シナリオ詳細
船上街モビーディック
オープニング
●船上街モビーディック
「これから向かうのは船上街といって、船の上に町が建設されているコミュニティなのよ。ほら、もう見えてきたわ」
塔のごとき船タワーシップ。それを中心として巨大な船を複数接続して海上を移動する姿が見えるだろう。
海鳥たちの声をかき消すほどのブザー音が、こちらの船との接続手順開始の合図だ。
フックとアームによって一時接続を受けた船は、船上街モビーディックへの『入港』を許可されたことになる。
船の上はまさに町そのもので、あちこちに出た露店の店主や飛行郵便屋たちがあなたたちを歓迎して手を振ってくる。
歓迎の印にとパスされたリンゴを受け取っていると、髭の深い老人が現われた。
外見年齢90はあろうかという男はしかし、背筋をぴんと伸ばして高い杖をついている。
杖の先端はスノードームになっていて、船上街モビーディックの中央タワーシップをかたどっていた。
「ようこそ、ローレットの皆さん。噂は聞いておりますよ。私は町長のオケアノス……オケアノス十四世と申します」
町長のオケアノスに案内されてやってきたのは、タワーシップの中腹にあたる特別応接室だった。
情報屋の『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)が仲介するように話を切り出す。
「今回の仕事は島の護衛と聞いているのだけれど……」
「はい、私から説明いたしましょう」
オケアノスは周辺の海図を広げはじめた。
「我々モビーディックの民は船上での自給自足に加え、サルベージ業で生計を立てております。
この広い世界には古代の技術があちこちに眠っておりますが、ネオフロンティア海洋王国も例外ではございません。海底に沈んだ古代遺産をディープシーたちの力や専用のパワークレーンを用いて引き上げ、鑑定や修復を行ない時には自分たちで利用し、時には他のコミュニティへと売る。
昨今はこちらのサルベージ業が盛んになっておりましてな、これらをタダで奪おうと海賊の被害に遭うことも多いのでございます」
説明を引き継ぐように振り返るプルー。
「『モビーディック』は巨大なコミュニティだし武装も豊かだから海賊が直接攻め込むことはそうないわ。
けれど、サルベージに出た小型船が襲われることはよくあるらしいの。
特に海賊被害の多い海域に出ると尚のことね。
今回は、そういった海域へのサルベージを試みる間、現われるであろう海賊や海魔への対応を頼みたいそうよ」
「とはいえ、それまでは時間がありますからな。一日ほど町を観光されてみてはいかがでしょう。外からの客人は少ないですから、きっと町の者も歓迎するでしょう」
船の上だけで生活するという彼らの暮らしぶり。その文化や風土。流通の過程や仕事の種類など……ざっと見ただけでも気になるところは山ほどあるはずだ。
勿論、ただ広い場所に出てひなたぼっこを楽しんだり、お酒を飲んでゆっくりするのもOKだ。
「私は先に引き上げるわ。一緒に観光ができないのは残念だけど……後のことは、頼んだわね」
きっと仕事が立て込んでいるのだおる。そう言って、プルーは皆に手を振った。
- 船上街モビーディック完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年12月01日 22時45分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●船上街モビーディック
吹き抜ける海鳥の群れ。
飛行郵便屋がひっきりなしに行き交う町の様子を、『夢に一途な』フロウ・リバー(p3p000709)はどこか呆然とした様子で眺めていた。
なぜならその町は、巨大な船の上にあったのだ。
「船上の街……想像もつかない場所ですね」
ネオフロンティア海洋王国は広い。海洋出身のフロウですら、『土に根ざさないコミュニティ』の存在を考えたことすら無かったのかもしれない。
「初めて見る人はみな驚きます。けど、住めば都ですよ」
各島への交流連絡船を担当しているという男が笑って言った。
「それはそうだよ! だってあの『モビーディック』だもんね!」
『大空緋翔』カイト・シャルラハ(p3p000684)が今にも飛び立ちそうなほどのはしゃぎようで身を乗り出している。
自前の船があるからとカイトの船に皆を乗せてモビーディックへとつけている。
中央のタワーシップへは大小無数の船が接続されていてつながることが難しく、交流連絡船をいつもつなげているという船を受付変わりにしてドッキングをかけた。
大きなイエローカラーのクレーンアームがカイトの船を掴み、巨大な船のコミュニティへと固定していく。
碇を下ろして港につけるのとは随分と勝手が違うようだ。
「なるほど……」
『咎狼の牙』リュグナート・ヴェクサシオン(p3p001218)はアームの精密な動きや古そうな船に見え隠れする高度なテクノロジーに目を細めていた。
「海を征く街ですか、世界は広いですね……」
「というか、ふぉお……すげーですね。でけー船の上に町を作るとは、浪漫があふれてやがります……」
『マリンエクスプローラー』マリナ(p3p003552)はもしやここに自分が住めば絶対沈まない町になるのでは、と思ったりもしたが、そこまで保証してくれなさそうな気もちょっとした。船っていうかもう半分以上町だし。
頑丈な桟橋をわたり、市場の広がる船へとやってくる『空き缶』ヨハン=レーム(p3p001117)たち。
「船の上の街だなんてゆらゆらしてて大変そーなんですが皆さん平気なんでしょうか!? あ、でも……」
軽く飛び跳ねてみるが、足場が大きく揺れるような感覚はなかった。
というのも、ついさっきまで小型船にゆられていたので相対的に全然揺れていないように感じているのだが……それを差し引いてもかなり優秀なバランサーが働いている様子だった。
「色々見学してみたいですね。皆さんはどうします?」
「ふむ……」
『鳳凰』エリシア(p3p006057)は首をこきりと鳴らしてから市場を見やった。
「暫くは観光できるのだったな。食べ物でも見て回るか」
「私は船の歴史に興味があるな。後で合流しよう」
アルテア・オルタ(p3p006693)はぱたぱたと手を振ってタワーシップへと進んでいく。
それを見送ってから、『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)はきょろきょろとあたりを見回していた。
「サルベージ船ってどれなんでしょうね。古代のマジックアイテムとか出てくるんでしょうか。私、そういうの大好きなんですよ」
そんな具合で、八人はそれぞれの興味がむくまま、次のサルベージが始まるまで船上街モビーディックの観光を楽しむことにしたのだった。
●船の上の町
巨大なハグルマが回転している。
本来歯車というものは大小様々なパーツと組み合って回転力を移動させるものだが、そのハグルマはなにとも接続されていなかった。
ただ回転しているだけで、周囲の機械に動力を送っているらしかった。
「これが……船の動力源なのですか?」
リュグナートは巨大な倉庫めいた場所の端からハグルマを見学させてもらっていた。
「これは……なんとも不思議な機械ですね」
「我々が海底の古代遺跡から発掘した『最初の遺産』ですよ」
「あれはただのエンジンってわけじゃないよね。むしろ船の行き先すら決めてる感じがする」
同じく見学をさせてもらっていたカイトが、ハグルマに目を細めていた。
「よくお気づきで。この船に操縦室は無いんです。周囲を観測したりバランスを整える部屋があるだけでね」
「と言うことは……舵も?」
首を傾げるリュグナート。パソコンにマウスがついてないともやもやするように、船に舵がついているのが多くの船乗りにとって自然なことだ。
しかしコンピューターの例に漏れず、舵のない船もまた沢山ある。モビーディックはその一つといえた。
「この巨大な船は、海洋海域にある特定のエリアを正確に周回し続けています。途中に障害物があれば上手に避けますし、万一氷山などにぶつかってもダメージコントロールをして航行を維持しようとするんです。勿論、町として増設した部分は我々が作っていますし、細かい部分のメンテナンスは欠かせないのですが……」
「なるほど……」
リュグナートにもカイトにもあのハグルマはきわめて神聖なものであるように見えた。
であると同時に、この船がまるで島のように振る舞っている理由も、少しだけ分かった気がした。
この船は、そう。
永遠に陸にたどり着かない船なのだ。
カラフルな天幕が並ぶ露店の列。
それが船の上だと忘れてしまうくらいに賑やかな、そこは市場であった。
果物や根菜、花や加工肉、アクセサリーや服、一番多いのは魚関係の露天だった。
『島の市場』といった雰囲気だ。床がどこまでも金属板であることを覗けば。
「それにしても、お金のやりとりをするんですね、みなさん」
ヨハンはフランスパンとベーコンの入った紙袋を抱えて、露天商に話しかけた。
「そうだなあ。船で暮らしてるっつーと配給制をイメージする奴がいるんだが、なんだかんだで人の出入りも多いからな。経済循環をスムーズにするために一般的な通貨でやりとりしてんのさ」
「この先に食堂がありましたよ。良かったら見ていきませんか」
会話をほどほどに切り上げたヨハンに、アクセサリー類を見ていたフロウが話しかけてきた。
「地元の料理が食べられるかもしれませんよ」
「船に『地元』とかあるんですかね……?」
「さあ、何事も見てみないことには」
そんな具合に、二人してやってきたのは広い食堂だった。
晴れた日だからと、巨大な天幕がロールされ明るいテーブル席が並んでいる。
ザ・地元食堂といった空気で作業着をきた人々や何かしらの制服をきた人々が食事をしている。
その中に、エリシアも混ざっていた。
「船の上で生き、船の上で死ぬ、か……そのような生き方もあるのだな。で、この料理は?」
「親子丼だね」
「こっちは?」
「バーニャカウダだね」
「ではこれは」
「魯肉飯だね」
「……」
「シュヴァイネブラーテンだね」
「見本市かなにかか……」
舌が混乱するほど様々な文化の料理が一つの食堂に詰まっていた。
「無理もねえや。色んなとこから人が入って来ちゃあその文化を積極的に取り込んでいく。メシに関しちゃ顕著だよ。ほれ、『モビ定食』」
毎年メニューが更新されるという『モビ定食』は無数の文化が混ざり合ってもう何が発祥なのか分かんないハイブリットメニューになっていた。
「なるほど、これが地元の食べ物……」
「想像の斜め上を行きましたね」
あとからやってきたフロウとヨハンが同じテーブルに座り、エリシアのモビ定食を覗き込む。
寛容さと多様さ、そして複雑さ。
モビーディックという町のありさまが、プレートの上に再現されているかのような有様だった。
「モビーディックは元々小さな島の民族だったと伝えられています」
タワーシップの中にある資料館。といっても小さな屋敷に沢山の写真を貼り付けたボードが並んでいるだけの場所である。
車いすに座った老婆が、写真を順番に見て歩くアルテアに船の歴史を伝えていた。
「何百年も前のことです。海の水位上昇の影響を受けて島がなくなろうとしていた頃、地下に埋蔵されていた巨大なハグルマを船に備え付け、海への移住を決めたのだそうです。元々人口の少なかった彼らは様々な島から移民を受け入れ、混在した文化を貪欲に吸収して成長しました。かつてのモビーディック島がどこにあったのかはもはや誰も知りませんが、知る必要もなくなったのです」
「なるほど……ここは船であり、島でもある、か」
アルテアは塔の建設を記念した写真を見つめ、息をついた。
「譲ってくださいよぉ……お金もだしますからぁ……」
利香がエロさの限りを発揮していた。
じゃなくて。
利香は色気を見せながらエンジニアをからかったりしていた。
相手は顔の半分が鉄仮面みたいになったオールドワンの男性で、残る肌も色黒く焼けている。
きゅっと口を引き結んだまま、きわめて高い防御効果を持つ指輪の加工を行なっているらしかった。
宝石でいえば、真っ黒い石の塊をなんやかんやしてダイヤの指輪にするまでの過程が、この船の中で行なわれていると思っていい。
利香が見学にやってきたのはサルベージ業……の次の段階にある古代遺跡の選別や加工を行なうチームのガレージだった。
モビーディックの主要産業(?)であるためかガレージも気合いが入っており、主要施設船でもあるタワーシップの中に建設されていた。
あちこちに並べられているのはどう使うのか見当も付かないような巨大なアイテムやさびてよくわかんなくなった物体などだが、古代の技術が優れていることは鉄帝の『古代の最新兵器』を例に出すまでも無いことである。
見る者が見れば宝の山だ。
「ほぉー……」
マリナから見ても宝の山なのだが、むしろマリナが興味を示したのはサルベージ船のほうで、海底での力仕事に特化した酸素ボンベや水中作業スーツ。特殊なワイヤーやリール、クレーンといった設備に目をキラキラさせていた。
「詳しくねー私からしてもすげー設備だって分かります。お値段とかどういうことになってるんでしょう……」
「全然わからんね。色々改造しながら数百年は使ってる筈だから……どこにどう値をつけていいやらだ。俺もいつかは自分のサルベージ船をもつのが夢でさ」
白Tシャツにさっぱりした金髪という漁師めいた男が機材の点検をしながら言った。
「わかります、その気持ち」
「今回おたくらに守って貰うのもこいつさ。俺の命より大事なサルベージ船なんだ。頼んだぜ」
おう、と拳を掲げてみせるマリナに、金髪の男は拳を合わせた。
●サルベージ
そしていよいよ始まったサルベージ。
クラーケンのすまう海域に潜り、海底に沈んだ古代遺産を探索し引き上げるのが目的だ。
「当然、海底をすみかにしているクラーケンを追い払う必要がある。その仕事にはいつもの戦闘チームに加えてローレットから助っ人が入って貰うことになった」
「海の漢です。よろしくおねげーします」
「海の漢ではありませんが、よろしくお願いします」
同時にパッと手を上げるマリナとフロウ。
サメやエイやタコめいたディープシーの戦闘チームメンバーたちが頷きながら拍手で迎えた。
「でもって、危険な海域からお宝を引き上げたとあれば、その成果を奪おうと海賊がやってくるのは目に見えてる。実際海賊船が一隻近づいてきてるのが分かったが……モビーディックがこの海域にいられるのもあと僅かだ。サルベージを延期するわけにはいかん。ということで……」
「まかせてー!」
小型船『紅鷹丸』から手を振るカイト。
他のメンバーもサルベージ船に随伴している戦闘用小型船に同乗し、海賊たちへの『歓迎パーティー』を準備していた。
サプライズの準備を終え、ぐっと背伸びをするアルテア。まとめた銀髪が海風に揺れ、豊かな胸が浮いた。
「いつでも大丈夫だ。決して船には触らせない」
「頼もしい助っ人たちじゃないか。さあ野郎ども、お宝を引っ張り上げるぞ!」
クレーンのエンジンがかかり、激しい音が鳴り響く。
あえて。海賊船アマエビ号からの様子をお届けしよう。
危険海域でのサルベージと聞いて収穫を横取りしようとやってきた海賊船。舵を握っていた船長はこちらへ近づく真っ赤な船影に目を細めた。
赤い鳥とイメージさせるカラーと船首。掲げられた帆には真っ赤な鷹のマークがなびき、円を描く文字で『紅鷹丸』と記されていた。
「なんだありゃあ。海ンなかに鳥だあ?」
笑い飛ばそうとする海賊の頭を、船長が望遠鏡で殴りつけた。
「馬鹿野郎、知らんのか。ありゃ『風読禽(かざみどり)』のカイトだ! 風上をとられるぞ!」
慌てて舵を切る船長。しかし――。
「そうくると思ったんだよ、ね!」
カイトは勢いよく舵を切り、海賊船アマエビ号の真横スレスレを削るようなコースをとった。
赤と白のストライプ模様をがりがりと削っていく船体。
慌ててカーブした際に強烈な体当たりをくらった形になったアマエビ号。
バランスを崩した船員たちめがけ、エリシアが助走をつけてジャンプ。一度は広げた炎の翼で自らを包むと、螺旋回転しながら敵船へと突撃していった。
「しまっ――!」
フリントロック銃を慌てて引き抜く海賊をバーニングタックルで突き飛ばすと、エリシアはワンバウンドして甲板へ着地。
「さあ、仕置の時間だ馬鹿者共よ!」
カイトの船とすれ違う形になったアマエビ号はそのままなんとかサルベージ船に針路をとるべく舵を切る。
だがそれをさせまいと迫った戦闘小型船が併走を始める。
「ひるむな! 押し切れ!」
海賊たちがワイヤーフックを飛ばし乗り移りを試みる。
木製の手すりに無数のフックが食い込み、海賊たちがそれを引っ張り始めている。
が。
「その手すりは仕掛け済みだ」
アルテアが手すりの端に斧を入れると予め切り込みの入っていた手すりが丸ごとへし折れ、引っ張ろうとしていた海賊たちが一斉に転倒した。
一方でアルテアは帆からさげたロープにつかまって敵船めがけて跳躍。
海賊を一人踏みつけにしながら着地すると、大きなソードブレイカー状になった剣を引き抜いた。
「狙う相手を見誤ったな」
海底を進むサルベージチーム。
水中銃や槍の射出装置を装備した戦闘チームが警戒してぐるぐると巡回しているのに混じって、マリナとフロウも巡回に加わっていた。
と、そこへ。
「最近次々と海の男イベントを消化していってますね。そろそろ真の海の男になれるんじゃねーでしょうか……おや?」
こちらへ近づいてくる巨大な影を発見。
光の届きづらい海底であってもわかるその巨大さに、フロウはすぐさま身構え、警戒ブザーを鳴らした。
直後、伸びてくる巨大な触手。間違いない。クラーケンだ。
フロウは指輪から増幅した魔力を魔法障壁に変えると、拳に纏うように装備した。
「迎撃を開始します」
「あのサルベージ技術には足一本触れさせませんよー。さぁ、かかってきやがれです」
絡みつく触手を殴りつけて払うフロウ。
マリナは勢いよく接近すると思い切り体当たりを仕掛けた。
クラーケンの分厚い肉を突き破るように打ち込まれた闇のエネルギーはそのまま海中に広がり、クラーケンの目をイカスミのごとく覆っていく。
「遅れてすまん。そのまま押さえて置いてくれ!」
数秒たってからかけつけた他の戦闘チームが水中銃で攻撃を開始。
クラーケンの足や身体を次々に穴だらけにしていった。
一方その頃海上では。
「さあて、おバカ共を後悔させてあげましょうか!」
利香は指鉄砲を撃つしぐさをすると、船に乗り移ってきた海賊たちを挑発した。
本能的に利香に意識がむいた海賊や、仲間の攻撃につられて攻撃対象をあわせてきた者たちが利香に群がっていく。
魔剣を強く握りしめ、豪快な回転斬りによって海賊たちのナイフや銃撃を打ち払う利香。
背後から飛びかかるのはヨハンとリュグナートだ。
モップで海賊の足を払ったヨハンは流れる動きで腹を突き、側面を狙おうとした別の海賊をモップの尻尾による突きで打ち払う。
剣が二本まとめて打ち込まれるが、それを水平にかざしたモップの柄で受け止めた。
無理矢理に押し込もうとする海賊。その腕や脇腹を素早く切り裂いていくリュグナートの剣。
彼の魔剣からわきたつ揺らぐ蒼き波の魔力はそのまま青い炎へと変わり、切りつけた海賊たちを燃え上がらせていく。
振り返れば、利香が掌底によって海賊を吹き飛ばしていた。
ぎゃあと叫んで海へ転げ落ちていく海賊。
「今回は味方にも恵まれたようですね」
リュグナートはほんの小さく笑い、剣に炎の魔力を波立たせた。
おぼえてやがれ! ボッコボコに海賊たちはそう言って逃げていった。
サルベージチームは無事に古代遺産を釣り上げ、戦闘チームと共に帰還した。
「今回はいい仕事ができた。いつもは海洋の警備隊に頼むんだが縄張り問題もあるからな……また都合がついたらオタクらとまた仕事がしたいぜ」
握手を求めるサルベージチームの男に、イレギュラーズたちはそれぞれ笑って応えたのだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete!
――to be next!
GMコメント
このシナリオは『船上街モビーディック』の観光と護衛の2パートで構成されたシナリオです。
それぞれパートごとに解説していきましょう。
【観光パート】
船上街モビーディックの中を自由に観光することができます。
『遊ぶ』『何かしらの仕事を体験させてもらう』『歴史を教えて貰う』『資料を読みあさる』などなど、自由に行動を決めてください。
自由といっても、依頼主の手前もあるので大きすぎる迷惑をかけたりヤバい犯罪に手を染めるのはナシにしてください。
一応ざっくりと見た感覚で分かっている部分をお話しますと……
・コミュニティ規模
空母クラスの船に塔を建設したタワーシップ。
それを囲む大型船(タワーシップよりずっと小さいがまあ大きな船)が複数接続されたもの。
政治的代表はタワーシップの中から決められ、船ごとのコミュニティの代表者との合議制で物事を決めている模様。
人数はかぞえきれず、とにかく沢山いる。
・生活
船上に作られた人工菜園や農場といった施設と網式の漁業で自給自足の生活サイクルを保っている。電力は太陽から得て、生活水は雨からとる。
それでも足りないものは定期的に接続する貿易船との取引でまかない、主に古代遺産のサルベージ業が貿易における力を持っている。
こうしたことから、船の上で生まれ船の上で死ぬという人も多い。
ネットワークは主に郵便が主で、スカイウェザーによる郵便配達が盛んに行なわれている。
・人柄
外部との交流は生活を発展させる上で必須なためか、交流を盛んに行なう。
そのため対人スキルの高い者が多く、交渉ごとがうまかったりコミュ力が高かったりする人を多く見かける。
この土地(?)を気に入って外部から移り住んだ者も多く、コミュニティとしてはとても開放的。
【護衛パート】
今回は護衛をつけてないとダメな海域でサルベージを行ないます。
サルベージチームに戦闘力がないわけではないですが、戦闘専門のチームを増設する必要が今回はあるようです。
役割は主に『海中』と『船上』の二つに分かれます。
(依頼参加者にディープシーが一人も居ない場合や全員海中パートを希望する場合の双方を想定しています。今回は『PC自身の行きたいパート』を配分無視で自由に選んでください。皆さんが配置されなかった方へ現地の戦闘チームがあたる形で対応します)
・船上サイド
サルベージされた遺産を狙った海賊たちが船を占領しようと襲いかかってきます。
主な戦闘方法は『海賊側が船を接近させてきてぶつけられる→フックをかけるなどして強制接続→船に乗り込む、ないしは自船からの射撃によって戦闘』となります。
このとき自前の小型船を装備している場合は味方と協力してバックアタックをかけたり複数から取り囲む陣形をとることも可能です。
海賊の戦力は近接型と遠距離型あわせて10人ほど。真面目に戦っても戦闘不能者がそこそこ出るレベルと考えて当たってください。
・海中サイド
この海域の海底を『クラーケン』が縄張りとしており、接近すると戦闘になるでしょう。
戦闘は海中で行なわれます。水中行動(または水中親和)を必ず装備してください。(アイテム『酸素ボンベ』のみでは戦闘には性能不足です)
周囲から他の海魔が寄ってくる危険もあるため、サルベージ作業を続けながらその一方で戦闘を行なうことになります。(離れて戦闘するためサルベージチームを庇う必要はありません。逆に庇おうとすると戦域が接近して危険になるのでやめておきましょう)
クラーケンは1体のみ。
イカとタコの中間みたいな外見をしており、沢山ある触手を使った攻撃をしかけます。
高いHP、高いEXA、高い特殊抵抗を持ち、攻撃スキルは『自域【麻痺】』『遠範【麻痺】』の二種。
巨大ですがブロックは2名以上から有効となります。
【アドリブ度】
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。
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