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シナリオ詳細

幽霊船ワンダーサーペント号より

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●幽霊船ワンダーサーペント号より
 それはある日、海岸での珍事であった。
 釣り好きの老人がこんな荒波で魚などつれないとやじを飛ばす酒飲みたちを無視してバケツと釣り竿を持って桟橋を歩く。
 木の小椅子を置いて釣り竿を垂らそうとしたその途端。桟橋にばしゃりと人の腕がつかまった。
 その枯れ木のごとき細さと白さから目を見張った釣り老人は、あとからぬっと現われた頭蓋骨に悲鳴を上げた。むろん、釣り老人をひやかそうと見物していた酒飲み老人たちもだ。
 どう見ても死体にしか見えない白骨は、まるで間接部が魔法でくっついているかのようにがしがしと桟橋へ這い上がると、震える顎をカタカタ鳴らしてこう述べた。
 ワンダーサーペント号の寄港である。
 乗員を求む。
 乗員を求む。
 報酬は永遠の命。
 対価は永遠の呪いである。
 乗員を、求む。


「ワンダーサーペント号というのは、幻想南の海域に現われる呪いの船……ないしは『幽霊船』よ」
 『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)はワイングラスをくるりと回し、暖炉の炎にワインの赤色を写す。
 テーブルの蝋燭が炎をゆらし、のぼる煙が不思議な香りをただよわせた。
「ワンダーサーペント号にはいろんな伝説や由来が語れているけれど、信憑性が高いのはこれね。
 ある船長が偉大なる何かを罵って呪われた。船は幽霊船となり、船長は一人で永遠に海をさまよい続けることになった。
 しかし十年に一度だけ港に寄せることが許され、船長は旅行きの仲間を集めるべく何人もの船乗りたちを奪っていく……と。
 信憑性の理由? 十年に一度、本当に奪いに来るからよ」

 幽霊船ワンダーサーペント号は通常の方法で接触することはできない。
 しかし天候の荒れる日、特定の海、特定の年の特定の季節に船である場所に寄せた時のみ、船と遭遇することができるという。
「依頼主は船乗り組合。内容はワンダーサーペント号の撃退。
 船乗りを奪われたらたまったものではないもの。必死なのね。
 船をつけるための船乗りは用意できなくもないけれど、依頼を受けたメンバーの中で用意出来た方がずっといいわ。
 戦えない船乗りを、恐ろしい戦いに巻き込むことになるものね」

 ワンダーサーペント号は呪われた船長と彼の呪いにまきこまれたアンデッド船員たちで構成されている。
 船員の戦闘力はさして高くはないが、数が多く次々と沸いて出てくるので注意が必要だ。
 戦闘は主に白兵戦になるだろう。
 遭遇した船に接触し、すれ違いざまにメンバーの一部を相手の船に乗り込ませる。
 その際に相手側からも無数のアンデッドがこちらの船にも乗り込んでくるので、船に残って撃退するメンバーも必要になってくる。
 相手の船に乗り込んだメンバーは邪魔する船員たちを薙ぎ払い、船長と対決。
 みごと船長を倒すことができれば、船や船員たちは呪いから開放され海底へと沈んでいくそうだ。こちらの船に乗り込んできたアンデッド船員も白骨死体へとかえるので、海へ沈めて弔うがよかろう。

「この依頼にはどんなメンバーも歓迎するけど、優秀な操船員や、跳躍やアクロバットを得意とする突入メンバーがいると素敵だわ。あなたにそんな知り合いがいるなら、紹介してちょうだい。
 もちろん、あなたも歓迎よ。
 この依頼に何より必要なのは、『イレギュラーズであること』だもの」

GMコメント

 雪の多い季節となりましたね、プレイヤーの皆様。
 夏場ならまだしも、こんな時期に海へ飛び込むのはあまり考えたくないものでございます。
 されどそんな必要が、かの世界にはあるようで……。

【依頼内容】
 ワンダーサーペント号の撃退。
 呪われた船長の撃破によって、この依頼内容は達成されます。
 内容的には船の撃退となっていますが、船体を破壊する必要はありません。
 呪われているだけあって、なかなか頑丈なようで。

【達成までの流れ】
 依頼達成まではいくつかの手順を踏むことになります。
 手順ごと(パートごと)に注意点や備考がございますので、順番にご説明いたしましょう。

●接触と船の手配
 情報屋によって接触方法は確立されています。
 問題は船と操舵手なのですが――
 船乗り組合から広く天井の空いた帆船を、
 もし操舵手がいなかった場合の補充操舵手が貸し出されます。
 依頼参加PCの中に船の操作が得意なメンバーがいれば、任せた方が良いでしょう。
 後述する接触パートで大きな有利を得ることができるからです。

●接触パート
 船をすれ違わせ、そのタイミングで交戦に入ります。
 良い位置で合わせないとこちらから飛び移るのに失敗して海へ落下なんてことにもなりかねません。
(※仮に落下した場合、たらしたロープから自力でPC側の船へ復帰します)

 この時点で発生するのは
 『攻撃をかいくぐって相手の船に飛び移るアクション』
 『こちらの船に飛び移る敵を攻撃で少しでも減らすアクション』
 です。
 それぞれ事前に『敵船襲撃』『自船防衛』で担当メンバーを分けておき、それぞれのアクションプレイングに集中すると素敵です。

 具体的な乗り込み方法は、帆から垂れた無数のロープにつかまってぐいーんとあちら側に飛び移ります。跳躍能力やアクロバット、ないしは飛行能力なんかがあると有利です。

●『敵船襲撃』パート
 船から次々に飛び出してくるアンデッド船員を薙ぎ払い、船長を倒しましょう。
 船員をとにかく薙ぎ払って船長に近づけさせない担当と、船長と戦う担当を分けることをお勧めします。
 (作業量や大変さから考えて船長とは一対一の戦いになりそうです)

●『自船防衛』パート
 攻撃をかいくぐってPC側の船に乗り込んできた敵を撃退します。
 そうしないと船の操縦権を奪われて揺らされたり、敵船にわざと近づけて敵を増やしたりといった非常にマズい状況が起こります。最悪船ごと沈められて帰れなくなるので、とにかく船は守りましょう。
 主に乗り込んだアンデッド船員との戦闘です。
 操舵手は操舵しながら戦ってもいいですし、いっそのこと舵を背にして戦いに集中しても構いません。
(※このときレンタル操舵手だった場合、守ってあげないとすぐに死んでしまいます)

【エネミーデータ】
●アンデッド船員
 呪いによってとらわれた船乗りたちです。
 解放されることを望んでいますが、自我が乗っ取られただ船長の命令に従う奴隷と化しています。
 とにかく沢山沸いて出てきます。
・スキル
 カトラス(物至単):カトラス短剣での格闘
 マスケット(物中単):マスケット銃での射撃

●呪われた船長
 ワンダーサーペント号にかけられた呪いの核ともいうべき存在です。
 船長の服をきた骨だけのアンデッドですが、呪いで守られていて普通のアンデッドよりは強力です。
 機動力がとても高く、普通に追っかけると逃げ切られることがあります。
 邪魔する船員を薙ぎ払い、粋な一騎打ちを誘いましょう。
・スキル
 高速斬撃(物近単【連】):レイピアを使った剣術。非常に素早い。
 決闘の構え(CT・反応・回避アップ【自付】【副】):本気で戦う気になった際の構え。HPが半分をきると使用。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • 幽霊船ワンダーサーペント号より完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年02月08日 20時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
エスタ=リーナ(p3p000705)
銀河烈風
カタリナ・チェインハート(p3p001073)
美麗ディストピア
スクアーロ=ケトス=グランガチ(p3p001753)
蒼海の守人
雫(p3p002862)
生き人形
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer
エドガー(p3p004504)
英雄乃残滓
杜乃守 エンジュ(p3p004595)
みどりのかみさまのこ

リプレイ

●勇敢なる船出
 青い空。
 広い海。
 されど波は荒く、海鳥ですら飛ぶのをためらう不気味な海。
 幽霊船ワンダーサーペンド号の到来を前に、港は暗い空気に包まれていた。
 しかし。
「船乗りをアンデッドに変え冥界へ引きずり込む非道な行い! このリーナたんが許さないぞ!」
 『銀河烈風』エスタ=リーナ(p3p000705)は港によくあるあの足乗っけるやつ(ビットもしくは係留柱と呼ぶ)に片足を乗せ、地平線を指さした。
「必ず船長を倒しその業(カルマ)を地獄へ送ってやるのだ!」
 野次馬にきていた港の人々がオオと声を上げ、誰からとも無く拍手が起こった。
「リーナたん!」
「よっエスタ屋!」
 一方、なんだかすごい空気ができちゃったなあという顔で、『杜乃守の錬金術師』杜乃守 エンジュ(p3p004595)は船へのタラップを登った。
 ふと見やれば、地平線の先に誰かの声があるように思える。
 ワンダーサーペント号に連れ去られた無辜なる船乗りたちの、助けを呼ぶ声が。
「哀れな彼らに杜乃守の愛子自ら救いを与えてあげようか。ぼくの至尊で悪いけれど、神の御許に送って差し上げる」
「そうとも!」
 船に乗り込み、出港の準備を整える『銀閃の騎士』リゲル=アークライト(p3p000442)。
「たとえ生まれた世界が違えども、俺たちの目的は一つだ。騎士の誇りにかけて、呪いによる悲劇をここで止めてみせる!」
 奪われた人々。おびえる人々。いつからか生まれた呪われし伝説。
 その全てをぬぐい去る日が、今やってくるのだ。
 船の上では『生き人形』雫(p3p002862)と『メルティビター』ルチアーノ・グレコ(p3p004260)が持ち寄ったロープでちょっとした工夫を施していた。
 といっても雫は自分の髪の毛をどるどる伸ばしては縄を編むというとてもアバンギャルドな手法だったが、ルチアーノが持ってきた頑丈なロープに負けず劣らずの強度だった。もっというと手触りがとてもよかった。
 船を貸してくれた人がその様子を覗き込んでいる。
「なにをやってるんだい」
「ちょっとした細工だよ」
「相手の船から飛び移ってきた時に、役に立つかも知れないでしょう?」
 二人だけではうまいこと罠っぽくはならなかったが、途中からリゲルが加わって器用に鳥避けのように組み上がった。
 うむうむと満足げにする彼らとは別に、船の頭に立って両腕を広げる『メルティビター』ルチアーノ・グレコ(p3p004260)。
「例え相手が幽霊船だろうと心配無用、私の美しき剣舞に魅了されるといい! 船の名前はセント・カテリーナ号にしよう!」
「なまっ……!?」
「そうするといいさ。勇者王様の御墨付きだぜェ」
 『蒼海の守人』スクアーロ=ケトス=グランガチ(p3p001753)がサメ歯をニッと見せて笑う。
 持ち主はちょっと驚いたが、豪快に笑って返した。
「よそのことは知らないが、俺たち船乗りを守ってくれるあんたらは正真正銘勇者サマだ。よし、船が無事に帰ってきたら船首にでかでかとその名前を書いてやるぜ!」
「おや、その名前に決まったのかい? いい名前じゃ無いか、沈みそうになくて」
 首から上のない『英雄乃残滓』エドガー(p3p004504)が、笑ったように肩をくつくつと揺らした。
 見渡せば出向準備は済んでいる。
 錨をあげ、帆を張り、船は海へと滑り出す。
 舵を握ったスクアーロが、声を上げた。
「セント・カテリーナ号、出港! 幽霊船ワンダーサーペント号を返り討ちにしてやろうぜ!」

●船乗りの伝説・幽霊船ワンダーサーペント号
「船対船で一番怖ぇのは何かわかるかい? 火矢に大砲、確かに怖ぇ。だが、一番怖いのは体当たりされる事なんだよ。穴が開けばまず助からねぇ」
 スクアーロががっしりとした船乗りらしい腕で舵をとり、大海原を進んでいく。
 ほどなくしてたどり着いたのは、情報にあった幽霊船の遭遇地点。
 近づくにつれ雨は降り出し風は吹きすさび、暴力的な波が船を派手に揺らす。
 暗雲が空を包み、その雲がまるで吸い込まれるかのように小さな海上の渦へと集まっていた。
 スクアーロが目を細める。
「だから、ああいうトコロに飛び込むにゃあ度胸がいる」
 風は追い風。
 文字通りの順風満帆。
 海をぐいぐいとかき分けて、イレギュラーズたちの船セント・カテリーナ号は渦の中心へと弧を描いて突き進んだ。
「今だ、準備しろ!」
 舵を急速にきる。
 暗雲がはじけ飛び、真っ黒な船が現われた。
 骨だけのアンデッド船員が威嚇するように口を開き、カトラスやマスケット銃を掲げた。
「『ぶつける』ぞ!」
 船乗りいわく、船をぶつけることと、ぶつけられることは、恋に落ちること落とされることくらいに違うという。
 つまりは、ぶつけたもん勝ちだ。
 スクアーロの操舵した船は鋭角にワンダーサーペント号をとらえ、今まさに襲いかかろうとしていたアンデッド船員たちを船もろともぐらんと揺らした。
 それでも果敢にロープにつかまり、ぶら下がるようにして飛び移ってくるアンデッド船員たち。
「さあて、始めようか」
 ルチアーノはバリスタを木箱ごしに構えると、飛びうつらんとするアンデッド船員めがけて極太の矢を放った。
 海上で吹き飛び、ロープだけを残して海へ落ちていくアンデッド船員。
 だが数だけならば負けはしないとばかりに次々とロープがわたされ、アンデッド船員たちが飛び込んでくる。
「全部撃ち落とせるかな? なんて……」
 目を細めるルチアーノ。飛び移りながらマスケット銃の狙いを定めていたアンデッド船員が、船に張られたロープにひっかかって転落した。
 船外に放り出すほどえげつない罠にはならなかったが、着地を失敗させるには充分だ。
「乗り込まれても大丈夫。私たちがいるわ」
 雫が手を翳すと、彼女の髪の毛がぶわりと風を受けたように浮いた。
 途端あちこちから現われた呪いの力が髪のようにアンデッド船員たちに絡みつき、血のようにしみこんでいく。
 着地を失敗して回避もまともにできなかった彼らはもがき苦しみ、一部はそのままバラバラの骨となって崩れていく。
 そういうわけだ、気にせず行きな。そう言ったか言わないか、仲間たちに組み付こうとするアンデッド船員たちをエドガーが勢いよく撥ね飛ばしていく。
「さしずめ映画の最終場面、サドンデスマッチ、といった所か。闘技場で戦ったコトはないが、そんな気分だね」
 もし彼に顔があったなら、不敵にニヤリと笑ったかもしれない。
「船は任せたよ」
 エンジュはロープをしっかり掴むと、相手の船めがけて飛び出した。
 対抗するように飛び込んでくるアンデッド船員。カトラスを翳し振り上げる。その剣が届くよりわずかに早く、エンジュは逆再生の魔術を打ち込んだ。
 ぱきゃんと音を立てて分解する骨。腕だけ残して半身が海へ落ちていく。
 一方のエンジュは勢いが弱まって落ちそうになったが、なんとか相手の船ギリギリに着地盾を翳して戦闘の構えをとる。
 囲むアンデッド船員。
 振り上がるカトラス。
 そこへ――。
「とうっ!」
 宙返りをかけ、カタリナが割り込むように着地した。
 全身が奇妙なきらめきに包まれ、衣装が素早くチェンジされる。
「終末の勇者王、カタリナ・チェインハート――船乗りの心を胸に、参上!」
 風になびくマント。なぜだか煌めく空気。
 風になびくスカート。なぜだか固まる空気。
「ん?」
 エンジュが小さく首を傾げた。
「それは、いったい?」
「見ての通り。『セーラー服』だ!」
 せつめいしよう。
 セーラー服とはチーキュのニッポンで一般的な女子高生が着用する学校制服である。
 目締めなカタリナがセイラー(船乗り)の正装だと思って着ちゃっているかどうかは、定かでは無い!
 対してアンデッド船員たちは、カタリナの堂々とした名乗りゆえか、それとも美形なせいで女子高生ルックがかえって似合っちゃってるせいか、一瞬手を止めてその様子をガン見してしまった。
 バッと空を見上げるカタリナ。
「今だ! エスタ君――いやリーナたん!」
 上空。
 船の見張り台よりダイブしたエスタは腕を広げてワンダーサーペント号の甲板めがけて急降下。
 飛来した誰かの弾丸が頬をかすめるが構うこと無く、身体を丸めてスピンしながらロープにつかまり、振り子の要領でアンデッド船員を蹴り倒した。
 バラバラになって散る骨。
 ごろごろと甲板の上を転がるエスタ。
「クルダ流交殺法・陰流――刹雪崩」
 拳をついて、後から技名を申告するエスタ。堂々たる有様に、背景に大きなテロップが見えた気すらした。
「狙うは船長ただ一人! 船員たちは任せるぞ!」
「ああ、任されたよ!」
 追いかけようとするアンデッドたち。
 その間に立ち塞がり、剣と盾を構えるリゲル。
「我が名はリゲル=アークライト! 呪いをここで断ち切り、幽霊船を終焉へと導くべくして推参した騎士である!」
 無数のカトラスの刃が、無数のマスケットの銃口が集中する。
 リゲルは目をギラリと光らせると、その全てを引き受けた。
「足止めしたくば、束となれ! 全力で抗ってみせるがいい!」
 盾を翳し、リゲルは敵の集団へと突撃した。

●船上の戦い
 ワンダーサーペント号とセント・カテリーナ号は一度のすれ違いの後、互いに背を向けて進んでいた。
 舵をとるスクアーロは、階段を駆け上がってくるアンデッド船員を振り向きざまに剣で打ち払い、ぶれそうになる舵をしっかりと掴んだ。
 後ろを振り向けば、ワンダーサーペント号がぐうるりとターンをはじめている。
「奴はもう一度こっちにぶつけるつもりだ。逃げるか? 迎え撃つか?」
 エドガーが大きな盾を翳し、アンデッド船員のカトラスを受け止めた。さらなる斬撃を受け止め、三本目、四本目、五本目まで受け止め僅かに身体が傾く。
「任せる!」
 エドガーは転ぶこと無く踏ん張ると、アンデッド船員たちを一斉に押し返した。
 階段をごろごろと転げ落ちていくアンデッド船員たち。
 ゆっくりと階段を下りながら、エドガーは洋風の手招きをした。
 かかってきな、とでも言いたげな彼のしぐさに、執心深く立ち上がるアンデッド船員。
 その向こうではルチアーノと雫が船の端まで追いやられていた。
「スクアーロ君!」
「ああ、わかってる! あれをやる!」
 スクアーロは舵を両手でがしりと握った。

「しつこいね、命知らずってやつかな?」
 ルチアーノは口の端だけで笑ってバリスタを発射した。
 といっても打ち出したのは矢というより至近距離にまで迫ったアンデッド船員だ。
 手すりを乗り越え海へと落ちていく骨。仲間が吹き飛んでいったにもかかわらずまるでひるみやしないアンデッド船員たちは、カトラスでルチアーノへと斬りかかる。
 弓のフレームで刃を受け、懐に手を突っ込む。
 そして、毒針の射出機を至近距離で押し当てる。
「与しやすいと思った? その甘さに溺れて朽ち果ててね」
 崩れ落ち、接続が崩壊していくアンデッド船員。
 雫はそんな彼らの間をコンパクトにくぐり抜けると、地面をこするあげるようにして手を翳した。
 パンッという破裂音と共に火花がちり、近くにいたアンデッド船員たちがよろめく。
 その直後、スクアーロの『あれをやる!』という声が聞こえた。
 アンデッド船員たちにもそれは聞こえていたはずだが、知っているのといないのとでは大違いだ。
 なにが?
 今から船が盛大に傾くことをだ。
 がくんと傾く地面。吹き上がる海水。アンデッド船員たちは甲板をすべり手すりに叩き付けられ、一部はそのまま転げ落ちていく。
「つかまって」
 雫は予め長く伸ばしておいた髪を柱にくくりつけると、よろめきそうになったルチアーノをキャッチした。
「悪いね。僕のロープは仕掛けに使っちゃったから」
 なんて言いながら、ルチアーノはゆだんなくアンデッド船員たちに徹底射撃。体勢を固定していた雫も呪術を波のように解き放ち、アンデッド船員たちを押し流していった。

 無数の剣を打ち払い、弾丸を打ち払う。
 リゲルは防御を固め、全方位からの攻撃をしのいでいた。
「大量の攻撃を一度に受けるのは……なかなか……」
 リゲルの顔にも疲労の色が浮かんでいる。
 けれど、リゲルの胸に燃えるなにかが、彼を未だ突き動かしていた。
「船員たちにも家族が居たのだろう。成仏できずこの場に縫い付けられた、彷徨える魂達。待たせてゴメンな。今、解放してやるからな。苦しみも怨嗟も、ここで終わらせる……!」
 リゲルは剣を握る手に力を込め、今一度アンデッド船員たちを注目させた。
 倒せるものなら倒してみるがいいとばかりに。
「待て……!」
 その横をエスタが走る。
 手のひらを翳し気の弾を乱射して。
 彼女の弾撃をひらひらとかわし骨だけになったアンデッドの船長は逃げながらマスケットによる銃撃をしかけtけうる。
 とはいえただの銃撃だ。エスタは腕を翳して防御する。
 そんな彼女を足止めすべく、船内から無数のアンデッドが駆けだしてきた。
 このままでは追いつけないのか?
 船内を逃げ回られるばかりか?
 否。
 きらめきと共に繰り出された剣が、アンデッドたちをドミノ倒しにした。
 堂々と剣を構えるカタリナ。
「さあ、戦う美女の強さを見せつけてあげるといい! 私らしく言うなれば、そう――『ここはまかせて先に行け!』」
 マスケット銃による牽制射撃で足止めをはかろうとするアンデッドたち。
 しかしそれを、エンジュが魔術によって打ち払っていった。
 液状の漢方薬が詰まった小瓶を一本抜き、エスタへと投げる。
「船長との一騎打ちはエスタに任せたよ」
 エンジュからもらった小瓶を開き、一気のみするエスタ。
 エスタは走り、アンデッドを踏み台にして飛び、樽を踏み台にして飛び、空中で一回転した。
「そこまでだ、船長!」
 流星のごとき蹴りが炸裂する。
 蹴り飛ばされた船長はマスケット銃を取り落としたが、レイピアを抜いて構えた。
 突撃するエスタ。剣を繰り出す船長。
 頑丈なブーツの底と剣の刃がぶつかり火花を散らす。返す刀としなる脚。さらなる火花、火花、火花。
 リゲルとカタリナの剣がアンデッドを切り裂き、エンジュの魔術がアンデッドを粉砕するその瞬間、エスタの蹴りが船長の胸を貫いた。
 どばん、というえもいえぬ音。
 骨しか無いはずの船長の胸から、どくどくと大量の血液が流れ出た。
「おお……」
 船長が、はじめて言葉を発した。
 骨しか無かったはずの肉体にみるみる肉と皮が生まれ、ひとりの男の姿が現われる。
 それでけではない。
 アンデッド船員たちもまた、自らに肉と皮が生まれていく。
 そして自らを縛っていた呪いが、まるで首輪を外されるがごとく解けていくことそも自覚した。
 エスタは船長を殺したのはない。呪縛から解き放ったのだ。
 一方でワンダーサーペント号はばきばきと音を立て崩壊を始める。
 傾く船。あわよくばもう一度ぶつけてやろうかとターンしていたセント・カテリーナ号に、エンジュたちは急いで飛び乗っていく。
 あなたも、と誰かが思わず口にした。
 しかし船長も、乗り合わせた船員たちも、みなどこか晴れやかな顔で船から手を振った。沈み行く船で。
 ありがとう。
 と、アンデッドだった全ての者が言った気がした。

●新しい海の伝説
 これで戦いは終わったな、と手すりによりかかるエドガー。
 エンジュはエスタや雫たちに軽い手当をしている。特に役目を終えたカタリナが思い切り船酔いしていたので、エンジュがいてくれて助かったようだ。
 一方でリゲルやルチアーノは帽子を胸に当て、海底に沈んだ者たちに敬礼と祈りを捧げていた。
 舵をとるスクアーロ。
「さあ、帰るぞ。英雄の帰還だ」
 船は大海原を滑り、幻想の港へと帰って行く。

 ワンダーサーペント号の伝説は終わりを告げた。
 ローレットたちによって深い眠りにつきましたとさ、という文言と共に。

成否

成功

MVP

カタリナ・チェインハート(p3p001073)
美麗ディストピア

状態異常

なし

あとがき

 お帰りなさいませ、イレギュラーズの皆様。
 港の人々は皆様の無事の帰還に喜び、ワンダーサーペント号が呪いから開放され海の底で安らかな眠りについたことに深く感謝するでしょう。きっと今頃、大宴会が成されている筈でございます。
 皆様のご活躍、大変立派でございました。
 誰も彼もが大活躍。見せ場に次ぐ見せ場。ちょっとした映画を見終わった気分です。
 こんな時は祝杯を――いえ、MVPを出さねばなりませんね。三つも四つも出したい気持ちを抑えまして、しいて一人だけに絞るなら……。
 船の名前になったりフレーバー抜群の名乗り口上を仕掛けたりととってもきらめいていたカタリナさんに差し上げましょう。

 それでは皆様、またのお越しを心よりお待ち申し上げております。

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