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シナリオ詳細

悪鬼の夢

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●夢と現の境界で

 夢。
 そうこれは夢だ。

 どこまでも軽い身体。一つ力を入れて飛べば、あんなに高い建物すらも飛び越えて、まるで空を飛ぶかのように軽やかに。
 邪魔な物はこの腕で粉砕する。強靱な力はどんなに硬いものであろうと砕いてしまう。鍵の付いたドアなんて、一撃で粉々だ。
 自分一人でもこんなに強いというのに、この夢の中では私に付き従う小鬼達がいる。邪悪に歪む顔も可愛く思えるから不思議なものだ。
 そして、高ぶるこの気持ち。
 突き抜けてしまいそうな高揚感と、興奮。これを抑えるには人間、そう人間を滅茶苦茶にしないとダメだ。
 なぜ人間なのか。わからない。わからないけど、人間を犯し殺して、バラバラにしてやらないと治まらない。これは本能だ。
 ほら、見ろ。
 今日も怯え竦んだ人間が、こっちをお化けでも見るような目で見て居るぞ。
 さぁて、今日はどうしてやろうか。
 得意げに舌舐めずりして、私は人間達へと近づいた――

 ………………。
 冷たい風が心地良い。
 血濡れた身体が乾いていくと同時に、高まっていた気分もスゥと落ち着いてくる。
 嗚呼、今日も楽しかった。
 こんな楽しい夢ならば、毎晩みたいものだと思った。
 ――不意に視界がぼやけてくる。
 目覚めのときだと、自覚する。
 小鬼達が消滅し、月へと伸ばした手は夢の続きを願うものか。
 指に嵌まった指輪が妖しく輝いた。


 悪鬼が毎夜村を襲い人々を殺戮している。
 そんな村の悲鳴に領主は幾人かの兵を送ったのが三日前。
 兵は為す術無く悪鬼にやぶれ、死傷者が増えただけだった。
「そこでローレットへとお鉢が回ってきたわけね」
 『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)が依頼書を揃えてやってくる。
 依頼は、村に現れる悪鬼の撃破。だが事情は少々異なる。
「村の青年が、自らが犯人だと名乗りをあげたようなの。
 毎夜夢に見る光景。それはまさに事件と同じ場所を見ていたそうよ」
 夢遊病者か、それとも――何にしてもその男の監視は必要だろう。
「男の名はゼンタ。名前の通り評判の良い善人みたいだけれどね。
 いつの頃からか夢に見出したということらしいけど、どうにも記憶があやふやのようね」
 男の主張は、悪鬼の右手についた指輪が自分の物と同じだということらしいが、それ以外に目につく共通点はない。
「いろいろ考えつきそうな点はあるとは思うけれど、まずは被害者をこれ以上出さない事が第一になるわね。
 それから、悪鬼の撃退、ゼンタの確認、そして原因の特定というところかしら。
 やることは多いけれど、頑張って頂戴」
 情報を書き込んだ依頼書を妖しく微笑みながら渡してくるリリィ。
 さて、誰が悪鬼で、悪鬼は誰なのか。
 解決に向けて準備を始めるとしようか。

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 夢見た世界は現実か否か。
 夢より這い出た悪鬼の正体を掴みましょう。

●依頼達成条件
 悪鬼と小鬼の撃破

■オプション
 悪鬼出現の原因を特定し、それを除去する。

●情報確度
 情報確度はAです。
 想定外の事態は起きません。

●悪鬼について
 一ヶ月ほど前から村に現れ始めた悪鬼。数は一体。
 成人男性の二倍はありそうな巨躯に、強靱な力を持った殺人鬼。
 人間を殺す事に喜びを見いだす、悪鬼羅刹に他ならず、対話は不可能。
 戦闘となれば力尽きるまで戦い続けるだろう。
 夜の間のみ出現し、その右手には紅い指輪が嵌まっている。
 物理攻撃力、防御技術、EXA値が高く、パワータイプに思われるが、反応、回避値も低いわけでなく、パワーよりのバランスタイプと言える。

 取り巻きに小鬼が六体おり、こちらは耐久力に優れているようだ。

●ゼンタについて
 悪鬼に襲われた村に住む善良な村人。
 毎夜見る高揚感と興奮に包まれる夢に、自分の内面にはとんでもない悪意が潜んでいると思い悩む。
 また夢に見る悪鬼の手には自身と同じ指輪が嵌められていることから、自分が悪鬼に他ならないと主張するようになる。
 夢を見始めた時期は不明だが、指輪は半年前に行方不明になった元恋人から貰った物。
 一人暮らしであり、目を覚ましても着衣や環境に異常はない。
 指輪は指が太くなったのか、自力では取り外せないようだ。

●戦闘地域
 幻想西部のある村になります。
 月満ちる深夜一時です。
 村の中での戦闘となりますが、障害物は少なく視界は良好でしょう。
 
 そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • 悪鬼の夢 完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年01月30日 22時15分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ナーガ(p3p000225)
矛盾一体
セララ(p3p000273)
魔法騎士
グレイ=アッシュ(p3p000901)
灰燼
リトル・リリー(p3p000955)
小さな騎兵
ボルカノ=マルゴット(p3p001688)
ぽやぽや竜人
ヨルムンガンド(p3p002370)
暴食の守護竜
ラクリマ・イース(p3p004247)
白き歌
シャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)
正なる騎士を目指して

リプレイ

●調査
 夢に見る悪鬼。そして同時に現実に現れる悪鬼。
 偶然の一致か。それともそこに理由があるのか。
 村人を殺戮し続ける悪鬼の正体を掴むため、イレギュラーズは村へとやってきた。
 まずは何はなくとも調査である。
 事前に得られた情報からファクターを抽出するのならば『ゼンタ』、『恋人』、『指輪』の三つに絞られるだろう。
 イレギュラーズはその三つに焦点を当てつつ、調査を開始した。
「――それで、ゼンタさんにおかしな言動とかはなかった? 夢の話以外で普段の様子とか」
 シャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)は村を回ってゼンタの人柄について確認をとる。特に村での評判の良いゼンタだが、なにか見落としがあるかもしれない。
「いやぁゼンタくんは良い子だよぉ。普段もおかしな事なんて聞かないねぇ。
 夢のことを話してきたときは村の全員がびっくりしたくらいさぁ」
 村人達の答えは皆声を合わせて一緒だった。
 ゼンタという人間は善良を絵に描いたような人物であり、虫も殺せないような人間だと。事前に聞いていた評判通りの人物であることは間違いなかったのだ。
「それなら、もう一つ。ゼンタさんの恋人について教えて欲しいのだけど――」
 行方不明になった恋人。その失踪について村人達は一様に首を振った。
 そんな恋人について気になる情報が一つあった。
 ゼンタとは上手くいっていたが、それはかなり恋人上位の関係だったようだ。
「ゼンタくんの恋人だったケルティはねぇ、付き合いだした当初はゼンタくんに相応しくないと思ったんだよ。暴力的で狡賢くて……村では評判の悪女だったからねぇ。なんであの女が、何かゼンタくんを陥れるつもりなんじゃって噂だったよ。ただね――」
 そう言って村人はその考えが間違いだったことを口にする。
「あるときから、ケルティの性格が見違えるほど良くなったのさ。昼間はそうでもないのだけど、そう特に夜に姿を見せる彼女はまるでゼンタくんのように善良でねぇ。その見目もまるで聖女のようだったさ」
 夜と言う言葉にシャルティエはなにか引っかかる。――何かがある。そう感じた。
 村人からの情報をシャルティエは仲間の元へと持ち帰った。
 シャルティエが村人の調査を行っている最中、イレギュラーズの幾人かが渦中の人物ゼンタの元を訪れた。
 ゼンタの風貌は見るからに善良無害な様子だ。
 当のゼンタはひどく落ち込んでおり、自分が犯人だと疑っていない様子であった。
「まずはその気になる指輪を見せて貰おうかな」
 魔法探偵を自称する 『魔法騎士』セララ(p3p000273)がゼンタに頼みその指に嵌まった指輪を見せて貰う。
 まず目に付いたのはゼンタの指だ。太くなったと聞いていたが、その指全てが見るからに似つかわしくないゴツゴツしさを持っていた。なるほど、これなら指輪が取れないというのも頷ける。
「指の締め付けが痛くはないの?」
 その質問に「それが全然痛くないのですよ。不思議な物です」とゼンタが答えた。
 きゅぴーんとセララは観察眼を用いる。未知の物品を見通す瞳は、指輪の古代性を見破った。明らかに近代に作られたものではない。禍々しい魔力が隠匿されている気配を感じた。
 それは近くでエネミースキャンを行う『白き歌』ラクリマ・イース(p3p004247)も微弱に感じたようだ。敵意、そのものが内包されているように思う。
「恋人とペアだったりしないか?」「ええ、そうです」
 『暴食の守護竜』ヨルムンガンド(p3p002370)の質問にゼンタが頷く。
「魔法の品、それに類するもののようだ……なにかその手の話や伝承とか聞いていないか?」
 セララとラクリマの判別した情報からヨルムンガンドが質問する。
「そういえばケルティは魔女を名乗る女から貰ったとか言っていました……いやきっと貰ったというのは嘘ですね。彼女のことだからきっと騙したり力尽くで奪い取ったのでしょう」
 話に聞く限り相当に悪い女のようだ。なぜそんな女と付き合ったのか、尋ねれば「一目惚れだったんです」と苦笑した。何度も押しかけたゼンタに根負けして――或いはそんなゼンタを利用しようとして付き合いだしたのかもしれない。
 だが魔女というのは気に掛かる。その者が復讐で二人を陥れたのか――それにしては目撃情報がない。信憑性に欠ける空想だ。
「恋人が失踪した理由はわからない? どこか行く当てとかさ」
 セララの質問はしかしゼンタの項垂れた様子から答えは明確だった。なにも手がかりがないのだ。
 確かに、ゼンタの元へ訪れる前に立ち寄った恋人ケルティの家はもぬけの空だった。捜索するも手がかりは得られない。
「じゃあさ、失踪直前、なにか様子に変化はなかった?」
「私は会った事はないのですけど、村の人達がいつもいっていました。夜にケルティにあったらまるで別人のようだったって……驚きなんです、村ではあまり評判の良い人ではなかったから」
 そこに嘘はない。
「それと、彼女がいつのころからか言ってました。”夢の中で私は聖女さまになって人々に微笑みかける”のだと。笑い草さと、彼女はどこか自嘲気味に笑っていましたけどね」
 それはまるでゼンタの見る夢とは真逆。
 悪しき心を持った女が聖女となり、良き心を持った男が悪鬼となる。
 共通するは二人が手にした指輪。
 大凡の情報は集まった。イレギュラーズは集まり情報を交換すると一つの推理、推測を立てる。
「ゼンタが何故悪鬼の夢を見るか……原因はまず間違いなく指輪だろうなぁ」
「それは鑑定して見た禍々しさや、同じ指輪を付けていたケルティが対極であるけど不思議な夢を見ていたことが裏打ちするように思えるよ」
「周辺環境に異常はなく、忽然と姿を消した恋人。恋人が悪鬼へと変化していた可能性は捨てきれませんが、恋人が似たような夢を見ていたことから状況的に薄くなりましたね」
「無実であると信じたいけれど……そうなるとゼンタさんが悪鬼という線も色濃くなってくるね」
 もう真相はそこまで来ている気がする。
 あとは、現場の状況を確認し、更なる確証を得るだけだ。
「最後に一つ、少し失礼するよ」
 『灰燼』グレイ=アッシュ(p3p000901)がゼンタの瞳を見つめる。イドの釣瓶は無意識を表層へと押し出すギフトだ。
 魔眼を見つめるゼンタ。その善良な表情が――見る間に変化していく。
 邪悪。
 まるでその表情が自然であるかのように振る舞うゼンタは、いつまでも邪悪な笑みを浮かべていた。
 
 そして、イレギュラーズは村が寝静まる深夜を待った――

●夢散する悪意、そして――
 ゼンタの部屋の小窓に一匹の小鳥がやってくると、中を窺うように視線を侍らせる。
「ばっちりみえるね。いまのところいじょーなし」
 その小鳥は『小さな騎兵』リトル・リリー(p3p000955)の召喚したファミリアーだ。五感を共有するリリーが寝静まったゼンタを監視する。
 深夜一時を過ぎた頃、事態はゆっくりと変化する。
「あっ!」
 リリーが小さく驚きの声をあげる。
 視界の先、寝ているゼンタの指先――指輪が妖しく輝き虚像を描き出す。
 ゆっくりと形作られるその姿。悪鬼だ。
 実体を持ち固定化されると周囲には小鬼も生み出されていた。
 それが完了すると、悪鬼はまるで自分のねぐらから這い出るように家の扉を開けて外へと飛び出した。
「みんなくるよ!」
 叫ぶリリーは未だゼンタを確認している。そこには幸せそうな寝顔で寝ているゼンタの姿が映るのみだ。
「きょうもアイしにいくんだね! ナーちゃんともアイしあおうよ!」
 飛び出した悪鬼を、同じく飛び出した『矛盾一体』ナーガ(p3p000225)が止める。縺れるように地面を転がった二人は咄嗟に離れて間合いをとった。
 イレギュラーズも駆けつけ悪鬼を囲む。
「なるほど、悪鬼であるか。
 その名に恥じぬ邪悪な姿である」
 『ぽやぽや竜人』ボルカノ=マルゴット(p3p001688)が身構え悪鬼の姿をしっかりと捉える。
 楽しい”狩り”の出鼻を挫かれた悪鬼は、怒りの形相でイレギュラーズ達を睨めつける。
「グルォォ……!」
 低い唸り声のような”怒り”を漏れ出しながら身体に力を籠めて「今日の狩りの獲物はお前らだ」と言わんばかりに身構えた。
「来い……今夜で『夢』は終わりだ」
 ヨルムンガンドが突きつけると同時、小鬼達が一斉にイレギュラーズへ走り出す。
「来たであるな!
 でかいのの取り巻きなんか、怖くないであるからな!」
 ボルカノは小鬼を引きつけるように前にでて、先手の一撃を見舞う。
 呪詛を込めた生命力がボルカノの紅き手に宿る。呪いを纏った爪による一撃は堅牢な防御を打ち破り凶を呼び込む爪痕を残した。
「なんとも手応えがない奴等だね。指輪によって作られた存在だからかな」
 小鬼へと攻撃を繰り返すセララがその感触を言葉にする。実体はあれどまるで幽霊を斬っているかのようだ。
 カードをインストールし真白の衣装へと変わったセララが身を捻り放つ魔法剣。絶対零度の斬撃、輝く剣閃が小鬼を氷結させた。
「ゼンタさんまるでこわいおにさんになったみたい、こわいねがおしてる……!
 でもだめーじはないっぽいね。ならゆびわをこわせば!」
 悪鬼との戦いの最中ゼンタとのリンクを確認するリリー。リリーの言うように、ゼンタはまるで悪鬼の気持ちを表すように狩りを邪魔され憤懣している表情を浮かべているようだ。だが、同時に悪鬼へのダメージはゼンタにまで及んでいない。直接的なダメージが意識の共有のみがなされていると思えば間違いはなさそうだ。
 リリーは式符を操り黒炎鳥を呼び出せば、続けて冥界から”隣人”を呼び出す。そうして多くの状態異常を与えると、最後は致命的な猛毒もつ大蛇を悪鬼へと放った。度重なる阻害に悪鬼は自由に動く事ができなくなった。
 衝撃は指輪にダメージを与える。だが、どういうことだろうか。傷付き壊れかけた指輪が、瞬間、まるで傷などなかったかのように復元する。
「ゆびわがこわれない!」
「指輪から実体化した存在だからですかね? ならやはり倒さないといけませんね」
  ラクリマの言葉にナーガが嬉しそうに声をあげた。
「よくわからないけどアイせばいいんだね!」
 その為にはまずは周りにいる小鬼が邪魔だ。ナーガは小鬼へと飛びかかり、得意の格闘戦へと持ち込む。
 暴君たるボーくんを地面に突き刺して、放つ拳は衝撃波をともなう絶大なブロウだ。ショックを引き起こす一撃に小鬼達が戦々恐々とする。
 ナーガの動きは止まらない。仲間を巻き込まないと見れば、まるで遊具で遊ぶかのように大きく屈伸運動から大ジャンプ。アイの重さを伴った、質量の落下、同時に振り下ろされるボーくんの一撃は強力な一撃となって地面ごと小鬼達を破砕した。いくら耐久力にすぐれていようと、無駄なことなのだ。
 イレギュラーズの攻撃を受けながらしかし悪鬼もその悪性を発揮する。
 手始めにブロックするヨルムンガンドだ。一瞬の隙をついて肉薄すればその防御を砕く絶大な一撃を叩き込む。一撃は次の瞬間には乱打となってヨルムンガンドを襲う。残虐なる暴風が鉄壁たるヨルムンガンドを揺るがす。
「一撃が想像以上に重そうですね。可能な限り支えますよ」
 ラクリマの生み出す白く優しい幻の雪。同時に響く白き歌が傷付いた者達を癒やしていく。
 攻撃の優先度を低めたラクリマは回復を主体にし立ち回る。特に戦場のマエストロたるラクリマの戦術指揮は戦う仲間達に効果的だ。
 小鬼達の攻撃によって膝を付きかねない仲間達を庇い、戦力的な低下を押さえるラクリマはまさに戦う仲間達を裏で支える外す事の出来ない支柱だ。
 そうしてイレギュラーズの小鬼排除を優先した動きの結果、小鬼達を比較的早く処理する事ができた。
 傷付き息絶えた小鬼達は、地面に倒れるとサラサラと光になって消えて行った。実体化が終わったのだ。
 しかし、小鬼を優先した代償というものもある。あまり攻撃対象にならなかった悪鬼がその力をブロックするヨルムンガンドに多く叩きつけたことは事実であり、パンドラが輝くのも避けられない事態だった。
 ヨルムンガンドが後退する中、セララが悪鬼の抑え役に周りその攻撃を一身に受ける。
 悪鬼だけとなった戦いは、イレギュラーズにとって慎重を期するものとなる。
 もし命を奪いゼンタが死ぬ事になれば依頼の成否にかかわらず目覚めの良い話ではないからだ。
 指輪を壊す事が叶わないのであれば、戦闘不能にし様子を見る他なかった。
「せめて、特訓の成果くらいは出して見せる……! はぁぁ――!!!」
 裂帛の気合いとともに、シャルティエが肉薄戦を挑む。経験は浅いながら、特訓によって磨かれた攻撃は、たしかな手応えを返す。
 大きく振るった斬撃が悪鬼の身体を切り裂く。身体を捻った横薙ぎからの縦斬りが悪鬼を大きく後退させる。
 誇り高い騎士を目指すシャルティエはまさに騎士らしい真っ直ぐな戦いを見せた。
「もう、大丈夫だ。もう一度スイッチするぞ……!」
 戦線へと復帰するヨルムンガンドがセララと瞬間立ち位置をスイッチする。今一度悪鬼の面前へと飛び出したヨルムンガンドが夜色の吐息を吹きかける。不吉呼ぶ黒炎はこれまでと同じように悪鬼を激情させ敵視を稼いだ。
「君みたいな乱暴者……放って置けないからな、夢の終わりまで付き合わせてもらおう……!」
 暴風の如き悪性を恐れる事無く、ヨルムンガンドが立ちはだかり悪鬼を抑え込む。
「あの時見た表情――紛う事無き悪鬼と同質のものだったね。
 さて、彼は今この状況をどう思っているのだろう」
 昼間見た者達との戦い。それも劣勢に置かれている状態は悪夢に他ならないだろうか。
 そのことを想像しほくそ笑むグレイは、実に自らの好奇心に従順だ。全てが終わったあとゼンタがどのような結末を辿るか、その物語を期待してならないのだ。
 消耗を始めた悪鬼へと威嚇術を放ち、不殺を心がけながら戦闘能力を奪っていく。
 何かあればいつでも始末をつける。その心算でグレイは攻撃を続けた。
「さあそろそろ止めであるよ!!
 ただ人を襲うばっかりの鬼なんて、いらないのであるよ!」
 ボルカノが悪鬼を追い詰める。仲間達に倣い慈悲を心がけた一撃が悪鬼のこめかみを叩きつけた。
 大きく揺らいで、悪鬼の膝が折れ掛ける。
「……あんしんしてねむるといいよ、わるいおにさん」
「アイしてあげる!」
 そこにダメ押しのリリーの呪術と、ナーガの拳がクリーンヒットする。これにはパワーファイターの悪鬼も堪える事はできず、遂に大きな音を立てて横倒しに倒れた。
「見て! 悪鬼が!」
 倒れた悪鬼が実体化を保てず夢散していく。
 これで全てが終わったのか――そう思った矢先、まるで村中に響くであろう大声でゼンタが嘆き嗚咽を漏らした。
「ゼンタさんになにかあったのか――!?」
「ううん、ゼンタさんはぶじだよ! でもあたまをかかえてまるでわすれていたことをおもいだしたかのよう……!」
 イレギュラーズは急ぎゼンタの部屋へと向かった。
 そこで一同はことの真相を知る事になる。

●真相

「あら、お前さん良い指輪を持ってるじゃないか。それも両の手に一つずつ。ペアになってる指輪なんだねぇ」
「へぇ……目が効くんだねお嬢さん。これは特別な指輪でね、なりたい自分に変えてくれる素敵な指輪なのよ」
「妖しいねぇ……あんた魔女かなにかかい? ちょいとその指輪を見せてご覧よ」
 そういって女は魔女らしいものから指輪を受け取ると自分の懐にしまいこんでナイフを突きつけた。魔女は笑って「持って行くといい」と差し上げた。
 そうして女は指輪を奪い取った。
 その指輪は魔性の指輪。
 付けた持ち主の心の清らかさを反転させて夢現に実体化させる呪具。
 清らかな心を持つ者がつければ、生まれ出でるは邪悪の権化。
 邪心に染まる者がつければ、生まれ出でるは神の如き清浄さ。
 指輪は二つで一つ。分けて付けてはならないものだった。

「私は……なんてことをしてしまったのだ……」
 頭を抱えるゼンタは全てを思い出していた。
 指輪を一つ受け取ってから幾日か、膨れあがった邪悪はその姿を悪鬼へと変貌させ実体化した。
 最初は村の外で動物を狩り、そしてついに最初の人間を狙うときが来た。
 その日夜を出歩いていたのは、久しぶりに夜遊びへと繰り出した”眠っていない”ケルテイだった。
 証拠を残さぬように村の外へと連れ去って蹂躙しめちゃくちゃにした。血肉を啜る様はまさに悪鬼に他ならない。
 そうして人の味を占めた悪鬼は、次第に大胆に、証拠も残す殺人鬼へと変貌していったのだった。
 ゼンタが表面的に善人であればあるほど――潜在的な悪意が膨れあがり、それはゼンタの身をも置かしていく。
「きっとこのままでは私は現実に悪鬼になってしまうでしょう……その証拠に私の指はもう変わり果てて――おっしゃっていたように、どうか私の指を……落としてください」
 ゼンタの告白。そして決意を感じ取ったイレギュラーズは、可能な限り痛みを感じないようにその指を指輪ごと落とすのだった。
 宿主を失ったように、自然に指輪がひび割れて壊れた。
 そう、これでようやく、悪鬼の夢から彼は解放されたのだ。

 ただし、その心には表面化し肥大化した悪意を抱えたままに――

成否

成功

MVP

セララ(p3p000273)
魔法騎士

状態異常

なし

あとがき

 澤見夜行です。

 ポイントは『性格の反転』でした。
 この点を予想し、反転したゼンタが真っ先に狙う人物を考えると恋人の失踪はより明確になるかと思います。
 恋人の設定についてはアンフェアな感じでしたので、そこは申し訳ありません。本筋には関係の内部分なのでご容赦頂ければと!
 恋人が悪鬼に変貌していた! という推理は外れてはいた者の、とてもドラマティックでよかったと思います。ぶっちゃけ本筋を変えて採用しようかと思いました。
 少々未来の暗い終わりとなりましたが、エンディング的には二番目に良い終わり方です。
 一番は指輪の効果を予想し、悪鬼を倒さずに、寄生する指輪をなんとかして壊せれば迎えられました。もちろんその場合は大成功ですが、割と脳内当てになってしまいますね。

 MVPは悩みましたが情報をより多く引き出したセララさんへ贈ります。名推理は披露できませんでしたが、魔法探偵の実力を発揮できていたと思います。

依頼お疲れ様でした! 素敵なプレイングをありがとうございました。

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