PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<Je te veux>ハイペリオンディフェンダーズ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●幻想王国ウィツィロにて
 王国を襲った冠位色欲の凶行をなんとか退けるに至ったローレット・イレギュラーズだったが、その中にギルド長レオンの姿はなかった。
 ギルド長不在のなか、その代理として動くのはユリーカ・ユリカだった。
 そんな彼女から告げられたのはラサ南部砂漠コンシレラの変化であった。
 はじめはROOにて観測された終焉の獣ベヒーモス。通称でっか君は動きを見せずうずくまるのみであったが、その背中からは小型の終焉獣が崩れるように現れ始め、転移陣を開き世界各国へと移動していったのだという。
「その移動先のひとつが、このハイペリオンランドだというのですね……?」
 幻想王国はウィツィロに建設されたテーマパーク、ハイペリオンランド。その中心ともいうべきハイペリオンハウスにて、ハイペリオンはそのもふもふの身体をすこし歪めた。
「早くに報告してくださって、ありがとうございます。おかげで来場者の避難を進めることが出来ました」
「いいや、なんてことないさ。これもハイペリオンさまのためだからな!」
 そう胸を張って言い切るのはカイト・シャルラハ(p3p000684)。ハイペリオンを信仰していると豪語するローレットの実力者だ。
「おそらく、ハイペリオンランドの博物館に展示されてるパンドラ収集器……あれが目当てだと思うぜ。なにせベヒーモスは、各地のパンドラ収集器を集めてるらしいからな」
「集めて、どうするのですか?」
 そう尋ねたのはメイメイ・ルー(p3p004460)。ハイペリオンさま大好きっ子のひとりである。
 そのもふもふ具合がたまらないらしく今日もハイペリオンに会いにやってきたのだが、どうやら事件に巻き込まれてしまったらしい。
「どうやら、パンドラを食って滅びのアークを吐き出すっていうはた迷惑なことをしてるらしい。それに、空中庭園のざんげのところにもパンドラの蓄積が滞ってるらしいからな。二つの意味で、俺たちはパンドラ収集器を集めなくちゃあならない」
「ベヒーモスからパンドラ収集器を守って、そのあとパンドラ収集器を直接空中庭園に持っていくのですね……」
 ハイペリオンさまはそれでもよろしいのですか? という視線をメイメイは送るが、ハイペリオンは穏やかに微笑み、頷いてくれた。
「ローレットの皆さんには大変な恩がありますから。そのくらいであれば協力しますよ。あとで戻してもらえるのですよね?」
「もちろん!」
 それで……とメイメイはカイトの方を見直す。カイトは頷き、話の続きを語り始めた。

●小型ベヒーモス『クラッシャー』
「いまハイペリオンランドに近づいてるのは終焉獣の大群だ。かなりの数が押し寄せてるが……なあに、俺たちがいる限りハイペリオンランドには傷を付けさせないさ」
 だろう? とカイトが首をかしげればメイメイは深く頷いてガッツポーズをとってみせる。
「はい! わたしたちが、守って見せます!」
「その意気だ。だがちょっとだけ難しい相手もいてな。それが小型ベヒーモス……通称『クラッシャー』だ。破壊力に優れた個体で、こちらよりも高いスペックを誇ってる。正直、俺の誘引もこいつに関してだけは難しいとみてるくらいだ」
「それほどの戦力差……ですか」
 カイトの回避タンクっぷりはローレットの中でも屈指だ。トップ層を争うと言ってもいい。そんなカイトが難しいと言うほどなのだから、相当に戦いづらい相手なのだろう。
 だが、そんな相手と戦っても勝利を収めてきたのもまたカイトたちだ。
 力を合わせて戦えば、きっとこのクラッシャーにも勝利できるだろう。
「私も今回は力を貸します。一緒に、このハイペリオンランドを守ってくださいますか?」
 そう問いかけてくるハイペリオンに、カイトもメイメイも勿論と元気よく返すのだった。

GMコメント

●シチュエーション
 小型ベヒーモスと終焉獣の大群がハイペリオンランドへと攻め込んできています。
 狙いはどうやら博物館に展示されているパンドラ収集器の模様。小型ベヒーモスたちを撃退し、ハイペリオンランドを守りましょう!

●フィールド
 ハイペリオンランド内。
 テーマパークとして建設されており、遊園地にあるようなアトラクションは一通り揃っているエリアです。
 ここに終焉獣の大群が押し寄せてきます。

●エネミー
 終焉獣の群れと小型ベヒーモスの組み合わせです。
 小型ベヒーモスは序盤は様子見をするようなので、序盤のうちは終焉獣をできるだけ減らすように動き、中盤から小型ベヒーモスの参戦に対応するという作戦をとるのがよいでしょう。

・終焉獣(狼型)×多数
 狼の姿をした終焉獣の群れです。
 影を槍のように変形させて発射するスキルをもっており、これを主な攻撃手段としています。

・小型ベヒーモス『クラッシャー』
 破壊力に優れた小型ベヒーモスです。
 基礎スペックが非常に高く、皆で力を合わせて戦う必要があるでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <Je te veux>ハイペリオンディフェンダーズ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2024年02月11日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
海音寺 潮(p3p001498)
揺蕩う老魚
メイメイ・ルー(p3p004460)
祈りの守護者
カイト(p3p007128)
雨夜の映し身
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
マリエッタ・エーレイン(p3p010534)
死血の魔女
ビスコッティ=CON=MOS(p3p010556)
メカモスカ

サポートNPC一覧(1人)

ハイペリオン(p3n000211)
神翼獣

リプレイ


「ここがハイペリオンランド!! いいね!! 初めて来るテーマパーク!!」
 バグホールで穴だらけとはいえ、楽しげな雰囲気は充分に残っているハイペリオンランド。その風景を眺め『黄昏夢廸』ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)は興奮気味に目をキラキラさせた。
「そしてこの人(人?)がハイペリオン様! 美しいね。触れてみたい」
「はじめまして、ランドウェラさんでしたね」
 ハイペリオンはにっこりと笑って翼を広げてみせる。
 ランドウェラはおそるおそるだがその毛皮に触れてみた。ふわっふわの感触に思わず目を細める。
 一方で『おいしいを一緒に』ニル(p3p009185)は気合い充分という様子で杖を握っていた。
「遊園地はたのしいところです
 かなしい場所では、ないのです!
 それに、展示されているパンドラ収集器は、ハイペリオン様のだいじなもの、でしょう?
 ニルのもだいじ、だから。それが「収集器」でなくたって、なくしたくないと、思うから。
 奪わせたりなんかしないのです!」
「ありがとうございます。確かに、あれは大切なものなのです。守って頂けるなら、とても嬉しいです」
 こくりと頷くハイペリオン。
 そんな様子を、『死血の魔女』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)は黙って眺めていた。
(ハイペリオンさんとは縁も多いのですが……それにしてもハイペリオンランド……)
 こほん、と咳払いをするマリエッタ。
「いえ、それはおいておいて終焉獣と……小型とはいえベヒーモス。油断できませんね」
 ピッと指にナイフを走らせ、したたる血から武器を作り出すマリエッタであった。

「ハイペリオンさまの住まう『神域』を荒らすとは……本気で狩られたいようだな?
 容赦はしない。どっちが狩られる側か叩き込んでやらぁ!」
 ばっさばっさと翼を羽ばたかせ、カイトは気合いをみなぎらせた。
 つい最近襲われたばかりのハイペリオンランドだが、どうやら休む暇はないらしい。
 ううむ、と唸って顎を撫でる『揺蕩う老魚』海音寺 潮(p3p001498)。
 そばにいたポチがふわふわと空を泳いでハイペリオンの後ろへと回り込む。
「誰であろうと普通にテーマパークに遊びに来たのなら歓迎するが。
 そうでないのならお帰り頂きたいのう。
 入場チケットか一日フリーパスはお持ちかのう?
 そうでないのなら特別イベントにご招待じゃよ」
「ええ、ハイペリオンランドは、わたし達が守り、ます……!
 みんなの癒しの楽園を踏み躙らせは、しません、から」
 杖を握りしめ、ぐっとガッツポーズをとってみせる>『約束の力』メイメイ・ルー(p3p004460)。
 そんな中で、『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)はぽりぽりと頬をかいた。
「こないだ襲われたばっかなんだが……『また』か?
 いやまた来園した事になるけど、年パスにはまだ早いからな……?」
 などと言っていると……。
「がぁああああおーーー!!!」
 『メカモスカ』ビスコッティ=CON=MOS(p3p010556)が大声で叫んだ。
 床をどかどかと踏みならし、手にしたガトリングガンを何度も叩きつける。
「来い! このめっちゃ楽しそうな場所は我が後で遊ぶんじゃ。そこを壊されてなるものかよ!!」
 そのままの勢いで走り出す。
 カイトたちは顔を見合わせ、そして後を追って走り出した。


 ハイペリオンランドのコーヒーカップ乗り場。見るからにファンシーな風景に、狼型終焉獣たちは思いっきり違和を放っていた。
「我、戦闘モード!」
 ビスコッティはヘルメットのバイザー部分をがしょんとおろしゴーグルとすると、ガトリングガンを握っていないほうの拳から高周波を放った。
 膨大な情報の波となったそれは、撃ち込まれた終焉獣たちを『揺らし』て正常な判断力を失わせた。
 ぎらりとにらみ付けるようにこちらを見る狼型の終焉獣。
 一斉に吠えながら飛びかかる彼らの攻撃をバチバチにうけながら、ビスコッティはガトリングガンで防御をはかった。
「あ”あー!! はよ倒して! はよ倒して!」
「ああ、無理してたんだ」
 今行くね、と『星夜ボンバー』を挨拶代わりに放り込むランドウェラ。爆発した音と光に一瞬だけ怯んだ終焉獣の群れめがけ、『雷撃槍擲』を解き放った。
 出身世界にて『ロード』の権能を移植し損ねた失敗作、らしいが……この世界ではかなりの威力を誇る雷撃だ。ランドウェラが指先を翳した途端、衝撃と共に雷撃が走り終焉獣たちを貫いていく。
 ビスコッティの誘引にかからなかった個体がランドウェラをにらみ付けるが、ランドウェラは二度目の雷撃を放ってその終焉獣を感電させる。
「勝手に列から抜けてはいけません、よ」
 そこをサポートしてくれたのはメイメイだった。
 『全覚ノ奏者』で自らの能力を拡張すると、『シムーンケイジ』の魔法を解き放つ。
 小さな杖『カペラの道行き』を翳せば、激しい熱砂の嵐が終焉獣たちを包み込む。
 が、それで終わりのメイメイではない。
 一気に距離を詰めると杖を突き出し『神翼の加護』を発動。
 ランドのスタッフ衣装を着込んだミニペリオンたちが召喚され、一斉に終焉獣へと襲いかかった。
 100tとか書かれたハンマーでぼかぼか殴ったりボウガンで撃ちまくったりとやりたい放題だ。
 一方でマリエッタは血の糸を作り出すとあちこちへと張り巡らせ、終焉獣たちを次々に切断していく。
 その背景には『万華無月』と『アルス・マグナ』の力によって拡充された圧倒的なパワーが籠もっていた。ゆえに終焉獣たちは糸を逃れることができない。
(ベヒーモスはまだ動いていない……。なら、今のうちに終焉獣たちを倒してしまいましょう)
 マリエッタは残った終焉獣に照準を合わせると、『偽・聖竜咆哮』を解き放った。
 赤き光の砲撃が放たれ、終焉獣を貫いて走って行く。

「ハイペリオンさまに触れたきゃ俺をまず倒すことだな! ぜってぇ触らせねえけどな!!!」
 大空を飛び回り、『緋色の呪い』をばらまきながら狼型終焉獣の注意を引きつけるカイト・シャルラハ。
 わざと着地して見せたところへ、一斉に四方八方から終焉獣が食らいついてくる。
 それを一気に跳躍、飛翔することで回避すると、狼型終焉獣たちは互いに衝突してギャンという声をあげた。
「やりにくくて自由に『飛べない』とか、言いなさんなよ、『俺』?」
「いくらでも自由に飛んでみせるさ、『俺』!」
 カイトとシャルラハは互いに愛称で呼び合うと、ギラリと笑い合った。
 ならばとカイトは『葬送舞台・冷え切った雨帳』を己に付与。
 舞台は十全に整ったとばかりに、早速先ほど衝突した狼型終焉獣たちへ氷戒凍葬『黒顎逆雨』を解き放った。
 地面より雨が降るという反転現象が巻き起こり、運命を歪められた狼型終焉獣たちが慌てたように暴れ始める。
 元々当たらないシャルラハへの攻撃が余計に失敗し続けるようになったことで、彼らの運命は絶望的なものとなったのだった。
 そこへ追撃の氷戒凍葬『破軍星雨』。一帯に光の五月雨を降り注がせ対象を浄化する舞台演出だ。
 これを浴びた狼型終焉獣たちが次々に倒れ、それぞれの炎や氷が纏わり付いていく。
 中には狂気に駆られて自らの腕を食いちぎってしまう個体までもが現れた。
「ふむ、これはかなり楽になったな。『カイトコンビ』もなかなかやるのう」
 軽く腕組みをした潮は手刀を作ると味方に『駆狼幻魔』の付与を被せていく。
 そして満を侍してとばかりに水平に手刀で空を薙ぐと、無数の光の鮫が飛んで行って狼型終焉獣を食いちぎっていった。
 とはいえすべての個体が完全に誘引されたというわけではないようで、自由な狼型終焉獣が潮めがけて突っ込んでくる。
「むんっ!」
 屈強な腕を突き出し、そこにわざと食いつかせる潮。
 そして零距離からの手刀を浴びせてやった。
 ビリッと痺れたのか牙を離して地面に落ちる狼型終焉獣。
 一方で潮は自らの腕についた傷を癒やすべく治癒の魔法を唱え始める。
 みるみる回復し、傷口が消えていく。
 その動きでヒーラーを特定したのか、それともただの偶然か。自由になった狼型終焉獣たちが潮を狙って次々に突進を仕掛けてくる。
 が、それはむしろ織り込み済みであった。
「今じゃ!」
「はい!」
 ニルは強く握っていた『ミラベル・ワンド』に力を込めて、『ケイオスタイド』の魔術を発動。
 突如としてぶわりと混沌の泥が足元から出現したころで足を滑らせ、狼型終焉獣たちが次々と転倒。
 そこへ更に『パラダイスロスト』の魔術を発動させる。
 ばらまかれた毒や出血といった大量のBSによって苦しみ始める狼型終焉獣。
 それが残り僅かになるまで連発し、タフなことに生き残った狼型終焉獣がニルを脅威と見なして突っ込んできたところで――待ってましたの『界呪・四象』。
 四象の力を顕現させ襲いかからせることで、狼型終焉獣を瞬く間に消し飛ばしてしまった。


 それまで様子見を決め込んでいた小型ベヒーモス『クラッシャー』がついに動き出した。
 ハイペリオンカートを片手で軽々と持ち上げると、ニルめがけて投げつけてきたのだ。
「わっ!」
 直撃を受けて吹き飛び、横転したカートと共に転がるニル。
「す、すごいパワーです」
 並の終焉獣とは格が違う強さに、ニルは素早く起き上がりながらも僅かに焦りの表情を見せる。
 そこへ終焉獣の追撃――が入ろうとした瞬間。
「伏せて、ください!」
 メイメイが杖を翳し、召喚したミニペリオンたちをけしかけた。
 終焉獣とその向こうにいたクラッシャーへと襲いかかるミニペリオンたち。
 鬱陶しそうに振り払ったクラッシャーだが、その懐へ素早く潜り込んだメイメイはブレスレットに力を込めた。
 黄泉津瑞神が守護の加護を込めたという、蜻蛉玉を結わえた常磐色の組紐ブレスレットだ。拳をぎゅっと握りしめ、クラッシャーめがけてえいっとパンチを叩き込むメイメイ。
 ただの拳ではない。そこには膨大な魔力が込められ、爆発する。
 あまりの衝撃にクラッシャーは大きく後退した。
(攻撃が当たったらひとたまりもないから前に出すぎないようにしよう)
 ランドウェラは引き下がる動きをとったが、そんなランドウェラに反応したのかクラッシャーが距離をつめにかかる。
「折角下がったのに!?」
 ランドウェラは仕方ないとばかりに呪術を握りしめ、近づいてきたクラッシャーの攻撃をなんとか防御。腹めがけて『ショウ・ザ・インパクト』を繰り出した。
 零距離で放たれた衝撃はしかし、クラッシャーを吹き飛ばすには少し足りない。
「だったら――!」
 と繰り出したのは『獄門・禍凶爪』。
 攻撃をくらったクラッシャーは若干後退するが、それでランドウェラは察した。どうやらこの小型ベヒーモスは、終焉獣に戦わせることでこちらの戦力を分析していたのだろう。あるいは侮っていたか。その両方か。
「鳥の人! あとは我に任せよ。我は飛べぬが、地に足はついておる。狼ごときに遅れは取らぬ!」
 そう言ってビスコッティは残った狼型終焉獣に『赤潮』をぶちまけた。
 集まってくる狼型終焉獣に対して防御を固めるビスコッティ。
 その足に、腕に、胴体に噛みついてくる狼型終焉獣を振り払う。
 『血潮』を発動させれば体力は回復する。
「何も変わっとらんか? いいや、変わっておるよ
 あのハイペリオンと言った鳥さんの我を見る目がな!
 くはは! 母上にも義父上にも叔母上にも自慢してやろう。
 我が、あの鳥さんを守ったっての!
 守るものがあるモスカは強いぞ!」
「ええ、その通りですよ。頑張ってください」
 ハイペリオンが回復魔法をかけて支援してくれている。
 そんな中、終焉獣の処理をビスコッティたちに任せたマリエッタはクラッシャーへと対峙していた。
 巨腕が顔面を狙って放たれ、それを屈んで転がることでギリギリ回避する。
 そして至近距離で『血華聖刻』の術を叩き込む。死血の魔女の用いる「死を予告する血の魔術」の一つだ。
 素早く刻みつけた血の聖印がクラッシャーの意識をマリエッタに向かわせ、次なる一撃を繰り出してくる。通常攻撃だというのに凄まじい威力だ。
 マリエッタは胴体に繰り出された蹴りを受け、派手に吹き飛び転がった。
 ハイペリオンお化け屋敷なる可愛いんだか怖いんだかわからない建物の壁に激突し、止まる。
 そこへ更なる突進をしかけるクラッシャーに、ニルが思い切り横から飛びかかった。
「いきます――!」
 『ミラベル・ワンド』に膨大な力を宿す。レガシーコアであるアメトリンが宝飾としてあしらわれた短杖が眩い輝きをもち、ニルのもてる魔力を至近距離で爆発させる。
 と同時に、マリエッタもまた消費倍加の『アイン・ソフ・オウル』をぶちかました。
 二人の衝撃が走り、クラッシャーが思わず吹き飛ばされる。
 今度はこちらが相手を吹き飛ばす番だ。
「ふむ、乱戦になるかと思ったが、思いのほか整理された戦いになったのう」
 ニルやビスコッティを治癒しつつ、潮は語る。
 確かに潮の言うとおり、戦況はかなりシンプルだ。ビスコッティが残った狼型終焉獣をとりまとめて仲間に攻撃させ、一方でマリエッタがクラッシャーを引きつけて相手をしている。
 治癒の対象も少なくなり、かなりやりやすい環境だ。
 潮の仕事もまたシンプルに収まってくれる。
 と、そんな中でカイトとシャルラハが動き出した。
「決めるぞ、『俺』!」
「ああ、外すなよ『俺』!」
 二人はギラついた笑みを互いに一瞬だけかわすと、クラッシャーめがけて攻撃をしかけた。
 カイトの攻撃は『冥王公演』を加えた氷戒凍葬『紅蓮封檻』。その領域を極限まで圧縮することによって産まれた殺戮の結界だ。
 捕えた相手を極寒により流血させ小さな紅蓮地獄へと導くという、彼にしてはだいぶ『直接的』な技だ。
 そうしてとらえた結界めがけ、シャルラハが三叉槍を構えてミサイルのように突進。
 彼の持つ最強の技。回避能力と反応速度をそのまま攻撃性能に乗せた一撃、『ホーク・インベイジョン』だ。
 ざくりと突き刺さった槍は見事にクラッシャーの腹部へ突き刺さり、そのままハイペリオンハウスの壁へと激突させる。
 最後にぶるぶると震えながら腕を掲げたクラッシャーだが、それきりだ。がくりと力を失い、その場に崩れたのだった。


「落ち着いたらランドの被害確認とか見て回る感じでは居たいんだが……。
 もふもふは俺はやっぱり恐れ多いからパス。うん、吸うのも流石に――。
 って振りじゃないって言ってんだろ、おあああああああああ!?」
 カイトがシャルラハにつかまり、ハイペリオンに頭から突っ込んでいた。というか突っ込まれていた。
「というわけで俺も! すぅうううう! 落ち着くー!」
 自らも頭を突っ込んでハイペリオン吸いをするシャルラハ。
 ランドウェラはそんな光景を目にしながら、反応に困っていた。
「え、いつもこうなの? これが普通?」
「おそらくはのう」
 顎に手を当ててうむと頷く潮。ポチはすっかりもふもふを堪能したようで少し上機嫌だ。
「えへへ、ハイペリオンさまからご褒美をいただいても?」
「あ、ニルもいいですか?」
 そうしていると、メイメイとニルがハイペリオンに抱きついて吸っている。
「しかしまぁ……ハイペリオンさんの周りはどうにも可愛らしい物ばかりなのは、不思議なものですねぇ」
「そうか?」
 そんな光景を眺めていたマリエッタとビスコッティ。
「何はともあれ、ハイペリオンランドは守られた。我々の勝利だ!」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

PAGETOPPAGEBOTTOM