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シナリオ詳細

<ラケシスの紡ぎ糸>来たれ、空で戦う勇者たちよ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ズォールト航空魔導戦闘団
「塔の中に、空が!?」
 鉄帝軍人がひとり、ウォーズ少尉は自らに飛行能力があったことに感謝しつつ、雲より高い大空に羽ばたいた。
 彼は鉄帝国南部に突如として現れた全剣王の塔こと『コロッセウム=ドムス・アウレア』へ斥候として潜入していたのだが、塔の階層を登ってみれば突然空へと投げ出されるなど……あまりの光景に唖然とするほかない。
「内部が特殊空間化しているなんでもありの塔だ。このくらい普通にありえるだろうさ」
 そう応えたのは飛行種のガルマン少尉である。
「もし飛行能力を持たずに入れば落下死、か?」
「せいぜい塔から放り出される程度で済むと思いたいものだな」
 見下ろせば雲。落ちればどうなるか、試したいという度胸はない。
 そうこうしていると、眼前の雲からドッといくつもの影が上昇してくるのが見えた。
 蝙蝠の翼を持った人型の影が無数。
 ここが敵陣地のただ中であることを考えれば、これが友好的な接触でないことはあきらからだ。
「エンゲージ! 回避行動を――ぐわっ!?」
 ウォーズ少尉の肩に、被弾。
 見ればこちらに突っ込んでくる飛行物体は小銃を構えた一団ではないか。
 かれらは小銃越しに魔方陣を展開すると、術式を込めた弾丸をこちらに何発もぶち込んでくる。
「ぐ、ぐわあああ!?」
「ウォーズ!」
 集中砲火を浴びたウォーズ少尉が墜落。次いで、ガルマン少尉もまた敵の集中砲火を浴びることになる。
 素早く回避行動をとるも、飛ぶ背中にいくつもの着弾。バレルロール機動をとって数発を回避できたが、数的有利は圧倒的にあちらが上。気付けば自分は相手の集団に包囲され、一斉射撃を浴びていた。爆裂する術式が彼に幾度も浴びせられ、ガルマン少尉もまた墜落していく。
「我等はズォールト航空魔導戦闘団。全剣王の配下にして航空戦闘のエキスパートである。地上に戻ったならば伝えるが良い。空で戦う勇者を待つ、とな!」
 敵指揮官の最後の言葉が、ガルマンの薄れ逝く意識に残った。

●空の勇者
「その後、塔から放り出された状態で二人は発見されたようだ。墜落すれば死、というわけではなかったらしいな」
 やれやれという様子で情報屋は首を振る。
「そうだとも。空で戦う勇者殿への――ローレットへのご依頼だ。この階層、ズォールト空戦階層の突破を求む、とな」

 敵は飛行戦闘に長けた一団。その中でもズォールトは特段に優れた飛行戦闘能力を持った戦士であるという。
 情報によれば敵兵等は小銃と軍服という姿でありながら魔法を行使し、術式を込めた弾丸を放つ能力を持っているらしい。
 非常に命中精度が高く、回避能力に優れた兵も相手の連携攻撃によって撃墜されてしまったという情報もある。充分に警戒しつつ、しかし勇敢に撃破を目指すべきだろう。
 斥候たちの調べにもあったように、墜落すれば塔から放り出されるというだけで済むらしいが、即時のリトライは不能とのこと。撃墜されないように立ち回りつつ、敵を撃破していかなければならないだろう。
 そして当然ながら、飛行戦闘手段を自力で持ち込まなければならない。
「自力で飛行戦闘ができるならそれにこしたことはないが、もし用意できなければワイバーンの貸し出しができるらしい。用意するから言ってくれ。
 ま、折角相手がご所望なんだ。空で戦う勇者になってこい!」

GMコメント

●シチュエーション
 空戦が強制される階層にて、激しい飛行戦闘を楽しみましょう!

●フィールド
 飛行戦闘が強制される階層です。果てしない青空の中で戦うことになるでしょう。
 雲へ墜落すると塔から追い出される仕様になっているようです。

●エネミー
 ズォールト航空魔導戦闘団は指揮官ズォールトからなる無数の戦闘団です。
 まずはこちらの戦闘能力を見るべく下級兵をぶつけてくるでしょう。範囲攻撃が使えるとかなり有利に戦えるはずです。
 後半は精鋭たち相手に個別に空戦を繰り広げることになるでしょう。

※このシナリオでは飛行戦闘が必須になります。
 飛行スキルまたは飛行アイテムを装備して挑んでください。もし用意できない場合はワイバーンをレンタルして入ることになります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <ラケシスの紡ぎ糸>来たれ、空で戦う勇者たちよ!完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年11月10日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エマ(p3p000257)
こそどろ
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)
流星と並び立つ赤き備
ラムダ・アイリス(p3p008609)
血風旋華
ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)
タナトス・ディーラー
アルフィオーネ・エクリプス・ブランエトワル(p3p010486)
ライブキッチン
火野・彩陽(p3p010663)
晶竜封殺

リプレイ


 人は空に憧れた。
 雲を抜け、空を掴み、太陽に近づかんとした。
 それはいつからか。だれからか。わからぬまま、けれど憧れだけは確実にここにある。

「塔の中に空、かあ」
 風を目一杯に身体に感じ、雲を眼下に見ながら『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)が羽ばたく。扉を抜けた先がまさにこの『空』だったのである。もはや飛ぶしか方法はない。
「他の階層には夜空みたいな場所もあったし、楽しむにはいい場所かもだけど」
「ちょっとしたテーマーパークってところかな? 聞いてはいたけどホント謎空間よね」
 フライトユニットの可変式魔導装甲『黄龍』を装着し、『咎人狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)が機械の翼をなめらかに羽ばたかせる。巡航形態と機動外殻形態のうち、後者のそれだ。
 飛行状態を維持しつつも、高い機動戦闘を可たらしめんとする拡張装備である。
「にしては物騒なテーマパークじゃない?」
「だよね。敵さえいなければねえ」
 アクセルがあははと笑う。
 『ライブキッチン』アルフィオーネ・エクリプス・ブランエトワル(p3p010486)は風のドラゴンロアで飛行しつつ、ふわふわと自らの身体を浮かばせている。
「最近、わたしも空中戦に慣れてきたわ。空中で逆立ちして、お茶だって注げちゃうんだから。まかせて」
「逆立ちしてお茶を注がなくてもいいけど……お茶はあとでほしいかな」
「それこそ任せといて。準備してあるから」
 リュックサックを指さしてにっこりと笑うアルフィオーネ。
「みんな慣れてるなあ……」
 『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)はワイバーンの上に騎乗し、落ちれば死とでもいうような雲の風景にややぞくりと肩をふるわせた。
(空の敵……とはいえ、戦場が何処だろうが、なんだろうが
 敵相手なら何処だって戦ってやんよ。
 ちょっと不安やけど大丈夫大丈夫……!)
 気合いを入れ直し、ぺちんと頬を叩く彩陽。
 そんな彼に『こそどろ』エマ(p3p000257)が声をかけてきた。
「実はですね……。私、鳥になりたかったんですよ。子供のころね」
 急な話の転換に振り向くと、同じくワイバーンに騎乗したエマが長い髪を指でくるくるとまいている。
「よくある話です。どこまでも飛んで自由になれたら……なんて。鳥にはなれませんでしたが、今はこのワイバーンがいるので空を飛ぶという夢はかないましたね。えっひっひ」
「ああ、そうか……そういう考えもあるか」
 ほっと一息ついたところで、『揺蕩う黒の禍つ鳥』エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)がその黒い翼を羽ばたかせて大太刀を振った。
 ぶおんと風を切り裂く感覚。頬をなでる空気に、エレンシアは目を細める。
「へぇ、空中戦闘たぁな。空はアタシ等スカイウェザーの庭も同然だぜ!
 とは言え油断は禁物だ。アタシの空戦能力だって完全じゃあないからな。
 ま、こいつを完全にこなせる誰かさんに手本を見せてもらうとしますかね」
 その誰かさんでいうところの『鳥種勇者』カイト・シャルラハ(p3p000684)へ振り返ると、まかせろとばかりにカイトは紅蓮の翼を羽ばたかせてみせる。
「空の勇者!? 俺を差し置いて空の勇者を名乗るのは許さないからな!!!」
 なにせ『鳥種勇者』で知られる彼である。空の勇者と聞いて真っ先に駆けつけたのも、やはり彼であった。
「誰も、差し置いてなどいない」
 『航空猟兵』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)がニヒルに呟く。
 だが、と空中で姿勢を整え、ポーズをとる。
「俺に空で挑むか。よほど自信があるのか、世を知らぬ阿呆か。
 竜をも殺した航空猟兵、どうやら向こうは知らないらしい。
 ならば叩き込んでやろう。今の空は俺たちがいるのだと」
 遠くより迫る豆粒のような敵の集団。ブランシュたちは頷き合うと、戦闘可能距離へ迫るべく進み始めるのだった。


 ズォールト航空魔導戦闘団は回避と命中能力に優れた飛行戦闘に特化した部隊である。
 それゆえ塔の中でもこの空戦限定階層へと配置されたのだが、彼らにとってこの空はあまりに狭い。
 なぜならば、自分達に張り合うだけの勇者が足りないからだ。
 そう思えたのは、おそらく今日までだろうが。

 TypeSinブースターが火を噴き、ブランシュは凄まじい反応速度で攻撃可能範囲へと侵入。魔術を素早く詠唱、完成させた。
「何っ、なんという――」
 速さ。と声に出されるより早く放たれる『ヘルメスの鳥』。
 雷撃がそのまま巨大な鳥の形となって飛んだそれは、戦闘団の下級兵を呑み込んでいく。
 狙ったのは勿論、抵抗力の大幅な低下だ。
「お前たちが遅すぎるだけだ」
 気付けばブランシュは下級兵たちよりも更に高高度をとり、閃光の魔術を完成させていた。
 手をかざし、光を放つ。
 更なる痺れが下級兵たちの抵抗力を激減させた。
 そこへ叩き込まれるのが――。
 アルフィオーネのクリミネルブリュレ。つまりは火炎のブレスである。
 お料理をするときのブレスとは比べものにならない大火力がぶつけられ、下級兵たちが炎に包まれる。
 が、彼らとてただ黙ってやられるために飛んできたわけではない。
「魔導照射反応――まずい、避けろ!」
 ブランシュとアルフィオーネめがけ魔導弾が次々に発射され撃ち込まれていく。
「大丈夫よ、回復が追いつく」
 対するアルフィオーネは傷付いた自分の身体に治癒のブレスを吹きかけた。暖かな熱が血まみれの身体を撫で、浄化するように傷をなくしていく。
「何処にいたって間合いや。全員打ち抜いたる」
 きりり、と弓に手を駆けた彩陽。
 祈りを込めて作られた矢、穿天明星。
 同じく祈りを込めて作られた弓、剔地夕星。
 その二つからして放たれるのは『アンジュ・デシュ』の呪力を帯びた一本の矢であった。
 下級兵の一体に命中した途端、呪力のフィールドが広域に展開。元々抵抗力の弱っていた彼らはみるみる石化の術にかかっていく。元々雷と炎によって激しいBS状態にあったために呪殺効果もまた強烈だった。
 ぐわあっ、と声をあげて数人の兵士が転落していく。雲へ落ちると塔から放り出されるシステムだと聞いたが、彼らの場合はまた別なのだろうか。
 そんなことを考えているとエマが『メッサー』を抜刀。
「そこです」
 ワイバーンを急激に加速させると、一気に間合いをつめて下級兵の一人を切り裂いた。
 飛梅(とびうめ)という彼女の技のひとつである。
「空での戦いはコレが一番ですからねえ、えひひ」
 エマは相変わらずの引きつり笑いを浮かべると、至近距離から魔術によって刃を作り出した下級兵からの斬撃をメッサーで素早く受け流す。
 そして返す刀で二度目の斬撃を放つのであった。
 スペック差。下級兵程度が相手ならば、エマは一方的に相手を蹂躙できるだけのスペックをもっているのである。

 無数の魔導弾の連射。それを華麗な乱数回避機動によってよけるカイト。
「命中精度が高い? んなもん半端だから落とされるんだ。もっともっと、回避をとことん上げればいいだけだな!」
「チッ、まるで当たらん。奴を狙うな、弾の無駄だ! 連携して別の敵を狙え!」
「そうはいっても、奴の【怒り】が!」
 『熱血の赤翼』でばらまかれた【怒り】のバッドステータスに翻弄され、下級兵たちはカイトに当たらない弾を乱射するはめになっている。
 それが続き団子状になったところで……。
「いただきだ」
 エレンシアは刀身に纏わせていた雷撃を振り抜き、団子状になっていた下級兵たちを『チェインライトニング』の術式のもとに殲滅しにかかる。
 何体かの下級兵が焦げ付きながら墜落していくのを横目に、翼を羽ばたかせ接近。
 未だ残る下級兵が思わず防御の構えをとったのを見るや、剣に魔力を纏わせた。
「まずは小手調べに雑魚をぶつけてくるか。まあ順当な手ではあるな。軽く蹴散らしてやるぜ」
 斬撃。と共に放たれる激しい魔力。防御に展開した障壁は容易く切断され、兵士の身体もまた切断された。その後のことは雲の下……である。
「ズォールト航空魔導戦闘団とやらの力の程、魅せてもらうとしようか……それじゃあ、お仕事の時間だ」
 そこへ突っ込んでいくアイリス。エレンシアの離脱を確認すると、対群精神感応攻撃術式『死月』を発動させた。
 別名マインドジャック・デッドリームーン。数多の斬撃が放たれ、斬撃に乗った精神感応攻撃術式が下級兵たちをたちまち狂気へと導いていく。
 ある者は魔術の発動に失敗して自爆し、ある者は恐怖に動きを止め、ある者は無防備にも魔力障壁を消し去った。
「隙だらけ、だねっ!」
 そこへトドメを刺すかのように突撃したのがアクセルである。
 『雲海鯨の歌』という魔法杖にして指揮棒を振ると、煌めく五線譜が神聖なる閃光となって下級兵たちへと襲いかかっていく。
「もう一発!」
 残った敵に更なる神気閃光を浴びせ殲滅すると、ズォールトの方へと向き直った。
「ほう……なかなかやるようだな。コレまでの半端な戦士たちとはモノが違うらしい」
 ズォールトは表情に歓喜を浮かべ、戦闘団へと命令を放った。
「総員突撃! 勇者を迎え撃つぞ!」


 下級兵と上級兵の、どうやらそれは違いであるらしい。
 カイトの【怒り】に彼らは抵抗し、あるいは回避する。そしてこちらの防御の弱い所を見つけては狙い撃ちにしてくる。
 となれば、こちらの――特にカイトのやるべきことは変わってくる。
「やられる前にやる……!」
 自らに『至天光星』を発動させ、逸話ある神鳥の加護を身に降ろす。そうして格段に強化された『デッドリースカイ』を、上級兵めがけて叩き込むのだ。
「ぐおっ!?」
 カイトの三叉槍が突き刺さった瞬間に、自爆を図ろうと魔力を暴走させる上級兵。
 が、それを事前に察知したカイトは素早く相手を蹴り飛ばして巻き込まれることを回避。
 その横をアクセルが華麗に羽ばたき抜けていく。
「さて、上級兵はどんなヒトかな?」
 神気閃光を連射。
 相手の後ろを取って打ちまくるが、相手は乱数回避機動をとることでアクセルの攻撃を次々に回避していく。
「そんなものか、空の勇者よ!」
「どうかな」
 『そんなものか』と思ったなら、こちらのものだ。
 居寤清水を発動させ能力を急上昇させたアクセルは『ヴァイス&ヴァーチュ』の魔術を発動。
「なっ、必中魔法だと!?」
「隠し球だよ!」
 連続で叩き込まれた魔術が爆発し、上級兵は墜落。
 アクセルは反撃にと叩き込まれた銃弾の傷を、魔法ですぐさま治癒していた。

 一方で、こちらは激しい白兵戦が行われている。
「えひひ――」
 エマの斬撃と上級兵の魔導刃が激突し、激しい火花を上げては散らす。
 このエマの恐ろしい所は、他の仲間を狙っているところに横から切りかかるといういい意味での姑息さにあった。
 それ故に上級兵たちはおいそれと敵に集中できないのである。
「さぁて、さっきのは軽い運動だ。ここから本気で行くぜ!」
 そんな環境で目一杯に暴れまくるエレンシア。
 バレルロール機動をかけて相手の貫通術式を回避すると、至近距離から剣を叩きつけ『殲光砲魔神』を発動。
 衝撃と衝撃がクロスしてその後方にまで吹き飛んでいく。
 しかし上級兵とてさるもの。右腕をもっていかれつつも片腕だけでライフルを握って至近距離から爆裂術式を発動させた。
 が、エレンシアはあろうことか炎の中を突っ切って強烈な斬撃を叩き込んできた。
「貴様等が空の戦に長けてようがそれは貴様等だけのもんじゃねぇ。そいつを忘れねぇこったな!」
 魔力の籠もった斬撃によって真っ二つにされる上級兵。墜落するのは無論のこと、それを見て援護に入ろうとした別の上級兵の首を――エマのメッサーが刈り取っていくのだ。
「よそ見は行けませんねえ、えっひひ」
「キミ達の空戦の技しかと堪能させてもらったから……今度は此方のターンと征こうか?」
 アイリスは機動力を刃に乗せた『斬神空波』を繰り出し上級兵に肉薄すると、フッと笑った。
「何、キミ達の空戦技みたく優雅に舞うって感じではないね。時間は取らせないよ……そうだね敢えて言うならば、気が付けば時すでに遅しって感じかな? ということでサヨナラ?」
 逃れようと身を引くも、もう遅い。
 剣禅一如『落椿』――アイリスの無我の境地より放たれた斬撃が相手の首を切り落としていくのだ。

 一方で、ズォールトはブランシュと高度を上げながら競いあっていた。
 どちらが上をとるかで競り合い、有利な射撃を行うかで競り合う。そのたびに魔導刃がぶつかり、激しい火花を散らし続ける。
「射撃する準備など与えるものかよ。空で自由に戦える俺にとって、もたもたと動く貴様らは的に過ぎない。此処からは一方的な狩りだ」
「そうはさせるものかよ。折角の勇者とのご対面だ。楽しませて貰う!」
 ブランシュは『ワンナイトスタンド』を発動。反応速度を更に上昇させると、凄まじく強烈な『アイコノクラズム』を発動させた。
 上をとったその一瞬。手刀のように放たれた衝撃はズォールトを呑み込んで激しくうねる。
 瞬間、アルフィオーネから魔法が放たれる。
「そのような魔法、あたるものかよ!」
「いいえ」
 アルフィオーネの放った魔法は分裂し、ホーミングし、回避機動をとるズォールトの全方位を包み込んだ後に直撃した。
「ぐおっ!?」
 ヴァイス&ヴァーチュ、つまりは必中の魔法である。
「これなら回避の高さも関係ないわ」
「ちいっ!」
 更なるヴァイス&ヴァーチュの発動を受けて、今度は防御行動に出るズォールト。
 魔力障壁がギリギリ魔法を防御した――その次の瞬間。障壁にがつんと矢が突き刺さった。
「銃にも劣らぬ矢の弾幕……その身に喰らってみ?」
 彩陽の矢である。それも、天を穿てと、天に輝く最も明るい星をも穿てと祈りを込めた。
 矢は込められた魔法を発動させ、ズォールトの魔術障壁を爆破。吹き飛ばして丸裸にすると二発目の矢でもって氷の鎖を作り出した。
「敵も強い。けど自分らも強いんよ。せやからな、負けへんのよ。
 あんた等も強かったよ。でも、自分らの方がもっと強かった。それだけや」
 ぐるぐると鎖に拘束され、動きを制限されたズォールト。
「――見事!」
 会心の笑みを浮かべ、ブランシュの手刀によってたたき落とされたのだった。


 敵のいない空は、自由だ。
 エマは鳥になった気分でワイバーンと共に空を羽ばたく。
 彩陽はほっと息をついて、自分もやれるなと独りごちる。
「さてと、次の階層はどうなってるかな」
 アクセルが言うと、カイトが腕組みをしながらホバリングをした。
「さてな、楽しい所だといいが。皆は楽しめたか?」
「まともな空戦なんざ久しぶりだった気もするが、まあ十分に楽しめたぜ」
 剣を下ろしてははっと笑うエレンシア。
 アイリスは肩をすくめ、まあねと小さく笑ってみせる。
 ブランシュはというと、またもポーズをとってふわりと浮いているだけだ。どうやらこの姿勢が気に入ったらしい。
「ふぅ〜。コウモリ共がいなくなって、ようやく、のんびり空中散歩が楽しめるわね。作りものかもしれないけれど、いいわね広い空は。とりあえず、お茶にでもしましょうか」
 アルフィオーネがリュックサックからお茶の入ったポットを取り出す。この激戦の中でも保たれているあたり、さすがである。
 こうして彼らは空の上で優雅なお茶会を楽しんだあと、次なる階層へと進んだのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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