PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ルビヰは焔の味がするのか

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 動乱の中にあれども、ラサは変わらず砂の香りがする。
 オセロット(p3p011327)はサヨナキドリの“砂の都支部”で其の香りとさざめく砂たちを見ていた。

「物思いに浸るとはあんたも偉くなったじゃねえか」

 呆れたような声にオセロットが振り返ると、其処には何やら入り組んだ地図のようなものとにらめっこをさっきまでしていた昔馴染み――ドレッドレオが其の通り、呆れたような顔をしている。
 オセロットはそんな皮肉屋の顔を見て、暇だからなと肩を竦めた。

「俺の仕事は戦う事だ。護衛、訓練、其の他もろもろ魔物の討伐。アンタにはアンタの仕事があるだろ、ドレッドレオ。そもそも今回、トゥレミー鉱山での異常に気付いたのはアンタだ」
「まあな。だけど一緒に地図を見るくらいしてくれても良いんじゃないのか、“幼馴染さん”。一緒に此処に転がり込んだ仲だろ」
「おやおや、可愛い子犬が二匹そろって喧嘩かい」

 がちり、と扉が開く。
 其処に顔を出したのは――サヨナキドリそのものを纏める『マスター』。武器商人(p3p001107)とクウハ(p3p010695)だった。



 サヨナキドリ、砂の都支部。
 此処は他のサヨナキドリ支部とは毛色が少々異なる事業体系をしている。
 主にラサ~覇竜間の運送路で起こるトラブルを解決するための、いわば『詰所』といっても良い。
 交易商人が傭兵、もとい護衛を求めるという需要のために株分けし、護衛のために小規模な支部を設立した。其れが此処、砂の都支部という訳だ。

「其れで。“石喰い”が出たというのは? ……トゥレミー鉱山か」

 クウハは挨拶もそこそこに、ドレッドレオが見ていた地図を覗き込む。
 よう、とドレッドレオとオセロットがクウハに手を上げた。
 ふむと武器商人は考え込み、記憶を探る。

「此処はあらかた洗ったつもりでいたんだけどねえ」
「幼体か卵辺りが残ってたんだろ。今は立派に成長して、鉱山の宝石はどんどんクオリティが下がってる」
「……慈雨、石喰いって何だ?」

 話を進める二人に、クウハが問いかける。ああ、と武器商人は愛おし気にクウハの頭を撫で、子どもに童話を語るように言う。

「石喰いはね、文字通り宝石を喰う……そうだね、大きなモグラのようなモンスターの事さ。ラサの鉱山にはよくいたんだ。大討伐作戦を講じなきゃいけないほどに」
「其の時に全部討ったと思ってたんだけどな。まだ生き残りがいたらしい」

 武器商人の説明を引き継いだのはオセロットだ。そいつがいるとな、と溜息を一つ。

「ある程度成長すると、宝石を見境なく食い始める。そうして己の表皮を石のように固くするんだ。良い宝石を嗅ぎ分けるから、放っておくと鉱山の宝石はクズしか残らない」
「成る程、で、其れがトゥレミー鉱山にいると」
「ああ。だよな、ドレッドレオ先生?」
「そうだ」

 ドレッドレオが見ていたのは鉱山の地図だ。炭鉱夫たちの知恵により描かれた地図を見下ろしながら、ドレッドレオは傍らに置いていた箱を手に取る。

「ある時から、トゥレミー産の宝石の質が目に見えて下がり始めた。俺は直ぐに石喰いを思い出したよ。崩落やトラブルの話も聞かないからな、石喰い――或いは其れに性質の酷似した“何か”がいる」
「何か、ねえ」
「最近はイレギュラーズさんも手を焼くモンスターが色々いるって話だぜ。もしそいつらだった場合、俺にはどうにも出来ん。なので今回はマスターとクウハ、あんた達と――支部長であるところのオセロットさんにも頑張って貰おうってハラさ」
「成る程。確かに石喰い以外の何かだったら、オセロット一人では荷が思ったかもねえ」
「……面目ねえっす」

 流石にマスターたる武器商人に言われては、オセロットも軽口では返せない。素直に気持ちを吐露すれば、ころころと武器商人は笑った。冗談だよ、と優しく子にいうように返せば、其れじゃあ、と鉱山地図を手に取った。

「取り敢えず鉱山探検といこうか。石喰いは石喰いで厄介だからね、油断せずに行こう」

GMコメント

 こんにちは、奇古譚です。
 リクエストありがとうございます!
 ドレッドレオをNPCとして登録しちゃうか迷ってます。

●目標
 『石喰い』を討伐せよ

●立地
 トゥレミー鉱山です。ラサと覇竜の間に位置しており、サヨナキドリ・ラサ支部管理となっています。
 石喰いは非常に大きくすくすくと育ったので、直ぐに見つかるでしょう。なにせ鉱山の道を塞ぐほどに大きいですから。
 余り無茶をすると崩落の危険性があります。気を付けて戦いましょう。

●エネミー
 石喰いx1

 でっかいモグラのような怪物です。
 視覚が退化していますが嗅覚が大変敏感です。命中・索敵に関与するようなBSは無効となります(暗闇、混乱系列)
 表皮は石のように固く、物理に特に耐性があります。
 毎ターン最後にちょっと身じろぎをします。坑道の石が落ちて来て、PCにスリップダメージを与えます。

●NPC
 ドレッドレオx1

 同行してくれます。
 戦闘以外の事なら大抵何でも出来ます。出来る男なので。あらかじめこれを持って行って欲しい、などの指示もOKです。
 が、基本的に戦闘向きではありません。戦闘の際は勝手に最後方にいますので、余り気にする必要はないです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。


 此処まで読んで下さりありがとうございました。
 アドリブが多くなる傾向にあります。
 NGの方は明記して頂ければ、プレイング通りに描写致します。
 では、いってらっしゃい。

  • ルビヰは焔の味がするのか完了
  • 或いは唐辛子だったりするのか
  • GM名奇古譚
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2024年02月25日 22時05分
  • 参加人数6/6人
  • 相談8日
  • 参加費250RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(6人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
武器商人(p3p001107)
闇之雲
※参加確定済み※
マリカ・ハウ(p3p009233)
冥府への導き手
ルナ・ファ・ディール(p3p009526)
ヴァルハラより帰還す
クウハ(p3p010695)
あいいろのおもい
※参加確定済み※
オセロット(p3p011327)
譲れぬ宝を胸に秘め
※参加確定済み※

リプレイ


「成る程、こういう手が」

 トゥレミー鉱山内部。
 『灼けつく太陽』ラダ・ジグリ(p3p000271)を始めとしたイレギュラーズ6名とドレッドレオは、まず“事前の準備”を行っていた。
 といっても簡単なものだ。トゥレミー鉱山で取れる現在の質より『少し良い』宝石の原石を持ってきて、一か所に埋めるだけ。

「ああ。こうしておけばもし石喰いが逃げても逃げた先を誘導する事が出来る。問題は逃げる速さに俺達が追いつけるかどうかだが」
「そこは問題なさそうだろう。駆除の生き残りなら、さぞ食べ放題だったに違いない。存分に肥え太っていそうだ」

 ええ、とラダの言葉に『死霊術師』マリカ・ハウ(p3p009233)が頷く。

「万が一前進してきてくれれば其れは僥倖。交代されたとしても、こちらの機動力で捕らえられない気はしないわ」
「まァな。――しっかし、胡散臭ぇ臭いだと思ったらお前かよ、ドレッドレオ」

 何か言う事があるんじゃないのか、と言いたげに『駆ける黒影』ルナ・ファ・ディール(p3p009526)はドレッドレオを見る。

「まっとうな依頼だっつーなら、報酬分は仕事をするが……俺は忘れてねぇ、お前も忘れるんじゃねぇぞ。月の王国で俺に“遅ぇ”つった事をな」
「怖いねえ。だがあの時確かに、あんたは一手……」
「はい、そこまで」

 ぱちん、と手を叩いたのは『闇之雲』武器商人(p3p001107)だった。
 これ以上は血を見る事になるかもしれないと、戦う者の勘が告げたのだ。

「取り敢えずよくやったね、ドレッドレオ。いいコ」
「……どうも」
「オセロット、最近の動きなら……星界獣や変容する獣のこともある。其れ等を考慮しながら動くとしよう」
「っす。でだ、ドレッドレオ。代わりに報告書をだな……」
「んっんん」

 『譲れぬ宝を胸に秘め』オセロット(p3p011327)がすすす、とドレッドレオににじりよるのを耳ざとく聞いたのは武器商人の秘書――『あいいろのおもい』クウハ(p3p010695)だ。咳ばらいをすると、判ってるって、とオセロットは肩を竦めた。

「わーかりましたよ、俺がやりますよ……取り敢えず行きますか」
「ああ。お前ら、てめぇの面倒はてめぇで見ろよ。依頼人様はケチって頭数すくねぇンだからよ」
「頭数は十分だと思うけどね。ファ・ディールの旦那がいればただでさえ百人力だ」

 そうして話していると、ずず、と坑道が鳴動した。
 この鳴動は初めてではない。トゥレミー鉱山に踏み入った時から微振動が続いている。
 ドレッドレオとオセロットは顔を見合せ、頷く。

「急ごうぜ。石喰いがだいぶ食い荒らしたお陰で鉱山が崩れそうだ」
「戦う分にはまだもちそうだがな、……よし、こっちだ」

 ドレッドレオの案内で、ルナが先行する。
 中ほどにラダ、武器商人、マリカ、クウハ、そして殿にオセロットが続いた。



 そいつは一見すると、土を喰っているように見える。
 がふがふと土に鼻先を埋めて喰らう様は獣のようで――いや、獣なのだ。

「こいつが石喰いか」
「そうだね。久し振りに見た」

 武器商人が周囲に保護結界を貼る。これで意図的でない限り周囲を破壊する事は出来ない。
 マリカは最後方に位置してオセロットに場所を譲ると、『お友達』を呼び出した。マリカは死霊を扱う。強烈な悪臭を四方八方からばらまくことで相手の嗅覚をなまらせ、更に『お友達』の気配で人数を誤認させるのが目的だ。

 ――!? !?!?

 突如現れた『多人数』の何かに、更には鼻を刺すかのような悪臭。石喰いは混乱したように短い手足をばたつかせ、其の場でぐるぐると回転し始めた。

「やっぱり嗅覚をどうにかされると弱いのね」
「みてぇだな。見ろよ、玩具みたいに回ってやがる!」

 ルナが慣れぬ神秘の技を使い、石喰いに封印を仕掛ける。まさに巨大なモグラ――と形容できる其の姿は、どれだけの宝石を喰らったのだろうか、色が交じり合った黒い色の表皮をしていた。
 マリカの齎した悪臭に鼻が痛むのかじたばたとしていた石喰いだが、その中に高級そうな宝石の薫りを感じて動きを止めた。すんすん、と宙を嗅ぐような仕草をする。

「美味そうだろ」

 そう言ったのはクウハだった。
 普段から宝石類を身に付ける彼は、石喰いにとってはこれ以上なく素晴らしい獲物だ。
 そして――彼の懐には極上の宝石が一つある。
 其れはクウハの妹分の魂そのもの、この世に二つと存在しない宝石。

 だが――これをくれてやれるほど、俺も寛容じゃねぇ。

「喰いたきゃ死ぬ気でかかってこいよ」

 クウハの頭上で回るは金冠。仰ぎ見よ、其処に百花咲けり。其の爪の鋭さ、其の牙の鋭さから相手は物理メインであろうと見当をつけて先手を打つ。
 更に其処にもう一手。宝石の上から魔性を塗るように、石喰いの注意を引く。

「我(アタシ)の猫。あまり無茶しちゃ駄目だよ」
「判ってますって」

 クウハを護るように武器商人が前に出る。石喰いは最早クウハの持つ宝石の香りに夢中だ。速く寄越せとばかりに土を掘る為の長い爪をぶんと振り、邪魔な武器商人を引き裂く。

「マスター!」
「大丈夫だよ」

 赤い血が舞う。
 だが武器商人は傷付けば傷付くほど強くなる性質だ。思わず主を呼んだオセロットに、嬉しそうに笑った。

「ドレッドレオ、後ろにいるか?」
「ああ。あんたらには悪いが、いつでも逃げられる場所にいる」

 ラダはドレッドレオの位置を確認し、サイバーゴーグルを装着する。武器商人のお陰で無駄な崩落は避けられたとはいえ、向こうが暴れ出したらそうもいかない。
 エアリアルを起動して、其処からは素早い。KRONOS-Iを構えて放った銃弾は、砂嵐を思わせる衝撃で石喰いを包んだ。

 ――!!

 もぐらとは土の竜と豊穣では書くらしい。
 竜のような咆哮を上げる石喰いだが、ダメージ自体はそう通っていない。ラダも期待はしていない。重要なのは甲殻と甲殻の間、僅かに見える柔らかい部分に弾丸を突き刺す事――そして、其の部分から激しく吹き荒れる嵐で、石喰いの堅牢な表皮にひびを入れる事!

「皆! 右足の付け根だ!」
「了解っと!!」

 肉薄したのはオセロット。
 其の鋭い剣で、目に見えて破壊された表皮へと攻撃を放つ。

「痛そうだな。楽にしてやろうか?」

 注がれた毒は強く、石喰いを苦しめる。
 藻掻くように爪を振り回す石喰いをオセロットは“視”たが、通常の生き物の反応しか得られなかった。

「マスター! こいつはマジモンの石喰いの生き残りだ! 最近出て来てる類の獣じゃねえな!」
「成る程な、じゃあ叩いてぶっ飛ばせばいいってこった」

 弱点をラダが作り出した事で、ルナは俄然やる気になる。慣れない神秘の技を使うより、殴る蹴るの方が断然得意なのだ。

 だが。
 石喰いとて、此処まで肥え太っただけの賢さがある。

「――! 待って、逃げようとしてる」

 最初に気付いたのは、最後方から観察していたマリカだった。
 咄嗟に呼び出した死霊の沼が、石喰いの手足をやや押し留めるが――其れでも土を砕き、石を掘る其の強靭な四肢は止められない。
 武器商人の保護結界を突き抜けて、地中に潜ろうとし――

「させるかよ!!」
「まて、オセロット!」

 追撃を仕掛けようとしたオセロットを、ドレッドレオが止める。
 何故止める、と彼が振り返っている間に、坑道には大穴が空き、石喰いは其の場から消えていた。

「テメェ、何で止めやがった」

 ルナが場合によっては殺すとばかりに殺気を放ちながらドレッドレオに詰め寄る。
 ドレッドレオは戦闘員ではない。降参の意味で両手を上げながら、忘れたのか? と冷静に述べた。

「奴の逃げる先なら判ってる。最初に離れた場所に原石を埋めたろ、間違いなく奴は其処で“補給”するはずだ」
「そうでなかったら?」
「そうでなかったら……あんたの自慢の速さで、俺の喉を掻っ切って良いぜ」

 はらはらとラダは其れを見守っていた。こうして言い合いしている間にも、石喰いは移動している。ドレッドレオのいう通りの場所に出れば問題はないが、そうでなかったら――

「はい、そこまで」

 ぽん、と二人の間で手を叩いたのは武器商人だった。

「ドレッドレオ、命を簡単に投げ出すのは良くないよ。……ファ・ディールの旦那、すまないね。このコはちょっと口が悪いけど、我(アタシ)たちの害になるような事はしないさ」
「月の王国では化け物と一緒に襲ってきたのにか?」
「襲って来たのにさ。まあまあ、ここは我(アタシ)の顔を立てておくれよ」

「あいつ、いっつもああなんだよな」
「いっつも?」

 武器商人とルナが話し合っている間、クウハとオセロットが話していた。クウハの知るところによれば、オセロットはドレッドレオの昔馴染みだったはずだ。

「ああいう場面でたびたび命を賭けに出すんだよ。其れだけの覚悟と自信があるんだろうけどな、あいつ、いつかあの気性で破滅するぜ」
「――……だろうな」
「まあ、そうならないための普段の立ち回りなんだろうが……あ~~、何て言ったらいいか判んねえが、俺はあいつのそういうところは嫌いだ」
「……心配なんだろ? 昔馴染みなんだって聞いた」
「心配ィ? 別に心配なんてしてねえけど! マスター! 皆! ドレッドレオの首を懸けて見に行ってみようぜ!」

 大声で一堂に声をかけたオセロット。其れがどうしようもなく面白くて、クウハはにやにやと、其れこそ御伽噺のチェシャのように笑っていた。

 ――さて、伺いは立てた。
 向こうはどう出て来るかな。



 痛い。

 石喰いは宝石が群生している気配を感じて、其処に真っ直ぐ突き進む。

 痛い。

 右足の付け根、表皮を砕かれた部分が痛む。土を掻く度に細かな砂礫が傷に擦れて、ぎりり、と鋭い牙を噛み締めた。

 痛い。
 宝石を喰えば、もっと堅くなれる。
 そうすればあの“狩人たち”も狩れる。そうすれば――

「思ったより遅かったな」
「遅かったわね」

 宝石の気配の元へ石喰いが辿り着くと、其処には“何故か”先程まみえた狩人たちがいた。

 何故此処に居る?
 どうやって探知した? どうして?

 だくだくと血を脚から流しながら石喰いは混乱するが、たった一つだけ確信する。
 此処で戦わなければ死ぬ。
 だから石喰いは吼えた。狐のような咆哮だった。

 ――けー、ん!!

「五月蠅いわね」

 マリカが――死霊の女王が言う。アンデッドが石喰いの傍の地面からぼごりと湧き出て、脚の付け根にある傷に喰いつく。
 ぶぢぶぢと肉を食い千切るアンデッドに悲鳴を上げる石喰い。無事な左足を振り上げ、爪で周囲を薙ぎ払う。

「駄目だよ、我(アタシ)の可愛いコたちに手は出させない」

 其れを庇ったのは武器商人。
 己の身を削り、まるで宝石を削り出して真価を見出すかのように、己の力を増していく。
 武器商人の手に、ひとひらの蒼い炎が灯った。其れはみるみるうちに火勢を増して、一振りの槍となる。

「さァ、祝祭の始まりだ」

 撃ち出された槍の一射が、石喰いの右足を見事に撃ち抜く。血と肉の欠片が舞い跳んで、バランスを崩した石喰いがごろん、と転がりもだえ苦しんだ。

「エアリアル、まだダウンしてくれるなよ」

 願うように言いながら、ラダが今度は首筋の肉を狙う。
 どん、と反動音を立てながら飛翔した弾丸は石喰いの首筋に突き刺さり、脚の付け根にそうしたように、嵐でもって其の傷を広げた。

「其の爪、頂くぜ」

 大した価値はないだろうがなァ。
 ルナが宣告めいて言い、閃光が石喰いの爪をしたたかに打つ。
 宝石を砕かないためにやや柔らかい其の爪が、閃光によってばきりと砕かれた。

「もう戦う相手も見えなくなってンな。さっさと引導を渡してやろう」

 クウハの掌から泥が落ちる。
 其れは渦巻き黒めく渦となって、石喰いの首の肉をこそぎとっていく。そうして運命ごと真っ黒に染まった石喰いに、一つの影が飛び掛かった。

「悪いな……此処で、終わりだ!」

 オセロットだ。
 遠から一気に滑り込み、剥き出しの肉へと刃を滑り込ませる。
 そのままするりと刃を動かせば――まるでブロックの間をすべらせるかのように『するり』と、石喰いの頸は身体から切り離され、落ちたのだった。



「このデカブツを? 俺が?」

 さて、無事討伐した石喰いをどうするかという疑問については、ルナと武器商人、そしてラダが話し合っていた。
 流石に坑道に置いたままにしてはおけない。腐敗にも時間がかかるし、何より邪魔なので。
 という訳でいざという時のカタパルトとドレイク・チャリオッツを所持しているルナに白羽の矢が立った。

「まあ……まあまあまあ……良いけどよ。引っ張り出すとかこう、他にねぇのか?」
「ないね。ファ・ディールの旦那が頼りだ」
「私とルナ殿で引っ張り出すのも、時間と労力がかかるし……」
「……あー! わかったよ! 俺のチャリオッツでも何でも使いやがれ!」



「……」

 マリカが宝石を見詰めている。
 其れをオセロットが見つけて、どうした、と声をかけた。
 怯えたように、悪戯が見付かった子どものように振り返るマリカに、はあん? とオセロットは意地の悪い顔になる。

「アンタも女性だもんな。こいつらはグレードは低いが磨けばそれなりの宝石になる。別に持って行っても良いんだぜ」
「……いえ。私は要らないわ」
「へえ?」
「呪術の触媒に使うなら兎も角、装飾としては無縁よ。――そんな資格、私にはないもの」
「……」

 資格。
 資格、ねえ。
 オセロットはどうしたもんかと顎を擦り……なら、と話の矛先を変えた。

「呪術の触媒としてなら良い訳だろ? 別に売りつけてる訳じゃない。そっちの客にも売れるかもしれねえから教えてくれよ、触媒としてはどういうのが適してるんだ?」
「……あなたも妙な人ね。触媒にするなら、一番は曰くありの宝石が一番だけど……」

 オセロットに珍しくよく話しているマリカを見ながら、クウハはファミリアーで周囲を観察していた。
 そうしてついでに、周囲を観察しているドレッドレオに念話を飛ばす。

 ――よお。お前、仕事はちゃんとやってんのか?

 ――うお。行き成りなにかと思ったぜ。……ま、ラサ支部長の座は諦めてないんでね。これでも真面目にやってるって評判なんだぜ?

 ――へえ? とかいいながらお前の事だ、宝石の一つや二つくすねてんじゃねェのか? ん?

 ――そりゃあまあ……質の良くない宝石を『引き取る』事はあるがね。なんだ、商談か?

 ――そうだ。些細な悪事の一つや二つ、慈雨は咎めはしないだろう。だから俺も其れに倣うが、依頼料ついでに一つ寄越しな。マリカに似合うものが良い。あそこでオセロットと話してる子だ。

 ――へえ? 女の子にプレゼントか。行き成り指輪は引かれるからやめとけよ。そうだな……ああいう女性には青か紫がいい。霊的ないわれのあるもの……サファイア辺りが似合うだろうな。ま、色々と見逃して貰ってる身だ。質のいいものをお届けしますよ、旦那。


 ――などと男二人が素知らぬ顔で念話しているのを、武器商人はじっと見詰めていた。

 宝石が欲しいなら、別にいくらでも買ってあげるのだけどね。我(アタシ)の猫。

 つまり、マスターには全部筒抜けだった、っていう訳。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お待たせいたしました。
お疲れ様でした!
石喰いはただのでっけえモグラでしたが、成る程、表皮対策そう来たか~とウンウン頷いておりました。
あと色々根に持たれてるドレッドレオが可愛いね。
ご参加ありがとうございました!

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