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シナリオ詳細

海上マーケット セントエルモ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●セントエルモ
「こちら依頼人のスケトウさんなのです」
「やあ、君がローレットから派遣されたっていうイレギュラーズだね。よろしく! 僕の名前はスケトウ」
 どこかぷっくりとした小太り体型のディープシー『カマボコ』氏は、あなたの手を握って上下に振った。
 糸目に丸眼鏡にベレー帽。ダウンジャケットを着込むこの男。外見だけでも随分と個性的だが……。
「僕は海洋から幻想にかけてのエリアで商売をしてるんだ。加工食品が主力でね。主力商品はこれさ、見てくれるかい?」
 カマボコ氏は、竹で出来た箱を開いて見せた。
 真っ赤な鯛を模した、大きな大きなカマボコであった。

 海洋の島に工場をもつというスケトウ氏。
 彼の経営するウメカマフーズより発売される祝いカマボコ他数点の練り物商品。これを初春に開催される『セントエルモ・マーケット』で発売するのが目的だ。
 セントエルモ・マーケットとは海洋で一月に開催される物産展のようなイベントで、巨大な船の上に各自ブースを出して販売するというのが特徴である。
 そのため『船上マーケット』とも呼ばれたりする。

「今度の開催地が決まったんだけれど、そこへたどり着くにはちょっとばかり手間なんだ。
 船はあるけど水夫が足りなくてね。それに危険なエリアも通過するから護衛も欲しい。
 水夫も護衛も両方……ってところはあんまりなくて、今回万屋であるところのローレットさんにワガママをいうことになった次第さ」
 祝いカマボコはこの時期よく売れる。そのためスタッフの多くはあちこちへの納品にかり出され、セントエルモマーケットに向かうための水夫が足りなくなったらしい。慌ててレンタル水夫を当たってみたが年始需要でキャンセル待ち状態。ローレットはそんな事態のピンチヒッターとなったわけだ。

●マーケットへ船を出そう
 ローレットの業務は主に水夫と護衛。
「僕も船の運転はちょっとはできる。けど、出店に向けた準備をしたいから、できれば運転が出来るひとがいたらいいな」
 航海術や操船技術。勿論これが無くても本を片手になんとかかんとかやることはできる。
 技術があれば近道ができ、任せられるというものだ。
「船旅は大体2~3日くらいはかかるかな。その間の料理や、ちょっとした雑務もできたら嬉しい。勿論無くても死にはしないけど、旅は快適なほどいいだろう?」
 船自体は8人がそれなりに協力すれば普通に運行可能な仕組みのもので、通常業務に加えて得意分野があればそれを割り振っていきたい、ということのようだ。

 次に護衛任務。
 ここからはボクが紹介するのですといって『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が資料を開いた。
「セントエルモに向かう海域には海魔が発生するポイントがあるのです。
 発生する海魔の名前は『エッジトビウオ』……普段は海中で生活していて、海上に船が通るとそれを察知して飛び出し、襲ってくるというものなのです。
 肉眼でとらえることが難しいので、危険な海域に入ったら警戒をしておくのが大事、なのです。
 帰りは安全な海流にのって行くことが出来るので、護衛任務はいらないそうなのです」
 依頼されているのは水夫と護衛。
 なので、セントエルモ・マーケットでは自由に見て回ってもよいということだ。
「よろしく頼むね、ローレットの皆さん」

GMコメント

 オーダー内容は水夫(ここでは船旅のスタッフ全般をさす)、として護衛です。
 実質的には行き帰りの往復を要しますが、リプレイ尺の問題から行きの部分だけを描写・判定するものとします。(帰りのプレイングを必要としません)

【船旅パート】
 水夫となって2~3日の船旅を提供します。
 船は既にあり、カマボコをはじめとする商品が沢山積み込まれています。ちなみに木造です。ウメカマ一号といいます。
 水夫の仕事は船旅の間発生するすべてが該当します。
 操縦や点検、清掃、食事は勿論、旅の間に発生する時間を豊かに過ごす工夫があればあるほどよしとされます。
 これは水夫(イレギュラーズ)たちの精神衛生にも影響するため、後の戦闘パートに快適に過ごせた分だけの判定ボーナスが入ります。

【戦闘パート】
 エッジトビウオの群れに遭遇。戦闘します。
 どこの海域で発生するかは分かっていますが、いつ出てくるかは分かりません。
 警戒し、発生し次第戦闘に当たってください。
(※エネミーサーチの判定に関して:船上に出て見回りをしている状態であれば、今回に限りサーチの対象になるものとします)
 遭遇は恐らく1度。多くても2度くらいになるでしょう。

・エッジトビウオ
 海から飛び上がり、飛行するモンスター。
 エラがナイフのように鋭く、命中した対象を【出血】させます。
 大抵は群れで発生し、10~20匹で密集した状態で海上に出現、しかしすぐにあちこちに散らばってしまいます。
 スペックとしては回避値が高く、防御技術とHPが低いのが特徴。

【マーケットパート】
 こちらはオマケのパートです。
 船上マーケットには様々な店が出店しています。
 ちょっとした物産展のような具合になっているので、観光気分でお楽しみください。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • 海上マーケット セントエルモ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年01月23日 21時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
あたしの夢を連れて行ってね
アリシア・アンジェ・ネイリヴォーム(p3p000669)
双世ヲ駆ケル紅蓮ノ戦乙女
フロウ・リバー(p3p000709)
夢に一途な
弓削 鶫(p3p002685)
Tender Hound
マリナ(p3p003552)
マリンエクスプローラー
イーフォ・ローデヴェイク(p3p006165)
水葬の誘い手
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹

リプレイ

●船出はいつも胸が鳴る
 冬の海風の冷たさを、『水葬の誘い手』イーフォ・ローデヴェイク(p3p006165)はどこか気持ちよさそうに浴びていた。
「海は広いな大きいナ……と」
 深く深く呼吸をしてみれば、生命の満ちた海の空気に心が洗われていくようだ。
「やはり海がすぐ近くにあると、海種としてはわくわくするねェ! いやー、仕事じゃなかったラ飛び込んで泳ぎたいくらい……やらないけどネ」
 からからと笑うイーフォに話を向けられて、『特異運命座標』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)は穏やかに笑って返した。
「うん。それに、絶好の船出日和だ。これは一日いい風が吹きそうだね。船上マーケットも楽しみだなぁ」
 船上マーケット『セントエルモ』。
 大きな船の上に無数の露天が光を放つ夜景から名付けられたという、期間限定のマーケットだ。
 多くの商人はこのタイミングを狙って店を出し、品物を探す。観光客も沢山やってきてたいそう盛り上がるという噂だ。
「そういや、もう例のマーケットが開かれる時期だったか。ここ最近ばたついてたモンだから、すっかり忘れてたぜ。あそこはいい品が出回るからなぁ……仕事ついでに、新年の仕入れといこうかね」
 いつものテンションでのんびりと語る『水底の冷笑』十夜 縁(p3p000099)。
 『夢に一途な』フロウ・リバー(p3p000709)は船旅に必要な荷物を抱え、桟橋を渡っていく。
「船の上に街ができたり、マーケットができたり……海洋もまだまだ広いと実感させられるばかりですね」
 彼らが乗り込んでいった船の名はウメカマ一号。スケトウ・カマボコ氏の経営するウメカマフーズが所有する商業船で、セントエルモに出品する品物や露天設営キットが積み込まれている。名前はくっそダサいがなかなか大きな船だ。
「名前はダ……個性的ですけど、立派な船ですね。私が乗れば浮沈船に早変わりですよ」
 フフーンと胸を張る『マリンエクスプローラー』マリナ(p3p003552)。
「船旅仕事。海の男の本文って感じがします女ですけど」
「それに祝い物の輸送ですしね。気持ちもちょっぴりふわふわします」
 『蒼海守護』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)は船に積み込まれていく木箱を見てほわーっとした顔をした。
 木箱には赤い鯛が描かれているが、中身は魚ではない。鯛の形をした大きなカマボコだ。
 ウメカマフーズが昔から製造販売している祝い品で、この辺では結婚式の引き出物なんかに使われることもあるという。
「楽しい船旅になるといいぁ」
「そうですね。楽しい船旅に……いえ、そうするのが今回のお仕事でしたね」
 『Tender Hound』弓削 鶫(p3p002685)はこほんと咳払いをして、自前の料理道具一式を担ぎなおした。
「今回は長めの航海になりそうですし、船旅の疲れを緩和するためにも奉仕させて頂きましょう」
「そうしましょう!」
 ぐっと決意の握り拳をかわしあい、二人は船へと乗り込んでいく。
 最後に積み込む荷物運びを手伝いながら、『ひとりの吸血鬼』アリシア・アンジェ・ネイリヴォーム(p3p000669)はこれから離れる港の様子を振り返った。
「こっち(海洋)での船旅は初めてになりますね……」
 港の船番(船の盗難を防ぐべく見張る警備員)が『良い船旅を』という意味のハンドサインを送ってくる。
 それをまねして、アリシアは桟橋を渡りきった。
「良い船旅になりますように」

●波は永遠より遠く
 海鳥の声すらなく、波の音すら遠くに聞こえるような、静寂のなかにイーフォはいた。
 波に揺られ続ける上下運動も、常に聞こえている船底からの水音も、それが数時間続けば身体が慣れていく。
 船の舵を固定し、羅針盤を開いて進行方向を確かめる。
 地球世界の船乗りは、磁石が常に一定の方角をさすと気づくまでずっと大洋を渡るすべをもたなかった。目印のない海は、この小さな円盤こそが唯一の指針となるのだ。マリナのように航海術の心得がある者にとっては、この小さな板から世界が見えるというが……。
 イーフォは満足げに羅針盤を閉じると、作って置いた魚のすり身をつまみ始めた。
 船を動かせて料理もできるイーフォは船旅に重宝する人材だ。
 余談だが、ディープシーの中には思想上の理由で魚や貝を食べられない者もいるという。この辺りは、種族特徴というより個人の主義や思想の違いなのだろう。
「どうかナ。釣れてるかい」
 すりみ団子を差し出すと、フロウはそれをひとつまみして釣り竿を叩いた。「ええ、それなりに」
 船旅の良いところは、食べ物がいつも真下にあるところ。
 魚を釣り上げるのが得意というフロウは、そういう意味で食べるに困ることがなかった。
 イーフォが新鮮なすりみ団子を作れたのも、こうしてフロウが魚を釣ってくれているからだ。
 九人分の魚を毎日吊り続けるのは流石に厳しいものがあるので、保存食にも頼っているのだが……。
「保存食だけでは少々味気ないですからね」

 船旅三日目。
 ココロは白いシーツをばさりとやって、ベッドを綺麗に整えた。
「覚えると簡単ですね。ベッドメイキング!」
 元々素養があったのか、ココロは掃除や洗濯といった家事全般を器用に担当していた。
 当船ウメカマ一号は男女別の相部屋が2~3部屋あり、それぞれ二段ベッド式になっている。ものによってはハンモックだけだったり畳のような場所に雑魚寝したりするのだが、比較的過ごしやすいタイプの船のようだ。
 商品を運ぶだけの船になぜこれだけのベッドが? と聞いてみると、海賊やモンスター対策に護衛を雇うことが多いからだとか。
「みなさーん。お風呂の用意ができましたよー」
 マリナが鉄板をかんかんやって船の通路を歩いて行く。
 深いところの海水をくみ上げて作ったドラム缶風呂が、船の甲板に毎晩用意されていた。
 ウメカマ号には生命線確保のために日光蒸発式の浄水装置があるが、お風呂にするには生産量がとても少ない。あくまで飲み水専門なのだ。
 そんなわけで、自ら潜って深いところから海水をくんきているわけである。
 『実はコレ保湿効果あってポカポカするんですよ』とは、マリナの弁だ。
「もうそんな時間か。いやー、最高だねぇ。酒もあってアテもあって、ついでに風呂まで入れるとは」
 縁がのんびりした様子で手ぬぐいその他を木桶に入れて持ってくる。
 つい先程まで船のあちこちを修理して回っていたらしいが、努力したり頑張ったりしているところを見せない主義なのか見えない工夫があるのか、結果だけ残していつものんびりした姿を見せていた。
 余談だが、海水風呂は男女別に分けて作られている。混沌民の中にはどっちかわかんなかったりどっちでもなかったりする生物も多いが、今回はきっぱり二分割で済んでいる。楽である。
「それにしても、船の修理はどれだけやってもなくなりませんね」
 常に海水と海風に晒されている船はかなりの速度でいたんでいく。特に金属パーツはすぐさびるので、こまめな点検と交換を怠ることは出来ないのだ。
 港に着くたびに大がかりな点検をするのだが、それとは別に、毎日のメンテナンスも欠かせない。
 手桶を抱えて小走りにやってきたココロが、アリシアの横に並んだ。
「今晩蜂蜜ジュース出しましょうよ。鶫さんがキッシュを作ってくれたんです」
「なるほど、いいですね……」
 船旅は質素にしようと思えばどこまでも質素になる。一人暮らしの大学生もかくやという貧乏暮らしもできれば、逆に毎日を優雅に過ごすこともできる。
 働けば働くほど豊かに過ごせるというのが、セルフ船旅の魅力なのだ。

 皆がさっぱりと身体を流している間、鶫は厨房で忙しく動き回っていた。
 寝室や倉庫が大部分を占めているウメカマ号の厨房は狭い。なので同じく料理ができるイーフォとは同時に入らず、担当する時間帯を分けることにしていた。
「やあ、お疲れ様。水の補充に来たよ」
 ウィリアムが球形の水を生み出して瓶の中に補充していく。
 一日に20リットルまで清潔な水を出せるという彼の能力は、想像するよりずっと優秀だ。
 浄水装置が一日に生み出せる浄水の量を考えれば、高級な設備がいきなり一つ増えたのと同じ計算になる。
 なんだかんだで水を節約しなければならないことの多い船旅では、心強いメンバーだった。勿論、ウィリアム自身も家事をこまごまと分担して手伝っているわけだが……。
「今日の緒夕飯はなにかな?」
「なんだと思いますか?」
 ジャガイモとタマネギを細かく切りながら、大きな中華鍋に鯛の魚肉を細かくそぎ取ったものをおとし、骨からダシをとった味付きあんかけを別途作っている。
「……なんだろう?」
「実は私も分かりません」
 料理上手で器用な鶫は、その場にある材料から栄養バランスのいい食事を的確に作ってくれる。
 なので材料の限られた船旅では必然的に『名前は分からないがとにかく美味しい料理』ができあがった。
 特に船の上では生の葉っぱからとれるタイプのビタミンが不足しがちなので、工夫はあちこちに入れる必要があるのだ。

 船旅は順調そのもので、個性豊かで特技も異なる各メンバーが力を出し合うことでとても穏やかでゆったりとした旅になった。

●エッジトビウオ
 海の中から現われる魚群を、夜の見回りをしていたアリシアは敏感に察知した。
 警鐘を打ち鳴らし、ライトを一斉に点灯させる。
「敵です。戦闘準備!」
 そんなアリシアを狙い飛びかかるエッジトビウオたち。群れより先行した少数の個体であったので、集中攻撃といってもそこまで深刻なものではない。
 防御のために翳した腕が切り裂かれ血が吹き出るが、操舵中だったマリナが割り込むように参戦した。
 ライフルに弱点攻撃用の魔術弾を詰め込むと、エッジトビウオたちへと連射した。
 ライトに照らされ、ぎょろりとした目でこちらを見るエッジトビウオ。鱗の反射も相まって夜闇から飛び出した悪魔のようにすら見えた。
 マリナに狙いを変え、飛びかかるエッジトビウオたち。
 空中でエラを羽根のように動かしてひゅんひゅんと飛行する彼らを、ココロが素早くワイヤーで捕まえた。
「帆立貝は夜に強いのです」
 どうやらアリシアと一緒に船の別サイドで見張りについていたらしい。
 見張りを一人きりにせず分担したのがよかったのだろう。エッジトビウオの攻撃が分散し戦闘不能リスクを防いだようだ。
「助かりました」
 アリシアはピューピルシールの魔術を放ち、飛行するエッジトビウオを撃ち落としていく。
 続けて、船内で休んでいた鶫たちが次々と出撃。
「スタングレネード、いきます!」
 海中からの増援めがけてグレネードを叩き込むと、爆発を起こしてエッジトビウオたちの動きを大きく鈍らせた。
 とはいえ遠距離用の攻撃手段。近づいて切りつけるという性質をもつエッジトビウオたちに使えるのはこの一回だけだろう。
 そのごく僅かなタイミングでルーン・Hを打ち込むウィリアム。
 爆発を抜け、生き残ったエッジトビウオたちが海上へと飛び出してくる。
「……やれやれ。余計な仕事を増やさないで貰いたいんだがねぇ」
 同じく参戦した縁がSCRで身を守りながら格闘術でたたき落としていく。
「船まで上がってきたなら、おれたちの出番だネ」
 イーフォは水海の書を開くと、漆黒の魔術を発射。
 飛びかかろうとしたエッジトビウオを光の串が貫いていく。
「では、早速試してみますか」
 一方でフロウは武器にマナを凝縮。咄嗟に身を守ろうとしたエッジトビウオの防御を抜いてフロウの拳が相手の肉体を粉砕させた。
「なるほど。なかなか……」
 それが最後のエッジトビウオだったのだろう。
 安全な所に隠れていたウメカマ氏が甲板に顔を出してきょろきょろと周りを見回した。
「終わったかな?」
「ああ、もう大丈夫だよ」
 死んだエッジトビウオのしっぽを掴んで持ち上げてみるウィリアム。
 フロウが興味深そうにそれを眺めた。
「ところでこの魚は食べられるのですか?」
「うーん……食べられないことも、ない、かナ?」
 イーフォが落ちた魚をいくつか拾って、厨房へと持って行った。

●セントエルモ
 数日間の航海を終え、ウメカマ号は巨大な船へとたどり着いた。
 船といっても平たい箱状の船が連結されたもので事前に出店登録していたウメカマフーズはチケットを係員に見せて出店ブースを組み立て始めていた。
「さてと、帰りの仕事まで時間があるから、暫く自由にしていていいよ」
「自由に……ですか、どうしましょう。お店を見て回りましょうか?」
 ココロが問いかけてみると、マリナがそういえばという顔で頷いた。
「確かに、かなりの時間暇になりますね。お昼寝とかするのもありですね」
「あり……かな? おれは帰りに食べられそうな美味しい料理がないか見てくるヨ」
 イーフォはそう言って、あちこちで組み上がっている出店ブースへと歩き始めた。

 年明けに行なわれるセントエルモ・マーケットには海洋のあちこちから色々なアイテムが集まってくる。
「演技の良さそうな食べ物が目白押しですね。あ、紅白海苔弁……」
 フロウはそんな様子にどこかうきうきしたテンションで、ブースをひとつひとつ見て回っている。一方海の生き物を食べるのはNGという縁は、干し肉やチーズといった酒のつまみによさそうな食べ物を見て回っている。
 海洋には多くの島々があり、島ごとに異なる特徴をもっているがゆえに食品文化も幅広い。
「おや、ロケットサンマのフレークだ。珍しいなあ」
 ウィリアムは瓶詰めの保存食を手にとってしげしげと眺めている。
 保存がきくうえに美味しいと評判の食べ物だ。
 その一方で、アリシアと鶫は土産物が多く売られるエリアを歩いていた。
「鶫さんはどなたかにお土産を?」
「ええ、ご主人様に。なにか珍しいものがあればいいんですが……」
 と見ていると海スライムから作られた化粧品というものが目に付いた。
「これは……なんとも……」
「なんとも、ですね」
 アリシアもシェアハウスの仲間が驚くかもと、瓶をひとつ手に取った。

 こうして一日ショッピングを楽しんだ一行は、帰りの船でもゆっくり穏やかに過ごしたという。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お帰りなさいませ。
 長い間の船旅はいかがだったでしょうか。
 とはいっても、料理もお風呂も充実していたようで、もしかしたらちょっとした旅行気分でいられたのかもしれませんね。
 ウメカマ氏もきっと喜んでいることでしょう。
 依頼を受けてくださり、ありがとうございました。またのご応募、お待ちしております。

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