PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<THEO>レギオニーター

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●れぎおちゃんの美味しいローストミート
 荒野に悪臭が漂っていた。
 ――感覚とは、生物が外界を認識する手段である。生物がその機能を獲得した理由の一つに、自身に迫る危険を察知する、と言う物があるだろう。
 例えば不味い物は概ね、有害である。痛い時は直結して危険である。冷たいものも熱いものも、過ぎれば死ぬ。
 では、臭いものとは、何か。今回漂う、この悪臭が知らせる危険とは、何か。
 生理的嫌悪・本能的忌避感を想起させる、すさまじいまでの悪臭。
 嗅いだだけで逃げ出したくなるような、泣き出したくなるような――死を想起させる悪臭とは。
「おいしいね!」
「おいしいね!」
 悪臭漂う荒野に、子供のような声が響いた。
 白い子供である。
 白磁・白雪・大理石――様々な白を例える言葉のいずれにも該当せぬ、無機質で、冷たい、非現実的、自然物とは思えぬ白い肌をした子供たち。
 その白い体に乗った頭部は、芋虫のそれをしていた。巨大な一つの眼球が芋虫の顔の中心にあり、ぎょろり、ぎょろりと蠢いている。
 三匹の芋虫は、巨大な口を大きく開けて、手にした肉を咀嚼した。悪臭を放つ、焼けた肉である。
 それは、人間の手のように見えた。人間の足のように見えた。人間の頭のように見えた。
 芋虫が咀嚼する。焼けた人間を咀嚼する。
「焼けるとおいしいんだね!」
「おいしいんだね!」
「すごーい!」
 嬉し気に、楽し気に、芋虫たちが笑った。


「レギオニーターと呼ばれる魔物の群れが現れました!」
 『小さな守銭奴』ファーリナ(p3n000013)は、集まったイレギュラーズへ向けて、そう言った。
 レギオニーター。人型ではあるが、頭部は芋虫のそれを持つ昆虫系モンスターである。
 旺盛な食欲と尋常ならざる飢餓感を持つそれは、進路上にあるあらゆるものを文字通り『食い散らかしながら』進行。幻想の小さな集落で、現在移動を停止している。
 理由は簡単――今の所、辺りに食料が残っているからである。
「食事を終え次第、移動を再開するものと思われます。こいつらはぺんぺん草一本残らないレベルで、比喩ではなく、辺りを食い散らかしますから、解き放たれるとかなり厄介です」
 集落より命からがら逃げだしてきた人間の話によれば、事実、その集落は家畜、家屋、畑、樹木、人間、ありとあらゆるものが『喰われた』という。驚く事に、襲撃の混乱の結果生じた火事で燃えている家屋を「炎ごと喰った」との事だ。尋常ではない。
「兎に角危険な相手です。充分注意して作戦にあたってくださいな。それでは、ご武運を!」

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 レギオニーターと呼ばれるモンスターが現れました。
 速やかにこれを撃退してください。

●成功条件
 全てのレギオニーターの撃退

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●エネミーデータ
 レギオニーター ×3

 力は非常に強く、敏捷性も高いです。
 その代わり、このシナリオに登場する個体は比較的、防御力が劣っており、打たれ弱いです。
 知能があり、会話のような物を行っているようですが、少なくとも人類と対話ができる様な相手ではありません。
 主な行動として、至近距離・近距離レンジの単体を対象とした物理攻撃(距離が近いほど攻撃力は大きい)を行います。

 特殊能力
 《粘液》
  レギオニーターから分泌される黒い粘液です。よく見ると何やら蠢いていることが分かります。その正体は不明です。
  プレイヤーキャラの毎行動後に回避判定を行い、失敗すると不吉のBS効果を受けます。この判定難易度はターン経過で上昇します。
  浮遊していると、判定値にプラスが付与され、レギオニーターの至近距離にいると、判定値にマイナスが付与されます。

 《飢餓感》
  レギオニーターはターン経過や特定の行動で《飢餓感》を覚え、それが一定値に達すると凶暴化し、攻撃性が上昇します。
  また、追加行動として《捕食》を行うようになります。この状態は《捕食》を何度か行うことで解除されます。

 《捕食》
  周辺の木々、石、肉、その他口に入れば何でも食べようとします。
  また、この行動によりHPが回復します。

●ロケーション
 作戦開始時刻は昼間になります。
 戦場は土と石ころが転がる荒野です。かつては小さな集落でしたが、全てレギオニーターに食われました。
 かつて集会場があった場所には、犠牲となった人間の焼死体が散乱しており、レギオニーターたちはそのそばで食事中です。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加お待ちしております。

  • <THEO>レギオニーター完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年11月01日 21時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

セララ(p3p000273)
魔法騎士
シグ・ローデッド(p3p000483)
艦斬り
ジーク・N・ナヴラス(p3p000582)
屍の死霊魔術師
アイリス・ジギタリス・アストランティア(p3p000892)
幻想乙女は因果交流幻燈を夢見る
ルウ・ジャガーノート(p3p000937)
暴風
武器商人(p3p001107)
闇之雲
イシュトカ=オリフィチエ(p3p001275)
世界の広さを識る者
イグイ・ジヘン(p3p004724)
居喰児片

リプレイ

●暴食
「なるほど、これは……」
 眼前に広がる光景を見て、『世界の広さを識る者』イシュトカ=オリフィチエ(p3p001275)は思わず顔をしかめた。
 ただただ、荒野が広がっている。いや、ただの荒野であるのならば、イシュトカは、特に何かを感ずることもなかったかもしれない。
 荒野とは、不毛の地のようでありながら、そこになにがしかの生態系が存在する。いわば、命の息吹、その雰囲気のような物が、存在するのだという事だ。
 だが、目の前に広がる世界には、それがない。
 何もない。
 命がない。
 話の通りならば、喰ったのだ。
 本来あるべき、命の一切合切を――。
 喰らい尽くしたのだ。
「暴食とは大罪の一つである――とは言うがね。なるほど、これは確かに、大罪だろうな。言葉を操る者の食事風景としては、あらゆる面でエチケットに欠けているよ、これは」
 イシュトカは嫌悪感を隠そうともせず、言った。その暴食の罪人たちは、イレギュラーズ達の遥か前方にて、未だ食事にいそしんでいる。
 襲撃より時間が経過しているせいか、ここにはもはや、あの死を想起させる臭いは存在しない。だが、罪人たちが――レギオニーターがむさぼり喰らう肉片が、否が応でも、死者の存在を、如実に思い知らしめる。
「――行こう」
 『魔法騎士』セララ(p3p000273)が、決意みなぎる瞳で罪人たちを見つめた。
「これ以上、あいつらを野放しになんて、出来ない」
 心にみなぎる正義の決意――セララの言葉に頷きつつ、イレギュラーズ達は歩を進める。
 一歩一歩、近づくにつれて、罪人たちの様子が、はっきりと見て取れるようになった。子供のような体躯。それ故性別の判別は付かなかったが、或いはそう言った概念の存在しない生物なのかもしれない。そして特筆すべきは、やはり首から上、頭部にあたる部分であろう。白い、無機質な白い肌をした、単眼の芋虫の顔が、そこにはある。
 悪趣味な造物主が、片手間に作り上げたような、醜悪にしていい加減な造形。芋虫たちの眼がぎょろりぎょろりと動き、その内の一匹の眼がふと、イレギュラーズ達をとらえた。
「ごはん」
 レギオニーターが一人、声をあげた。途端、残りの二匹もぎょろり、と瞳をイレギュラーズ達へと向ける。
「ごはん! ごはんだ!」
 子供のような声である。
「ごはんだね! 八つも!」
 嬉しそうに声をあげる。
「――ヒヒヒ。我(アタシ)も色々な呼ばれ方をしたけれど、ご飯と呼ばれたのは初めてだね」
 『闇之雲』武器商人(p3p001107)が笑う。その瞳は長い銀髪に隠れている故、その感情は伺えないが、好意的な印象を抱いているわけではないのは確かだろう。
「まさに吐き気を催す醜悪その物の姿。此奴がレギオニーターか」
 『屍の死霊魔術師』ジーク・N・ナヴラス(p3p000582)が呟いた。油断なくレギオニーターへと相対する。
「んー、やっぱり、いぐい様くんとはー。似ても似つかないよねー」
 『居喰児片』イグイ・ジヘン(p3p004724)が声をあげた。
「なんだろう、見えないね」
 レギオニーターが、イグイへと視線をやりながら、言った。透明人間であるイグイの姿を、捕えかねているのだろう。
「でも、よくわかんないけど、美味しそうだね!」
「美味しそう! 食べたい! 食べたい!」
 沸き立つレギオニーター達に、
「奇遇ー。俺もキミたちの事、美味しそうだと思ってるー」
 しかし、イグイは項垂れた様子を見せると、
「でもー。何が起こるか分からないから食べちゃだめー。って言われたー。テンサゲー」
「まぁ、それは仕方ないだろう。代わりに、私の好奇心は満たさせてもらおうか」
 『KnowlEdge』シグ・ローデッド(p3p000483)が言った。無事討伐できれば、その死体を解剖するチャンスもあるだろう。
「なんか言ってる。そろそろ食べようか」
 レギオニーターの内一匹が声をあげるのへ、
「食べよう!」
「食べよう!」
 残りの二匹が声をあげた。途端、イレギュラーズを襲う、とてつもない嫌悪感。人間が生きていれば、恐らく、生涯かけられることのないであろう視線。
 ――美味しそう。
 自分達が食料として見られるという、本能的な恐怖が、一瞬、イレギュラーズ達の背筋を駆けのぼった。
「その感覚――他の命を食べて生きる私達に、否定する権利はきっと無いのでしょう」
 『幻想乙女は因果交流幻燈を夢見る』アイリス・ジギタリス・アストランティア(p3p000892)が言った。
「――とは言え。大人しく食べられるつもりもありません」
 アイリスのその言葉を合図にしたように、イレギュラーズ達が一斉に構える。
「なんもかんも食い散らかして、タダでいられるわけねえだろ! ツケをてめえらの命で払って貰うぜ!」
 『暴猛たる巨牛』ルウ・ジャガーノート(p3p000937)が吠える。それを合図にしたように、レギオニーター達は一斉に、イレギュラーズ達へと飛び掛かってきたのだった。

●食らい合う
 両者の戦いは始まった。迫るレギオニーター達を、イレギュラーズ達はそれぞれ各個撃破を狙う。
「キミの相手はボクだよ。ボクはきっとすっごく美味しいから、キミも気に入るんじゃ無いかな」
 挑発するように言葉をかけつつ、セララが『聖剣ラグナロク』を振るった。フェイントから放たれる、防御崩しを狙った一撃――『セラライクリプス』なる技がレギオニーターに突き刺さるも、レギオニーターの勢いは止まらない。
「ごはん! ごはん!」
 レギオニーターがでたらめに振るう拳を、セララは刃にて受け止めた。尋常ならざる衝撃が刃を通じ、セララの腕に痛みとして響く。
「くうっ……滅茶苦茶だね……っ!」
 顔をしかめつつ、セララはしかし、引く事はなかった。セララの役割は、一匹のレギオニーターを抑える事。仲間達の為、己が役割を放棄する事は出来ない。
「キミ達はどこから来たのかな? キミのお母さんはどこ?」
 尋ねつつ、セララは刃を振るう。一閃はしかし、レギオニーターの拳によって捕まれ、つばぜり合いのような状況の中、セララはレギオニーターの単眼と真正面からにらみ合う形になる。
「――教えてくれたら、ボクを食べてもいいよ」
 不敵に笑いつつ、言うセララへ、しかしレギオニーターからの返答はなかった。
 無視しているのか、或いは言葉が通じないのか――やはり、会話が成り立つ相手ではないのだろう。
「ごはん! ごはん! ごはん! 食べる食べる食べる! 食べるのぉ!」
 駄々をこねるように、レギオニーターが声をあげる。すると、レギオニーターの体中から、黒い何かがしみ出した。剣をつたい、地面をつたい、その粘液はセララへと迫りくる。
(うう……気持ち悪い……!)
 粘液が、肌をはいずる感覚。液体に濡らされるとは違う、何か意思持った無数の何かが、そこでうごめき、はい回る感覚。
 それに侵されながらも、セララはレギオニーターへと相対し続けた。
 セララにより、一匹のレギオニーターを抑え、残るは2。その内の一体を、ジークは『練達上位式』を用いたデコイにより引きはがそうとしたが、戦闘能力のない式神では、一瞬の囮の役割を果たすのが限界であろう。式神はレギオニーターに狩り取られる。
「やはり、気をそらすのが精々だね……」
 しかし気落ちする様子は、ジークにはない。元より想定済みである。むしろ、一時でも攻撃をそらすことにより生じる余裕こそが、イレギュラーズにとって大きい成果だ。
「予定は変わらん。各個撃破だ」
 シグの両手には、『L・L『ブラッドゲイザー』』により作り上げられた、紅の籠手が輝いている。瞬間、その手には『幻想理論「貪蝕の銀刃」』により作り上げた、刃が現れる。
「食事の時間だ。毒物だがな」
 放った刃は、レギオニーターの体へと突き刺さる。液体金属により作り上げられた刃は、その姿を元の液体へと戻し、毒物となって対象の体を蝕む。
「あははは! あははは!」
 毒が効いているのかいないのか――レギオニーターは突進し、その腕を無茶苦茶に振り回した。慌てて飛びずさるシグの足元が、振るわれた手によりえぐり取られる。
「――なるほど、大した攻撃力だ。筋肉はどのようについているのかな。解剖するのが楽しみだよ」
 恐るべきレギオニーターの膂力に、しかしシグは不敵な笑みを消すことはない。
「タダで飲み食いできると思うなよ! こいつは駄賃だ!」
 叫び、ルウは武器を振るい、衝撃波を放つ。圧倒的な圧力を伴うそれは、レギオニーターの体を強かに打ち付け、吹き飛ばす。しかし、くるり、と態勢を入れ替えたレギオニーターは、そのまま着地。
「ごはん! ごはん!」
 手近に居たイグイへと襲い掛かる。イグイは『井杭流狩猟術~円匙殺法~』――両手持ちしたスコップで、レギオニーターの拳を受け止める。がこん、という、およそ肉と鉄がぶつかったとは覆い難い音が響いた。
「あははー、凄い力ー」
 ぎりぎりと、レギオニーターの拳を抑えるイグイへ、
「抑えていてくれ!」
 イシュトカが叫び、放つ魔力がレギオニーターへと直撃する。衝撃に体を揺らし、力が抜けたすきをついて、イグイはスコップを振るい、レギオニーターから距離をとる。
「さぁてお客さん、今日は何が入用かね? 食べ物? あいにく品切れでねェ」
 武器商人がレギオニーターの傷口を『逆再生』させ、
「そんなに食べたいのなら、特製のスープをどうぞ!」
 アイリスの投げつけた毒薬が、肌を汚染する。
「うう……ごはん……ごはん……!」
 途端、一匹のレギオニーターの様子が変わった。獣のような唸りをあげ、単眼が激しく視線を変える。
「――飢餓状態だ!」
 ジークが叫んだ。時間による経過か、或いはダメージの蓄積によるものか。いずれにせよ、レギオニーターは『腹をすかせた』らしい。
「餌を与えてはいけない! 攻撃を集中させるんだ!」
 叫び、ジークは呪殺の矢を撃ち込む。突き刺さる矢の勢いに、レギオニーターは一瞬、のけぞるも、次の瞬間には、その矢を引き抜いて、口の放り込んでいた。
「ううううあああああ!」
 レギオニーターが吠える。ぐるぐる、ぎょろぎょろと単眼が動き回る。焦点があっていない、というレベルではない。
「そんなに食べたいならー、コレを食べろー」
 と、イグイは『児片』と呼ばれる肉片を放り投げた。レギオニーターはそれを口にするが、まだ飢餓感は収まっていないようだ。
「居喰児片のコ、アレはどういう反応だい?」
 武器商人が尋ねる。イグイのギフトにより発生する『児片』は、形容できない不味さらしいのではあるが、
「んー、よくわかんないー」
 と、イグイは小首をかしげるのみである。本来は味など感じないのか、飢餓感故に味覚が死んだか。
「うう、お腹、空いたよぉ!」
 一方、飢餓状態に陥った仲間に引っ張られるように、もう一体のレギオニーターも、飢餓状態へと変貌していた。弾かれるように二体の餓鬼が飛び、イレギュラーズへと襲い掛かる。
「ちぃっ……!」
 舌打ちしつつ、シグはレギオニーターを迎え撃った。突き出された手を、紅の籠手で受け止める。元より尋常ならざる膂力を持ったレギオニーターであったが、飢餓状態のそれは、万力のような、という言葉すら生ぬるい握力で、シグの両腕を握りしめる。
「がぁぁっ! ううっ!」
 がちり、がちり、と、レギオニーターがシグの眼前で歯を鳴らす。暗く、深い、底なしの穴のような口腔。ここに飲み込まれたものは、何処へ行くのだ――?
「そいつから離れろッ!」
 ルウが、シグに張り付くレギオニーターを、『捻じれた鉄塊』で殴りとばした。べちゃり、と湿った音と共に、鉄塊にこびりつく黒い粘液。そしてその粘液を飛ばしながら、レギオニーターが吹き飛ぶ。
「すまないな」
「なぁに」
 シグの礼に、ルウが頷く。二人の獲物の表面に、うねうねと蠢く黒い粘液の姿があった。
「二人とも、今のうちに治療を」
 レギオニーターへ意識をやりつつ、イシュトカは聖なる光を照射する。身体に張り付こうとしていた黒い粘液が動きを止め、べちゃり、と地に落ちる。
「つくづく面妖な……一体何なんだだろうか、この粘液は……」
 イシュトカが呻く。敵の生態は謎のままだ。
「わかんねー……けど、生身で受けるのはマズい、ってのは分かるぜ」
 ルウが答えた。
 一方、吹き飛ばされたレギオニーターへは、
「さて、ワニなんかは実は口を開く力が弱いが……キミたちはどうだろうね? ヒヒ、実験だァ」
 武器商人がロープを放り、その口をきつく縛り上げる。
 呻き、それを剥がそうとするレギオニーターに、
「これで、倒れてほしいね……!」
 放つジークの死霊の矢が突き刺さり、激しく痙攣する様子を見せるや、直にその動きを止めた。
「仕留めたか……」
 安堵の息を漏らすジーク。一方、残るもう一体のレギオニーターへは、アイリスとイグイが攻撃を行っていた。
「うううう、がががが」
 ガチガチと歯を鳴らし、レギオニーターが襲い掛かるのを、イグイはスコップで叩き落とす。しかしすぐさま立ち上がり、再びとびかかってくるのを、アイリスはアンデッドのなりそこないで形成した盾で受け止めた。
 その盾にすら、レギオニーターはかぶりつき、喰らおうとする。
「……醜悪な……!」
 そのおぞましさに、思わず嫌悪の声をあげるアイリス。
「待ってろ、すぐにぶっ飛ばす!!」
 ルウが叫び、シグと共に駆け付ける。二人の攻撃を受けたレギオニーターはいったん距離をとるが、すぐに距離を詰めるべく駆け出す。
「喰わ、せろ!」
 叫び、走るレギオニーターへ、
「おっと、足元注意だよ」
 武器商人の放ったマジックロープが、レギオニーターを縛り、転ばせた。
「えいやー、っとー」
 そこに叩きつけられた、イグイのスコップが、レギオニーターの頭部をぐしゃりと潰した。残るは1。セララの元へと視線を移したイレギュラーズ達の目に映った物は、
「えへへ……皆、ごめん……」
 呟き、意識を手放したセララの姿と、それを持ち上げ、食らいつかんとするレギオニーターの姿であった。

●食事の終わり
「止めるんだ!」
 イシュトカが、思わず叫んだ。
 弾かれたように、イレギュラーズ達が駆けだす。
 レギオニーターの口腔が、がちり、と閉じられた。
「……っ!」
 声が、上がった。
 アイリスの声である。
 セララを突き飛ばし、レギオニーターの手から解放したアイリスは、アンデッドの盾でレギオニーターの噛みつきを防ごうとしたが、それごと腕に食らいつかれていた。
 肉を噛みつかれ、激痛によるうめき声をあげながら、アイリスは手にした杖でレギオニーターを殴りつける。しかし、レギオニーターは意にも介さず、アイリスの腕に食らいついていたが、
「彼女は、お前さんの食事ではない――」
 シグの籠手が、レギオニーターの背中を力強く殴りつける事で、レギオニーターはその口をようやく放した。間髪入れず、シグは蹴りつけ、レギオニーターを吹き飛ばす。
「コイツで、仕舞いだ!」
 ルウの一撃が、レギオニーターを叩き潰した。その頭を地面にめり込ませ、ぴくり、と一度痙攣するや、完全に動かなくなる。
「アイリス君、傷は」
 イシュトカが尋ねるのへ、アイリスは頷いた。
「深くはないです……私よりも、セララさんは」
 アイリスの言葉に、
「彼女は……無事だよ。気を失ってはいるが、命に別状はない……」
 セララを優しく抱き上げ、ジークが答えた。
「セララの方には、少しばかり重い役割を任せてしまったね」
 武器商人が言った。
「んーと、これで全部ー、かなー」
 イグイの言葉に、
「そうだね。ひとまず成功、と見ていいんじゃなかな?」
 と、武器商人が答える。
「粘液の方も、本体が死亡した時点で活動を停止したようだ」
 シグが粘液を採取しつつ、言った。果たしてこれがなんであるのか、別個体との差異はあるのか――。
「後は、戻って調べるしかないな――いや、それより、皆も無傷と言うわけではないからな。早く安全な場所へと戻ろう」
「そうだな。念のため、コイツらの死骸はロープできつーく縛っておくぜ」
 ルウが言って、ロープを取り出した。

 イレギュラーズ達は最低限の処置を行うと、荒野を後にした。
 おぞましき暴食の虫は、イレギュラーズの手により、確かに狩り取られたのであった。

成否

成功

MVP

セララ(p3p000273)
魔法騎士

状態異常

セララ(p3p000273)[重傷]
魔法騎士

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 皆様の活躍により、レギオニーターは無事討伐。
 この個体によるさらなる被害は、見事食い止められました。
 MVPは、単独で役割を全うした、魔法騎士に付与したいと思います。

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