シナリオ詳細
<ラケシスの紡ぎ糸>花園のハングリービースト
オープニング
●
近い将来、世界は滅亡する。
外れることがないざんげの神託。
無辜なる混沌の消滅は確定してしまった。
この世界から、あるいは外の世界から呼び寄せられてイレギュラーズとなった者全て、等しくその滅びからは逃れられない。
だが、滅びを蓄積する魔種を、イレギュラーズは幾人も退けてきた。
滅びを蓄積させる魔種による凶行を退け、冠位魔種(オールドセブン)も残るは2人と『原初の魔種』に。
未来を変える為、イレギュラーズは戦い続けなければならない。
●
混沌の滅亡は近い。
各地に現れる終焉獣の存在。
「それが滅びの未来は避け得ぬ事態のままであることを裏付けています」
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)はこれまで得た情報から、イレギュラーズとしてはまだ全力で抗わねばならない状況だと語る。
「それだけではありません。特定地域には新たな異常事態が……」
ラサに現れる変容する終焉獣。
終焉獣に憤るとみられる大樹ファルカウ。
鉄帝に出現した奇妙な塔。
そして、覇竜で姿を見せる人型の星界獣。
「「そうです」」
そこに声を合わせて現れたのは、『シェインの相方』カレル・タルヴィティエ(p3n000306)、『カレルの相方』シェイン・ラーティカイネン(p3n000307)の2人だった。
「うちらも気になって調べてたの」
「そうしたら、ヘスペリデス北部に出現情報があって」
冠位魔種ベルゼー・グラトニオスが造り上げた最果ての地。竜種と人間の共存を目指した黄昏の領域。
少しずつ復旧をみせる花園には、ベルゼーの眠る墓がある。
北には岩山や警告もあり、そこから敵が流れてきていると思われる。
「何にせよ、全て倒していかないとな」
『命を紡ぐ旋律』イズマ・トーティス(p3p009471)が告げると、それに皆が同意した。
「それでは、敵の出現情報について、補足しますね」
着実に近づいてきている世界の破滅。
それでも、イレギュラーズのやることは変わらない。
ただ、一歩ずつ歩みを進めていくだけ。
●
ヘスペリデス。
竜種達が今なお屯すこの地は、少しずつ新たな花が育ち始めてる。
例え花びらが散っても、根元が折れても、土が踏み固められようとも、花々は力強く根を張り、天に向かって葉を広げ、また大輪の花を咲かせる。
ここに眠るベルゼーが愛した花園、竜種。
来訪者である亜竜種やイレギュラーズをも、彼は受け入れるつもりであった。
まだ完全とは言えないが、いつかは美しい花園へと戻るだろう。
……この世界が残り続けているなら。
訪れたイレギュラーズも、花園が戻ることを願う。
それがベルゼーの望みであり、討伐したイレギュラーズにとって叶えるべきだと感じていたから。
だが、この地を踏み荒らさんとする獣の息遣いが……。
「…………」
甲殻類……エビのような見た目をした幼体の星界獣。
加えて、漆黒の体を持つ終焉獣……人の足と胴体を思わせる姿をしたモノまで。
「人型の星界獣……ね」
「幼体に終焉獣まで」
カレル、シェインもそれらに嫌悪感を示す。
どうやら、竜種らもこの獣らが現れていることに眉を顰めており、それらの討伐に動いている者もいるという。
ここまでに接触した竜種の話によると、北側にはさらに多くの星界獣が。
場合によっては、滅びのアークに触れて変化した亜竜……滅気竜なる脅威も……。
「この程度で気後れしていられないな」
イズマが言うように、この程度の相手に遅れをとるわけにはいかない。
「…………!!」
瞳を光らせる人型星界獣に合わせ、腹を空かせた獣どもが襲い来る。
周囲の花々を気にかけながらも、イレギュラーズはそれらに応戦するのである。
- <ラケシスの紡ぎ糸>花園のハングリービースト完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年11月10日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
サポートNPC一覧(2人)
リプレイ
●
覇竜、ヘスペリデス。
再び、イレギュラーズが訪れた花畑は少しずつ元の美しさを取り戻しつつあったが……。
「いよいよ滅亡が近付いて来た、というわけか」
……自然に朽ちゆくならまだしも、喰い荒らして滅ぼそうとするなど。
『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は少なからずこの状況に怒りを覚える。
「終焉獣とか星界獣とか、本当に色々と大変な状況ですが、1つずつきっちり片付けていけば何とかなるはず!」
『青薔薇救護隊』常田・円(p3p010798)はこの状況でも、前向きに対する構えだ。
真面目な顔をしていた『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)はあの冠位暴食との戦いを思い出して。
「あの戦いに参加した者なら誰でも、ベルゼー氏がどんな想いでこの花園を作り上げ、そして散っていったか知っている」
だからこそ、終焉獣なんぞに踏み荒らされるわけにはいかないと、エーレンは独り言つ。
ギフトで女性モードとなっている『双影の魔法(砲)戦士』マリオン・エイム(p3p010866)はベルゼーには会ったことがないそうだ。
「でもヘスペリデスを歩けば、彼が冠位魔種とか関係なく優しい心の持ち主だったのは良く解るね!」
同じく、『新たな可能性』レイテ・コロン(p3p011010)は戦いにおいてクリスタラードの方へ向かった為、ベルゼーの事はよく知らないというが。
「荒れてるとはいえ、こんな花園を見せられると、人柄が偲ばれるよね」
竜種、亜竜種にも好かれており、本当に冠位魔種だったのかとレイテは疑いそうになる。
「コノ地ヲ創リ、コノ地ニ眠ッタ冠位暴食……イエ、彼ハ最後ニ反抗シテ見セタノデスカラ、冠位暴食ト呼ブノハ無礼ガ過キマスネ」
――この地に住まう者、住まおうとする者の優しき遅々として生き、そして眠ったのだから。
こちらもギフトで人型をとる『観測中』多次元世界 観測端末(p3p010858)はベルゼーに敬意すら見せる。
「いつも通り。今日もおんなじ」
覇竜の地が大好きな『相賀の弟子』ユーフォニー(p3p010323)は、ここにいる全てが大切だと語る。
「だから、この地を害すひとからは護るんです、絶対。……行きましょう!」
頷き合うメンバー達は花園へと進み出る。
そこには、この地を荒らさんとする終焉獣に星界獣と呼ばれる異形どもが跋扈していた。
「ベルゼーが人や竜や他の種が共存できる箱庭として造ったヘスペリデス! 滅びの獣が荒らして良い場所じゃないから、早々に御退場願いますだね!」
強く意気込むマリオンだったが、冠位暴食の箱庭に、腹を空かせた滅びの獣が来るのは因果なのかも呟く。
「いずれにせよ、そんな人の大切な場所に無粋な侵入者は不要ですよね」
花園を荒らさない為にも、手早く排除を。
レイテの言葉に同意したレイテは、同行するカレル、シェイン両名を見て。
「シェインさんカレルさん。攻撃、一緒に合わせて貰えたら嬉しいです」
「ええ、里おじさまの守ろうとしたこの場所……」
「わたくし達も全力で守るよ」
「ああ、カレルさんとシェインさんも一緒に戦おう。確実に倒すぞ!」
花畑を保護結界で包んだイズマの言葉の直後、エーレンが獣どもの前に進み出る。
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。せっかく出てきたところを悪いが、さっさと退場してもらうぞ」
続き、小柄で長い水色の髪を靡かせた『メカモスカ』ビスコッティ=CON=MOS(p3p010556)が唸る獣を見回して。
「腹が減ったら花を食うのは妖精さん……。否、妖精さんは花の蜜じゃな」
花を食わずに実を食うとよい。
ビスコッティは覇竜にはうまいものがたくさんあると呼びかけるが、異形の獣どもが話に応じる様子はない。
「食わぬか? そうか……なら、生存競争じゃ。ゆくぞ!」
「僕も力不足ながら頑張りますよ!」
ビスコッティに続き、円もできれば重傷者なく掃討したいと気合を入れる。
「優シキ父、ベルゼー氏ノ遺産トデモ言ウベキコノ地ヨリ、招カレザル客人ハ退去シテ頂キマショウ」
巨大眼球の姿に戻った観測端末の一声の後、イレギュラーズと獣の群れは一斉にぶつかり始めるのである。
●
獣は大きく2種でさらにそれぞれ2種が存在。
終焉獣は人の部位を思わせる怠惰の胴体と花園の花々を踏み固めてしまいそうな蹂躙の足2体。
そして、星界獣は人型とカラフルなエビの姿をした幼体。
この中で、イレギュラーズが最も警戒し、優先討伐対象としたのは胴体だ。
「世界を守るなら、まずこの花畑から。」
速度を高めていたイズマはさらに数名の仲間を自身に合わせて連携をとる。
まず、イズマはテンションを高めてから身を固める。
「……滅びから逃げられないのならば、打ち倒して退けるまでだ」
相手を煽り、胴体を含む敵数体を引き付ける横から、エーレン、ユーフォニーが共に仕掛ける。
敵の先手を取ったエーレンは納刀したままの刀を構え、少しだけ距離を詰めてから仕掛ける。
敵集団の要となる存在、胴体や人型を捉え、エーレンはすれ違いざまに敵陣を切り刻む。
「今だユーフォニー、お前の『最高』を見せつけてやれ!」
そのエーレンの後ろで控えていたユーフォニーは高速詠唱で準備を整える。
(さすがはエーレンさんです)
胴体含め、現状できる最大数を巻き込む攻撃を決めてくれた兄貴分に合わせ、ユーフォニーも輝く万華鏡を照らす。
それは彼女だけの世界の顕現だ。
「兄妹連携技なんですっ」
刹那棒立ちになっていた敵を光が灼き、確実なダメージを叩き込む。
獣はそれを食らってなお全てが立ってはいたが、何れもかなりの傷を負わせていたのは間違いない。
その状況で、他のメンバーも動いていて。
すでに前へと出ていたイズマと並び立つレイテ。
少しずつ動き出す獣どもに、レイテは名乗りを上げてから防御を固めて敵の様子を窺う。
獣は思ったより動きが鈍いが、人型は盾役メンバーへと立体的な駆動で攻撃を仕掛ける。
それは、SAGを思わせる技だ。
「少しでもダメージを抑えられるように……」
イズマが食い止める後方から、円が召喚した浄化の鎧を彼へと降臨させる。
「なんせ、敵は抵抗を下げてくるらしいですから!」
事前情報の有用性は高く、それに応じた対策は多いに越したことはないと円は疑わない。
さて、大きくダメージを受けた敵陣だが、怯まず襲ってくる。
こちらへと迫り、地面を踏み荒らそうとする一対の足、エビぞりになって飛び掛かろうとする幼体を食い止める盾役を、観測端末が支える。
いつ前線が崩れるかもわからない。
観測端末はその盾役を中心に天使の歌を響かせ、大天使の祝福をもたらす。
その最中でも、観測端末はこちらにも余波がある攻撃を警戒し、防御を固めていた。
「大物は他の人に任せて……」
徐々に乱戦になる中、マリオンは中衛から幼体を中心に相手取り、掌握魔術を展開する。
発した気糸は敵の堅い殻も切っていき、どす黒い液体を飛び散らせていく。
しばらく、マリオンはその位置から攻撃を繰り返す横から、シェインも炎を発していた。
その炎と同時に、カレルが切り込む。
連携して胴体を攻める亜竜種ペアだ。
そして、ビスコッティは人型を見定めて。
「遠距離攻撃って情報を聞いておる。そうはさせんよ」
そいつが更なる攻撃へと出る前にガトリング砲を展開する。
すでに拡張ディスクは挿入済み。
捉えた敵から纏めて砲弾を浴びせかけ、獣どもを業炎に包み、満足に動けなくする。
「力任せな闘いは学んでおるか? おらんならここで学んで行くが良い!」
そのまま、直接人型に体当たりを食らわせ、食い止めにかかるビスコッティだ。
彼女が攻撃能力を削いだ相手が躊躇する間に、メンバーは担当する相手から攻め落とさんと攻撃を重ねていく。
●
改めて、攻撃を主として動くメンバーは、終焉獣である怠惰の胴体へと攻撃を集中させる。
「…………」
地面をホバリングする胴体は動きこそ鈍いが、黒い瘴気を発する。
周囲にいる対象から気力、エネルギーを食らい、加えて、異常をもたらして浸食してくるから恐ろしい。
なお、回復役に徹する観測端末や円が大天使の祝福を仲間に与え、万全に戦えるように支える。
胴体を最優先討伐対象とするイレギュラーズによる激しい攻撃が繰り返される。
巨躯でタフな終焉獣とはいえ、傷が増えてどす黒い血が流れ出す。
円の近術で僅かに怯む胴体だが、傷を塞ごうと更なるエネルギーを奪いつくそうと瘴気を発してくるが、エーレン、ユーフォニーの連携が冴える。
兄妹で息の合った攻撃を叩き込んでいた2人だが、敵陣を駆け抜けながら切りかかる。
再度、エーレンの攻撃で呆ける敵に、ユーフォニーが光を走らせた。
聳え立っていた胴体がついにへし折れるようにして崩れ、自らが爆ぜて瘴気の如く広がり、そのまま消えてしまった。
メンバーの攻撃に巻き込まれた幼体もかなり疲弊している。
兄妹連携の合間、マリオンは幼体を纏めて気糸で切り刻み、1体を見事に切り裂いていた。
マリオンの気糸で致命傷を避けた1体に、防御態勢をとっていたレイテがすかさず翼状の高周波ブレードを音速で叩き込み、体を分割していく。
それら2体は空中ですぐに虚空に溶け込み、存在が消失してしまう。
残る1体はエーレン、ユーフォニーが胴体を倒した直後。
イズマがすかさず動きを止めた幼体を狙い、魔力を振り絞って創造した真滅の魔剣を振り下ろし、カラフルな殻を真っ二つに切り裂く。
2種が消え去ったが、まだ獣は残っている。
個としては別のはずだが、左右で連携をとって地面を踏み鳴らす蹂躙の足。
それらはタイミングを見計らい、同胞である胴体や星界獣の幼体が消えた直後、一気にイレギュラーズに向けて侵攻を強めてくる。
イズマ、レイテがそれらを食い止めに掛かる後方で、ビスコッティが奮戦する。
「我そろそろもたんと思うが、そっちはどうじゃ!」
そこで、ビスコッティは仲間が順調に敵を倒している事に些か安堵するが、幼体を失った人型星界獣もまた、一層苛烈に剣と魔力を持って攻撃を繰り出し始めていた。
「…………!!」
人型が虚空から生み出したのは膨張した黒い顎。
それをビスコッティが力で食い止める。
「ふんす! ぬおおおお!!」
吠えて直接止めようとするビスコッティ。
ハートは熱く、思考は冷静に。
時折、内気と外気を活性化させて傷を塞ぎつつ交戦していたビスコッティだが、ダメージが重なって厳しい状況に。
(ここまで時間を稼げれば上等じゃが)
そう考えるビスコッティの前にここぞと出たのは戦況を俯瞰し、把握していた観測端末だ。
前衛代行をと観測端末は内より出る炎を燃え上がらせ、一時人型の猛攻を食い止める。
その間に、メンバーは先に攻撃が集まった右足へと攻撃を集中させて。
「連携を阻害しないとな」
エーレンが仲間達へと呼びかける。
両足が揃った状況だと、連携して強力な攻撃を仕掛けてくることが分かっている。
だからこそ、食い止めねばならない。
現状はレイテが纏めて抑え、その隙にイズマが両足纏めて呪術で捉え、文字通り『足止め』する。
右足へ攻撃が集まる状況に、カレルとシェインも合わせる。
カレルが繰り出す剣舞のど真ん中にシェインが雷を撃ち込むが、カレルはさらりと避ける。
シェインの雷で焼かれる右足へ、繰り出される刃。
焦げた臭いを漂わせる右足は己を浮遊させて踏み潰さんとするが、ビスコッティがすぐにその真下へと入って盾となる。
その足を確実に仕留めるべく、エーレンは居合で刃を一閃させる。
上下真っ二つに割かれた右足は爆ぜ飛ぶように掻き消えた。
「ここまでくれば、押し切ってやるがの?」
事なきを得たビスコッティだが、果敢に残る左足に毒手を伸ばして掴みかかる。
そこで、円がエンピリアルアーマーで包み込んで。
「全力で戦えるように支援します!」
前線が崩れれば、左足は自分も間違いなく踏みつけてくるだろうと考える円。
すでに残る敵は少なくなっているが、ここでこの足も倒せば勝利は間近となるはずだ。
(もうマリオンさんがかばう必要はないかな?)
マリオンも構えてはいたが、位置もあって間に合わなかったが、仲間に回復魔力を振りまく。
さらに、疲弊する仲間達を、マリオンはサンクチュアリで支援する。
「もし後ろにきても、マリオンさんが受け止めるよ!」
……もっとも、紙に近い防御とのことで長くは保てないと主張するマリオン。
そうなった場合について、マリオンもシュミレーションはバッチリではあるが、盾役メンバーも個々を通さじと奮戦する。
自らに勇気を灯す色で包んだユーフォニーは、ドラネコの今井さんの力を借りて攻撃に出る。
(お花畑を必要以上に荒らさないように……)
軌道はなるべく下から上に。
ユーフォニーは敵のみを捉え、無数の炎片を舞わせた後、今井さん……課長が光線の如き一閃を発し、左足を撃ち貫く。
これには耐えられず、蹂躙の足は跡形もなく姿を消してしまった。
残る人型星界獣は引き連れてきた手下全てが倒されてなお、激しくイレギュラーズに持てる力をぶつけてくる。
(どこでどのように生まれたんですか。……どうしてこちらへ?)
「…………」
ユーフォニーはそいつと意思疎通を試みるが、なしのつぶて。
SAG、黒顎魔王と使っていたそいつは、鮮血乙女も使いこなす。
さらに、人型は己に魔神を降ろし、こちらへと魔力を放出してくる。
なんとか耐えるビスコッティの横から、レイテは速度を活かしてブレードを浴びせ、さらに破砕砲を撃ち込む。
「範囲攻撃はないようだが、貫通攻撃は厄介だな」
エーレンは敵の攻撃を警戒して仲間から距離をとる。
流星の如く速度を高め、彼は一気に人型へと切りかかる。
同じタイミング、少しだけ距離を詰めたマリオンが黒い顎を突き立てる傍らで、円がビスコッティの危機を払うべく癒しをもたらす。
カレル、シェインペアもここは分かれて行動し、シェインがビスコッティを癒す前方、カレルが舞を踊って皆を奮起させる。
「我を見よ、我を退けよ」
すると、存在感を示し、攻撃するよう煽るビスコッティは武術をもって敵を組み伏せようとしていた。
ここまで前線を持たせていた仲間を気にかける観測端末は福音を紡ぎ、聖体頌歌を響かせて仲間達の戦いを見守る。
呼びかけを諦めたユーフォニーもしぶとい人型へと燐光を発する。
こちらもまた上方へと発するよう意識したユーフォニーだが、人型はそれもあって致命傷を避けていたようだ。
だが、イズマがここまで負っていた傷を力へと変えて追撃に出る。
「お前達の都合で滅ぶなど御免だ。俺達はまだ生きる!」
望まぬ戦いを押し付けられることに嫌気がさしていたイズマ。
もっと進み、戦い、滅びを押し返す。
これが混沌に生きる者の力と知らしめるべく、イズマは再び創造した魔剣を振り下ろす。
「…………!!」
大きく目を見開いたそいつは、最後まで言葉を発することのないまま果てていったのだった。
●
滅びのアークから生まれた終焉獣。
滅びをもたらす存在、星界獣。
全ての獣を排し、イレギュラーズは一息ついて。
「ふう、僕、足を引っ張ってなかったですか?」
仲間達へと尋ねる円に、皆から色々指摘が。
全力で回復支援していた彼だが、まだまだ反省点も多く、次はもっと上手く立ち回れるようになるべく更なる鍛錬を重ねたいと気合を入れていた。
「……あ、やっべぇ。花畑で相撲してガトリング撃っちまったのじゃ」
そこで、ビスコッティがバツが悪そうにそう漏らす。
イズマの保護結界で被害は食い止められてはいたが、完全にとはいかない。
「荒らされた場所は少しでも手入れしておきたいね」
歩いて確認をと考えるマリオンだが、野良のワイバーンが飛来しているのも視認していて、難しいかなと首を傾げる。
そこで、観測端末が徐に浮遊して超視力と広域俯瞰を最大限に生かしてチェックに回る。
「場所が場所だし、『話しの途中だがワイバーンだ!』な展開になったら大変だしね。」
なお、レイテが護衛として同行してワイバーンに備え、マリオンも下からついていくことにしていたようだ。
うまくワイバーンをやり過ごしつつ、瞬間記憶で荒れた場所を覚える観測端末はその名の如くというべきか。
戻った後に精密模写で地図を記し、それをカレル、シェインペアへと渡す。
「ありがとう」
「早速、復旧を始めるね」
その亜竜種少女ペアを、エーレンが手伝う。
「素早く運ぶのは得意だ。種でも肥料でもどんとこい」
折れた花を植え替えて新たな種を。
新たな芽吹きの為、少女らと共にエーレンも水を撒く。
そんな光景を、レイテは空から花畑と合わせて眺めて。
(ベルゼーさんが此処に造りたかったものってさ?)
異種族が共存できる場所と言うよりも……、異種族達が集って滅びを越える希望、それを生む為の場所だったのではないかとレイテは推察するが。
「……真相は今亡き彼の心の内に……か」
眠るベルゼーが何を思ったのか。
それはもう誰も知る由もないのである。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは人型星界獣をうまく抑えていた貴方へ。
連携をみせた兄妹ペアにも称号をお送りします。
今回はご参加、ありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
<ラケシスの紡ぎ糸>のシナリオをお届けします。
こちらは、イズマ・トーティス(p3p009471)さんのアフターアクションによるシナリオです。
復旧しつつある花園に現れた獣らの討伐を願います。
●敵
〇人型星界獣×1体
主にイレギュラーズの残留エネルギーを喰らって進化した個体です。
甲殻で覆われたような鎧に加え、肌の質感も甲殻を思わせます。肌は薄橙色をしており、限りなく人に近い印象を抱かせます。
自身の体と同等の質感の片手剣を所持。
どこから学んだのか、イレギュラーズの中、遠距離攻撃を模したような技を繰り出すことが確認されています。
〇星界獣×3体
幼体であるようです。全長、1m程度で甲殻類のような……今回はエビのような見た目をしたモンスター。滅びに近づくことで現れるといいます。
エネルギーを食らってその姿を変化させる性質があります。
花園に降り立ったからか、赤、白、黄色とカラフルな色で、鋭いエッジの花びら、棘に覆われた無数の茎放出、見た目のままに飛び掛かるなど、見た目以上の能力を持ち合わせています。
直接エネルギーを吸い取ることもあり、希望のエネルギーが好物とあって、率先してイレギュラーズを攻撃してくるようです。
〇終焉獣×3体
滅びのアークそのもので作られた獣達。
姿は様々ですが、漆黒の体躯をしたものが多いようです。
・怠惰の胴体×1体
全長5~6m。頭と四肢がぼやけており、地面をホバリングするように移動します。見たところ、動きは鈍いようです。
黒い瘴気を発して相手の気力、エネルギーを奪い、異常をもたらし、さらに存在まで食らおうとしてきます。同時に、相手を浸食する効果もあるようです。
・蹂躙の足×2体(左足、右足1体ずつ)
全長2.5mほど。足首から下のみの姿をしています。右足と左足に実力の個体差はありません。
跳躍して踏み潰す他、周囲の物体を蹴って叩き込むなど行います。左右一対で強力な攻撃を行うようです。
空中を蹴って空間を裂き、周囲を浸食しようとすることもあるようです。
●NPC
○亜竜種少女ペア
フリアノン出身、互いを友情以上の感情を抱くペア。
息の合った連携を見せますが、イレギュラーズに合わせた作戦もとってくれます。
・カレル・タルヴィティエ(p3n000306)
18歳、赤いショートヘアの長剣使い女性。
軽装鎧を纏い、剣舞で周りを魅了しながら相手を殲滅します。
・シェイン・ラーティカイネン(p3n000307)
17歳、緑のロングヘアを揺らす術士の少女。
樹でできた長い杖の先端にはめ込んだ魔力晶から炎や雷、治癒術を使います。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いします。
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