シナリオ詳細
セイリンカイロンと異空の王
オープニング
●セイリンカイロンの裂け目
ある災害の話をしよう。
それはこの世界中にバグ・ホールが発生し始めたのと同じ頃。
鉄帝に存在する古代遺物『セイリンカイロンの裂け目』が開き、異空間よりアビスライズなる魔物があふれ出た。
セイリンカイロンの裂け目を閉じる手段を持っていた老魔法使いエドリック・サンスはこの異変に対応すべくローレット・イレギュラーズへと協力を依頼。イレギュラーズの護衛のもと、見事にセイリンカイロンの裂け目を閉じることに成功した。
早期に裂け目の異変に気付いたことや、イレギュラーズの活躍が大きかったこともあって人的被害はゼロ。エドリックは再びセイリンカイロンの監視へと戻ったのだった。
これは、そんな物語の続き……あるいは、終わりを語るものである。
エドリックの工房に、ひとりの魔女が訪ねてきた。
彼女の名をマリエッタ・エーレイン(p3p010534)。またの名を死血の魔女。
彼女がエドリックの元を訪ねた理由は、言葉にすれば単純なものであった。
「異空間の調査……面白いじゃないですか。ぜひ挑ませてもらっても?」
「先にも言ったが、かなりの危険がつきまとうぞ」
老魔法使いエドリックは自らの髭を撫でながらそう返した。
二人のかけるテーブルには二人分の紅茶。
マリエッタが余裕そうに紅茶に手を付け、口へと運ぶ。
その様子にエドリックは小さく息をついた。
「とはいうものの、実を言うと『助かる』。セイリンカイロンはわしのもつ鍵を使わなければ開くことのなかった遺物じゃ。それが勝手に開いたというのは前代未聞。昨今発生したバグ・ホールの影響かと睨んでおるのじゃが、もし仮にそうだとするなら再び開く危険があり続けるということじゃ。
その危険に怯えるよりも、こちらから異空間へと入り込みアビスライズたちの元を絶つほうが確実じゃろう。
じゃがそれは、わしの手をもってしても難しい。凄腕の冒険者を雇っても難しいことじゃ。じゃが……A級闘士を次々と排出し冠位魔種をも倒して回ったそなたらローレットのイレギュラーズたちならば、あるいは可能かもしれん」
そう言って、エドリックは席を立ちひとつの書物を取り出してきた。
「セイリンカイロンの先に存在する異空間には、『アビス』なる存在があるという。
尽きぬ破壊への衝動をもった魔物で、アビスライズやアビスヴォイドはこれによって生み出されたとされておる。
逆に言えば、このアビスを倒す事ができるなら、セイリンカイロンの危険を根絶することができるじゃろう」
「成程……」
マリエッタが書物を手に取り、中身を開く。
そこにはアビスやアビスヴォイドたちについての観察記録が書かれていた。
といっても、情報は古くあやふやな内容が多く、殆どは正体不明というべき内容ではあったのだが。
「事前情報が少ないですね。アビスという魔物はどのような姿をしているのですか?」
「それを調べようとした者は、皆死んだ。セイリンカイロンの先へと行って、帰ってこなかったのじゃ」
細められるエドリックの目。その瞳には悲しみや後悔が浮かんでいたが、マリエッタはあえてそれを無視して話を続けた。
今から挑むのは過去への払拭でも仇討ちでもない。未知への挑戦であり危険の根絶だ。未来の話をしているときに、過去にとらわれる必要などない。
「私達ならば、どうでしょう?」
「ふむ……」
目を閉じ、考え込む仕草をするエドリック。
どうやら以前の戦いぶりを思い返しているらしい。
そして答えが出たのか、ゆっくりと目を開く。
「そうじゃな。おぬしらなら、あのセイリンカイロンの先にある異空間から生還するやもしれん。重ねて言うが、危険のある冒険になるぞ。それは、覚悟してもらう」
「ええ、勿論」
マリエッタは立ち上がり、そして借りた本を小脇に抱えた。
「早速メンバー集めを始めましょうか。今度もエドリックさんの奢りでご飯が食べられそうですね」
冗談めかして言うマリエッタに、エドリックは今度こそ朗らかに笑った。
「いいじゃろう。もし生きて帰って来れたなら、なんでも好きなものを食わせてやる」
- セイリンカイロンと異空の王完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2024年02月06日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●
「さて、よく集まってくれたのう。今からセイリンカイロンの裂け目を開くから、まっておれ」
セイリンカイロンの鍵たる杖を手に、エドリック・サンスは集まった面々の顔を順に見ていった。
その途中でぴたりと『ナチュラルボーン食いしん坊!』ニャンタル・ポルタ(p3p010190)で止まる。
「無事敵を殲滅し、エドリックの財布も破壊しなくてはな! 楽しみじゃ♪」
「やめんか! あのあといくら払ったとおもっておる!」
怒鳴りつつも、しかしエドリックの顔はどこか晴れやかだ。
「まあ……アビスを倒すことができればわしの役目も終わりじゃ。その記念ということなら、多少は付き合ってやってもよいぞ」
「お、なら帰ったらラーメン、オムライス…カツ丼、カレー全て特盛スペシャルで鱈腹頼むぞい! タワーパフェとチーズケーキ、チョコレートアイスも追加でー!」
元気よく言いきるニャンタル。
その横で、『死血の魔女』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)はひとり考え事をしていた。
(異世界に通じる穴。元より私の目指す目的の一つである異世界への進出の為に調べられるものは調べたいですからね。
それがバグホールに繋がるならなおよし。
知的好奇心が満たせるだけでも面白い物なのですからね)
そんな彼女の背をぽんと叩く『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)。
「マリエッタの好奇心も結構すごいわよね。
バグ・ホールなんてものがあちこちに出てるって言う状況で、異空間に繋がる裂け目の調査がしたいだなんて」
「そうでしょうか……?」
「でも……ふふっ、わたしを呼ぶなんて、頼りにしてくれてるのね。
任せて! きっと期待に応えてみせるから!
さあ、挑んでやろうじゃないの!」
腕まくりでもしそうな勢いで意気込むセレナに、マリエッタは微笑んだ。
「バグホールか……同じ裂け目として何かしらの関係があればと思ったが」
『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)は腕組みをしてセイリンカイロンの裂け目を眺めていた。
「好奇心ってのは大切だよ。
だが『好奇心は猫を殺す』って言葉もあるんだ。
慎重かつ大胆に探ってみよう」
「そうですね。異世界への穴……バグ・ホール問題解決への糸口になってくれればいいんですけれど。
直接的なものでなくても、アプローチのかけ方とか参考になる部分はたくさんあるはず。
危険は承知のうえ、わたしにできる精一杯をしながら探っていきましょう!」
その考えに同意を示したのは『灯したい、火を』柊木 涼花(p3p010038)だった。
世界中がバグ・ホールに悩まされている昨今、解決の糸口を探すのは自然な動きだろう。
仮に無関係であったとしても、アビスという脅威を取り除くだけでも充分にやる価値がある。
「只一ツ 荒野以外二存在スル 沈マヌ 夕日。
ソレソノモノガ アビスダッタリシナイダロウカ。
我 フリック。我 フリークライ。
荒野二挑ミ倒レシ エドリック仲間達 弔ウ花トナル為ニモ。
未来モタラサン」
『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)も独特の考えをもちつつ協力する姿勢を見せている。
ふむ、と頷く『クラブチャンピオン シード選手』岩倉・鈴音(p3p006119)。
「よくは理解できないが、共存できない魔物もいるもんだな。もはや殺るか殺られるかだな! アビスを倒して平和になっていただくぞ! それがイレギュラーズたるワタシの願いだ。
そのために長く苦しい戦いに志願したということだなっ」
「その通り」
『アーリオ・オーリオ』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(p3p010347)は巨大な十字架型の武器に手をかけ、周りの仲間の顔ぶれを確認する。
支援型の鈴音と涼花に、タンクヒーラーのフリークライ、そして能率ヒーラーのアンジェリカ。かなり回復の手厚いメンバーだ。長期戦にも向いている。
これならば安心して戦うことが出来るだろう。
「全員が100%の勢いを崩さずに突き進めば必ずや勝利を掴めるでしょう!」
いざ――と歩み出すアンジェリカ。
それと同時にセイリンカイロンの裂け目が開き、道を開ける。
アンジェリカたちは未知なる異空間へと侵攻を開始したのだった。
●
入り込んだ異空間を一言で表すなら『廃墟街』であった。
酷く崩壊した建物が無数に並ぶ街めいた風景は、そこがアビスライズたちの住処であることを思わせない。むしろ、人が住んでいた場所が滅びたかのような……。
「敵が来ます!」
周囲を観察していた仲間達に先んじて、アンジェリカが叫んだ。既に敵の接近に気付いていた仲間もいるようで、それぞれが武器を構える。
通りの向こうから現れたのは大量のアビスライズ。その中にはアビスヴォイドの姿も混じっていた。
セレナは箒にひょいと飛び乗ると、低空飛行状態から誘引の魔法を解き放った。
夜の帳が落ちるように、アビスライズたちに誘引の力が働いていく。
彼らは目の色を変えセレナをにらみ付けると、一斉にセレナへと集まっていく。魔術で作り出された光の刃がセレナを襲うが、セレナは魔術結界を展開。自らを球形に包み込む結界は全方位から浴びせられるアビスライズの光の刃を阻んだ。
ならばとセレナは『狂ウ満月』を発動。手のひらに浮かべた幻月が黒紫の光を放ち、全方位に向けて力が拡散していく。
集まっていたアビスライズが纏めて吹き飛ばされ、その目に狂気を宿して自らを攻撃し始めた。
「私も行こう」
己の身体こそが武器であるモカ。彼女は身を乗り出すとアビスライズの群れめがけて突進した。いや、突進というより攻撃距離を定めるための接近と言うべきだろう。
モカは『黒豹疾駆撃』を繰り出す。気功によって生み出した誘導弾が弧を描いて敵の密集地点へと着弾。爆発の広がりを見せる。
その中から飛び出してきたのは、セレナの誘引をレジストしたアビスライズたちだろう。そこにはより強力なアビスヴォイドの姿もあった。
光の刃が作られ、次々に飛んでくる。
モカはそれを鋭い蹴りによって次々に破壊していったが、アビスヴォイドの放つ巨大な刃だけは破壊しきることができなかった。
「ぐっ……!」
衝撃が走り、吹き飛ばされるモカ。
そんなモカをキャッチしたのはアンジェリカだった。
力強くモカを支え、そして治癒の魔法をかけ始める。
「ここを突破するには、やはりあのアビスヴォイドという個体の攻略が必須になりそうですね」
アビスライズは簡単に倒す事ができるが、アビスヴォイドはやや手強い。これを着実に倒して行かなければ、追い詰められて撤退を余儀なくされてしまうだろう。たとえアンジェリカのような能率ヒーラーがいてくれてもだ。
『アムド・フォートレス』と『ティスタ・ヴァージュ』で自らを強化したアンジェリカは再び治癒の魔法をモカにかけると、背をとんと押してやった。
「アビスヴォイドの攻略だな。了解した」
ザッと前傾姿勢になって走り出すモカ。そして繰り出す強烈なキックは、アビスヴォイドの魔術体による身体を派手にへこませた。
セレナを先頭にして突き進んでいく仲間達。その中でマリエッタは後方から追いすがるアビスヴォイドの対応にかかっていた。
『万華無月』『アルス・マグナ』『幻想纏い』と順に自己強化の魔術をかけていくマリエッタ。
追いすがってくるアビスヴォイドに『偽・聖竜咆哮』を放った。
聖竜の力を再現したというこの技は、死血の魔女の力によって赤い衝撃となってアビスヴォイドを貫いていく。
更には側面から攻め込んでくるアビスライズたちに対して、自らの血を無数のナイフに変えた魔術を解き放つ。
拡散したナイフが次々にアビスライズへ突き刺さり、相手を撃墜していく。
「アビスとやらはこ奴等の母だと言う。
何ぞを種に生み出すんじゃろ。
感情があるのか、滅び其の物の副産物か…気になるの。
古くから伝承にあるという事じゃし…アビスかいつ頃生まれ、大元と、更に其の大元を辿りたいのう。
うーむ、卵が先か鶏が先か?」
などと言いながらニャンタルはサッとセレナの前へと飛び出し敵のなぎ払いを実行する。
『うちゅうやばい』と『うちゅうすごい弐式』というふたふりの剣をクロスさせ、翼を開くかのようになぎ払う。
走った衝撃は謎の爆発となりアビスライズたちを撃ち払った。
脅威となるのはそれでも倒しきれないアビスヴォイドだ。
アビスヴォイドは無数の光の刃を作り出しニャンタルへと放ってくる。
防御しきれない物量に身体を切り裂かれてしまうニャンタル――だが、そのすぐ後ろから鈴音の放つ治癒魔法が浴びせられた。
更には『聖躰降臨』がニャンタルに付与され、鈴音自身には『第七の叡智』。
「長期戦だけに腹が減るんだよなあ」
などと言いながらフライドポテトをぱくつく余裕すら見せる鈴音である。
こうした鈴音たちの治癒は手厚く。アビスヴォイドの猛攻を喰らっても簡単には落ちない陣形が形成されていた。
「ヤバイのはヒーラーのAPが尽きちゃうことだけど、そこはまあまあ大丈夫そうかなあ」
仲間には定期的にAP回復のできるフリークライや涼花がいる。危なくなったらそちらに力を回せばいいだろう。
そうこうしているとフリークライがニャンタルの前に出てアビスヴォイドの攻撃を代わりに受け始めた。
「長期戦 無問題。
我 永久機関 搭載。
尽キヌ癒シニテ味方万全維持。
特ニHPダケデナクAP重要。
皆 温存不要」
アビスヴォイドの光の刃を装甲によって弾きつつ、フリークライは目のライトをちかちかと点滅させた。
「敵 コレダケイテモ回復機能持チ 存在セズ?
タダ破壊ノ為 生ミ出サレシ存在カ」
確かに、フリークライの言うとおりこれだけの数がいながら回復能力をもつアビスライズやアビスヴォイドはいなかった。破壊のみを目的とした群衆だ。
その性質と、この異空間に広がる廃墟街らしき光景が重なる。
もしやこの異空間は元々は誰かの住処だったのではないだろうか。それがアビスの発生によって滅び、それが外に出てしまわぬようセイリンカイロンの裂け目を閉じるという選択を取ったのでは。はるか古代の出来事に、そんな想いをはせる。
「どうやら、回復はそこまで必要なさそうですね。で、あれば――」
涼花はギターを演奏し、『シムーンケイジ』の魔術を発動させた。
光の五線譜と音符が生まれ、アビスライズたちめがけて飛んで行く。弾けた音符は爆弾の如く炸裂し、五線譜はアビスライズたちに巻き付いてその動きを鈍らせる。
味方が『啓示の乙女』の効果範囲内にいることもあって回復支援は充分だ。このまま攻撃に転じ続けてもよさそうだった。
そんな涼花にアビスヴォイドが巨大な光の刃を作り出し襲いかかるが、それで引くような女では、涼花はない。
演奏をよりハードなものに変更すると『ソウルストライク』の魔術を発動。
接近したアビスヴォイドのど真ん中を音の魔法が貫いていく。
●
セイリンカイロンの異空間。その奥地へ進むと、不思議なことにアビスライズたちはサッと身を引き道を開ける。
それまで猛烈に攻撃してきていたアビスライズたちの瞳が、イレギュラーズたちにじっと定まったまましかし身体は動かない。
そんな異様な光景に警戒しつつも先へと進むと……。
「よくぞここまでたどり着きましたね」
と、声がかかった。
それは真っ黒い闇のような存在であった。
シルエットこそは女性の肉体のように見えるものの、すべてが闇によって構成されたかのように真っ黒く見える。
ただ唯一、頭についた二つの赤い瞳だけが異様だ。
おそらくこの存在こそが『アビス』であろう。
「一体、何年ぶりでしょうか。もう、私にはわからない」
話が通じる相手か? そう考えたのもつかの間、イレギュラーズたちに光の刃が走る。
凄まじい衝撃に、涼花や鈴音たちが一斉にカウンターヒールを行う。
「ですが、死んで貰います。理由を語る必要など、もはやない」
「問答無用というわけか。ならこちらも問うまい」
モカは真っ先に飛び出すとアビスめがけて強烈な蹴りを繰り出した。
一撃を入れた後は目にもとまらぬほどの連続キックを浴びせていく。
が、それをアビスはまるでそよ風にでも吹かれるかのように受け流していた。
「無効化結界か? なら――」
身を翻し、『ブルーフェイクIII』を解き放つモカ。
激しい衝撃がアビスを襲い、身体を僅かにふらつかせる。
が、次の瞬間それ以上の衝撃がモカを襲った。
吹き飛ばされたモカを今度は鈴音がキャッチする。
「すまないな、わりと打たれ弱いものでな」
「なあに回復なら任せて任せて」
鈴音は眼帯をつけた目でウィンク(わかりづらい)すると治癒の魔法をモカにかけていく。
「うひょょ(゚∀゚)」
反撃だとばかりに力を溜めにかかる鈴音。
「受けとれ!これがイレギュラーズの想いだ!
アビスよ、生まれ変わったら共存できる命となれ!」
両手を突き出し『殲光砲魔神』を放つ鈴音。
ぶつけた力はアビスの放つ衝撃と相殺して爆発した。
爆発の光に紛れ近づくニャンタル。
「んで…お主も自由になりたいじゃろ?
この場の因果を断ち切る」
くらえ! とばかりに大上段に構えた二刀をいっぺんに叩きつける。
アビスは手をかざし、見えない障壁によってそれを阻んだ。
「ぐぬぬ……!」
しかしニャンタルは諦めない。腕に力を込めて押し込むと、見えない障壁を打ち砕いてアビスに斬りかかった。
「でえい!」
肩口を切り裂かれたアビスは数歩後じさりするも、再び手をかざして光の衝撃を解き放った。
ニャンタルを狙ったそれは、間に割り込んだフリークライによって阻まれる。
「我ラガ墓標 此処二非ズ。
帰ロウ 日ガ沈ミ マタ昇ル世界ヘ」
フリークライは自らに治癒の魔法をかけながら衝撃の連続に耐える。
アビスの衝撃はついにフリークライを倒す事には至らず、アビスはその標的を別の者へと向けた。アンジェリカである。
ぎゅん、と音がするほどの高速移動でアンジェリカの眼前へ迫るアビス。
アンジェリカは十字架をぐるんと反転させると、中央のバーを握ったまま思い切り相手の顔面に十字架の頭部分を叩きつけた。
接触の瞬間に爆発する膨大なエネルギー。それによってアビスは思わず吹き飛ばされてしまった。
「さぁ、勝利をこの手に!」
いかにもヒーラーのアンジェリカがここまで力押しの攻撃に出るとは思わなかったのだろうか。アビスは意外そうにしながらも起き上がる。
そこへ追撃をしかける涼花。
(攻撃が効いている……なら、いまがチャンスですね!)
放つのは『ソウルストライク』の魔術。ギターをかき鳴らした途端、涼花の周囲に無数の音符型の魔術体が出現。それらがミサイルのようにアビスへと飛んで行く。
着弾と共におきる爆発は、アビスの隙を大きく晒した。
「マリエッタ!」
「はい!」
セレナとマリエッタが同時に動き出した。
マリエッタは血の大鎌を、セレナは魔術で作り出した巨大な杭をそれぞれ生み出し、全く同時に解き放つ。
杭がアビスの腹に突き刺さり、ナイフとフォークの要領でマリエッタの鎌がアビスの胴体をすぱんと切り裂いてしまう。
「ああ……」
アビスが手を伸ばす。それはどこか、救いを求めているかのようだった。
「やっと、終わる……」
目を細めるマリエッタ。
次の瞬間、背後に控えていたアビスライズたちが一斉に消滅した。
まるで最初から何もなかったかのようにかき消えていくアビスライズたち。
その様子は確実に、この戦いの勝利を意味していた。
「さあ……帰りましょうか」
手を伸ばすセレナ。その手を、マリエッタはそっと取った。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete
GMコメント
●シチュエーション
『セイリンカイロンの裂け目』を通じ、魔物だらけの異空間へと挑みます。
見事魔物の群れを突破し、魔物の王たるアビスを討伐できるのでしょうか……!
●前半
魔物の群れを突破し、アビスの元へと突き進みます。
異空間は無限の荒野にも似た光景をしており、沈まぬ夕日がいつまでも荒野を照らしています。
この空間にはアビスによって作り出された魔物アビスライズ&アビスヴォイドが大量におり、これらを倒しながら突き進むことになるでしょう。
対多戦闘、及び長期戦を考慮しつつ挑みましょう。
・アビスライズ
異空間から現れる邪悪なる魔法生物の一種であり、人間に対して非常に敵対的。
姿は闇色の渦巻きめいた形で現れ、渦巻きは漆黒の魔術体に包まれている。漆黒の球は翼を林、それによって空を飛ぶことを可能としている。
この漆黒の球には紫色の目がついており、冷徹な眼差しは魔術の光線や刃を放つと言われている。
・アビスヴォイド
アビスライズの強化版で、丁度アビスライズを巨大化させ目を沢山増やしたような見た目をしている。
空間を歪ませる魔術や膨大なエネルギーによる闇色の光線などを放つことができ、その威力は抜群。
●後半
魔物たちの王、『アビス』との戦いに挑みます。
アビスに関する情報はありませんが、こちらより圧倒的に高い戦闘力を有しているものとみて挑むべきでしょう。
仲間たちと力を合わせ、アビスを倒してください。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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