PandoraPartyProject

シナリオ詳細

あるてぃめっと相撲ろわいやる

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●エイオスゴッツァン、ちゃんこは飲み物
 土鍋の中にふんだんに投入されたぶつ切りの鯛の白身が、俺を喰え! とばかりに主張する。人参玉葱白菜豆腐だって、これでもかとばかりに山盛りで。程よく煮えた多種多様な具材が一つの鍋の中、味の一体化を起こす。
 美味くないはずがない。
 鍋には全てがある。鍋は全てを内包する。例えるならば――鍋は宇宙。
「ゴッツァンデス」
 鉄帝の戦闘部族『オーズモー』の頂点に君臨するスモウレスラー、『ヨコヅーナキング』テッテイ関は土鍋に口をつけると、宇宙を飲み干すかの如く、その全てを一気に飲み干した。
「お替り、ゴッツァンデス」
 テッテイ関は二杯目の土鍋に手を伸ばす。中身は味に変化をつけて、丸鶏だ。
 ちゃんこを食すのもスモウレスラーの身体を作る修行の内だが、それにしても漢らしい食べっぷりである。
「そういえばテッテイ関、イレギュラーズを知っておるか?」
 二杯目も一息で飲み干し三杯目の土鍋に手を伸ばすテッテイ関に、こちらもちゃんこを飲み干したばかりの部族の長老、オヤカータが声をかける。
「イレギュラーズ……でごわすか?」
 はて、幻想を拠点とする何でも屋集団であったか? 最近ここ鉄帝でもちょくちょく耳にするが……と、三杯目の土鍋を飲み干しながら思案する。
「少し前に追放した、部族のガンどもを覚えておるか?」
 それなら覚えている。ヨコヅーナまで昇格したが、素行の悪さがたたって破門の上追放になった一派だ。ケチな野郎だったな、と、鍋休めにカレーを飲み干しながら。
「それがどうも幻想のほうで盗賊の真似事などと悪事を働いておったらしいのじゃ。そこを件のイレギュラーズに退治されたらしいでな」
「ほほう。追放したとはいえ、他所に迷惑をかけてたとなれば、それは部族の不始末でごわす。イレギュラーズとやらには世話をかけたでごわすな」
 そう言うと、日本酒を樽ごと呷るテッテイ関。
「しかし追放された面汚しとはいえ、ヨコヅーナを倒すとは、なかなか侮れないでごわすな。これは是非一度、かわいが……お礼をせねば」
 テッテイ関は四杯目の土鍋に手をつけようとして――。

「ちゃんこ番! お替りがないぞ!」

●アルティメット相撲ロワイヤルへの招待状
「お前らに招待状が届いている」
 情報屋の『酔っ払い』ジュリエット・ノックス(p3n000036)が、テーブルの上に招待状を開いてみせる。
「ちょっと前にイレギュラーズが解決した事件のお礼をかねて、是非一度手合せを願いたいそうだ」
 何故、お礼が手合せになるのか解せぬが、それが鉄帝の流儀なのだろう。訓練されたイレギュラーズは深く考えたりしない。
「とりあえず、勝敗問わずに相手さんが満足する戦い――いい試合ができればOKってことだが……今回、お前たちはローレットを代表するみたいなもんだ。
 くれぐれもローレットの威信にかけて、不甲斐ない戦いとかするんじゃねーぞ?」
 要はいつも通りに殴れってことだなと理解したイレギュラーズ。鉄帝に負けず劣らずの脳筋だった。
「手合せの後は、ちゃんこで歓待してくれるらしい。ああ、こっちがお礼なのかもな」
 あー、鍋かー。鍋が美味しい季節になってきたなあ……ビールもいいけど日本酒も合うんだよなーと、羨ましそうな目をするジュリエット。
「まあでも、スモーレスラーって莫迦みたいに喰うらしいからなー。負けじとつられて喰いすぎて、重症とかには気をつけろよな」
 いやいやそんなまさかまさか――。

GMコメント

 依頼に失敗しても、ちゃんこはちゃんと食べれます。
 ってわけでこんにちは。茜空秋人です。
 以下情報。

●依頼成功条件
 アルティメット相撲ロワイヤルで善戦する(勝敗問わず)

●情報確度
 Aです。想定外の事態は起きません。

●アルティメット相撲ロワイヤル
 直径30mの土俵内で戦う相撲ロワイヤル。いろいろなバージョンがあるみたいですが、今回は8vs8の形で戦うことになります。
 足以外が地面に触れても3秒ルール適用。
 土俵外に出たら失格。(揉みあって両者ともに土俵外に出た場合は、前後を問わず両者とも失格)
 マワシが取れても、失格にはならない。
 戦闘不能になったら失格。
 ギブアップ宣言で失格。
 失格者は土俵外に去り、最終的に最後まで残った陣営の勝利。
 イレギュラーズは装備スキルともにいつも通りで問題ありませんが、動物などのアイテム使用は禁止します。
 このシナリオに限り死亡者は出ません。必殺スキルも遠慮なく使えます。
 希望者にはマワシが貸与されます。髷も結ってもらえます。なんなら髷ヅラもあります。
 大まかな目安として、相手半数以上の失格で善戦とします。

●スモーレスラー
 マワシをしめ、徒手空拳で闘うファイター。
 攻撃力と防御力に秀でています。反面、回避は劣ります。
 自身の強さに誇りをもっており、単独での攻撃を基本とします。
 全般的にかなりアツくなりやすい性質。眼前の敵とタイマンになったら、だいたいアツくなります。
 それ以外の状況では連携とかあまり気にせず、フリーの相手を見つけたら積極的に狙います。

・テッテイ関
 ヨコヅーナキング。特出した強さを誇ります。依頼成功のためには、あえて倒さない手をとるのも作戦かもしれません。

 張り手(物至単)【痺れ】【弱点】
 サバ降り(物至範)【窒息】
 ぶちかまし(物中貫) 助走をつけた移動を伴う攻撃。マーク、ブロック無効
 四股踏み(神自域) 2R以内の味方のBS回復70

・ヨコヅーナ
・オーゼキ×2
・セキワーケ×2
・コムスービ×2
 ヨコヅーナ~コムスービ間では、番付で段階的にHPとステが上がります。

 張り手(物至単)【痺れ】【弱点】
 サバ降り(物至範)【窒息】
 ぶちかまし(物中貫) 助走をつけた移動を伴う攻撃。マーク、ブロック無効

●ちゃんこで乾杯
 テッテイ関はお替り無双です。
 遠慮なくちゃんこを愉しみましょう。
 ただし、未成年者の飲酒は当然厳禁です。

 限界を超えて食べるなど、プレイング次第では重症になることもあるかもしれません。

●その他
 ↓と関連しますが、特に読まなくても問題ありません。
 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/740

 素晴らしいプレイングをお待ちしています。

●アドリブ
 アドリブ描写が用いられる場合があります。
 プレイングやステータスシートにアドリブ度合、『アドリブNG』等記入くだされば対応いたします。

  • あるてぃめっと相撲ろわいやる完了
  • GM名茜空秋人
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年11月08日 21時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

セララ(p3p000273)
魔法騎士
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
河津 下呂左衛門(p3p001569)
武者ガエル
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
黒武護
ワーブ・シートン(p3p001966)
とんでも田舎系灰色熊
ニル=エルサリス(p3p002400)
ワルド=ワルド(p3p006338)
最後の戦友
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹

リプレイ

●はるばる来たぜオーズモー
「……何故、僕はここにいるのだろう?
 そうだ。確かちゃんこ鍋なる未知の料理をご馳走してくれるっていうから来たんだった」
 鉄帝の戦闘部族『オーズモー』の直径30mの特設土俵前。巨漢揃いのスモーレスラーを目の当たりして『特異運命座標』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)はぼんやりと呟いた。
「僕はただ、ちゃんこ鍋が食べたかっただけなのに……その前に一汗かくのか。よく考えれば当たり前だね鉄帝だもの。依頼書よく読もうね僕。
 ……生き残らなければ。ちゃんこ鍋のために!」
 研究熱心な性格が先走り好奇心と食欲が合致した結果、スモーレスラーと戦う羽目に陥っていた。
「いい男にしごいて貰えるチャンス!
 いやー、スモーレスラーいい身体してて眼福だね、惚れ惚れしちゃう」
「まさか横綱と相まみえる時が来ようとは……!」
 かと思えば、『髭の人』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)や『武者ガエル』河津 下呂左衛門(p3p001569)など、ちゃんこも相撲も楽しみだという者もいる。
「せっかくだからスモーレスラーを体験してみたい! マワシを借りたり髷を結ってもらおう!」
「相撲は子供の遊び、あるいは力比べとしての心得くらいはあるが、正式な土俵に上がれる時が来るとはな。ちょっと感動でござる。
 あ、マワシ等を身に着けさせてくれるのならば有難く頂戴したい。拙者、毛が生えていないのでござるが、髷は似合うでござろうか?」
 普段から褌着用の下呂左衛門にマワシを拒む謂れはない。髷のカツラをかぶり、一人前の力士姿に満足一入である。ムスティスラーフも『どすこい!』と四股を踏んで雰囲気を満喫している。土俵入りにと、わざわざ塩まで持参してきてテンションが凄い。
「髷は、結わない。マワシも、付けない」
「まわしと髷はノーセンキューです」
 対照的なのが『神話殺しの御伽噺』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)と『おでん食う?』ワルド=ワルド(p3p006338)の二人。帽子の下から伸びたエクスマリアの金髪が、理解できないとでも言いたげに捩れ、無意識に疑問を示す。ワルドもニコニコした微笑みを崩さないが、内心断固拒否なのは明らかだ。
「なんかぁ、体格の大きい人たちですねぇ。オイラに近い感じもあるってところかなぁ。まぁ、何にしろ、彼らと戦うって話にはなってるんですけどねぇ。
 でもぉ、今回はぁその後にお食事会のようですけどねぇ」
 スモーレスラーに負けず劣らず立派な身体の熊の獣種の『とんでも田舎系灰色熊』ワーブ・シートン(p3p001966)が、体長298cm体重672㎏の巨躯を揺らす。
「ちゃんこ鍋、鮭が入ってれば嬉しいですよぅ」
 見ての通りの熊――自前の毛皮を生やし威風堂々とした熊姿のワーブも、マワシなど興味無さげに勝負の後のお楽しみに思いを馳せる。
「派手にぽこちゃかしてお鍋も食べれるなんて……もしかして鉄帝ってウチにとって理想郷!?
 まぁ、冗談はそれくらいにして食前の準備運動がんばってこ~」
 イレギュラーズにかかってはスモーレスラーとの勝負も食前の余興にすぎぬとばかりに、余裕綽々なニル=エルサリス(p3p002400)。山椒は小粒でもピリリと辛い、135cmと小柄ながらもスモーレスラーを前に怯むことなかった。
「ボクのアイドル伝説が、鉄帝でまた一歩刻まれるんだね」
 可愛い顔に自信満々の笑みを浮かべる『魔法騎士』セララ(p3p000273)。
「『爆誕!? 鉄帝のアイドル』とかかな……?」
 こちらも『みらこみ』での自伝漫画のサブタイトルとか考えている余裕っぷりだった。

●あるてぃめっと相撲ろわいやる開幕
「わっしょい! わっしょい!」
 土俵に上がる直前、マワシを締め髷を結いスモーレスラーを気取ったムスティスラーフが山盛りの塩を威勢よく撒きまくる。
「……ちょございでゴワスな」
 鉄帝オーズモーでは、塩を撒くのも番付上位にのみ許される神聖な儀式の一つだ。スモーレスラーにはさぞ生意気に映ったに違いないが、せっかくだからと撒き続ける。
「この後、料理もいっぱい食べられるみたいだし頑張るよ! ちゃんこってどんな料理なんだろう、楽しみ!」
 漢一匹、ムスティスラーフのテンションが最高潮に盛り上がる。
 全て撒き終え満足したところで、土俵入りし手前半分自陣側に各々陣取るイレギュラーズたち。
『ミアッテミアッテー』
 行司が掛け声をかけ、
『ハッケヨーイ……ノコッタ!』
 スモーレスラーvsイレギュラーズによる異種格闘技戦、あるてぃめっと相撲ろわいやるの幕が切って落とされた。

「ボクの役目はテッテイ関の抑えだよ!」
 首魁テッテイ関目指して走り寄るセララ。
「だけど別に……倒しちゃってもいいんでしょ?
(いやー、このセリフ一度言ってみたかったんだ。かっこいいよね!)
 さあテッテイ関、魔法騎士セララが相手だ! かかってこい!」
 自信満々に挑発しながら、聖剣ラグナロク、聖剣ライトブリンガーの二刀を変幻自在に振り回す。
「面白いでごわす。胸を貸してやるでごわす!」
 見た目ロリな魔法少女に煽られたテッテイ関が、セララの誘いに乗ってきた。
 小柄な身体を最大限に活かして、セララは低く体勢を構える。基本的にスモーレスラーは皆一様に大柄である。幼女相手の取り組みなど想定外、テッテイ関も不慣れな相手にやりづらそうだ。
「ちっちゃな体におっきなパワーが自慢だよ!」
 翻弄するように華麗な剣舞がテッテイ関の隙を突き、鍛えぬかれた身体の数少ない弱点を容赦なくえぐった。

「ゲロビー……」
 大きく息を吸い込んだムスティスラーフの全力全開、渾身の一撃。口腔から吐き出された緑の閃光が、他の敵を巻き込みつつ、狙ったコムスービに収束していく。イレギュラーズの瞬間最大火力を誇る、凶悪なゲロビー……むっち砲だ。
「このお腹には夢と希望が詰まってるんだ♪」
 スモーレスラーにも負けぬ恰幅良い腹部をさする。なお、お腹の中身と緑の閃光が関係あるのかどうか、深く考えてはいけないぞ!
 苦しげに呻くコムスービに、ニルが走り寄る。
「初めまして! そして、さようならだお!」
 挨拶代わりにと放たれた鍛え抜かれたロリババアの爪牙、素手ステゴロによる圧倒的破壊――ヘイトレッド・トランプルが、コムスービを完膚なきまで蹂躙する。
「……っ! む、無念でゴワス……」
 まずは一人。初白星はイレギュラーズに軍配が上がった。

「ではぁ、オイラ達もぉ、美味しい鮭ちゃんこのために、本気で行くんですよぅ!!」
 残るもう一人のコムスービの前に立つワーブ。
 コムスービも決して小さい訳ではない、人並み以上の大きさであるのだが、それでも熊と並ぶ器でもない。まるで子供の様にも見えた。
「まずはぁ、ほんのこて調べですよぅ!」
 どすこいですよぅ、とばかりに鋭く踏み込み肉薄したローブの野生の剛腕が組み伏せ、コムスービの防御の乱れを誘う。
「相撲、たしか素手で戦うはずでは……。いえ、これはアルティメット相撲ロワイヤル、異種格闘技戦でしたね……失礼しました。では、遠慮なく」
 土俵際から二挺拳銃を構えるワルド。
「弾は非殺傷性の物に変えましたが、当たると痛いですよ!」
 インスタントバレルとブルー・インパクト、非常に軽量化された片手用ライフルと海洋技術工房の誇る片手銃が、正確無比にコムスービを狙い撃つ。放たれた弾丸は、迷うことなく一直線の弾道を描いて獲物に吸い込まれていった。
「……やれやれ。見てよ、あの盛りに盛られた肉体。張り手一発で昇天しちゃうんじゃないかな僕」
 ワルドの側でスモウレスラーの動きを警戒するのはウィリアム。懐に入られたら絶対負けちゃうからと、距離を取り離れた場所からの攻撃を主に狙う。
 ――ドスコーーーイ!
 土俵際のワルドを、セキワーケのぶちかましが急襲する。
「これは、もしかしてチャンスだよね?」
 片手に携えたノーワイズ・ノーライフ――魔道書が魔力を帯びると、土俵際で戦うセキワーケに衝撃を与える。ウィリアムによる吹き飛ばしが決まった瞬間だ。
「クッ……油断したでゴワス……」
 押し出されたセキワーケ、土俵を割って失格となる。
「ナイスな援護です!」
「ふふふ、僕もやれば出来るんだよ」

「横綱は元より、三役が勢揃いでござる。土俵という戦場で相撲のルールにのっとって戦う以上、まともにぶつかれば拙者らに勝ち目はないでござろうな」
 音に聞くスモーレスラー、それも番付上位を前に武者震い、緊張した下呂左衛門の全身から蝦蟇の油が分泌される。ぬるぬる。とってもぬるぬるしている。
「ならば死中に活を見い出すは、立ち合い後の変化。正々堂々とぶつかると見せて、ひらりとかわして相手を土俵の下に追い出すでござる」
 立ち合いからトリッキーな動きを見せる下呂左衛門。正面から組むと見せかけ、相手の背後を狙う。
 ぬるぬるした蝦蟇の油に手が滑り、思うように捕まえられない――翻弄され思うように自分の相撲を取れずに苛立ちを隠せないセキワーケが焦れるように体当たり――ぶちかましを敢行するが、
「それを待っていたでござる!」
 ぴょんと高く跳び、これを躱す下呂左衛門。
 狙いを見失ったセキワーケは、勢いもそのままに味方を巻き込む事故を起こしてしまう。
 井の中の蛙、外に出て大海を知る。海に生まれた渦潮のような舞に例えて。
「名付けて、井之中流くるくる舞の海でござる!」

 ――番付下位から、順番に。
 作戦通りの狙いをつけると、支援攻撃。エクスマリアは遠距離からスモウレスラーを力づくで押し崩していく。彼女の超弩級武器『フル・ファイア・フリークス・フュァリアス・フィーバー』は狂ったように吠えると、剣豪が最強を求めた果てに振るう邪剣――もはや剣ですらない暴力の雨が斬撃と化してコムスービを襲う。
 一撃の破壊力よりも、状態異常付加を重視した攻撃を組み立ててきたエクスマリア。テッテイ関に四股踏みさせて手数を減らす目論見なのだが、それでも十分な火力を兼ね備え、コムスービを打ち斃す。
「アルティメット相撲、ロワイヤル……バベルを通じてもよくわからないが、敵を倒せば、蹴落とせば、良いのだろう」
 相手を倒せば勝ち。エクスマリアの出した結論は、勝負ごとにおけるシンプルかつたった一つの真理だった。

●依頼の帰結
 ――パンっ!
 虚と実を入り混ぜ翻弄し続ける下呂左衛門の猫騙しに、一瞬怯むセキワーケ。その隙を突き、
「どすこーい!」
 ムスティスラーフが繰り出した張り手に合わせ、ギフト『我が見えざる手』がオーラで出来た刀身をセキワーケに向かって振り払う。
 はらり。
 俗に云うモロダシ。振り払われた一閃が終わりの刻を告げ、儚きマワシが夢幻の如く散って逝く。
「なっ……!?」
「うほっ!?」
 残念ながらこの試合においてモロダシは無効で決まり手にはならないが、それでも興奮を隠せないムスティスラーフ。老いてなお、お盛んである。
「身体に似合わず可愛いモノだぬ……」
 天然は最強か? 正面からのニルのトドメの一撃。そして何気ない一言がセキワーケを心身ともに容赦なく抉る。
 轟音を立て、セキワーケは地に崩れ落ちた。

「くはははは、流石と云ったところでごわすか。なかなかやりおるでごわす」
 4人目のスモーレスラーが斃れた処で、テッテイ関が豪快に笑う。
「うん! イレギュラーズは強いんだよ!」
「充分に楽しんだでごわす。続きは改めて、ちゃんこで勝負といかないでごわすか?」
「むむっ……!?」
 改めて周りを見渡すセララ。
 スモーレスラーを半数倒しこそしたものの、イレギュラーズ側にも負傷者、脱落者は出ており決して無傷とはいえなかった。
「正直、ここまでやるとは思わなかったでごわす! 気にいったでごわす!」
 小柄な身体で一人、テッテイ関を抑えきったセララに対する感嘆の念もあるのだろう。十分善戦したイレギュラーズたちをこのまま打ち負かすのも大人げないといったホスト側の配慮でもあるのだが、テッテイ関の称賛の声に嘘偽りは見えない。嘘は苦手な鉄帝気質、気持ちの良い笑顔だった。
 元より依頼自体が、勝敗に拘ったものではない。セララ個人としては、まだまだやれると物足りなさもあったのだが――
『グーーー』
 ちゃんこと聞いて、思わず。
「ははは、お腹は正直でごわすな!」
 顔を真っ赤にするセララ。漫画を読んだファンが萌えたとか萌えなかったとか。

●ちゃんこ!
「イレギュラーズと鉄帝、オーズモーの友好に! 乾杯でごわす!」
「お疲れ様~」
 テッテイ関の音頭で始まったちゃんこ鍋。スモーレスラーたちは相撲以上に盛り上がりを見せる。勿論、イレギュラーズたちも負けてはいられない。
 真の戦い、本番はここからなのだから――。

「ごっつぁんですよぉ。オイラ達もぉ、体動かしてるとぉ、お腹すきますからねぇ」
 ワーブが狙いをつけていた鮭の入った土鍋に手を伸ばす。鮭ちゃんこだ。
「まぁ、ごちそうをおもてなししてくれるって話なんですけどねぇ。
 じゃあ、オイラもぉ、遠慮なく頂くですよぅ」
 大好物の入った鍋を、一気に平らげる。大きな土鍋が巨熊のワーブの前では小鍋にしか見えない。
「まぁ、何気なく量も多いですけどねぇ。これが、ちゃんこってのですねぇ。うん、色々と、おいしいですよぅ」
 蜂蜜分が少し足りないかな、と思うものの口には出さずに
「おかわり、ごっつぁんですよぉ」
 何杯もちゃんこを喰らい尽くす。
「あ、ここで止めておくですよぅ。おなかいっぱいですからねぇ、ごちそうさまですよぅ」
「……その巨体といい喰いっぷりといい……是非、入門しないでごわすか?」

「待ってましたのちゃんこ鍋だお。いただきま~すだお」
「ちゃんこ鍋、というのか。飽きの来ない味だ。せっかく出しもう4~5人前位ほど食べ溜めしておこう」
 ちゃんこも美味いが酒も美味い。
 外見幼女、中身はロリババアのニルが久しぶりのお酒を愉しむ。
「ウチ、見た目が見た目だからお酒ダメってよく言われるんだぬ? 未成年じゃないだお? 今日は飲めて幸せだお~」
「いっぱい食べる。いっぱい飲む」
 エクスマリアは金色の長髪を手のように操り数個の土鍋と酒樽を掴むと、頭上から流しこむように喰らう。
「世界(ちゃんこ)は広い……いや、美味いのか」
 アルコールがエネルギーに変換され、そのエネルギーでちゃんこを消化。まさに食の永久機関だ!
「どれくらい食べられるかにゃあ。そう言えば、食べるのも修行なんて言ってたよ~な。面白そうだぬ。よ~し、スモーレスラー達に負けないように張り切って食べまくるんだお!!」
「拙者も、しっかり頂くでござる。しかし最近は年のせいか、自分が思っている程食べられないのでござるよなぁ。その分、酒を愉しむでござるよ」
 大喰いする二人を眺め、下呂左衛門がしみじみと杯を口に運ぶ。
「美味いでござるな」
「みんなもその体のどこにそんなに入るのかよく分からないけど、ほどほどにね?
 胃袋にも限りはあるんだから、あまり食べ過ぎてはいけないよ。……ねえ聞いてる?」
「一応、お薬を準備してきましたが……」
 心配そうに仲間を眺めるウィリアムとワルドの二人は、腹八分目くらいで満足している。
 みんなで楽しくいただくのが丁度いい。無理なんてしたら本末転倒だよとウィリアム。
「でも、おでんちゃんこが本当に美味しかったですね」
 結構な勢いでおでんを食べていたワルドだった。

「ちゃんこ! おいしい! みんなすごい食べっぷり!
 僕も負けないよ、ちゃんこ追加ごっつあんで!」
「イレギュラーズはちゃんこ鍋でも負けない! テッテイ関より多く食べてみせるよ!」
「クハハ、返り討ちにしてくれるでごわす!」
 心配する二人を他所に、セララとムスティスラーフはテッテイ関に真っ向から挑んでいる。
 周りにどんどん積み重ねられていく土鍋の山。わんこ蕎麦ならぬわんこちゃんこの様を呈している。
 うおー! もぐもぐもぐもぐ……。
 僕もおかわり、ごっつあんです!
 ちゃんこの為、勝利の為なら重傷すら厭わないと食べつくす勢いの二人だが、どうしても限界は訪れる。
「……ボクは負けない。正義の味方は、誰にも負けないんだ!」
「真のスモーレスラーに、僕もなる!」
 まさかのパンドラで復活する二人。胃袋の限界を超え、更なるちゃんこへと挑む。
「ボクの胃袋は宇宙だー!」
 戦いはまだ終わらない――。

 どっちが勝ったかって? それは聞くだけ野暮ってものだ。
 ちゃんこに舌鼓を打ち、酒に酔い、友好を深める。
 こうして、宴の一時は過ぎていくのだった――。

 Congratulations!
 依頼は達成され、イレギュラーズの面目は保たれた!

成否

成功

MVP

なし

状態異常

セララ(p3p000273)[重傷]
魔法騎士
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)[重傷]
黒武護

あとがき

 お疲れ様でした。
 今回は、善戦という結果で終わりました。

 よろしければ、またご縁がありますように。

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