縄を掴んで上がると、舵をとるカイトを庇うような位置からヤツメ邪霊へと攻撃を加えていく。
 破壊されたヤツメ邪霊とは別に、十夜の横を抜けて船先頭へとカーブをきる邪霊。
 柱の周囲で構えていた潮は飛来するヤツメ邪霊を手刀で粉砕し、さらなる手刀でサメの幻影を放った。帆に食らいつこうとしていたヤツメ邪霊に直撃。邪霊が転げ落ちるように甲板中央を跳ねると、それをレイヴンの杖が打ち払った。
「来い、カルキノス」
 レイヴンの描いた魔方陣が輝き、外なる次元から呼び出された巨大なカニの化け物が腕を振り回す。
 あまりに絶大な威力ゆえに、ヤツメ邪霊はかすっただけで消滅していった。
「手応えはあるが……連発はできないな。する必要もない、か」
 杖をくるりと回し、青く輝く魔方陣を空中へ無数に出現させる。
 甲板から1メートルほど浮き上がったレイヴンは、自らの周囲に展開した魔方陣を杖で叩くようにして魔術弾を発射。リボルバー弾倉のごとく回転させ、次々に魔術弾を放ちながら自らもゆっくりと自転。飛来するヤツメ邪霊たちを打ち落としていく。
 背を向けたレイヴンに代わり、青い宝石剣を握り込んだイーフォが刀身に電撃を纏わせ振り込む動きで解き放つ。
 反撃にと飛来する無数の霊力弾。
 足下に置いていた盾を蹴り起こして弾を防御。
 イーフォは虚無のオーラを作って発射することでヤツメ邪悪を破壊した。
「どうも、霊力弾の有効射程はそれほど長くないみたいだネ」
 ヤツメ邪霊は恐ろしい数で群れているが、統率らしい統率はとれていない。
 そのため有効射程およそ0~30メートルといった大雑把な射撃能力を持ちながらバラバラに対象を狙い、不用意に密集するなどして集中攻撃の隙を晒していた。
 統率のとれた敵集団ならライトニングによる直線的な薙ぎ払いなど許さなかったろうが、この集団に対してはそれなりに有効な攻撃になった。
 舵をとりながらも翼を広げるカイト。
 眼前に群がるヤツメ邪霊たちが、ギャギャギャと醜く笑った。
「それにしても、気持ち悪い幽霊だなっ」
 広げた翼に炎を纏わせ、羽ばたき一つによって炎の波を起こす。
 群がっていたヤツメ邪霊たちにぽっかりと穴が空く。
 船はさらなる風を受け、目的地へと突き進んだ。

 想像できようか。
 醜くおぞましい羽虫の群れを。
 虫ひとつひとつが人の顔ほどあり、その全てが嘲笑のような声をあげて群がるさまを。
 その中へ、船ごと突き進まねばならない状況を。
 潮はぞくりと寒気を感じたが、首を振ってそれらを無視した。
 ヤツメ邪霊の数はどんどん増えている。数の有利に居座るつもりか、移動する船にくっつく形で潮たちを取り囲み、大量の霊力弾を撃ち込み蜂の巣に変える戦術をとってきた。
 いや、戦術なんていう立派なものではない。ただのリンチ。知能なき虫によるたかりである。
「皆、わしの周りに集まるんじゃ! 出来るだけ近く!」
 ヤツメ邪霊は個々の能力を見ればたいした脅威ではない。しかし密集することで悪夢となるのだ。集中攻撃によってこちら回避を大きく引き下げ、恍惚、不吉、苦鳴といった状態異常によって抵抗力を奪っていく。
 最後にはなすすべ無く蹂躙されるのだ。
 ……が、それはなんの用意もしなかった場合の話だ。
「喝ッ――!」
 潮が地面を拳で二度叩くと、活力の波が周囲五メートルにわたって広がった。
 仲間たちを襲っていた以上状態の半分が吹き払われ、もう半分は次なる拳で払われていった。
「最低でも一分に二度はこの拳を打てる。ここからはワシから離れぬように……!」
「ああ、助かる。味方の頬を叩かなくて済むな」
 カイトは不用意に近づいてくるヤツメ邪霊に爪の斬撃を加えると、広げた翼から炎の波を引き起こした。
 次々と引火していくヤツメ邪霊。
 これ幸いと同じラインに入ったイーフォが電撃の放射を開始。
 ヤツメ邪霊たちが次々と墜落し、甲板に当たって雪のように溶けていった。
「目的までもうすぐダ。頼むヨ!」
「そろそろか、よし……少し付き合ってくれ!」
 エイヴァンが盾の端を両手で掴むと、ヤツメ邪霊の中へと回転しながら飛び込んでいった。
 強引に破壊されるヤツメ邪霊たち。
「やれやれ……」
 十夜は前髪をかき上げると、名乗り口上を使ってヤツメ邪霊の引きつけを開始。不用意に近寄ってきたものを端から柳風崩しで甲板に叩き付けていく。
「この通り年食ったおっさんなモンで、動くのはちっとキツくてなぁ。……お前さんの方から来てくれて助かるぜ」
「あそこだ」
 レイヴンは再び魔獣カルキノスの腕を呼び出すと、船の先に浮かぶ巨大な球体を殴りつけた。
 いや、球体ではない。ヤツメ邪霊が大量に群がりすぎて凝縮した霊体だった。
 はじけるように散り、大量の目がこちらをにらむ。
 マリナとネリーはそれぞれ背をあわせ、周囲を取り囲もうとするヤツメ邪霊たちにライフルとフリントロック銃をそれぞれ連射。
 道を空けよとばかりに船をねじ込ませた。
「あれ、まってくだせー。なんか……傾いてませんか」
「言われて、みれば」
 水面が90度ほど傾いて見える。
 否、船が前方に90度傾いているのだ。
 ある意味未曾有の感覚にゾッと背筋を振るわせるマリナ。
「近くのものに掴まれ!」
 レイヴンの叫びに応じて、ネリーは咄嗟に柱にしがみついた。
 どぷんという音と共に船が逆さに海へと落ちる。
 平衡感覚が失われ、上下左右の区別が付かなくなっていく。
 そして急速に『海底へと』船が引っ張られた。
 そう。まるで、船の浮力がはたらいているかのように――。

「……ぷはあっ!」
 水浸しで甲板に転がる。
 そこは、夜の海だった。
 ついさっきまで昼間だったのに。
 船の明かりをつけるべく、箱から取り出した火をカンテラに入れてみると。
「ここ、が?」
 逆さ写しの星々。
 そうと分からなければ気づくことの無い海。
 通称『裏側の海』に、イレギュラーズたちはたどり着いたのだ。

●裏側の海と人知れぬ人魚たち
 人魚族とディープシーの大いなる違いがあるとすれば、人魚は人間の足をもつことができないということだろう。
 それは陸に上がって暮らすことはないという意味をさし、人と袂をわかつことをさす。
 人魚姫のおとぎばなし、さながらに。

「動かないで」
 海面から聞こえた声に、イーフォたちはぴくりとした。
「誰かナ? ……と、思ったら」
 船をぐるりと囲むように、無数の人魚たちがこちらに槍を向けている。
 魔力をもった槍のようで、まるで恐ろしい銃を向けられているような気分になった。
「こちらに来ることは許していない。なぜ来た。迷い人か」
「うわ……私たちは敵じゃねーですよ人魚みたいなものですよ」
 銃を足下に落とし、両手を挙げて無抵抗を主張するマリナ。彼女のアイコンタクトを受けて、他の仲間たちはそれぞれ武器を下ろした。
「応えよ。なぜ来た」
 威圧的な、そして敵対心の強い人魚たちの声に、しかしレイヴンは冷静に応えた。
「ある者の使いで来た。その者の贖罪を、果たすために」
 そう言って翳したのは、あの銀時計。
 人魚たちが目を見開き、ある者は悲しみを、ある者は怒りを露わにした。
 レイヴンはその反応から背景を察すると、銀時計を人魚へと投げる。
「罪は償われなければならない。これは、依頼主の贖罪だ」
「……その男は、今何を」
「牢獄で残る生涯を懺悔にとしている」
「で、俺たちは依頼されてやってきたんだが……殺されたっていう人魚さんの弔いもしたいと思ってる」
 手を翳すカイト。
 人魚たちはそれぞれ異なる表情を見せたが、はじめに呼びかけてきた人魚の一人が小さくため息をついたことで場は静まった。
「許す事は出来ないだろうが本人が贖罪のために手を尽くしたという事だけは知ってほしい」
「この銀時計は思い人や親族に渡すのが一番だと思ってる。渡してやってくれるか」
 潮とエイヴァンの呼びかけに、人魚は首を振った。
「遺族には渡そう。だが思い人には渡せない」
「……?」
 小首を傾げるエイヴァン。
 十夜がちらりと彼の顔を見た。
 その一方でネリーはふと遠くを振り返った。
 小さな明かりをともした小舟が沢山海を流れていく。
 オールを持たぬ船が、波に流されていく。
 船にはひとりずつ誰かが乗っていて、誰もがみなぼうっとした顔をしていた。
「あれは……?」
 遮るように人魚が声を上げる。
「銀時計は、確かに遺族に渡った。……ここは生きた人間の来る場所ではない。表の海へと帰るがいい」
「待ってくれ」
 潮が、小さく身を乗り出した。
「依頼主に、言いたいことはあるか」
 人魚たちは様々な反応を示したが、そのなかで唯一、銀時計を握った人魚だけが応えた。
「………………いや、いい。何も言うな」
 それきり、船は再びぐるりと転覆し、気づけば昼間の静かな海に浮いていた。

 後日、港についてからのこと。
 獄中にあった依頼主が死亡したという連絡が入った。
 病気や怪我によらぬ不思議な突然死であったが、なぜだか表情はとても安らかであったという。
 そしてなぜだろうか。そうなることが分かっていたかのように、イレギュラーズたちには報酬のコイン袋と謝礼の手紙が残されていた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 おかえりなさいませ、イレギュラーズの皆様。
 とても不思議な場所へと旅をなさったそうですね。
 きっとお疲れのことでしょう。ゆっくりと、お休みになってください。

 true end 1――『想い人へ捧ぐ』

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