シナリオ詳細
義を盾にする困り者の聖騎士達
オープニング
●クマったのはクマ以上に……
天義……聖教国ネメシス。
そこは、無辜なる混沌の東部に位置する大国だ。
宗教国家であるこの国は神という高位存在を尊び、敬虔な国民が多いことで知られる。
信仰というものは素晴らしく、神の名の元に正義と理想を掲げる人々。聞こえは非常に良いが、その思想がゆき過ぎた者も珍しくはない。
時として、それは事件を生むことにも繋がるという。
天義のとある集落。
その地もまた、多数の敬虔なる国民が暮らす場所。
朝から祈りを捧げ、この国で生まれ育つことに満足する人々が日々の生活を送っていた。
ある時、集落近辺に魔物の姿が確認されるようになる。
それは、体長3mはあろうかという灰色の毛並みのクマ。しかも、3体が一緒になって歩いているという。
これらのクマは食料を求めて彷徨っているらしく、この集落は格好の餌場だったらしい。突然現れては畑を荒らし、あるいは家畜となるニワトリや豚を狙って食い荒らすこともあるのだとか。
ほとほと困り果てた集落民は、国に助けを求めたのだが……。
「神の名の下に、我らがその憎きクマどもを成敗してやろうぞ!」
国から遣わされたという、クレメント以下6名の聖騎士達。
白銀の鎧を纏った彼らは、身元もしっかりと判明できる聖都フォン・ルーベルグで生まれ育った、非常に信仰心の強い若者達だ。
ただ、この聖騎士達には2点問題があった。
まず、温室育ちゆえに世間知らずであり、若干わがままな振る舞いがあること。
神の名の下にとその名を盾にし、ふかふかのベッドでしか眠れない、食べ物の好き嫌いが激しいなど、やや子供じみた要求をしてくる。
それだけならいいが、彼らは明らかに戦闘経験が浅く、クマを倒せる力量が明らかにないようだ。
綿密な計画をと罠を張ったり、おびき出したりといった手段で作戦を練っているのだが、ほとんどクマに攻撃を仕掛けられずにいる。戦略ばかり立てはするものの、聖騎士達にそれを実行する力が伴っていないらしい。
とはいえ、悪い若者達ではない。
世間知らずな面以外は利口な若者達であり、村人の生活の手伝いをしてくれることもある。
そんな彼らの振る舞いもあって集落民なかなか指摘も出来ず、彼らが集落に来て1週間この状況が続いていた。
もちろん、その間にもクマによる被害は続いている。
どうしたものかと考えながら、さらに悩みの種を増やしてしまった集落民は、最近噂に聞く幻想のローレットへと頼ることにしたのだった。
●集落民を騎士から護れ?
幻想のローレット。
所狭しと貼られた依頼を見つめていたイレギュラーズへ、『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が声をかける。
「あ、あのっ……、少しよろしいでしょうか?」
まだまだ情報屋として不慣れな彼女は、イレギュラーズに声をかけるだけでも気構えが必要な様子。
それでも、彼女はイレギュラーズの助けになろうと、精一杯頑張って依頼説明を始める。
依頼主は、天義のとある集落の民達だ。
「なんでも、事を荒立てないよう、事件を解決して欲しいとの事です」
端的には、集落の周辺に現れたクマを倒してほしいとのことだが、それだけではない。
先にクマ退治を依頼した若い聖騎士団のメンツを潰さぬように、事態を解決して欲しいというのが集落民の要望だ。
「例えば、皆さんがこのクマを先に倒してしまうと、聖騎士さん達が集落に来た意味がなくなってしまいますよね?」
つまり、彼らに手柄を与えるような形でクマを倒すのが望ましい。
解決方法としては他にもありそうだが、集落民としてはそれを臨んでいる。
「集落民の皆さんにとっては、頭の痛い状況が続いています。できるだけ早く、解決してあげてくださいね」
アクアベルはクマや聖騎士達の情報を紙面で手渡しつつ、イレギュラーズ達にこの1件を託すのである。
- 義を盾にする困り者の聖騎士達完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年11月04日 22時30分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●困ったお坊ちゃま騎士達
天義……聖教国ネメシスへとやってきたイレギュラーズ達。
一行の中ほどを歩く、大人しそうな見た目の『治癒士』セシリア・アーデット(p3p002242)は小さく唸って。
「クマ退治か。退治をするだけなら頑張ればいいんだけど、騎士さん達がね……」
今回の依頼は確かにクマ退治だが、彼女が言うようにそれだけが目的ではない。
宗教国家で起こる依頼は厄介なものも多いようで、今回の依頼に参加したメンバー達も対応に難色を示す。
「これはまた、ずいぶん困った人達みたいだね」
メイド服姿の『メイドロボ騎士』メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)も少し首を傾げて考える。
なんでも、先に依頼したお坊ちゃま聖騎士達の機嫌を損ねぬよう、穏便に事態を収拾して欲しいというのが集落民の願いだというのだ。
「まあ、困った騎士様たちですのね。ですが、悪い方達ではないようですから、これからに期待かしら」
異世界の貴族令嬢である『トラップ令嬢』ケイティ・アーリフェルド(p3p004901)も彼らの行いには呆れてはいるが、根は悪い人間でないこともしっかり見ている様子だ。
ただ、騎士達のいいところばかりが見えているメンバーばかりではない。
「ん~、この手の人ってプライドだけは高いし、正論を言ったからって頷いてくれない事が多いんだよね」
「最初からこっちに依頼してくれれば良かったのに。次からは是非そうしてもらいたいよ」
セシリアはやんわりと否定の言葉を口にし、梟の因子を持つ飛行種、『応報の翼』ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)などは言葉の端に棘が含まれた物言いである。
「騎士の手柄になるようにして、クマも退治する。言うだけなら簡単なんだけどね」
『イッヒヒヒ。世間知らずの坊ちゃん達の相手は大変だなオイ』
一言呟く銀髪、金と青のオッドアイを持つ『魔剣使い』琴葉・結(p3p001166)の背丈と同じくらいの長さを持つ魔剣から、笑い声が響く。
『魔剣ズィーガー』。実は、結の本体とも言うべき存在だ。
『まぁ、クマ共より言葉が通じるだけ、まだあっちのがマシかも知れないがな』
「あんまり図に乗らせ過ぎても癪だけど、できればうまく煽てて騎士達に満足して貰いたいわね」
そんな彼らの話が聞こえたのか、メートヒェンもほのかに笑みを浮かべて。
「まぁ、基本的に善良な人達みたいだし、ちゃんとサポートしてあげようか」
「問題は外と内に一つずつ、ですか。では、まず内の問題から解決していきましょう」
「村の人達をほっておくわけにも行かないし……。仕方がないね、上手くおだてて一緒に戦わせて貰うようにするかな」
仲間達の話を聞き、ブラックドッグなる種族の血を引く旅人『Tender Hound』弓削 鶫(p3p002685)が淡々と対処法について語ると、セシリアも小さく頷いて。
「さてさて、頑張って行くとするよ!」
元気に腕を上げ、セシリアは仲間と共に目的の集落を目指すのである。
●(甘ったれ)騎士達と共同戦線を!
さて、集落に到着したイレギュラーズ達は、この地に駐留している聖騎士達と接触をはかる。
一行が見つけたタイミングでは、聖騎士達は集落民と話しながら、罠を張れそうなポイントを考えていたところだった。
「あの白い連中。今は集落民とそれなりに上手くやる器量が有るみたいだけど」
遠巻きに、聖戦士達を見たミニュイは考える。
今回、成功することで己の正しさに自身を持ち、それを繰り返すことで、やがて躊躇なく他人を『正義』を轢き殺す白い車輪に変わっていくのではないか、と。
「……まあ知った事じゃない。集落が無事ならそれで良い。――今は」
天義の騎士、聖職者……。ミニュイはそれらに対する感情を押し殺し、依頼に当たる。
「任せよ。必ずや獣どもを相当してみせよう!」
高らかに語る聖騎士のリーダー、クレメント。見栄とプライドで凝り固まった世間を知らぬお坊ちゃまといった風貌だ。
「崇高なる神の御旗の下に……ってか。まぁ、悪い奴らじゃねえんだろうけど」
見た目は長身、金髪をオールバックにした軽い雰囲気の青年、『隣に侍る伊達男』空木・遥(p3p006507)は聖戦士に一定の理解は示す。
さて、今回のチーム唯一の男性であるその遥立案の作戦で、メンバー達は作戦を進めることとなる。
「民草を護りたいという貴方様方のお志に、感服致しました」
まず、遥がクレメントへと声をかける。
「微力ではありますが、我々イレギュラーズも協力させていただけませんか」
「聖騎士様の働きのお話を噂に聞き参りました。是非とも騎士様達のお手伝いを出来る名誉を私達に下さい」
まるでお手本のような礼儀正しさで対応する遥に続き、セシリアもまた丁寧に応対していく。
「ほぉ……」
そんなイレギュラーズ達の姿に、聖騎士達は感心する態度を見せる。
「お~お~、お坊ちゃん達はご立派な理念と装備をお持ちのようで」
そんな上から目線の態度の聖騎士に、遥は顔をしかめて小声で愚痴っぽく揶揄していた。
そこで、白猫の獣種である『しまっちゃう猫ちゃん』ミア・レイフィールド(p3p001321)が騎士達に上目遣いで近づいて。
「うにゃ♪ 自ら遠方の村まで足を運び、困る村人を見捨てず救おうだなんて……、素晴らしい騎士様……なの!」
どうか、自分達も一緒にお手伝いさせてほしいとミアは願う。
その際、おべっかを使う彼女は可愛らしいオーラを放つ。
ミアに魅了されてしまう配下騎士達。
ただ、リーダーのクレメントだけは難色を示す。
「もし宜しければ。私達一同、騎士様方の指揮下にて助力させて頂く所存です」
鶫がスカートを軽くつまんで一礼すると、メートヒェンがさらに続いて。
「騎士の戦い方というものを見て、学ばせて貰いにきたんだ。実戦の様子を間近で体験させてもらいたい」
メートヒェンもまた、騎士達へと進言する。
「足手まといにならない程度には戦えるから、戦いを見せてもらうお礼に少し協力させて欲しい」
「追い立てるような等雑事は是非、我々を使って下さい。必ずや役に立たせて頂きます」
セシリアもメートヒェンをサポートするように口添えし、敬意を払っている素振りをしてクレメントの気を引く。
「ミア、小っちゃいけど、騎士様のお役に立ちたいの。……だめか……にゃ?」
さらに瞳を潤ませてミアが主張すると、さすがの聖騎士様もこれには堪らず。
「あー、もう分かった!」
声を荒げ、イレギュラーズ達の提案を受け入れたのだった。
●クマ退治共同戦線
さて、一行は聖騎士達と共同戦線を張るわけだが。
「此度の罠絡みだけではなく、以前に立てていた作戦の事もお教え頂けますか?」
私達が加わることで実現できるものがあるかもしれないからという鶫の問いかけに、クレメントはドヤ顔で言い放つ。
「集落内に誘い込み、罠を張ってクマどもを一網打尽にするのだ!」
イレギュラーズ達は呆れを隠しながらも、おおぉと声を上げる。ケイティなどは、その意見を絶賛してみせていた。
「ふふっ、騎士殿達も人が悪い。それは私達がいなかった時の作戦だろう?」
メートヒェンは場の空気を仕切り直しつつ、騎士達へと提案を持ちかける。
「集落の中で迎え撃つ作戦を聞かされたら、この人数なら集落への被害が少ない作戦もとれる。それに気づけるか、私達を試したんだね」
「よ、よくぞ気付いた!」
「にゃるほど……罠、なの。流石、騎士様賢いの」
うまく別の策を考える流れを作ってから、ミアは小さく唸って。
「なら、ミア達は、そこにくまくまを追い込むの」
そのまま、彼女は設置予定場所を尋ねるが、安易に集落のど真ん中。集落に被害が及ぶのは間違いない。
「ミア、奥は村の人が可哀想だと思う……の」
途中でとりとり、お野菜が食べられちゃうにゃと、彼女は可愛らしく訴えかけた。
「騎士様に意見なんて、罪深い事……ごめんなさい……なの」
その姿の破壊力は抜群。聖騎士達も一斉に、涙を浮かべるミアを落ちつかせようとしてくる。
リーダーのクレメントは冷静ではあったが、さすがに集落民の人目も気にかけ、他の騎士に倣って彼女をなだめていたようだ。
完全に猫を被ったミアは地を全く出さずに、騎士達を見上げて。
「でも……、許してもらえるなら……、入り口に仕掛けて欲しい……の」
「村の出入り口近辺ならば見通しが良いので、術による集中砲火や狙撃を実行し易いです。どうでしょう?」
そこで、鶫が理由も合わせて補足する。
プライドが高いせいか、自分達の策を変更することにはかなり抵抗のある聖騎士達だったが。
「頑張るから……、お願いなの」
ミアがそっと差し出したのは、ネメシス正教会の発行した正式な免罪符。さすがに聖騎士達も、大人しく引き下がらざるを得ない。
その流れで、ケイティは罠の設置、そして罠を落とし穴に指定することを願う。
「騎士様方は戦うのが仕事ですもの。些事は私達にお任せくださいまし」
罠作りを面倒がっていたらしい聖騎士達は喜んで、その全てをケイティへと委ねてくれた。
打ち合わせを済ませ、イレギュラーズ達はまず集落近辺を徘徊する魔物クマの捜索に当たる。
結は魔剣の力を使って浮遊し、上空から敵影を探す。ミニュイも梟の翼を羽ばたかせ、捜索に当たっていた。
地上からは、鶫が超視力を生かして周囲を見回す。
予め聞いていたクマの出没地点を軸とし、彼女は注意深く見ていたのだが……。
「……いました!」
鶫の発見した方向へ皆が目を向ければ、そこには爛々と目を輝かせたクマが3体、集落へと近寄ってきていた。
「グヴァアアアアッ!!」
まだ集落までは距離があるが、村正面に罠を張っているのに左手側の出現。このまま進めば、罠には掛かからず集落へと突っ込んできてしまう。
この為、結は空から近づいて。
『図体ばかりのクマ共! 痩せっぽちで食いでは無いが肉なら此処にあるぜ! 食えるもんなら食ってみな!』
「ちょっと、私を餌にしないでよ」
魔剣ズィーガーの呼びかけに、結が突っ込みを入れつつ、クマを挑発していた。
怒りに満ちた敵は4本足で、地面を駆けてくる。
基本はクマが近寄ってくる間に彼女は再び距離を取っていたが、時に我を取り戻した敵が猛ダッシュし、結に突撃してダメージを与えることもあったようだ。
そこにミニュイも入り、相手が余計な場所に行かぬようクマをマークしつつ、聖なる光を発してクマの体を撃ち抜いていく。相手にショックを与え、結の挑発の効きを良くする為だ。
その間、鶫はクマが村に入らないようにと、白銀のライフル『白い死神』から魔弾を叩き込んでいく。
そうして誘導する集落の入り口では、ケイティ、遥が穴を掘っていた。
とりわけ、ケイティは超高速で穴が掘れるギフトを持っている。
クマが落ちる程度の穴を開けることなど、動作もないことだ。
その後は、穴の内部に『NINJAマキビシ』と『トリモチスライム』を仕掛けていく。罠の設置ならばお手の物だ。
後は、うまくここまでクマ達をおびき寄せたいところ。
ケイティはさらに周囲にバリケードを展開しつつ、クマの移動を妨げようとする。建物などの保護する役割もあるからなかなかに有用だ。
遥は罠の近くで陣地の構築を行いつつ、聖騎士達と共にクマの接近に備えていた。
「そういえば、トドメを刺す際の口上など、よろしいかと」
「「おおっ!」」
その言葉に目を輝かせ、あれやこれやと考えている合間に、イレギュラーズ達はクマの誘き寄せを続ける。
他メンバーもまた、銘々に状況を整えていく。
セシリアは保護結界を張り巡らせ、周囲への被害の軽減に努める。
メートヒェンも相手が集落へと抜けていかぬようブロックしながら、クマの走る勢いを生かしてメイドの嗜みとして身につけた格闘術を叩き込む。
クマは傷つきながら、徐々に集落入り口へと近づいてくる。
敵の接近を察し、遥もまた幻惑のステップを踏みながら、名乗りを上げて相手を逆上させる。
「……入口に仕掛けた以上、突破されると危ない……の」
猫天使の翼を使って低空飛行するミアも自由なる攻勢態勢に入り、『FF・フリークス』から挑発めいた弾丸を叩き込み、クマどもの理性を失わせる。
「ミア達を無視なんて、させない……にゃ」
得てして、クマどもは見事にケイティらが開けた穴へと落下していく。
「グヴァアアッ!?」
ミニュイがそこを見計らって自らの翼を素早く振るい、穴へと押し込むべく青い衝撃波を発する。
さらに1体が穴へと落下、それを見た聖騎士達がいきり立つ。
「今が好機! ゆくぞ!!」
格好の餌食となった相手へと、彼らは意気揚々と攻め始めるのだった。
●穴にハマったクマ退治!
うまく、クマどもを罠に嵌めたのであれば、後はこちらのもの。
ビートを刻むかのように加速して遥は相手に蹴りかかって行くが、落とし穴にハマったクマ達はなんとか猛ダッシュして上がってこようとしていた。
「っと、油断してると捕まってしまいそうだ」
遥は少し近づけば、敵の豪腕に薙ぎ払われてしまうと懸念する。特に捕まれば、ベアハッグでかなりの体力を持っていかれそうだ。
しかし、イレギュラーズ達もぬかりはない。
ケイティはワイヤートラップを発動させ、相手の動きを制しようとする。
ここまで主となって敵を抑えてきた結は余裕を見て穴の上を舞い、魔剣でクマの身体を切り刻む。
メインで引き付け役となっていたこともあり、先ほどの魔剣ズィーガーの言葉ではないが結にも傷は少なからずある様子。
セシリアがそんな彼女へと治癒魔術を使い、癒しに当たっていた。
ミニュイもまた、ノーモーションで衝術を飛ばす。
しかし、穴周囲に密集してきた聖騎士達から距離を取り始めていたのがミニュイらしい。
「ミア特製ねこねこ爆弾……。気に入ったら……、もう一ついかが……なの♪」
微笑を浮かべ、穴の中へと白猫型の特製爆弾を投げ込むミア。
本当はさらに投げつけたいと考えていた彼女も、聖騎士達が本格的に攻撃を始めたことで控えることにしていた。
ここまで来れば、追い込みといったところ。
「いくぞ、神は我等に勝利せよと告げている!!」
クレメントが告げると騎士達も穴の外から攻撃を仕掛け、少しずつではあるがクマを痛めつける。
メンバーもそれを援護し、鶫が相手の脚を狙って1本ずつライフルで撃ち抜いていく。
敵が弱ってきたことを察し、ケイティは攻撃を止めて戦況を見守る。
(あくまで、止めは騎士さん達に任せないとね)
時に遠術を織り交ぜて立ち回っていたセシリアも、仲間の癒しに専念していた。このまま攻撃し続けてイレギュラーズが倒してしまえば、話がややこしいことになってしまう。
遥が相手の脚を狙って蹴りかかったところで、聖騎士の槍使いが見事に相手の体を串刺しにし、息の根を止める。
相手を抑えようと動いていたメートヒェンもトドメは近いと察して。
「私はこの態勢からでは攻撃が難しい! 動きを止められているうちにトドメを頼みたい!」
すると、騎士のうち術使いが遠術を撃ち込み、見事に相手の頭を破壊して相手を卒倒させていたようだ。
これなら、少なくとも集落に被害は出ないだろうと、メートヒェンも息をつく。
そして、残る1体も瀕死の状態。
クレメントは事前に、遥に言われていた『トドメを差す際の口上』を思い出して叫ぶ。
「神よ、我に悪しき魔物を討伐する力を!」
手持ちの剣を輝かせたクレメントは、残る1体のクマを切り裂く。
「天義の力、思い知ったか!」
光に灼かれ、首を切られたクマが白目を向いて倒れていった。
「罠作戦成功……! 全て、騎士様の知略の成果なの!」
やっぱり、騎士様はすごいというミアの言葉に聖騎士達の顔がにやける。
ケイティもまた、しばらく彼らを称賛していたのだが。
(これが接待というやつですのね。けっこう疲れますのね……)
折角、自身のトラップが見事に役立ったというのに、ケイティはこの上ない疲労感を覚えていたのだった。
●接待は辛いよ
クマを退治したイレギュラーズ一行。
結やミニュイが罠の後片付けをする最中、ケイティは集落の長へと掛け合って。
「またこんなことがあっては困りますもの」
許可を得た彼女は嬉々として、集落の周辺にバリケードや新たなトラップを作り始めていたようだ。
無事事件を解決できたとあって、ようやく自宅に戻れると聖騎士達も一息ついていたようで。
「今後、ローレットと騎士の方々が共闘する機会は増えていくかもしれません」
そこで、彼らに対し、鶫がこう告げる。
「その点で、今回のは良き経験になったのでは?」
「ま、まぁ、評価してやってもいいな」
イレギュラーズ達の力を目の当たりにし、クレメントを始め聖騎士達は全員舌を巻いていた。
「おお、クマを倒していただけるとは!」
「聖騎士様、ありがとうございます!」
そこで、集落民から彼らを称賛する言葉が飛び交う。
予め、遥が人々に聖騎士達を誉めそやすよう裏で話をつけていたのだ。
「うむ、困ったら、また我らに頼るがいいぞ」
それに、聖騎士達もまんざらでなさげに喜ぶ。
イレギュラーズ達は嘆息しながらも、機嫌よく帰ってもらえそうだと依頼の成功を実感していたのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
なちゅいです。リプレイ公開いたします。
MVPはすごく悩みましたが、ここが自身の見せ所とばかりにトラップを仕掛けた貴方へ。
今回は参加頂き、本当にありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様、こんにちは。
GMのなちゅいと申します。
天義からの依頼ですが、集落民がお困りの様子ですので、助けていただければと思います。
●目的
事を荒立たせずに、集落民の悩みの種を全て解消すること。
●敵
◎クマ3体
魔物と化し、群れをなして行動しているようです。
集落付近を周回し、集落の家畜や農作物を食い荒らしております。
近~中距離攻撃メインですが、移動力が高い為に遠距離にいても気を抜けない相手です。
・ベアハッグ(物近単・窒息)
・猛ダッシュ(神中単)
・豪腕(物近列・出血)
●NPC……クレメント以下、騎士6名。
神に忠実である聖騎士達ですが、神の為の行いを盾にややわがままな振る舞いをすることがある温室育ちの若者達です。
力量こそ伴わないものの、正義感の強い若者達ではあります。
クレメントは剣、配下3名は槍、3名は術を使います。
●状況
集落民の依頼を受け、聖騎士達は国からの指令という形で集落周辺のクマ討伐へと訪れています。
彼らは次こそは確実に倒すべく、集落にクマを誘い込んでから罠にかけて撃破を考えておりますが、集落に被害が出るのは避けられなくなります。
また、先に全てのクマを倒せば、聖騎士達に無駄足を踏ませたと集落民やイレギュラーズを咎め、新たな確執を生みかねません。
いかにして事を荒立たせずにこの1件を解決するか、イレギュラーズの力量、裁量が問われます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いいたします。
Tweet