PandoraPartyProject

シナリオ詳細

うま
うま

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●うま -The rolls for mass combat-
「大変だ! 『うま』が現れた」
「なん……じゃと……青二才、『うま』じゃと!?」
 焼畑村の酒臭い集会所で、村長を中心に、ざわつきが広がった。
 報告に来た青二才は、血の気が引いた顔をしながら続ける。
「東に少し行った所で、警邏の皆が戦っておられる! 隊長も! たまたま待機していた荒くれ者も加勢に行った……だが」
「なんということじゃ。卑劣にて醜悪なる部族オークを征伐しにいった若いもんは!? すぐに戻せんのか!?」
 4,5日前に出立した若手が、すぐに戻らないことは村長自身も知っていた。
 静寂の中で、集会所の大きな暖炉から、パチパチと弾けた音のみ響きわたる。
 村長は、奥歯を噛み砕かんばかりに食いしばる。
 うつむき加減に。
 やがて、殺気をみなぎらせて、火酒を喰らっている者どもを見渡す。
「早馬じゃ。若い衆がおらんなら仕方ない。こうなれば、頼りたくなかった――ギルドローレットへゆけ! 青二才! 皆に異論はあるまいな!?」
 青二才は転がるように退室したあと、火酒を喰らっていた者どもは否定せず、肯定せず。しかしヨダレを垂らしそうな笑みを浮かべていた。
 ならば肯定だ。
 村長――屈強な筋肉質の老人が壁に立てかけていた斧を握る。
「ゆくぞ、蛮勇にて無頼たる焼畑村の古強者よ! 『うま』なんぞにやらせはせん! やらせはせんぞおおお!! わしの村をおおおおお!!!」
 焼畑村の老人達は、一斉に各々の得物を握り、Hyaaaahaaaaと集会所を飛びだした。

 焼畑村と呼ばれる村落は、王都メフ・メフィートから東の国境に近くにある。
 距離だけなら、【天儀《聖教国ネメシス》】も近い。
 西風はバルツァーレク領の山脈に遮られ、北風もたどり着く前に雪が降って、乾きつくす。
 ただただ、冷たい空っ風のみが吹きすさぶ。
 この乾季中に、焼畑農業を行うため、焼畑村と呼ばれる。
 近くには無法地帯が広がっており、たびたび魔物の襲撃を受ける。
 このため、村は屈強な者を求める。
 王都で悪さをしたもの、腕っ節が強いもの、すべて拒まない。
 部族オークを筆頭とする、外敵の排除を目的とするためだ。そして開拓のためである。
 しかして、今年はうまが現れた。
 オークどもが活発化するこの時期に。
 『うま』という魔物は、村に全員いても苦戦する相手である。
 今の襲来は、焼畑村に壊滅的な被害がもたらすに違いなかった。


●焼畑村タクティカル -Unidentified Mysterious Animal-
「うまってなんだ?」
 開口一番、特異運命座標《イレギュラーズ》の質問が飛びだした。
「うまなのです」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)から、要領を得ない回答が飛びだした。
「焼畑村という東にある辺境の村からのSOSなのです。『うま』の退治に協力するお仕事なのです」
 話自体は単純だ。
 特に強力な魔物が現れたので、退治に協力してほしいというものである。
「部族オークという強めなオークの征伐で、村に若いひとたちがほとんど居ないみたいなのです」
 主戦力の不在中に、不味い魔物が来たという話らしい。
「かなり大変なので、ギルドがうんと貸し出し品を用意してくれたのです。現地にも防衛設備があるのです」
 羊皮紙に書かれている現地設備、および貸し出し品リストだ。
「で、『うま』ってなんだ?」
「UMAなのです!」


●焼畑村の危機
 3mの黒い球体としか言いようがない見た目をしていた。
 光すら飲みこむベンタブラック色の闇の塊である。
 黒い球体は、地面から浮遊しており、草原とも丘ともつかないところを、音も無く、静かに静かに進んでいた。
 騒々しいものは周囲だ。
「ぬうううう!! 一時退却じゃ!」
「応ッ!!!」
 怒号を上げ、背中を向けて、焼畑村の古強者は退却する。
 ビュンと静かな風切り音が鳴った。
「ぐわあああああ!!!」
 黒い球体から鞭のようなものが、古強者の背を打った。たちまち背の皮が破け、まえのめりに倒れそうになる。そこへ他の古強者が肩を貸して運んでいく。
 黒い球体の中央に、横一文字の線が入る。
 線が上下に割れて、目玉が現れる。目玉の前で魔力が集束し、光の球を創造す。
 キィンと甲高い音が鳴る
 放たれた眼光、まさに光。光線。
 直線上に立っていた村人を薙ぎ払い、薙ぎ払ったあとには――苦悶の表情を浮かべた老人達の石像が並んでいた。

GMコメント

 Celloskiiです
 防衛用の設備や、貸し出し品を駆使して敵を倒すクエストです。
 敵は相対的に強めです。
 多数のクラス、非戦スキル補正あります。工夫次第で補正対象が増える可能性あります。

●状況
 ・焼畑村内部or焼畑村外部
 ・東から、『うま』がやってきます
 ・ゆるやかな丘、下り坂もありますが、草原地帯です
 ・日中です。視界に問題ありません。
 ・リプレイは、焼畑村に撤退してきた村長等と、やってきたばかり特異運命座標。
  というシチュエーションから開始想定。プレイング次第で変わります。
 ・村から戦場(『うま』との戦闘領域)まで100m


●エネミーデータ
うま
 ゲイザー、アーリマン、バックベアード、イビルアイなど複数の名前がある生物です。
 直径3mほどの黒い球体形状。一つ目の怪物。浮遊しています。
 現在のレベル帯でまともに戦うと、Hard以上の戦闘能力です。ひたすらHPがタフですが、回避も防技も低めです。
 A:
  ・石化視線         神貫4  【石化】
  ・石化拡散光線       近神範  【石化】
  ・爆裂四散光線       遠神範  弱点
  ・emomod nokirol onok  自付与
 P:
  ・BS耐性
   BSを3つまで無効扱いにします。
   4つ以上付与した場合、BS耐性は効果を発揮しなくなり、浮遊も失われます。

  ・浮遊
   足場に影響されません。


●戦場の周辺設備
 ・設置型バリスタ×4(超遠射程の設備)
  戦場周辺設備。設置型バリスタの矢がある限り使用可能。
  『うま』を村側へ誘導しすぎると射程から外れます。
  ダメージ特大、弱点、射程:超遠。命中が高い人ほど威力補正があります。スキル補正も乗ります。
  最速で戦場到着段階で、射程内です。

 ・ファイヤーボール発射装置×2(遠距離射程の設備)
  戦場周辺設備。うまを村側へ誘導しすぎると射程から外れます。
  AP200を注ぎ込むと、砲手の神攻に強力な補正がかかるファイヤーボールを発射できます。
  補正は倍率レベル。神攻が高いほど強力。

 ・マジックアンカー×1
  戦場周辺設備。5Tごとに使用可能なアンカー打ち込み式のマジックロープ
  クリーンヒット以上で【体勢不利】【停滞】【麻痺】状態にします。射程R4範囲ならどこでも

 ・ヤグラ
  村の中にあります。集会所の上に立つヤグラから戦況を一望することができます。
  伝令役と併用すれば、焼畑村の古強者を指揮する際、大きな助けとなります。
  戦場まで響く釣り鐘もあります。何かの合図にも使用可能。

 ・工房
 村の中にあります。設置型バリスタの矢の材料が揃っています。
 基本的に棒にヤジリを括り付けるだけなので、10秒で1本。
 特定の非戦やクラスに補正があります。


●支給品
 ・設置型バリスタの矢×12
  設置型バリスタに使用可能です

 ・英国の妖怪《パンジャンドラム》(『ペテン師』作)×1
  南部の常朝村からギルドに贈られた工芸品。変な車輪です。
  車輪から火を噴き出してつっこんでいきます。
  当てると吹き飛ばし効果、バリスタ以上のダメージですが命中精度は良くないです。
  乗って運転してもいいです。最後には爆発しますが、直前に離脱、または気合があれば大丈夫です

 ・火薬樽×4
  黒色火薬と爆発性魔法石を詰めた、少々大爆発する樽です。
  固定ダメージ。

 ・せみのぬけがら×99
  せみのぬけがらです。クッション材。


●フレンドデータ
 焼畑村の古強者×20
 時々、アーベントロート領以北に「バイトいってくるわ」位の感覚で出稼ぎに行ったりする猛者達です。
 前衛と火力職ばかり。「BS回復? HP回復? 知らんわそんなもん!」気質。
 村長に作戦を伝えて納得させると、より効率的に動きます。
 基本的に「むずかしいことは分からん! 作戦は任せる」なので、ハードルは低め。
 また、特異運命座標が最前線で戦う姿を見せると燃えます。

  • うま完了
  • GM名Celloskii
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年02月16日 23時45分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

イミル・ヨトゥン・ギンヌンガ(p3p000096)
霜の国の騎士
ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
シエラ・バレスティ(p3p000604)
白い稲妻
アレフ(p3p000794)
堕ちた光
リリー・プリムローズ(p3p001773)
筋肉信仰者
シロン・ポチリュアス(p3p001787)
まおうさま
ニル=エルサリス(p3p002400)

リプレイ

●命運の車馬 −Wheel of Avoid−
 青二才は安堵の息をついた。
 情報屋のユリーカと、「戦ってもいい」という8人が、街道沿いの宿に偶然にも居たことが、焼畑村の運命を変えた。
 焼畑村に到着して、すぐに集会所へ行く。
 村長らと顔をあわせ、作戦会議と戦闘準備にとりかかった。
「いや、マジっスか?あんなのと戦えと……」
 『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)は物見台の上から、遠眼鏡をのぞいていた。
 直径3m、凹凸を認識できないほどの黒色――ベンタブラック色の球体を見た葵は、『ブラックホール』という単語が頭に浮かぶ。
「あの気味悪さ、一体何を使えって……あ、アレか」
 視線を遠眼鏡から外して見下ろすと、『霜の国の騎士』イミル・ヨトゥン・ギンヌンガ(p3p000096)を中心に、古強者達が支援物資を運んでいた。
 イミルは異世界の巨人族である。筋骨隆々な老人達に負けず、速やかに物資をおろしていく。
 葵は下からヤグラのハシゴを昇ってくる古強者に、遠眼鏡を返して、ひらりと工房を目指す。
 屋内では、村長率いる古強者達との作戦会議だ。
「死の予感がする」
 『輝きのシリウス・グリーン』シエラ バレスティ(p3p000604)は、負傷した古強者たちを見てつぶやいた。
 筋骨隆々な爺さんも、精悍な婆さんも、生傷が著しい。
 塩をすり込んだり、破れた皮膚をチクチクと縫ったり、応急手当を受けている。
 視線を正面にもどす。
 火酒をぶちまけたようなシミだらけの卓を挟んで、向こう側に村長。村長の両脇に重鎮らしき二人が座っている。
「私が死んだり石化した時の為に、盾役の代わりが欲しいです!」
 というと、村長が。
「若いもんが死ぬなど気安く口にするでない。心意気は買うがな」
 小難しい理屈がついたが、OKという話である。
 シエラの横には他に『夢見る幻想』ドラマ・ゲツク(p3p000172)、『筋肉信仰者』リリー・プリムローズ(p3p001773) 『堕ちた光』アレフ(p3p000794)が座っている。
「ファイヤーボールを発射できる仕掛けがあるとか」
 ドラマが問う。すると重鎮の魔法職めいた老婆が返事をする。
「確かに強力じゃが、消耗も激しいでな……使いたいと言うなら、ほれ」
 羊皮紙の説明書が卓の上に出てくる。
「お気遣いありがとうございます。総力戦、というやつなので、使えるものは使うのが正しいと思います」
 燃費の極悪さがデカデカと書かれているも、ドラマは平然と――身体の芯に熱を帯びながら――返事をした。
 老婆は「あれを使うのか?」と訝しんでいた。
「フフフ! この唯一無二の魔王シロンのファイヤーボールを見せてやろう! ありがたく思うがよい!」
 説明書が出てきたので、『まおうさま』シロン・ポチリュアス(p3p001787)も見に来た。
 葵から、バリスタの矢作りを手伝うように言われていたが、『わらわは矢を上手く作る経験なぞ持ち合わせておらんのじゃ!』と言ってきた。
 興味は「ドッカーンなやつ」が上回る。
 また、ニル=エルサリス(p3p002400)が、部屋の角のほうで小箱に油を注いでいた。
「ぬけがらに油を沁みさせるにゃあ」
 鼻孔にツンとくる鉱油の類、せみのぬけがらが詰まった箱に注がれる。
 訝しんでいた老婆の表情、「こやつら大丈夫か?」にランクアップせり。
 作戦の全体概要が古強者に伝えられる。
「う、上手くいくのかの?」
 ランクアップした老婆は懐疑的だ。これにはリリーが説得を行った。
「物事というのは全て筋肉が解決するものなのだ」
 リリーは腕を組んだ姿勢から論理を展開す。
「それを体現する我が付く以上、成功するに決まっておろうが!」
 手のひらを卓にバンッと叩きつける筋肉論法。
 ロジカルマッスル、マッスルリーズニング。論理的な説得によって、ハードルが上がっていた老婆を説き伏せることに成功。
 反面、老婆の表情は口を半開きに「こいつらやべーな」にランクアップした。
「やっこさんそろそろ入るぜ!」
 と上から声がした。
 アレフはヤグラ上の合図役として、古強者をスカウトしていたのだ。
 入る――とは、『村の防衛設備の射程に入る』の意に他ならない。
「敵は強大だ。他ならない勝利の為に力を貸してくれないか」
 アレフが確認のように問う。
 村のことを村人に任せる判断は正しかったと感じながら。
「皆の衆。作戦に意義はないな?」
 重々しく村長が周りを見渡しながら問う。
 治療を受けながら聞いていた者も、荷物を運び込んでいた動ける者も。たちまち。
「まだまだやれるぜ!」「野郎、ぶっつぶしてやる!」「Hyaaaaaaaaaaaahaaaaaaaaaaaaaaa!!!」
 と気合とともに、得物を振りかざした。


●鬨の車輪 −UMA−
 木枯らし来たりて、東へたちやる。
 さみしき丘を、さみしく抜ける空風の。
 情も職も有らざる風なれば。遠慮なく来て、遠慮なく東へ横切っていく。
 烈々たる戦場の空気である!

『――――』
 発声器官を有さない『UMA』は、静寂を伴い、かつ迫る絶望のように、開けた丘へと漂いくる。
 ただこの静けさが――足音すら出さぬ、風の音しか聞こえない、この静けさが、うなじの辺りを焦燥感でちりちりと焼いた。
「こちらも準備は良い」
 ニアの提案と、アレフの感覚によって、投擲が得意な三人の古強者が並ぶ。
 村長の横に座っていた――老婆と反対隣の――ハゲマッスルな老人とその他二人だ。
 投擲するものは、支援物資の樽爆弾だ。合図とともに爆裂していただく計画である。
「よっし! キミ達が戦いの鍵を握ってるんだお。ほんで、合図があったらキミ達の渾身の投擲で樽をうまにブン投げちゃえ!!」
「任されたぞ! 若いの!」
 少し「若いの」という言葉が心地よいニア。
 たちまち、ニア、シエラ、イミルが先陣をきり、イレギュラーズが駆ける!
「とにかくみんなで雄叫びを挙げながら砂煙が上がるくらい元気よく動いて戦おうネ☆ミ」
「宜しくね! 盾の扱いなら任せて!」
「頑張って……みるね」
 たちまち『うま』から光線が放たれた。
 地から天に向かって切り上げのごとく放たれる。地面が光線にそって割れていく。
 ニア、シエラ、左右にヒラリと散開。
「……守るの」
 中央、イミルが肉厚の両盾で弾く。イミルの守りの後方から古強者が躍り出る。
 遠方で、またチカッと光る。
「二連続!? また光るとか!?」
 予備動作もなく、『うま』からの光線。
 シエラが盾で殴りつけるがごとく弾いて。
「ひぇえごめんなさい! 私が悪かったから手加減してください……!」
 演技である。
「ハーッハッハッハ!! そうこなくては!! 先駆けこそ兵の華! 先駆けを支援する! 止ぉぉまるでないぞぉぉぉ!!」
「おおおおおおお!!!!」
 リリーの筋肉扇動、起爆剤がごとく。古強者、雄叫びを高らかに上げり。
 イレギュラーズ、『うま』の攻撃をかいくぐり、バリスタ地点へと到達。
 シエラ、イミル、ニア、古強者はそのまま前進す。
「うてえええええ!」
 リリーの声。放たれしバリスタが巨大な矢。
 風を切り。空を切り裂く。古強者たちのはるか上を走り抜け、1発、2発、3発、『うま』を穿つ。
 光を飲み込む外皮に着弾。次は瞼の厚い肉を削る。
 最後のもう一本が突き刺さる。
『OOOOOoooooOOOO000000!!!』
 地響きのごとき声がした。
 声――否、空気が震えし音。
 発声器官を持たない『うま』が、全身を震わせている音である。
「ゴール、っと言いたいとこッスけど」
 葵が言う。
「馬車をもって来たのも、結果的に良かったです」
 ドラマも次の矢を用意する。
 距離が遠ければ馬車を使って移動――と考えていたが、バリスタ矢をまとめて持ってこれた点において、非常に有効に働いた。
 シロンは馬車からバリスタ矢を用意する。
 リリーや葵、ドラマの近くに並べながら、馬車の御者である青二才に向かって声を張りあげた。
「わらわたちが作った分のバリスタ矢が工房にある! とってくるのじゃ!!」
「ふえ!? ふぁ! ふぁい!!」
 おお、気分がノッてきたノッてきたと、視線をファイヤーボール発射台に移す。
「魔王であるわらわを差し置いて人里を襲うとか許せんのう!」
 次に『うま』を見て、悪い笑顔をつくりける。
 かく、戦いは前線に出る者と、兵器を駆使するもので分担して推進される。
 『うま』の一直線に並ぶと薙ぎ払われる。そして一撃一撃が非常に重い。
 耐久力に自信があるシエラですら、まともに当たれば一撃で膝をつきかける殺戮性能だった。
『ooooo0000000OOoooooOOO000hhhhhh!!!』
 前線。
 眼前3mの球体から、地響きのごとき声がする。
 次に『うま』、天空に向かってビームを放つ。
 ビームは天高く伸びていって、そこから拡散。場に雨のように降り注いだ。
「ちょ、ひぇぇ!」
 シエラは盾を傘のようにしてかわそうとする。
 予測射撃のごとく、避けた先に触手の鞭打が飛来する。
 割って入り、防ぐ村長。
「わしは嬉しいぞ!! 勇敢にて蛮勇なるローレットの! こう、わしは誰かを守るシチュエーションが大好きでな!!」
「村長さん!?」
 村長。前線で戦うローレットの面々に対して、好意的に動いているようだ。
「あとは……お願い」
 イミルが、雨のごときものから、ニアを庇って膝をつく。
「んもう。ゆる〜い感じで終わらせようと思っていたんだけどにゃあ……」
 樽爆弾による合図にはまだ早い。
 もどかしき中に幾条もの金箭注ぎける。かいくぐって硬い外皮に刃の如き蹴り。
 厚き外皮が割れて液がこぼれるも、『うま』は歩みを止めない。
 この雨。持久戦ではジリ貧であった。
 ここで、地面から伸びた光のロープが、何本も射出され、『うま』を穿った。
「成功ッス。『マジックアンカー』」
 後ろのほうで、葵が動かしたものだ。
 斃れた村長の、無駄にせぬ。
「私は勇者シエラ・バレスティ! かかったなこのマヌケな目玉めー!」
 怒りの付与によって、攻撃を自らに向けると、次にファイヤーボールが飛んできた。
「オラァ野郎共目玉焼きにしたれー!!」
 シエラの興奮、天元突破せり。作戦の一。足(浮遊)を止めて四方八方から頭陀袋のごとく。
「魔王さまじゃからの! 威力は保証するぞ!!」
 シロンのありがたきファイヤーボール。
 瞬間的な魔力の高さは随一。特大の火球が黒い玉にぶつかって飛散せり。焼け野原。


●運命の車輪 −Fire after Fire wheel−
 眼球も硬い手応えだった。
 尋常ならざる耐久力の『うま』。『うま』に対して、リソースを食いつぶしながらの、一進一退の攻防であった。
 葵、リリーのバリスタが『うま』を『うに』のようにする。
 工房から運ばれる矢が尽きたときに、リリーやシロンの代わりに青二才が作りに戻る。
 矢がくるまで、葵がマジックアンカーの射出を行うことで、可能な限り効率的に運用す。
 ドラマ、シロン、アレフのファイヤーボール。
「まぁ、なんじゃ、撃てても2発が限界じゃがのう……」
 とシロンがうなだれ気味に言う消耗であるが、一撃で一進する。
 アレフは終始淡々とこなす。ドラマも思惑ありきでファイヤーボールだ。
 バリスタの射程から外れ、ファイヤーボールのみが届く距離まで近づく。
「やばい『石化死』してた! 私逃げる! 次のブロック役の方宜しく! 危なかったら逃げて!」
 やがて戦闘も佳境。シエラ、パンドラを用いない根性的復活果たしてここに後退す。
「我がきたぞ!!」
 バリスタ矢の供給不足が見えたところで、リリーが前線に出てシエラと入れ替わった格好だ。
『emomod nokirol onok!』
 ここで『うま』から奇妙な音が響いた。
 黒い表面に、血管のごとき筋が走り、眼球は真っ赤に染まりける。
 マジックアンカーを引きちぎり、再び浮遊する『うま』。怒りを体現するように、光線は石化ではなく、爆発する光線を放ちはじめる。
 殺戮性能が段違いに高まり、ここに戦いが激化した。
 次々と倒れていく古強者。重鎮らしき老婆もたまらず後退――後退したところで驚愕した。
「あんた、それ、何発撃っているの?」
 老婆が訊ねた相手はドラマである。
「4つ……また魔力を溜める時間がかかるので……回復に行きます」
 肩で息をするドラマ。
 限界を超えたファイヤーボール、爆炎を上げてキレた『うま』を焼く。
 火とは恐ろしい。ドラマは深緑出身である。火の恐ろしさを知っているが、同時に破壊的な美しさと、禁忌的な背徳的なものに心奪われる。
 久しく感じていなかった全身の魔力を搾り尽くす感覚。自身の実力以上の色鮮やかな業火の熱量に。
 瞬間火力ではシロン。継戦力はドラマ。
 リソースを食いつぶしながらの戦いにおいて、ここに無尽蔵のリソースがあった。
 『うま』がある境界を踏み越えたところで、アレフが別行動をとる。
 これも作戦のうち。ここまで運んでくるのも一苦労な物資の近くにいく。
 運命の車輪――車輪部分に刻まれた名を人差し指でなぞる。
「――常朝村。R.S.D.フェイスレスか」
 作者の名だろうが、知らない名だ。
 アレフがヤグラ上を見る。スカウトした古強者が鐘を鳴らす。作戦通り。古強者は道をあける。
 かの車輪は魔力により起動する。連動するように炎が車輪を包む。
 走りだす車輪――パンジャンドラム。
 飛び乗るアレフ。車輪の中央の装置の上に立つ。
「貴様は確かに強大だ、だが所詮は1体の化け物に過ぎん」
 黒い目玉が凝視してくる。チカっと光り、爆裂光線がやってくる。真っ向から魔法障壁を張って散らす。
「我々に勝てるなどと思ってくれるなよ!」
 アレフ直前で飛び降りることなど考えていない。当てるの一心。
 放たれ続ける光線を遡るように『うま』に直進、2つのワダチを刻みつける。次に炸裂す!
 吹き飛ぶアレフ、吹き飛ぶ『うま』。
 『うま』、ふたたびバリスタの射程に戻りけり。
「チャンスにゃ!!!」
 エルの合図。
 古強者三人より投擲される火薬樽。火薬という練達の叡智と、幻想らしい発破性の魔石を混合した特別製だ。
 轟音を響かせて爆ぜる。
 ここで、ニア。爆発しなかった不発樽を見つける。
「これは、やるっきゃないお!」
 とっておきをくれてやると、不発樽を抱え、エルも疾走。跳躍。
 『うま』のまぶたを掴む。
 脚をつかってまぶたをぺろりと捲る。眼球とまぶたの間に樽を押しこみ、回転。まぶたの上からかかと落としにて、樽爆破!
『emomod nokirol onok!』『emomod nokirol onok!』『emomod nokirol onok!』
 眼球への爆裂。発狂したように空気を震わせる『うま』。
「――――――ッ!!!」
 『うま』の咆哮をかき消すごとく、リリーが雄叫びをあげて吶喊。
 近接格闘らぬ、魔力をこめた杖を両手で固定。ニアのつくった傷に物理(メンタル)の一撃をねじ込む。ねじ込んだところで魔力を爆破させる。水晶体の破片が飛び散る。
 最終攻撃。
 続く古強者。そこへシエラ。
「やりのこしたことあった! これだけはぜったいやる!」
 撤退したと思われたシエラ。せみのぬけがらが詰まった袋を抱えて帰参せり。
 油が染み込んだせみのぬけがらをばらまいた。たちまち炎上す。
「ふぅはははー! 圧倒的火力! これぞせみぱわー!!」
 見届けてシエラ後退せり。
 パンジャンドラムの爆発によって深手を負ったアレフに、ドラマが特製の薬草汁を飲ませる。
「大丈夫ですか?」
「感謝する」
 アレフはすぐに立ち上がって敵をみる。
「此処までくれば最早後は我慢比べだ。私達が倒れるか、それとも私達が奴を討ち果たすか……恐れを知らぬ者は私に続け!」
 物資も、気力も、体力も、使い果たし、限界以上まで振り絞る戦い。古強者もそのとおり。
「それ! 魔王印の矢じゃ! ありがたく使うと良いぞ!!」
 後方。バリスタ発射台。
 にししと笑うシロン。魔王印のありがたい矢を受け取る葵。
「サッカーも戦いも、何となく似たもの同士って気がしてきたなぁ……」
 攻撃は最大の防御とは言うっスよ? よく分かる。
 でもその分厚い1枚が抜かれた時を想定するのも大事だと思うんスよ。と胸裏に強く思いながら。
 番える矢。
 放たれる矢。
 刺さった刹那――ぶじゅりと潰れるような音を立て――
『!……okirol ……onok』
 ここに焼畑村の運命は決した。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

イミル・ヨトゥン・ギンヌンガ(p3p000096) [重傷]
霜の国の騎士

あとがき

 Celloskiiです。
 遅くなりまして申し訳ありません。
 一部、危ないところ(戦闘不能からのEXF復活)がありましたが、結果的に快勝です。
 防衛設備や支援物資の分だけNormalですが、まともに戦うとHard水準の純戦。戦闘ルール的な部分を詰めないと厳しい敵でした。

 おつかれさまでした。

PAGETOP