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シナリオ詳細

<悪性ゲノム>狂獣グラボスファング

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●グラボスの変貌
 ――グラボスという魔物がいる。
 体長は小さいもので四十センチ、大きいものは一メートルにもなる雑食の哺乳類で、言ってしまえば田畑を荒らす獣の類いに相違ない。
 まれに幼体であるウリボスが人里に迷い込み、ペットとして飼われることもあるが、成体になると、まるで野生の勘を取り戻すかのように人知れず消えてしまうという。
 成体が田畑を荒らせば被害はかなりのものとなるが、下級の魔物であると知れているグラボスが出現すれば、すぐに村の自警団が武器を手に追い払いにくる。
 そう、戦闘経験など少ない一般市民でも、グラボスを追い払うことはできるのだ。当然、油断すればその突進によって転倒し、腰痛の一つでももらう所だが、そう対処は難しくない。
 そんなグラボスだから、その日、山から姿を現した群れもいつものことだとペルトス村の自警団――ローレットの勇名に影響されて名付けられた――ローレッティア自警団の若者達は使い慣れた棍棒を手に田畑へやってきた。
 その時、思慮深い若者がいればそのグラボスの群れの異変に気づけたかも知れない。はたまた、ローレットに感化されていなければ――無謀にも戦い続けることなどせずに――すぐさま逃亡することも出来たかも知れない。
 そのグラボスの群れは、顎の両側に雄々しく禍々しい牙を持ち、体長も一回り、否、二回りは巨大に見えた。
 狂暴さを隠そうともしない、グラボスの変異種は田畑を荒らすことよりも、それを止めに入った人間達との戦いを求めていたようで……嗚呼、なんと恐ろしきことか。
 ローレッティア自警団の若者達十人は、その半数が倒れグラボスの餌になったところで、逃亡を開始した。
 すぐさま村の代表に話は行き着き、その人的被害の重さから徒ならぬ事態と見た村長の判断により、国中で評判のギルド・ローレットへと持ち込まれる運びとなった。


「変異したグラボス――そう名付けるならグラボスファングというところかしら?
 つまりは、それの討伐が今回のオーダーになるわ」
 依頼書手に現れた『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)が変異したグラボスを評してそう名付けた。
「グラボスファングは群れで行動しているわ。
 性格は狂暴の一言に尽きるわね。とにかく争いと血を求めているようだった、という話よ」
 戦闘慣れしていないとはいえ、自警団は武器を持った人間だ。その若者達が一方的に暴行を受けたとあれば、通常の魔物被害に比べても大きな被害と言えるだろう。
 リリィは集めた情報を精査し伝えてくれる。
「数は十から増えて十五体ね。
 その巨体による突進に、禍々しい凶悪な牙で突かれれば、体勢を崩すどころかかなりの出血もあり得るでしょうね」
 グラボスファングの群れは移動することなくペルトス村の田畑を荒らして回っているという。村の農民達は怖くて家から出てこられないそうだ。
「群れがまとまっている今がチャンスでしょうね。
 一網打尽にして、村人達の不安を解消してあげましょう」
 依頼書を手渡したリリィは、口元に手を当てると、コソりと呟いた。
「最近この手の変異種が多いわ……。
 なにか良くないことの前触れでなければ良いんだけれど――」

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 狂暴なグラボス変異体が現れました。
 これ以上被害を出す前に討伐しましょう。

●依頼達成条件
 グラボスファング十五体の撃破

■失敗条件
 グラボスファングを二体以上取り逃がす

●情報確度
 情報確度はAです。
 想定外の事態は起こりません。

●グラボスファングについて
 グラボス成体を二回りほど大きくし、禍々しい牙を突き刺して回る厄介な相手です。
 突進による『崩れ』と突き刺しによる『出血』が主な攻撃パターンです。
 巨体に見合わぬ反応を持っているため、どのように行動を封殺するかが依頼達成のポイントになるでしょう。
 逃亡条件はグラボスファングの数が半数以下になった上で、体力の無くなったものから順番に逃亡を行います。逃亡開始から一ターン経過で逃亡が成功となります。

●戦闘地域
 幻想南部山間にあるペルトス村の田畑になります。
 時刻は十二時。
 田畑は荒らされ周囲には目立つ障害物等はありません。戦闘に集中出来るはずです。

 そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • <悪性ゲノム>狂獣グラボスファング完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年11月03日 21時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
冬葵 D 悠凪(p3p000885)
氷晶の盾
楔 アカツキ(p3p001209)
踏み出す一歩
ヨルムンガンド(p3p002370)
暴食の守護竜
シュリエ(p3p004298)
リグレットドール
ノエル(p3p006243)
昏き森の
アルテア・オルタ(p3p006693)

リプレイ

●血生臭い畑
 幻想南部の山間にあるペルトス村は、それはそれはごく平和な村である。
 村民のほとんどが農家で、毎日のように田畑の手入れに精を出す。そんな時間の流れが遅い、明るい村のはずだった。
「これはひどいな……」
 ペルトス村に辿り着いたイレギュラーズがまず目にしたのは、荒らされ滅茶苦茶になった田畑である。
 ついで視線を移せば、傷付いた村人が荒れた田畑を前に肩を落とす姿だった。
 グラボスファング。
 山に住むグラボスと呼ばれる魔物の変異種という話だが、その被害は散々たるものだった。
「変異種の増加か……。
 早く原因が分かって現象が落ち着くと良いが……」
 『優心の恩寵』ポテト チップ(p3p000294)が呟く。同じような事態が広がっていることを危惧していた。同時に、ペルトス村を襲ったグラボスファングへの対処へと意気込む。
「話を聞いた限りだが――奴等が何故巨大化、凶暴化したかは分からねぇが、こうなっちまえば関係ねぇ。
 背後関係は分からなくともよ、戦うまでだぜ」
 鋭い眼光で獲物を探す『義に篤く』亘理 義弘(p3p000398)。依頼として受けた以上、どのような理由であれ――どんな相手であって叩きのめす心算だ。
 イレギュラーズは、村の自警団――ローレッティア自警団のものから話を聞き、グラボスファングが暴れているという村はずれの田畑へと向かう。
 自警団の面々は傷だらけで、なんとも痛ましい姿だった。村の若者をこのような姿にしてしまうグラボスファング。恐ろしい変異種だということがわかる。
 そんな村のローレッティア自警団を心配するのは『昏き森の』ノエル(p3p006243)だ。
「ローレットの影響も良し悪しと言ったところでしょうか。
 自警団を組織し、村を守ろうとするのは決して悪い事ではないのでしょうが、
 その結果多くの犠牲者を出したと思うと辛い物がありますね」
 ローレットに影響されて出来た自警団。そんな彼等がローレットを頼ってきたのだ、しっかりとその依頼を熟してみせると、強く頷く。
「変異種……妙なものですね
 またいつぞやのサーカスのように裏で糸を引いている集団などがいないと良いのですが」
 変異種の出現は人為的なものであると睨む、『氷晶の盾』冬葵 D 悠凪(p3p000885)。
 グラボスファングを放置すれば、きっと他の村を襲い出すに違いないと考えていた。
 そんなことはさせないと、強く胸に誓う。
「敵と遭遇する前に、山の方角に罠を作成しておきたい。
 体格を考えると獣道を残してくれてそうだ」
「私も手伝おう。
 幾つか用意して置きたい罠がある」
『軋む守り人』楔 アカツキ(p3p001209)とアルテア・オルタ(p3p006693)は仲間達に告げると罠設置へと向かう。
 グラボスファングが逃げるであろう山側にはアカツキが、草木に隠れる程度に縄による罠を置き転倒を誘う目論見だ。
 これを二重三重にして、耐久性を高めた。
「いつまでも我が物顔で田畑を荒らさせない。
 狩人の前に出た獲物がどうなるか身を持って思い知るがいい」
 アルテアは戦場になると睨んだ田畑の周囲に罠を設置する。
 アカツキが仕掛けたような縄仕掛けの罠をいくつかと、小さな落とし穴を掘る。罠設置スキルによって巧妙に作られた罠は、確かな仕掛けとして用意することができた。
「多種多様に見える混沌の生態系でも、此処まで変異種が多発するっていうのは珍しいみたいだな……?」
 よくない事の前触れか。変異種に対する警戒を持ちながら、『世界喰らう竜<ワールドイーター>』ヨルムンガンド(p3p002370)が呟いた。
 村人達を安心させるのが先決だな、と気合いを入れる。
「グラボスファーング。かっこいい。名前が。
 ……まあそれはおいといて、逃げるとか厄介にゃー。ちょっと気合い入れてやらねーとにゃ」
 八重歯を見せてそう言うのは『リグレットドール』シュリエ(p3p004298)だ。ノリは軽いが、よくグラボスファンの情報を理解していた。これから起こる事態を想定して、どのように戦うか思考を巡らせる。
 個々人に思うところはあれど、その考えに共通するのは村を凄惨なまでに痛めつけたグラボスファングを野放しにはできないということだ。
 準備を終えたイレギュラーズが、その田畑へと足を踏み入れると同時、視界に飛び込んできたのは、恐るべき殺気を放つ狂獣の姿である。
「あれがグラボスファングか」
「これは……結構な相手だな……!」
 相対して分かるその恐るべき力。油断すれば一息にやられてしまうかもしれない。
「よし、行くぞ――!」
 意を決したイレギュラーズが武器を抜き、間合いを詰める。
「ボオァァァ――!!」
 詰め寄る殺気を感じたグラボスファング達が咆哮を上げる。
 それはまるで、新たな獲物が来たことを喜ぶかのような、喜色に満ちた咆哮だった――

●狂獣グラボスファング
 禍々しく巨大化した雄々しい牙を武器に、グラボスファングの群れが突撃を繰り返す。
 野生の魔物とはいえ、そのスピード、破壊力は並の魔物の比では無い。イレギュラーズを翻弄するように繰り返される突撃に、イレギュラーズの肌が朱に染まっていく。
 これだけの力を持った相手だ。素人の自警団では手も足も出なかったのは想像に難くない。
 だが、いま対峙しているイレギュラーズは荒事専門のプロだ。想定外の力を前に虚を突かれたとしても、立て直せるだけの力がある。
「数が多くてなかなか鬱陶しいにゃー」
 シュリエが愚痴りながらもグラボスファングに対して優位が取れる位置取りを心がける。
これは仲間の範囲攻撃を打ちやすくする為でもあり、その狙いは見事に決まったといえるだろう。
「凶暴な魔物でも、この毒には抗えないにゃ――!」
 それは、シュリエがいた世界でかつて猛威を奮った大蛇の化け物の毒袋を携えた右腕から生成される猛毒。突き立てた爪から注入される致命的な毒が、グラボスファングの一体に見舞われる。
 硬い皮膚を突き破り恐るべき毒を注入されたグラボスファングが涎を撒き散らしながら暴れる。見事に効果が発揮された証拠だ。
「背後に気をつけろ――!
 隙を見せればすぐ飛んでくるぞ!」
 戦いは乱戦となっている。
 アカツキは視野広く敵を見据えて、奇襲を受けないように立ち回りながら、仲間にも声を掛けていく。
 狙うは仲間が狙う一匹。集中攻撃で各個撃破し、数を順調に減らしていきたいところだ。
 山側を背にクイックアップとヘヴィーランカーで自身を強化しているアカツキは、グラボスファングの隙を見て、肉薄戦に挑む。
 鋭い踏み込みから拳と脚を連続で叩き込めば、衝撃にグラボスファングの身体が浮き吹き飛んでいく。グラボスファング達が固まり、間合いを計った。
 そのタイミングを義弘は見逃さない。
「オォォ――!!」
 裂帛の気合いと共に踏み込んだ義弘の暴風とも言える格闘の連打がグラボスファング達を襲う。戦鬼の如き乱打にグラボスファングの群れが怯んだ。
 義弘はこのチームの核ともいえる。数の多いグラボスファングをまとめて薙ぎ払うダメージディーラーだ。
 ポテトの支援を受けながら、まさに肉弾凶器の如し、殴り、蹴り、ぶん投げる。多数の獣相手に一歩も引くこと無く己の肉体をぶつけていく。
 反撃の突き刺しにその身を貫かれながら、カウンターで拳を横腹に叩きつける。岩のように硬い拳が、グラボスファングの硬い皮膚にヒビを入れ衝撃ままに殴り飛ばした。
「作り出すは、不倒の意志の顕現 誰かを守る絶対の鎧!」
 悠凪が自らに折れぬ意思と立ち続ける意思を確かなものにする。
 そうして高められた防御技術を攻撃へと転化し、グラボスファングの突進に合わせ、強烈なカウンターを見舞う。
 当然ながらグラボスファングの突進によって、自らも体勢を崩されることになるが、それに合わせて放たれるレジストクラッシュが、グラボスファングに行動阻害を与えていく。
 防御を重要視した悠凪の立ち回りは、グラボスファングの攻めを容易なものとはせず、そのカウンターによってグラボスファング達が攻めにくい状況を作り上げていった。
 ハイセンスと直感を信じながら狙撃点を移動するのはノエルだ。
「この位置、貰いました――!」
 グラボスファングの群れな横並びになった所を狙い、即座に弓を射る。
 放たれた矢が、深く強かに敵を抉る死の凶弾となって、グラボスファングの群れを穿ち貫いた。
「本来の貴方達であればこのまま見過ごす事も出来たでしょう。
 ――ですが、今の争いと血を求める貴方達では話は別です。
 これ以上誰かを傷つけない様に確実に仕留めさせていただきます」
 立て続けに放たれるD・ペネトレイションが、次々とグラボスファングにダメージを与えていく。義弘と共に、このチームの火力を担うノエルの働きは十分すぎるものといえるだろう。
 保護結界を維持しながら戦うヨルムンガンド。単体攻撃に特化した彼女が、グラボスファング追い詰めていく。
「悪いが、順番に数を減らさせてもらうぞぉ……!」
 確実に数を減らしていきたいところではあるが、その主力となる攻撃は慈悲深いものとなる。止めは仲間に任せることが多いが、大きく体力を削るときであれば、ヨルムンガンドもその力を隠さない。
 秘められし竜の力を解放し、突撃する。とてつもない暴力がグラボスファングを蹂躙し叩きのめす。
 その圧倒的な連撃でグラボスファングを圧倒する姿はまさにヨルムンガンドが竜であるという威容を示した。
「皆は私が支えてみせる。存分に戦ってくれ――!」
 ポテトが祝福を仲間達に囁いてく。充填される活力が、この戦いにおけるイレギュラーズ側の火力面を支えていた。
 グラボスファングの突き刺しや突進によるバッドステータスを癒やす術はないものの、考え抜かれた回復タイミングは的確だ。
 当然グラボスファングの攻撃によるダメージの蓄積は無視できるものではない。徐々にじり貧となっていくのが自明であるが、ポテトはその時間を遅延させ先延ばしにする。
 少しでも長く全員が戦えるように気を配られたポテトの技回しは、確かな力となってこのチームを支えている。
 ポテトの頑張りに応えるようにイレギュラーズの戦いは、一糸乱れぬ動きとなってグラボスファング達を追い詰めていた。
 イレギュラーズとしての経験が少ないアルテアは、しかし自身の設置した罠に的確にグラボスファング達を誘導し、罠による搦め手で戦っていた。
「さあ、こっちだ! ついてこい!」
 身体強化魔術を用いて敏捷性を補強し、俊敏な動きでグラボスファングの鼻先を狙って弓を射かける。
 攻撃された反応で、グラボスファングがアルテアに向けて走り出せば、すぐさま仲間の後ろまで全力で移動し距離を取る。
 打たれ弱い以上、この引き撃ちという手以外にはアルテアが正面から戦う術はなく、自らの戦闘力をよく理解した戦いであるといえよう。
 また高い反応を持つグラボスファングだが、先手を取ろうかと思えばアルテアの仕込んだ罠にかかり、上手くその機動力を発揮できずにいた。
 引き撃ちと罠。その二つをしっかりと組み合わせ戦力へと昇華できているのは、イレギュラーズとしての経験が少ないながら素晴らしいものと言えるだろう。
 こうして、イレギュラーズのまとまった攻撃が続き、一匹、また一匹とグラボスファングが地に倒れていく。
 勢いの衰えないグラボスファングだが、少しずつ数が減っていけば、その対処も容易くなっていく。イレギュラーズはフォーカスを合わせ、一体ずつグラボスファングを仕留めていった。
「これで……八匹目にゃ!」
 シュリエの爪による斬撃が飛来し、遠く離れたグラボスファングを引き裂いた。倒れ伏すグラボスファング。
 居残り群れているグラボスファング達はここにきて漸く察する。この相手には敵わないと。それは体力の弱っているものから順々に伝播するように、グラボスファング達の心に芽生え始める。
「逃げ始めるぞ――追い込め!」
 状況をよく見ていたアカツキが声を上げる。
 瞬時に義弘と悠凪が反応し、逃げようとするグラボスファングに詰め寄った。
 逃げる側のグラボスファングも必死だ。死にもの狂いの突撃が悠凪に迫る。突撃を受け止める悠凪の肌が突き刺された牙によって朱に染まる。
「もらうぜ――!」
 横合いから一足飛びに肉薄した義弘が恐ろしい速度の拳を叩き込む。衝撃波を帯びたその一撃にグラボスファングがショックを受けて蹈鞴踏む。
「これで!」
 悠凪が意思と抵抗力を破壊力に変換し、強かなカウンターを放つ。ショック状態のグラボスファングはこの一撃を無抵抗に喰らい、泡を吹いて絶命する。
「続いて逃げ始めますよ――!」
 長距離から狙いを定めていたノエルが声を上げた。その視線の先、逃げだそうと走り出すグラボスファング。射撃によって命を絶とうとするも、威力が足らない。
「戦うのが好きなんだろ……? かかってこい……相手になってやる」
 ヨルムンガンドが名乗りを上げてグラボスファング達の注意を引きつける。逃げるグラボスファングもこの挑発的な挑戦に思わず足を止めた。
 その隙を突いて、ヨルムンガンドとシュリエが挟み込むようにして移動をブロックする。二人がかりのブロックに、その凶暴性を持つグラボスファングも身動きが取れず、ただその牙を突き立てるだけだ。
 確実に一体ずつ倒すことにしていたイレギュラーズの作戦と、このブロックは相性がよく、的確にグラボスファングを仕留める形となる。
 だが、当然ブロックに回った者はグラボスファングの攻撃が集中する。
「くっ、そろそろ限界か――!」
 必死に仲間を支えていたポテトだったが、残り半数以下となったところで、回復が間に合わなくなってくる。
 グラボスファング達も必死だ。よくここまで持たせられたものだとポテトを褒めるべきであろう。
 グラボスファングの死にもの狂いの突撃に、次々とイレギュラーズも膝をつき倒れ、パンドラの輝きに縋ることとなる。
 そして引き撃ちを続けていたアルテアは、自身の方向に逃げだそうとするグラボスファングを止めるために、挑発的な名乗りをあげた。
 これによって、一時的にグラボスファングのヘイトを稼ぐこととなり、打たれ弱いアルテアは、その鋭い牙の一撃を受け、倒れることとなる。
 一人戦闘不能となったイレギュラーズだが、その頃にはグラボスファングの数も大きく減らすことができていた。
 優位な体勢のまま、最後の一匹になるまでグラボスファングを追い詰めていく。
 一匹、また一匹と、順番に傷を負わせ倒していく。
 そうして、最後の一匹となれば、イレギュラーズは残された力を出し切って、グラボスファングへと致命打を与えた。
 確かな一撃に、グラボスファングが倒れそうになるが、魔物としての維持か、最後の命の輝きを持って山へと走り去っていく。
 だが、そこにはアカツキの仕掛けた罠が残っている。
 足を引っかけ倒れたグラボスファングは、イレギュラーズとの戦いの傷の重さから起き上がることはできず、そのまま絶命するのだった。
 最後の一匹の死を見届けたイレギュラーズは、漸く一息ついて村へと戻った。
 こうして、ペルトス村を襲った狂獣グラボスファングは退治されたのだった。

●悪意のカケラ
「これでよし……」
 戦い終えたイレギュラーズは傷を癒やすと、グラボスファングとの戦いで亡くなった、ローレッティア自警団の若者を弔った。
 悲しみに暮れる村の様子を眺めながら、義弘が誰に言うでもなく呟いた。
「しかし、動物が凶暴化したなんてのがこんなに続くなんてなぁ……」
「同じような報告がいくつか上がっていますからね」
 義弘のぼやきに同意するように悠凪が頷く。
「誰かに操られているとか、そういった様子はわからなかったなぁ……」
「凶暴な魔物って感じだったにゃ」
 ヨルムンガンドとシュリエも戦いを振り返りながら、グラボスファングの様子を口にする。
「よく調べてみましょう。
 各地で起こる変異種事件の手掛かりが少しでも見つかれば良いのですが……」
「そうだな、なにか見つかるかもしれない」
 ノエルの提案にアルテアも同意して、グラボスファングの死体を調べることにした。
「村人からは特に変わった情報は得られなかったが……さて」
 アカツキが丹念にグラボスファングの死体を調べていく。
 その表面、毛をどけて皮膚を調べる。
 足先から身体へ、特徴的である頭部の牙周囲。
 ――もし、これが『作品』ならば、サインが残されている可能性はある。
 それはアカツキの直感的なものだ。
 手術痕に類似するような縫い跡など、某かの特徴があるのではないかと睨んでいた。
「これは――」
 果たして、それは発見される。
 特徴的な牙、その根元に残されていた縫合痕。切り開いて見てもそれと分かる情報はなかったが、明かな人為的な関与が示されるものだ。
 で、あるならば。
 今、続々と報告に上がっている類似事件は、何者かの手による事件だと言うのだろうか?
 この疑問を解く術を、今はまだイレギュラーズ達は持ち得ないのだった――

成否

成功

MVP

楔 アカツキ(p3p001209)
踏み出す一歩

状態異常

なし

あとがき

澤見夜行です。

事前の罠設置や敵対処の方法などとてもよかったと思います。
やはりちょっとBS対策が足りてないようにも思えましたが、パンドラ復活によって戦線も崩壊せずに最後まで行けたように思えます。

MVPはプレイングで手術痕とピンポイントな指定をしたアカツキさんに差し上げます。良い狙いでしたね。

依頼おつかれさまでした!
引き続き<悪性ゲノム>をお楽しみください!

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