PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ベビーシッター求む

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●孤児
『この子の事、どうか宜しくお願い致します』

 質素な便箋にそう書かれた一文を見て、狗刃と呼ばれる傭兵――『狗刃』エディ・ワイルダー(p3n000008)は難しい顔をした。
 ローレットやイレギュラーズの“何でも屋“という側面を拡大解釈して、捨て犬の里親探しを頼み込んでくるなんてのはたまにある話だ。そんな依頼も仕事の余暇に世話好きな者が請け負ってくれるから、それらは些細な問題である。
「…………」
 ならば、何故エディは難しい顔をしているのだろうか。それはひとえに、目の前の代物が自分の手に余るからだ。犬や猫なら、あるいは飼い慣らされた魔物の類だって仲間の手を借りれば多少やりようはあろう。
 だが、彼にとってそんな簡単な話ではなかった。

 ――おぎゃあ、おぎゃあ。
 それはペットといった類ではない。おくるみに包まれた人間種の赤子が、ギルドの玄関先に放置されていたからだ。
 エディは、考えるよりも先にその子を抱きかかえて。それからおおいに悩んだ。
「……どうすればこの子にとって一番いいだろうか……」

●心苦しい話
「ストレイタ・ブルーな話よね。ほっとくわけにもいかない、というのは分かるけれども」
 人肌に温めた哺乳瓶を赤子に与えながら、複雑そうに微笑みを浮かべる『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)。
「何故、孤児院に頼らず俺達のところに寄越したんだ。俺やお前みたいに、ギルド員の大半は子育てなんて経験の無い者ばかりだぜ?」
 慣れない赤子の世話に気疲れしたのであろう、少々やつれた様子のエディ。プルーはその物言いにムッとしながらも、エディの表情から不満の矛先を察して、情報屋としての見解を示した。
「私達の信頼出来る場所に預けて欲しかったのでしょうね。孤児院を経営する人なんて、その多くは善人でしょうけれど。中にはよからぬ事を考えてる人が居るから」
 思い当たる節がある様に言ってみせるプルー。エディはそういうものかと静かに頷いてから言葉を返す。
「……イレギュラーズに頼るとして、どうするのが良いと思う? 親を探して考え直す様に説得するか。信頼出来る宛を探してみるか」
 プルーは、少し言葉を選んでからエディの言葉に答えた。
「彼らの意見も聞いてみる必要はあるけれど。少なくとも、この子のご両親に何かしらやむを得ない事情があったんでしょうね」
「何か確証でも?」
 まるで断定した様な言い方に、エディは不思議そうに問い返す。プルーは、ミルクを飲み終わった赤子の背中をぽんぽんと撫でて、笑みを浮かべた。
「…………そうでないと、あまりに無彩色で暗い話だわ」

GMコメント

 稗田ケロ子です。私自身としての感想はこの場で控えます。
 キャラクターさんの孤児に対する価値観や倫理観を確かめる場面として、どうか一つ。


 成功条件、というよりも進行についておおまかに分けて二通りあります、
1・「親元を探し当て、考え直す様に諭す。及びその間の赤子の世話」
2・「赤子を預けるに信頼出来る宛を探す。及びその間の赤子の世話」
 前者に関してはギルドに子を置いて行った親を探し、考え直す様に諭す子を返す形です。親の身元不明な事と事情が分からないのが課題。
 後者に関しては、孤児院の情報についてギルドで元々ある程度ありますので、受け入れをお願い出来るかが課題でしょうか。
 孤児院以外でも信用出来る宛が思い浮かぶ方は、可能ならば採用致しますので遠慮無くご提案ください。
(他GMが執筆したNPCに預ける等の選択は、稗田がそれを書いていいかどうかという観点から描写が難しい場合がありますのでご注意ください)
 どちらも赤子を世話する担当のイレギュラーズが必要です。
●NPC一覧
赤ん坊 メリー:
 ギルドの玄関先でおくるみに包まれ、放置されていた人間種の女の子。エディが早朝頃に泣き声に気づいて保護した。
 時期は離乳食前の乳飲み子。イヤに痩せ細っている。栄養失調気味。
 性格的には笑顔が多く、人懐っこく穏やか。だが誰かが傍に居てやらないと泣く。親が周囲に居ない事に気づき始めたのか、少々不安そうにしている様に見える。

 エディやプルーは慣れない子育て(?)に疲弊しているので、シナリオ中は休憩しております。

  • ベビーシッター求む完了
  • GM名稗田 ケロ子
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2019年03月03日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

透垣 政宗(p3p000156)
有色透明
レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)
特異運命座標
グレイル・テンペスタ(p3p001964)
青混じる氷狼
六車・焔珠(p3p002320)
祈祷鬼姫
Tricky・Stars(p3p004734)
二人一役
ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)
甘いかおり
微睡 睡(p3p006590)
ひとねむり
藤堂 夕(p3p006645)
小さな太陽

リプレイ

●ありふれた一つの物語
 戦争孤児。そしてそれが辿る道。
 そんな陰鬱な題材でつらつらと綴られた内容の本を読んで納得した様に頷く『二人一役』Tricky・Stars(p3p004734)。
「よくある話だ」
 彼のギフトは簡潔に言えば「物品等に纏わる物語をフィクションを含んだ形で本に仕上げる」といったものだが、その結果として出来上がったものが『戦争によって父を亡くした孤児の一生』というものである。
 何処にフィクションが含まれてるかは今のところ判別は付かないが、赤ん坊メリーの生い立ちを推察するにこの本はおおよその筋は通っていた。
『まったく、胸糞悪い物語だぜ』と第二人格の虚が吐き捨てる様に言った。そういう悲劇が起きた事自体への怒りと、ワケあっても我が子を捨てるのが許せない、といったところだろうか。
 しかしそんな怒気が籠もった声を聞いて、傍に居たメリーが吃驚した顔になった。
「”書き手“の目の前でそういう事を言うものではない」と、Tricky……もとい、稔が諌めた。とはいえ彼自身もこういう物語は、実際に起こる分にはあまり好みではない。
 せめて救いのある終わり方にしてやりたいものだがと思いながら、窓の方からギルドの近辺で下調べを行っているイレギュラーズへと視線を移した。

「ねえ、君達。今日の深夜から早朝にかけて、赤ちゃんをそこに置いていった人を見ていない? なんでも良いから教えて欲しいな」
 『しがない透明人間』透垣 政宗(p3p000156)は、スキルを主軸に近辺の植物達へ聞き込みを行っていた。
 しかしその時間帯は草花達も眠っていたのか、視界が悪かった事もあったのか、あまり役に立つ様な情報は読み取れない。
 政宗は「むぅ」と唇を動かしながらも他の仲間が情報を仕入れてないか一度ギルドの方へと戻ろうとした。
「ん」
 政宗は、戻る直前にギルドの玄関前の地面に折損した花がある事に気づいた。まだ枯れきってない事から、最近折れたものだろう。
 深夜帯でもギルドの灯りはあるし、もしかしたら赤ん坊を置いていった者の事が分かるかもしれぬとこの折れた花に疎通を試みた。

 ――踏まれたわ。金髪の女の人。見窄らしい格好した。アタシ踏んづけたまま、赤ん坊置いて。

 そんな風に、恨み言混じりの植物の声を聞いて政宗は苦笑する。
「これ以上、可愛い花を踏みにじる事はしてほしくないもんだねぇ……」
 政宗は情報のお礼とばかりに、折れた茎を紐で括って修繕してあげる事にした。

●世話は順調だけれども
「確か大人が飲むミルクとは違いのが必要なんだよね? ……うん、粉ミルクも乳製品だからたぶんいけるはず!」
 『チア衣装でジャンプし以下略』ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)、彼女は何事か、ギルドで保管されていた牛乳を取り出してそれに手を翳していた。
 ……不思議な事に、彼女が手を翳したそれはいつの間にか粉末状の代物に変わっていたのである。
「ミルキィ、それは?」
 隣からその様子を伺っていた『祈祷鬼姫』六車・焔珠(p3p002320)は物珍しそうに質問を投げる。
「ボクのギフト! 普通のミルクから赤ちゃん用ミルクを作ってみようと思って」
 曰く、彼女のギフトは普通の牛乳から加工した乳製品などの類を生成する、食糧供給において便利なギフトだ。
 赤ん坊はお腹が減ったのか少しぐずりはじめていた上に粉ミルクも切らしていたので、この行動には周囲もかなり助かった。少なくとも預かっている合間に粉ミルクが足りなくなる事態は無いだろう。
「いいわね、それじゃあ。これを使ってミルクを作ってあげましょうか」
「うん、栄養と味がとびっきり美味しいのを作っちゃうぞ♪ あまり熱いと赤ちゃんがやけどしちゃうから人肌の温かさでつくってっと……」
 赤ん坊の世話は案外楽しいのか、育児に関して前向きな二人。赤ん坊のメリー自身が感情や要求が分かりやすい素直な子で、比較的世話をしやすい部類だった。焔珠が妖術で生み出した鬼火の事もオモチャの一種か何かの様に喜んでくれている。
 捜索を担当してくれているイレギュラーズの推察曰く、ネグレクトの類ではないだろうというのが共通の見解だ。
 焔珠としてもメリーのおむつを替えてあげた際、身体に火傷や痣の類が見当たらなかった事からその見解は正しいのだろう。そう彼女は納得する。火を怖がる様子が無い事もその考えの一助だ。
 だけれど、だからこそ尚更理解出来ない。
「どうしたの?」
 粉ミルクを作り終えたミルキィが、難しい顔をしている焔珠に気づいてそう言葉を掛けるた。
「……こんなに可愛いのに。どうして手離さなくてはいけなかったのかしら?」
 率直な疑問であった。メリーの様態からなんとなしに事情は察しがつくものの、身勝手な理由の可能性もあるのであまり良い気持ちもしなかった。ミルキィもつられて困った顔をする。
「おそらく、稼ぎ手が居なくなって食うに困っての末の行動だろう」
 声を掛けてきたのは世話係の様子を見に来た稔と政宗であった。その根拠として示す様に、稔は焔珠達に対して先程書き上げた本を手渡す。
「一部脚色が混じってはいるかもしれないが、ついこの間の北部戦線に巻き込まれて死んだ者の家族が路頭に迷うなんてのは不自然な話ではない」
「その証左に、見窄らしい格好の女性がメリーちゃんを置いてったみたいだしねぇ」
 稔の意見に政宗が付け加える様に言った。不安そうな話題が聞こえたから、わざわざ伝えに来てくれたのであろうか。それを受けて、ミルキィや焔珠も微笑みを返す。
「ミルクの準備もできたし、メリーちゃんに飲ませてあげようねー☆」
「……そうね、メリーが幸せになれるよう最後まで世話を焼いてみるわね!」
「うんうん。僕達も他の子達とそれらしい場所を捜索してくるよ。それまでメリーちゃんの事は頼んだよー」
 政宗は何も心配は要らないさ、といった様な態度でアッケラカンと笑っていた。彼は内心、母親と思しき人物がいくら諭しても考え直してくれないというパターンも頭の中を掠めていたが、皆に――特にメリーに悟られない様に決してそれは表情に出さなかった。

●役立つ動物達
「……なんか違う気がするっすね」
 ペットの犬の嗅覚を頼りに町中を捜索していた『特異運命座標』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)。
 犬が自信ありげに案内をしてくれたからと思えば、連れてこられたのは雑貨屋であった。
「メリーさんの育て親さんどこに居るっすかー?!」
 雑貨屋は店先から見るだけでもキチンとした様相で、経営難といった具合ではなさそうだ。仲間達が調べ上げた女性の住処ではないだろうと分かる。
 しかしここで間違いないと言わんばかりに、得意げにおすわりをしているペットの犬。この子が連れてきたのだから何かあるのだろう、そう思いレッドは店に入った。

「金髪で貧乏そうな身なりの女性? あぁ、昨夜見たよ」
 雑貨屋の店員に聞いてみたところ、軽い調子でその様な事を話してくれた。思いがけない収穫に少々びっくりとするレッド。
「ほ、ほんとっすか!?」
「一番安い便箋を小銭ばっかで支払ってきたから印象に残ってる。抱えてた赤ん坊の衣服やミルクとかも同じ様に買っていったっけか」
 そういってその女性が購入したという便箋を取って来てくれる。成る程、ギルドの前で拾われた便箋と全く同じタイプものだ。赤ん坊を置いていったのはその女性の事に間違いない。
「その女性が何処に住んでるのかオジサン知ってるっすか?」
 ここで所在が聞き出せれば直接会いに行けそうなものだったが、残念な事に店主は首を振った。
「俺はこの店に買いに来てくれた客の顔はよく覚えてんだが、初めて見た女だ。店以外でも見かけた事ぁねぇし、少なくともこの区画の人物じゃないだろう」
 レッドはまた振り出しに戻った様な気がして、うなだれた。そして店主に情報の対価と言いくるめられる様にして、愛犬の高級餌を買わされるハメになったのである。
(主人の気持ちに反して、美味しい物を食べられた犬は大変喜んでいたが)

「というわけなんすよ」
 一旦、他の仲間と合流したレッドは、ここまでの情報を話し合っていた。相談相手は『圧倒的順応力』藤堂 夕(p3p006645)である。
「こっちはローレットの周囲で見かけた方が居ないかと聞き込みをしていましたが皆タイミングが悪く……!」
 ギルド周辺なら誰か見かけただろうと思ったが、運悪く誰も見かけていなかった為に心底悔しそうにする夕。しかし別の推察については当たっていたともいえる。彼女はそれを調べるべく、足早に次の目的地に向かい始めた。
「夕さん。何処に行くんすか?」
 そう問われた夕は、レッドへ書簡を見せながら自信がある口振りで行き先を告げてみせる。
「もちろん、街の出入り口よ! これの写しをファミリア達に届けてもらっていたの!」
 レッドはまじまじと書簡の内容を読んでみると、この様な事が書かれていた。 
『ローレットギルドの藤堂 夕より門前の見張りをしている兵士へ。人探しの依頼により、以下の情報求む。特徴は――』

●あやすのに慣れた人達
「メリーちゃんって言うのね~? 可愛い名前でちゅね~?」
 『ひとねむり』微睡 睡(p3p006590)。腕に抱いた赤ん坊メリーに対して、赤ちゃん言葉であやしていた。
 穏やかな喋り方にメリーはきゃっきゃ、と手を伸ばして喜んでいる。睡自身が年下相手の世話に慣れている素振りなのも手伝って、メリーの警戒心も薄い。
「さっきは大泣きしてたけど……これで一安心だね……」
 一緒になってあやしていた『青混じる白狼』グレイル・テンペスタ(p3p001964)は安堵の表情を浮かべる。しかしそれには疲弊が見え隠れしていた。
 彼に限らず、世話を担当したイレギュラーズはその殆どが疲労を感じていた。赤ん坊とは大変なもので、美味しそうに飲んだミルクをすぐに吐き戻してしまう事がある。消化器官など諸々が未発達な為だ。先は危うくそれで喉を詰まらせかけた。
 おむつの取替だって、想像していたよりすべき回数がずっと多い。大泣きし始める原因に関しても、お腹が空いたのかおむつを替えて欲しいのかただ単に眠たいのか。それを見抜くのは子育ての経験でもなければ至難の技だ。
 そも、泣き喚く事に理由が無い事だってある。もしくは、自分達では解決出来ない事がある。メリーがたまに泣き止まない原因としては、おそらくソレだ。
「大丈夫よ~今お姉ちゃんのお友達がママを探してるから安心してね~?」
 自分の周囲に親が居ない事を、薄々理解し始めたのだろうか。時折周囲を見回して、悲しそうに泣き始める事がある。
 その反応からしてグレイルとしても、やはりこの子が痩せ細っているのが虐待の類とは思えぬのだ。だからこそ捜索班が母親を見つけてくる事を期待しているのだが……。
(出来れば……この子の為には最善を尽くしてあげたいんだけど……)
 仲間達が予測している通り、貧困から預けざるを得なかったとすれば親元に戻すのも簡単な話ではない。現実問題として子供一人育てるというのは、それなり以上の金が必要だ。そういった理由で母親と引き離されたら、この子は……。
 そんな事を考えているグレイルに対して、睡がいつの間にか顔を覗き込む様に近づけていた。
「ほら~、グレイルくんもそんな難しい顔をしないの。メリーちゃんが不安がってるわよ~」
 言われた通りメリーの顔を見てみれば、神妙な顔でグレイルの顔を伺っていた。赤ん坊というものは、他人の感情に対して妙に敏感な事がある。
「……ごめんね。色々考えちゃってた……」
 お詫びとばかりに、グレイルはその手の事を考えず無心で赤子の世話を務める。
「あらあら、メリーちゃんったらおねむでちゅか~?」
 二人の世話に一時的に不安が取れたのか、落ち着いた様子で眠たそうにするメリー。いつの間にか布団一式を用意していた睡はメリーをそこに寝かし、グレイルに子守唄を歌ってもらう事にした。
 静かな落ち着いた曲を彼の歌声に、メリーは拍手の代わりに穏やかな寝息を立てて眠り込む。それを確認した睡は、グレイルと面を合わせてゆっくり言葉にした。
「きっとこの子のお母さんにも辛い選択だったと思うの。だから、私達はせめてメリーちゃんが安心出来る様に最善を尽くしましょう?」
 彼女の思いがけない言葉に、グレイルも少々呆気に取られつつもすぐに頷き返した。睡はくすりと笑い、グレイルに一言。
「ところで~、グレイルくんも一緒に添い寝する~?」
 ぽんぽんと横の布団を叩いて、添い寝を誘う睡。
「…………。遠慮しておきます……」
 彼女の言葉が何処まで本気か、計りかねるグレイルであった。

●物語の帰着
 ローレットギルドから幾らか離れた区画の貧民街にて、異様に痩せ細った女性は物憂げに嘆息をついていた。
 帰路の途中、ガラの悪い隣人に「ついにガキを捨ててきたか」と心無い茶化を受けてその場で泣き出しそうになった。
 彼女がそうしたのは事実だ。だから彼女は唇を噛み締めながら、家の扉を静かに閉めた。それから涙をこぼした。
 この女の名前はドリアリィ。メリーをローレットギルドに置いてきた張本人で、メリーの母親だ。
 彼女はこれからどうすべきかと自分の家を見渡した。我が子を捨てた事は元より、先程の誹りを受けた事もあって半ば自暴自棄になっいた彼女は、我が子に向けて何をもって償うべきかとよからぬ事さえ考えてしまう。
『見つけたぜ!』
 閉じていた扉が何者かによって力強く蹴破られた。ドリアリィが驚く暇もなく、相手は詰め寄って来て言葉を続ける。
『子供の幸せってのは家族と仲良く暮らすことじゃないのか。このままじゃあの子は幸せになれねぇ!』
 その口振りからして、彼女はすぐ理解した。
「貴方……ローレットの!?」
『そうさ! お前がギルドに預けた赤ん坊はずっと、死ぬまで辛くて寂しい思いをするんだぞ。子供の幸せを奪うつもりか? そんなの絶対許せない、親がして良いことじゃねぇよ!』
 突然やってきたローレットのギルド員……Tricky・Starsの片割れ、虚はその様にドリアリィへ捲し立てた。彼として思う所があるのか、非常に強い語調である。
「あー、暑苦しい。片割れはこう言っているが、俺は君に同情するよ」
 これでは相手が萎縮するだけだと判断した稔は、ひとまず虚の言葉を抑え込み相手を宥める様に言った。捜索に同行していた政宗、レッド、夕も後ろに控えていた。
「あぁ、後生です……ローレットの皆様方……」
 おそらく、子供の預け先探しを断りに来たと判断されたのだろう。彼女はイレギュラーズに向けて膝をついてから、娘の処遇ついて嘆願した。

 場所をローレットギルドへ移して、彼女の釈明を聞けばメリーを預ける事になった経緯についてはイレギュラーズの推察通りでほぼ相違無い。
「……メリーさんのお母さんはどうしたい……?」
「信頼できる場所に預けたって事は、まだあの子に愛情があるんでしょう。……本当にそれでいいの?」
 複雑な表情をしながらそう言葉を投げるグレイルと政宗。事情は理解したが、その選択は勧めがたい部分もあるというのが彼らにとっての意見である。
「ですけれど……」
 母親は娘のメリーに目をやった。母親に再会出来た赤ん坊は満面の笑みではあるが、それだけに痩せた顔が目立った。
 満足に食事も与えてやれず、この子を苦しませてる自分に母親の資格なんてない。そんな風に自暴自棄気味な言葉で答えた。
 他の者がどう諭したものかと言葉を選んで逡巡していると、夕がもっとも簡潔に言い切る。
「私達を頼って下さい」
 それが呼び水になったのか、レッドやミルキィも言葉を重ねた。
「金銭的家庭的な事情とか仕方ないこともあるっすけど。このままだと親の愛情を知らない子に育つっす。それがイヤなら……ローレットで金銭不足や家庭問題とか今後の相談に乗ってやれるっす」
「メリーちゃんがすくすく育つようにギフトで作った粉ミルクもあげられよー!」
 驚いた風に困惑するドリアリィ。他人にそこまで甘えていいのか、一度見捨てた自分が母親面して良いものかとも漏らして、すぐに睡から言葉を掛けられた。
「どうしてもそうしなくちゃいけない事情があったんでしょう? だけど貴女は此処に戻って来た。本当に後悔しているのでしょう?」
 ドリアリィは言い返す言葉もなく唇を噛んだ。図星だったからだ。稔は少々呆れながらも、彼女を諭した。
「それに縁を切る必要はない。苦しいのなら助けて貰えば良い。孤児院や信頼出来る場所に預けて、面倒を見てもらい、たまに娘の顔を見に行く等方法はいくらでもある」
 虚の言葉を借りるならば、そうしなければ子供の幸せは家族と仲良く暮らすこと。母親へ向けてそれを強調した。
「もう一度メリーちゃんの顔を見て抱いてあげて資格が無いなんて言わせないわ。貴女はこの子の母親だもの」

 イレギュラーズ達にそう諭され、少し長い時間思い悩んだ末に、彼女はもう一度メリーの顔を見てから。何か決意を抱いた様な顔つきで。
「……こんな私でも許されるならば、皆様の力を借りてでも、メリーの為に頑張っていきます」
 そう言う彼女の浮かべる笑みは、人懐っこいメリーと大変似ていたという。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ベビーシッター依頼、お疲れ様でした。
 話の結末としては赤子は信頼出来る場所(レッドさん提案の場所等)に一時的に保護。ローレットから内職や事務を斡旋し、生活が安定してから改めて赤ん坊を引き取るという流れになるでしょうか。
 この結末はキャラクターさん達の提案によるところが非常に大きいですが、GM視点から大変良い落とし所だったと感心しております。

(なお、今回は依頼報酬のゴールドは赤子を心配していた一部ギルド員からのカンパ。母親側の収入に余裕が出来たら彼らに返済される予定)

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