PandoraPartyProject

シナリオ詳細

セイラム魔女裁判Ⅱ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ある獣人の不幸の始まり
 昼下がりのローレットギルド。平和なひとときを切り裂く様な女性の悲鳴。
 とあるブルーブラッドのギルド員の袋から取り出したものを見るやいなや、ギルドの女性陣は迷わずこう叫んだ。

「下着泥棒よ!」

 違う、誤解だ。
 そのブルーブラッドは咄嗟に弁明しようとするが、女性陣は聞く耳を持たない。
 事実、彼の手に握られているのは。女の子の、それも子供が着用する様な“ぱんつ”だ。もこもこやわらかいぱんつ。
 彼はギルドの仲間に手をあげる事を躊躇い、そのまま大人しく拘束されるのであった。

●プライバシー保護の為、彼の名が明かされる事はありません
「えーっと…………今回は、匿名希望のE・Wからの依頼だ」
『黒猫の』ショウ(p3n000005)。彼は困惑した表情のまま懐から何かを取り出し、それをテーブルの上へと置いてみせた。
 テーブルの上にはサンドバザールで使われる包装……と、それにくるまれたクマの刺繍が入った布切れ。もとい、初々しい少女チックなくまさんぱんつ。
 イレギュラーズの一人が怪訝そうにショウへ視線を向けると、心外だと言いたげにショウは咳払いを一つこぼした。
「サンドバザールでローレットギルド員の下着が大量に売られているのは知っているかい? エデぃ――いや、E・Wはそれを偶然手に入れてしまったんだろう」
 実質福袋状態のサンドバザールの品々だ。話題の一環として、わざわざギルドの中で開けてみる者も居るワケである。
 しかし市の品には時々如何わしいものが混じっている。女の子のパンツなど広げてみせた日には「ギルド員のタンスから下着を盗んだ!」と勘違いされるに容易い。
 ――まぁ、彼の性格からしてそんな事はしなさそうだが……それでも魔が差したのだと女性には映るのかもしれない。
「何処で手に入れたか知らないけれど、女の子の下着を勝手に売買するなんて許せない商人達だね。一つ、見せしめとして懲らしめてやってほしい」
 ショウは自分のパンツも取引されているなどとは、露とも思ってない様子であった。

GMコメント

 せいらむまじょさい、ぱんつ。
 稗田ケロ子です。ネタ依頼だよ。シリアス? それ品切れ中なんですよ。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●成功条件
『E・Wの下着泥棒という冤罪を晴らせ』
 これが第一条件。他は副次的なもの。

●NPCデータ
E・W:
 ブルーブラッドの『E・W』。いったいだれなんだ……。
 ギルドの奥にて、女性陣から監視状態中。たぶん罪を認めるか、冤罪を証明するまで帰してもらえない。

商人セイラム:
 ラサの放浪商人。守銭奴で、ちょっとヤなヤツ。
 過去の依頼(『ラサの商人より真心を込めて』)でギルドに一度来た事があり、今回も『第一回サンド・バザール!』に参加していた模様。
 エ――E・W曰く、サンドバザールでこいつから品物を買ったとの事。この件について何かしら知ってるはずである。サンドバザールの会場に居るはずだ。証人として呼び寄せよ。
 証人喚問の方法は、実力行使なり口車に乗せるなり罠にハメるなり誰かのパンツ渡すなり。

 証人喚問後ギルド内で裁判じみた事が行われたとしても、自分は下着なぞ盗んでいないとノラリクラリ躱す事だろう。
 E・Wの冤罪は晴らせても、上手くやらなければ彼が下着泥棒の一端を担っていた事実は証明出来ないかもしれない。
 各自スキルやギフト、あるいは行動によってどうにか追い詰めるべし。

  • セイラム魔女裁判Ⅱ完了
  • GM名稗田 ケロ子
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年11月02日 23時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヴェノム・カーネイジ(p3p000285)
大悪食
ジョゼ・マルドゥ(p3p000624)
ノベルギャザラー
グレイル・テンペスタ(p3p001964)
青混じる氷狼
松庭 黄瀬(p3p004236)
気まぐれドクター
悪鬼・鈴鹿(p3p004538)
ぱんつコレクター
イーディス=フィニー(p3p005419)
翡翠の霊性
鴉羽・九鬼(p3p006158)
Life is fragile
ワルド=ワルド(p3p006338)
最後の戦友

リプレイ

●ブルーブラッド達の受難
「いや、何も疑ってるワケじゃなくて。下着泥棒ってのがいるのは確かだろってもんでさ」
 エ……E・Wを軟禁しているギルドの女性陣を目の前に、ダチコーのジュノーと共にそう宥める『ノベルギャザラー』ジョゼ・マルドゥ(p3p000624)。
 彼らが主張するところでは、盗んだ奴は別に居るのだろうという推測である。
「……下着を持っていた……当人にも……話を聞きたいんだ……ここから連れ出さないことを……約束するから……少し……話をさせてくれない……かな……?」
 『青混じる白狼』グレイル・テンペスタ(p3p001964)もジョゼと一緒になってE・Wとの面会を要求するのだが、女性陣は明らかに難色を示す。
「そういって、エディさんを逃がすつもりなんでしょう?」
 彼女らはE・Wが軟禁されている部屋の前に仁王立ちしながら、その様に拒絶した。E・Wに面会するにも証拠品のパンツを手に入れるにも、一先ず彼女らをどうにかしなければならないのだが、これが中々難儀する。
「うーん。きみらが彼を犯人と断定する、その理由を聞かせてくれないかな?」
 『気まぐれドクター』松庭 黄瀬(p3p004236)は、宥める様に彼女達へ質問を投げた。
「紙袋から女の子の、しかも使用済みのパンツを取り出したんだもの。誰だってそう思うじゃない」
 彼女らの言葉に対して軽い調子で笑ってみせる黄瀬。
「ぶっちゃけぱんつなんて大量生産品だし、似たようなものは山ほどあるんじゃないかなー、って思うんだけどね」
「つーかショウとかレオンのぱんつも売られ、んぐっ」
 ……何か言い掛けてダチコーから口を塞がれているジョゼはさておき。黄瀬はそれがギルド員の物だという確たる証拠が無いと言いたい様だ。女性陣は、その意見を詭弁だと反論を言い連ねようとした。
「そこで、だ。こっちの子達はそういうのを確かめる技術に長けていてね。どうだろう、一つ調べさせてくれないかな」
「不正が心配なら、私が立ち会うの」
 女性陣が何か言い出す前に、話を振られるジョゼとグレイル。『色欲憤怒の三つ目怨鬼』悪鬼・鈴鹿(p3p004538) は、一人の女性として彼らが何かしでかさない様に立ち会うと保証した。
 女性陣は些か怪訝そうにしながらも、「そういう事ならば」と証拠品のくまさんぱんつを鈴鹿に手渡した。ジョゼとグレイル、そして見張りの鈴鹿が女性陣から距離を取り、下着を調査しようとする。
「二人とも、鈴鹿が見張っておくから存分にそれを楽し、もとい調べるの」
 でも調べるたってどうやって?

「……え……これを……嗅ぐの……? ……本気でやるの……? ……絵面的に……大丈夫……? ……今度は……僕が容疑者とか……嫌だよ……?」
「変に誤解されなきゃいいんだが……」
 くまさんぱんつをグレイルは匂いを嗅ぎ始め、ジョゼは注視するハメとなった。
 ジョゼとグレイルの得意分野を考慮すれば、それが合理的であった。――合理的だったのだが……青年ブルーブラット二人が女の子の下着の匂いを嗅いだり凝視したりする光景はかなり気まずいものがある。
 何故だろう、遠巻きに様子を見ていたダチコーの視線が針の様に刺々しく感じられた。
「エディさんの気持ち……なんとなく……理解出来た気がする……」
「……あぁ」
 二人は、不本意に冤罪を仕掛けられたであろうE・Wの胸中を察する今日この頃である……。

 一方、他のイレギュラーズも女性陣の注意を引く事も兼ねてE・Wとの面会を女性陣に申し出ている。しかし相変わらず、E・Wが犯人なのだからという理由で拒絶されていた。
「適当な事を言うのはやめましょう」
  ワルド=ワルド(p3p006338) は、頑なにE・Wを犯人扱いする彼女達に対して諌める様に言った。知り合いが下着泥棒扱いされるのはあまり気がいいものではない様子である。
「何よ、女の子の下着を持ってたんだから決定的じゃない。凛々しいふりして、きっと普段から女の子をそういう目で見ているに違いないのよ!」「そうよそうよ」
「……適当な事を言うのはやめましょう」
 流石にこの物言いは聞き捨てならぬとばかりに、目を見開き女性陣を睨みつけるワルド。
「疑うのは自由です。しかし理由を聞かず、証拠も無い。こんな状態で糾弾するのは色々間違ってませんか? 正義ぶるのも大概にしてください」
 そうドスを利かせた声で囁いて、彼女達を黙らせた。ワルドは、満足気に瞳を閉じる。
「わかってもらえたようです」
「ははは……怒れる婦女子を黙らせるなんて、キミ結構やるね」
 ワルドの前で余計な事は言えないな、と内心で苦笑する黄瀬であった。

●商人の受難
 ――何も複雑な事は無い。ギルドで話題になっていたから話の種になるだろうと、闇市で買った袋の中身をギルドで確かめてみればこのザマだ。取引をした場所は……。
 女性陣がワルドに凄まれて怯んでいる間、グレイルは隙を見てE・Wと接触を図りこの様な返答が得られた。あと、軟禁状態で酷く疲弊していたのかグレイルのギフトに肖ろうと頻りにモフってきた。
 下着を調べた結果も、――まぁ、これも匿名扱いとしよう――とあるギルド員のものだという事が分かった。推測される経路もE・Wの証言と違わない。
「しかしまぁ、宝石と等価のパンツとかスゲェよな……。闇市パネエ」
「……あんまり見ないで下さい」
 洗濯カゴに放り込まれたぱんつを感慨深そうに見る『翡翠の霊性』イーディス=フィニー(p3p005419) 。彼(女)の言葉通り下手すれば命がけの仕事より相場が高い時もあるのだから、ぱんつマジパネェ。
 『Life is fragile』鴉羽・九鬼(p3p006158)。彼女 の作戦曰く、これら(自分の物含めた)ぱんつをセイラムや窃盗犯が通りそうな道へ置いて罠にハメるという次第であるが、そんな高値が付く事を知れば彼ら以外でも魔が差すかもしれない。
「それにしてもE・Wさんは迂闊すぎて草しか生えないの。パンツハントしたのなら陰でこっそり楽しむモノなの。……えっ、冤罪? てっきり同志かと……それはご愁傷様なの」
 ……事実として、所持品がぱんつで固められてるヤツが仲間に居る。 『色欲憤怒の三つ目怨鬼』悪鬼・鈴鹿(p3p004538) だ。
 何処でそれだけ手に入れたんだ……という仲間達の視線はさておき、彼女はセイラムという商人について考えを述べる。
「でもセイラムさんは鈴鹿が一度会った事があるから、話はしてくれると思うの」
「そうだね。ぼくもセイラム氏に不利益が生じることはないように進めるつもりだったけど」
 それぞれ商人セイラムとどう接触しようかと模索している所で。何かしらの手段で捕まえようとする者、穏便に話し合いをする者で意見が別れた。
「商人らしい狡猾さを持つが臆病で感情が態度に出やすい。総じて『若い』感じすね。付け入る隙はありそうスけど」
 過去の報告を見聞し、そんな感想を抱く『簒奪者』ヴェノム・カーネイジ(p3p000285) 。
 緩急剛柔使い分けと言えば聞こえは良いが、下手すると萎縮するか反感を抱くかで中途半端になってしまいそうなのが難しい所である。出来れば此処で方針を一方に定めておきたい所だが……。

「私は落とし物拾っただけデスヨォー!!!」

 イレギュラーズが考えを巡らせていると、後方から甲高いキンキン声が響いた。何事かと駆けつけてみれば、どうやら洗濯カゴに手を掛けた不審者がジュゼのダチコーに捕まえられていたらしい。
「ジョゼ。こいつだよな? この絵に描いてある」
 捕らえられていたのはフィニーの描いた人相画と瓜二つの人物である。彼が『商人セイラム』らしい。その手にはしっかりと九鬼のぱんつを握りしめていた。
「お手柄だぜジュノー。さて」
「あぁ、貴方ですか! 私は下着泥棒なんかじゃなくてただの善意の商人だって言ってヤッテ下さいよ!!」
 セイラムはジョゼを見やるや、すぐさま助けを求めた。前に会った際に顔を覚えられていたらしい。しかしジョゼは商人をえらく冷めた目で見つめる。
「いや、お前窃盗犯だろ。ギルドからぱんつ盗んでたみたいだし」
 無機疎通を使ったせいか、その辺りは思っくそ把握していたジュゼ。イレギュラーズ一同はセイラムに対して白い眼差しを向け、当の商人は脂汗を垂らしながら目を泳がせている。
 九鬼は自分のぱんつが握られているのを確認しつつ、咳払いしたのち事の内容を説明し始めた。
「貴方の店から下着を買ったえ……E・Wさんが下着泥棒って疑いを掛けられたんですよ……だからその冤罪を晴らす為に貴方を探していました……」
「そういう事。円満解決したらきみの店の事を良く言っておくから協力してくれないかな?」
 無論、セイラム氏には不利益が生じない様に約束する書類を用意するという黄瀬。
 不利益が生じないと約束され、怯えていたセイラムは口を開いた。
「E・W? ……アァ。彼ったらそんな疑いを。でも私は商品を提供しただけの商人デスシ」
 イレギュラーズ達の言葉に対して自分は関係無いと返す商人セイラム。此方を伺う様な態度から見るに、協力して欲しければ自分のやってる事も黙認して欲しいと言いたげである。逆に言えばE・Wの冤罪を晴らす事だけならば抵抗する素振りも無い。
「もし鈴鹿達のお願いを聞いてくれたら悪い様にはしないの」
 鈴鹿はダメ押しとばかりにセイラムの耳元で息を吹きかける様に囁いて、自分の持っていた下着を見せた。セイラムはそれを目の前にして色めきだった。……鈴鹿自身の色気に魅せられたというか、その手に持っていた乙女のぱんつを目にしたら、まぁそれを扱う商人にとっては垂涎モノかもしれない。
「交渉成立だね。それじゃあ、ギルドへ行こうか」
 黄瀬はしたり顔で書類を書き上げてから、セイラムを連行した。もっとも、事の仔細を知ったギルドの女性陣がどう出るか保証し切れないところだが。

●続・商人の受難
 ――これよりE・W被告の裁判を始めます。

 ギルドへ戻ってきたイレギュラーズとセイラムを出迎えたのは、テーブルを並べ立てて裁判所に見立てた『魔女裁判』じみた執り行いだった。
 下着泥棒を断罪しようという、鬼の形相を浮かべた女性陣らの視線が(主に男性陣へ)突き刺さる。
 ――貴方が証人ですか?
 ギルドの女性陣の厳しい目つきが商人へと向けられた。商人の獣耳が、怯えた様に縮こまる。
「えぇ。私が商人で、いえ証人で……あぁ、これは、エェット。ソノ……私は関係無」
「此処の会話は商会連合の耳に入る可能性がある事を言っておくす」
 無関係を言い出そうとしたセイラムに釘を刺すヴェノム。彼女の手にラサの大商人、アルパレストの紹介状があるのを見てセイラムは言葉を飲み込んだ。
「アー、はい、そうです。その下着はサンド・バザールの闇市で出回っていたものかと」
「他の商人からも、その辺りの言質は取っておいたぜ。闇市で購入したもんに間違いねぇ」
 情報を重ねる事でその証言を補強するフィニー。それに女性陣が一斉にざわついた。
「エディさんにそんな趣味が?」「サンド・バザールの人達も変態の集まりだったの……?」「さっきぱんつ受け取った二人も何かしてたみたいだし……!」
 何か新たな誤解が生まれているのを見て、グレイル達が言葉を挟む。
「……えっと……この下着は……偶然手に入れてしまったもの……だよね……闇市だし……何が出てくるか……分からないからね……」
 被告人席に座らされていたE・Wは肯定する様に無言で頷いた。
「商品として職員の下着が売られていた、のは間違いないスけど。闇市の品にランダム性があるのは、出向いた事がある職員なら知ってるはずス」
「そうだね。ぼくだってさっき『仕入れたてホヤホヤだよ』って売り文句でサンドバザールで買ったら入ってたおっさんのぱんつなんだけど。これをみてどう思う? おっさんのぱんつだよ? これも盗んだならそっちの人の方がやばくない?」
 おっさんのぱんつが出てきた事に大して、別の意味でまた女性陣がざわついた。……しばらくして本題に戻る様に、イレギュラーズの言葉を否定する声が飛ぶ。
 ――意義あり! E・Wさんが手に入れたぱんつが闇市で買った物だという物的証明がありません!
「待った、て言えばいいんスかね? E・Wさんが買ってきた袋とそこの証人さんの店で買った袋が全く同じ物だったスよ」
 連行する途中で買っておいた袋を取り出すヴェノム。ギルドの女性陣はセイラムを訝しげに睨みつけた。続けて、ヴェノムはこれらの袋を誰が詰めたのか問いただした。不明なのか、商会なのか、セイラム自身のいずれなのか。
「あーーーーー……」
 ヴェノムが言わんとする事を察したのか、ここで商人の様子が少し変わった。しばらく逡巡した挙げ句、薄ら唇を歪める。
「企業秘密って、事でイイですかね。闇市の品を誰が仕込んだかなんて言えば私にとっても”商会にとっても”不利益ですし」
「……こいつ」
 商会の不利益を盾にしてその証言を拒んだ。ワルドが脅す様に睨みつけても、セイラムは悪びれない様子で視線を逸す。
 闇市の品について、その出処や入手方法について公に言えない物がたまに混じっているのは周知の事実である。いわばその責任が自分や商会に及ぶ事は頂けない、というのが彼の建前だ。実際の所は自分が窃盗犯だと疑われる証言は避けておきたいのだろうが。
「まぁ、それでいいスよ。こっちは商品管理の不備の指摘と、連合の窃盗関与の可能性も指摘してるんスが」
「……商品管理は確かに不徳の致すところデスガ。商会の事について私が言える事はアリマセン」
 あくまで商会の不利益を盾に、セイラムは再び証言を拒んだ。黄瀬と交わした書類をチラリと見て、商人は再び口を開く。
「そこのエ……被告人さんが闇市で買った事やその時に商品の中身が確認出来ない物だった事は証言しますが、それ以外に私は知りません」
 そしてこれ以上何も言うつもりは無いという表情で黙り込む。それから先の事を追求するのは黄瀬が取り付けた約束を反故する事にもなるだろう。
(かといって下着泥棒を野放しにしておくのもなぁ……)
 ジョゼは此処でセイラムが窃盗犯であると告発する事も考えたが、そうなるとこの商人が全力でE・Wへの冤罪を並べ立ててくるのは明白である。
 セイラムとイレギュラーズの間にイヤな沈黙が流れていると、鈴鹿が不敵に笑い出した。
「……フッ、そう全ては鈴鹿がギフト使い盗んだもの。ククク、鈴鹿こそこの幻想一のパンツハンターなの! 『パンツカモン!』」」
「!?」
「私の下着……!!!」
 鈴鹿は唐突な自白を始めた。E・Wに冤罪が及ばぬ様にと自爆特攻を企てたのである。
 手元には先程使った九鬼の下着がいつの間にか握られていた。セイラムの手元から引き寄せたのか、誇らしげに周囲へ見せびらかしている。嗚呼、男性陣含めた気まずい視線が九鬼のぱんつに注がれる……。
「あ、そこの商人さんはぱんつを買取ってくれるって約束してたの」
「ぶえっ!?」
 その自爆特攻に巻き込まれる形になるセイラム。「話が違うぞ!」と黄瀬へ掴みかかろうとするが、ギルドの女性陣は既に商人を取り囲んでいた。
 ――商人さん、少しお話をお聞きしましょうか。
「…………。あ、あははは……」

●黒猫の受難
「私の……私の下着……」
 さて、九鬼のぱんつ窃盗の現行犯という事で二人は奥へと連れて行かれる事となった。事情聴取という名の軟禁である。まぁ商人はともかく、鈴鹿は女性だしタブン大丈夫だろう。
「……少し、かわいそうだったね……」
「まぁ、窃盗犯にはめっちゃ反省してもらうってことで。ジュノー、一杯あとで奢るぜ」
 喚きながら奥へ連行されていく商人セイラムを見送るグレイルとジョゼ。代わりに解放されたのがE・W……じゃなくて『狗刃』エディ・ワイルダー(p3n000008)、
「面目ない所を見せたな。感謝する……」
 彼はイレギュラーズに対して、真面目な顔つきで礼を述べた。
「同じローレットの仲間ですし」
「ワルドくんの言う通りだよ。それにいつも遊ばせてもら……げふんげふん。お世話になってるし」
 黄瀬はその生真面目なエディの様子に思わず口を滑らせかける。
「案外不用心な所あるんスね。先輩可愛いス」
 ヴェノムはエディの顔を両手で挟み込んでもみくちゃにする。顔面を好き勝手に揉まれ、神妙な表情のエディ。あまりこういうスキンシップは慣れていないのだろうか。
「マジで災難だったな。今度から、闇市の品はその場で開封する事をお勧めしておくぜ」
「あぁ、そうするとしよう……」
 フィニーの言葉に静かに頷いたエディ。了承してもらえたならばこれ以後、同じ様な事件はきっと起こらぬだろう。
 ともかく彼の冤罪は晴れたと、仕事を持ってきてくれたショウへ報告をしに行くイレギュラーズ。
「やぁ、無事に冤罪が晴れた様だね。何よりだ」
 イレギュラーズの報告を迎え入れる黒猫のショウ。しかし彼の表情は沈鬱そのものであった。何故だろう。
「なんだ、お前がそんな重苦しい顔をするなんて。大きな事件が起こったのか?」
 エディは彼にそう問いかける。ショウは、新たな依頼を頼みたいという素振りで口を開き始めた。


「…………ボクの下着が見当たらないんだけど」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 稗田GMです。お待たせしました。
 エディさんのギルド内の評価は、また以前通りに戻ったみたいです。

 対応の方向性にて、統一していない部分が裁判時に影響が出て雲行きが怪しくなりましたが、二人の尊い犠牲(自爆特攻とぱんつ犠牲)で辛勝という事で。
 この商人さんも今回の事で反省せず、また変な事件でも起こすかもしれません。

 ……ところでショウさんのぱんつ、なんであんな高値なんでしょうね。

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