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シナリオ詳細

いつの間にか、貴方のことヲ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●四六時中
 ローマン・ハインミュラーはケヴィン・メッサーシュミットを愛し始めている。
「おい、ローマン! 何、ぼけっとしてるんだ?」
 友であるサネス・メッサーシュミットが声をかける。
「え、あ、なんだ……? 何か言ったか?」
 ローマンは言った。正直、聞いていなかった。
「おいおい、ローマン! 大丈夫なのか? 最近、ずっとこの調子じゃないか……何か悩みごとでもあるのか?」
 サネスは呆れている。ローマンの後頭部には寝癖。
「え……いや、何もないが」
 ローマンは顔をそむけ、悩ましげに息を吐く。
(本当にこいつ、大丈夫か……?)
 サネスは思う。足音。見れば──
「兄貴」
「え?」
 ローマンは目を見開き、振り返る。そこには、ケヴィン──
 屈託のない笑顔、分厚い唇、美しい瞳、長い四肢。何もかも完璧で──
(あ、う……ヤバいな……)
 ローマンは震える。
(今日も、マジでイケメン……あー、あの手に触れてみたい。指を絡めて、見つめ合って……あの唇を……ああ、駄目だ、こんな妄想なんて……てか、なんだよ。俺……どうしちまったんだ……くそ……)
「ローマン? どうしたの?」
 ケヴィンの声がローマンの中に響く。低い声がとてもセクシーで──
「ッア……」
(やべ……めっちゃ、変な声出た……なんで?)
 そう、ローマンはこの感情を理解していない。サネスは眉をひそめた。
(は? こいつ、もしかして……兄貴を……? どうして……いつの間に……)
「え? 大丈夫?」
 覗き込まれる。至近距離の顔、美しい瞳には、ローマンだけが映る。
(う、お……不意打ち過ぎる……苦しくて……死ぬ……)
 ローマンは眩暈を起こしかける。
「あ」
 ケヴィンの声。
「え?」
 伸ばされる手がローマンの寝癖に触れる。
「うぉ……」
「ここ、はねてるね。あ、直らないか」
 完璧な笑み、ローマンの心臓が破裂する。サネスがうんざりしたように息を吐き出す。

●意味が解らない
 ギルド『ローレット』でイレギュラーズ達は『ロマンチストな情報屋』サンドリヨン・ブルー(p3n000034)とともに、依頼人のローマンを眺めた。
「俺を助けてくれ!」
 ローマンは叫び、頭を下げる。
「顔を上げてください。僕達は何をすればいいのでしょうか? 教えてくれますか?」
 サンドリヨンは微笑む。ローマンは顔を上げ、息を吸った。話し始める。
「ケヴィン・メッサーシュミットが何故だか、気になって仕方がないんだ……解らないんだが、ずっと……馬鹿みたいに考えてて……でも、ケヴィンは男だし……俺……何だろう……どうしちまったんだ……ふれてぇとか、独り占めしたいとか……名前を呼んで欲しいとか……ああ……死ぬ……なんだ、これ……今までこんな風じゃなかったのに……変なんだ……胸が痛い」
 ローマンは戸惑っている。サンドリヨンとイレギュラーズ達はローマンの言葉を聞き、その感情が恋だと理解する。サンドリヨンは笑顔を見せる。
「ローマンさん、それは恋です」
「……は? 恋……? 俺がケヴィンに? は? なんで……?」
 ローマンは唖然とする。理解出来ない。
「誰かを好きになることに、大きな理由はありません」
 サンドリヨンは目を細めた。
「だって、気がついたら好きになっていたのでしょう?」
「……え……あ、そうなのかもしれない……よく、解らないんだが……ああ……」
 ローマンはぼそぼそと呟く。
「じゃ、じゃあよ!」
 ローマンは叫んだ。
「え?」
 サンドリヨンは目を丸くする。
「俺はどうすればいいんだ? このままだと俺……駄目になっちまう……」
「……どうすればいいのかはローマンさん、貴方が決める事ですが……貴方はどうしたいのでしょう? 彼とどうなりたいのでしょう? 思うことはありますか?」
 問うサンドリヨン。優しげな眼差し。
「き、嫌われたくない……気持ち悪いと思われたくねぇ……で、でも……出来れば……俺を見て欲しい……」
「そうですか」
 頷くサンドリヨン。じっとローマンを見つめるイレギュラーズ達。
「だから……ケヴィンが俺をどう思っているのかバレねぇように探って欲しい……もし、少しでも可能性があるなら……こんな俺を拒絶しないと解ったら、ちゃんと気持ちを伝える……そう、駄目でもいいんだ……」
 ローマンは言い、ふにゃりと笑う。

GMコメント

 ご閲覧いただきましてありがとうございます。
 今回の依頼はケヴィン・メッサーシュミットの気持ちをバレないように探ることです。それによって、ローマンが告白するかしないか決まります。ただし、告白してもフラれる可能性はあります。

●目的
 ケヴィン・メッサーシュミットが依頼人をどう思っているのかバレないように探る。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●シチュエーション
 昼から夕方
 ケヴィン・メッサーシュミットはその日、仕事が休みの為、図書館にいる。
 サネス・メッサーシュミットはたまたま、休みになったために、ローマン・ハインミュラーの家に前日の夜から泊まっている(ローマンと夜に酒を飲んでいた)特に何もやることはないのでだらだらと過ごすつもりでいる。

●依頼人
 ローマン・ハインミュラー
 25歳の青年。素直かつ正直な性格で、ケヴィンに惹かれている。どうやら、初恋のようだ。ふとした瞬間に妄想する。背は一番、低く、顔は普通。

●ケヴィン・メッサーシュミット
 28歳の青年。石膏像のように美しくて、優しい青年。ローマンのことは昔から知っている。読書好きでちょっとだけ天然。三人の中で一番、背が高い。

●サネス・メッサーシュミット
 25歳の青年。兄であるケヴィンとは異なる容姿(所謂、女顔)で、言葉遣いは荒いが性格は優しい。いち早く、ローマンの変化に気が付く。

  • いつの間にか、貴方のことヲ完了
  • GM名青砥文佳
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年01月29日 21時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エマ(p3p000257)
こそどろ
ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
イシュトカ=オリフィチエ(p3p001275)
世界の広さを識る者
カレン・クルーツォ(p3p002272)
夜明けの蝶
Tricky・Stars(p3p004734)
二人一役
村昌 美弥妃(p3p005148)
不運な幸運
酒々井 千歳(p3p006382)
行く先知らず
シュテルン(p3p006791)
ブルースターは枯れ果てて

リプレイ

●貴方の
 食べ散らかしたテーブル。浴びるように酒を飲み、ローマン・ハインミュラーは眠る。隣にはサネス・メッサーシュミット。時を同じくしてケヴィン・メッサーシュミットは静かな朝を迎えている。珈琲の香り。

 ドアノッカーが激しく鳴り響く。
「おい! ローマン、鳴ってんぞ!」
「んあっ? ん? サネス、ご飯か?」
「馬鹿野郎! 客だ、客!」
「あっ、やべっ! 寝坊した! ごめんなさい! い、今、行きます!」
(あー、彼らが来るんだった……色々、事前に聞いたのに緊張で飲み過ぎちまった。念話で会話とか半径100メートル圏内とか……)
 
 ローマンは客人を迎え、サネスに笑いかける。
「彼らは俺の知人で今日は」
 言葉につまるローマン、助け船を出しだのは──
「カレンよ。彼の行きつけのショップの常連客でね、こう見えても良い年したおねえさんなの」
 『蝶翅』カレン・クルーツォ(p3p002272) が微笑む。サネスはへぇと笑い、小柄な少女を見つめる。
「俺はサネス・メッサーシュミット、ローマンの幼馴染だ。宜しくな? そういえば、どうして今日はローマンの家に?」
「その理由はこれだよ」
 『行く先知らず』酒々井 千歳(p3p006382) がワインボトルを見せる。
「あっ、ロゼ!」
 ローマンが笑う。
「うん、美味しいお酒が手に入ったから遊びにね」
 千歳は微笑み、サネスを見る。
「サネスさん、俺は千歳。良かったら一緒に飲みましょう、折角の酒だ。どうせならたくさんの人に飲んで貰いたい」
「ああ、ありがとう」
「サネス~、つまみ~!」
 ローマンが言う。
「ああっ? うっせぇな! まずは汚ねぇテーブルを片せ。片したら、食前酒を持ってきてやる」
 サネスはドアを開け、廊下へと消えていく。その隙にカレンは小さな栗鼠を放つ。
「待ってくれ、私も手伝おう」
 『終止符を打つ者』イシュトカ=オリフィチエ(p3p001275)が追いかける。
「おう、ありがとう」
「何を作るんだね?」
「ムール貝のガーリック炒めと、モッツァレラチーズと柿のクレソンサラダ、あとチャーハンかな」
「ふふ、とても美味しいそうだな」
「だろう? 何度も作ってるから美味いんだぜ?」
 破顔するサネス。イシュトカは漆黒の尾を揺らし、台所へ。
 『黄昏夢廸』ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)は全てを記録している。
(この恋に気が付いた彼はどんな想いで眠るのだろう? 少しでも彼が報われるように動ければいい。恋は素敵なものだからな)
 口元には微笑、中性的な顔立ち、左耳のイヤリングが光によって紫色に輝き、揺れる。初めて使った感情探知がランドウェラの心に触れる。上手く感知できたようだ。ランドウェラは安堵する。
(これでローマンの感情を伝えられる)
 そう、ローマンは己の感情だけ伝えて欲しいと望んだのだ。

 ローマンはゴミを袋に。手伝うのは、『星頌花』シュテルン(p3p006791)。
「ピザ、食べた、捨てても、嫌?」
「んー、食うかな。サネスが」
「サネスが」
 シュテルンはピンク色の瞳を細め、ギフトを。
(赤……)
 ホリホックの紅が、キラキラと揺れる。
「ローマン、シュテ、わからない。どーして、男だから、女だから、言うの? そーゆー人たち、シュテ、いっぱい見てきた。……気持ち悪い、思う、した事ない。とっても仲良い、素敵素敵だって、思ったの!」
 瞬く間にローマンの表情が変わる。ホリホックの花が萎み、花が落ちる。
「世の中、気持ち悪がる、人、いる、なの? シュテ、そんな人、メッメッ! してあげるっ! シュテ、ローマンの味方! 皆も、そう! ローマン、自分の気持ち、嘘つく、後で、悲しい、なる、わ!」
「……」
 ローマンはイレギュラーズ達を眺める。ふと、千歳がローマンをじっと見つめる。はっとするローマン、サネスが来たのだ。
「おう、待たせたな!」
 サネスが顔を出す。手にはシックなトレイ。鮮やかなオレンジ。ミモザだ。そして──
「千歳とローマン、俺以外はオレンジジュースな?」
 サネスは笑い、テーブルを満足げに眺めた。

 鍵が開く。暖かいままの家、『女三賊同盟第一の刺客』エマ(p3p000257) がぐるりと目玉を動かす。
「えひひ、えひひひ。出かけたばかりのようです。うーん、シンプルで統一感がある家ですね。それに、あそこのタンスにはお金がありそうです、あの絵も高そうですし……なんてね、今日は盗みは無しなんですよね。えひひ。さっさと探して、退散しましょう」
(ただ、パッと見、物が少なそうなんですよね)
 エマは扉を開け、目を細める。壁には写真。そこにはサネスとローマン、ケヴィンが笑顔で写っている。
「えひひひっ、とても仲が良さそうです」

 イレギュラーズ達はサラダを食べている。賑やかな雰囲気。千歳は念話でローマンに話しかける。サネスはいない。
『ん?』
 慣れないようでローマンは口をぽかんと開ける。千歳はくすりと笑う。
『今、ケヴィンさんに関しては他の仲間達が調べているんだよ。だから、心配しないで』
『ああ、ありがとう。皆といると気が紛れる』
『それは良かった。あのさ』
『ん?』
『もし、ケヴィンさんに思いを伝えるのなら今後の事も考えて、サネスさんに打ち明ける事が必要になるかもしれない。それはどうなんだろう?』
『サネスに……そうだよな、言わないと駄目だよな……』
 ローマンは息を吐く。
(好きだと自覚するだけでも、きっと怖いはず。それを親友にも伝えようとするローマンさんを俺は応援したい)
 千歳は目を細める。
『同性同士だって何も悪い事はないよ。珍しい事でもない。だから、誰かを愛する気持ちを殺さないで欲しい。愛に、正解も不正解もないんだ。ローマンさん、俺としては良い結果に向かって貰いたい。けど、どんな形で終わらせるにせよ、勇気の一歩を踏み出すのはローマンさんなんだ。だから、無責任な言葉だけど……頑張って、応援してる』
『ありがとう』
 ローマンは息を吸う。

「んー、無いですねぇ?」
 機敏に動き回るエマ。リビング、寝室、廊下、トイレを物色する。
(物が極端に少ないんですよね)
 エマは、手紙を読みながら考える。どれも、仕事関係のモノ。
(何度も探しましたが日記は無いようです……えひひひっ、想像以上に骨が折れそうですよ、これは!)
 エマは気合を入れ直し、リビングに駆けていく。

「これを使って」
 ランドウェラはそっとハンカチを。
「え、あ? 俺……」
 話の途中、ローマンの目から涙が溢れる。
「好きな人がいるのは良い事だよな」
 ランドウェラは目を細める。
(誰かを想うことは複雑なようでとてもシンプルかもしれない。ただ、状況や考え方が異なるだけで)
 ランドウェラは踏み出し、戦おうとするローマンに心を揺らす。
(ああ、好きが溢れている)
 ランドウェラは千歳を見つめ、千歳は他の者達にローマンの気持ちを伝える。勿論、ローマンから許可を得ている。
(綺麗!)
 シュテルンはホリホックの美しい赤を眺める。
「ローマン君とは長いのか」
 イシュトカはサネスが作った料理を盛り付けながら問う。
「ああ、あいつが小さい頃から知ってる」
「そうなのかね。それはとても素晴らしい事だ。友がいる人生は孤独を満たし豊かにしてくれる」
 イシュトカは言い、「サネス君。最近、彼の様子がおかしいことには気付いているかね?」と尋ねる。
「ああ、知ってる」
 サネスが探るような表情をする。僅かに尖る言葉。物音、振り返るとカレン。
「何か手伝おうと思ってね?」
 にこりと笑うカレンにサネスはありがとうと微笑む。カレンは目を細める。リビングに放ったファミリアがローマンとイレギュラーズ達の様子を知らせる。
「なぁ、どこまであいつは話したんだ?」
 サネスがイシュトカを見る。イシュトカはそっと頷く。彼の賢さを理解した上での頷き。黙るサネス。
 沈んでいく太陽。エマはアクセサリーの一つも見つけられない。
「こんなに探しているのに、ですよ! うおおおっ、断捨離の鬼ですか、ケヴィンさんは! えひひひ、何かこう、決定打があればいいんですけども」
 エマは無意識に浴室の引き戸を引く。
「──あ」
 エマの瞳が大きくなる。濡れたテディベアがちょこんと浴室に座る。

「そうか……兄貴であいつは悩んでる。それは恋だろう」
 サネスが口を開く。
「そうなの。でも、彼は自分のことを気持ち悪いと言ったわ。性別なんて本当は関係ないのに」
 カレンは言う。
「気持ち悪い? あの馬鹿が?」
 サネスが言う。
「ええ、恋はしあわせなものなのに」
「なんで、そんな風に……臆病になるくらいに兄貴のことを……?」
 呆然とするサネス。
「ねえ、貴方から見てどう思う?」
 カレンがそっと尋ねる。
「どう……?」
 揺れる視線。
「ええ、望みはあると思う?」とカレン。
「失礼、私からも。この恋にどのくらいの見込みがあるのだろう? そして、君は彼の恋を応援してくれるのだろうか?」とイシュトカ。
「わたしは、叶って欲しいなって思うのだけど……弟さんからするとやっぱり複雑なの?」
 サネスをじっと見つめるカレンとイシュトカ。そして、蝶のはばたきがサネスの分岐した未来の一つを告げる。

●幸せを
 合流したエマが知らせる、刺繍が入ったテディベアの存在を。足裏に刻まれた生年月日と女性の名前。そして、一枚の写真。笑顔のケヴィンと美しい女性。
「うーん、写真の日付が比較的、新しいんですよね」
 エマの言葉にイレギュラーズ達が困惑する。そう、サネスさえも。

 柔らかな光が落ちていく。ケヴィンはミステリを読み耽っている。影。そこには、『二人一役』Tricky・Stars(p3p004734) 。理知的な顔立ち、涼しげな目元が掴みどころのない雰囲気を醸し出す。
「僕に用事かな?」
 微笑むケヴィン、Starsは演じ始める。Starsが外見に選んだのは稔。
「休みの日に悪いんだが、サネスが酒に酔って動けないらしくてね。君に迎えに来てほしいと言ってるんだ」
「おや、珍しい。何処だい?」
「ローマンの家だ」
「ああ、ローマン」
 ケヴィンは微笑む。Starsはゆっくりと歩く。向かうはローマンの家。
「そうだ、俺は占い師をやっている。特に人間関係を占うのが得意なんだ」
「へぇ、そうなんだ」
「ああ、どうだ? 移動中、暇だし、ちょっと試してみないか?」
「いいね、お願いするよ」
「あっれぇ、Trickyさんたちじゃないですかぁ?」
 被せるように女の声が響いた。振り返るとそこには『不運な幸運』村昌 美弥妃(p3p005148) 。
「おや、キミは」
 Starsが眼鏡のフレームを上げる。
「えへへ、奇遇デスぅ♪」
 小柄な美弥妃が笑うと、触角のように伸びた艶髪が生きているかのように動く。ケヴィンは微笑する。
「君は、彼の友人なんだね」
「そうなんデスぅ! それにワタシ、ローマンさんとも知り合いなんデスぅ」
「へぇ! それはそれは。彼はとても良い子だからね、友人も多いんだろうな」
 ケヴィンは微笑む。
「ええ、ええ! だから、なかなか、遊んでもらえないんデスぅ♪」
「そうなんだ。サネスがローマンを放さないのかな」
 ケヴィンはくすくすと笑う。
「そうかもデスぅ! あー、モテモテなんデスねぇ、ローマンさんは」
「そうかも、僕も大好きだしね」
 ケヴィンの言葉にStarsは目を細める。
(『うおおっ! これは上手くいくんじゃね? 来い、来い! ハッピ~エンドォ~!』)
 虚が怒鳴るように叫ぶ。
(「煩い。少し黙ってろ」)と稔。
(『あー? テンション上がんだろ?』)
(「まぁな。だが、まだ早い」)
(『そうだな。まっ、上手くやるんだぜ! 男の一生がかかってるんだからよぉ!』)
 虚は豪快に笑う。頷く稔。Starsは楽しそうに会話するケヴィンの横顔を眺める。
「あ、そうデスぅ、占い! この人は本当に凄いんデスよぉ、ワタシはかなり信用しているんデスぅ」
 美弥妃はStarsを見つめる。
「あ、え? あ、そうだった……占い! ごめん、忘れてたよ」
「いや、大丈夫だ」
 Starsは嫉妬の鏡を取り出す。美弥妃が笑顔を浮かべ、ケヴィンは興味津々に鏡を覗き込む。
「魔法の鏡?」
「ああ、そんなところだ。では、問おうか。最近の悩みはあるか?」
「悩み? んー、何だろう。親知らずが痛いとかかな、虫歯なんだよね」
「……それは歯医者に行くべきだろう」
「あ、それ、鏡に映ってるの? 凄いなぁ」
「え、ああ、そうだ。何でも見えるんだ」
 Starsは頷く。美弥妃がケヴィンの天然さに笑いそうになる。
「他にはー?」
「そうだな、恋の対象として見ている相手は居るか?」
「恋?」
「この人はそういう占いもできるんデスよぉ、面白いデスよねぇ♪」
「あ、そうなんだ」
「お兄さんはカッコいいですけれどー……恋愛経験はないんデスかぁ?」
「あるよ、あるけど。いつの間にか、フラれることが多くてちょっと自信無い。なんだろう、行動が読めなくて不安になるんだってさ。僕はちゃんと伝えているつもりなんだけど、昨日なんて前にお付き合いをしていた人から、処分に困るからってテディベアを返されてしまってね」
「おー、それは意外デスぅ」
「そうなのかな、弟にはよく呆れられるけど」
「弟さんに、仲良しデスねぇ♪」
「うん」
「ローマンさんとも仲がいいんデスぅ?」
「んー、僕よりもサネスかな? 四六時中、一緒にいるからね」
「ふぅん、そうなんデスかぁ。ローマンさんは所謂、弟みたいな感じでしょーか?」
「うん、そうだね。弟かな」
「おおっ、見える。見えてきたぞ!」
「え?」
 ケヴィンと美弥妃がStarsを見つめる。
「占いによると、君に好意を抱く人物が近々現れると出た」
「そうなんだ、誰だろう」
「ん? おや?」
 Starsは眉をひそめる。
「まさか、悪いことでも?」
 美弥妃が驚く。
「え、そうなの?」
「……聞いてもいいだろうか」
「うん、いいよ」
「例えば、それが異種族や同性であっても、君はその人を愛することが出来るだろうか?」
「そうだね……僕は異種族とも同性とも付き合ったことがないからあくまでも想像になってしまうけど、これだけは言えるよ。偏見の目は持ちたくない。もし、好きになれたらその人をただ、愛したいよ。未来は誰にも解らないしもしかしたら、僕は貴方を好きになっているかもしれないし……あ、答えになってる?」
「ああ、ありがとう。ケヴィン、キミを好きになる人はきっと真面目で誠実だろう。キミの優しさをちゃんと感じ取れている。まぁ、残念ながら誰であるかまでは映っていないのだが」
「そうなんだ。それにしても、照れちゃうね」
「はー、素敵な話デスよぉ。溜息が出ちゃいマスぅ!」と美弥妃。
「えへへ、ありがとう」
「最後の問いだ。君が最も慕う友人は誰だろう?」
「んー……デニスかな? 彼とはよく、山に登ったりするんだ」
「そうか。その人とは、今後も良い関係を保てそうだ」
 Starsは言い、ああと笑う。目的地に着いたのだ。

 ケヴィンは一人、外で待っている。ふと、ドアが勢いよく開く。
「サネス、大丈夫──」
 映るのは弟ではなくて──
「ケヴィン、俺ッ──!」
 ローマンは顔を真っ赤にしケヴィンを見つめる。ローマンは想う。
(たとえ、弟のように思われたとしても)
「好きだッ、大好きなんだ!」

 ランドウェラは室内で目を細める。触れるケヴィンの心。
(ああ、浮かぶのは──)
 その答えは、ランドウェラだけが知る。

●願うよ
 ローマンはベンチで、スモークターキーレッグを食べている。息を吐く。溜息の後に、涙が零れた。
「──ッ!?」
 目を見開き、振り返る。ベンチが蹴られたのだ。
「あ? なんだ、痔だったか?」
 にやにやと笑うサネス。ローマンは首を振る。サネスはローマンを見た。思い出す。ケヴィンの性格から可能性がゼロではないことを告げた際のカレンを。
「わたしたちのお仕事は貴方のお兄さんがどう思うかそれを調べるだけなの。だから、あなたも素敵な恋をしてね」
 にこりとするカレンにサネスは動揺したのだ。
「全てはあなたの心次第デスよぉ。自分の心に素直になって行動できればその結果がどんなものだったとしても後悔は生まれません」
 美弥妃の声が再生される。
「好きという気持ちは少なからずあるんだ。愛に変わる可能性はある。諦めてはいけない」
 これは、Starsの言葉。
「与えられたものは全て情報でしかない。信じるのは自分なんだ」
 千歳のしっかりとした声。
「ローマンの気持ち、シュテは、叶うといいなって、思う、する! だって、誰かを好きになる気持ち、とっても、とっても、素敵な事! どんな恋も、いけない事、だ、なんて……思えない……だからっ!」
 シュテルンの励まし。
「どんな結末であろうと私達は君の味方であることは確か」
 イシュトカの力強い声。
「もしかしたら、告白で意識するかもしれませんし告白しないのも自由です、えひひ」
 エマの笑い声。
「僕には恋も愛もわからないけど、想う事って重要なんだろ? だから、後悔だけはして欲しくないんだよ」
 ランドウェラの言葉。サネスは噛み締める。紛れもなくそれは自分に反射し──
「ああ、俺は」
 少しずつでいい、怯えなくていい。
「ローマン!」
 サネスはローマンの手を強引に掴み、駆け出す。目的地はまだ、決まっていない。

成否

成功

MVP

Tricky・Stars(p3p004734)
二人一役

状態異常

なし

あとがき

 皆さん、お疲れ様でした。

 MVPは占い師を演じた貴方に贈らせていただきますね。

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