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シナリオ詳細

<Je te veux>シレンツィオの用心棒

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「そろそろ、何が来ても驚かなくなってきたのだ」
 マグカップをそっと持ち上げ、海洋王国はシレンツィオ・リゾートの代表執政官キャピテーヌ・P・ピラータはぼうっと遠くを見つめていた。
「それで? 例の化物はラサから来たのだ?」
「厳密にはそうなりますねえ」
 そう答えたのはバルガル・ミフィスト(p3p007978)。ローレット・イレギュラーズの一人であり、ここシレンツィオ・リゾートの裏社会に拠点を置く昏迷都市のリーダーでもある人物だ。
 目には隈があり、どこか不気味な印象を与える男だが……その瞳には確かな魂の揺らめきがあった。
「ベヒーモス――我々が時にでっか君と呼ぶあの個体が南部砂漠コンシレラへと出現してから暫し。その背から現れた小型ベヒーモスが転移陣を開き世界各国へ移動するさまが観測されております。ここシレンツィオ・リゾートへ出現したのも、おそらくそれらの個体のひとつでしょう」
「狙いは? この前の星界獣たちのようにただ滅びをまき散らしにきたわけではなさそうなのだ」
「ま、おそらく三番街に飾られてるパンドラ収集器が目当てだろうなあ」
 そう語ったのは十夜 縁(p3p000099)だ。
「小型ベヒーモスがこれまで狙いにしてきたのは各地のパンドラ収集器だった筈だ。でもって、たしかカヌレ・ベイ・サンズに展示されてんのは建築に携わったイレギュラーズの収集器だろう? 連中が現れた場所とも大体一致してる」
 確かベイルジール・ローランという大物海洋貴族で、飾られているのはローラン家の家宝であったはずだ。ローランはイレギュラーズでありながらローレットには属していないタイプの人間だ。まさかそんなことで狙われるとは当人も思うまい。
「ベヒーモスが何を糧にしてるのかは分からないが、今回みたいにパンドラ収集器を集めちゃあ、酸素を二酸化炭素に変えるみたいにパンドラを食って滅びのアークを吐き出してるみたいだ。放っておいたらろくなコトにならない。
 話によれば、空中庭園のざんげが持ってる『空繰パンドラ』へのパンドラ蓄積も滞ってるらしいしなあ」
 バルガルはこの島で活動する用心棒たちのリーダーとして呼ばれているが、縁に関してはかのワダツミのリーダーアズマからの推薦という形でここにいる。本件に関しては何かと巻き込まれがちな彼である。
「ローレットとしては、そのパンドラ収集器をベヒーモスに奪われないように保護して、そのまま一旦ざんげの元へ届けるってことになったらしい。ま、役目を解いたら持ち主に返すから安心してくれ」
「大体わかったのだ……」
 マグカップに口をつけ、そしてテーブルへと置くキャピテーヌ。
「なら、シレンツィオとしても依頼を出すのだ。ローラン家の家宝である宝鏡――パンドラ収集器を奪われぬように、小型ベヒーモスたちを撃退して欲しいのだ!」
 転移陣によってシレンツィオ三番街へと突入してきたのは、小型ベヒーモスだけではない。
 大量の『終焉獣(ラグナヴァイス)』を引き連れて出現しているのだ。
 そのため街は既に混乱状態にあり、昏迷都市やワダツミを初めとする用心棒たちがこれらの撃退に当たっているとのこと。
 これらを撃退し、再びシレンツィオに平和を取り戻すのだ!

GMコメント

●シチュエーション
 シレンツィオ・リゾートへと突入してきた小型ベヒーモスとその一団。
 狙いはカヌレ・ベイ・サンズに展示されている宝鏡(パンドラ収集器)であるらしい。
 小型ベヒーモスたちを撃退し、パンドラ収集器と平和を守り抜くのだ!

●フィールド
 高級ホテル『カヌレ・ベイ・サンズ』前の大通りで戦闘が発生しています。
 現在用心棒や兵隊たちが協力して迎撃や観光客避難に当たっています。皆さんはダイレクトに戦闘に参加し、小型ベヒーモスたちを撃退してください。

●エネミー
・終焉獣×多数
 虎や豹のような形状をした終焉獣たちです。鋭い爪や牙で攻撃してきます。
 かなりの数がおり、一気に大量に撃退する術があると有利に事を運べるでしょう。

・小型ベヒーモス『ブラッドバイト』
 特殊な力を有した小型ベヒーモスです。自らの血を操る能力を持ち、血の刃や弾丸を用いて戦闘を行います。
 非常に強力であり、チームメンバーの皆で力を合わせて戦う必要のある相手となるでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <Je te veux>シレンツィオの用心棒完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2024年02月09日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)
泳げベーク君
郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
バルガル・ミフィスト(p3p007978)
シャドウウォーカー
火野・彩陽(p3p010663)
晶竜封殺

リプレイ


「いよいよ……こんなところへも来てしもうたんね。冬の海は冷たいんやけど、それでもええのやろか?」
 『暁月夜』十夜 蜻蛉(p3p002599)はほうっと息をついて、冷たい風に手をかざした。
「大切なパンドラ収集器、守り通して無事にざんげさんの元へ届けられるよう……頑張って死守やね」
「ああ……」
 『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)は言葉を受け、そう短く返事をする。
(アズマからの推薦って時点で、嫌な予感はしていたが……成程な。
 要は、体よく厄介事を押しつけられちまったってわけかい。
 ……だがまぁ、これで貸し借りなしだ。終焉獣の連中のついでに、こっちも綺麗に片づけさせて貰うとしようかね)
 そんなことを考えていると、カヌレ・ベイ・サンズ行きのスチームトラムが目の前に止まった。
「現場まで送ります! 乗ってください!」
 運転手が顔を出し、手を振ってくる。
 縁たちは顔を見合わせ、トラムへと乗り込んでいく。

「うーむ、なんか色んなところに出てきますねぇこいつら。
 世界の破壊と言われましてもね。そりゃ、抗うしか無いですよねぇ……。
 ……うーん。早いところ平和になって欲しいものです。そのために、気合いを入れないといけませんね……」
 流れる景色を眺めながら、『泳げベーク君』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)はそんなことを呟いた。
 『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)が頷く。
「それにしても、パンドラを収集するアイテムが狙われてるなんて、今までと違った企みだね。
 しかもパンドラをアークに変換するとか、ひどい能力も持ってるなんて」
「ベヒーモス……でっかくんでしたっけ? 砂漠にいるんですよね」
「確かそうだったはず。放っておいたらろくなことにならないよ」
「なるほど……?」
「だからって街にまで出よってからに……!」
 それに対して憤っているのは『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)だ。
 終焉からの侵攻だけでも手がかかっていたというのに、転移陣でどこにでも現れるとなると話が変わってくる。
 今回のように安全な市街地などに突然現れる可能性だってあるということなのだ。
「宝鏡は奪わせへんし、これ以上好き勝手にはさせへんよ」
「その通り。奪わせません」
 腕を組み、深く頷く『シャドウウォーカー』バルガル・ミフィスト(p3p007978)。
「しかしパンドラ収集器を狙っている上相手の導線は分かりやすいのは助かりますねぇ。
 尤も直接戦闘というのはあまり向いてませんが……ま、何とかしましょうか」
 バルガルはこの街の地理を知り尽くしている。いわゆるホームグラウンドだ。今頃頭の中で地図でも広げているのだろう。
 一方で。
「リゾートに遊びに来たってだけなら歓迎なんだけど宝鏡狙いとはまた海賊みたいなことを。
 この土地とその宝鏡は俺らのもんだ!!俺等のシマを荒らされてたまるかってんだ!」
 『風読禽』カイト・シャルラハ(p3p000684)がいかにも海賊っぽいことを言い出した。
 ちらりと見やるバルガル。
「……海賊っぽい? いや一応公認とはいえ海賊もやってるしな?
 たまにはこうやって海賊行為をしてだな。……いやこれだと海賊というよりヤの付く職業?」
 カイトが首をひねっていると、『竜拳』郷田 貴道(p3p000401)がゆっくりと立ち上がった。
「何処もかしこも修羅場じゃねえか。
 いよいよって気がしてきたな、テンション上がってきたぜ。
 準備運動にしても物足りないが……いいぜ、完食してやるよ?
 食いでの良い餌になってくれよな」
 そしてトラムは止まる。
 開く扉の先では、既に戦いは始まっていた。
 貴道はチャンピオンのようにあえて悠々と、そして堂々とトラムを降りていく。
 その姿に兵たちも、そしてベヒーモスたちですら注目した。


「ローレットだ! ローレットが来てくれたぞ!」
 カヌレ・ベイ・サンズ前で戦っていた兵隊たちが叫び、次々に引き下がっていく。
「後は任せてもいいか!? いくらなんでも俺たちには強敵すぎる!」
「ああ、任せておけ!」
 翼を大きく広げたカイトは、早速小型ベヒーモス『ブラッドバイト』めがけて飛び立った。
 強烈な加速と滑空。そしてそこから繰り出される蹴りは鋭くブラッドバイトを打った。
 即座に飛行して距離をとるカイトめがけ、ブラッドバイトは血の弾丸を作り出し発射。
「うおっと!」
 それをカイトは素早く回避した。
「【怒り】が効いてないな。けど注意は引けてるぜ!」
 二発目。ブラッドバイトは今度は血の刃を作り出して斬りかかってくる。それを大胆に回避してカイトは他の終焉獣たちから距離をとる。
「そのまま引きつけててな」
 彩陽は弓に矢をつがえると、口の中で小さく『我冀う。その力を奇跡と成す事を』と呟いた。
 周囲の霊魂。つまりはシレンツィオを手に入れるべく犠牲となった多くの海軍兵たちの霊が集まり、彩陽に力を貸していく。
 彩陽は溢れた力をそのままに、矢を二度連続で撃ちはなった。
 カァンという空気を裂く美しい音と共に飛んで行った矢は、ブラッドバイトの腕へと二発連続で突き刺さる。
 ぎらりと振り向き、彩陽をにらみ付けるブラッドバイト。
 今度はブラッドバイトの狙いが彩陽へと移り、血の弾丸が放たれた。
「――!?」
 回避はできない――いや、あえてしない。次なる矢を放つためだ。
 腹に直撃をくらいながらも放った矢は、今度こそ【封殺】の力を発揮しブラッドバイトの動きを止める。
「これはちょっと厳しいかもしれへんね」
 相手は格上。封殺をとるだけのヒットをたたき出すのは一人では難しい。が、無理という程ではない筈だ。このまま、仲間達が終焉獣を倒しきるまでの時間を稼ぐのだ。

 取り残される形となった終焉獣たちめがけ、ベークは突進を敢行した。
 甘い香りをばらまきながら敵陣をかきまわし、注意を引くためである。
(こうやって敵を誘き寄せておけば、他の皆さんがどうにかして攻撃してくれるでしょう。識別してくれるといいんですが……まぁ、違くてもなんとか気合いで耐えましょう。ちょっとくらいなら頑張ります、はい)
 注意をひけたいくつかの終焉獣がベークへと食らいついてくる。
 それを何回か回避し、回避しきれなかった攻撃も自己再生能力によって回復していく。
「僕は餌ではありませんが……少しお付き合いいただきますよ」
 そうやって集まった終焉獣たちを狙うのは縁たちの役割だ。
「ローラン家の家宝に手を出した暁には、ベイルジールに末代まで祟られるってな。
 ……ま、奴さんは今も元気にピンピンしている筈だがね」
 手を駆けた刀を抜刀。
 と同時に放たれた力は終焉獣たちの気の流れに干渉し、操り、内側から切り裂いて行く。
 ベークの誘引を受けなかった終焉獣がそんな縁を脅威とみてか牙をむき出しにして襲いかかった。
「――」
 ギリギリのところで身を捻り、相手の攻撃を回避。
 と同時に相手の口に刃を滑り込ませ、顎を落とすように切断する。
 切断をうけた終焉獣は地面に転がり倒れ、起き上がろうとしたところをすかさず縁は刀で突き刺した。
「めんどくせえな、まとめて片付けてやるよ。
 テメェらの相手は正直飽き飽きだ、カイワレ大根より味気ねえんだよ。
 さっさと消し飛べよ、前菜ども」
 殺気をみなぎらせ、ボクシングの構えで鋭く詰め寄る貴道。
 対する終焉獣はそんな貴道を迎え撃つべく爪と牙をむき出しにして唸った。
 貴道の腕めがけて食らいつく終焉獣。
 が、その動きは貴道にとって予想できたものだった。
「――ッ」
 シュッと鋭く息を吐いたその瞬間、終焉獣の顎に貴道の拳がめり込む。
 狙いを外され、ついでに開いていた口を強引に閉じられ、その直後に眉間めがけて左ストレートが叩き込まれた。
 ただのストレートではない。通称で『大蛇槍』と呼ばれるそれは、疾風怒濤の踏み込みと拳撃の連なりが形成する大蛇の如き一閃である。
 そこから流れるように終焉獣たちを殴りつけ通り抜けていく貴道。
 せめて反撃に出ようと振り返る終焉獣たちの足元から、『ケイオスタイド』の泥が吹き上がる。
 アクセルの放つ魔法だ。アクセルが指揮棒『雲海鯨の歌』をリズミカルに掲げ振ると、音符のような魔術光が弾けて魔術を形成する。
 格下の集団を纏めて鎮圧するのにケイオスタイドは絶好の魔法である。不吉系BSに塗れ派手に転倒し続ける終焉獣たちを前に、アクセルはびしっと指揮棒を突きつけた。
「今だよ、皆!」
「次から次へと……ようもこんなに。数で疲れさせようってところかしら」
 回復の必要はないと判断した蜻蛉が飛び込み、手にした扇子をサッと振り下ろす。
 まるでそれによって周囲の空気が穿たれたかのように『ワールドエンド・ルナティック』の魔術が完成、拡散した。
 紫色の帳が下り、狂気の力が終焉獣たちを内側から破壊していく。
 そんなアクセルや蜻蛉たちを排除すべく、終焉獣はうなりを上げて立ち上がる。
 グロロという虎のようなうなりは、今にも獲物を食いちぎらんとする意志に満ちていた。
 が、そんな終焉獣たちを鎖の衝撃が襲う。
 生きた蛇の如く荒れ狂う鎖とその先端についたナイフが終焉獣たちを切裂き、暴れ、荒れ狂ったのだ。
「おやおや、元気の良いことで」
 手元にナイフを戻したバルガルが不気味に笑う。
 目に隈をつくり、ナイフを手にしたグレーのスーツを着た男。その不気味さは終焉獣にも通じるようで、ジリッと終焉獣たちは警戒の色を露わにした。
 そう、なぜならバルガルは突如物陰から現れ奇襲をしかけてきたのだ。それまで察知できなかったコトも含めて、深く警戒されているのである。
 だが姿を表せばこちらのものだとばかりに終焉獣が襲いかかる。
「正面戦闘ですか。いやですねえ」
 などと言いながらもナイフを握り込むバルガル。
 腕に鎖を巻き付け、それを防護にして終焉獣の噛みつきを受け止めると、相手の眼球をえぐるようにしてナイフを突き立てる。
 終焉獣は悲鳴のような声をあげ、そしてがっくりと崩れ落ちたのだった。


 カイトと彩陽への対処に夢中になっていたブラッドバイトは、ようやくにして終焉獣たちが倒されたことに気がついた。いや、手遅れだったというべきだろう。
 グルル、とうなりをあげたのはそのことへの怒りのためだろうか。
「ここは、攻撃にまわったほうが得策っぽいですね」
 ベークは自らの放つ甘い香りがブラッドバイトに通用しないことを悟り、すぐさま攻撃モードに移行した。
 とあっ! と跳躍すると大きく息を吸い込み、口から黄金の光線を発射する。
 『ギガント・ライフ・ブラスター』。ベークの高すぎる再生能力を破壊能力へと変換した恐るべき必殺技である。
 光線を受けたブラッドバイトは咄嗟に血の盾を作り出して防御。
 血の盾が黄金の光線によって破壊され、ブラッドバイトが吹き飛ばされるその一瞬を狙い、バルガルは鋭く相手に詰め寄った。
(相手は血を武器にする以上、血を流せば流すだけ攻撃もきっと、だと良いですがね)
 鋭く繰り出したナイフがブラッドバイトの胸に突き刺さり、そしてひねられる。
 続いて相手の腱を狙った一撃が走った。
 油断なく狡猾に狙ったその攻撃は、しかしブラッドバイトの血の盾によって防がれる。
 ガキンと音を鳴らしナイフが止められたことを察すると、バルガルは素早くその場から飛び退いた。
 さっきまでいた地面から血の槍がつき上がり、空を穿つ。
 直後、それらが一瞬で解けたかと思うとバルガルめがけて無数の弾丸となった放たれる。
「――っ!」
 両腕を翳し防御するバルガルだがかなりのダメージを受けることになった。
 が、案ずることはない。
「ようやっと、親玉さんの番。お待たせしました!」
 蜻蛉が扇子を優雅に開いて空をかき混ぜる。
 美しい花の香りが漂ったかと思うと、それらが魔術を形成しバルガルの穴だらけの身体を素早く治療してくれる。
「『風読禽』を知らないモグリめ、ここでテメェは終いだ!」
 カイトが反撃開始だとばかりに『ホーク・インベイジョン』を仕掛けた。
 空を飛び三叉槍を繰り出すカイト。
 それをブラッドバイトはがしりとキャッチして受け止め、カイトをビルの壁へと放り投げる。
 だがそんなことで攻撃をやめるカイトではない。
 翼を羽ばたかせて空中で制動をかけると、手にしていた槍を投擲。ブラッドバイトが血の盾でそれを防いだその瞬間。槍の先端めがけて強烈なキックを浴びせ盾ごと破壊してしまった。
「――!?」
 驚きの反応を見せるブラッドバイト。
 そこへアクセルが追撃の『ケイオスタイド』を発動させる。
 指揮棒をリズミカルに振ることで現れる泥がブラッドバイトの身体へと纏わり付いて暴れ出す。
 それを強引に振り払ったブラッドバイトは、今度はアクセルめがけ攻撃を放った。
 鋭い槍のような弾丸を作り出すとアクセルへと発射したのである。
「うわっと!」
 アクセルは攻撃を食らった直後に自分めがけ治癒の魔法を発動。高い治癒能力によってダメージを大きく緩和する。
「ハッ、新顔だな、テメェ?
 歯応え有りそうじゃねえか、楽しませてもらうぜ!
 しこたま叩き込んでやるから、せいぜい耐えろよ?」
 そこへ飛び込んでいったのが貴道だった。
 ブラッドバイトにパンチの間合いまで滑り込むと、相手の顔面に強烈なパンチを叩き込む。
 常人の頭を破裂させるほどの衝撃が走るが、ブラッドバイトは歯を食いしばってそれを耐えた。顔面を覆った血が鎧の役割を果たしたようだ。
 次の瞬間、ブラッドバイトは拳に血を纏わり付かせ硬化させると、貴道の顔面に繰り出した。
 直撃を受けた貴道はしかし動じず、二発目のパンチをブラッドバイトの顔面へと叩き込む。
「シレンツィオの用心棒は強者揃いだぜ。パンドラ収集器は諦めた方がいいんじゃねぇかい?」
 そして、ここまで来れば終わりだと察した縁がゆらりとブラッドバイトの背後へと回り込んでいた。
 咄嗟に背後に棘を生やして反撃を試みるブラッドバイト――だが、その動きは縁に読まれていた。
 予め身体を大きく飛び退かせたことで攻撃を回避した縁は、手にしていた刀を振るう。
 刀に込められた『黒顎魔王』の力が発動し、飛んだ斬撃は魔性の力をもってブラッドバイトの身体を切り裂いた。
 血を吐き、がくりと膝をつくブラッドバイト。
 そしてそのまま、うつ伏せに倒れ動かなくなったのだった。


 戦いを終えたイレギュラーズたちは、宝鏡の無事を確かめるべくカヌレ・ベイ・サンズ内へとやってきていた。
「おかげさまで宝鏡は無事でした。これを空中庭園に運ぶのでしょう? お預けしますね」
 係員に手渡され、アクセルは宝鏡を手にする。
「オイラ達よりずっと昔のイレギュラーズのパンドラ収集機……。このパンドラで、混沌を守ってきたのかな」
「終焉獣から無事守られた宝鏡ってことで、更に有名になったりしてな?」
 縁が肩をすくめて言う。
 ベークや貴道たちは既に興味を失ったようで、先にトラムへと歩いて行ってしまっていた。
 逆にカイトは興味津々な様子で鏡を覗き込んでは『未来でも見えないかな』と呟いている。
「外を見て回ったけど、特に増援とかはなさそうやったよ」
 彩陽が外から戻ってくると、同じく外の様子をうかがってくれていたらしいバルガルが手を振った。
 そんな中で、蜻蛉はトラムへと乗り込んでいった。
(シレンツィオにまで現れるやなんて。この先、もっと大変な事が起こりそうな……そんな気ぃして。
 でも、今は出来る事を。縁さんの大事な場所やもの……うちにとっても、大切な世界やから……)
 この世界を守りたい。そんな気持ちを一層強く持って、蜻蛉は車窓からの街を眺めたのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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