シナリオ詳細
ごぶごぶ大作戦
オープニング
●ゴブリン、困る。
「参ったゴブなぁ」
「こまったゴブなぁ」
と、頭を抱えるのはゴブリン達である。
ゴブリン。幻想でもメジャーな亜種族である。
メジャーなのでどこにでもいるし、数も多い。
人類種とはよく衝突もする。が、数が多いという事は、色々な考え方の個体がいる、という事でもある。ゴブリンは集団を作り生活する、という性質もあり、似たような考えの個体たちが集まる事も多い。そんなわけでこの集団は、人類と比較的良好な関係を築いているわけである。
ここは、そんなゴブリン達の村。その、リーダーの家である。
家には老若男女を問わず、村中のゴブリン達が、集まっていた。
「仕方ありません」
と、女性の声がした。
人間である。
ゴブリンの集団の中、唯一の人間の女性が、その眼鏡をくいっと上げるや、言葉を紡いだ。
「困った時は助け合い。困ったら他人に頼りましょう。ええ。丁度良い、何でも屋のような方たちがいるんです。報酬の為のたくわえはありますし、ここは、彼らに依頼してみては」
女性の言葉に、ゴブリン達は、
「そうゴブなぁ」
「困ったゴブリンはワーラもつかむゴブしなぁ」
「お願いするゴブ」
「たのむゴブ」
と、女性の意見に賛同したのである。
●ゴブリン、依頼する。
「こちら、亜種族交流仲立ち職員のトゥティモ・モノズッキさんなのです」
と、眼鏡をかけた女性を紹介するのは、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)である。
トゥティモ氏は、王国から派遣された、亜種族交流仲立ち職員と言う、立派な公務員らしい。仕事の内容は、人類に比較的友好的な亜種族集団との認識のすり合わせ。
人類側の常識と社会制度を相手側に提示し、相手側の常識と社会制度を理解した上で、適切な交流を行う手伝いをするという、つまり、通訳者みたいなもの、らしい。
ちなみにこの仕事、あまりなり手が居ないらしく、トゥティモさんは割と色々な場所に引っ張りだこなのだとか。
それはさておき。
「実は、人類に友好的で、交流もあるゴブリン達の集落があるのですが、先日、敵対的なゴブリンの襲撃を受けまして」
トゥティモ氏のいう事によれば、その際は何とか追い返したものの、集落の戦闘要員は軒並みやられてしまったらしい。
そして、相手は殆ど健在らしく、再び襲撃を仕掛けてくるのも時間の問題であるとの事。
「敵の数はおよそ30。流石に正面からぶつかれば、数の不利で、皆さんと言えど苦戦すると思われます。そこで」
と、トゥティモ氏が提示したのは、集落の地図である。
「ここが集落の入り口です。敵は此処からやってきます」
ぐーっと指を動かし、次に広場を指さし、
「ここを経由し」
さらにぐーっと指を動かす。たどり着いたのは、町はずれの丘。
「ここまでゴブリン達をおびき寄せて、ここで戦ってもらいます。その間、つまり、集落の入り口と広場、そして丘の入り口。ここに罠を仕掛けて、敵の数を減らそう、という作戦です」
「なるほど、罠、いいですね! それで、その罠はゴブリンさん達が仕掛けるのですか?」
ユリーカの問いに、
「え? 皆さんに考えてもらおうかと思っていたのですが?」
丸投げだった。
とにかく、トゥティモ氏によれば、敵ゴブリンをおびき寄せるのは、集落のゴブリン達が行うとの事。
イレギュラーズたちには、罠の調達と設置、そして丘の上で生き残りをボッコボコにしてほしい、との事である。
一番難しい所を丸投げされたわけだが、まぁ、しょうがない。
「無事敵ゴブリン達を討伐できれば、ゴブリン達が感謝の宴を開いてくれるそうですよ! ゴブリン料理は癖がありますが、中々おいしいです。是非ゴブリンの皆さんを救ってあげて下さいね!」
と、トゥティモが頭を下げるのへ、
「み、皆さんよろしくなのですー!」
と、ユリーカも一緒に頭を下げたのだった。
- ごぶごぶ大作戦完了
- GM名洗井落雲
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年02月17日 21時20分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●イレギュラーズ、ゴブリン村に到着する。
「いらっしゃったゴブ!」
「勇者様ゴブ!」
イレギュラーズの到着に、村中でゴブリンたちの歓声が上がる。
いつの間に勇者様、という事になったのか。まぁ、ゴブリン達にとっては村の救い主だ、勇者みたいなものだろう。
「否! 我らは勇者に非ず!」
と、腰に両手を当て、胸を張ってゴブリン達の言葉を否定するのは、『悪の秘密結社『XXX』女総統』ダークネス クイーン(p3p002874)である。
「どっちかと言えば悪い方! 我こそは悪の秘密結社『XXX』、その総統ダークネスクイーン! そしてその愉快な仲間たちである!」
「わー、悪の秘密結社ゴブ!」
「総統ゴブ! 偉い人ゴブ!」
「うむ、我は偉いのだ! ひざまずけ!」
「ゴブーっ!」
と、一斉にゴブリン達をかしずかせるダークネスクイーンを眺めつつ、
「すげぇな、ゴブリンども……あっという間に順応してる……いや、深く考えてねぇだけなのか……?」
少し呆れたような、感心したような、何とも言えない表情を見せる『月下』シレオ・ラウルス(p3p004281)と、
「……というか、さりげなく悪の組織の一員にされたかな、僕達……」
呟く『文具屋』古木・文(p3p001262)である。
「これこれ、お客さん達が困っているゴブぞよ」
と、杖をついたゴブリンがあられて、イレギュラーズ達に群がっていたゴブリンを制した。
「この集落の代表の方かな?」
尋ねる『初めの一歩を踏み出した』ガルズ(p3p000218)に、
「左様でございますゴブ。この度は、長旅お疲れ様でゴブ」
村の代表――長老ゴブリンがゆっくりと頭を下げた。
『これはご丁寧に。早速だけれど、こちらも作業に取り掛かりたいね。敵が来るまで、さほど時間もないのだよね?』
優雅に会釈しつつ、『“燃えた”男』ジェームズ・バーンド・ワイズマン(p3p000523)。
「いかにもゴブにも。お疲れのところ申し訳ないでゴブが……」
「いえいえ、任務でありますから!」
びしっ、と敬礼を決めつつ、『狙撃兵』敷島・和泉(p3p000425)が答えた。
「ルアナ達に任せて! 悪いゴブリンさん達が、もう悪いことしないように、しっかり懲らしめるから!」
『遠き光』ルアナ・テルフォード(p3p000291)が、にっこり笑いながら、言った。
長老ゴブリンは、
「おお、よろしくお願いしますゴブゴブ」
と、感激したように頭を下げた。
「……所で。報酬の方なのだが」
『エルフ食べ歩きの旅』アイヒヘルヒェン・アウトリテト・ヴァルドゥング(p3p000793)が、言った。
「そちらの方はご安心ゴブされ。ちゃんと人間の間で流通している通貨もありますゴブから」
「いや、そっちではなく」
アイヒヘルヒェンが、こほん、と咳払い一つ、
「ゴブリン料理の方なのだが……」
「おお、料理でゴブりますか! 無事お仕事が終わりましたら、歓迎の宴をゴブゴブいたしますゴブ!」
にこにこと笑う村長ゴブリンの言葉に、
「期待している。よろしく」
アイヒヘルヒェンは力強く頷くのである。
ゴブリン料理を食べるために依頼に参加した、と語るアイヒヘルヒェンである。最大の報酬は、料理の方らしかった。
●ゴブゴブスイッチ装置・製造編
「ゴブリンの背丈からして穴の深さはこんなもんだろ。多少浅めでいいから数掘るぞ」
ふう、と一息つきつつ、ガルズが言う。
さて、ここは村の入り口である。ここでは、ガルズやシレオ、ダークネスクイーンたちが、ゴブリン達と共に落とし穴を作っていた。
今回の作戦では、大量に迫りくる敵ゴブリン達を減らすために、集落の三か所で罠を作ることになっている。ここは、罠設置の予定地であるのだ。
「良いか、貴様ら! これ位の深さである! 続々と量産せよ!」
「任せるゴブー!」
「総統万歳ゴブ―!」
ダークネスクイーンが、ゴブリン達に指示を飛ばすと、妙にノリノリでゴブリン達がそれに従った。ちなみに、ゴブリン達には、「敵味方の区別がつくように」と白い鉢巻をつけているのであるが、こっそり悪の秘密結社「XXX」が刺繍されていたりする。
「……すっかり悪の秘密結社の戦闘員になってるなぁ、ゴブリン」
苦笑しながら、シレオが言った。シレオは油の詰まった樽を運んでいる。これを落とし穴に注ぎ込む込むわけだが、どういった効果を期待しているのかは後のお楽しみ。
「まぁ、やる気を出してくれるのはいい事だ。さて、俺も、っと」
どこかで聞いたことのあるような曲を口笛で吹きつつ、落とし穴を完成させていくシレオであった。
さて、街の広場では、食欲をそそる、良い匂いが漂っていた。
「ふふふふーん♪ これを入れて、それから……うん、こっちも入れちゃおう!」
鼻歌交じりで、楽し気に。料理に精を出すのはルアナだ。もちろん、腹ごしらえの為の料理を作っているわけではない。これも立派な罠の内だ。
『さて、我々の罠がどれ程の効果を産むか楽しみだね。ははは』
大量の縄や布類を抱えつつ、ジェームズがやってきた。ジェームズは、手にした布に何やら薬をしみこませると、それを吊るした縄にかけて、ピンでとめた。まるで洗濯物を干しているようではあるが、さて。
「あ、ジェームズさん! こっちは完璧! 味は……味見できないからわからないけど!」
ルアナの言葉に、ジェームズはうなづいた。顔の炎が黄色く燃える。
『うむ、うむ。こちらも準備は万端さ。ああ、【洗濯物】には危ないから触れないように。さてさて、私は丘の方へ行こう。リアナ君は誘導係だったね。気をつけて』
「はーい! じゃあ、後で合流だね!」
手を振りながら、リアナが集落入り口の方へと駆けていく。ジェームズはうむ、と唸りながら、足取り軽く村の奥、丘の方へと向かって言った。
こちらはその丘の上。大量の樽を用意した和泉が、満足げに頷いた。
「本当は、集落に誘いこんで火を付け、一気に殲滅したい所でありますが! 今回は集落を守るのがお仕事、我慢するであります!」
まぁ、和泉がいう方法が一番手っ取り早いだろう。とは言え、それでは本末転倒となってしまう。加減はしてもらいたい。
「さて、準備は大体整ったかな?」
樽に色々とモノを詰めて蓋をした文が言う。丘に続く道では、アイヒヘルヒェンが、草を結んだ罠を大量に設置している。
「いや、皆の知識の結晶と言った感じかな。少し不謹慎かもしれないけれど、ちゃんとうまく機能するか、なんだかわくわくしてしまうよ」
「戦場でもトラップは猛威を振るうでありますからな! 上手く敵を一網打尽にした時などは爽快でありますよ!」
少々会話がずれている気もするが、まぁ同じ話題について話しているのは間違いない。
「入口の方も仕掛け終わったようだな」
丘の上へとやってきたアイヒヘルヒェンが言う。その視線の先には、こちらと合流すべくやってきた、ジェームズやガルズ、ダークネスクイーンの姿が見えた。
と、集落の方から、角笛のような音が響いた。
「うむ。もうすぐ本番だな」
と、アイヒヘルヒェン。その音は、集落ゴブリンのたちが、こちらに進攻する敵ゴブリンを発見したという合図であった。
●ゴブゴブスイッチ装置・発動編
「そろそろゴブリンさんくるかなー?」
集落の入り口近くで隠れつつ、ルアナが言った。
報告から数分。もうじき姿が見えてもよい頃だが――と。
「お、来たみたいだな」
シレオが言った。
その言葉通り、道の先から、総勢30体のゴブリンが、何やらゴブゴブ言いながらやってきた。
「ゴブー! 奴らゴブー!」
「極悪非道の奴らゴブ―!」
ゴブゴブ、と囮を買って出た集落のゴブリン達が言う。
「よーし、じゃあ、皆、おびき寄せいっくよー!」
ルアナの言葉に、シレオ、そしてゴブリン達が頷くと、一斉に悪ゴブリン達の前へと飛び出した。
「む、なんだゴブ!」
悪ゴブリンのリーダーが、思わず叫んだ。悪ゴブリン達が困惑するのへ、
「ゴブリンさーん! ルアナとあそんでー! ここまでおーいでー」
パンパン、と手を叩き、挑発を始めるルアナ。
「あー、そうだな。やーい、バーカ、バーカ。今すぐ逃げ帰っちまいな」
と、シレオ。二人に合わせて、囮のゴブリン達も騒ぎ立てる。
「なんだかわかんないゴブけど、馬鹿にされてるのはわかるゴブ!!」
リーダーゴブリンが叫んだ!
「お前達、やるゴブよ!」
号令一下、悪ゴブリン達がゴブゴブ言いながら此方へと迫ってくる。
「わーい、こっちだよーっ」
「悔しかったらこっちへ来てみな、っと」
囃し立てながら集落へと逃げる二人とゴブリン達。それを追いかける悪ゴブリン。と。
「ゴブ―ッ!」
「ゴブブーッ!」
悪ゴブリン達の悲鳴が上がった。仕掛けられていた落とし穴に、悪ゴブリン達が次々と落下していったのだ。
「ゴブブブ、油ゴブ!」
「ぬるぬるするゴブ!」
ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる悪ゴブリン達。
「何やってるゴブ! ひるむなゴブ!」
リーダーが怒りの声をあげるが、相手はガルズの狩猟知識によって、巧妙に仕掛けられた落とし穴である。避けたと思ったその先にも落とし穴が、安全だと思った場所にも落とし穴が。人間心理……この場合はゴブリン心理だろうか、とにかくその隙をついた罠が、次々とゴブリン達を落とし穴へとはめていく。
仲間の殆どが落とし穴へと落ちた悪ゴブリン達の怒りはすさまじかった。一部戦闘不能者も出たようだが、それでも這い上がり、集落へと向かう。
「あいつらとっちめてやるゴブ!」
リーダーが剣を振るい、命令を下す。
さて、そんな悪ゴブリン達が次に向かったのは、街の中央広場だ。そこにはたくさんの洗濯物が干されていて、何やらおいしそうな料理が置いてある。
さて、何でこんな所に料理が? 作りかけで、襲撃に気付いて慌てて逃げだしたのかな?
「美味しそうゴブ!」
「腹ごしらえゴブ!」
多少は警戒しそうなものだが、悪ゴブリン達は割と単純だった。食欲には勝てない。そんなわけで、数体の悪ゴブリンが一斉に料理を手にし、
「ゴブ―ッ! 苦いゴブ!!」
「ね、眠いゴブー! すやりすやり」
「お腹が痛いゴブー!!」
悲鳴をあげた。毒草やら胃を悪くする材料やら麻酔効果のある薬やら。色々と詰め込んだ特製の薬膳ならぬ毒膳料理である。悪ゴブリン達はノックアウト。そしてその一方で、
「ゴブ―! 痛いっ、目がァ!! ゴブ!」
「しび、痺れるゴブー!」
「お腹が痛いゴブ―!!」
別の悲鳴がこだまする。こちらの悪ゴブリン達は、干してあった洗濯物を奪い取り、身体についた油をふき取ろうとした連中だ。しみこませてあった毒が、傷口や目、口などから侵入。悪ゴブリン達が次々と倒れていく。
「な、なんて巧妙な罠ゴブ……!」
「相手は鬼ゴブ……!」
わななく悪ゴブリン達へ、
「ええい、ひるむなゴブ! やられたら倍返しにしてやるゴブよ! すすめーゴブ!」
リーダーゴブリンが命令する。
さて、生き残った悪ゴブリン達は、囮のメンバーを追い、集落の奥、丘の下までやってきたのである。もちろん、ここでも悲鳴がこだました。
「ゴブ―! 転んだゴブ! 草が結んであるゴブ!!」
「痛いゴブ! なんか刺さったゴブ!」
仕掛けられていた草結びの罠は、転んだ先に棘のついた草木があったり、まきびしのようなものが仕掛けられていて、転倒のみならず、さらなるダメージを悪ゴブリン達へと与え続ける。
「……効いてるみたいだね」
そんなゴブリン達の様子を眺めながら、文が頷いた。
「うーむ、痛そうだ」
感心したように、アイヒヘルヒェン。
「さて、じゃあトドメをさしてやるとするか」
ガルズが言って、樽を叩いた。
その樽の中には、油や酒、ガラス瓶、ビー玉等々が詰まっており、ぶつかって壊れた後、様々なトラップをまき散らすのである。
イレギュラーズ達は、坂の上に並べた樽を、一斉に倒し、横にすると、
「そんじゃ、やるぜ? ……せーのっ!」
シレオの言葉を合図に、一斉に転がしたのであった。
「あ……アンタら……悪魔ゴブか……?」
そう言うゴブリンリーダーの身体は既にボロボロであった。
わずか数名程度にまで減らされた悪ゴブリン軍団は、文字通り這う這うの体で丘の上までやってきた。
「心外でありますな! そもそも悪い事をしたのはそちらでありましょう!」
和泉の言葉に、イレギュラーズ達が頷く。
「……でも、戦場の悪魔、みたいに敵から呼ばれるの、ちょっとカッコいいかもしれないであります……」
こっそり呟く和泉である。
「一応聞くけど、降参する?」
尋ねるルアナに、
「ご、ゴブリンにも意地があるゴブ……」
と、武器を構えるリーダー。それに合わせ、悪ゴブリン達も武器を構えた。
「その意気やよし!」
と、ダークネスクイーンが声をあげた。
「ひとーつ、人の集落に上がりこみ! ふたーつ、不埒な真似をして! みっつ、皆の迷惑考えぬ阿呆は! この悪の秘密結社「XXX」が総統! ダークネスクイーンが仕置きしてやる故、覚悟せよ!」
「やっぱり……悪の集団だったゴブね……!」
ダークネスクイーンの口上に、納得したように頷くリーダーゴブリンだが、
『いや、悪の組織のリーダーはダークネスクイーン君だけで、私などはいたって普通の英国紳士なのだけどね?』
ジェームズが訂正するが、リーダーは聞いてはいないだろう。
かくして、イレギュラーズ達と悪ゴブリン達、最後の戦いがここに始まった。
戦いは終わった。
すでにボロボロになっていたゴブリン達である、イレギュラーズの集中砲火でリーダーをボッコボコにされてはたまったものではない。リーダーゴブリンが倒れれば、部下たちは慌てて遁走する。わざわざ追う事もなかった。頭を失えば、組織としては瓦解するだろう。そもそも、途中の罠で倒れている部下も大量に居るわけで。
「いやぁ、食事の前のいい運動になったなぁ」
伸びなどをしつつ、ガルズが言う。
「うむ。いうなれば今までのはただのおまけ。本番はこれから。ゴブリン料理を堪能するのがメインだからな」
アイヒヘルヒェンが頷きつつ、言った。
とは言え。
「いや……でもその前に、片付けしないとね」
文が言う。その通りだ。罠にはまって動けない悪ゴブリン達も捕縛しなければならないし、罠の片付けもしなければ、集落のゴブリン達が危ない。
「……そう言えば、片付けまで考えてなかったな」
シレオが頭をかくのへ、
『ははは。まぁ、もうひと仕事、だね』
ジェームズが言う。
かくしてもうひと仕事。お片付けが始まったのであった。
●ゴブゴブの宴
「お疲れゴブでした、皆様方。ささやかではありますが、宴の準備が整ってゴブります」
と、長老ゴブリンが、イレギュラーズ達をねぎらう。
後片付けには、集落のゴブリン達も参加してくれたのだが、それでもとっぷりと日が暮れてしまった。さて、そんな疲れ切ったイレギュラーズ達は、街の広場へと案内された。今用意された料理は、先ほどイレギュラーズ達が用意した者とは違い、ちゃんと食べられるものである。
のだが。
「ふ、ふふ……こう、中々……独特な香りだな……!」
ちょっと泣きそうになりながら、ダークネスクイーンが言った。
ちょっと癖がある。そう評されたゴブリン料理であるが、その香りはなんというか、好意的に表現すると『独特』としか言いようがなかった。ある世界の料理に例えると、くさや、とか、一番匂いがきついものでシュールストレミングとか、ああ言う類の物を連想してもらえると近いかもしれない。
『好奇心は猫を殺す……そんな予感しかしないけれど。一枚の絵は一千の言葉に値すると言うしね! 食べるよ!』
と、ジェームズは料理を口に含んだ――というか、頭部の炎に料理をくべた。
『これは、その、中々……むむ?』
ジェームズの炎が様々な色に変化する。感情が定まらない。
「おいおい、これ大丈夫なんだろうな? 腹下ったらお前んちのトイレ占拠するからな!」
適当なゴブリンを指さしつつ、シレオが言った。意を決して、料理を口に含む。
間違いなく、今まで食べたことのない味がした。
「まぁ、最悪薬はいろいろ用意してあるから……」
そんなシレオへ、文が言う。文は、ケガをしているゴブリン達へ、応急処置と、そのやり方をレクチャーしていた。
「むむ。昔食べた激マズのレーションに比べたら、十分においしいでありますよ、これは!」
と、和泉が言った。(もしかして、材料って今日捕まえた悪ゴブリン達なのでは?)と内心心配していた和泉であったが、もちろんそんなことはない。
「ハハハ! 癖がある、か。慣れれば確かに、癖になりそうな味だな!」
豪快にばくばくと食べているのはガルズだ。ガルズとしては、珍味、的なポジションに収まりそうである。
――んー。ルアナ、たぶん前の世界で人助け、してたんだなぁ。初めてじゃない感じがするもん。
さて、そんな料理を前に、ルアナは考え事をしていた。
――私、記憶無くす前何やってたんだろうなぁ……。
無くした記憶。違和感なく行った『人助け』。それが、何かの手掛かりになるのではないかと。
「……うん。今は考えても仕方ないよね。今はご飯! いただきます!」
両手を合わせて、ルアナいうのだった。
「……ごちそうさま」
一足先に、料理を平らげたのはアイヒヘルヒェンだ。
「ゴブ! よろしければおかわりを」
と、言うゴブリンへ、アイヒヘルヒェンは首を振った。
「いや、今日は結構。お腹がいっぱいだ。それに、また今度、ここを訪れても問題ないのだろう?」
クールに笑うアイヒヘルヒェンに、ゴブリンは嬉しそうに、「ゴブ!」と頷いたのであった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
ご参加ありがとうございました。
皆様のおかげで、集落は無事守られ、ゴブリン達も大満足のご様子。
ちなみに捕まった悪ゴブリン達は、今回の件がすっかりおしおきとなったらしく。
更生して、この集落で真っ当にお仕事をしているらしいです。
GMコメント
お世話になっております。洗井落雲です。
ゴブリンが攻めてきたぞ! ゴブリンを守れ!
そういうお仕事です!
●成功条件
敵ゴブリン達を撃退し、ゴブリンの集落を守る
●情報確度
【A】予定外の事態は起こりません。
●状況
敵ゴブリンは、30体で攻めてきます。
流石に正面からぶつかるのは数の上で不利なので、罠を仕掛け、可能な限り数を減らしていきましょう。
罠を仕掛けられるポイントは、3か所で、
【1】集落の入り口
集落の入り口です。地面は土。
左右に建物があるため、道は狭いです。
【2】広場
集落中央の広場です。地面は石畳。
真ん中にある謎のオブジェを中心とした、円形の広場です。
道はちょっと広め。
【3】丘の入り口
村の最奥の丘に通じる場所です。地面は土と、そこそこの長さの草があります。
丘に登るため、傾斜になっています。
となります。
罠についてですが、そう難しく考える必要はありません。
敵ゴブリン達は割と単純なので、1に落とし穴を掘ったり、3の丘の上から樽でも転がして落とせば、それなりの数が脱落してくれます。
どんなわなを仕掛けるかは皆さんに一任いたしますが、流石に集落に多大な損害が出るような罠はご遠慮ください。あくまで集落を守ることが目的です。
●敵データ
ゴブリン襲撃兵 ×29
剣や斧などで武装したゴブリン達です。近接攻撃を主に仕掛けてきます。
ゴブリンリーダー ×1
ちょっと立派な剣で武装したゴブリンです。リーダーです。倒すと生き残りのゴブリン達は逃げ出します。
●その他
無事敵を撃退出来たら、ゴブリン達が宴を開いてくれるようです。
出される料理は少々癖が強いですが、人体に有害だったりはしません。ちゃんと食べられます。
美味しいかどうかは……個人の好みになるかと思います。
以上となります。
皆様のご参加、お待ちしております。
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