PandoraPartyProject

シナリオ詳細

転売奴を(規制音)する話

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 ●買えなかったシャボンスター

 この日、章姫はいつにもましてご機嫌さんだった。
 鼻歌を歌い、寄ってきた小鳥に挨拶をし、お気に入りのポシェットを手離さなかった。
「私ね、この日をとーっても楽しみにしてたのだわ! お手伝いも頑張ってお小遣い貯めたのだわ!」
 ふふんと自慢げにポシェットを見せつける章姫に黒影 鬼灯(p3p007949)はゆるりと目元に弧を描いた。

「今日は待ちに待ったシャボンスターの発売日ですからね、俺も楽しみです」
 うんうんと頷いているのは自称奥方の忠実な下僕である弥生である。
 彼もまた綺麗な物や可愛らしい物が好きで、シャボンスターコレクターの一人である。
「確か、玩具のアクセサリーだったな。確かにあれは玩具にしてはとても質が良かった」
『この間のキラキラしたヤツだな? 私も欲しいぞ、水無月!』
「そういえばナナシもキラキラした物が好きだったな、なら買うか」
 というわけで各々目的のために街へと繰り出した――のだが。


「売り切れ!?」
「まだ、開店して二十分しか経っていないだろう?」
「申し訳ございません……最初に来られた団体のお客様がすべて買われてしまって」
「仕方ないのだわ、とっても素敵な物だもの。他のお店に行きましょう?」

 しかし何処の店も『売り切れてしまった』と頭を下げられるばかりであった。
 ポシェットを握りしめたまま落ち込んでしまった章姫を弥生と鬼灯が懸命にあやす。
 どうしたものかと一同が頭を抱えていると、露天商が品物を広げていた。
 見るとシャボンスターの箱も置いてある。

「おお、章殿。露天ではあるが……あの店は置いてあるようだぞ」
「おや? もしかして旦那もシャボンスターをお求めで?」
「ああ、俺の妻と部下が好きでな。しかし、何処の店を回っても売り切れてしまっていたのだ」
「そりゃあ災難でしたねぇ、うちはたんとありますからね」
「嬉しいのだわ! ありがとうおじさま!」
 大事そうに財布を抱えていた章姫だが値札を見て「ぴゃっ」と悲鳴を上げて跳びあがった。

 只ならぬ章姫の様子に鬼灯たちは訝しんで値札を覗き込んだ。そして「はぁ!?」と声を上げた。
「おい! 定価を五倍は軽く上回ってるじゃないか!」
「適正価格とはとても言えないのでは?」
「おやおや……いまやこのシャボンスターはウチでしか買えない代物……『希少価値』というヤツですなあ。
 ああ、ご安心くだせぇ。値段に納得できなければ無理に買われる必要はねぇですよ?」
「これは買えないのだわ……」
 やっと買えると思った矢先にこの仕打ち。章姫の大きな青い瞳には涙が滲んでいた。
「((章殿)(奥方)を泣かせやがった)」
 弥生と鬼灯がブチギレそうになるのを何とか抑えながら水無月はその場を離れた。

 すっかり落ち込んで帰ってきた章姫に出迎えた暦たちは皆驚愕し、手製の菓子やぬいぐるみや花やで彼女の心の傷を癒した。
 そうしている間に鬼灯たちはこれは忌々しき事態だと緊急で作戦会議を開いていた。

「しかし、あの露天商。明らかに正規の商人ではないな」
「ええ、何処の大手の店でも品切れなのにあの店だけ在庫が潤沢など……在り得ません」 
「……あの時は気が付かなかったが、奴は転売奴か?」
「てんばいやー?」
「ええ、転売……人気のある限定商品などを買い占め不当に値段を吊り上げて販売する下種野郎です。ゴミです。癌です」
「貴殿めっちゃ恨み籠ってるな」
「そりゃあもう。俺が愛してやまない『ふわもこ☆これくしょん』の夏季限定商品も奴らの魔の手に……死ぬほど欲しかったのにィ……」
「水無月、雑巾取ってきて。畳にめっちゃ血涙落ちてる」
「『ふわもこ☆これくしょん』はともかく。このままでは皆が買えません。頭領、早急な対処が必要かと」
 雑巾を渡しながら、水無月は鬼灯に提言した。畳を拭きながら鬼灯はそれに頷く。
「そうだな、皆が楽しみにしている物を買い占め値段を吊り上げるなど言語道断……それに章殿、泣かせたしな」

 普段トンチキな依頼に出張することも多い暦だが彼らは『忍』である。
 その諜報能力(と、執念)を持って奴等の根城を突き止めたのであった。

 ●囚われのシャボンスター

「急に呼び出して済まなかったな」
 あなたがたは深夜に豊穣のとある竹林へ呼び出されていた。あなた方に気が付いた鬼灯が手招きし、少し離れた場所を指さす。
 指の先にはボロ小屋がぽつんと立っており、まるで幽霊でも出そうな雰囲気である。
「あの小屋には幽霊が出ると噂があり民が近寄らないのをいいことに、転売奴共はあそこを根城にしているんだ」
 つまり敵はあの中にいるという事だ。だが、中に乗り込んでぶちのめして終わり、という訳には行かない。
「小屋の中には箱の中に入れられたシャボンスターが大量にある。小屋で変に技を放てば、シャボンスターもろとも消し飛ぶ可能性がある」

 そう、元々は皆がシャボンスターを買えるように、買い占められたシャボンスターを取り返せねばならないのだ。
 壊してしまっては元も子もない。
「奴らを外におびき出すか……シャボンスターが壊れないように工夫するか、何かしら対策は必要だな」
 詳細は貴殿らに任せる。鬼灯は静かに、妻の涙を思い出し。怒りを目に宿しながら言った。

NMコメント

 初めましての方は初めまして、そうでない方は今回もよろしくお願いします。
 転売奴を凹したい、でも現実だと犯罪になってしまう……。
 でも今回はぶん殴っても大丈夫。そう、シナリオならね。

●目標
 転売奴(テンバイヤー)を解からせてシャボンスター奪還する
 シンプルです、物理だろうが精神的だろうがなんだってOKです。
 二度と転売なんて出来ない様に解らせてやりましょう。ええ、日頃の恨みを込めて。
 しかし本来の目的はシャボンスターがみんなが買えるように奪還して店に返す事です。
 暴れすぎてうっかり全部壊れてしまった……なんてことにならない様にお気を付けを。
 
●戦場
 竹林の中にぽつんと立っているボロ小屋、並びにその周辺。
 時間は深夜で、あたりは静まり返っておりあなた方は竹林で小屋を見ている状態で始まります。
 小屋の中には買い占めたシャボンスターがたんまりため込まれており、小屋ごとぶっぱなすと間違いなくお陀仏です。
 シャボンスターを傷つけず、転売奴だけを解らせる方法を考えて下さい。
 なお、この小屋は幽霊が出ると噂で地元民は全く近寄りません。転売奴にはそれが都合が良かったようです。
 
●敵
・転売奴(なんかいっぱい)
 読み:てんばいやー
 人気のある品や限定商品などを買い占め不当に値段を吊り上げて販売する下種野郎です。ゴミです。癌です。
 品物管理してる奴や、見張り、買い付け(笑)など様々います。

「え? 俺らは買えない人たちの為に売ってあげてるだけですよ~?? なんか文句あんすか?」
 みたいなことほざくので説得は諦めた方が良い。解らせよう。

 EXFがアホみたいに高いのと全員ギャクキャラ活性の為、死なない。安心してぶっ飛ばそう!!
 
●味方
 黒影 鬼灯(p3p007949)
 暦の頭領でローレット所属の忍者。
 章姫の夫で今回彼女が泣いてしまった為転売奴を殺すと心に決めているが章姫に止められたので凹すだけで我慢している。
 中距離神秘アタッカーで識別付き複数攻撃も可能。指示があれば従います。

 弥生
 鬼灯の部下で章姫を崇拝しているいろいろヤバい忍者。
 かわいい物、綺麗な物が大好きでシャボンスターも今回のぞいて全コンプしてる。
 今回も死ぬほど楽しみにしてたのに転売奴に邪魔されて激おこ。
 罠の設置と死なない様に痛めつける天才であり、悲鳴や血も大好きな性癖が終わってる人。
 指示がなければ基本は罠の設置でサポートに回ります。転売奴を殺したかったが奥方に止められたので我慢している。

 水無月
 作戦立案や暦への指示を担当している、指揮系統の鷹匠兼忍者。
 上司と同僚が殺意マシマシなのでシャボンスター壊されないか心配でついてきた。
 が、奥方泣かされたので本人もたいがいブチギレ。
 相棒のナナシと共に高所から地形の把握や見張りを担当するが、指示があれば従います。
 
 ナナシ
 水無月とのみ会話可能な鷹。性別は雄。キラキラしたもの大好き。
 訓練されており空から敵に奇襲しかけたり、ファミリアの様にその目で見た物や聴いたものを水無月に伝える。
 
●備考
・シャボンスター

 所謂食玩です。ラムネが入っていますが、そちらはオマケ。
 メインは玩具のアクセサリー。数種類の中からランダム封入で、シークレットあり。
 なお、ちょっとお高めだけどコンプセットもある。
 元々はどっかのウォーカーが持ち込んで、再現性東京で頑張って再現したらしい。
 章姫と弥生が大好きなシリーズで、暦がめっちゃ頑張って豊穣に輸入した。結果豊穣で女児を中心として大人気商品となる。
 リアルで言うところのセ●ンスターです。

・ふわもこ☆これくしょん
 手のひらサイズの可愛いお友達。うさぎさんや、ことりさんなど、もこもこ動物がチャーミングな目で見つめてくるぞ!
 夏季限定仕様はセーラー服着用だったが転売奴の餌食となって弥生は買えなかった。彼は血涙ながした。
 なお本編には一切関係ない。
 
 
●サンプルプレイング
 転売奴死すべし慈悲は無い。と言いたいけど死なないのか……つまり死にたくなるまでぶん殴れるってコト……!?
 よし殴ります。この世に生まれてきて申し訳ありませんでしたって心の底から言うまで殴ります。
 ただ殴るだけじゃ詰まんないから赤い服の女幽霊に変装します。

 こんな感じです。それではいってらっしゃい。

  • 転売奴を(規制音)する話完了
  • ちなみに私はリアルでも思っている
  • NM名
  • 種別カジュアル
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年11月24日 22時05分
  • 参加人数6/6人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(6人)

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
武器商人(p3p001107)
闇之雲
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
無限円舞
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標
マリオン・エイム(p3p010866)
晴夜の魔法(砲)戦士
レイテ・コロン(p3p011010)
武蔵を護る盾

リプレイ


「この世界にもいたかー、自分の事しか考えてないクソ野郎共」
 『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)は、呆れたように溜息を吐いた。
「外の世界にもいるのか」
「有名選手の試合のチケットとか……まぁこの話はいいや。そういえばシャボンスターってそもそもなんなんスか?」
「章殿、葵殿にシャボンスターを見せてあげてくれ」
「はーい!」
 お気に入りのポシェットから、章姫が取り出したのは銀メッキとクリアなハートの宝石がついたペンダントである。所謂女児向けの玩具だが確かによくできている。
「……こういうの好きなんスねぇ」
「当然だ、美しい物に値段の貴賎は無い。その上、奥方のお気に入りの品だ。
 奥方が手に入れやすくするのは臣下として当然の事」
 突然背後から弥生現れた弥生に、葵の肩が跳ねた。
「うわ! いきなり出てこないでほしいっス」
「OPからいたが」
「急なメタ発言はともかく。確かにこれは値段が釣り合わなさ過ぎるな」
「ああ、以前も奴らの所為で『ふわもこ☆これくしょん』が買えなかった……」
「ふ、ふわもこ☆これくしょん……! 弥生さんも被害者だったのね……」
 『剣の麗姫』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)が、『ふわもこ☆これくしょん』に反応した。
「私も買えなかったのよ……セーラー服のりすたろう、すごく可愛かったのに……」
「あんたは、りすたろう推しか。可愛いよな……俺もえながちゃんがほしかったんだ」
「白くてまんまるで可愛いわよね……わかるわよ」
(頭領、弥生が女性と普通に話してますが)
(転売の被害者同士という目線で一時的に女性嫌いをのりこえているようだな)
「今回が、ふわもこ☆これくしょんの時の元凶と同じかは分からないけれど。
 彼らを叩きのめしたら同業者も活動やりにくくなるはずだわ」
「同意だな。徹底的に叩きのめそう、その為の協力は惜しまない」
「ありがとう。転売奴。憎むべき存在。」
 ――たとえ法に触れずとも、たとえ神が赦そうとも、私が許さない。
(頭領! 弥生が女性と固く握手を交わしています!!)
(『女』ではなく『同士』認定になったらしいな)
 鬼灯と水無月が弥生を見て好き勝手ひそひそ噺をしている傍らで、『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)は静かに青筋を浮かべていた。
 行儀が良くないと分かってはいるがカチャカチャと鯉口を鳴らすことを止められない。
「……なんだろうな。連中の行いを聞くにつけ俺の中で無性に生かしてはおけない思いが募ってくる」
 いっそ斬り捨てた方がこの世の為ではないかと思いつつも、今回の目的はシャボンスターの保護である。大きく息を吸い、ゆっくりと吐き出してエーレンは自分自身を落ち着かせた。
「みんな殺気立っているね……マリオンさんは商人じゃないので、転売とか良く解りません! でも皆の心を雨空にしちゃう行為は、青空の精霊種として断じて許しませんだね! ばつ!」
 大きく腕でバツ印を作り、ぶぶーっとブザーを鳴らす『双影の魔法(砲)戦士』マリオン・エイム(p3p010866)。
 きりっと眉を吊り上げ、小屋を睨んだ彼女はふと思った。
「お説教(物理)って、何だか頭鉄帝みたいだね? って思ったのはナイショだね!」
「全部口に出ているぞ」
「おっと、ついうっかり。
 そうだ、水無月さん弥生さん。念の為あの小屋を包囲してくれるかな」
「承知」
 わからせの前に転売奴に逃げられては元も子もないのだ。
 水無月は相棒を連れ、アンナとふわもこ☆これくしょんについて語り合っていた弥生の首根っこを引っ掴んで一旦姿を消した。
 
「おや。まァ。泣いちゃったの、章姫のお嬢さん」
「哀しかったの……」
 『闇之雲』武器商人(p3p001107)が屈んで、鬼灯の腕の中の章姫と目線を合わせた。
 瞳の周りは薄くなってはいるものの赤くなってしまっている。
「ふぅん。へぇ」
 白銀の髪の隙間から紫苑の三日月が覗いた。
「泣かせたの、我(アタシ)の名付け子」
 自分が名付けた、娘の様に可愛い可愛いお嬢さん。
 そんな可愛いコを泣かせた上に、サヨナキドリの目の届くところで、転売(そんなこと)する悪いコは今あの小屋にいるらしい。
「……いけないんだぁ?」
 転売奴がもし『サヨナキドリ』を知っていたのであれば。
 今回のような愚行は起こさなかったのかもしれない。

「楽な商売だぜ全く」
「こんな玩具のどこが良いのかはわからねぇが……豊穣での人気は留まる所を知らねぇ」
「現に、こんな額でも出す奴はいるからなァ」
 ひぃ、ふぅ、みぃと集めた金を転売奴たちは数え下卑た笑みを浮かべた。
 さて、次の取り分をと転売奴の一人が金へ手を伸ばした時、ガタガタと扉が鳴った。
「あ? なんだこんな時間に」
「狸が餌でも漁りに来たか?」
 転売奴が棒を担ぎ、扉の前へ立った時文字通り転売奴が『吹き飛んだ』
「……えっ」
「ご機嫌よう。月のない良い夜ね」
 扉があった場所に、姫の寝所へ忍び込んだ怪盗の様にアンナが立っていた。
「だ、誰だテメェ!」
「答える義理は無いわね。それより、私欲を満たすために泣き寝入りする人達のことを考えたことはあるかしら?」
「あ、俺も聞きたかったんスよ。なんで転売とかすんのかなって」
 アンナの後ろからひょっこりと葵が顔を出した。
 棒を突き出した転売奴が声を荒げる。
「俺達は『買えない奴』の為に『買い付けて』るんだよ!」
「おお。マジで一緒だ……それなら値段吊り上げなくてもよくね?」
 お約束の台詞に謎の感動を覚えた。
「これだから、素人は……いいか。仕入れ値に、運送費に人件費!
 それらを踏まえたら『多少』は上乗せはいるんだよ!」
「うわ、それっぽいこと言ってる。転売ヤーの癖に」
「でも『多少』の域を超えてるよね、明らかに」
「うわぁ、また増えた!!」
「人をお化けみたいに言わないでよ」
 当たり前の様に窓を叩き割り入ってきたレイテに転売奴は驚き尻餅を着く。
「テメェはどっから入ってきやがったんだよ!!」
「屋根の上から窓口に降りただけだよ?」
「降りただけ、じゃねぇだろ!!」

「うまくやってくれてるみたいだね」
「しかし、あの勢い。商品まで巻き込みそうだが」
「まァ、任せておきなよ」
 木々の隙間から様子を伺っていた武器商人は指先で術式を宙に描く。
 指先が止まると同時に、小屋の周りを青い光が取り囲んだ。
「保護結界か」
「そうだよ、万が一が在っては困るからね。さ、次はキリエの旦那の出番だよ」  
「ああ、行ってくる」
 ざっと、小屋の前に立ったエーレンは再度大きく息を吸った。
「喝ッッ!!」
 びり、と小屋全体が怒気と殺気に揺れた。
 小屋の中に居た転売奴達はいよいよ動揺が隠せなくなった。
 逃げ出そうとする転売奴の前にエーレンが立ちふさがる。
「なんだよテメェらさっきからよォ!!」
「鳴神抜刀流、霧江詠連だ。今回お前たちに特に言うことはないので、ただ死ね」
「殺しちゃダメだよエーレンさん! お説教(物理)をしないと!」
「そうだったお説教(物理)をしないといけないんだったな」
「お説教(物理)ってなんなんだよ!」
「お説教(物理)はお説教(物理)なんだよ!」
 マリオンが説明になっていない説明をしながら、転売奴達の足元へ糸を放つ。
 脚を掬われた転売奴達は「へぶ」っと間抜けな声を上げてその場で床へ顔面を叩き付けた。
「それじゃぁ暦の皆! 転売奴さん達にお説教(物理)どうぞだね!」
「よし来た」
 マリオンの合図にトラバサミをぐるんぐるんぶん振りまわしながら弥生が入ってきた。脳天に直撃した哀れな転売奴がその場で仰向けにひっくり返る。
「はぁ!? 何で暦がここにいるんだよ!!」
「何でって、今回の依頼人っスよ」
「ぎゃっ」
 葵が近くにいた転売奴のケツを蹴り飛ばしながら補足する。
 スパァンと気持ちの良い音がした。
「的がでかい分ボールよりも当てやすくて助かるな」
「くそ、こんなの多勢に無勢すぎる!! おいてめぇら、ずらかる準備しろ!!」
 転売奴の一人が指示を出し、各々逃げ出す準備をするが時すでに遅し。レイテが叩き割った窓からナナシが飛び込んできて転売奴の髪の毛をブチブチ引きちぎり、機動力を高めたエーレンが小屋の中を飛び回り、転売奴達の意識を刈り取っていく。
(うーん……なかなか過激)
 群がってくる転売奴達をちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返していたレイテは仲間たちの激しい攻防(と、いうにはあまりに一方的だが)に頬を掻いた。
「じゃあボクからの解らせは、この一撃だけでいいかな」
「ひでぶっ」
 同情とは裏腹に鋭い肘鉄を頭頂部へ喰らわされた転売奴はその場に沈んだ。
「レイテさんは優しいけど、私は過去に泣いた私の為にあなた達をぼこぼこにするわよ」
「は? どれどういう意味」
「こういう意味、よ!!」
 転売奴の胸倉を引っ掴んで外へぶん投げたアンナはそのまま転売奴を切り刻んだ。鉄帝最強の男が編み出した最強の技、普通に豊穣で過ごしていればまず喰らう事の無い技に転売奴の身体は宙を跳んで、紅い鮮血が軌跡を描いた。
「ああ、外にして正解だったわ。シャボンスターに返り血が着いたら大変だもの」
 獲物を苛めて遊ぶ、鯱のような残虐さだった。
 過去にふわもこ☆これくしょんを買えなかった恨みはそこまで深いのだ。

「あっ、一人逃げてる!」
「さすがに仲間を見捨てるのは酷くないかな」
 どんどん倒れ伏していく仲間達に、見切りをつけた一人の転売奴が隙を見つけて木々の方へ逃げ出していた。気が付いたマリオンとレイテが声を上げるが転売奴は止まる気配が無い。
「へっ! 好きに言いやがれ!! 俺は損切も得意なんだよ!!」
 ――何処にいる。
「……だ、誰だ?!」
 木々の中に脚を踏み入れていた男が謎の声に足を止めた。
 無視しなければならないと本能は告げているのに、身体が勝手に声の主を探してしまう。だからだろうか、足元の糸に気が付かずに、転売奴は無様にその場に倒れ込んだ。
 その時、転売奴は思い出した。
 この周辺は幽霊が出ると噂になるから、人避けに幸いだったのだと。
「――みいつけた」
 にぃっと笑ったナニカを視認した瞬間、転売奴は白目をむいて意識を失った。
 かくして、一人も漏らすことなく転売奴を解らせることに成功したのである。
 
● 
 死屍累々と化した転売奴達を前にマリオンはぱんぱんと手を払った。
「これに懲りたら、商品はちゃんとした値段で売りましょうだね! まる!」
「もうじまぜん……」
「あ、そうだ。マリオンさんも一つ買っていくね。もちろん定価でお支払いだね!」
 ちゃりん、と小銭が置かれたのと同時に転売奴はがくりと地面に顔を伏せた。
 その様を見てレイテが頷いた。
「うん。因果応報、自業自得」
「く、くっそォ……」
「これからは転売するにしても適正価格……いや、違うな。買い手の許容範囲の価格で転売して下さい、じゃないと」
 そしてレイテは転がっている転売奴へ耳打ちした。
「流石に次は命の保証は無いかもですよ?」
「ひゅっ……」
 顔面蒼白と化した転売奴はそのまま恐怖から気絶した。
「というかこんな玩具ごときで」
 ズドンッ。
 おそるおそる視線を横に向ければあら不思議。さっきまであった壁が消えて代わりに巨大な穴がぽっかりと開いている。
「別に難しいことを要求してるわけじゃないの。
その商品を返して、もう二度とやらないの誓って……
 お仲間にもお話してくれたらそれで、ね?」
 アンナの口調は穏やかだが、明確に敵意と殺意が込められていた。
 転売奴は壊れた人形の様に首を何度も縦に振ることしかできなかった。

 散々恐怖体験を味あわされ、判らせられた彼らの脳内には。
『世の中には敵に回してはいけない奴等がいる』
と、深く刻み込まれたことだろう。

「ほら、章姫のお嬢さん。いい物をあげようね」
「シャボンスター!ありがとう、商人さん!」
 武器商人は、袖口から取り出したシャボンスターを章姫へ渡した。
 それを嬉しそうに受け取った章姫は、大切そうにぎゅっと抱きしめている。
「商人殿」
「安心しなよ、ちゃあんと正規の店で買ってあるからさ」
「頭領、商人殿のご協力により今回の転売奴の情報は豊穣の商人たちへ渡りました。暫くは悪さは出来ないでしょう」
 こうして無事にシャボンスターは定価で販売を楽しみにしていた人々の元へ渡ったのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

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