シナリオ詳細
<悪性ゲノム>ダームスヴルヴァリン
オープニング
●ある害獣駆除業者の話
やあ、よく来てくれたね。俺の経験を聞きたいんだって?
随分暇していたからね。さあ座って。何か食べるかい。
そうだな、俺が害獣駆除の専門業者だっていうのは知ってるかな。
ネズミだとかトリだとか、タヌキや野犬なんかも扱ってるよ。
畑を食い荒らしたり、人を襲ったり、家畜を食べちまったりする害獣を退治するのが仕事さ。
土地柄よく相手にしてたのはクズリかな。
あー、他の言葉で説明しづらいんだが、クロアナグマとかヴルヴァリンって呼ばれる害獣さ。狼みたいな顔と黒い熊みたいな毛皮が特徴でね、そう大きくはないんだが、熊すら喰っちまうような凶暴な動物で、家畜や畑は当たり前のようにやられちまう。
だからそれなりに腕が立って、知識の豊富な専門業者が必要になるのさ。
土地?
ああ、ダームストだよ。ここから少し南にいった所にある。
山がすぐそばにあって、よくクズリの被害をうけていたんだ。
その時もたしか、クズリに家畜がやられたってんで駆除依頼を受けたんだ。
けど今思えば、あれはクズリなんて呼べる動物じゃあなかったなあ……。
山に分け入っていくとクズリの巣がある。
フンが集中していたり、木にひっかいた傷があったり、草が集中的に踏まれていたり……まあ判別する方法は色々あるんだがね、その時見つけた巣は様子がおかしかった。
デカいのさ。
想定されるクズリがでかすぎた。
一言でいうと熊レベルさ。立ち上がったらヒトと同じくらいになるんじゃないかな。そのくらいのサイズをしたクズリがそこには生息していた。
おっと、勘違いじゃない。これでもプロだ。この目で見もしたし、間違いない。
あれは巨大なクズリだった。それも、見たことが無いくらいに巨大化したやつらさ。
数は10匹以上はいたかな。
まあその時はただデカイのが数匹いるだけだろうと踏んで、さっさと終わらせようとしちまった。
ああ、反省してるよ。軽い気持ちでこの仕事をしたことにさ。
まず……クズリ用の毒はまるで効かなかった。頑丈なやつもタフなやつも大体は殺せた毒なのに、まるで通用しなかったんだ。
仕方ないからって持ち込んだ銃で殺そうと試みたんだが、奴ら……毛皮で銃弾を止めやがった。
俺に気づいて凄まじいスピードで突っ込んできて、爪でずば――と。
●被害者
『このとおりさ』
害獣駆除業者は包帯だらけの身体で苦笑いを浮かべた。
彼の腕は肘から下が無くなっており、足も無残に切り裂かれている。
「とはいえ、仕事を受けちまったのをフイにはできないだろ。俺が持ち帰った情報と、数倍の報酬。これであのクズリを――いや、『ダームスヴルヴァリン』を駆除してくれ」
ベッドの脇に座っていた『黒猫の』ショウ(p3n000005)が肩をすくめて見せた。
「たいしたプロ意識だよね。
要するに、僕らへの依頼は業務の引き継ぎであり。『ダームスヴルヴァリン』の駆除ってわけさ。
注意すべきは爪と牙。そして俊敏さと頑丈さだね。
ダームスヴルヴァリンは素早い動きで的確に攻撃をしかけ、爪や牙による出血を狙ってくる。
毛皮の頑丈さよりも肉体そのもののタフさが強みみたいでね。再生能力とある程度の復活能力を持っている。倒すときはバランス配分にくれぐれも中止してやってくれ」
ショウはそこまでの内容をメモにまとめると、イレギュラーズたちに突きだした。
「駆除業者さんも5日あれば元通りに回復するそうだけど……この後を追わないように注意してね」
- <悪性ゲノム>ダームスヴルヴァリン完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年10月27日 21時35分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●クズリならざるもの
ダームストの山中。小鳥の声がしないことに、『ポイズンキラー』ラデリ・マグノリア(p3p001706)は不気味さを感じていた。
簡単ににおいをかいでわかるのは、殺されたまま放置された動物の腐ったにおい。草をかき分けてみると、タヌキがきわめて乱暴に殺され、そのまま放置されていた。獣が食べるでもなく、小さな虫がたかるだけの不自然な死。
「胴体を真っ二つに切り裂くようにえぐり取り、ソーセージを食いちぎるように切断……しかしそのまま放置した。獣としての知性を感じない稚拙な暴力だ」
「ひどい……」
タヌキを検分したラデリと『布合わせ』那木口・葵(p3p000514)は口元を押さえた。
「最近は不思議な動物が増えてきてますね。ここまで頻発するとなると、何か人為的なものなのでしょうか」
「突然変異にしては多すぎる、何が起きているんだ?」
離れていた『朽譚の魔女』エト・ケトラ(p3p000814)が腕を緩く組む。
「普段は群れない貴方達、一体どんな繋がりなのかしら。竹馬の友? 睦み合う恋人? 血を分け合った家族? それ以外?」
ここにはいないクズリの変異体。通称ダームスヴルヴァリンのことを考える。
元々多数で群れを作る動物ではないという。凶暴化かつ巨大化したならばむしろもっと群れなくなる筈だが、自然のなりゆきに反して彼らは集まっているという。
「分からないわね、だからこそ救われるのかも知れないわ。結局のところ、殺し合うしかないのだから」
『Eraboonehotep』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)がおそろしく笑った。
「相手は異常発生と妙な進化を得た獣。特異な我等『登場人物』に相応しい駆除対象だと思考すべき。至極厄介な生命への狂暴に鉄槌を与え給え。まあ。我等『物語』は肉壁で消耗品だがな」
一方で、人形のボディを使ってあとをついていた『異世界饅頭』アリスメア=マッドナイト=ノート(p3p006588)。
「うえー、危険な敵だねー。でも害獣は駆除だよね、仕方ないね。ヒャッハー!新鮮な肉だー! ……なんて、ボクのボディにはならなさそうだけどね!」
『百獣王候補者』アレクサンダー・A・ライオンハート(p3p001627)が低く唸る。
「クズリとか言うと、厄介な連中だ。その凶暴さは、野獣王国の大型猫族に匹敵する攻撃力を持つと言うからな。厄介なヤマアラシやラーテルと似た種族でもあるしな。まぁ、わしらの本気をぶつけさえすれば、倒せない相手ではないのだがな」
そうは言ってみるが、熊ほどの大きさと恐るべき獰猛さをもったクズリとなれば話は変わってくるだろう。
アレクサンダーがもといた世界の事情とも、色々な面で異なるのだろうから。
彼は続けて言った。
「害獣を駆除か。人間からすれば、家畜以外の全ての獣がなると思うがな。視点を変えれば、益を与える相手が害をなすことにもなるからじゃ。狐なんか、農家からは感謝されるが、鶏を飼育している奴らからは、鶏を喰らう害獣じゃ。まぁ、何しろ、今回の相手は、自然界に存在するレベルじゃない相手だと言われるからな。どうにかしておかないとな。しいて言えば、このままだと、自然界がやばいがゆえにな。最近の一連の事件、変異生物共が大暴れしていて、どうにも、普通ではないと言われるからじゃ。流石に、放置できないレベルじゃ」
『ガスマスクガール』ジェック(p3p004755)がため息のようにガスマスクから息を吐いた。
「ナンて言うか、クマみたいダネ? ケガワ、売れるとイイな……その前にキズついちゃうカモだけど」
二人の意見はあくまで楽天的なものである。事前に得た情報から、討伐可能なだけの人数を揃えて山へ入っているからだ。
駆除業者はそれがなく、腕や足を失うことになった。命が助かっただけ奇跡とすら言えた。
「海賊時代はクズリの毛皮を何回か取引した事がありましたが、実物を見るのは初めてです。些か巨大ですが……」
無論。この人員構成は充分ではあるが絶対ではない。ぼたんの掛け違えやリソースの不足が重なれば、自分たちはこの山にダームスヴルヴァリンを残して敗走するかもしれないのだ。
絶対に成功する依頼なんてない。『咎狼の牙』リュグナート・ヴェクサシオン(p3p001218)はそれを肌で知っていた。自分たちの努力がいらないのなら、その辺の名も無き誰かに任せればよかった筈なのだ。意味が、運命があるのだ。
「彼等が異端種であるのか、早過ぎた進化の先駆なのか。浅学な俺には分かりかねますが、どのみち害獣を放置しておけば碌な事にはなりません」
何でも屋として受けた依頼の仕事であるという以前に、人類的義務感として、リュグナートは腰の剣を握りしめた。
●ダームスヴルヴァリン
事前に専門家の話を聞いていてよかった。
クズリの巣にあたる目印をおうことで、ダームスヴルヴァリンの居所を掴むことが出来た。
ラデリたちの接触方法はきわめてシンプルだ。
見つけて、駆け込んで、殺す。
詳しい個体数は判明していないが、10匹以上とみるべきだ。そう考えた葵は、駆け込んだ段階で数匹しか見えなかったら奇襲を警戒しようと考えていた。練達上位式を仕込んだぬいぐるみに後ろや木の上なんかを見て貰うというものだ。充分に警戒した8人の目に1人分増えたくらいの効果はあるだろう。
より効果的なのは――。
「臭う。そっちダネ!」
猟犬なみの嗅覚で回り込んだ個体の存在を察知したジェックが、素早くピボットターンしつつライフル弾をショット。
奇襲に失敗したダームスヴルヴァリンは大きな声をあげてジェックへと飛びかかってきた。
やぶれかぶれになった――のではない。
敵集団の背後に回ったのに奇襲に失敗したということはただ分断され孤立しただけということになる。その無価値状態に新しく価値をもたらすため、自らを囮にしたのだ。
つまり。
「他にも囮が居ることを示している」
ラデリは持ち前の反射神経で飛びかかってきたダームスヴルヴァリンにロッドを翳し、爪の直撃をさけた。食い込んだ爪はラデリの肉体を深く傷付けるが、激しい出血には至っていない。至近距離で観察してみると爪根元部分に『やすり』のようなものがついていて、傷口をメチャクチャにして出血を止まらなくさせる構造になっていた。直撃をくらえばまずい。
「…………」
目の前の敵をよそにするのは少々危険だが、振り返るようにして毒の薬瓶を巣の側に投擲。
こちらの狙いを察していたのか遭遇してすぐに散開しつつ味方前衛集団に組み付きにかかったダームスヴルヴァリン。そのうち三匹だけを巻き込んで広がった毒霧を、ダームスヴルヴァリンたちは口を噛むようにして耐えしのぐ。
直撃した個体が二匹。。抵抗によって振り払ったのが一匹。
毒状態も長くは続かないことと、ダームスヴルヴァリンの攻撃射程が近距離に限られていることから味方を巻き込みかねない範囲攻撃をやめ、ラデリは通常の魔術に切り替えた。
草むらに足を取られないように50センチほど浮遊したエトは、自らの周囲に優しい物語を展開しはじめた。
理由はダームスヴルヴァリンに組み付かれた葵とオラボナの援護である。
「さあ。物語を始めよう。貴様等の餌は此処だ。我等『肉』は美味だと知るが好い。脂質も上等の類。ああ。如何だ。肚が減るだろう。Nyahahahahahahahahaha!!!」
黒い津波のように押し寄せるダームスヴルヴァリンたちがエトたちのような防御力に乏しいメンバーに組み付かないように、オラボナは自らの存在範囲を拡張してダームスヴルヴァリンの攻撃を身代わりになって受け始めた。
オラボナは2~3人分のフォローが可能なほどの並外れた体力を有しているが、一方で回避能力や抵抗力に乏しい。ダームスヴルヴァリンの牙や爪を激しく食い込ませ、黒い血のようなものを激しく噴出していく。
エトはそんな彼の異常状態を塞ぐべく物語を展開。オラボナの奇妙な存在感と混じり合い、夕焼けと夜が混じったようなマーブル色に染まっていく。
その点、葵は事情が違った。
蛇紐の術を使い紐を蛇に変化させ、ダームスヴルヴァリンに攻撃をしかける。
「グズリ用の毒は効かないかもしれないですけど、この毒は一筋縄ではいきませんよ、縄だけに。……いやあの、言ってみたかっただけです、はい」
対するダームスヴルヴァリンも彼女に爪を食い込ませ、激しく出血させた。
持ち前の抵抗力で出血を自ら手当し、さらなる攻撃をしかける葵。
それを横目に、リュグナートは豪鬼喝を放って眼前のダームスヴルヴァリンを二匹同時に吹き飛ばした。
「貴方達の至宝、その命は我が双剣(きば)にて海賊らしく奪い取ると致しましょう」
魔剣を双方同時に抜き、揺らぐ波の魔力を伴ってダームスヴルヴァリンの腹を切りつける。
ただの斬撃ではない。彼の魔剣が纏った波の魔力と不浄を払う朱色の刀身が交わったことで毒術を生み、ダームスヴルヴァリンを激しくさいなむ。
EXF値の高い個体に対して毒攻撃は有効と言われている。再生能力もあるが、それを上回ってダメージを与えていくことで撃破を容易にできるのだ。
「ぬ。リーダーはどこだ?」
アレクサンダーがショットガンブロウで追撃を仕掛けに行く。
……が、そんな彼を阻むように別のダームスヴルヴァリンがアレクサンダーに食らいついていった。
獣どうしが噛みつきあい、殺し合う壮絶な光景が繰り広げられる。
「むむ……」
この時点で、アリスメアは自分たちの不利を察した。
それはダームスヴルヴァリンの特性に、自分たちの戦術があまり対応できていないという事実でもあった。
貴い犠牲(死んではいない)となった害獣駆除業者から得たダームスヴルヴァリンの特徴は、再生能力があり機動力と反応、命中、そしてEXFに優れるというものだ。
攻撃に致命や流血が乗っていて、命中力の高さからその効果を受けやすい点に関しては、エトのシェルピアをはじめとするBS回復スキルを充実させることである程度カウンターができていた。
しかしそれ以外の要素。つまり反応と機動力の高さを活かした統率のとれた動き……に対してはノータッチといってもよかった。
葵たちは基本法則でもある『味方の誰かが攻撃した対象に攻撃を集中する』という前提で動いていたが、ダームスヴルヴァリンはそんな彼らを円形に囲むように展開し、マークやブロックを用いて組み付いていった。
特に反応値が高いせいで先手をとられやすく、こちらの展開より先んじて動けることが相手の有利になったのだろう。
結果として、イレギュラーズは前衛チームが後衛チームをぐるりと囲む団子状の陣が敷かれ、その周りをダームスヴルヴァリンという皮で覆うような包囲状態が完成。ダームスヴルヴァリンを個体ごとに倒そうとするもうまく動けず、それぞれ眼前の敵に対応せねばならなくなった。
目の前で食らいついてくる個体を無視して真横の敵に攻撃していられるほど敵も優しくは無い。一方でダームスヴルヴァリンはイレギュラーズの前衛チーム全五名をブロックしたまま残る五匹以上を総動員して各個撃破ができるという状態である。
「むむむ……っ」
アリスメアもその状況を脱しようと名乗り口上による怒りの付与をはかってみたが、当たり具合があんまりよろしくない。元の命中力もあるがちょっと自分の中で工夫が足りない気がした(アリスメアの個人の感想である)。
一応密集状態にあるので数匹は怒り状態におとせるが、ダームスヴルヴァリン側が先手をとって配置変更ができるのであまり芳しい成果は出せなかった。
いや、リュグナートなどのダームスヴルヴァリン側にとってきわめて厄介な存在に戦力を集中させようとする行為を、自分側にいくらか誘い込むという意味では良い成果が出せていたともいえる。後衛の盾というより前衛の弾よけである。もっと言えばある程度無防備な状態で豊富な体力と反射能力をもったおかげでダームスヴルヴァリンにダメージを与える役目もこなせていた。
暫くの時間が過ぎた。
「誰が、このような存在に変えているのかじゃな? いや、今は考えている場合ではないな」
アレクサンダーが咆哮をあげ、ダームスヴルヴァリンに殴りかかる。
アリスメアも息切れをお越し血意変換によるスタミナ回復を始めている。
リュグナートは歯を食いしばり、流れる血を無視してふたふりの魔剣に魔力を流し始めた。
電流のごとくばちばちとなみうつ赤い魔力が、朱色の刀身に高熱の発光をおこさせ、蒼い刀身に燃え上がる熱風を起こさせた。
「ただの獣であるならば火を恐れるのでしょうが……貴方達はそれで怯むような可愛いげはないでしょうね! ならば代わりに死に至る毒を差し上げましょう、良い声で哭いて下さい」
切り裂いた傷口から炎があがり、ダームスヴルヴァリンは悲鳴を上げて倒れた。ぴくりと起き上がろうとするも、炎にさいなまれそのまま動かなくなる。
リュグナートは荒く息をつき、剣をにぎりなおす。
そんな彼に、ダームスヴルヴァリンの牙が襲いかかった。
それから暫くたって。
戦力の低下が致命的になりつつある。
仲間の数も減り、エトとラデリは仲間の回復に集中していた。
「これは……まずいな」
二人を保護しているのはオラボナだ。
そんなオラボナが致命状態になればラデリのアウェイニングで治癒し、ダメージの蓄積量が酷くなってきた段階でエトのメガヒールで回復する。
といってもダームスヴルヴァリンたちによるラッシュ攻撃は凄まじく、エトは結局目がヒールを連射するはめになった。スタミナ切れも目前だ。
「とっとと……ここからは戦術を変えないとダメかも」
「というと?」
アリスメアを文字通り盾にしてライフルで射撃をし続けるジェックが、声をやや荒げて叫んだ。
獣の叫びをあげてとびかかるダームスヴルヴァリンに、てやーといって頭だけで飛び込むアリスメア。開いた口に自らの頭部を押し込むようにして無理矢理ジェックを庇う。
そんなダームスヴルヴァリンから走って逃げ、ジェックは目を狙って撃ちまくった。(反応の高い敵に対して、庇い役と一時的に離れなければ攻撃できない状態は実は結構キツい。間に割り込んでこられたらかばえなくなるからだ)
そこへ、葵が黒縫針や鴉布といった独自の術をふんだんに使っていくつもの怪我を負わせていく。
巨大な黒い針がダームスヴルヴァリンの首を突いて出血させ、カラスに変じた布がダームスヴルヴァリンの目や耳をえげつなくついばんでいく。
そうなった所に、葵はおまじないをかけてダームスヴルヴァリンを憤死させた。
ぜえぜえと粗く息をする葵。
キッとジェックのほうを見て、二人は頷きあった。
「もう回復とかヌキにして、死ぬまで撃ちまるしかないジャン!」
「……同意した」
オラボナがげらげらと笑い始めた。もうすっかり茜色に染まりつつあるオラボナの肉体が一瞬にして闇の色となり、自らの全力をもってダームスヴルヴァリンを砲撃しはじめたのだ。
四方八方から飛びかかるダームスヴルヴァリン。
それを、エトやラデリ、アリスメアやジェックが死にものぐるいで攻撃し続ける。
喰って喰われてそれを喰って。まるで獣のような殺し合いはついに、傷だらけのエトとラデリ、そして葵を残した形となった。
ダームスヴルヴァリンもいつからか知性の薄い行動をとりはじめ、先に狙うと損しそうなアリスメアたちを狙うようになっていた。
後から分かったことではあるのだが、葵がリーダー格にあたるダームスヴルヴァリンを(割と偶然もあるが)直感で見つけて呪い殺していたのが原因だった。
声を上げ、最後の殺し合いに出る三人。
生き残ったのは、人か、獣か……。
後日談。もとい今回の成果報告。
「いやあ……お互い酷い状態になったねえ」
病院で包帯まみれになっていた害獣駆除業者の男が、同じ病室で似たような状態になったイレギュラーズたちを見て笑った。
「けれど、ダームスヴルヴァリンはなんとか退治しきれたんだろう? やっぱり人のほうが強いってことさ」
「そうね……」
エトがほっと息をつくようにして、言った。
比較的怪我の少ない彼女。リンゴを蝶の形に剥いている。器用だ。
「生き残るために殺す……これもまた、摂理ね」
果物ナイフを手に、死した動物たちのために静かに祈った。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
――mission complete!
――good end!
GMコメント
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●依頼概要
『ダームスヴルヴァリン』の巣へ赴き、生息している個体を全て駆除してください。
巣は周辺の草木を破壊して敷いた『草木の床』のような場所です。
ダームスヴルヴァリンの巨体と数に合わせてか、かなり広く作られています。
●ダームスヴルヴァリン
・想定機動力6~8
・再生能力あり
・反応、命中、EXFに秀でる
・爪による斬撃(物近単【流血】)
・致死噛み(物近単【致命】)
専門家の話だと、この地方のヴルヴァリン(クズリ)がここまで大量に密集して生息しているのは不思議で、ここまで巨大化したり本来聞くはずだった毒などに耐性をもっている理由がまったく分からないとのことです。
あくまで『そんな気がする』程度の話でしたが、このダームスヴルヴァリンたちはある程度統率のとれた動きをするとも言われています。
ただの動物と侮らず、戦闘の際にはくれぐれもご注意ください。
【アドリブ度】
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。
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